テロ組織でヒューマンドラマなおすすめアニメランキング 2

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメのテロ組織でヒューマンドラマな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月03日の時点で一番のテロ組織でヒューマンドラマなおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

66.8 1 テロ組織でヒューマンドラマなアニメランキング1位
青の6号(OVA)

1998年10月25日
★★★★☆ 3.5 (184)
992人が棚に入れました
近未来。地球の人口は膨れ上がり、環境は劣悪を極めていた。世界各国は人類最後のフロンティア=「海」に希望を求め、新たな世界を築こうとしていた。そのために設立されたのが、会場及び海中の安全を守る超国家組織「青」。各国は協力して自国の潜水艦を「青」に派遣することになった。日本の自衛隊から「青」に送られた潜水艦も6号艦として「青」の任務に就くことになった。しかし、そんな折、海洋開発のリーダーでもある天才科学者ゾーンダイクが突然反旗を翻し、凶悪なテロで世界を恐怖に陥れる。海洋テロ結社を築き、人類殲滅を宣言したゾーンダイクの野望とは?ゾーンダイク率いるキメラ兵器たちと、それを阻止せんと立ち上がる「青」の潜水艦隊。人類の存亡を賭けた戦いの火蓋が、今、切って落とされた!
ネタバレ

さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

GONZOの名を世に知らしめた名作

観始める前はSF・艦隊と聞き、ハードボイルドで哲学要素があり、社会に問いかける攻殻機動隊のようなイメージを連想していたのですが、小難しい話はなく、抽象的な世界を徐々に明らかにしていき最後に大きなテーマを抱えて待ち構えている構成で見ごたえがありました。

映像に関しては、1998年の作品と言うことですが、デジタル制作なので映像が観やすく、絵柄も落ち着いた感じなので古さは全然感じませんでした。
それどころか、優秀なアニメーターさんたちが携わっていることもあり、話数が進むにつれてどんどん迫力のある映像になっています。
今見ても見ごたえのある映像になっているかと思います。


物語
前述したように、抽象的な世界から始まり徐々に情勢が明らかになっていくので1話はよくわかりません。
2話は状況説明が主となります。
丁寧に世界を構築したおかげで3話4話の惹き込みはすごいです。
難しい話になりそうだったのでメモを取りながら視聴していたのですがいつの間にかメモを取ることを忘れていましたw

1話BLUES
あらすじ
戦いに飽きて隠遁生活を送る身勝手な主人公速水は、戦艦"青の6号"の乗組員である紀之真弓を助け操舵手に復帰する。そして久々の出撃で人類の敵である半獣達の一人、赤い目のミーティオを助けたのだった。

タイトルBLUESは憂鬱な気持ちを歌で表現する突飛なメロディの曲です。
ということは、キャラが憂鬱な気分に浸っていたということでしょう。
まずはヒロインの紀之真弓。青の6号の命令で速水を探しに来ましたが、身勝手な彼の態度はさぞかし憂鬱になったことでしょう。
次に主人公の速水、戦いに飽きたというそぶりでしたが、出撃時には前へ出るなど、案外隠遁生活にも退屈していたのかもしれませんね。

もちろんEDや挿入歌のブルース?ジャズ?な音楽にも注目です。

2話PILOTS
あらすじ
{netabare}基地に戻った青の艦隊たち。そこで行われたミーティングにより切り札として核爆弾を使うことが提案される。
その後速水は基地内で敵につかまり獣人に改造されてしまった昔の仲間と遭遇する。敵への復讐心を強めた彼は命令を反し一人で出撃、あえなく撃沈される。{/netabare}

1話では殆ど良くわからなかった敵の全貌、見方の内情が分かります。
タイトルのPILOTS、複数形ですから意味は
操舵手、艦長、種火、案内棒辺りが入るかなあと思います。
タイトルが物語にしっかりと食い込んでいるのがすごいです。

3話HEARTS
{netabare}あらすじ
撃沈された小型機から脱出した彼を助けたのは、以前助けたミーティオだった。速水はミーティオや巨型の人工生物ムスカと接するうち、獣人を作り戦を始めたユング・ゾーンダイクの真意を確かめたくなる。

HEARTSの意図について
最初はミーティオの恋心だけかなあと思っていたのですが、観ているうちに紀之真弓の恋心と、ゾーンダイクの心の内と言う意味でも使われているかもしれません。

海と陸それぞれのヒロインと共の立場から観てきた速水はいったいどんな結論を出すのか楽しみです~
ミーティオは魚を加えて速水に差し出すシーンが可愛いですね

それから、速水が海では助けられてばかりだということを繰り返し言っていましたが、振り返ると結構助けたシーンも多いです。ここは共生というテーマにもつながっているのかもしれません
{/netabare}

4話MINASOKO
{netabare}あらすじ
青の艦隊はいよいよ切り札の使用に乗り込む。
しかし、切り札を使ってしまえば敵だけでなく見方も巻き込んでしまう。そこで戻った速水はユング・ゾーンダイクの元へ赴き、真意を確かめたうえで実行してほしいと青の6号の艦長に頼み込む。
見方の援助のおかげで無事ゾーンダイクの元へたどり着いた速水は争いでは何も解決しないと悟り、ゾーンダイクからも希望を託され、青の艦隊に停戦を求める。
そして、獣人側の指揮をとっていたベルグと話し合いをして敵側も収めたのだった。

MINASOKO
水底に沈んだ銃が哀愁を漂わせています。
そして敵は人間を憎んでもゾーンダイクが帰ることはないと悟り、落胆して海の中へ消えました。
悲嘆にくれるベルグと速水への恋心を抑えベルグと共に海へ戻ったミーティオちゃんが気がかりですね。
戦いは終わっても共存は実現していないテーマの深さが浮き彫りになりました。{/netabare}


作画
1話ずつ制作しているみたいなので、最初はOVA初のデジタルアニメで手探りという感じだった作画が、話数を追うごとにグレードアップしていくのが目に見えて面白いです。

中でも一番の成長を感じたのはエフェクトでした。

1話の爆発はゲームの一マスに生えた草みたいで面白い形をしていたのですが、2話3話とナチュラルになり、形も変えてきているので話毎に見比べるのが面白かったです。

水の描写はかなり綺麗でした。場所によってはCGを使われているところと、手書きにエフェクトをかけたところがあったのかな?
1話の廃ビルから見下ろした水の景色がとても綺麗でした。

動きはCG手書き共に良かったですね。
CGでは2話の小型船が水面を滑走するシーン、迫力がありました。
手書きでは、ベルグがはやみんに殴り掛かるシーン、迫力があります。
ゾーンダイクがシャツのボタンをはずすシーン
それからベルグが沈んだ後、はやみんが「イーストセブンからイリアンジャヤ、何人も手にかけてきた、だけど、だけど初めてだったんだ。明るいところで、正面から」フッと笑いながら震えるシーン、そんなはやみんを紀之真弓がそっと抱きしめるシーン芸が細かいです。

音楽
主題歌の「みなそこに眠れ」
ジャズ?ブルース?な独特なテンポと色気のあるウィスパーボイスがいい味を出しています。
戦闘BGMも基本的にこんな感じです。
ピンチなシーンでもアップテンポな曲が流れるので、やや緊迫感にかけますが、カウボーイビバップでも同じような使われ方をしていますし、そういうテイストが楽しめる方は同様に楽しめると思います。


正直こんなに楽しめる作品だとは思っていませんでした。
あにこれの評価も賛否両論ありましたし。
残念なところはなくはないけれど、それ以上に良さが詰まった作品だと思います。
不朽の名作との呼び声の高さは妥当ではないでしょうか。

全4話、1話辺り30分ほどのアニメですので、是非見てみて下さい。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 12
ネタバレ

che さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

Thou shalt love thy neighbour.

ワンコさんと良いアニメなのに酷評が多いよね、という話が出まして、
でも僕はこのアニメ好きなので、出来るだけ色々な人に観てもらおう思い、啓蒙も兼ねてちょっと書き直しました。
啓蒙出来る内容になってるかは別として、、、w

OVAだけあって、作画も内容も音楽もレベルが高かったと思います。
今時珍しくもないですが潜水艦等がCGで当時としてはかなり先駆け的だったような記憶があります。
作画も奇麗だし、音楽が特にアップテンポなJazzyな感じでcoolとても良かったです!

物語は、一人の狂気の学者が、南極の氷を溶かし始め、世界の大半が海に没してしまった地球が舞台です。
そこで人類は、謎の海洋知的生命体と生き残りをかけ争っているというのが概要です。
「青の6号」は主人公が乗り込む潜水艦の名前です。
潜水艦での海の中の戦闘なんですが、青の6号は最新鋭潜水艦で結構アクロバティックなマニューバを見せてくれるので面白かったです。
あと、海の中という特殊な空間での戦闘と言うのも僕は面白かったです。
テンポもよく、何より4話しかないのですぐに見れるしオススメですよ。

まあ、戦闘もいいけど、最後の科学者、ゾーンダイクだっけ?
の話は中々考えさせらる物があって僕は其れが有ったからこそこのアニメは面白いと言う評価になりました。
{netabare}
結局ゾーンダイクが南極の氷を溶かし出したのは、身勝手な理由なんですが、まあそれは置いておいて。
人類と戦いを繰り広げていた知的海洋生物(人間並みの知能だと思う)たちも彼ゾーンダイクに作られた存在なのですが、
彼らが人類と戦っていたのは結局ゾーンダイクの指示などでは無く、彼等の意志で彼等の父であるゾーンダイクのために戦っていたんですね。
ゾーンダイクは別にそんな事を望んではいないのですが、幼い彼等はそれが父のためなると思い戦いを始めた訳です。
最後にゾーンダイクの元に辿りついた、主人公2人との会話の中でこんな事を言っていました。

ゾ なぜ彼等(海洋生物)と戦う?

主 先に攻撃してきたのは彼等よ!

ゾ なぜ彼等と手を取り合おうとしない?

主 先に攻撃を仕掛けておいて、沢山の人を殺しておいてそんな事が出来るわけがない!

ゾ 彼等は幼いのだ、彼等は人類からみれば弟の様な存在だ、なぜ彼等を許し、手を取り合おうとしない?

こんな感じの内容だったと思います、すいませんハッキリとは覚えてないですがw
もちろん会話には続きがありますが、心に残ったのがこの辺りだったので、覚えていた感じです。

{/netabare}

アリエッティのレビューでも触れましたが、人類は他の種
とは本当に共存できない悲しい種だなと、このアニメを観た時初めて思いました。

彼等の先制攻撃で人類は確かに死んだかもしれませんが、それは人類の0.1%にも満たない数だと思います。
人類は彼らを許すことを考えなかったんでしょうか?
僕はそうではないと思うんですよ、きっと怖かったんだと思います、人類以外の正体不明の知的生命体が現れ攻撃してきた事、これがきっと人類にはどうしょうなく恐ろしかったんだと思います。
だから、反撃したんだと思います、そうやって死体の数と、憎しみが、比例し終わらない泥沼の戦争ってのが始まるんだと思います。

ある日の夜、一人歩いていると、UFOが下りてきて、宇宙人が下りてきました。
貴方の懐には、デザートイーグルがありますw
宇宙人にだってでっかい風穴が開くマグナムです。
貴方はその銃を抜かず、右手を差し出す事はできますか?
、、難しいですよね。
僕なら、いきなりぶっ放したりはしないと思いますが、銃は抜いてしまうと思います。
でも僕は、「右手を差し出す努力ができる人間」で有りたいと思います。

きっと人類に出来る限界は「その程度」だと思いませんか?
でも「その程度」できっと今より随分まっしな世界になると僕は思んですよね。
ま、そんな事を考えさせられたアニメでした。
さて皆さん、興味がでたかな?面白いアニメだから皆見てね~!


因にタイトルは「汝の隣人を愛せよ」という聖書からの引用です。
僕は無宗教ですが、イエスさんは偉大ですよね。
今より、もっと荒んだ時代にこんな言葉を人々に説いたんだから。

こんな人にオススメ

海の人
メカの人
人間の人
考える人
ダウントリム一杯に夢が一杯な人

投稿 : 2024/06/01
♥ : 12

月夜の猫 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.6

1967年少年サンデー連載漫画が原作。

1967年~少年誌に連載されていた漫画を元にGONZOにより
1998年10月25日 - 2000年3月25日に全4話のOVA化された。
OVAとしては世界で初めてのフルデジタルアニメ。

航海の安全を守る組織「青」所属の潜水艦、「青の6号」と
国際テロ組織「マックス」との攻防を描く。海洋もの近未来SF。
原作は海洋冒険漫画となっている様ですがアニメを見る限り・・
マッドサイエンスもの・・冒険と言える部分が有るのか不明・・
作風が全く違うし製作時期が少し後になるけど冒険という意味
ではタイドライン・ブルーの方が良く出来ていると感じた。

原爆・生体兵器・人造生命体・・それらを絡めて人の醜さを
表現しつつ・・見境ない復讐と屁理屈・・そして復讐の連鎖。

なので・・大袈裟に派手に描いた割にはラストは・・へっ?・・
言いたいことは解っていたし 一応伝わるけど・・
4話で約2時間・・多少編集で削れば劇場版アニメ程度の時間?
でも・・そう考えるとエンターテイメント性に欠けている気が。
1967年に既に刊行されていた原作という部分にのみ素直に驚く。
この作者は凄いな・・海洋ものやSF絡みの著作が多いのかな。


全般には泥臭くアナクロな感じかな? 派手な3DCG等の戦闘
シーンなどはあるものの・・地味で盛り上がりに欠ける感じ。
そしてアメリカならそういう作品でもエンターテイメント性に
長けた面白い作品にしてしまうんだよね・・アニメぐらいは
頑張ってほしいな・・・日本のSFも・・

キャラデザはシリアスな作風を意識した作品の標準的デザイン
が8割以上 一部如何にも漫画的な個性の強いデザインも混在。
主人公は少し少年誌風でヒロイン他一部の女性キャラはアニメ
という感じのデフォルメ・・どうも3種類のデザインがあるよう。
ミュータントは実在する動物をベースに人造人間化された感じ。
眼が大きめのヒロインとか・・シリアスな作風だけに・・微妙
に感じた・・それほど大きいわけではなけど異質に感じた。

メカデザは如何にも近未来的な物が2タイプと生体兵器のような
物とで3種類あるようですが 世界観上違和感は感じない。
どの程度漫画のデザインを取り入れているのか不明ですが もし
このOVAが原作のデザインを重視したのなら漫画連載当時は相当
洗練されたデザインをしていたのかも?OVA作成時期のデザイン
なら・・それなりかな・・

声優は・・紀之真弓(ゆかな)が少し熱演気味のピーキーな印象で
他に数人聞き覚えのある声が居た・・ブライトとかひとみとか泥舟。
全般的に普通にキャラにあてはまってる感じでゆかなさんだけ極端。

作画は・・メカなどの3DCGとキャラとエフェクトで可成り違和感。
凄く拘って力が入っているのは解るけど・・癖の強い3Dとキャラ
の色彩や質感が融合していない・・エフェクトも凄くリアルを追求
したと感じさせ綺麗な仕上がりだけど・・同様に違和感が強い・・
カートゥーン処理ではなくリアルな質感などを追求した3Dだからか?
キャラなど如何にもアニメな色彩との折り合いがつきにくいのか・・
確かに凄いと感じさせる部分もあるけど・・あくまで単体として・・
作品全体としてみると・・何だかぎこちない動きが多い・・
1998年制作という部分ではそれなりに最先端でハイレベルなのかな。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 4

62.3 2 テロ組織でヒューマンドラマなアニメランキング2位
GUNSLINGER GIRL -IL TEATRINO-ガンスリンガー・ガール イル・テアトリーノ(TVアニメ動画)

2008年冬アニメ
★★★★☆ 3.4 (362)
1838人が棚に入れました
戦いに踊る人形、復讐に駆られた大人たち…廻る舞台。(イル・テアトリーノ)
舞台はとあるヨーロッパ。公益法人”社会福祉公社”
障害者支援のための首相府主催事業を表向きとするこの組織の実態は、瀕死の少女たちに機械の体を与え「条件付け」を施し、その少女たちを使って政府に敵対する勢力を秘密裏に排除する諜報機関であった。
生きることと引き換えに「義体」となった少女たち。それぞれに一人ずつ担当官がつき、いつも行動を共にしていることから、兄妹(フラテッロ)と呼ばれている。
「条件付け」により生身の頃の記憶が封印された少女たちにとっては、担当官の命令に従い、銃を持ち戦うことが何よりも幸せなのだった。
義体や担当官など社会福祉公社の側の人間、そして敵対する五共和国派側、それぞれの過去や想いが複雑に糸のように絡み合う群像劇は、否応なく悲しきクライマックスの舞台へと向かっていく。

けみかけ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1

イル・テアトリーノ=廻る舞台 原作遵守の群像劇としての再スタート そして注目してもらいたい「第8話」

ご存知の方も多いように制作スタジオ、スタッフ、キャストの総入れ替えや原作者の脚本参加といったことで1期(以下無印)とは別物に成り果てたIL TEATRINO(以下イルテア)



それは色彩設計や撮影効果が明る過ぎだったり、銃器監修がいるはずなのに戦闘シーンが大雑把だったり、わざわざイタリアロケに行った割には背景がショボかったりとかで、単純に「クオリティが低かった」の一言で終わってしまうかもれません

しかしむしろ無印との比較で、無印とイルテアでは画面的な「リッチさ」はもちろんのこと、如何にして無印が上手く演出されていたのかと気付かされる点も多いです



問題はここからで、このイルテアがガンスリという作品の「別の二つの側面」を妙な形で照らしてしまったということにオイラは見ます



まず一つ目が「群像劇」という面について

無印では大胆に時系列をずらし込んで導入話を作ったり、バラバラな視点のエピソード達を最終的に全てがヘンリエッタの視点(或いは最終話のアンジェリカの視点)に繋がるように原作をかなり改編して構成していました

これがイルテアでは原作者協力の基、原作を遵守する形の構成がなされたのです

ここで重要なのはイルテアには義体少女でも担当官でもない主役格が現れるというところ

それが第2話から登場し、生身で義体と張り合う青年用心棒「ピノッキオ」

彼は完全に敵側の人間であり、彼の視点から見ると義体少女側は仲間の命を奪う非情な存在として描かれるのです

主役側と敵側の視点がほぼ隔週話の間隔で切り替えられながら描かれた今作は、単純に悲劇を背負った義体少女への情の念だけで視聴することを良しとせず、良くも悪くも無印に見られた「お涙頂戴モノ路線」から脱却します
そして血で血を洗うような物語の本質にある残酷さをより際立せて、ガンスリの世界観全体にそこはかとなく漂う「潜在的な不快感」を駆り立てました

結果としてこの物語の真の主役が果たしてピノッキオだったのか、ピノッキオと対峙したトリエラだったのか、或いは(あえて無印からの続編と考えるのであれば)ヘンリエッタだったのか

「誰にも肩入れしない勝者無き物語」はなにひとつまとまらないうちに終わりを迎えてしまいます
この点は端的に構成力不足を感じ、如何なものかと思いました



もう一つの面が少女の殺し屋というキャラクターに対する「シニカルホラー」的な面

画面が明る過ぎるという指摘が見られるように、この作品の重いテーマとはあまりにギャップがありすぎる色彩や撮影効果

さらには新人声優の多数起用で、あまりにフレッシュすぎる義体少女役の演技など

少女達の幼さを強調するあまり、いざ彼女達が「人殺し」を始める様は、それはあまりに冷酷で目を背けたくなります

これに関して特に印象的なのが、リコが拷問のために命乞いをする大の大人をタコ殴りにして返り血を浴びるシーンやトリエラとピノッキオの最終決戦など

義体少女が命令のためなら冷酷な殺人マシンと化す様は、さながら悪趣味なバイオレンス映画にも近い

思えば無印では、悲しげな目で相手に銃口を向けたショットで終われば=殺害
とか
義体少女達が過去に遭った、レイプや暴行などの陰惨な境遇をあえて描写したりはせず、少し遠まわし気味の会話の中で説明するとかしたものです
これらショッキングな表現や直接的な言葉を用いずとも、それとなく魅せる演出が無印には光っていました



以上の2点はガンスリという作品を語る上で忘れてはいけない「刺激」的な要素であり、この点に強く惹かれた視聴者(読者)も多いことであろうと推察します

そして同時にイルテアが強く照らし過ぎてしまった、「ガンスリという“麻薬”が持っている毒素みたいなモノ」でもある、と解釈していただければ幸いです



さて長くなってしまったがオイラがここまでイルテアにムキになる理由が一つあって、
ずばり言って「第8話がネ申回」というところにあるのです

第8話のサブタイは「クラエスの一日」

ご存知の通り、義体少女の一人クラエスは施設の外には一切出ない一見すると不自由な暮らしをしています
が、彼女は施設の中で本を読んだり、家庭菜園を嗜んだり、映画を見たりする生活を送っています

そんな彼女の「限られた世界での無限の自由」というものを淡々と描くのがこの第8話なのです

ある日、いつもと同じ毎日を過ごしていたクラエスが、めったに足を踏み入れない射撃訓練場に入るとそこには、担当官ジョゼに指導されながら射撃訓練をするヘンリエッタの姿がありました
そこで薄っすらと浮かんでくる、彼女が無くしたはずの記憶・・・

無印でのクラエスのエピソード(無印:第5話)の直接的な続編とも言える珠玉のエピソードであります

この回では当然のこと戦闘シーンなどは無く、丸一日かけてクラエスの私生活を追うだけの、言うなれば暗い雰囲気の日常系アニメのよう

しかしながら無印に限りなく近い印象の何かをオイラは受けました

クラエスを担当する声優は水野理紗
そして彼女の担当官ラバロ役は堀内賢雄
おわかりいただけますでしょうか?
彼女達はほとんど皆無と言っていい「無印を経験している役者」なのです

多くのキャラクターが、無印とは別の印象を受けるのに対し、クラエスとラバロだけは地に足の着いた落ち着きを感じるのはそんなところにもあるのかもしれませんね

投稿 : 2024/06/01
♥ : 30

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

あなただけは守り抜く。そのために私は生きているのだから。

「GUNSLINGER GIRL(ガンスリンガー・ガール)」の2期です。

1期は主要キャラである女の子たちの掘り下げ、
2期はテロリストとの戦いの物語が進行します。

1期から制作会社が変わり、
キャラデザや声優も一新されています。

1期だけで物語はまとまっていたので、
2期の視聴は迷っていたのですが、
物語は2期の方が楽しめたので、観てよかったです。

2期は全13話です。


● ストーリー
イタリア政府が、障がい者への様々な支援を行うという名目で設立した「社会福祉公社」。

その実態は、重体の患者(少女)に義体を与え、条件付けと呼ばれる洗脳で過去の記憶を消し、公社と担当官に対する絶対服従を命令するもの。

そうして義体の体を手にした少女たちは、
担当官を守り、命令に忠実に暗殺等の政府の闇の仕事を遂行する。

殺すことに何の抵抗も後悔も持たない。
ただパートナーのために、銃の引き金を引く。

それが自らの生きがいだとして…。


1期は社会福祉公社で活動する少女達について、
一人ずつ時間をかけて掘り下げられていましたが、

2期は犯罪やテロによってイタリアを恐怖に陥れる、政府の敵にあたるテロリスト集団“五共和国派”との戦いが軸となっていました。

その中でも、殺し屋のピノッキオという青年の物語が主軸となります。

今までは社会福祉公社目線で物語を観ていたのが、
ピノッキオ側目線のエピソードも多く、

戦うどちらの側の想いを知っているがゆえ、どちらが正義と決められず、複雑な気持ちで戦いを見守ることになりました。

ピノッキオは、命の恩人であるクリスティアーノのために殺し屋としての腕を磨いて戦い、

社会福祉公社の女の子たちは、大切な担当官のために戦う。

1期では女の子たちの、何も感じず人を殺す様を見ながらも、
任務が無事に遂行されると、うまくいってよかったと、
ほっとする部分があったのですが、

2期ではピノッキオの想いを知っているからか、
女の子たちの任務が失敗することをどこか願っていたりもしました。

むしろ、ピノッキオとクリスティアーノの絆を引き裂こうとする、
社会福祉公社側の方が悪者にさえ見えたり。笑

正義はどちらにあると簡単に決められるものではない。
ただ、お互いに自分の守りたい人たちのために戦っただけ。

1期は、少女たちに対して“やるせない”という想いが強かった。
その思いは2期も変わらない。

それに加え、他のキャラに対しても、同じ気持ちを抱きます。
だからなのか、2期は見ていて、もやもやします。

でも、このもやもやした複雑な気持ちが胸に残るのが、
この作品の魅力なのだろうと思います。

切なく、やるせないドラマが多い作品でした。


● 作画・声優
製作会社が変わったこと、1期の製作から時間が経過していたことなどを理由に、一新されています。

作画は1期の方が好みでした。
ヘンリエッタなど、1期の方が可愛かったなあと思うキャラが数人。

声優さんも、1期の方が好みだったなあと思うキャラが数人いましたが、
ほとんどは違和感なかったです。

この作画と声優の変更を、
1期のファンの方がどう受け止めたかで、2期の評価も変わりそうですね。


● キャラクター
ほとんどは1期と変わりません。

1期ではヘンリエッタ&ジャンがメインでしたが、
2期は出番がぐっと減っていたように思います。

代わりにピノッキオに対して執着するトリエラの活躍は増えていました。

個人的に一番好きなのはヘンリエッタ&ジャンさんでしたが、
2期のヘンリエッタはいまひとつ…。

1期の方が作画的にも性格的にも可愛かった気が。笑


● 音楽
【 OP「たった1つの想い」/ KOKIA 】

この曲は名曲です。

この作品を見ていなくても、
聴いたことがある人もいるかも。

作品にぴったりだし、
大好きな曲です。


【 ED「doll」/ Lia、多田葵 】

歌い手は、話によって変わりました。

麻枝准さんによる作詞作曲なので、
key作品感が増します…。笑

13話のED「human」も好きでした^^


● まとめ
何が正義なのか、何が正しいのか。

この作品を見ているとわからなくなりますね。

だってみんな間違ってないんだもん。
やり方は他にあるとしても。

間違っているのは、
そんな人たちに武器を手にさせる社会の方なのだろう。

自分の大切な人が辛い思いをしないように、
武器を手にして戦う。
そんな必要がないように。

少女たちは幸せだ。
大切で守りたい人のために戦えるから。

でも、もっと違う形での幸せが、
少女達にはあってほしいと願うばかりです。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 17

ビアンキ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

そろそろ再評価されても良いと思うんだ。

ちょっと編集。

2008年頃、アニマックスで視聴。
私がアニメ好きになったきっかけの一つとなった作品で、いまでもそれなりに好きな作品。


第1期も原作漫画も何も知らず、
この第2期だけを見て
「ガンスリンガーガール」が好きになってから、
原作漫画を全て読んだ。
すごく面白かった。

そして原作漫画を読んでいる途中で、レンタルDVDで第1期も見た。



第1期を先に見た多くの方々からすると、逆の感想なのだろうが、
第2期を先に見た私から見ると第1期の方が
「こんなのガンスリンガーガールじゃない!」
と強く感じ、8話くらいで視聴を断念した。

この下に書かれているのは、そんな奴の感想です。
第1期に対する酷評も少々あります。

第1期ファンの方々に先に謝っときます。
申し訳ございません。



さて、
第1期と比べつつ、
本作の感想を書いていく



まず、
この「ガンスリンガーガール・イルテアトリーノ(以降、第2期と書く)」
アニメーションはかなり酷い。

人物の崩れはそんなに多くないものの、動かない。

そして他の、同じく「動かない」作品
(「ガングレイヴ」「EAT-MAN」「おにいさまへ…」など)
と比較しても、見せ方も上手くない。下手くそ。

ただしアニメーションの出来は
第1話が最底辺で、それから徐々にアニメーションのクオリティ(というか作画枚数)は向上していく。

ただ最終回近くでも、2008年製作ということを考えると決してクオリティ高くはないけど…
相変わらず見せ方(絵コンテ・演出)は上手くないし。

しかし本作、欠点はこれぐらいだと思う。
(でも結構デカい欠点だよね…だから作画の評価は低い)




第2期と原作漫画を見た後
レンタルDVDで第1期を視聴した際、
冒頭で書いたとおり私は、
「こんなのガンスリンガーガールじゃない!」
と強く感じた。

そう感じた大きな理由が、
第1期は、
「子供たちが」苦悩し、鬱屈としている話だった
から。

第2期や原作漫画は、
「大人たちが」苦悩していた。
そして子供たち(義体)は子供らしく明るかった。

子供たちは子供たちで苦悩してはいるが、あくまで「子供らしい」苦悩。
現状に苦悩しているのはむしろ大人たちの方。

そしてその「大人たちの苦悩」が本作の見所の1つ。

それこそが、ガンスリンガーガールの世界だと思っていた。

しかし第1期は上記の通り

この第1期と第2期の差が、私は受け入れられなかった。



そしてガンスリンガーガールは、
「明るい世界(光)」がある中での、
「暗い世界(影)」の話だと私は思っている(いた)。

「光」があるからこそ「影」が引き立つ。

しかし第1期では、「影」の世界のみをひたすら描写していた(はず)。
よく第1期は「暗い」と言われるが、
それ以上にメリハリがないので地味で退屈という感想を私は持った。
はっきり言ってつまらなかった。


一方第2期は、
担当官や義体たちが、
「明るい世界」に普通の人間、兄妹として紛れ込み、
兄妹での旅行・外出を楽しみつつターゲットの身辺調査をした後、
「暗い世界」に入り殺し屋としての一面を見せる。
というメリハリが確立されていた。


ひたすら「暗い世界」を描いていた第1期以上に、
このメリハリは、ある意味気持ち悪い。
しかしこの、ある種の気持ち悪さこそが、
「ガンスリンガーガール」の見所の1つであり、また本質だと私は思う。


そしてメリハリがあることによって、シナリオは第1期以上に面白くなったと思う。いや、なった。

このシナリオの面白さは、もっと高く評価されて良い本作の魅力だと思う。




音楽も結構なもの。
オープニング曲「たったひとつの思い」

エンディング曲「doll」
はどちらも、とてもガンスリンガーガールの世界観とマッチした曲でかなり良い。

特にオープニング曲は、
現状決して評価が高いとは言えない
本作のオープニング曲でありながら、
「ガンスリンガーガールの代表曲」的な扱いを受けるほどの出来。

劇中の音楽も、「すごく良い」とは言わないまでも
それなり。
充分聞ける出来。




アニメーションは確かに酷い出来だが、包括的に見て「秀作」と評価したい。
是非とも再評価されてほしい作品です。
アニメーションの酷さに耐えられる方は、是非見てみてください。


下手くそで纏まりのない文章、お読み頂きありがとうございます。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 13
ページの先頭へ