2019年度の好奇心TVアニメ動画ランキング 7

あにこれの全ユーザーがTVアニメ動画の2019年度の好奇心成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月17日の時点で一番の2019年度の好奇心TVアニメ動画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

76.8 1 2019年度の好奇心アニメランキング1位
ケムリクサ(TVアニメ動画)

2019年冬アニメ
★★★★☆ 3.6 (527)
1813人が棚に入れました
赤い霧に包まれた、荒廃した建造物に囲まれた人気の無い世界を舞台に3人の姉妹が生き抜く物語。物語の中心的人物でまとめ髪の特徴的なりん、猫耳でいつもおっとりしているお姉さんキャラのりつ、メイド調の服に身を包み天真爛漫なムードメーカーりな。謎多き世界でこの姉妹が目指すものは一体…

声優・キャラクター
小松未可子、清都ありさ、鷲見友美ジェナ、野島健児
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

世界の終末に「好き」を探すロードムービー

アニメーション製作:ヤオヨロズ、
原作・脚本・監督:たつき、
作画監督:伊佐佳久、美術監督:白木優子

赤い霧が漂う暗黒の空間。
廃墟と化した街並みはまるで世界の終末だ。
最初の舞台は長崎の軍艦島。
そこで、異形の化物である赤虫と戦い、
懸命に生きる3人の姉妹がいた。
彼女たちはまるで植物のように、
水を飲むことで生命を維持し、
道具としてケムリクサを駆使していた。

けものフレンズを指揮した、たつき監督が
かつてニコニコ動画に投稿した自主制作アニメを元に
再構築して完成させた作品。
降板したけものフレンズの続編と放映タイミングが重なり、
何かと作品以外の部分でも話題となった。
脚本、演出、監督を全てたつき氏が担当し、
CGを駆使して作り上げている。
制作はたつき監督が属するirodoriの
たつき、伊佐佳久、白水優子を中心に行われた。
キャラの動きや赤と黒をメインにした作画は、
少人数体制を思わせる粗い仕上がりだが、
世界観や巧みな脚本によって、それらの全てが
あまり気にならないように見せている。

私は未視聴なので分からないが、
世界観は、けものフレンズとの共通点があるようだ。
廃墟に囲まれた謎の世界で3人の姉妹が赤虫と戦い、
水を求めながら生きている。
そこに突然、わかばという男が現れる。
謎が解明されないまま、姉妹と男は
旅をすることになる。

スタートが軍艦島(長崎県)でスペースワールド(福岡県・閉園)、
道後温泉(愛媛県)、瀬戸大橋(香川県、岡山県)、
梅田駅(大阪府・泉の広場は撤去予定)、琵琶湖(滋賀県・沖島)、
黒部ダム(富山県)、富士山(静岡県)、
八王子(東京都・日清食品)、中野(東京都)、新宿(東京都)まで。
日本各地をロードムービーのように旅していく。
{netabare}そして、最後の赤い木との戦いは、
おそらく東京タワーだと思われる。{/netabare}
コラボしていた日清食品も登場。
実際に観ていて、道後温泉や黒部ダムは
分からなかったが、ほかは自分が旅でよく見ていた
場所ということもあって、驚かされることが多かった。
彼らの旅を観ながら、場所を特定する楽しさがある。
サイトでは詳細に比較しているものもあり、
かなり正確に廃墟として再現しているのが分かる。

10話までは少しずつ謎を小出しにしていくだけなので、
観続けるのがなかなか難しいかもしれないが、
11話でこれまでの様々なことが明らかになり、
最終回まで一気に畳みかける展開は見事。
{netabare}全ての出来事が、日本の街並みを再現した
巨大宇宙船のなかで起こっていたという
SFも興味深く、彼らがここにいた意味、輪廻転生、
想いを引き継ぐことを物語に上手く落とし込んでいる。
EDが登場人物の死や誕生の順番を表しているのも面白い。
EDの最終回には、りりとワカバが触れ合う描写もある。{/netabare}

{netabare}ラストで、りょうから語られるのは、
「全員が好きを手に入れられた」ということだった。
おそらく、感覚だけではなく、
りりの「好き」の感情も6つに分かれていて、
りんだけが、手に入れてなかったのだ。
この結末はりんの言葉を「アニメーションが」とするのが、
監督の純粋な想いなのかもしれない。{/netabare}
(2019年4月13日初投稿)

ちょっとした余談(2019年4月14日追記)
{netabare}監督はどこかのメッセージで、好きなことを
このアニメでやった、ということを書いていたが、
おそらく、登場するのは監督の好きなもの
ばかりなのだと想像する。
タイトルの煙草(ケムリクサ)、廃墟、
日本各地の観光地、長崎の路面電車、ルンバ。
そういえば、シロの仲間がたくさんいた
黒部ダムのガルベと呼ばれる遊覧船もそうなのだろう。
この作品は超テクノロジーの暴走によって、
世界が破壊されるという暗い話だが、
監督の「好き」が溢れていることを感じさせてくれた。{/netabare}

投稿 : 2024/05/11
♥ : 84
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

ロッソ (赤) ネロ (黒) の世界

たつき監督のオリジナルアニメ


『けもフレ』未視聴。外野ですったもんだあって背景にいろいろ抱えての2019年冬クールでの放送。
著名監督さんが直接の視聴動機となります。放送前に周囲の関心がそこそこありました。

あらすじは割愛。あにこれサムネ(2019年4月時点)にもある赤い髪の三姉妹、りつ(CV清都ありさ)、りん(CV小松未可子)、りな(CV鷲見友美ジェナ)のところにふらっと男の子わかば(CV野島健児)が現れて開幕。4人を中心というかほぼ4人だけでの閉じられた世界で物語は進行します。
ED映像ではこの三姉妹以外の人物を示唆するシルエットが出てきてこれも順を追って明らかになることでしょう。

{netabare}登場時間は少ないですが、他の姉妹も要所を締めてました。
りく(CV天沢カンナ):武骨な子。第5話で登場。
りょう(CV三村ゆうな):長女でまったりした子。第9話で登場。
りょく(CV関根明良):メガネっ子。同じく第9話で登場。

{netabare}最終バトルは胸アツでございました。{/netabare}{/netabare}

全編CGです。お世辞にも表情豊かとは言えません。技術的なことへの物言いはこれくらい。差し引いても世界観が独特すぎて多少のマイナスには目を瞑って観たい。そんな作品でした。
“ケムリクサ”“あかぎり”“アカムシ”“ヌシ”“シロ”。全て目の当たりにするのは初めての内容です。既視感がありません。
第1話???状態から始まる世界観の提示。徐々にネタ明かしと新たな伏線の上乗せ。若干ネタ明かしのペースは遅めと視聴者を焦らします。つまり謎はしばらく残り続けて、{netabare}ようやく最終回手前の第11話で{/netabare}一気に畳みかけて回収する1クールお手本のような構成となってます。


けっこう大事なことだと思うのが、???状態が長引いた時の視聴態度ですね。世界観に身を委ねれば苦にはならないのですが、私はボーダーラインでした。
物語はしばらく“緊張感”を視聴者に強いることになります。
不明な世界観は

『何が起こっているのかわからない』

時おり訪れるピンチは

『何が起こるかわからない』

加えて色調は全編通して赤と黒が基調と暗めです。赤と黒でワクワクするのはロッソネロ(赤黒)、ACミランの選手入場の時か明治アポロを分けて貰った時くらいでしょうか。
暗めの色彩と劇伴。そして何が起こっているのか何が起こるかわからない緊張感と上手くお付き合いできる人が病みつきゾーンに突入しそうです。
ボーダーラインの私にとっては、だからこそED曲の存在は重要でした。所在無げな私に毎度ピッチの速いビートでリセットしてくれました。

※色調について視聴済向けネタバレ所感
{netabare}暗い色調すら伏線で、最後の最後の青々とした森と水の風景が立ち現われた時のカタルシスは凄かったですね。観てて良かった。{/netabare}



ネタバレなしの内容すら説明が憚られる、どうぞ世界観を感じてくれ!とお伝えしたい作品です。

2周目終わりましたが伏線が丁寧に敷かれていました。???状態が解消される気持ち良さがあります。
告白すると、本作は今期の途中寝落ちの常連でした。緊張感に耐えられなかったのか少なくともグイグイ次が気になる感じではなかったのです。
完走して2周して評価を上方修正したアニメという位置づけとなります。



そしてこれ一般ウケはしなさそう。共通する土台が違います。
目の肥えたアニメ視聴者が独創的な世界観を斬新だと捉えたきらいも多分にあったのではないでしょうか。
もしかするとたつき監督へのエールで下駄を履かせたくなる気分も影響してるかもしれません。

とはいえ良作です。こんなものもあるよと日本のアニメの守備範囲の広さというものが一般層にも認知されればいいな、と。
スタンダールの『赤と黒』も発表当時は全く売れなかったみたいですし。。。



■オマケ
どん兵衛とのコラボCMやってました。お湯を沸かすのもケムリクサってどんだけ万能なん?
{netabare}それに色調だと赤と黒なんですが、物語を軸に考えるとケムリクサのヴェルデ(緑)、アカムシのロッソ(赤)なんですよね。ここは朝ドラで勢いのある日清食品さんより東洋水産さんに頑張っていただきたかったかもしれません。どっちかというと緑のたぬきより赤いきつねが好き。アニメでは悪者の赤ですが、これからも赤いきつねを応援し続けます。{/netabare}



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2019.08.29追記


視聴時期:2019年1月~2019年3月リアタイ視聴


作家性の強い作品です。今クールでの本作。監督は違いますが翌2019年春期の『さらざんまい』。1期に1作品くらい、こういったアクの強いものが出てくると視聴の選択肢が増えて嬉しいですね。いかがでしょう?


2019.03.31 初稿
2019.08.29 修正

投稿 : 2024/05/11
♥ : 74
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

絶滅のオルガノン

監督・シリーズ構成たつき。

瓦礫の山の荒廃した軍艦島(長崎県)的世界で、
水源を求めて旅をするりつ、りん、りなの3姉妹。
謎の赤い霧、襲い来る虫と呼ばれる異形。

自主制作発表からヤオヨロズ制作に変わり、
当然、けものフレンズが上がるでしょうが、
ディストピアな湯浅監督「カイバ」といった趣です。

{netabare}水源の中から現れた少年わかば。
新種のヒト!?
ヒトは既に絶滅を向かえているのか!?{/netabare}
大きな謎で物語は構成されています。

物語の可能性が見事に炸裂すれば、
今期を盛り上げてくれそうな予感もします。

最終話視聴追記。
11話に続き世界の謎が開示され、
演出にも力が籠っています。
物語の着地はここしかないでしょうね。
まるで聖書の黙示録のようだ。
{netabare}巨大なノアの方舟、最初のヒト、
自立型とも言える赤いケムリクサの真実。{/netabare}
記憶の葉の世界は優しい思いに溢れている。

やはり監督なりの生命讃歌なのでしょう。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 65

79.3 2 2019年度の好奇心アニメランキング2位
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~(TVアニメ動画)

2019年秋アニメ
★★★★☆ 3.6 (515)
2042人が棚に入れました
現代の日本で生活している「本須麗乃(もとすうらの)」 は、念願である図書館への就職が決まったその日に亡くなってしまう。もっと多くの本が読みたかった、そんな未練を抱いたままの彼女は気が付くと異世界の幼女マインとしての身体を持って意識を取り戻した。物語の舞台となるのは 魔法の力を持つ貴族たちに支配された中世のような異世界の都市エーレンフェスト。厳格な身分制度の中、現代日本の知識を持つ少女マインが、本を手に入れるために奮闘する。

声優・キャラクター
井口裕香、速水奨、中島愛、折笠富美子、小山剛志、田村睦心、子安武人、日野聡、前野智昭、内田彩
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

足らぬを知って言い訳にしない

原作未読


既刊23巻をもって第4部までひとまず完結しているとのこと。原作の人気ぶりがうかがえます。
全14話で最終回が1月1日。1クールものにしてはボリューミーなのが特長。視聴動機は交流あるレビュアーさんからの好意的な評です。

たしか異世界転生ものが壮大に爆死したのは2019年夏期。遡ること2019年春期までの惨状をもって私は視聴優先順位を下げました。夏期は一つも観ておらず、自身の選球眼の良さを独り誇った夏。
一転して今期(2019年秋期)は『慎重勇者』『けものみち』『私、能力は平均値で…(のうきん)』そして本作とけっこうな量を観てます。どの作品も異世界転生ものが持つ悪名に一石を投じる作品群でした。トレンドが変わるターニングポイントとなるクールだったのかもしれません。


本作の評価に戻ります。
死んでも転生先で本に囲まれた暮らしがしたいとの願望を持って現世での生を終えた女子大生が異世界で奮闘する話。
ファンタジーの基本設定よろしく中世ヨーロッパなわけでして、そりゃあ紙は無いわ、な世界。本は高価で貴族の持ち物。されど転生先は平民だったという元女子大生が!というところがタイトルの“下剋上”に繋がってるんだろうと想像させる導入です。


そんなこんなで本作での石の投じられ方について

・元世界と転生先世界との繋がり+αがある

 {netabare}+αすなわち“葛藤”が描かれてるんですね。これ新鮮でした。いろいろ便利だった元世界と不便な転生先。行動や思考に昔のクセが出てくるわけですが、文明差を利用して俺TUEEE一直線とはならず、むしろそのことで人間関係の軋轢を生んだりと一筋縄ではいきません。{/netabare}


・腑に落ちる感覚がある

 {netabare}:初めて街に出ての一言が「臭い」。下水道完備はここ100年くらいの話なわけでそりゃそーだ。{/netabare}
 {netabare}:たしかヨーロッパはイスラム経由で紙が伝わっていたかと。だいぶ後進世界だったはずなので“紙がない”にまず納得。そこからの文字を残す手段として四大文明からトレース。転じて本を作るためにまずは紙を!との目標設定。紙を生成するためのあの手この手の実現手段がおそらく以前書物で得た知識からだろうと思わせるのに十分な描写。{/netabare}


本作の主役マインちゃんの戸惑いと現状を受け入れていく過程や心情の変化を楽しむ作品でした。
派手さはなくむしろ地味です。むしろ無い無いづくしのところからの地道な積み上げに終始してました。高度成長期を知る世代は懐かしく感じるかもしれませんね(適当)。


 {netabare}「無いものは作ればいい!」{/netabare}


それほど冗談でもなくアニマルスピリットを鼓舞する主人公に勇気づけられる部分もあるやも。良き仲間たちや家族との絆なども含めて当初想定より見応えのある作品でした。
なお、視聴前は転生先世界の図書館内で大活躍する話を想像してましたが、一切そんなシーンはありませんでした。そのへん既刊23巻のペース配分なのかもしれません。続編が確定しております。

遅まきながら秋期作品もだいぶ観終わってきましたが、「2期作成決定!」「劇場版公開決定!」等々 coming soon ものばっかりだったなと振り返り(笑) 今クールの風潮でしたね。



総じて安定してましたし、話もしっかりしていて良かったと思います。EDの中島愛さんの曲もよい。
しかしながら趣味嗜好といいますか、なんとなく苦手だったのが最後まで気になってしかたありませんでした。喉にひっかかった小骨みたいな違和感ですね。
それは…


 {netabare}主人公が幼女というのがどうもダメっす{/netabare}


こればっかりはなぁ 
…お話はほんと面白かったです



視聴時期:2019年10月~2019年12月 リアタイ  

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2020.02.25 
《配点を修正》+0.1


2020.01.25 初稿
2020.02.25 配点修正
2020.07.17 修正
2020.12.02 タイトル修正
2021.03.13 修正

投稿 : 2024/05/11
♥ : 69

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

どうしてもどうしてもかなえたい願い

主人公マインには、どうしてもかなえたい願いがあります。
それは本を読むこと。そして本をつくること。

この物語は、その願いに向かって何度も何度も挑戦し、何度も何度も失敗しながらも、
一歩、一歩、さらに一歩と前進していく物語です。
とても感動します。

可愛い絵に騙されてはいけません。
この物語は人生の縮図のようなものです。
喜びや楽しさもあれば、苦しみや悲しさ、そして残酷な選択を選ばざるを得なくなるシビアさも持ち合わせています。
ですが、ハッピーエンドとなるはずですので、…(多分)(^_^;)安心してください。


本が大好きな本須麗乃(もとすうらの)は不慮の事故で亡くなります。
そして気づいたとき、彼女は異世界へ転生し、マインという少女となっていました。
そして彼女は、マインとして異世界で活躍します。

生まれ変わった世界では科学が発展しておらず、本が貴重なものとして庶民には普及していませんでした。

本が大好きなマインは、それならば自分で本を作ろうと、前向きに頑張ります。
マインのひたむきな本への情熱が感じられます。

もちろん最初は失敗の連続です。絶望を感じるほど失敗してしまいます。
しかし、マインの知識とたゆまぬ努力とが、マインの未来を少しずつ照らしてゆきます。

私は、マインを取り巻く人の輪がだんだん大きくなっていくのを見て、とても嬉しくなりました。


オープニングテーマ「真っ白」を歌っているのは、諸星すみれさん。
彼女はヴァイオレットエバーガーデンの第十話でアンの声優をされた方です。
それを知っただけで私は嬉しくなりました。(^_^)


ところで、
マインは難病をかかえています。
少し歩くだけで疲れてしまい、歩けなくなりますし、すぐに熱を出して寝込んでしまいます。
ですが、マインは人生を悲観することなく、前向きに生きています。
そこがまた、素晴らしい。


現代でも難病をかかえている人がたくさんおられます。
このアニメが、その人たちの励みになればと、私は願っています。

生きることは辛いこともあるけど、楽しいことも沢山ある。
この物語はそれを教えてくれます。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 67
ネタバレ

イムラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

観るたびに面白さが少しずつ増していく

<2019/10/4 初投稿>
第1章観ました。
見始めなので評点はデフォルトの3.0です。

原作未読。
なろう系の異世界転生もの。
と言っても俺つえーではない方のようです。

なろう系が苦手なことの多い私ですが、
一方でアニメや小説で読書に熱中する登場人物が出てくる作品は相性が良いのです。
(そうなる理由はいろいろあるのですが長くなるので割愛)

例えば「図書館戦争」「 ビブリア古書堂の事件手帖」「R.O.D」「ダンタリアンの書架」「GOSICK」とか

本作も主人公マインは本を愛しています。
活字中毒。
そんな彼女が転生した先は{netabare}中世ヨーロッパのような文明・文化の世界。まだ活版印刷が発明されておらず本はほとんど流通していないという活字中毒には酷な世界でした。{/netabare} そこで彼女は・・・というお話。

これから先、お話はどのように展開していくんでしょうか。
例えば「本ってなんだろう?」「文字ってなんだろう?」なんてことに想いを馳せてしまうような展開ならかなり面白くなりそうな気がします。

異世界の建てつけもなかなか面白い。
しっくりくると言った方がいいかな。

声優さんもマインは阿良々木暦くんの下の妹でお馴染み、井口裕香さん。
キーマンになりそうな神官はベテランイケボの速水奨さん。
他にもベテラン・中堅の腕の良い声優さんが揃ってるようで安定感抜群です。

ただキャラクターデザインはなんか古いというか名作劇場というかNHKというかそんな感じ。
しかも原作の画像検索したら小説の挿絵とはかなり違いますね。
まあでも慣れちゃいそうな気もしますけど。

良作になってほしいなーと期待。

でもタイトルに「下剋上」とか残念そうなワード入ってるしなー。

あんまりハードル高くしてがっかりするのも嫌なので暫くは薄目で見るようにしておきます。

1話を観た今期純新作は今のところこれと「けものみち」
なんか変な感じ 笑

<2019/10/10 追記>
第2章です。

この作品、やはりかなりの曲者ですね。
観るのに想像力が必要。

例えば本の記憶。
その世界では本がどんな位置づけなのかをマインが知らなかった、というくだりが第1話にあります。
自分の住んでいる世界の当たり前の事情のはずなのに、なぜマインは知らなかったのか。

その世界では本はめったに見かけるようなものではなく
文字も買い物の値札くらいでしか見かけない。
そんな世界で5歳児が本のこと知らなくて当たり前。

つまりこの異世界はそういう世界なんです。
私たちが生きる現代社会とは全く常識の異なる世界。
おそらく実際の中世ヨーロッパも日本の戦国時代以前もそんな感じだったのでしょう。

第2話でもそうした点は多々見受けられました。
また単なる情報だけではなく、いきなり異世界に放り込まれてしまったマインの気持ちも丁寧に描かれてます。

この物語の楽しみ方は、視聴者がマインになったつもりでその世界の中で置かれた状況をいろいろあれこれ想像しながら・・・というのが一番な気がします。

裏を返せば流し見してたら全くつまらない曲者アニメ(褒め言葉です)

<2019/10/19 追記>
第3章まで観ました

お話はずーっと同じリズムだけど不思議と飽きがこない。
絵も慣れてきました。

自分、結構はまってきてるのかも。

<2019/11/9 追記>
第六章まで観ました。

一歩ずつ踏みしめるように物語が進んでいくのは気持ちいいですね。
そういったところは往年の4クール長丁場のファミリー向けアニメをやはり彷彿とさせます。

一方で一番奥底のベースの部分にファンタジーを敷いているので観ていて不思議な気分になります。
毎回ちょっとずつ新しいトピックが入ってくるところも◯。

古くて新しい、珍しい作品なんだと思います。

さて「身喰い」なんてのが出てきました。
この先、お話はどのように転がっていくのでしょうか。

<2019/11/14 追記>
第七章です。

やっべぞ!
本格的に面白くなってきた。

良い具合にファンタジーもあるとか、びっくり!
契約のシーンはかなり好きです。

そして、マインの身体のことも。

入念に練られたストーリーに思えてきました。

とりあえず評点は中間評価ということで。

<2019/11/29 追記>
第九章まで。

途中から一気に面白くなったり、
急に減速したりする作品は多いですが、
毎話、少しずつ面白さが増していく作品というのは本当に珍しい。

お話自体は淡々と進んでいくのにね。

でもマインとルッツの関係とか
マインの罪悪感とか
ややもすると見過ごしてしまいそうなところを一つ一つちゃんと拾っていく。

これは凄いアニメなのかもしれない。

ということで評価UPです。

<2019/12/5 追記>
第十章まで。

相変わらずゆっくりと、お話は進んでいきます。
でも退屈は全くせず。
なぜか見入ってしまうのです。

マインとルッツは見ていてやはり微笑ましい。
ルッツは子供なのに真っ直ぐで素直で優しい、よくできた少年です。
そして男としての覚悟も。

14話で終了なのだそうですが、この先どうなるのか。
そしてやはり二期が欲しい。

<2019/12/12 追記>
第十一章

ちょっと泣いてもた。
やはり本作、只者じゃないですね。
物語の厚みが素晴らしい。

原作派の皆さんはアニメのキャラクターデザインに違和感あるようですが。
ここまで観て、アニメではこれぐらい軽い感じの方がちょうど良いように思えてきました。
原作未読なのでそう思えるのかもしれませんけど。

名作の類かもしれない。

<2019/12/27 追記>
最終14話まで観ました。

これは良い作品ですよ。
何が?って、とにかくちゃんとしてる。
少しずつ意外性を盛り込みながら、ちゃんと面白い方向に話を転がしている。

マインの怒りのシーンはスカッとした。
源蔵のジャーマンよりも。
つか、神殿長は源蔵にジャーマンで投げられろっ!
とか思った自分がいました 笑。

足腰のしっかりした物語ですね。
これは原作読みたくなりました。

マジ二期期待!!

投稿 : 2024/05/11
♥ : 56

85.7 3 2019年度の好奇心アニメランキング3位
Dr.STONE(TVアニメ動画)

2019年夏アニメ
★★★★☆ 3.8 (756)
3294人が棚に入れました
全人類が、謎の現象により一瞬で石化して数千年――。超人的な頭脳を持つ、根っからの科学少年・千空が目覚める。「石器時代から現代文明まで、科学史200万年を駆け上がってやる!」。絶体絶命の状況で、千空は仲間を探し、世界を取り戻すことを決意する!

声優・キャラクター
小林裕介、古川慎、佐藤元、中村悠一、市ノ瀬加那、沼倉愛美、前野智昭、村瀬歩、上田麗奈、高橋花林、河西健吾、麦人
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

はーすげー!へーすげー!の連続

原作未読


JUMP案件全24話。
謎の石化ビームで人類が活動を止め3,700年。いにしえの時を越えて石化が解けた一握りの人類が科学の途絶えた地球でその科学の知識を駆使して失地を回復していく物語。
主人公はどんだけ幅広く深く網羅してんのよ!なスーパー理系高校生の石神千空(CV小林裕介)。見た目は下仁田ネギを擬人化してオーケンのメイクをしたような感じ。ジャンプっぽいデザインです。そして同級生の高校生ら数名。

『戦国自衛隊』だと現代兵器を信長時代に持ち込んで大暴れとなりますがこちらは持ち込み不可。3,700年ほったらかしだとさすがに文明は絶えて石器時代以前の原始時代かのよう。
同期の『本好きの下剋上』のように現代の頭脳を持ったまま後進文明に乗り込んで「無ければ作ればいい」を試行錯誤するのに似てます。『JIN』も同系統でしょう。そしてさらに文明がないところからスタートするのが本作なわけですからこのテのものでは最難関ハードル。ちょっとワクワクします。

それと自分幼稚園の時でしょうか。世界名作劇場『ふしぎな島のフローネ』から漂ってきた匂いと同じものを感じます。OPもEDも覚えてます。木の上の家は憧れでした。
つまりあぁそういうことか。原体験からくる刷り込みがどうやら自分にはあるようです。
イキリ主人公が教育上どうかとは思われど、少年少女が“科学の面白さ”に触れる良い機会になるやも。


 {netabare}オイラ文系でラッキー?{/netabare}


化学ならびに物理の理系科目に不案内なため、アニメで描かれている試行錯誤の産物が乾いたスポンジに水が浸み込むようにすーっと入ってきます。

{netabare}パクチーとライムなんかでコーラ作れんの?マジでスゲー!{/netabare}

信じるかどうかは俺次第 キリッ なんす。

そして前半のOP「Good Morning World!」がすこぶる良い。なにが良いかって作品にばちっとハマる感覚。久しぶりです。ピストルさんっぽい声質もしっくりくる良曲です。


障害ももちろんありますよ。
文明を起こそうという主人公らを妨害するのは野生の肉食動物や自然の猛威だけかと思いきやそう簡単ではありません。
アンチ文明の敵対する勢力もわりと序盤から登場し、主人公らの前に立ちはだかります。まあバトル要素ですね。


 科学の試行錯誤+バトル要素


このバランスが崩れず2クール完走でした。原作が続いているので続編期待な感じでの終幕。
大袈裟でしょうが“人類の叡智”の触りを感じるのにちょうどよい良作です。ごちそうさまでした。



※オマケ

■“霊長類最強の男”獅子王司ってどうよ?

あらためてこうして見るとすごい名前ですね。さてこの方について
好きですか?嫌いですか?どんなキャラだと思いますか?
私はちょっと受けつけないですね。作者の術中にはまってるのかもしれません。

1.{netabare}動くゴールポスト

敵視する対象が最初は“我欲にまみれた汚い大人”。ピュアな若い連中のみ石化解除しようともちかけ、それを千空に拒否されることで対立の芽が生じました。描かれてませんが、「お前らが年くったらどうすんだ?」と疑問符が浮かびます。
それがいつの間にか“科学を信奉し文明を起こそうとする者”へと。考えが深化したとみるよりゴールポスト動いてんじゃんとみてます。でさっそく作中でツッコミが入りました。途中出会った集落の科学?青年クロムについて千空が言及「俺を殺しても次が出てくる」と。まさにその通りなんですよ。
そのため獅子王司の目指す未来は破綻が約束されてるようなもんです。{/netabare}

2.{netabare}ポル・ポトと変わらん

毛沢東と迷うところですがこっちかな。最初は知識階級だけだったのが順次粛清対象が拡大して…
力で押さえつけるしか方法がないので、この世界で肉体での戦闘力に秀でた司が首領ポジションにいるのがしっくりきます。原作未読の戯言ですが、司陣営でそのうち粛清が始まることでしょう。{/netabare}



■スイカ役の高橋花林さん

超個人的なつぶやきです。
この方1年前の迷作『ソラとウミのアイダ』で主役張られてた方です。すでに多くの方の記憶から消え去っているかもしれない作品ですね。
新人でおそらく初めてゲットした主役級の配役があれでと。そのことをもって高橋さんの今後を案じる旨をレビューで書く、という余計なお世話極まりないことをした記憶があります。
こうして、再会できたのはなによりです。ぜひ頑張ってください。



視聴時期:2019年7月~2019年12月 リアタイ  

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2020.02.07 初稿
2020.07.19 修正
2022.01.30 修正

投稿 : 2024/05/11
♥ : 68
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

悲しき熱帯

トムス・エンタテインメント制作。

地球上の全人類が石化する怪現象が発生。
生き残った少年少女は科学を頼りに、
再び、原始生活から歴史を歩み始める。

語り口が一風変わったサバイバル冒険譚で、
舞台の西暦を聞き、楽しいかもと確信した。

主人公は科学を信奉する合理主義者で、
偶然であれ必ずそこに合理的な理由があると、
数々のトライ&エラーを繰り返しては、
仲間とともに町を発展させていく。

太古から始める生活も、
{netabare}石の時代、火の時代、動力の時代と、
小さな一歩ではあるが、
確実に文明の灯を社会は宿し始めていく。{/netabare}

敵側の集団には少年ジャンプらしい、
主題を持つキャラを配置されていますが、
私はむしろ敵は居なくても良かった。
探索・発見・発明、仲間との友情、
やがて未曽有の危機に瀕した地球の秘密を知る。
そんな物語であってもいいなと思います。

本来、科学とは心まで豊かにするものだ。
人類は心まで実りある社会を取り戻せるのか。
私たちの武器は想像力と好奇心である。

続編が楽しみなアニメですね。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 62
ネタバレ

イムラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

悠大で悠久な物語

<2019/12/22 追記>
全24話見終えました。

面白かったー!

科学の蘊蓄だけでなく、
文明がほぼ原始の世界というだけでなく、
現代に在る科学の凄みだけでなく、
逆転の発想で「今は過去からつながっていて、そして未来に続いていく」ことまでも実感できてしまう。

『悠大で悠久の物語』

ハリウッドが狙ってきそう 笑。

ここは無理があるんじゃないの?という部分ももちろんありますが、そこは架空のお話。
気にしないで見れたモン勝ちです。

二期があるとのことで今から楽しみです。

<2019/7/11 初投稿>
観始めなので評点はデフォルトの3.0です。

原作未読。
あにこれのあらすじ紹介だけで期待値上げてた作品ですが・・・面白いやんけ( ・∇・)

ざっくり言うとタイトルの通り
「ララーシュタインのような髪型した少年が科学でファンタジーに挑む」
と言う感じかな。

ララーシュタインってなに?と言う方は是非、画像検索してみてください。
ついでに言うとこのララーシュタインさんが登場する作品。
OP曲はグラムロックの名曲ですよ。

閑話休題

さて本作、ちょっと変わってる印象です。

普通、物語の分類で
ファンタジーと言えば「科学的裏付けの全くない空想」作品で。
SF(Science Fiction)と言えば「科学的裏付けがあったり、あるように思わせる空想」、 つまり科学と空想が入り混じった作品なのですが。

ところが本作はどちらとも言い切れない。
強いて言えば
「Science(科学) &(そして) Fantasy(空想)」
で「SF」かな

科学的裏付けが全く感じられない現象に対して
めちゃくちゃ地味な科学的考証の積み重ねで立ち向かう。
ScienceとFantasyの二つが融合せず、お行儀よく隣り合ってる印象です。

地味なウンチクも多い。
そう言うの好きな人にはぴたっとハマると思います。

例えば理系のアニオタの私とか( ・∇・)♪

自分は今期、「ヴィンランド・サガ」「炎炎ノ消防隊」「コップクラフト」と並んで注目しております。

<2019/7/15 追記>
2話目観ました。

炭酸カルシウムの4番目の使い道が意味ありげで気になるー笑。

そして新キャラ登場。
獅子王さん。
濃いですねぇ。
{netabare} 空飛んでる鳥を木の上から飛びかかって捕まえちゃったよ、この人 笑。
チート武力{/netabare} 担当だそうです。

さあこれで3人。
人間、3人集まると派閥が生まれるというような言葉がありますが、もしかしたらこれからはそんな展開なんでしょうか。

獅子王さんの発想は昨今の{netabare} 世代間の断絶{/netabare} のようなものを表してて面白いです。

でも、それを是としたら{netabare} ジャンプのような商業誌には載せられなくなってしまいます。
というわけで主役のララーシュタイン、もとい千空さんはかっこよく反発して、{/netabare} 引きへ・・・

でもですよ。
ちょっと思うんです。
もし{netabare} 獅子王さんの考え方に千空さんが同調して物語が進んだら・・・
結局、若い世代同士が新しい利権を奪い合って理想郷なんてできないってことがわかってEND{/netabare} とかSFっぽくてそれもありかなーなんて 笑。


ところで全く話は変わりますが。
他の方のレビュー拝見してて{netabare} 「石化してるのが表面だけならなんで中身の生物は何千年も生きてるの?」{/netabare} というような疑問を複数見かけました。

そこはファンタジー部分だから、と私は飲み込んでおります。
それ言い出したら、{netabare} 石化したら息できなくて数分で死ぬじゃん、という話だし。
仮に呼吸できたとしても水も食料もなければ一週間ももたないし。{/netabare}
そこら辺はファンタジーなんじゃないですかね。

<2019/9/3 追記>
9話まで観ました。

アニメでも映画でもドラマでもなんでもそうですが。

登場人物に対して「なんでそこ気がつかないの?」とツッコんでる自分いませんか?
それは俯瞰して見てる視聴者だからこそのツッコみな訳で。
物語を進める上での重要な部分ほど気がついてくれない。
それが物語の面白み。

ところが、たまにそういうのが極端に少ない作品もあります。
デスノートとかそうですよね。
登場人物が賢いので先の先、裏の裏まで読む。
ところがそれでも裏かかれちゃう。
で、そこが面白かったりする。

本作もデスノと同じ匂いがします。
千空さんはもとより、獅子王さんもかなり思慮深く用心深い。
お互いに裏の裏の裏を掻きあってもう痒いところもないくらい。

もしかしたらデスノの系譜と言える作品なのかもしれないですね。

デスノのようなイケメンいないので女性人気は覚束ない感じですが、理系男の私はハマってます。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 53

64.4 4 2019年度の好奇心アニメランキング4位
BEM(TVアニメ動画)

2019年夏アニメ
★★★★☆ 3.3 (125)
402人が棚に入れました
湾港都市「リブラシティ」。政治・経済・文化の中心であり、街の“富"が結集した「アッパータウン」と、汚職や犯罪に溢れ、人々がお互いを疑い合わざるを得ない「アウドサイド」、その両エリアを分かつ巨大な運河と、一本の「橋」。これらにより構成される、まさに人間の“差別意識"が顕在化した様な街である。そんな「アッパー」から「アウドサイド」に赴任してきた、若き女性刑事・ソニアは、数々の事件を追う中で、人間を守るために戦う、醜い姿の3人と出会う。彼らは一体何者なのか・・・?妖怪人間3人は、それぞれの思いを抱えながら、正体を隠し生きていた。人間に仇為す悪を倒すことで、人間になろうとする「ベム」、人間に憧れ、人間と同じ学校に通い、人間を理解することで、人間になることを目指す「ベラ」、人間や世間に達観し、冷めた様子でゲームの世界に没頭する「ベロ」。彼らはいくつもの事件や、人間たちとの触れ合いの中で、傷つき、悩む。人間のために戦っても、その醜い姿から、決して人間に受け入れられることはない…。そんな3人を探す1人の存在がいる。リブラシティを裏で牛耳る「見えざる議会」を操り、ベムたちを確保しようとする彼女の目的は果たして?

声優・キャラクター
小西克幸、M・A・O、小野賢章、内田真礼、乃村健次、西山宏太朗、斉藤壮馬、諏訪部順一、小野大輔、坂本真綾
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

ねえ本気で早く人間になりたいん?

往年の名作リメイク

『妖怪人間ベム』といえば?


 ベム・ベラ・ベロの三人組
 
 早く人間になりた~い


民放のアニメ特番などで繰り返される表層部分。知ってるはこれくらい。
前作(前々作)を知らないため、ベラがかわいくなってると言われてもピンとこない私です。


政治・経済の中心地“アッパーサイド”と貧民街“アウトサイド”に二分化された“リブラシティ”という街が舞台。頻発する怪事件の裏ではなにかしらが暗躍。
アッパーサイドでポカしちゃった若手の女性刑事ソニアがアウトサイドに左遷されてーの赴任日から物語が始まる、という導入です。

主役の三人。普段は見た目人間の仮の姿で行動し、敵やピンチに遭遇した時だけ見た目醜悪な本当の姿に変身して闘う模様。

この三人がいつか人間になるべく、善行を重ね人間を助けて、でも真の姿を見せちゃうと忌み嫌われて、というジレンマがもの悲しく見えるお話でした。
「早く人間になりた~い」理由も深いものがあります。


で、この『BEM』です。

タイトルをアルファベットに替えるとやりたい放題できるんでしょうか。
その昔、『GOEMON』という石川五右衛門である必要あるんかいな?な戦国物のフリしたSF映画がありました。そちらとの既視感がハンパありません。

オサレ感の演出に余念がなく、「既成概念を跡形もなく破壊する」という公式サイト(『GOEMON』のほうね)の紹介文よろしく好き放題やった結果、原形留めてますかね?的ななにか。

OPは椎名林檎。ED降谷建志が楽曲を提供し両曲ともオサレです。劇伴もジャジーで大人ムード。
物語も実際のところ第一話、第二話は良かったのです。そして巡り巡って終わってみたら尻すぼみという帰着。

前作を知っていればその比較でどうぞどうぞ。
知らなくても作品が伝えたかろうテーマは悪くないです。


■良かったところ1

序盤です。

{netabare}・ソニアとジョエルの刑事コンビ(第一話)
正義を貫きたいソニアと土地(アウトサイド)に順応し上手く立ちまわってるジョエルとの対比が良い。
デンゼル・ワシントンの『トレーニングデイ』を彷彿させる関係性が妖怪人間とどう絡むか期待してました。{/netabare}

{netabare}・なんか人間のほうが悪くね?(第二話/第三話)
第一話ベム/第二話ベラ/第三話ベロ回でした。そこで展開されたのは「人間は悪いやつ」。こんな奴らを助ける意味があるのか?の葛藤とお付き合いせねばなりません。
正邪不透明なモザイク展開は望むところでした。{/netabare}


■良かったところ2

人間になる確実な方法がわからないこと

答えのない道を探すのはやる気の維持も覚束ないものです。事実ベロは及び腰だったりするのがリアル。

{netabare}「人間を信じないと人間になれない」
第一話でベラが呟いた一言がちょっぴり切ないのでした。{/netabare}


後付けで旧作の設定も調べてみて、やはり深みがありそうな気配は感じるのです。
外形を留めてないと述べましたが知る由もないのであくまで想像です。

作中ではその深みみたいなものの説明が不足しておりますが、別のものを作る意図があるのであればそれはそれでけっこう。
別個のものとして、そして先入観なく視聴した結果、物語としても訴えてくるものが少なかったかな~という全体の印象でした。
理由は大小いくつかあれど一点だけ。


■極めて悪かったところ

 悪役担当に魅力がありません

容姿は異形ながら心持ちはむしろ下手な人間より高尚だったり綺麗だったりなベムら妖怪人間三人です。
私怨や公憤なんでもいいのですが、主役三人と敵対するキャラに説得力がないと彼ら三人の輝きも限定されてしまいます。

本作で感じたのは、三人を迫害したい描写だけがほしいという雑さでした。

{netabare}CASE 1 ダリル・ブライソン(学生)

父親殺しの事実誤認だけ見ても知的冷静さとは無縁。単なる厨病激発ボーイにしか見えないこともそれに拍車をかけます。
そんな彼がいつの間にか黒幕組織の中枢に収まっていく過程は失笑を禁じえなかったです。
些末な人物がたいそれたことをしてるように映り、ひいては黒幕組織も矮小化した団体に感じました。

ベロも嫌疑をかけられた時に粘って疑いを晴らせよと思いつつもそれだって、ダリルが利発なキャラ設定だったら不問にできたことでしょう。{/netabare}


{netabare}CASE 2 ヘルムート・フェルト(刑事)

・彼自身が妖怪人間を敵視する理由が不明。説明がありません。
・世論操作を謀る時に「妖怪人間をどげんかせんといかん。なぜなら・・・」の“なぜなら以下”に相当する部分の台詞が意味不明。
・ベムの公開裁判(茶番)も失笑レベルの法廷劇。「じゃあ君はキスできるか?」それ大真面目に言われると腹筋がもちませぬ。

狡猾で敏腕な刑事ぶりを描きたかったんでしょうし、こちらもそれを期待してましたが、役不足もいいところでした。{/netabare}


{netabare}CASE 3 Dr.リサイクル(白衣)

結局、こやつが編み出した改造人間が起こした殺人事件への落とし前をつけてない上に、警察は協力を仰ぐとかわけわかんないです。
マッドサイエンティスト設定にも狂気を感じることすらなし。強いて上げるなら「ヒッヒッヒッ」といったそれっぽいセリフぐらいかしら。残念です。{/netabare}


{netabare}CASE 4 ベガ

といえばストⅡなのだが脱線するのでやめときます。
まだマシなレベルです。ベムたちに執着する理由もわかりやすい。ただしいかんせん手下の駒不足でラスボス感が薄くなっちゃったのがもったいなかったですね。{/netabare}


これはB級コレクターさん向け作品です。



視聴時期:2019年7月~9月 リアタイ視聴

-------


2019.10.16 初稿
2020.04.14 タイトル修正/修正

投稿 : 2024/05/11
♥ : 41
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

エレファントマン

妖怪人間ベム誕生50周年プロジェクト。

<<ナレーション>>
それはいつ生まれたのか誰も知らない。
醜い身体の中には正義の血が隠されている。

子供の娯楽であるはずのアニメでは、
初代「妖怪人間ベム」は特異点であろう。
秘匿された神秘性の恐怖と克服を描き、
異質で怪奇で奇妙で、
それは世代が違うものにも正しく伝わる。
オープニングはアニメ史に残る衝撃であった。

いつか「人」になれる日を夢見て、
事件を解決し、人知れず町を去る。
異形がゆえに人に恐れられ迫害を受ける。
それは正義とは何か、生命とは何かを問う、
世代を超えて語り継がれる主題なのでしょう。

椎名林檎へのオファーは良い選択でしょう。
村田蓮爾のキャラデザインはどうも苦手である。
オールドファンはベラをどう見るのでしょうか。

9話視聴追記。
人を救うことで人になれる。
根拠もない、ただ彼らが信じる道である。
物語の裏が見え始めていますが、
やはり設定や演出に困惑することも多い。

最終話視聴追記。
現代的な妖怪物語の帰結としては、
{netabare}落ち着くべき所に落ち着きましたが、
全体的に主題に対する、訴求が弱い。
もっと「生」の欲求に足掻いて欲しい。{/netabare}
ちびっ子ハラジーはお気に入りです。

私としては残念な結果に終わりました。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 38
ネタバレ

yuugetu さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

9話は良かったけど、全体としては中途半端な所も〈最終話まで視聴・追記あり〉

2019年夏アニメ。
「妖怪人間ベム(1968年版)」の最新のリメイク作品。
これまでに製作されたどのリメイクともずらした要素を入れてきた印象。


【1968年版(初代)、2006年版、実写ドラマ版について】
何かの参考になるかな?と思うので、簡単にまとめてみます。
このシリーズには「人間とは何か」という命題は常についてまわります。ベム達が人間になる方法を見つけることもあるけど……。
気になる作品があれば是非見て欲しい。作品の狙いに共感できるとどれも面白いものですよ。
{netabare}
・1968年版(初代)
壮年の大男、苛烈な性格のグラマーな女、浅黒い肌の子どもの3人組。出生不明。指は皆3本。
子ども向けなので主人公は天真爛漫なベロ。

3人の妖怪人間は妖怪や怪異から人間を守り戦い、最後にはその街を去るというのが基本フォーマット。
「正しい行いをすれば人間になれる」と考え行動しますが、その理由は語られません。人間たちには時に迫害を受けたり、彼らと心が通じたりしますが、正体を知られると恐れられるため一カ所に滞在しません。

国籍や時代は意図的にわからなくしてあるそう。
一話完結で子ども向けですが、古い作品なので胸の痛くなるような話も。妖怪や怪異は人間の敵であり、人の手により闇に葬られたりもする。差別がテーマの一つだと思う人もいるようですね。
ホラー演出もこだわっています。
ラストはバッド寄りのビターエンド。リメイクされてほんとに良かった。


・2006年版
3人の姿はほぼ同じですが少し優しい印象になり、指が5本に。
これも出生不明…だけどもしかしたら?という描写があります。

子ども向けなので主人公はベロ。子ども達とは仲良くなれるけど大人には不審がられ、出没する妖怪を倒したりしてもなかなか報われない。
天真爛漫なベロを丁寧に描き、ベロがベムとベラを精神的に支えることも少なくありませんでした。
「正しい心を持ち続ければいつか人間になれる」という言葉は昔3人を助けてくれた恩人の言葉とされていて、これは独自の要素。
舞台は日本の架空の港町で、高級住宅街と治安の悪い所があり社会の縮図のような感じ。

後半からメインストーリーを展開し、前半の一話完結回の描写を拾っていくのが見物。初代に比べ人間の美醜もかなり強調され、妖怪も人間も善人悪人両方描かれます。
最終盤では胸を抉る話が続きますが、最終回はビター寄りのハッピーエンド。


・実写ドラマ版
若い男性、若い女性、子どもの姿の三人組。
大人向け寄りで、主人公はベム。この実写版はキャスティングが見事で、特に悩める青年のようなベムは意外だけどテーマに合致していて納得させられました。

舞台は日本のある街で、そこに住む人達と交流し、正体が知られると街を去っていきます。数十年ぶりに偶然再会した老人と不老不死のベム達とのエピソードが好き。

この作品でベム達が戦うのは妖怪ではなく、別の存在。人間の持つ「正義の心」と「悪の心」を丁寧に描き、全編通して胸を抉ってきます。
そしてこの作品では独自の設定として妖怪人間の出生の真実が描かれ、物語の核心となりました。
ラストは爽やかなビターエンド。
その後作られた映画版も良い作品でした。
{/netabare}


【今作】
{netabare}
ベムのイメージはそんなに変わらないけど、ベラは女子高校生になり、ベロがやさぐれました。ベロが天真爛漫じゃなくなったのが私は一番驚いたw

物語の舞台(街)も固定され、新キャラクターもかなり多い。敵妖怪もなかなか奇抜といいますか…(汗)妖怪というより人造怪人なのでホラーにならない。
だから結構古参ファンを振り落とす要素が多いかも。

何をしたいのかは、設定の変更などからある程度理解しているつもりではあります。
ただコンテ・演出で画的に伏線を張るのがちょっと苦手っぽい?話数を跨いでの伏線はもう少し印象強くしておかないと全体像が見え難くなるから、世界観の渋さもあって結構致命的。ドラマパートの演出は好きなんだけどホラー的な魅力は少ないしなあ…。
私は結構好きになれそうなだけに色々もったいない。{/netabare}

【9話視聴時点での感想】
{netabare}
舞台となるリブラシティのアッパーサイド・アウトサイドですが、どちらに住む人間も結構ろくでもない…
アウトサイドはスラム化しているし、アッパーサイドは都合の悪い存在をアウトサイドに押し込めてしまう。しかも人間を辞めて生き生きしている敵もベムたちも、人間にとっては怪物扱いなのは同じ。
そしてこの街の在り方に一石を投じるのがソニア、カーヴァー、ギャビンだったわけですね。

第9話は、ギャビンは良い人すぎてかえって胡散臭い人物として演出されていて、ベロの友達も視聴者の想いを代弁します。そして肝心のベムも差し出されたギャビンの手を取れなかった。ベムには最後まで信じるべきかどうか葛藤があったということなのでしょう。
けれどもベムたちはギャビンを守りきれず、信じるに値する人間であったことがその死によって証明されます。

リブラシティで疑問も持たず暮らしている人々にとって、アウトサイド出身でありながらアッパーで成功し、しかも清濁併せ呑める理想家なんてにわかには信じられないと思うんですよね。
アッパーで普通に安全に暮らしてる人にとっては、理解できない・信じられない存在という意味ではギャビンのような人間も妖怪とあまり変わらないのかも。

で、人間て何?という問題は「妖怪人間ベム」の作品群では必ず何かしら答えを示してくるけど、さらに今作は人間として生きるってどういうこと?という問い掛けに繋がってくるんじゃないかって気がしてます。
少なくとも見た目とか体のつくりは答えにならないですよね。だからこそ、ほぼ完全に人間に擬態できているのにも関わらず、ベムたちは人間になることを切望する。
寿命があるからこそ人間は懸命に生きるというのは、その問いに対して大きなヒントになりそう。

「見えざる議会」はリブラシティの在り方に波紋を投じる存在を許さない。もしかしたら他にも目的があるのかもしれませんが、彼らとベムたちが対立していくのは明白。しかも不確定要素となりうるキャラクターが結構いるので最後まで注目したいと思います。{/netabare}

最後に、ソニアの潔癖さと愚直さが超可愛い!と言っておきますw(2019.9.27)


【最終話まで視聴したので追記】
作品が作品なのでラストはこうなりますわな。


【良かった点】
{netabare}
ベム・ベラ・ベロの関係がとても良かったです。周りの人間たちとの関係も好きでした。
ベガはキャラクターもデザインも素晴らしいラスボスだったと思います。もっと描写して欲しかったなあ。

「人間とは何か」ということを「生きる上での行為」と捉えたのは今作の独自性だと思います。
人間は寿命があるからこそ、次世代を残すからこそ懸命に生きる。人間の行為を模倣すること、すべてを経験することがベガにとっては人間になること。大切な人達と共に普通にひっそりと生きることがベムの考える人間の生き方。二人の対比はきちんと出来ていて、孤独で超然としたベガの存在は良かったと思います。
ベガがダリルを後継者にし、ハラジーを引き取ったのは育児の代替行為なのかもしれませんが、二人の幸福な未来を望んでいるわけではないため、最後までベガは孤独でした。

最終話は人間同士・妖怪人間同士が対決し、それぞれの問題とその先の希望をあぶりだす構成なのかなと思いました。
ベム達は人間を信じてリブラシティを去ったのだと思うし、ダリルがリブラシティを良くしていく可能性があるというラストだと思う。
アッパーサイドとアウトサイドを繋ぐ橋は分断の象徴であり、これまでの間違った関わり方の象徴でもあったのだと思います。最終話で橋は落ち、人間の手でアッパーとアウトの断絶を埋める新しい方法を模索していかなくてはならない。

ダリルがベロを信じ尊敬していたカーヴァー議員の意志を継ぐことが出来れば、リブラシティの今後は変わるでしょう。ただ、まだ幼いダリルにとって議会内の人間も味方とは言えないし、リブラシティの在り方に関しては困難な終わり方のような気もします。カーヴァーやギャビンと交流があったソニアと、ダリルが出会っていれば希望が持てるラストと言えたかもしれません。
{/netabare}

【気になった点】
全体的に中途半端な要素が多かった気がします。
{netabare}
人間キャラが物語の本筋に深く関与しないのは良くないと思う。
人間の心の美しさと醜さをバランス良く描いてくれたら、ベムが人間になりたい心理に寄り添えたと思います。いっそ、人間を辞めたヴィランの過去を掘り下げて人間の醜さを、ベム達の周りの人間を掘り下げて人間の美しさを描くとかした方がわかりやすかったかも?

1クールにしてはキャラクター数が多く、持て余してしまった印象はありました。
ソニアをもっと能動的に動かしても良かったと思います。ウッズさんはソニアに足りない部分を補う立ち位置だと思うけど、活躍が少なかった気もするし。
シルクハットの人物が死体を回収する役なのかな?と思っていたけど何してたんだろうね。
全体的に色々と勿体なかったなあと思います。
{/netabare}

【雑感】
そういえばお約束の{netabare}人間に火をかけられるシーン{/netabare}が今作はなかったですね。
京アニの一件に配慮したから(4話も2週遅らせましたし)だと思いますが、少し珍しい一作になったかも。
{netabare}
……あまり言いたくはないけど、2006年版も実写ドラマ版も狙いがはっきりしていたし、ターゲット層を明確化した作品作りが出来ていましたよ。
特に2006年版はあまり評価されていませんが私はとても好きです。監督の原田浩さんは「地下幻燈劇画 少女椿」を作った方で、一度作品を観てみたいなあと思うのですが自主製作なのでなかなか…。
{/netabare}
(2019.12.8)

投稿 : 2024/05/11
♥ : 23

79.7 5 2019年度の好奇心アニメランキング5位
荒ぶる季節の乙女どもよ。(TVアニメ動画)

2019年夏アニメ
★★★★☆ 3.8 (603)
2245人が棚に入れました
あなたの“はじめて"を、わたしにください――。高校の文芸部に所属する小野寺和紗たち女子5人。「死ぬ前にしたいこと」という話題で沸いたある日、部員の一人が投じたある一言……。その瞬間から、彼女たちは“性"に振り回され始める。

声優・キャラクター
河野ひより、安済知佳、麻倉もも、黒沢ともよ、上坂すみれ、土屋神葉、福山潤、広瀬裕也、咲野俊介、戸松遥、花江夏樹
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

純潔の染まる色

アニメーション制作:Lay-duce
監督:安藤真裕、塚田拓郎、
原作・脚本:岡田麿里、音楽:櫻井美希
キャラクターデザイン・総作画監督:石井かおり、

少年少女たちの心をざわつかせる季節。
思春期特有の性的な悩みや思考を、
文芸部に所属する5人の女子高生の視点を通して
鮮やかに切り取ってみせた岡田麿里作品。

一人ひとりのキャラクターの心情を
女性脚本家らしい視点で論理的に解き明かしていく。
繊細な心理描写のリアリティは、
真似のできないオリジナリティがある。

昔は岡田麿里作品といっても、どこかぼんやりとした
「キャラに寄り添った作風」くらいに考えている人が
私も含めて多かったと思うが、自叙伝の出版によって、
作風の裏にある独自性の由来が明らかになったことで、
より作品が理解しやすくなったかもしれない。

岡田麿里の脚本は、徹底的な「他者に対する視線」と
でも言うべきものから成り立っている。
言わば、最近ブームの「なろう系」とは対極にある。
「他者」を客観視しながらも、集団のなかにあるときの
思考や交わりを丁寧に描くことで、アニメの世界にあっても
圧倒的なリアリティを感じさせる。
それは、小学生時代に「他者」になろうとした
経験によって形作られたもので、脚本家としての彼女の
原点のひとつなのだろう。

前置きが長くなったが、この作品もそういう岡田麿里の
視線が随所に感じられる。
しかも、アニメのためというよりは、
漫画原作がスタートだったため、最初から最後まで
しっかりと構成された物語となっており、
完成度は抜群に高い。
私にとっての岡田麿里作品は、細部はとても面白いのだが、
最後の締めになると、いつも何か物足りなさを感じさせたが、
今作は、ラストまでとても上手くまとめられている。

いちばんの特徴は女子高生5人全員が大人に向かって
変化する心の動きをつぶさに見せている点だろうか。
ストーリーの中心は小野寺和沙が「男子」を
受け入れられないと感じつつ苦悩し、最後にはその感情が
変化するというもの。そんななかで5人全員の
心の動きを追いながら、感情の変化を視聴者に
しっかり見せている。

例えば、文芸部部長の曽根崎り香が恋をしたことで、
眼鏡を外して、男に対する考え方が大きく変わるところや、
菅原新菜が大人ぶりながらも徐々に本心を表現していく
過程をコミカルにしかも丁寧に見せてくれる。
心の変化の機微をしっかりと描いている。

{netabare}キャンプファイヤーの影踏み、
り香に対する天城のレポート、
百々子の男を嫌いになる過程、
新菜の歪んだ感情と素直な感情、
ひと葉の野望から生まれた恋、
和沙の恋と友情の間で揺れる思い。{/netabare}
女子高生たちの心模様を実に上手く表現している。

{netabare}り香の退学を撤回させるために起こした
文芸部たちの人質立てこもり事件。{/netabare}
和沙たちは、自分たちが「青」の世界に
いることに気づく。
そこは、心地良いものだった。
「青」の中にいる少女たちは、大人になるために
自らの色を求めて必死に生きる。
時が過ぎ、環境が大きく変化したとしても、
彼女たちがこの季節を忘れることはないだろう。
(2019年11月3日初投稿)

投稿 : 2024/05/11
♥ : 81
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

人生で最もへたくそな時期に捧ぐ

岡田麿里氏が原作から絡んで脚本やって、な作品。原作は未読です。

タイトルからして生々しく、しかも思春期男女(特に女)の心理描写には定評のある岡田氏の作品。

「岡田作品は苦手だけど荒乙は面白い」との推薦を複数いただいてて、楽しみにしてました。


作品自体は思春期の“性”をテーマに、右往左往する文芸部の女子高生5名が各々の答えらしきものを見つけるまでを追った青春群像劇です。

 吾輩は○○である 名前はまだない

整理しきれぬ名付けもできぬ感情は存在し、その多くは経験の蓄積によって落とし所が見つかるもの。

青春群像劇では私たちがかつて通過してきたであろう感情や衝動なりを作品の中に見つけて、自分の思考パターンや嗜好のルーツとなった立ち位置を確認する作業でもあります。
高校を卒業すれば進路はバラバラ。得られる経験も分岐して汎用性に乏しいことが、高校卒業以降を追った作品が少ない理由なのかもしれません。

そして汎用性があるようなないような題材が今回のテーマ。
“性”に対する考え方は個人によって差が相当あるもの。

そんな本人にしかわかり得ぬ感情。いや本人でさえわからない感情について同じようにバラバラだろう相手の感情とを擦り合わせる難儀なことを人生で初めてする作業が思春期世代の恋なんだと思います。

個人差があるのは当然で、ひとつの事象とっても男女で考え方も捉え方も違うことを想像できなかったり、違いはあると自覚しても何がなんなのか袋小路に迷い込んだり。
例えばこの連載は別冊マガジンですが『別マ』と言われて男子は『マガジン』を女子は『マーガレット』を想像し、お互いの前提がずれてる中言葉のキャッチボールを交わしてるうちに悶々としてしまう。
ほんの少し先になれば『マガジン』も『マーガレット』もあるって気づくものです。それがなかなかそうはならないもどかしさを作品で表現することは難儀なことでしょう。


前置き長くなりましたが、つまり、

 これまで数多語られてきたけどまとめられんのかいな?

好きだ惚れたから一層も二層も踏み込んで、本来同じカテゴリーなのにあえて切り離すことで物語を作りやすくしていた“性”なるものに焦点を当てちゃった本作。
個人差が激しいネタについて、きっとそんな時期を通過したであろう私たちにリアルな質感をもって届けてくれるかに着目したわけであります。

結果、文芸部員5名それぞれに異なる立ち位置を与え、かつそれぞれに対となるパートナーをあてがい、パズルのピースをはめていくようなストーリーに仕上がっていました。男はあくまで彼女たちを輝かせるための舞台装置。主役はあくまで乙女たちです。
よくパズル組めたな~。率直な感想です。一覧は以下。当然1対1とは限らないのですが詳細は本編参照。


【文芸部員】
小野寺和紗(CV河野ひより)
菅原新菜(CV安済知佳)
曾根崎り香(CV上坂すみれ)
須藤百々子(CV麻倉もも)
本郷ひと葉(CV黒沢ともよ)

【パートナー(仮)】
典元泉(CV土屋神葉):{netabare}対和沙要員{/netabare}
天城駿(CV広瀬裕也):{netabare}対曾根崎先輩要員{/netabare}
山岸知明(CV福山潤):{netabare}対本郷先輩要員{/netabare}
三枝久(CV 咲野俊介):{netabare}対菅原氏要員{/netabare}
杉本悟(CV花江夏樹):{netabare}対もーちん要員{/netabare}


実のところパズルが組み立てられた時点でおおむね満足しています。いいもの見せてもらいました。
リアルな質感があったかどうかは個人差によるものはあるでしょう。具体的にはこんなところが良かったなぁと私が思ったところは以下、


■OPを飛ばしちゃダメ

曲中に文芸部員たちの独白みたいな合いの手が入るわけですが、全OP一定ではなく変わっていきます。
作品世界をよく表したOPなので飛ばすのももったいないのもありーの、その回冒頭から集中を促す効果がありました。


■結局全員荒ぶる

キャラの掘り下げが全員できてたという意味ではなく、5名ともきちんと荒ぶってました。


■ざわつく

岡田脚本の特色なのか、円満にしときゃいーのにそれ要るかな?ってネタを挟んでおり、またそれがリアルな質感がありました。
安心安全なピュアピュアな恋愛を期待するのも野暮というほどさらりと毒を盛り込んできます。

{netabare}・部長の彼氏がちゃっかり前カノのおっぱい揉んでる事実
 ⇒経験者じゃないと曾根崎先輩を攻略する前に心が折れてたかもしれないという仮説
・あの杉本が女を連れている(最終話ED)
 ⇒地獄へ落ちろ!との視聴者の期待を嘲笑うかのようにしっかりキープ。なんだかんだ動く奴は強い
・本郷ちゃんが報われない
 ⇒いい子なのにね{/netabare}



最初はインパクトのある下ネタという飛び道具を織り交ぜながら、「おいおい大丈夫かよ」とくぎ付けになり、適度に乙女たちが荒ぶりながら最後の最後でぶつかり合ってという青春ど真ん中をいく良作でした。
端的に言えば序盤から終盤{netabare}10話{/netabare}までのわりと緻密な展開と打って変わっての後半の勢い。
慌てて畳んだ感が無くもないと言えますが、ここは『荒ぶる』感が出ていたと好意的に解釈してます。
{netabare}もう2話時点で和沙が自分の気持ちに気づくとか、5話で最も縁遠そうな部長がくっつくとか、その後どうするの?を長めに取る構成は良かったです。{/netabare}

個人差ありまくりの“性”の捉え方に関して、本作でのそれについてはノーコメント。
ただしきっと、登場キャラのうちに「あ、これ私だ!僕だ!」な子だったり言動行動が見つかるのではないか?と思えるほど網羅性は高いように見えますね。
現在進行形の方はがっつり共感して。はるか彼方の御仁は軽くキュン死しながら悶え狂いましょう。私も悶えました。おすすめです。




※ネタバレ所感

■パズルのピースについて
ほうぼう荒ぶっておきながらしっかり着地できたのって、主演女優5名と対になった野郎どもとが似たもの同士だったからではないかと思います。

・和沙VS泉
 {netabare}上半身と下半身が別の生き物同士

最終回でお互い似たもの同士だよねと分かり易く描かれてました。典型的な思春期のアンバランスさを体現した二人で主役にふさわしかったと思います。

{netabare}「泉。私ね。これからも不安になると思う。でも泉と同じ気持ちと同じ言葉、私はちゃんと持ってるんだって!分かったから…不安になっても、それを思い出せば…きっと大丈夫」{/netabare}
このセリフを言えたからこその主役でしょう。不安になると言葉に出せた時に大きな成長を感じました。{/netabare}


・曾根崎先輩VS天城
 {netabare}素直な者同士

お互い耐性ないので基本ちょろいです。考えてるようで実はそうではありません。よく言えば真面目で一途といったところでしょうか。浮気は絶対許しません。{/netabare}


・本郷ちゃんVSミロ
 {netabare}言葉先行で行動に移れない者同士

若さゆえに本郷ちゃん頑張りますが失敗重ねてるうちにそのうち諦観しそう。ミロ(三枝先生)がそのなれの果てかしら。言い訳先行でまたそれがもっともらしく聞こえるタイプ。
そんな本郷ちゃんが最も荒ぶってるように見えるというのが“荒ぶる季節”のアンバランスさを表わしてるようで心地よいです。{/netabare}


・菅原氏VS三枝
 {netabare}持てる者かつ特殊フェチ同士

周囲から羨ましがられてます。周囲からの見られ方と自身の嗜好にギャップがあるのが悩みどころ。医者や高級官僚がSMにハマるみたいな倒錯性を感じます。ちがう?{/netabare}


・もーちんVS杉本
 {netabare}相手が見えてないもの同士

自己中とも言います。杉本は言うに及ばず、もーちんもなかなかの猛者です。「なんで自分の思うとおり動いてくれないんだろう?」が先にあると恨みつらみが積み重なっちゃいますよね。{/netabare}



合ってるかどうかは知りませぬ。それは違うさーというのも笑いながらツッコんでみてください。



最後に、、、
なんだかんだ本郷先輩の今後が気になるところです。

{netabare}「止まらない電車に乗っちゃったんですよ我々は!」
ブルーハーツの伏線回収お疲れ様でした。{/netabare}

{netabare}あと真っ白になったと言い残して燃え尽きてましたが息してますよね?
自分で蒔いて自ら回収とはさすがです。

ぜったい素敵な女性になっておくれよー(^_^)/~{/netabare}



視聴時期:2019年7月~9月 リアタイ視聴

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2019.09.28 初稿
2020.04.10 タイトル修正/修正

投稿 : 2024/05/11
♥ : 72
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

揺れる思い、荒ぶる乙女心

原作 岡田麿里・漫画 絵本奈央。

文芸部に所属する女子高生が、
思春期特有の「性」の悩みに振り回される。
お年頃な乙女たちの青春群像コメディ。

大胆で繊細なテーマですが、
コメディタッチで描かれているため嫌味がない。
小さな共感とクスッと笑える展開が、
どこかにきっとあるだろうと思います。

4話視聴追記。
時代錯誤的に誇張された表現が微笑ましいと、
お気楽に見ていたのですが、
少女たちのあるべき葛藤が群像的に顕在化し、
ちょっと待てと…襟を正し始める。
{netabare}通過儀礼により失くしたものを問いただし、
失ったものの賞味期限を確かめているようだ。{/netabare}

これはただのコメディではなかった。

11話視聴追記。
揺れる思い、荒ぶる乙女心。
終幕に向け大きく動き始める青春群像。
{netabare}現状を維持するための行為が、
むしろ現状を理想から遠ざけてしまう。{/netabare}
青春のもどかしさが上手く表現されている。

最終話視聴追記。
新しく芽生える感情、
まだ名前も知らないその感情に、
振り回されては抗する乙女たちの純情。
全てに不器用だった私たちの青春と共鳴し、
様々な素敵な色を見せてくれる。
最後の台詞までセンスがあり楽しめました。

素敵な恋の季節の物語でしょう。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 71

75.5 6 2019年度の好奇心アニメランキング6位
キャロル&チューズデイ(TVアニメ動画)

2019年春アニメ
★★★★☆ 3.7 (395)
1286人が棚に入れました
人類が新たなフロンティア、火星に移り住んでから50年になろうという時代。多くのカルチャーはAI によって作られ、人はそれを享楽する側となった時代。ひとりの女の子がいた。首都、アルバシティでタフに生き抜く彼女は、働きながらミュージシャンを目指していた。いつも、何かが足りないと感じていた。彼女の名はキャロル。ひとりの女の子がいた。地方都市、ハーシェルシティの裕福な家に生まれ、ミュージシャンになりたいと思っていたが、誰にも理解されずにいた。世界でいちばん孤独だと思っていた。彼女の名はチューズデイ。ふたりは、偶然出会った。歌わずにいられなかった。音を出さずにいられなかった。ふたりなら、それができる気がした。ふたりは、こんな時代にほんのささやかな波風を立てるだろう。そしてそれは、いつしか大きな波へと変わっていく───

声優・キャラクター
島袋美由利、市ノ瀬加那、大塚明夫、入野自由、上坂すみれ、神谷浩史、宮野真守、堀内賢雄、宮寺智子、櫻井孝宏、坂本真綾、安元洋貴、大塚芳忠、菅生隆之、梶裕貴、蒼井翔太、東山奈央、佐倉綾音、飯塚昭三、白熊寛嗣、浅沼晋太郎、久野美咲、田村聖子、落合弘治、吉野裕行、谷昌樹、岩崎ひろし、諏訪部順一、青山穣、柿原徹也、山寺宏一、沢木郁也、林原めぐみ、木村昴
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

若葉のころ

渡辺信一郎総監督、ボンズ制作。

火星に住む、お嬢様のチューズデイは、
ミュージシャンを夢見て、家を飛び出す。
同じ夢を持つキャロルと運命的な出会いを果たし、
春に芽吹く若葉のように2人は奇跡の物語を育む。

少女の「歌」、あるいは「詩」、
世界名作劇場のように優しく始まる。
きっと肯定すべき物語だろう。
四季の美しさに、世界の美しさに、
そして未来の美しさにそう感じるままに、
五感を研ぎ澄ませ知覚したものが、
私たちの意識に宿り、それは花咲き、
色も形もない「音」という表現に多様性を見る。
朝の空気にだって、響きはあるのだ。

うん、きっと可能性の物語だ。
なんて爽快な始まりなのでしょう。

中盤を迎え。
音楽性に関してはアニメの枠では図れない。
{netabare}棄権扱いとなった決勝戦で奏でる、
孤独な人に捧げる優れた楽曲が、
静かに心に沁みて音楽の偉大さを知る。{/netabare}

最終話視聴追記。
予想していた結末とは違いますが、
{netabare}私はこれで良いと思います。
愛のない世界の中心で愛を叫ぶ、
音楽は心を通じ合わせる偉大な魔法なのだ。{/netabare}

序盤が素晴らしく、過度に期待した分、
構成や設定に疑問が残る点もありますけど、
素敵な音楽から力を授かる。
この点に於いて素直に称賛したいと思います。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 70

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

魂を揺さぶられる音楽が聴けるアニメ

このアニメを楽しんで見るこつは、音楽を純粋に楽しむことです。
そうすれば、素晴らしい歌に出会えます。魅力的な音楽を楽しめます。

実際に、このアニメで歌われる音楽で、私は魂を揺さぶられました。
音楽好きの人にぜひともお勧めするアニメです。

音楽は世界共通の言語です。
年齢や国籍に関係ありません。
ましてや文化や肌の色にも関係なく、
歌い手や演奏者の心を聴き手に伝えてくれます。感動を与えてくれます。

今回、第二話ででてきた 「The Loneliest Girl」の歌、
これが実にすばらしい。
歌詞はすべて英語ですが、キャロル&チューズデイの二人の心が、じわーっと伝わってきました。
また、オーディションの決勝戦でアンジェラが歌った「Light a Fire」も名曲です。私の心にしっかりと響きました。

そして、キャロル&チューズデイが準決勝で歌った「Lost my way」も名曲です。
単純なピアノの伴奏だけなのに、透きとおるような二人の歌声が見事に調和しています。
さらに後半のエンディングの「Not Afraid」も素晴らしい。低音部から高音部まで歌いこなせるアンジェラならではの魅力的な歌でした。
ついでにサイドニアフェスでキャロル&チューズデイが歌った「messege in the Wind」は、まさに風の妖精が歌っているような美しい音色でした。


この物語では、音楽を通じて、孤独だった少女たちが友達になり、やがて、仲間が増えていきます。
これも、音楽の力です。
おそらく孤独だったのは、キャロル&チューズデイだけでなく、アンジェラもでしょう。

世の中に、魔法というものは確かに存在します。
そのうちの一つが音楽です。
音楽は人の心を変えます。人の行動を変えます。そして、世界を変えます。
それは素晴らしいことです。

この物語は、キャロルとチューズデイの成長だけではなく、アンジェラの心の成長も描いています。
今まで我儘で世の中の厳しさを知らなかったアンジェラが、芸能界で生き残る厳しさを知り、少しずつ人間としての優しさを身につけてゆく物語でもあります。

最後にみんなで歌った「Mother」。あれはキャロル&チューズデイやアンジェラに仲間ができたことの証明です。
多くの人が一緒に歌うのは、それだけで感動します。

少々脱線しますが、
昔は交響曲と合唱とは全く別物として扱われていました。
しかし、ベートーベンの第九により、この二つが初めて融合したのです。
音が聞こえない型破りの作曲家が、音楽は何ものにも束縛されない自由なものであることを証明してくれたのです。
彼女らも、それを証明してくれました。
難民キャンプで育ったキャロルと大統領候補の娘のチューズデイ。
この二人がつくる歌は、まさに人類の輝かしい未来を象徴しています。

もし、海外の人と話す機会があれば、キャロル&チューズデイの話をしてみませんか?
それがきっかけで多くの人と親しくなれるかもしれませんよ。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 68
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

トゥルー・カラーズ

アニメーション制作:ボンズ
総監督:渡辺信一郎、監督:堀元宣、
キャラクター原案:窪之内英策、
キャラクターデザイン:斎藤恒徳、音楽:Mocky、
音楽制作:フライングドッグ
原作:BONES・渡辺信一郎

西洋の油絵を彷彿とさせるようなオープニング。
女性デュオのヴォーカルに
アコースティックギターの音色が美しく重なる。
カーペンターズやキャロル・キングが脳裏に浮かぶ。
街並みはニューヨークを思わせる。

フジテレビがノイタミナとは別枠で、
より海外を意識した作品を発信することを
目的として制作される
「+Ultra(プラスウルトラ)」の第3弾。
あらゆる部分で海外のテイストが見受けられる。
そばかすのある金髪お嬢様のチューズデイと、
アクティブでサロペットパンツを着こなす黒人風のキャロル。
ふたりが火星のアルバシティで出会い、
音楽で意気投合するところから物語は始まる。
女性デュオとしてミュージシャンを目指すふたりは、
マネージャーのガスやAIプログラマーのロディーたちと
ともに音楽による表現の道を歩んでいく。

各話タイトルは、60~80年代のアメリカのヒットナンバー。
どれもインパクトのある良い曲ばかりなので、
知らない曲があれば、ぜひ聴いてみて欲しい。
総監督・渡辺信一郎の趣味が色濃いのではないだろうか。
個人的に思い出深いのは5話タイトルの
ザ・ポリスの『Every Breath You Take』。
日本語タイトルは『見つめていたい』。
アメリカ・ビルボードチャートのランキングで
8週連続1位を記録した大ヒット曲。
ウッドベースを弾くスティングを中心とした
モノクロのPVが最高に格好良くて、
子供ながらにこれは何か違うと思ったものだった。
インパクトがあって好きなのは9話タイトルの
モット・ザ・フープル『All The Young Dudes』で、
日本語タイトルは『すべての若き野郎ども』。
イアン・ハンターの気だるげで絡みつくような
ヴォーカルに泥くさいギターとキーボード、
若者の胸を打つメッセージ性のある歌詞も良い。
当時の若者のアンセムになったグラムロックだ。
解散寸前だったグループを存続させるために
デヴィッド・ボウイが曲を提供したが、
自身でも歌っていることがある。
キャロル・キングの作った曲が『A Natural Woman』と
『It's Too Late』の2曲入っているのは、
渡辺総監督の嗜好の表れだろうか。

この作品の最も特異なポイントは、
レベルの高い劇中曲を全てオリジナルで作成したことだろう。
オリジナルサウンドトラックを購入したが、
テイストの違う良曲揃いで、
何度でも繰り返して聴くことができる。

特にコンテストやライヴで披露された
アンジェラの『Light A Fire』、『Move Mountains』
『ALL I WANT』、そして
キャロル&チューデイ『The Loneliest Girl』や
『Someday I'll Find My Way Home』、
ピョートル『Dance Tonight』、
シベール『La ballade』、GGK『Gravity Bounce』などは
どれもその1曲で通用するほど聴きごたえ十分。
中でもいちばん好きなのは『Light A Fire』だ。
よくこれだけのアーティストと曲を集めたものだ。
70年代から00年代くらいまでに海外で流行った曲の
テイストが散りばめられているように思えるが、
インタビューなどを読むとかなりざっくりとした
指示しか出していなかったようだ。
それでも、どの曲も懐かしさを感じさせる。
例えばキャロチューの曲は、生音と女性ヴォーカルが特徴の
カーペンターズやキャロル・キングが基本だろうし、
アンジェラはフージーズのローリン・ヒルあたりを
意識しているのだろう。
GGKの曲は、90年代にアリーヤなどが一世を風靡した
プロデューサー・ティンバランドのチキチキと呼ばれる
サウンドを意識しているのは明らか。
幅広い魅力ある楽曲を聴かせてくれるのは嬉しい。
それにしてもアンジェラとキャロル&チューズデイ役の
アーティストのアリサや
ナイ・ブリックスとセレイナ・アンを
抜擢したのは、さすがのセンスの良さを感じさせる。

それと、キャラクターの造形や背景でモデルを想起させる。
タオ→テイ・トウワ、
キャロル&チューズデイ→カーペンターズ
(サイモン&ガーファンクル)
アンジェラ→ローリン・ヒル
クリスタル→ビヨンセ
ピョートル→ブルーノ・マーズ
OGブルドッグ→50セント
ガス→ジャック・ニコルソン(『シャイニング』)など。
事細かくチェックすれば、もっと出てくるだろう。
そういうことを想像する楽しみもある。

この作品は、基本的にはやりたい音楽をやるための
アニメと言っても差し支えない。
そもそも出発点はボンズの社長と渡辺総監督、
フライングドッグの社長によって、
本物の音楽のアニメ作品を作ろうという
コンセプトで立ち上がったもの。
世界に通用する良い音楽を違和感なくやるために、
火星という舞台が考えられたという。
これが地球だとどうしても様々な制約が
生まれてしまうからだということを
フライングドッグの社長がインタビューで語っていた。
上質な音楽を自由にやり切るために
全てが始まった企画なのだ。

さまざまな方面のアーティストに声をかけて、
幅広い有名アーティストが集まった。
フライング・ロータス、サンダーキャット、
ベニー・シングス、スティーヴ・アオキ、
エヴァン・”キッド”ボガート、ローレン・ダイソン、
コーネリアス、Nulbarich、cero、
アリソン・ワンダーランドなどのメンバー。
最近の最前線の音楽については疎いので、
私にとっては知らない名前もたくさんあるのだが、
例えば、サンダーキャットというベーシストは、
ケンドリック・ラマーのアルバム『To Pimp a Butterfly』に
参加しており、そのなかの『These Walls』という曲が
グラミー賞を受賞するなど世界的に知られている人物。
フライング・ロータスはジャズのジョン・コルトレーンが叔父で
6枚のアルバムをリリースしている親日家だ。
また、ここで初めて知ったベニー・シングスは、
作品内で多くの楽曲を手がけているが、とても質が高いと思う。
オランダ出身のプロデューサーということで、
これからさらに有名になるかもしれない。
前期OPを担当したNulbarichも初めて知ったが、
とてもセンスの良い曲で、日本人ということに驚いた。
挿入歌を手がけるアーティストは音楽のジャンルも多彩で、
映画制作でも集められないほど、あり得ない企画といえる。

ただ、そのせいでシリーズ構成や脚本を
練られなかったのは残念なところ。
当初の脚本は渡辺あやの名前で発表されていた。
これは『カウボーイ・ビ・バップ』の脚本を
TVドラマ『白線ながし』の脚本を手がけた信本敬子が
書いたのと同様に、普通のアニメにはしないために
新たな風を入れる試みだったのだろう。
しかし、スタートした時点で既にクレジットはなく、
原作とシリーズ構成を渡辺総監督自身が担当している。
テイストの違うオリジナルの楽曲を
多くのアーティストに依頼したため、
ストーリーに費やす時間が短くなってしまい、
降板する事態になってしまったと想像する。

渡辺あやは映画『ジョゼと虎と魚たち』で、
一躍有名になった脚本家。
この作品は、監督の犬童一心や
俳優の妻夫木聡、池脇千鶴などの名も高めた傑作。
とても心に沁みるラブストーリーなので、
もし未見な方がいたら、ぜひ観てもらいたい。
私は映画館で2度観て、田辺聖子の原作にも手を出し、
DVDも購入してしまった。
今度はアニメ化もされるので、
実写と併せて観るのもいいかもしれない。

話が逸れてしまったが、
そんな事情もあり、シリーズ構成や脚本に問題点が
あるのは否めない。曲に細かい指示を出せないことが
多かったらしく、曲に合わせてストーリーを
作り変えたこともあったそうだ。
物語に合わせて曲を作ったのは、
『The Loneliest Girl』だけ(12話までは)と
いうことだったので、ストーリーにはかなり苦労したようだ。
そんななか、唯一脚本が良かったと思えたのが
15話の「God Only Knows」だったのだが、
この回だけを信本敬子が担当していた。
やはりじっくり時間をかけて脚本を書いてもらえれば、
良いストーリーになったと思える。

一応、作品全体には、ぼんやりとしたひとつの流れがある。
それは人々が誰もが持っている「素晴らしい色」とでも
言うべきものだろうか。
第1話タイトルにシンディ・ローパーの
『トゥルー・カラーズ』を持ってきたことに
作品が目指したものを何となく読み取ることができる。
{netabare}それは、現在の世界情勢を反映させた、
民族主義的な火星の政治家たちの動きや、
現在、アメリカやブラジル、イギリスで起こっている
世界の流れをつなげて描いているのだろう。
しかし、ストーリーとしては、そのような民族主義に
LGBTやデザイナーズ・チャイルドなどの素材を
散りばめただけで終わってしまった。
音楽も当初はAIと人での対比で進めていたはず
なのだが、どこかへ飛んでしまっている。{/netabare}
おそらく主役をアンジェラにしたほうが、
ストーリーとしてはまとまったと思う。
全体を見渡すと、ほぼアンジェラが中心にいる
ストーリーに見えてしまう。

{netabare}最終話でミュージシャンたちがボランティアで集まり、
『We Are The World』的なメッセージを送る。
あらゆるものは、歌詞にあるような「母的」な
自分自身のアイデンティティに帰属し、
それぞれが違った美しい光を放つということだろう。
この『MOTHER』という言葉には、
おそらく「地球」という意味もあって、
常に変化が求められている時代であっても、
皆が地球という共通の「母」があるということか。{/netabare}
ラストのタイトルがサム・クックの
『A Change is Gonna Come』という差別体験について
歌った公民権運動につながる曲を使用している
ことからもそれは想像できる。
ただ、『MOTHER』を歌うことが
当初から煽り続けた「奇跡」かと問われると、
そこまでは感じられないし、
シリーズ構成が崩壊したせいで、積み重ねが弱く、
心に届くような物語にはならなかった。

とはいえ、アニメではまず集められそうにない
面子を集め、質の高い音楽を制作し、
それに合わせたストーリーを構築したのは素晴らしい。
演奏やダンスの動きもクオリティが高く、
実際に撮影をしてアニメに取り入れた、
こだわりの作品となっている。

これまで誰もやったことのない領域に手を伸ばし、
一定のレベルでやり遂げた。
それについては称賛したい。
(2019年10月26日初投稿)

投稿 : 2024/05/11
♥ : 60

73.7 7 2019年度の好奇心アニメランキング7位
同居人はひざ、時々、頭のうえ。(TVアニメ動画)

2019年冬アニメ
★★★★☆ 3.6 (296)
1061人が棚に入れました
他人が苦手で、人見知りの小説家・朏 素晴と人に捨てられ、過酷なノラ生活を生き抜いてきた猫。ふとしたきっかけで一人と一匹はいっしょに暮らし始めるが・・・?

声優・キャラクター
小野賢章、山崎はるか、下野紘、堀江瞬、安済知佳、中島ヨシキ、村瀬歩、津田健次郎、杉田智和、東城日沙子、豊口めぐみ、小野大輔、南條愛乃

フィリップ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

哀しみと温もりのファンタジー

アニメーション製作:ゼロジー、監督:鈴木薫、
シリーズ構成:赤尾でこ、
キャラクターデザイン、作画監督:北尾勝、
原作:みなつき、漫画:二ツ家あす

昔、実家で猫を飼っていたこともあり、
猫の登場する物語は好きだ。
小林まことの『ホワッツマイケル』や
杉作の『クロ號』は楽しく読んでいた。
大佛次郎の『猫のいる日々』も持っている。
最近はそういう作品とも縁遠くなっていたため、
懐かしい気持ちになった。

両親を事故で失った小説家の朏素晴(みかづき すばる)が
両親のお墓がある場所で猫を拾って同居を始める。
人との交流が苦手な素晴が肉親を失った
同じ境遇の猫とふれ合うことで、
自分が受けていた愛情やかつての大切な日々を思い出し、
新たな道へと歩んでいく。

この作品はファンタジーの括りと言える。
素晴と猫のハルの両者の視点から物語が展開するからだ。
つまり人間と猫がそれぞれ何を考えていたのか、
どのようにすれ違っているのかが、
分かるようになっている。
ただし、リアルではなく、ファンタジー色が強い。
病気になった素晴を心配して、
ハルがエサを後回しにして素晴の元に駆け寄る描写などは、
猫を飼ったことのある人なら、
誰もが「絶対にあるわけない」と思ってしまうだろう。
猫同士や犬と会話するシーンもある。

しかし、そういうファンタジーが
この作品の最大の特徴で魅力。
特に素晴とハルが分かり合えないお互いのことを
少しずつ理解して、ゆっくりと関係を育んでいくのがいい。
ハルが名前の意味を知り、優しいものに
ふれた気持ちになって心を通わせるシーンには
気持ちが揺さぶられて驚いた。

大切なものを失ってしまったとき、
たとえ、その時には感情があまり動かなかったとしても、
時が少し経ち、思い出が蘇ってきたとき、
不意に哀しみに襲われることがある。

素晴は幼年時代に友人のいない、
本ばかりを読んでいる人生を送ってきた。
そのため、他人と心を通わせる感情が欠落している。
だが、両親が健在だったときには、
その欠落を意識しなくても、
両親からの愛情を無意識ながらも感じ、
快適に生きていくことができたのだ。

ところが、両親がいなくなると、
自分の欠落をより大きく感じてしまうことになる。
そんなときにハルに出会い、
両親がいかに自分を愛していたのかに改めて気づかされる。
ハルも姉として弟たちと暮らしていたことを思い出す。
自分たちの失ってしまった大切な者に対する気持ちを
お互いに感じ合い、人間と猫が家族になっていく。
この作品は、あまり人間と猫ということに
こだわり過ぎず、コミュニケーションのできない、
喪失感を抱えた者同士が少しずつ相手を思いやって
癒されていく話というくらいに捉えたほうが、
引っかからずに観られるかもしれない。

私たちは大人になるに従って、
何もかもが永遠には続かないことを実感する。
時間が経つごとに色々なものを失い続けるからだ。
だから、心のどこかに哀しみを抱えているわけだが、
それを知るからこそ、誰かと過ごす時間が
より大切なものだと思えるのだろう。
(2019年4月6日初投稿)

※それにしてもEDの奥華子の曲は、相変わらず素晴らしい。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 65
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

同居人は昭和のオカン

原作未読


手っ取り早く視聴率を稼いでくれる3つの素材は「グルメ」「子供」そして「動物」なんだそうです。
翻って当方、この中で反応するのは「グルメ」のみ。幼少期から現在に至るまで犬や猫、熱帯魚含めて愛玩動物を飼いたいと思ったこともなければ、動物を見て可愛いと思ったことも記憶にございません。

あらすじ:とある事情で古家に一人住まいする青年“朏素晴(みかづきすばる)”とその素晴に拾われた野良猫“陽(はる)”のハートウォーミングな交流のお話です。
視聴動機が猫という方は多いでしょう。そこで冒頭で述べてるような殺風景な人間が楽しめるかどうかに興味があり、本作の視聴の動機ということになります。

結果、

 そこそこ良い

でした。動物案件に食指が動かない方でも楽しめると思います。


作品紹介で“すばる”は人間側の主人公、“はる”は動物側の主人公とありました。猫は猫で視聴者にだけわかるように感情を言葉に表わすので猫ちゃんの心情がわかる仕掛けです。また1話の中ですばる(人間)視点での前半パートと同シチュエーションを今度ははる(動物)視点で描く後半パートと対になっていて、互いの思いがすれ違ったり交錯したりを楽しむ構成になってます。

会話での意思疎通ができないこの両名がどう関係を築いていくのか?
お互いの共通項みたいなのがあって少しずつ共感していくことで距離を縮めていきます。共通項とは“痛み”。
{netabare}お互い大切な人(猫?)を亡くした経験があり、蓋をしててもふとした瞬間に後悔の感情が顔を出し暗い影を落とすのです。{/netabare}

すばるにしてもはるにしても同情すべき事情があり、そこに囚われて序盤はお互い前を向けません。
言葉を交わせないからこそ、ゆっくりとそれこそ全12話かけて、時には停滞しているような場面さえ大事な時間に変えながら関係を築いていくのでした。とても優しい作品です。


周囲も善意のキャラばかり。
OPEDにも優しさが溢れてます。奥華子さん作曲、南條愛乃さん作詞・歌のEDはウチの娘のお気に入り。
そうです。子どもと一緒に安心して観れるのも良いところですね。


猫ちゃんかわいい!が自分は薄めですが、傷ついた者同士の「取り戻す」物語はなかなか見どころがありました。


ただし、主人公への共感は意見が別れそうです。私の場合こんな感じ↓

■昭和のオカン“はる”
昭和初期?いや大正?のご婦人かしら。。。
食糧難を経験している世代はとにかく
「食べてるか?」
「しっかり食べるんだぞ?」
と口酸っぱく言ったものらしい。私自身も大正生まれの祖母から同じような印象を受けた一人です。
本編視聴済の方はいかにこの猫が昔ながらのオカンみたいだったかはご理解いただけることでしょう。


■“良い”ではなく“そこそこ良い”となった理由
主人公のすばるがイマイチ。
極度のアガリ症。対人関係が苦手ということですが、挨拶くらいしようや。
{netabare}三日月先生サイン会にて、目を合わせない、返事をしない、極度の対人恐怖症ぶりを発揮。作家に奇人は多かれどファンをないがしろにする作家さんは斬新でした。他人が目に入らなさすぎ(笑){/netabare}

このキャラ造形じゃないとダメだったんだろうか?このすばる。周囲の優しさに触れても反応薄いし、むしろ迷惑だぐらいで思ってるし、
普通に考えたら「お前なんか知らん」というくらいのレベルじゃなかろうかと。

本作は、幼少期からの内向的すぎる性格が土台にあり、両親との素っ気ない関係を経ての不慮の事故による追い打ちだったわけで、物語成立の条件みたいなところもあるので一概に否定できないのがつらいところです。



猫が喋るファンタジーっぷりより、周囲の人が例外なくすばるに優しいことがファンタジーと感じたため、とても惜しい作品という位置付けです。
すばるは無理せんでゆっくりでいいから傷を癒していってくれとは思います。
{netabare}第一話と最終話を見比べると彼の表情明るいですからね。{/netabare}


遅まきながら、ペットが人間にとって大事な存在たり得ることが少しばかり理解できた気がします。それが一番の収穫かも知れません。



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2019.08.30追記


視聴時期:2019年1月~2019年3月リアタイ視聴




2019.04.21 初稿
2019.08.30 修正

投稿 : 2024/05/11
♥ : 54

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

人見知りミステリー作家と猫の愉快(?)な同居生活

== [下記は放送開始前レビュー: 開始後、追記あり。] ==
※放送開始前なので評点は「ALL 3.0」のままです。

「COMICポラリス」連載の漫画原作は現在5巻まで出ています。たぶんアニメ放送中に6巻が出る感じなんでしょうか。

主人公はミステリー作家である朏素晴(みかづき すばる)、そしてそのすばると同居することになる猫のハルです。

素晴は小説家なので引き籠っていられますが極度の人見知りで外出も苦手、動物を飼ったこともないのですが、図らずもそんな素晴と猫のハルの同居生活が始まってしまいます。

そしてハルとの同居生活がきっかけで素晴の生活や執筆作品にも変化が表れて……、といった感じのお話です。

当然のように人間の素晴と猫のハルの間でお互いが考えていることは言葉で伝わったりはしませんが、少なくとも原作では一つの事象がそれぞれの視点でどう見えているかが描かれるのが見どころかと思います。アニメでその辺り、どう表現してくるか…?
== [放送開始前レビュー、ここまで。] ==

2019.1.11追記:
第1話を視聴。素晴の身の上の説明とハルとの出会い、そしてハルが素晴の家に居着くことを決意するまでが描かれました。

原作ほどハッキリと分離されてはいませんが、やはり素晴の視点とハルの視点の両面でストーリーを進めるみたいですね。

基本は素晴側の視点で時系列を進めて、後からハル側の視点で補足するみたいな感じでしょうか。原作のように丸々両側の視点での話をすべてアニメでやってしまうとうまくないとは思っていたので、この進め方なら安心です。

2019.4.1追記:
最終話まで視聴終了してましたが、レビュー更新が遅れていました。

押守(おうかみ)さんの天然癒し系な感じは、わりと良く出ていたと思います。「原作の◯巻のエピソードまで進んだ」って言いにくい感じですが、原作無視な感じではなかったですね。

最終エピソード(前後編)は、アニメオリジナルエピソードだと思うのですが、これも原作を踏まえた良い物だったと思います。大翔(ひろと)の妹の渚ちゃんはもう少し出番があったと思います。もし2期目が作られれば本格的に関わってくるでしょうね。

ということで、良いアニメ化おつかれさまでした。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 52
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