岡山県で魔法なアニメ映画ランキング 1

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67.1 1 岡山県で魔法なアニメランキング1位
ひるね姫 ~知らないワタシの物語~(アニメ映画)

2017年3月18日
★★★★☆ 3.5 (153)
575人が棚に入れました
2020年の東京オリンピックを目前にした岡山が舞台になっている。

声優・キャラクター
高畑充希、満島真之介、古田新太、高木渉、前野朋哉、高橋英樹、江口洋介、釘宮理恵
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

夢と現実、未来と過去、ソフトウェアとハードウェア、個人と社会、様々な境目で成り立つ不思議な映画

[文量→大盛り・内容→考察系]

【総括】
最初にタイトルとPVを観たときには、心温まる分かりやすいファミリー向けのアニメ映画なのかな?と思っていましたが、結果、(良くも悪くも)分かりにくいファミリー向けのアニメ映画でしたね。

この辺は、「深みがある」と捉えるか、「どっち付かず」と捉えるかで評価は別れそうですね。

私は後者です。社会実験的なアニメだとしたなら、同監督の「攻殻機動隊」くらい振りきってほしかったし、ファミリー向けなら、「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」の劇場版くらい、それこそ観ている大人が少し気恥ずかしくなるくらい、ガッツリファンタジーを貫いてほしかったかな。

なんとなく、監督が創りたかったモノと、出資者のリクエストが解離してたのかな? と思ったり。

とはいえ、クオリティが高いアニメであることは間違いないと思います。特に作画は良いです。風景とか綺麗。声優陣も、俳優さん中心の中ではハマっていた印象。そんな(声優若葉マーク陣の)中で、圧倒的に上手かった釘宮さんに、なぜかほっこりしましたw

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
やや、酷評です。良い映画なのに勿体なかったな~と。

テーマとしては「家族愛」「(目標としての意義の)夢」「自動運転技術(技術革新)」「日本社会の在り方」などでしょうか?

邪推ですが、前者の2つが出資者からのリクエストで、後者の2つが監督の描きたかったことなのかな? と思いました。せっかく、アニメ映画作成の話が来たから、それに乗っかって、かなり濃い味付けにした感じがしたのは私だけでしょうか? それがどこか、「ショートケーキとステーキを同時に食べているような」食い合わせの悪さを感じました。

夢と現実がリンクし、夢の合間に同時進行で現実が進んでいく展開は面白かったです。特に、夢を観ている(バイクで空を飛んでいる)間に、自動運転技術で大阪に着いているのは、本作のアイディアとストーリーが上手く噛み合っている良シーンだったと思います。

ただ、ラストの展開で、ココネが宙吊りになっているのには、?。会長と会った後、どのタイミングで寝るの? 寝ている最中に、どうなったらあんな状況になるのかが分かりませんでした。ナルコレプシー&夢遊病でもない限り、あんな状況にはならないのでは?

それから、バイクが風船に跳び乗ってココネを助けるのはいかがなものかな? モリオが「家に帰れ」とインプットしたのが、「家=ココネの元」と機械が勘違いした?のはまだギリで良いとして、その後は、? そもそも、バイクの中に落ちるより、風船に直接落ちた方がココネが受けるダメージが少なそうだけど(汗)

機械へのプログラミングを「魔法」と解釈するのはとても素敵だな~と思いました。でも、それが、本当の「魔法」になってしまうと、なぜか安っぽくなってしまうのが不思議でした。

他にも、夢の中で襲ってくる「鬼」は、多分、(自動運転技術に対して反対する、不安を抱く)「世論」の比喩だと思います。その「鬼(世論)」を「倒せる(説得できる)」のは、「エッシェン(イクミ)」の「魔法(プログラミング)」だけだというのも、夢と現実が上手くリンクしていて、素晴らしかったです。でも、ベワンが「炎上しろ」と言ったことで興醒め。ハートランド(自動車の国)の火災と、SNSの炎上とをかけていることを分かりやすくするヒントでしょうが、そこはハッキリ言わない部分に面白さがあるのでは?

そういう意味では、映画冒頭のハートランドの「説明」シーン(エッシェンの語り)も蛇足だったと思いました。ハートランドを本作の舞台(ファンタジー映画)だと思わせ、実はココネの夢の世界だったというミスリードは、(私も騙されましたし)凄く良い構成でした。でも、ハートランドは、ブラック企業感が凄まじく、明らかに「現実(もしくは過去、高度経済成長期)の日本社会」の負の一面を意識していて、それを否定的に捉える構成です。そのこと自体は悪くないけど、それを「描写」で「感じさせる」のが「アニメ」であって、「言葉」で「説明」されると、「説教」くさく感じてしまいます。そもそも、「ファミリー向けの映画」で、冒頭に、あんな「世知辛い世界」を見せる意味があるのかな? 子供の頭には?が浮かび、大人の心はズーンと沈む、誰得?な冒頭シーンだと思いました。

そもそも、機械技術を肯定したいのか否定したいのかが分かりにくかったです。

他にも、ソフトウェアとハードウェアのこととか、夢と希望と無茶に溢れていた旧東京オリンピックの時の日本と、どこか覚めた目でオリンピックをひかえる(話題になるのは、お金の嫌な話ばかりの)現在の日本との対比とか、書きたいことはあるけど、いい加減、長くなってきたのでやめておきます。

端的に言うと、「この作品に家族愛という主題は必要ない」「家族愛をテーマにしたいなら社会的な問題提起は必要ない」と思います。例えばラストシーンの「3世代軒下西瓜」は良いシーンだけど、なんか作品から浮いていた気がしました。取って付けたような感じがしました。

いずれにせよ、「もっと神山監督に自由に作ってほしかったかな~」と思いました。上記の「分かりやすい台詞」にしても、何処かの偉い人から「ファミリー向けのアニメにしては分かりにくい」とのクレームが入り、付け足したのではないかと邪推してしまいます。もしくは、視聴者に気を使いすぎた(信じてない)か。

まあ、映画を観ている大半は、私たちのようにアニメを数百とか観ているダメな大人ではないと思うので(笑)、絶対数的には、これで良いのかもしれません。そもそも、映画館に行かず、レンタルDVDで観ている分際で文句つけるなと怒られてしまいそうです(自戒)w
{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 21
ネタバレ

四文字屋 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

パクリ批判も何のその。心羽ちゃんは、自分でも制御不能な絶妙のタイミングで夢の世界に行ってしまうから、そのたびに観ているこちらはドキドキさせられるんで、

夢を効果的に使った作品が、またひとつ、佳作として劇場映画に名をつらねた。と思う。

例によって事前情報はなるべく入れずに劇場鑑賞。


鑑賞前は複雑に入り組んだサイエンス・ファンタジーを予想していたのだが、
鑑賞してみての印象は思ってたのと違って、もっといい意味で単純で、
話のころがりがいい感じに流れていくんで退屈しない。
この物語のキーポイントとなる「眠り=夢の世界」が、
妙な感じに現実社会とリンクしていて、
主人公・心羽(ココネ)は前ぶれ無く眠ってしまう癖があって、
そうすると、この夢の世界に、唐突に行ってしまうので、
ここが都度つど、ハラハラしたりワクワクしたり、突っ込み入れたくなったりで、面白かった。
{netabare}たとえば夢の中で、サイドカーで空を飛ぶ素敵なシーンがあるのだが、このあいだに現実ではココネと幼馴染みのモリオが四国から大阪までたどり着いてしまっていて、
この作品のキーファクターである自動運転技術が綺麗に描かれて楽しいエピソードになっていた。

そんな感じで、ココネが眠っているときに、
現実世界とリンクする異世界の夢を見るのだが、
このリンクが現実世界での事件が夢をなぞるように進行していくのが構成上のお楽しみになっている。

で、演出上のポイントとしては、
冒頭のシーンで、ハートランドを本作の舞台とするファンタジーだと思わせるミスリードが、上手い(これ他のレビュアーさんからの指摘が既にあり)。
また、ハートランドがディストピア風に描かれているのが、志島自動車を去った母親の、その心象を表していたと最後の方で解るようになってるのもいい構成。{/netabare}

映像も流麗だし、ロードムービーとしても、夢と現実がない混ぜになった、一風変わったものとして、楽しかった。

鑑賞後、他のレビューサイト見てみたら、あまり評判がよろしくないようで、
大雑把に言って、
話のテーマが盛り込みすぎ、またはピンボケで絞り込めていないっていう意見と、
神山監督作品にしては大人の鑑賞に堪えないという意見と、
主に「君の名は。」と「サマーウォーズ」からのパクリだという意見が多く見られた。

で、私はというと、面白く鑑賞出来ましたよ。

描きたかったのは、結局は父から、祖父から、亡くなった母からの家族愛。
この辺、たしかにどうも、子供向けにはややっこしいと批判の対象になってはいるんだが。
わたしゃ子供じゃないからいいんだ。

そして余計なはなしだが、
どうも勘違いしているとしか思えないパクリ批判が横溢しているようで、
いわく、PC、タブレット、パスワード等の使い方が「サマーウォーズ」のパクリだとか、
眠っている最中に夢と現実がリンクして世界が動く演出が「君の名は。」のパクリとか。

なんか批判自体のピントがずれている感じ。

PCの使い方やパスワードの演出は、サマーウォーズではなく、
TV版エヴァの第7話のジェットアローンへのオマージュであることは、
夢の世界に登場する、人の造りしものであるロボット=エンジンヘッドのデザインや、
姫=ココネが腕力で挿入して戻した、稼働停止のために排出された制御棒のシーンから見てとれるし、
パスワードの件やタブレットの件も、同様。

眠りの演出に対する批判については、偶然「君の名は。」から数ヶ月遅れで公開されたせいだと思うが、
本作では眠ることをトリガーにして物語を動かしてはいるが、眠りの効果の設定が全く違うし、
公開時期が近すぎてネタとして取り入れる、というかパクるには時間的余裕がなくて無理だろうし、
夢と現実が交錯する話なんて幾らでもあるんで、こういう批判は、
タイムリープを描いた作品に、時かけのパクリだといちいち文句つけるのと同類だと思う。

さらに言うと、{netabare}この作品では、夢を、世界が自分に有利な方向に導かれる道具として活用しているのが妙味なんで、
目覚めたばかりのココネに、モリオから「あまえ、今すぐ早く寝ろ!」と言われたりしてるのが面白いし、
上述した「自動運転技術」と上手くつながっているのも、面白い。
さらには、ココネが、ウェットないしは反感を抱く可能性のある、おじいちゃんとの初対面のシーンで、
唐突に眠りに落ちてしまい、夢の中で話を進めちゃったりするところなど、
思わず笑っちゃってから焦らせてくれる面白い趣向だったし、
目が覚めるまでに厄介ごとを夢の中で処理しちゃうってのが、可笑しくてたまらなかった。

父親を追うこと、祖父と出会うこと、母親を知ることすべてが重要なテーマなのに、これを全部夢の中でやってしまうんだから、大した演出度胸だ。{/netabare}


それから、そんなに他のレビューを見なかったから、
たまたまこれを指摘している人を見かけなかっただけかもだが、
冒頭の夢のシーンは明らかにカリ城へのオマージュだと見て判る。
姫を幽閉する塔のシーンと、その塔の屋根瓦と、窓から伝って出入りする、あれね。

カリ城で、北の塔への行き来に使われる可動式橋梁設備を、
昔、鑑賞した当時から「これ構造力学的に無理だよな」と思っていたら、
橋梁を可動式にするなら、こういう構造なら行けるでしょ。と絵解きしてくれてたのが個人的にはツボだった。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 14

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

先端技術の魔法、大企業病という鬼、そして母と家族愛。

 夏になると見たくなる…というよりは、ココネの夏服とこの映画の印象が夏という感じですね。23年7月再視聴しました。

 この話世間の評価は悪いですけど、私はものすごく楽しめたので1回目のレビューは「ココネの活躍を楽しむ。大人も楽しめる児童書」という評価をしていました。
 ファンタジー的な映像や、2つのバイク、ココネ可愛いなど、結構ワクワクするような冒険譚だと思って見ていました。


 ただ、見返して、ああ、そういう話かと得心がいきました。もっと全然いい話だし、深い話だと思います。母の想いが胸に刺さりました。ココネの物語ではありますが、どちらかといえばココネの母の物語です。

 夢の中のエンシエント姫はイコール母で、魔法とはエンシエント姫が開発した技術です。そして鬼とは、人の心に巣食う嫉妬、功名心、出世欲等々の醜い心、怠惰、停滞、保身、相手を蹴落とすことで自分がのし上がる、です。

 つまり、母が開発した自動運転プログラムを容認できない経営陣が、母を追い出したという話です。経営陣=鬼つまり、老害、大企業病の象徴でした。
 ここで会長のジジイは何かといえば、対立軸が違う気がします。彼は自動車を愛して運転するよろこびを奪ってはいけないという視点でした。そして、母もその点は同意していますが、時代遅れだと評価していました。

 この母を追い出した会社のゴタゴタこそ、ココネが聞かされた物語の元型です。また、ピーチ=エンシェントつまりモモタロウと母の馴れ初めでもあります。
 なんでこんなにねむくなるのか。それはモモタロウに危機が迫っているという予感、あるいは少しファンタジー的に考えるなら母からのメッセージでしょうね。そう思われる場面もありますし。

 つまり、タブレット=母の作ったプログラムというのは、対立しているかに見えた会長のジジイを助けることにもなります。奪われれば、母を追い出した経営陣の手柄になってしまい、これは許せません。

 ココネがなぜこんなに馬鹿か。あえてそれを強調していました。それは母の苦しみと同じ目に合わせたくないモモタロウと母の合意ではないでしょうか。

 夢の中の世界と現実が交錯することによって、モモタロウを守り母の夢を守る。そして会長のジジイも助ける物語です。空飛ぶバイク=自動運転バイクでココネは見事家族を助けました。

「心根ひとつで人は空も飛べる」という社是。
 1文字変えた方がいいという母の言葉。ここまで来ればどこをどう変えるかは自明でしょう。この作品を理解しているかどうかですね。


 で、もう1点。ちょっと関係ないように見えるかもしれませんが、この話、舞台がどうしてもトヨタ市とトヨタ(自動車)に見えるんですよね。そうなると、立場は逆ですがレース命の豊田章男氏となんとなくいろんな事が重なります。
 トヨタは一時大企業病で、自動車会社の本質を忘れていたそうです。そして、経営陣から干された男が、2015年WRCレース向けの「ヤリス」など本格的なライトウエイトのレーシングカーでトヨタブランドを復活させる話があります。結構ドキュメンタリーで見た記憶があるので有名な話ではないかと思います。

 この作品が2017年ですから、どうしても関連を考えてしまいます。ひょっとしたらエンドロールに何らかの形でトヨタがクレジットされるかなと思いましたが、見つけられませんでした。

 そしてEDの高畑充希さんの歌う「デイドリーム・ビリーバー」最高です。アニメ映画の挿入歌NO1にあげたいくらい素晴らしい歌です。故忌野清志郎氏が亡き義母を偲んで日本語詞をつけました。非常にこの映画に合っている選曲です。
 
 21年6月の以前のレビューはちょっと頓珍漢で恥ずかしいので消します。要するに単純な一直線の話をファンタジーと現実の両面から楽しもうぜ的なレビューでした。

 非常に面白いし、家族愛、企業の旧弊などのテーマが感じられる素晴らしい作品でした。恋愛をきっぱりカットして、夫婦にクローズアップしたのも英断だと思います。
 現状4.6ですが、物語とキャラは満点にします。ちょっとだけ高すぎる気もしますが、3回目みたらもっと発見がありそうなので、4.8でいいでしょう。いや、やっぱり満点にします。

 今回は母の愛が染みわたりました。
 

投稿 : 2024/05/04
♥ : 5
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