不気味でシュールなおすすめアニメランキング 6

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの不気味でシュールな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月05日の時点で一番の不気味でシュールなおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

77.0 1 不気味でシュールなアニメランキング1位
シリアルエクスペリメンツ・レイン[serial experiments lain](TVアニメ動画)

1998年夏アニメ
★★★★☆ 3.7 (878)
3876人が棚に入れました
コミュニケーション用コンピュータネットワーク端末「NAVI」(ナビ)が普及した現代、中学生の岩倉玲音は、死んだはずの四方田千砂からのメールを受け取る。その日以来、玲音は見えないはずのものを見るようになる。四方田千砂のメールの言葉に興味を持ち、大型の「NAVI」を手に入れるが、それ以来更に奇怪な事件に巻き込まれていく。物理世界(リアルワールド)と電脳世界(ワイヤード)、二つの世界・二人の玲音(lain)が混濁し錯綜する果てにあるものは? 「人は誰しも“繋がれて”いる」「私は遍在する」

タケ坊 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

観るものを究極に選ぶ作風の前衛カルト作品 

視聴後これは何か書かないといけないという使命感に駆られた本作ですが...
一体何から書けばいいんでしょうね。。
この作品に関して自分ができるネタバレ無しのレビューを書くという事は、
非常に表面的で浅い駄文になってしまうとは思いますが、
今更この作品に関しての新たな考察、など自身の見解を書くことに意味は無いだろうと感じるので、
本作を観たことが無い人、興味はあるが観てない人、にどんな作品かが伝わるように、
率直な感想を書いてみようかと。


色々なところで「難解アニメ」の代表ともいうべき扱いをされている本作ですが...
あにこれの成分タグでも「難解」ランキング1位。
確かに言われている通り難解だと思います。

自分は視聴前にある程度そういう情報を得て視聴に臨んだので、
講義を受ける要領でメモを取りながらの視聴となりましたが、
(視聴間隔が空くと難解なものはより訳が分からなくなるので)
正直一度目の視聴では物語のごく表面的な部分のあらすじをたどるくらいで、
本作の本質やメッセージには辿り着いておらず、なんとなく解った気になっていたつもり、で居ました。。

その後やっぱり気になって、本作に関する考察のサイトを読んだりして、
なんとなく解っていた、と思った部分も言葉で説明されることによって、
より具体的に頭を整理することができました。
(今思えば止めときゃ良かったなと思います。というのも、どうしても観る時に意識しなくても、
他人の考えや意見に左右される面があるので。この作品は特に自分で考え想像し、
頭を悩ませる事自体が醍醐味だと感じるので)

そして、2回目の視聴。
この時も1回目の視聴で足りなかったと思う部分のメモ書きを追加しながらの視聴となりましたが、
1回目の視聴では最終話観ても「ふ~ん」って感じであまり感じるものがなかったんですが、
2回目の視聴では全く異なった印象で、感慨深く観終えることが出来ました。
まぁそれでも最後までぶつ切りで観るものを感動させるようなベタな演出は一切無しなんですが笑
この辺りが本当にカルト的であり、万人受けなんか全く狙っていないというのが逆に清々しく思えます。


本作がなぜ難解なのか?と言うと、まぁ1話観ればすぐ解るとは思うんですが、
殆ど具体的な説明という説明がなく(後半に矢継ぎ早に唐突に説明されるものが一般人にはおよそ馴染みのない、
シューマン共鳴やら、ザナドゥ計画、ロズウェル事件などのカルト的なものだったりする)
設定自体もかなりマニアック、表現が抽象的であらゆる出来事が唐突に感じ、
現実なのか幻覚、幻想なのかさえも判らないような描写や台詞だったり...
場面場面の切り替わりや各話の引きも毎回ぶつ切り、
終始まぁそんな感じで展開するんですよね。。

なぜそんな描き方をするのか、作品をある程度理解すればそれなりには納得できるんですが、
普段放送されてるような作品とは全く異質なものと言えるでしょうし、
そりゃ1回観て理解しろ、という方が土台無理な話。。
今ならこんな作品を作ったら大目玉食らいそうですが、当時は今ほど円盤売上至上主義の風潮がなく、
ある程度自由な製作環境だからこそ作れたのかもしれません。
いやはや、こんな作品が世に出てきたというのはある意味奇跡的とも思えますね。


で、まだこれから観るという人へのアドバイスとしては...
本作を理解するためには、とにかくまずはシンプルに何が起こってどうなったのか、だけ、
細かい部分はあまり気にせずに観ていくのがいいでしょう。

もっと言うと、結局主人公レインとは一体どういう存在なのか?レインは何をやったのか?
もう一人の重要人物である英利政美はどういう存在で、何をやろうとしたのか?
この辺りだけに集中して観ていけば良いのでは、と思います。
それを踏まえたうえで、一体本作が何を言いたかったのか?ここを考えれば良いのではないでしょうか。
人によっては解釈が異なる事もあるかと思いますが、
本作の醍醐味はテーマ&メッセージの意味を自分なりに解釈することにあるんだと思います。

でもまぁ正直言うと、自分はこの作品を観るのはかなりしんどかったですね笑
混乱する頭を整理し、想像力で補いながら毎話観ていかないといけないし、
終始どんよりとして陰鬱な雰囲気に包まれているんですから。

ハッキリ言ってしまうと、観ていて全く楽しくはないですね笑
それでも、惹きつけられる魅力があり...また観たくなる。。
自分はこの作品の「物語」に関する評価としては、
今まで観たアニメの中でも最高評価に値する作品の一つであると思っています。

よく言われていることですが、やはり当時まだインターネットが今ほど普及していない90年台後半に、
(自分がパソコンを初めて購入してネットにダイヤルアップ回線で接続していた頃)
SNSが普及し世界中のあらゆる人同士が繋がり合うようになった現在のインターネット世界を見据えた、
先見性のある内容は特筆すべき点であり、またさらにその先をSFで描いた内容は、
時代を先取りしすぎている、とはまさにその通りかと思います。

恐らく放送当時観た人はなんのこっちゃ?という印象しか持たなかった人が多かっただろうと推測しますが、
時代が本作で描かれている内容に追い付いてくるにしたがって、
どんどん評価が高まってくる、こういった作品は本当に珍しいと言えるでしょうね。

昨今ではインターネットを題材にしたような作品も物珍しくはなく、
大抵はネットゲームの世界に入ってどうのこうの、といった内容ばかりで正直オリジナリティに欠ける印象を持ちますが、
本作はワイヤード(今で言うインターネット、ネットワーク)と現実世界、
2つの世界に於ける「情報」や「記憶」「存在」「繋がり」、
などといったある意味概念的な側面に焦点を当てて描かれており、
カルトな作風含め、唯一無二のオリジナリティを持った物語として、
観る者の好き嫌いは別にして高く評価されるべき作品だと思います。


☆声優☆

レインの声優さんに関しては客観的にみれば演技が上手いとは思いません。
というのも、演じている清水香里さんは当時現役中学生でこの作品がデビュー作なんですよね。
制作側が敢えて「不安定」な存在であるレインを演じさせるためにオーディションでかなりの人数の中から抜擢した、
というのを制作秘話として何かで読んだことが有ります。
収録はかなり大変だったようですが...制作側の意図が解ると納得できるキャスティングだと思います。

その他、速水奨さんや中田譲治さんのようなベテラン実力派も起用してバランスを取ってますが、
子役の演技には少々難があるように思います。


☆キャラ☆

この部分の客観的な評価は難しいですね。
キャラそのものが物語、と言っても過言ではないような気もしますし。。
極端な話、観方によっては1点か5点どちらでも間違いはないようにも思います。
レインに関しては、こんな登場人物の描かれ方をした作品は自分の知る限りは思いつかないので、
敢えてそこを評価して5点としたいと思います。


☆作画☆

セル画アニメの晩年期にあたる作品ですが、
自分の観たものは恐らくOPに関しては色彩が鮮やかで、後に?デジタル化されたものなんじゃないかなと思います。
作中は如何にもセル画な絵柄ではありますが、ところどころ実写映像を挟んだり、
ちょこちょこと実験的な試みがなされているように思います。 

人物の描き方(特に引きの画)などは、やはり現在のものと比べると劣ります。
背景に関しては独特の暗さ、陰鬱さをよく伝えるもので、
張り巡らされた電線など、個人的には好きですが、結構同じ場面を使い回したりもしてますね。
(OP後のシルエットと自動車の場面、たぶん敢えてやってるんでしょうけどね)
恐らく当時としても予算的にはたぶんそこまで掛けれなかったのかもしれません。


☆音楽☆

OPのインパクトは数あるアニメの中でも上位に来るものだと思います。
歌詞も抽象的でありながら、レインを歌ったものであるというのは、OPアニメーションからも明らか。
ていうか、あのPlesent Day,Plesent Time Hahahaha...ってのが頭から離れませんね笑

これに対するEDは、個人的にはなんで?と思う選曲。。
制作側の好みが濃く反映されてそうなブルース系の曲。
渋いけど歌詞含めてどうもあまり作品には合ってなさそうな気も...

作中BGMはハウリングのような電気的なノイズ、ギターのノイズなど、映像と相まって暗さと陰鬱さをより助長してますね。
まぁこの辺も低予算なんだろうな~と思いますが、如何にもなカルト臭がしますね。


純粋なクオリティー面は高い作品ではありませんが、
逆に言うとあまり綺麗でゴージャスに作っても、このカルト的でイッちゃってる作風には合わないような気もします。

オススメかと言われると、「すべての人にオススメ」とは到底言えません。。
今敏監督や幾原邦彦監督作品のような難解系のものが好物の人にオススメしたいですが、
有名な作品ですし、まぁそういう人は既に観ている人が殆どでしょう。。

色々な作品を観て、王道的なアニメは展開が読めるし飽きたなぁ、くらいに思ってる人が観た方が良いでしょうね笑
しかしながら、観るならある意味本気で理解しようと思って観ないと、ハッキリ言って時間の無駄です。
一切笑いもないし、楽しくもありません。終始暗く陰鬱です。
ギャグも萌えもありません。
大多数の人にとっては面白く無いでしょう。

でも、面白く無いからといって、つまらない作品であるとは思いません。
今まで観てきた作品の中でもただ単に「感動した」、とか「泣ける」、とかいう類のものじゃなく、
心から「これは凄い」と思える数少ない作品の中の一つですね。
(成分タグの最多が「鬱」となっていますが、観方によっては感動的な物語、とも受け取れると思います)
日本より海外のコアなアニメファンには非常に高く評価されている作品ですが、
人によっては人生最良の一作になりうる、そんな魅力が詰まっていると思います。

ある意味究極に観る者を選ぶ作風なので、名作とは言えませんが90年代を代表する傑作だと言えるでしょう。
因みに本作は「文化庁メディア芸術祭 優秀賞」(1998年度)を受賞しています。

※追記※

ずっとどっかで似たような雰囲気のものを味わったことがあるなぁ、と思ってましたが、ようやく思い出しました。
つげ義春の「ネジ式」「ゲンセンカン主人」辺りの前衛的な漫画ですね。
(絶対製作陣は影響受けてると思う笑)
たぶんつげ義春の世界観にハマれる人なら、本作を観て損はないでしょう。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 14

みかみ(みみかき) さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

問題意識は、攻殻S.A.Cにほぼ引き継がれているのでは

 2004年ぐらいになってから、人から「見ておいたほうがいいよ」と言われて視聴。

 うーん。
 「難しい」っつーか、文脈の提示の仕方が全体にフリーダムだな、っていう印象。
 だから、まあぶっちゃけ、筋を解説されないとさっぱりよくわかんなかったんだけれども、まあ、この手法の問題はさておき。確かに、けっこうグネグネとした問題意識も背景にはありそうなんだけれども。…

(注:下記、読み手に対して、非常に不親切なテキストになっております。)

 ただ当時、思ったのは「うーん、ヘーゲルとサイバーパンクが好きな人とかがつくったのかな。ヘーゲル的世界観によって、サイバースペースの到来を、予見しなおすとこんな感じになるのかしら」みたいな感じ。あとから、小中 千昭さんは、クトゥルフ好きでもあるということ聞いて、なんか納得。そうですか、と。
 他の方も書いているように98年でこういう想像力をもちえていたのは、確かにすごいのだと思います。

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 で、下記、作品の演出とかそういう問題はぜんぶすっとばして、単に思想的評価だけのはなしですけれども、
 わたしの見立て=「特殊なヘーゲル的世界観によるサイバースペースの未来予見」という感想をベースに強引に考えをすすめてしまうと、基本的には、この作品で描かれようとしていた問題設定は、『攻殻S.A.C』のほうで、ほぼ見事に発展的に描写されおえている、と言ってしまって問題ないんじゃないでしょうか。
 一言で言ってしまうと「ベースとなる概念がちょっと古いんじゃないの?それ」ということを思ったということです。サイバーパンクとか、SF的世界観は新しいところを衝いていたとは思うけど、仮にヘーゲルが下敷きだとすると、それはちょっとなぁ…みたいな。

 も少し、長く言うと「インターネットだとかの情報システムによって、社会の構成が変化する」とか「様々な人が、<なぜか>同一の行動をとりはじめる」ということを説明するためのモデルに、ヘーゲルの想像力をベースに使うか、複雑系とかの想像力をベースに使うか、というところで。
 lainは、(たぶん。たぶんだけれども)200年前のえらい哲学者であるヘーゲルあたりが下敷きで。
 攻殻S.A.Cは、(これも、たぶんだけど)比較的あたらしい複雑系とか、サイバーカスケードの議論とかを一定程度踏まえている感触。

 わたし、古典をきちんと読んでない人なので、古典をきちんと読んでるようなスーパー教養人だと、古いものをベースとすることの意味まで含めて味わったりできるのかもしれないけれど、わたしはそこまで舌が肥えてないので。
 えー、うーん、古くしか見えないわぁ…みたいな。

 まあ、あと、ヘーゲルっぽいけど、ヘーゲルそのものでもないだろうというのも、あって。そこらへんが、まあ、こういうもの評価するときに、こういう話もちだすとめんどくさいところもいろいろあるんだけれども…
 

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下記、もうちょっとだけ、詳しいコメント
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 たぶん、この作品の問題意識を「古い」と感じるかどうか、というのは、おそらくヘーゲル的歴史観を古いと感じるかどうか、みたいな論争と、おそらく一緒なんじゃないか、と思っています。
 わたしは、そこらへんの論争の非常に込み入った話は、正直ものすごく遠巻きにしかわかってないので、けっこう表層的な理解かもしれないけれど、わたしの理解の範囲で、キーワード散りばめる程度に、少し書いておきます。



 ヘーゲル大先生は、200年以上も前に「時代精神」とか「世界精神」って言っていたわけです。
(ここらへんは、興味ある人は、「ツァイトガイスト」とか「ヴェルトガイスト」とかでググッてみて、よくわからんと思ったら、ヘーゲルの入門書を図書館で手にとってください。わたしもあまりわかってませんので)

 で、ヘーゲルのそういう話って、ある種の歴史記述とか、巨大な「世界史」みたいな運動記述としては、確かに200年前の時点だと「イイわ、コレ」みたいなところがあったとは思うのですよ。今みても、さすが、ヘーゲル先生するどい!みたいなところは、あるとは思うんだけど。200年前は、資本主義経済とか、出版文化とか、その手のテクノロジーや制度の変化によって社会メカニズムが高速に変わっていくことを説明する概念がなかったので、その時はすごくよかったんだと思うんだけど…。
 でも、それって要するに現代の理論的にはいえば、進化ゲーム理論とか、生態論のメタファーあたりをコアにして議論されている、カスケード・メカニズムの話とか、文化の生態論的な発展プロセス記述とか、そういうもので代替可能な議論になっちゃっているんじゃないのかしら?素朴に。もう、ヘーゲル的な歴史記述とか、世界把握の仕方は限界含みな感じがありありと出てきてしまっているのでは?と、わたしは思っているわけです。…わたしは思っている…というよりか、まあ、別にそう思ってる人はわたしだけじゃなくて、ものすごくたくさんいるとは思うけど…。



 ただ、この手の議論の難しいのは、Вистерияさんが書いているリチャード・ドーキンスの「ミーム」みたいな話を持ちだされると、ミームの話って、ある種ヘーゲル的な発想を、現代の比較的新しい理論と接続しているような印象があるので、わたしが先述したような、「古い理論 vs 新しい理論」みたいな対立構造は難しくなっていて、すごく評価に困るんだけれども。
 まあ、ミームの話もわたしは話半分ぐらいしかよくわかってなくて、「ミーム」という説明形式を採用することによって見えてくるものもあるとは思うんだけど、なんか「ミーム」って概念としての使い方が、まだなんかちょっと難しいつーか、提唱してる人たちは細かいロジックを構築してるとは思うんだけど。なんか、細部の概念の彫琢の仕方がよくわかんないです。



 わたしも、この手の社会/文化生成プロセスの説明理論についてガチで興味あるわけでもないので、ヘーゲルと、アクセルロッドと、ドーキンスが全部好きです!(+サイバーパンクも好き)みたいな人がいたら…というか、それはもはや、何かの専門家みたいな人だと思うけど。そういう人にlain見せたら、なんか、面白いコメントしてくれたりするのかも?
 まあ、わたしも、これ書きながらヘーゲルとか、ひさびさに勉強しなおしてみようかな、みたいな気分にはなった。

 lain好きの人は、まあとにかくそこらへんの論争フォローしてみると、たぶん、面白いと思います。


追記:
・適当に、「serial experiments lain」「ヘーゲル」でググってみたところ
 あんま、ヘーゲルと絡めて書いてる人だれもいないのね…わたしの見方が偏ってたんだろうか…うーん

・「『攻殻機動隊 Ghost in the shell』の話のほうこそ、ヘーゲルのガイストの話じゃんか」と書いてらっしゃる方がいて、ああ、そういう見方もあるのね、と思った。
 まあ実際『攻殻機動隊 Ghost in the shell』のゴースト概念はけっこう適当なので、『lain』の批判対象として機能するのは『攻殻S.A.C』のほうだと思います。

・あと、lainの命名の由来は『引き裂かれた自己』のロナルド・デイヴィット・レインなのか…。じゃあ、何、基本的には精神分析系のメタファーでこれ作ってんのか?いや、でもサイバースペース全般の話かいてるんだから、やっぱり、精神分析=個体の話がベースなので、社会的なメカニズムの話にメタファーひろげると、それはやっぱりヘーゲルに見える…のはそんなに変じゃないと思うんだけどな…。

・あと、アンサイクロペディアの解説が一番おもしろかった。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 11

hiroshi5 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

LAIN Complete Review: The meaning of existance

非常に難しい作品です。多分、満足いく理解など一生得られないのでしょう。
シーンが所々なんの因果関係も無くぶっ飛んだり、訳の分からんセリフを放ったりと、もうなんのこっちゃ。
またストーリー自体突然の神の出現で一気に世界観が歪みますし。

そんな難解な作品なんですが、メッセージ性は非常に強いです。
一番注目するべきはこの作品が面白いか、理解できるものかではなく自分なりに作品のメッセージを把握して実生活に生かすことだと思います。


☆物語
簡単な物語の説明をしましょう。
レイン(またはlain、玲音)は人間の自立進化を成し遂げる為に作られた実験用プログラムです。ワイヤード(現代でいうインターネット)上に完全なる自意識を具現化することができれば、我々は肉体という原始的障害を乗り越え全人類で共感という総合的意識で束ねることができるのではないか?というのが現代の自立進化です。

自立→肉体からの解放です。

レインは自我を持たないワイヤード上に存在する普遍的存在でした。それをどこかの科学者が肉体を構築し、そこに玲音という自我を入れた。

レインはワイヤード上の普遍的存在(作品上の定義では「神」となっていた)で、玲音はリアルワールド(現実世界)に存在する一個人です。

実験では玲音にワイヤードの接触させ、玲音がレインと同一化した時に起こる自我の形成という点を研究したかったのだと思われます。

しかし、本編で実際の起こったのは完全なる「神」の出現でした。

現実世界にある筈の自我の意識というものをワイヤード上に完璧に具現化できるようになると、情報操作どころか人間、歴史の改竄ができてしまうということでした。


これの理由はシューマン共鳴とミームにあります。シューマン共鳴(共振)とは地球の地表と電離層の間に存在する電磁波みたいなものです。
本編ではこの共振を電線が常に微量の音を発するということで表現していました。

ミームとは自己複製子の可能性としてかの有名なドーキンス氏が定義した一種の理論上だけで存在する総合意識のようなものです。遺伝子とは似て非なるものです。
ミームは人間の進化に関わってきたとされるもので、自然淘汰から生まれる遺伝子の適応性(ダーウィンの進化論)以外にも人間の総合的に左右する無意識下での伝達があるのではないか?という仮説から生まれました。

簡単な例を「ジーパンを履く」という風習を使って説明しましょう。有る時期に人がジーパンを履くようになった。これをミームを使って説明すると以下の様になります。

『1840年代後半のアメリカで「ジーパンを履く」というミームが突然変異により発生し、以後このミームは口コミ、商店でのディスプレイ、メディアなどを通して世界中の人々の脳あるいは心に数多くの自己「情報」の複製を送り込むことに成功した。』

この人間の無意識下で影響を及ぼすミームというものがシューマン共鳴によって引き起こされていると考えるとどうでしょうか。
そしてワイヤードというインターネットが己の自意識を具現化できるようになるというのはネット上にミームを展開できるということです。

そして、ミームはシューマン共鳴で繫がっている。つまり、自分の脳内でネットの接続できるということです。
レインが最終的に本編でしていたことは自我というものを全人類の中に偏在化させ、情報操作をするということです。
これが、レインは神だと言われる所以です。


この作品が理解しにくい理由として「世界観」というものが挙げられます。
レイン(主人公)が特別な存在であった為見る側にもその変な世界観がダイレクトに伝わってきます。

一つ簡単そうで簡単じゃない本編に関係する思考を提示してみましょう。
「あなたたちすべてが私の自己だ」
これはユングが彼の生徒に自己の概念の説明に使った言葉です。
己の自我というのは自分に服するものであり、それ以外の何ものでもないと考えるのが普通かも知れませんが、ユングは自己などという意識を超えた存在を仮定しました。

あなたは、自分の意識、意思を自分のものだとどう証明しますか?

自分が自分がここにいるなんて普段考えませんが、ちょっと考えてみると意外と面白いものです。一つの考え方として存在は「認識」によって生まれるという説があります。

例えばあなたの目の前に「机」があったとする。あなたはそれを「認識」して、机だと判断する訳なんですが、この机をもし透明にしたらあなたはそこに机が存在すると分かりませんよね?透明ってのは物理的には存在してるんですけど、人間に五感では感じられないという意味で言っています。

別の例を出しましょう。ある誰もいない森の中で松ぼっくりが落ちたとする。しかし、それを誰も見てもいなかったし、音も聞いていなかったとする。では、松ぼっくりが落ちたというのは事実なんでしょうか?「認識」されなければそれがたとえ本当に落ちたとしても「現実」という世界の中では表現されないんですね。

つまり、人間が「認識」したものが個人の世界である。そして、その「認識」されたものを人間の総合的な意志として集約させたものが「現実」です。

これは科学的には裏づけされている話でもあります。粒子力学の世界ではアトムより小さい単位を研究するにあたってある現象を観測しています。トンネル現象もその一つで、物理的に通るはずの壁をその極小の単位がすり抜けることです。他にもその単位が急に消えたり観測できなくなったりと、「認識」による観測だけでしか仮定できない現象が起こります。
有る意味「認識」によって物体の存在が肯定されるというのは間違いではないんですね。

で、このセオリーがどうこの作品と関連付けられるのかというと、色々あり過ぎてちょっと説明できないかもです・・・汗
神の存在は認識から肯定できるのか?だったり意識を具現化したときに「認識」の定義はどうなるのか?など、この作品自体オカ
ルトなので様々な方向に広げていくことができそうです。

そこら辺は視聴者の皆さんにお任せしますねw

難しくて理解出来ない作品ですが、私にとってアニメの可能性というものを教えて貰った作品でもあります。やはり、こういう実験作みたいなものを表現する媒体としてはアニメが一番優れていますね。

皆さんも一度、レインの世界に浸かっては如何でしょうか。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 11

70.5 2 不気味でシュールなアニメランキング2位
妄想代理人(TVアニメ動画)

2004年冬アニメ
★★★★☆ 3.6 (795)
4181人が棚に入れました
『妄想代理人』(もうそうだいりにん)は、マッドハウス製作の今敏監督によるアニメ作品。
疲れた現代社会を癒す人気キャラクター「マロミ」をデザインした鷺月子は、ある夜、通り魔少年バットに襲われた。
突如世間に現れた少年バットは次々と人々を襲いはじめ、市井の人々を恐怖へと陥れていく。しかし、幾人も被害者が出、多くの目撃者がいるにも関わらず、少年バットは一向に捕まりそうになかった。刑事猪狩慶一と馬庭光弘は捜査を進める中、被害者の持つ不思議な共通項に辿り着くのだが…。


声優・キャラクター
能登麻美子、桃井はるこ、阪口大助、飯塚昭三、関俊彦、槐柳二、京田尚子、内海賢二、陶山章央、山口眞弓、中嶋聡彦、水樹奈々、藤原啓治、三石琴乃、津村まこと、郷里大輔
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

今敏監督唯一のテレビシリーズ

 初見でした。全13話。
 今敏監督らしさとらしくなさの入り混じった作品でした。
 私は今敏監督をかなり高く評価していますが、この作品に関しては少し冗長な感じがあったと思います。今敏監督が作る映画は、2時間でも到底終わらないような分量を90分ほどに押し込めることで、圧倒的な密度を持っています。この作品ではいろいろなパターンの話がありますので、全編を通して密度が高いというわけではありませんでした。明らかに話数を維持するための話もありましたからね。だから悪い、というわけではないんですけど。
 ただ、映画とテレビシリーズはメディアが違いますから、映画では出来ない各話の継続性や連続性みたいなものは、かなり意識的に作られていましたのだとは感じました。
 最初の2話と最後の2話は非常に良かったです。


月子のエロさ(全ての元凶)※ネタバレ要注意:{netabare}
 第一話を見たときから思っていたのですが、月子ってなんかエロくないですか? 体や性格が女っぽいというのではなくて、なんとなくエロい。ここに同意を得られるのかは分かりませんが、私は全ての元凶を知った時にその理由が分かったような気がしました。

 すべては月子の狂言が始まりだったのですが、その狂言の原因とも言えるのが「腹痛により愛犬のリードを手放し、愛犬を事故死させてしまったこと」です。
 月子は、父子家庭において厳しくしつけられて育った子です。そのため、父親に真相を打ち明けることができず、架空の犯人をこしらえてしまいました。一体何が打ち明けられなかった真相なのか?

 月子が打ち明けられなかったのは、「自分の不注意で愛犬を事故死させてしまったこと」ではありません。その不注意の原因である「自分に腹痛が起こったこと」です。
 千と千尋のレビューでも触れているのですが、「思春期に入りたての少女の腹痛」というのは「初潮・生理」を記号化して描いたものです。月子は初潮を迎え、そのために腹痛が起こったのです。そして、その痛みからリードを手放してしまいました。父親に「自分の不注意で」リードを手放したことを打ち明けると、なぜ不注意が起こったのかを説明しなければなりません。月子は「生理が来たから」とは言い出せないために、「あいつのせいで」リードを手放したことにしてしまったのです。

 「思春期に入りたての少女の腹痛」だけでも、「初潮・生理」の記号として十分機能するのですが、今敏監督はこの腹痛が「生理」であることをきちんと説明しています。愛犬マロミの血が流れるシーンです。
 このシーンでは、血が縦方向に流れています。あたかも壁を這う血のようにも見えるのですが、事故の現場は開けた大通りですから、周囲に壁はありません。「道路に沿って横に流れる血」をわざわざ「縦に流れている血」のように見せたのだと感じました。これは、「月子から流れ出る血」である「生理」とリンクするための描写だったのだと思います。

 つまり、全ての元凶というのは、「愛犬マロミの事故死」ではなく、「月子の初潮とそれを言い出せない父子関係」にあったのです。今敏監督が月子を女として描いていたから、エロく見えたのかもしれないな、と思いました。
{/netabare}

「ア=?」「アニ?」:{netabare}
 最後の記号の羅列に関して、どのような見解があるのかを調べてみたのですが、ループ説を採る「ア=?」派とメタフィクション説を採る「アニ?」派があるようですね。私としては、どちらか一方ではなく、両方が正解だと思っています。

 この記号の羅列を数式として見ると、第一話で登場したものと全く同じものですから、第一話へのループを描いたという「ア=?」派の見解は正しいものだと思います。そもそも第13話の次回予告が妄想代理人の全話に係るものですからね。否定のしようがないでしょう。

 ですが、「ア=?」だからといって、「アニ?」すなわち「アニメ」が否定されるとは思えません。そもそも今敏監督は、分かりやすいエンディングの解答を用意する方ではありません。これはどの作品を見ても同じです。「ア=?」を明らかにした以上、それを隠れ蓑にした別の解釈も用意していたと考えるのがいいように思えます。

 アニメ制作回に「鰐淵良宏」なる演出家(だっけ?)が出てきます。この人物は、第2話の絵コンテを担当者としてもスタッフロールに出てきています。つまり、アニメ内の架空の登場人物が、現実の妄想代理人のスタッフとして名前を連ねていたということです。
 この「鰐淵良宏」なる人物について、妄想代理人のwikiには、「2話の絵コンテ担当の鰐淵良宏は実在の人物ではなく、10話「マロミまどろみ」に登場する架空のアニメスタッフの名前。実際は今が担当していた(DVD6巻収録コメンタリー「妄想ラジオ」より)。」と書いてあります。つまり、今敏監督がアニメ内に登場していたということ。これは、劇中の製作者が妄想代理人の製作者でもあったというメタフィクションの要素です。

 また、フィギュアオタクの人が出てきますが、彼は当初、作中作のフィギュアを愛でていました。その後、妄想代理人の登場人物のフィギュアを制作しているシーンが出てきます。こちらも、作中の視聴者が妄想代理人の視聴者でもあったというメタフィンクションの要素です。

 つまり、どちらもアニメの世界と現実の世界のリンクを描いたメタフィクションになっていたということです。したがって、この作品が「アニ?」すなわち「アニメ」であるという解釈は、これらがフラグとなっていると考えれば、メタフィクションの締めとしては合理性のあるものだと思われます。

 この作品は、他の今敏監督作品よりも社会風刺的な部分が色濃いですが、風刺を作品内で見せるにとどまらず、現実とのリンクをメタフィクションとして見せることでより説得性を持たせようとしていたのだと私は考えています。
{/netabare}

 というのが、当初書いていたレビューの抜粋です。長いので大半を削りましたが、「千と千尋で書いた」という文言だけを加筆しておきました。妄想代理人も他の今敏監督作品と同時期(去年の夏から秋ごろ)に視聴して、レビューも用意していたのですが、当時は映画のレビュー以外載せる気が無かったので掲載していませんでした。まぁお蔵入りさせたまま忘れていたわけですが…。
 で、最近「KON'S TONE」という今敏監督のオフィシャルサイトを発見したのですが、その中で今敏監督自身から大変興味深い指摘がなされていたので、それについて一部をご紹介したいと思います。
 このレビューでは主に月子についてのみ触れます。全て引用ですが、※だけは私のコメントです。


妄想の十三終わり無き最終回。-その11-:{netabare}
 大雑把にまとめてしまえば、「幼い月子は不注意からマロミの手綱を放し、そのせいでマロミは車に轢かれて死んでしまい、それを自分のせいだと認めたくない月子はその内部から少年バットを生んだ」ということになる。
 それまでの少年バットやボンドによってもたらされた被害に比べてひどく小さな出来事であり、そのギャップは意図したところ。馬庭が解説してくれた真相と何も変わらないが、この回想で大きな要素が付け加えられる。初潮である。

 この発端となる女性を仮に、“月子”と名付ける。取りたてて深い意味はないが、妄想代理人を生み出した彼女の背景には女性特有の苦しみがあったことにしたい。「生理」については私は実感をもって考えることは出来ないが、大変な苦痛を伴う女性もいるようだし、狂言を演じてしまった、あるいは演じざるを得なかった月子の事情としても考えられよう。「生む」というイメージには血もつきまとう。

※やはり「初潮」が描かれていましたね。そして、「月経」「月のもの」という「生理」の言い換えから「月子」と名付けられたようです。


 初潮の訪れは「子供時代の終わり」(そう単純化してもいけないが)と考えられるし、つまりは「子供の死」である、と考えた。マロミという「子犬」の死も同様である。死には「血」のイメージも付帯する。タラリと血が流れるカットは、「初潮」と同時に「子(犬)の死」も表したつもりである。
 轢かれて死んだマロミは「子供の月子」と言い換えて差し支えない。その死んだ筈のマロミがぬいぐるみのマロミとして、月子主観では「生き残った」ということは、子供のままの月子が生き残った、ということだと考えていた。月子の「不思議ちゃん」「社会性の欠如」はこの生き残った子供の月子であり、大人への通過儀礼をうまく通り抜けられなかった、というイメージである。
 また「初潮=子供の死」は同時に「生む」機能が整ったということも意味している。そのイメージが「少年バットが生まれる」ことに繋がっていると思う。シナリオでは幼い月子のすぐそばに少年バットが立っている、というイメージだったが、もっと直接的に「月子から生まれた」ことを絵にしたかったので、幼い月子の影が少年バットのシルエットになっている、とした。理屈がどうこういう問題ではなく、言語によらないイメージとしての説得力が得られたと思う。

※「初潮」は「子供が終わること」と「大人になること」を意味しますが、月子は子供(マロミ)を抱えたまま大人になり、さらに少年バットという子を産んでしまった、ということのようです。なるほど。
{/netabare}

妄想の十三終わり無き最終回。-その12-:{netabare}
※回想シーンの絵コンテが掲載され、今敏監督による解説が加えられています。

「ほらぁ〜もう行くよ、マロミィ」
 能都さんの甘ったれた感じの声が非常にいい感じだった。キャプションにもあるように、ここでの月子は「わざとらしく困って」みせている。子供が動物に接する際、動物を「子供扱い」する態度はよく見られると思うが、この月子も同様で、つまりは「お母さんごっこ」である。お母さんごっこをしていたら、本当にお母さんになるための準備が来てしまった、という皮肉が重ねてある。

 ここの月子を描くにあたっては「肉」を大切にしたつもりである。特にふくらはぎ。腿に圧迫されて平たく潰れた感じのふくらはぎ、ここに「肉」を表そうとしてみた。月子の背後に見える公園のスツールが赤色なのは無論「血」の象徴。
 血と肉から逃れられない、という感じを重ねてみた。さらに次のカットでマロミが車に轢かれて死ぬ、という繋がりで「血」「肉」は「死」から逃れられないことも暗示したかったが、したかっただけに終わっているかもしれない(笑)

「あいつが来たんだもん!!」という「あいつ」とは無論「少年バット」と「血」のダブルミーニング。

※血が流れるシーンについて、絵コンテには「車道と歩道の段差の部分、血が流れ落ちる。マロミの血です。月の死者の象徴でもある、と。」と書いてありました。実際に縦に流れるところで縦に流れていたようです。私のレビューは間違っていましたね、恥ずかしい(笑)。
 なお、エンディングの記号式に関しては、私が確認した中では触れられていませんでした。
{/netabare}

 具体的なページについては失念してしまいましたが、「100の完成品を作るためには、200から300のアイデアを出す」というようなことも書いてありました。今敏監督作品の密度の高さが理解できたように思います。
 文章量が多いので「KON'S TONE」はまだほとんど読めていませんが、製作者の意図に触れられたり、こだわりを垣間見れたりできる貴重な情報源ですからね。継続して読み進めたいと思っています。
 今敏監督が亡くなっているのを知ったのは、確か去年の今時分で、パプリカとパーフェクトブルーを初視聴した直後だったかと記憶しています。この時期にまた今敏監督作品のレビューを引っ張り出すことになるとは露程も思っていませんでしたが、なんにせよこのレビューが8月24日に間に合ってよかったです!

投稿 : 2024/05/04
♥ : 11
ネタバレ

lll1 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

鷺猪馬蛙鯛牛蝶蛭狐…

 これでようやく今敏監督作品を全て見る事が出来た。

 ダーレン・アロノフスキー、クリストファー・ノーランなどなど、今敏の影響を受けた映画監督は多くいることでしょう。
 実に誇らしいことであり、今敏の偉大さを批評家や業界人のみならず、我々一般人も後世に伝え続けることをしなければならない。
 死後何年も経ちますが、いまだに悔しい気持ちでいっぱいです。もっとたくさんの作品を作ってほしかった。


 では本編の方を。率直に言って傑作でした。ただ、全体として見るか、1話1話を見るかで、ちょっと評価が変わる。
 1話1話全て面白いんですよ、でも全体として見ると、やや霞むんですよね。これが正直なところです。これが正直なところなんだけど、そんな霞むところは無視してこれからこの作品を褒めちぎるレビューを書きます。
 嘘はつきたくないというだけです。


 まず〈第1話〉。
 "間(ま)"が完璧だったんですよね。鷺月子が、パソコンに向かって仕事をしているときに鳩村が話しかけるシーンがある。ここの話しかけるまでの"間"が完璧で、私はこのシーンで『妄想代理人』に掴まれた。テレビの安っぽい演出ではなく、まさしく映画の演出だった。

 「神は細部に宿る」という言葉がありますけど、その言葉通り細部へのこだわりが実に素晴らしい。

 音楽はあまり流れないけど、自然音や生活音を「これでもか!」と言わんばかりに充実させている。音が物凄く豊かなんです。一気に作品のリアリティも増すし、ランクも上がります。
 
 そして音にこだわりがあるからこそ、音楽の使用に関しても注目することが出来る。鷺月子の心情が揺れ動くときにしか音楽が使われていないんです。音楽を使用するときに意味を持たせることによって、より視聴者は深いところまで入り込むことが出来る。
 ただ流しているだけとでは訳が違う。

 続いて作画。もう「映画かよ」って思いました。調べたら実際映画だったんですけど。一部の原画を『東京ゴッドファーザーズ』から拝借したそうです。だからあんなにも横断歩道を渡る歩行者が豊かに活きている訳だ。
 絵コンテも完璧でしたしね。

 映像によって与える、視聴者の心境の変化。美しい映像を素直に美しいと思ったり、怖い映像を怖いと思ったり、不快なものを不快に感じたり。そういった部分がしっかりと効果的に描けていたことに感動した。
 最近ないから、ストーリーではあっても映像ではなかなかないから。

 キャラクターも良かった。少ない描写で、キャラクターの個性や性格を見事に表現している。鷺月子も猪狩も馬庭も川津も。
 心の声の使用は控えてるし、脚本、ストーリー共にあっぱれ。もちろん、キャスティングと演技指導も。

 
 ここまで完成度の高い"第1話"を初めて見たし、全てが完璧だったと思います。
 と、ここまでが第1話の感想です。長くなります。
 以下はカスタムタグを用いていますが、特にネタバレはしてませんのでご安心を。ぐちゃぐちゃっとなってしまうので、すっきりさせたかっただけです。


 〈第2話~第4話〉{netabare}
 全話好き。作品全体としてデヴィッド・フィンチャーの『ファイト・クラブ』の影響を受けている印象を感じるけど {netabare}、第3話は特にそれが顕著でした。{/netabare}
 是非『ファイト・クラブ』を見てください。順番はどちらが先でも良いので、見てください。ちなみに今敏監督作は必ず見るように。
 4話のあのシーンはカメラワークがイカしてて最高。
{/netabare}

 〈第5話〉〈第10話〉{netabare}
 〈第5話〉はそんなに好きじゃない。脚本も水上清資が書いておらず、吉野智美が担当されてます。 あと特徴的なのは〈第10話〉ですが、この回も吉野智美です。後は全話水上清資が書いてます。
 ついでなので、ここで〈第10話〉について書きますが、マロミに解説させるという、「それはどうなの?」と言いたくなる演出をしてますが、そこは置いておき、結構このエピソードは好きです。
 少年バットを、アニメ制作現場という混沌の中に、かなり喜劇的に取り入れていた。


 そしてもう一つ言いたいのが、『SHIROBAKO』です。
 ずっと前から思ってたことですけど、『SHIROBAKO』は褒めるべき作品じゃなかった。
 「なんて非効率で、過負荷な労働でアニメを作ってるんだ、馬鹿じゃないか!」という意見の方が目立つべきだった。悪く言えば叩かれるべきだった。業界全体のためにも。

 友人にアニメーターの方がいるので、制作現場の話を聞きますが、本当に悲惨なものです。第10話の主人公の猿田と『SHIROBAKO』の宮森は制作進行という同じ仕事ですけど、この人たちは本当に休みがないです。
 原画を取りに行くということが私にはムダにしか思えない。問題は多くあります。会社がアニメーターの生活を保障せず、フリーで活動されることが多い事であったりと。
 『SHIROBAKO』はそれをカーチェイスで見せてましたからね、もう、ほんとに、、、。
 分業が出来たらいいなと思います。人が足りないけど。
 
 TRIGGERの桝本和也著の『アニメを仕事に!』という制作進行について書かれた本があるので、是非読んでみてください。1時間~2時間ぐらいで読めます。「おかしくね?」って思うことを当然のように書いてます。
 この本の頭に「キツイ!しんどい!でもムチャクチャおもしろい!!」と書いてありますが、このキツイ、しんどいを無くして、余裕を持たせることも大切だろと思います。
 TRIGGERは制作現場の様子をYOUTUBEなどで上げてますので、そちらも。


 話しが逸れましたけど、このエピソードが好きなのは全然、現実視点の方ではないので、前に書いた少年バットと制作現場の混沌と喜劇の方ですので。{/netabare}

 〈第6話〉~〈第9話〉。{netabare}
 〈第7話〉はあまり印象にないです。ただ一番何回も見て、咀嚼するエピソードだとも思います。たぶん1,2を争うレベルで作品全体として重要かなと。だけど、特には書きません。

 この第6、8、9話ですけど、第1話~第4話のような形に返ったかのような話で、好きです。
 正直言うと、こういった面白くも奇妙でクセのある話しを、1話完結でずっとやって行った方が私としては楽しめたと思う。
 "結末"や"答え"よりも、"過程"を楽しむタイプなので。{/netabare}

 〈第11話〉~〈第13話〉は特に触れません。


 あと平沢進の音楽は最高です。

 
 最終評価は 8 / 10点です。


 観終わったすぐは7点にしようかと思ってました。最初に書いた"霞む"と言った部分が原因です。
 でも思い返してみると、「めちゃくちゃ面白かったな」という思いが、どんどん強くなっていった。
 視聴中の1週間~2週間ぐらい、ずっと頭の中が『妄想代理人』で埋め尽くされてました。『妄想代理人』の事以外を考えられないぐらいにいっぱいでした。なかなかアニメでは味わえない体験です。

 「神は細部に宿る」ですけど、ジョージ・R・R・マーティンは「細部多ければ、悪魔もまた多し」と言っています。面白い。
 
 最近とても良いアニメを観れているので近い内にオールタイムベストを作るかも。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 7
ネタバレ

青龍 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

現実逃避する前に、自分と素直に向き合おう。

本作は、惜しまれながら早逝された今敏監督(映画『パプリカ』、『千年女優』など)による全13話のテレビアニメ作品。

本作のストーリーは、作中で大人気となっているゆるキャラ「マロミ」のキャラクターデザイナーである月子が、会社からの帰宅途中に、通り魔と遭遇する。もっとも、目撃者もおらず月子の証言も曖昧であったため、マロミに続くキャラクターのアイデアに煮詰まって現実から逃げたかった月子の狂言と思われた。しかし、同様の手口の事件が相次いで起こり、いつしか犯人は「少年バット」といわれるように…

これらの事件の被害者の共通点は(以下、核心に至らない程度でネタバレ有り)、{netabare} 月子と同様に生きるのが辛くなるような悩みを抱え、現実逃避したいという願望(=妄想)があったこと。それゆえ、被害者は、少年バットに金属バットで殴られ入院するような重傷を負いながら、辛い日常から逃避できた(「妄想」が少年バットという「代理人」によって現実となった)ため、一様に安堵の表情を浮かべるというちょっとおかしな状況になっている(おそらく、「少年バット」では伝わりにくいので、「妄想代理人」というタイトルになったと思われる。)。 {/netabare}

本作は(諸説ありそうだが…)、「少年バット」の正体を突きとめるミステリー(謎解き)もので、それだけで最後まで物語を引っ張るだけの魅力がある。もっとも、本作も、他の今敏監督作品と同様に、ストーリーの進行とともに妄想が現実を次第に侵食していく不思議な世界観とともに、単なる謎解きではなく、その過程で、どう悩みと向き合うべきかといった人生論や社会問題みたいなものを含んでいる。

本作は、悩み事を抱え、その悩みを解消するのがしんどくて、現実逃避したいと思っているあなたに、そこから救われるための糸口を与えてくれるかもしれない作品となっていると思う。

(正直なところ、入口は一般受けしやすい身近な話題で、ユーモアもあって深刻になりすぎていないものの、現実と妄想が混在していく点がわかりにくく、フィギュア化できそうなキャラデザでもないので(あえていうなら「マロミ」くらい?)、いい意味で、よくこれテレビアニメ化したなあというのが率直な感想。もっとも、全体が醸し出す唯一無二の独自性という点でクリエイターの評価が高いのも頷ける。)


【以下、ネタバレありの感想】
本作のアイデアに一番近いのは、「トイレの花子さん」といった都市伝説や怪談話の類だと思われます(入口が一般受けしやすいと感じた理由の一つ)。

どういうことかというと(以下、核心に至らない程度でネタバレ有り)、{netabare} はじめは他愛もない嘘だったものが、それを信じる者が現れ、ネットや団地のおばちゃんたちの噂など、多くの人の口の端に上るうちに伝言ゲームのように尾ひれが付いて、「怪物」になる。

そして、本作は、「現実と妄想」を混在させることで、いるはずのない「怪物」が社会に広がり、あたかも実在するかのごとく影響を及ぼしているということを表現しているのでしょう。

これが適切な例とはいえないかもしれませんが、日本の年金制度は、多くの国民が国がやっているので破綻することがないと思っている。しかし、自分が支払った年金を後からもらうというのは建前で、現役世代が受給世代を支えているのが実態なので、少子高齢化が進行している以上、このままだと、どこかで破綻する。
国がやっているので破綻しないというのは、実は根拠がない妄想の類なのに、(薄々気づいてはいるものの)国民はこれを信じて年金を支払い続けるという行為に影響を与えている。{/netabare}


本作のテーマは、おそらく11話の美佐江の少年バットに対するセリフ。
{netabare} 「あなたは現実から逃れようとする人たちを見境なく襲っているそうですね。
それでその人たちを楽にしてあげているとでも。
救済のつもりだと言いたいのですか。
人間はアナタが考えているほど弱くも浅ましくもないということを話してあげます。

どんなに辛くてもその現実に立ち向かうことが出来るのです。
アナタにはそれが分からない。人間でないアナタには。
ただ苦しんでいる人を傷つけ、殺め、それで楽してあげたつもりでいる。
小賢しい。あなたはそんなことで悦に入るのがせいぜいなのでしょう。
アナタは存在そのものがまやかしなのです。
そう。その場限りの安らぎで人を惑わすこのマロミとやらと同じなのです。」

本作では、いるはずのない怪物である「少年バット」は、人々が辛い現実から逃避したいという妄想を実現する代理人として実在する。
そして、本作の月子の場合は、新キャラクターのアイデアを生み出すために必要な才能という現実に立ち向かわなければならなかったのに、「少年バット」が実在することで、より現実逃避しやすくなった。
しかし、現実逃避は、悩みを根本から解決するものではありません。

そうすると、本作は、美佐江の台詞にある「どんなに辛くてもその現実に立ち向かうことが出来る」なんかを見ると、悩みを解消するために現実から目を背けず正面突破しろ!(頑張って勉強してアイデアを出せるようになれ!)といっているようにも思えます(もちろん、これも解決策の一つ。)。

しかし、本作は、現実に立ち向かうために、まず、悩みの原因となっている「現実を直視せよ」と言っているように思うのです。そのうえで、正面突破するのか回避するのか。

例えば、月子は、「マロミ」級の新キャラのアイデアが出ずに悩んでいますが、おそらく彼女にそれを正面突破するだけの才能はない。なぜなら、「マロミ」のアイデアは、かつて飼っていた犬の「マロミ」の実体験に由来しており、他に同様の経験が彼女にない以上、同じ着想で新キャラクターを生み出すことはできないからです。
おそらく彼女自身も、それに薄々気づいてはいるものの、周囲の期待もあって、それを認めたくないという葛藤から、現実逃避したいという願望を強く抱くに至っている。

しかし、本作のラストで、月子は、自らの才能に率直に向き合い、その限界を認めたので、キャラクターデザイナーを辞めて普通のOLに転職した、つまり、正面突破せずに回避したのでしょう。
転職した彼女の顔は、髪を短くし晴れ晴れとしたものでした。


他にも、解離性同一性障害(いわゆる多重人格)のはるみも、マリアという別の人格を認めたくないという葛藤から、現実逃避したいという願望を抱いていました。しかし、この障害に対する治療法は確立していないようですが、各人格を統合できない場合は、各人格を否定するのではなく、その存在を率直に認めたうえで各人格間で協調するよう人格を調整していくことが必要なようです。この場合も人格を統合して一つにすること(正面突破)だけが解決策ではありません。


本作のように、悩みの原因を正面突破しようとして、そのハードルのあまりの高さに尻込みして現実逃避を選択する前に、自分と素直に向き合うことが糸口になるかもしれませんね。{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 4

71.4 3 不気味でシュールなアニメランキング3位
東京喰種:re(TVアニメ動画)

2018年春アニメ
★★★★☆ 3.4 (469)
2336人が棚に入れました
群衆に紛れ、ヒトの肉を食らう。
ヒトの形をしながら、
ヒトとは異なる存在・・・“喰種”。

“喰種”を駆逐・研究する〔CCG〕は、
あるひとつの命題を果たすため、
実験体集団を新設。

その名は「クインクス」。

「まともな人間」ではない彼らと、
佐々木琲世(ささきはいせ)一等捜査官が、
“東京”で向き合うものとは!?

「東京喰種√A」の2年後を描く新章「東京喰種:re」いよいよ始動。

声優・キャラクター
花江夏樹、石川界人、内田雄馬、藤原夏海、佐倉綾音、宮野真守、小林ゆう
ネタバレ

Karisu さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

稀に見るクソアニメ。

漫画の良さを緊張感を全て台無しにしている。3話まで見てみたがこれはひどい。まるで子供向けに作っているかのようなアニメーションの雑さとグロさの規制。こんなにも制作会社に恵まれないアニメがあっただろうか。漫画はとても面白く進撃の巨人に引けを取らない物語の壮大さで作画も素晴らしく次々に巻き起こる展開がドラマティックだ。主人公の成長もグロさにおける緊張感もたまらない。しかしその良さをこのアニメに携わっている制作会社が気持ちいいほど全て殺しているのだ。「制作スタッフも頑張っているのに可哀想。」とかいう偽善者が湧きそうだから言うが、アニメを作る会社は視聴者から金を儲けるために原作者にお金を出してアニメを作るんだ。決して視聴者の思いに応えて作り始めることなんてことはない。視聴者はお気に入りの漫画が動くという感動を期待し漫画を買い何年もアニメ化を待ってきている。制作会社はそれに見合った対価をアニメの質で返さなければならないだろう。だがこいつらはまるで原作を読まずに自分たちの好き勝手に作っているようなクソみたいな作画と物語構成を繰り出した。やってくれたな。√Aから東京喰種は終わっている。…どう表現すればいいだろうか、まるでヴァイオレットエヴァーガーデン並みに綺麗な作画で作るべきアニメをイナズマイレブンみたいな作画でアニメ化してるのと同じくらいの酷いぞ。監督と脚本は何も考えてないんじゃないか。もうお前らは老害だよ。視聴者を考えず自惚れて自己満で終わってるカス野郎。なぜ原作者や関係者は何も言わない。東京喰種は脚本の才能がないやつが脚本の練習をする作品じゃないんだよ。練習するならスポンジボブの脚本でもやってろ。まあ前半クソ作画にしておいて後半で作画を良くして大きな戦闘を際立たせる方法を取っているのかもしれないが初手で興味を惹けなかった時点でどのみち期待外れだ。EDとOPは個性的でその部分では成功している。しかしアニメがメインではなく中堅バンドを有名にするための材料にしているようにしか感じない。声優と音楽及びOSTは申し分ないのに上の人間が無能だと全てを台無しにする。

{netabare}
追記:5話目を見ました。
色々お粗末な点が目立つようだ...
・ガギグゲの死亡シーン、あれは子供向けか?
・基本的に強いはずのグールがクソ弱い。まったく脅威に感じない。
・「さすがは鈴屋、早すぎるな..」ど、どこがでしょう?
・ビッグマダムが瓜江を加えてるシーン、作画一枚。
・幕の引き方も「次回!さっさんvsオウル!」みたいな引き方。

オウル目当てで最後の期待をして見たみたけど...やはりこれはひどい。どうしてしまったんだ東京喰種は...東京喰種ファンの方々は√Aのとき作画と物語構成のひどさに落胆したでしょう。しかし:Reがアニメ化することが分かり何年も待ち期待を寄せたはずです。アニメ放映前のPVの雰囲気もとても素晴らしく「あの失敗からしっかり切り替えて良いものを作ってくれるはずだ...!」と誰もが信じて楽しみに待っていたでしょう。しかしこれだ。√Aで作画がひどい回は何度かあったがそれが毎回繰り返されているような劣化度合い。まるでこんな素晴らしい漫画を新人社員の絵の練習に使っているかのようなクオリティ。一秒間の作画枚数もボブネミミッミと大差ないと思ってしまうようなてきとうっぷり。一枚一枚の絵はとても綺麗なのに頑張って絵を描いている作画班が可哀そうだ。脚本を作画を規制をもっと本気で取り組んで作っていたら来週が待ち遠しくなるような本当に緊張感ありの世界観抜群の素敵なアニメになったと思う。予算がなくて十分な人材を雇えないなら無理に作らない方がいい...悲しくなるだけだ。前回の√Aから有馬とエトのところだけ作画枚数増やせばいいやみたいなノリが垣間見えてるぞ。これはあれだな、「アニメ化アニメ化うるさいから仕方なくしてやるよ。言っとくけどリゼロやけいおんみたいに円盤売れてねえんだよ。ひどいクオリティのものが出来てもお前らのせいだぞ?まあアニメ作る目的は漫画買ってもらうためだから低予算でアニメ作って興味だけ引いて漫画の売り上げゲットして採算とるねん。とりま見ろや。あと金木人気で女子層が増えてきてるからちょっとグロいのは良くないかなーって感じですわぁ。まあ名言はちゃんと入れといてやるから我慢しろや。グロは無しやけどな」と喧嘩を売っているようにしか見えない。どんどん予算が無くなってきてるのかねぇ…闇が深いよこのアニメは。今までアニメのみで追ってきた人はぜひ漫画で読んでみてください。もし宜しければReからでなく東京喰種7巻からの閲読をお勧めします。と私みたいな人間に言わせて漫画に誘導するようにわざと低クオリティのものを作ったのか...まあ深読みしてても仕方ないw とにかく漫画の方は目が飛び出るほど物語も絵も素晴らしいのでぜひ目を通していただければ幸いです。
{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 5

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

「東京喰種√A」の2年後を描く新章がこちら…

この物語は「東京喰種」の3期に相当する作品です。
この段階で、2018年の10月から第4期の放送が決まっているので、本シリーズを「起承転結」になぞらえると3期の本作は「転」に該当する訳ですが…
今回の物語は、これまでに比べると相当ぶっ飛んでいたのではないでしょうか。

まずビックリするのは主人公…
これまでの主人公は「金木 研」でしたが、今期の主人公は「佐々木 琲世」という人物なんです。
しかも、天ちゃん演じる霧嶋董香が居ない…
加えて「あんていく」時代の馴染の顔も殆ど出てこないし…
唯一思い出したのは、残虐非道なまでに喰種を駆逐した真戸呉緒の一人娘の真戸暁くらい…

この物語は「東京喰種√A」の2年後を描いた作品になっているそうですが、実際に「東京喰種√A」が放送されたのは2015年の冬アニメ…つまり3年以上も経過している訳です。
それだけ間が空くと記憶も曖昧になります。
だから、今回は過去を思い出しながらの視聴となりました。

この物語の主人公は佐々木 琲世…
彼は喰種捜査官…そして喰種の能力を持った「クインクス」と呼ばれる4人組の班を統率しています。
だから、喰種だった金木とは立場が真逆な存在…ということになります。

喰種捜査官はずっと敵だと思っていました。
だから正直最初は違和感がありましたけどね…

ですが、佐々木 琲世自身に潜む影と、彼が率いるクインクスの4人組が良い味出していたと思います。
以下に紹介します。

瓜江 久生(CV:石川界人さん):出世意欲が最も高いのが特徴。まぁ、それにもちゃんと理由があるんですけどね。普段、あまり口の良い方ではありませんが実は仲間思いの良いヤツだったり…

不知 吟士(CV:内田雄馬さん):ギザギザの歯が特徴。見た目とは裏腹に仲間意識が強く、仲間の安全を最優先にする格好良いヤツです。大切な身内が罹患した難病を治すべく、治療費をセッセと稼いでいます。

六月 透(CV:藤原夏海さん):褐色の肌と右眼の眼帯が特徴。普段から物静か…でも、喰種捜査官としての能力は、この4人の中で一番向上したのではないでしょうか。

米林 才子(CV:あやねる):クインクスの紅一点であり、本作の中で一番愛らしかった存在です。普段から半分ニートみたいな引きこもり生活を送っているのですが、当然捜査官としての任も全うします。CVがあやねるだったから…だと思っているのですが、登場した時の存在感が半端ありませんでした。

佐々木 琲世自身に潜む影…については、気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。
物語の核心に触れる部分だと思いますので。

繰り広げられるのは、人間と喰種の戦い…
視点を真逆に変えても、この部分だけは微塵の揺らぎもありませんでした。
相変わらず人間は喰種の事が大嫌いで、事あるごとに殲滅を企てる…
そして喰種は生きるため…普段はひっそりと暮らしていたとしても、喰種である本能には逆らえないから…
だから彼らは生きる居場所を求めて戦っています。
まぁ、人間側も喰種側も一枚岩じゃないんですけどね…

喰種が怯える事無く安心して生活できる日は来るのでしょうか?
今回も血を欲しているのは、どう考えても人間側にしか見えませんでした。
人間は自分が生きるために他人の血は必要ない筈なんですけどね…

初めから次期を意識して作られた作品なので、次期への布石もしっかり打たれていましたよ。
チラッと董香の姿を見る事ができました。
「物語もいよいよ大詰め」って感じが伝わってくるようです。

オープニングテーマは、Cö shu Nieさんの「asphyxia」
エンディングテーマは、女王蜂さんの「HALF」
個人的にはオープニングが好みでした、前奏のピアノの旋律がとても印象的です。

1クール全12話の物語でした。
役者が揃いつつあります。
これからの物語の展開が楽しみです。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 10
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

人も喰種も哀しみを抱えているんだよね

2018.06.24記


原作既読 1期2期は視聴済
原作「東京喰種:re」1巻からだいたい5巻くらいまでを1クールでまとめました。

※以下、無印(1期2期)のネタバレは隠してませんのでご注意を。

主人公はカネキくんから佐々木排世にスイッチしてます。
そのへんの事情は1期2期または原作の無印版をおさらいしときましょう。いきなり:reから入る方はいないと思われますが、前を知らないとよくわからないと思います。

:reはこれまでの喰種側の視点の物語展開から一転して人間側からの視点で進行します。
東京喰種は何が善で何が悪かの問いかけをぐいぐい観る者に迫ってくる良作だと私は思ってますが、その意味でこの視点の変更は必然だったのかもしれません。

そんなこんなで主にCCG視点で話は進むのですが、たまに登場するあんていくの面々が、これまでより魅力的だったりします。やはりああいうことがあって、生き残ったメンツそれぞれが哀しみや憂いを纏っております。例えるなら、北斗神拳の究極奥義・無想転生発動中のケンシロウといえば、おっさんにはわかるでしょう。
とりわけトーカさんが艶っぽくなっており、1期の序盤のイライラ娘っぷりを知ってる私たちにとっては隔世の感があります。すっかり大人の女性です。


全話観終わって、、、
続編ありきの構成だと原作のどこらへんで区切るか?というところがポイントではありました。無印1期の終わり{netabare}(白カネキ覚醒シーンまで){/netabare}を彷彿させるような終わらせ方だったのは良かったのでは?これは好感です。
それと前作と比較してもバトルシーンが多かったような。

悪くはないんですが、もう少し感情描写や内面の葛藤を深掘りしてほしかったような気がします。排世の葛藤シーンもあるにはありましたがすっと入ってこない。{netabare}ここで決めろよ的なキラーチューンw「unravel」の挿入も空振りした印象{/netabare}

そんな中で印象に残っているシーンは

{netabare}■トーカが開いた喫茶店で排世(カネキ)と再会するシーン。月並みですが、ちょー美しかった。
■7話あたり、ヒナミのカネキへの想いがなんともけなげで泣ける。{/netabare}


3か月ほど間を開けて最終章をやるのでそこでスパートかけるものと期待します。登場人物も増えてぐちゃぐちゃになって面白くなってくるはずなので2クール分くらい尺とってしっかり作りこんでほしいですね。

これはそのための準備運動みたいな位置づけかと。



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2018.11.11追記
《配点を修正》

この前原作をやっとこ完走しました。
無印か2期√aのどっちかのレビューでも言及してたかと思いますが、私アニメも原作も両方好きで、:re1クール終了時点でもそれは変わらずです。
巷では1期をピークに失速した評が多いように見えますが、私は最後まで付いていきますよ。


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2019.07.01追記

視聴時期:2018年春クール(リアタイ視聴)

CCGに新規キャラわんさか登場してくるため、アニメオンリーだとキャラの名前を覚えるのがたいへんなのは事実。まさに原作推奨なのですが、本シリーズに限らず「原作読め」はよく言われることなので、それ以前にアニメだけで理解を促す努力が制作陣には求められてたと思います。続く4期最終章では名前にテロップを出すなど改善が見られたので、それをここでもきちんとやっておけばと悔やまれる結果に。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 32

57.1 4 不気味でシュールなアニメランキング4位
闇芝居(TVアニメ動画)

2013年夏アニメ
★★★★☆ 3.2 (167)
840人が棚に入れました
昭和の紙芝居風に語る日本にある都市伝説的なストーリーの大人向け短編アニメーション。アプリとも連動し、都市伝説キャラを捕獲するゲームが配信され、番組放送中に仕掛けが施されている。

声優・キャラクター
津田寛治、村井良大、平野良、植田圭輔、相沢梨紗、大西礼芳、田中稔彦、白水桜太郎、深海誉、増本庄一郎

ほーきんす♪ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

【ネタバレ有】 「”おつまみ”みたいな短編怪談作品!」

 

 まさかの1話当たりわずか5分の短編怪談作品である。

 それでいて13話しかないから、(小学校を卒業している人はわかると思うが…)全部で1時間足らずで観れてしまう、時間のない人には、何ともありがたい作品となっている…。


 タイトル“闇芝居”からも分かる通り…、アニメーションなのだが、紙芝居テイストで画が構成されており…、
 滑らかさがない分、昔の“トイレの花子さん”のようなかんじに仕上がっている(小さいころ観た花子さんはガチで怖かった…(特に、夜枕元にバナナを置いて寝ないと、足首から先をハサミで切られて持っていかれてしまう…という話があったが、冷静に考えれば、怖すぎる話である…))。


 1枚画のまま、セリフだけが進んでいくというようになっており、次のシーンで急にくる怖さや、ずっとそのシーンの画を観なければいけない、という怖さを出せるというメリットがあるように感じる。


 また、(ある意味失礼な言い方だが…)声がプロの声優というよりは、むしろ一般人に近い声の感じになっており、そこがリアル感を出すことに成功している。


 しかし、1話ごとの時間が、わずか5分ほどしかなく、どうしても、ホラーもの独特の“間”だったり、設定を詳しく説明する時間がなく…、
 “オチ”が視聴者に伝わらない、何を伝えたくて、どこに恐怖を感じてほしいのか…製作者の意図が伝わらない回がいくつかあった…(というよりは、そういう回の方が多かった)。


 だが、まぁ怖かった回を上げるなら、“第2話”“第11話”“第13話”は正直、怖かった…。
 
 これはあくまで、自分がそういうのに恐怖を感じるタイプなのだけかもしれないが…、
 なめらかな、およそ人間とは思えない動きに対して、恐怖を感じることに気付いた…。
 
 まさにこの、第2話と第13話はそうで、第2話の“惨拝(ザンバイ)”、腕を振り上げる“バンザイ”ではなく、腕を振り下ろす“ザンバイ”の動きや、第13話の最後の双眼鏡越しに霊に憑りつかれた友だちが走って来るシーンは、鳥肌ものだった…。


 最初、画のひどさに、さすがにちょっとと思っていたけど、観ているうちに、これくらいのレベルの作画の方が、怖さを感じることに気付いた…。


 本当に怖さを感じたくて観ようと思っているなら、わざと部屋を真っ暗にして、(できるなら“深夜”)(当然“一人”で)観ることをオススメしたいと思う…。


 また機会があれば、公式サイトで配信されていたらしい、他の話も観てみようと思う…。

 (終)

投稿 : 2024/05/04
♥ : 3

だわさ さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.7

何か書こうと思ったので…闇芝居について少々。

5分ショートアニメ全13話
短編ホラー


それなりに怖い短編ショートアニメなので、お手軽。裏を返せば、内容は薄い。
ホラー系に割と耐性のある人なら、はっきり言って怖いとは言えない内容だと思う。
しかし、このショートアニメは紙芝居というモチーフを扱い、古き良き日本再生に一役かっているばかりか、
美化が進んできた映像界に対し、静画の可能性を見せつけるという点で一石を投じている。

まず、闇芝居というタイトルだけあって、紙芝居のような見せ方をする。
毎回、冒頭に「よってらっしゃい見てらっしゃい」と
紙芝居(闇芝居)をしてくれる知らないオッサンが広場で子供に語りかけ、紙芝居が終わると最後は「おしまい」で締める。
今時、知らないオッサンが寄ってらっしゃい見てらっしゃいなんて言ってると子供は
「お母さんが知らないオッサンに話しかけられたら逃げなさいって言ってた。キモイ」とか普通に言って逃走しそうだが、
本編においては、1960‐70くらいのノリで子供が集まってくる。

もちろん本編、完全な形での紙芝居ではない。
登場人物は喋るし、ある程度絵も動かしている。
ここで注目したいのは、静画の使い方がうまいと思うこと。
静画と動画のコントラストによって視点が操作され、静画に想像力を膨らまさせる。
それは動くアニメが発達した今だからこそ新鮮であり、独特なホラーを生む。
静画の可能性と古き良き日本を一石二鳥で再生するというのだからなんともおもしろい。

そしてそこに輪をかけるように、
闇芝居本編で扱っている話の内容が古き良き日本の都市伝説。
やろうとしていることが全くブレていない。

以上の理由で、一見の価値があると思う。

怖いかどうかは、静画と動画から受け取った情報を
あなたの脳みそがどう受け取り、どう再生するか。
そのあたりなんじゃないだろーか。

なので、怖くなかったからといって偉そうに人に言うのは少し残念な奴に思えてくるワケだが、
何を隠そう俺は怖くなかったよ。
俺の想像力は少々残念なのかも。
むしろそれが怖いわwww

投稿 : 2024/05/04
♥ : 19

ぱこ さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.6

(怖い話のような)雰囲気アニメ

雰囲気アニメにも色々と種類はあるが、これはこの作品のあらすじが銘打つ通り「よく聞く都市伝説や怖い話の不気味さを意識して、雰囲気だけ出来上がった作品」。

 もともとホラー系は苦手で(実写映画はスプラッタとホラーが混在しているため)あまりその方面の作品に通じている方ではないとはいえ、そんな私であっても展開が容易に読めるほどシンプルな、ある意味でホラーとしては間違っている(?)親切設計。

 特に8話と13話は2ちゃんねるのオカルト系でも特に有名な話なので、わかる人はすぐにピンとくるだろう。

 古き良き昭和の紙芝居の絵柄を意識していると思われる作画も、狙いすぎては味が薄れるというケースの見本なのかもしれない。また、ドッキリ系の演出も一昔前のホラー系FLASHには一歩及ばないという印象。

 声優陣の演技に関しては、アニメらしい演技を避けた自然なニュアンスを目指しての事だと思うので、特に気にはならなかった。

 最後にあえて付け足すとすれば、私はアンチボーカロイド派ではないとはいえ、EDテーマのボーカロイド曲は歌詞の表記がないため結局最後まで完璧に聞き取ることができず、曲の良し悪しは別として、この作品への起用が正解だったかどうかについては首を捻らずにはいられない。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 2

67.1 5 不気味でシュールなアニメランキング5位
ファンタスティック・プラネット(アニメ映画)

1985年6月21日
★★★★☆ 3.7 (61)
241人が棚に入れました
仏のSF作家ステファン・ウルの長編小説を、マンガ家ローラン・トポールの絵でアニメ化した異色のファンタジー作品で、未開の惑星イガムを舞台に人間型のオム族と、彼らを奴隷のように扱うドラーグ族の戦いと協調を描く。ストーリーとしてはこなれていない箇所も多く消化不良の感はあるが、なんといってもその特異なアニメーション映像に目を見張る。トポールのイラストがそのまま動く事の驚きと、SF的イマジネーションの凄さ、思いがけないグロテスク趣味など、その類を見ないビジュアルは一見の価値有りだ。

gazabata さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

アニメではないけど

青い宇宙人がいてカラフルだと言って子供に見せてはいけない感じのアニメです。多分17歳くらいにならないとこのアニメをフルに楽しむことはできないかな。

ストーリー:
根本のストーリー自体はたいして凄くはない。昔は珍しかったかもしれないが今どきは似たような話がたくさんある。ただ、ここまで独創的で引き込まれるようにストーリーを伝えたのは多分これが最初で最後だと思う。
序盤に少し反復的な部分があるけどストーリーとして必要だったから仕方ないかなと思います。

キャラ:
キャラも大して凄くはない。でもこの話をするためにはあまりキャラに集中してもだめだと思うのでこのままでよいと思う。感情移入も十分にできたので。

声優:
フランス語だったので何とも言えない。ただ、このアニメは自分たちのいる世界と全く違うので理解ができない言葉がしゃべられていたのはその異世界感を増大していたような気がする。

アニメーション:
この映画をアニメーションと呼ぶのは少し違うような気がする。どちらかというと絵画が動いている感じ。モンティパイソンのテリーギリアムのアニメーションに似ていると思う。
色使いから背景画まで本当に素晴らしい。普通のアニメーションと比べるとカクカクしていて気持ちが悪いかもしれないけどそういうスタイルとしては本当にうまくできていると思う。こういうスタイルのアニメーションはもうだいぶ前に死んでしまったけど…

世界感:
このアニメの一番素晴らしいところが世界感だと思う。さっきも言ったが色の使い方とアニメーションスタイルが完ぺきにマッチングしている。この世界の信ぴょう性をあげるために色々なものを紹介しておいて特に深い説明をしないのもまた素晴らしいと思う。動物、植物、宇宙人、すべての面においてデザインが独創的で本当に素晴らしい。こんなに独創性のある世界はなかなかない。ここまでできるのは今敏作品と宮崎作品ぐらいだろうか…

音楽:
本当に素晴らしい。天才的としか言いようがない。世界感にぴったりはまっていてそれでいて美しくありながらもどこか不気味な音楽。

まとめ:
本当に面白い映画。いろいろな人間の問題について問題提起しているのも素晴らしい。奴隷制度、動物の家畜化、自分のグループ以外の人などに対する完全なる無関心、色々なことをテーマにしているが自分の考えを押し付けようとはしてこない。問題提起をして後は自分で考えろと言ってくる感じ。
個人的に一番好きなのが最初の五分。興味がある人は最初の五分だけ見れば自分が好きな映画かわかると思う。でも、もし自分が好きそうな映画でなくても見てみて損はないと思う。75分ほどしかない映画なのですぐ終わるし…
こんな独創的な映画をみるチャンスはなかなかないぞぉ。

あまりストーリーの内容について話さなかったのはほとんど何も知らないまま見たほうが良いと思うからです。まあおすすめコーナーとかじゃないからこれ読んでるってことは多分もうこの映画を見たってことだろうけど… 別にいいや。

点数:8/10

投稿 : 2024/05/04
♥ : 11

九会 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

クリーチャーのデザインが秀逸。50年前のアニメ映画なのに驚かされる

50年前のフランスのSFアニメ映画
話としては宇宙人に飼われている人間がどうにかこうにかするお話で、詳しいことを話すとネタバレになるので話せませんが、50年前によくこんなストーリーを思いつくなと思うよう内容でした。絵柄は劇画チックで、ヨーロッパの民話の挿絵や宗教的な雰囲気も漂う作品で、それに負けないような音楽にも力が入った作品だったと思います。

物語の進行にそれほど関わる訳でも無いのですが、度々登場する生物のデザインが独特……というかはっきり言ってキモイのですが、そのキモさが絵柄と合わせてこの作品の世界観を作り出していると言っても過言ではないほど印象的でした。
何を食べたらこんなデザイン浮かぶのか?(フランス料理)
しばし独創的な衣装が印象に残るパリコレが開催されるフランスならではのセンスを感じました。奇しくもパリコレが正式に開催されるようになった年がこの作品が公開された1973年なのもなんだか面白いですね。

注意すべき点としては、流血表現や裸体なども作品の中で出てくるので、その辺りがが苦手な方にはあまりオススメ出来ないかなと思います。見ていて気持ちの良い作品ではないので、高評価な作品ですが、人を選びそうな作品だと思います。トプ画のドラーグ族の見た目のインパクトが強いので、制作側も刺さる人に刺さればいいと思って制作していると思います。
自分としてはクリーチャーのデザインが見ていて飽きなかったので楽しめた作品でした。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 7
ネタバレ

の ᴗ の さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

オム族がいっぱい ヽ(◉ ◉) 人 (◉ ◉)◞

ルネ・ラルー監督による1973年制作のフランスとチェコスロヴァキア合作のアニメ映画。

原作はフランスの小説家、ステファン・ウルのSF小説『オム族がいっぱい(Oms en Série)』。



劇場版の進撃の巨人を見終わった後に見た作品。

個人的には好きな系統の作品。
都市伝説や見てはいけない動画を見たくなる人、オカルト系が好きな人には向いていると思う。

現代でありえそうなものがでてくるので、今のあれだ、と思えるものがたくさん。


{netabare}
φ(..)思いつきをメモメモ
・人間ペット
・人間の逆襲
・戦いが生まれる理由
・戦いが終わる理由
・発展する理由

・コックローチ
・アースレッド
・コロコロ
・人間とAI
・ガリヴァー旅行記



争いが不毛なことを知って、支配は共存、相互の発展に変わる。
最後の数分が一番重要なのかな。

やられたら、やりかえすのが、どんな高等生物でも我慢できないこと。
でも、それは相手をやっつけるつもりかもしれないが、回り回って、自分をやっつけることになる。
不毛。
相手を傷つけるということは、自分を傷つけるということだと、どちらも学んだ。

共存と相互の発展が、いちばん益がある。


後、ペットは大事にしよう。
{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 3

57.0 6 不気味でシュールなアニメランキング6位
おかしなホテル(アニメ映画)

2008年4月28日
★★★★☆ 3.3 (38)
196人が棚に入れました
三原三千夫・自主制作アニメ『おかしなホテル』。
ドアから現実には有り得ない、おかしな物が出てきたら・・・?
ネタバレ

isso さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

どんどんやって欲しい。

短い作品ですが、自分なりの解釈を。。
見てから読んだ方が楽しめると思います。

{netabare}
最初に登場するサラリーマンはステレオタイプな日本人のイメージ
ということで、日本の国そのものの象徴かなと思いました。
立入禁止の看板を酔っぱらいながら押し倒していくのは
どんどんあらぬ方向へ突き進む国家を暗示しているかの様です。
途中巨大な手につかまるのは右傾化への皮肉かと(右からくるしね)

戦車が通って兵士が出てきて後ろから撃たれるのは
国歌が流れることからもアメリカの風刺なのは間違いないと思います。
前に向かっていたのに後ろから撃たれるのも紛争地域に介入して、
育てた組織が、結果的に自国にテロという形で返ってきたり。。みたいな
ことなのかな(深読みしすぎ?)

娼婦、ライオン、象はちょっとわからないですね。。

最近の時事で娼婦絡みといえば慰安婦問題ですが、2008年の作品なので
そこまで盛り上がってなかった気もするし。。
タクシーからライオンが出てくるのはなんだろう。。
娼婦→金で欲を買う
ライオン→生態系の頂点、脅威→戒め?
金で欲を買ったら何倍にもなって返ってきた。とか
いずれにせよ批判、皮肉だと思います。

象を白人?ともとれるおっさんが鉄砲を撃ちます。
発展途上国を搾取する先進国、搾取した先進国、みたいな
ことかな。
それか、ストレートに自然、人間、の対比か。

そもそもホテルの壁にかかっているのも男女がまぐわっている絵で
色欲とか強欲を感じてしまいました。

ラストでまたサラリーマンが出てくるのは、懲りない歴史、
学ばない人間への痛烈な批判だと思います。
{/netabare}

日本の場合、こういった風刺は
音楽ではもはや不可能で(音楽は日本だと基本芸能、サザンの歌が限界)
映画でもなかなか企画が通りづらい現状があると思います。
このような個人(プロのアニメーターの方ですが)
が製作したものが意味をもってくると思います。
おおいに評価したいです。
これからも期待します。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 2

takumi@ さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

不思議な夢の中のような光景

とても不思議な夢を見たときのような感覚。
ギャグでもなく、シリアスな恐怖とも少し違う。
シュールと一言に言ってしまえばそうなのかもしれないが、
なんとなく、そんなふうに片付けたくないものを感じさせる2分間。

ホテルとあるが見るからに高級ホテルではなく、
時々見かける、マンションをホテルにしてるような空間。
映像を観ていると、なんだかカビ臭い匂いが漂っていそうな気配。
各室のドアから出てくるさまざまなものは、何かを意味しているようでもあり
何も考えずにただ奇をてらっているかのようにも思える。
そこが好みの分かれるところになるかもしれない。

立ち入り禁止の文字から日本だと推測するものの、実に多国籍。
そしてストーリーがあるようでないようで、考えるな!感じろ!なのか
感じたまま考えろ!なのか、正直・・・悩んだ。
ほんと、タイトルのまま「おかしなホテル」でしかない。

クエンティン・タランティーノが3人の監督を集めて作った映画
『フォールームス』のほうがよほど物語になってたよなと思い出したりしたけれど、
あえてありがちな物語にしなかったことが、観る人によっては
何度も観直してみたくなってしまうような味わいを
醸し出している部分なのだろうね。きっと。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 23
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

解けない知恵の輪?

たった2分弱のショートストーリー。
Web公開なので簡単に視聴できます。

http://www.style.fm/as/13_special/sh_okashina_hotel.shtml

…で、肝心の内容ですが、さっぱり意味がわかりません。

意味がありそうで意味がない。
意味がなさそうで意味がある。

メッセージはどこに?
普段テーマ性を求める私にとっては天敵のような作品。
解ける保証のない知恵の輪を渡された気分です。

でもなんらかの答えを出したい私は、繰り返し何度も見てしまいました。
そういう性分の人をいじめるために作ったんじゃないかと思ってしまったほどw

ひとつだけ気付いたのは、この映像は{netabare}無限ループ{/netabare}になっているということ。
ただし、最初と最後でほんの少しだけポーズが違って、エレベータから出てきた男は、少しだけ上を向いています。

そこに何かヒントはあるんでしょうか…。

世の中は、不条理にとらわれつつもできあがっていくもの。
繰り返し訪れる理不尽な出来事。
「歴史は繰り返す」という言葉はありますが、その歴史もほんの少しずつずれていく…とか。
ぼーっとした頭で考えた適当な仮説ですがw

ま、あまり考えると悪夢でも見そうなのでこの辺にしておきますw

投稿 : 2024/05/04
♥ : 29
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