心霊で魔術なアニメ映画ランキング 1

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72.1 1 心霊で魔術なアニメランキング1位
空の境界 第四章 伽藍の洞[ガランノドウ](アニメ映画)

2008年5月24日
★★★★☆ 4.0 (685)
4046人が棚に入れました
1998年6月、約2年の昏睡から両儀式は奇跡的に回復する。しかし、目を開けてすぐに見えたのは「死の線」。それが何なのかを理解してしまった式は、自らの目を潰そうとしてしまう。そんな中、一人の女性が式を訪ねてくる。その女性、蒼崎橙子に式のもう一つの異常、式の別人格である「織」が居なくなっている事を気付かされる。生の実感を喪失した式は抜け殻のように日々を送るが、その式の病室に毎夜彷徨ってくるモノがあった。

声優・キャラクター
坂本真綾、鈴村健一、本田貴子
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

生と死の境界線

原作未読。
全8章からなる物語の4章目。約45分。

「空の境界」全章に共通する項目は、第1章のレビューをご覧ください。
→ http://www.anikore.jp/review/450724/

2章の直後から、1章に繋がるまでの話。

2年の間だ意識を失っていた両儀式。
「伽藍の堂」に訪れた黒桐幹也と蒼崎橙子の出会い。
そして、蒼崎橙子と両儀式の出会い。

どのようにして式の力が目覚めたかが描かれています。

病院のシーンはリアリティがありますね。
しっかりとした取材のあとがみられます。

映像面での見所は、
・「死」を描いた抽象的な世界での光の使い方やエフェクト
・式の目から見た世界の描写
・式と橙子、二人のバトル描写

特にバトル描写は至る展開は鳥肌モノです。

髪の長い式が見られるのもこの回だけ。
長髪すっごく似合いますね、惚れますよ!

EDテーマは「ARIA」。
ARIAはイタリア語で「空気」を表します。


【4章「伽藍の洞」の考察】
{netabare}
死の淵をさまよい続ける式。
果てのない世界で、光のある方へ手を伸ばそうとするものの、光は消え、反対側に飛ばされてしまう。
「これが……死」
「光」=「生」を掴みきれない、つまり、目を覚ますことができないという描写が良いですね。

やがて、両儀式は、蒼と橙の2つの色に分かれてしまう。
橙の人格は、蒼の人格を抱き寄せようとするものの、蒼い人格は消滅。
そして、橙の人格は黒い海=死に触れる。
後の橙子との会話で「織くん」が消えたことに言及しているため、蒼い人格は織だと判断できます。

つまり、
・蒼の人格=男性人格=織
・橙の人格=女性人格=式
を表しています。


式は、目覚めて一言「黒……?」と発言。
カレンダーに貼られたメモをよく見ると、
『今日から梅雨入り でも夏も近いよ! ガンバレ!式 黒桐幹也』
と書かれています。

式には「黒桐」という字が読めなかったんでしょう。
黒桐のイメージは頭に浮かぶものの、どうしても「こくとうみきや」の名前を思い出すことができない。
おそらく黒桐幹也に対する想いは、「式」より「織」の方が強かったのではないでしょうか。
そのため、後遺症として黒桐の記憶が欠落してしまったと……。

それにしても直視の魔眼の世界は怖いですね。
すべてのほころびが線として見えるだけではなく、その後、バラバラになってしまうところまで見える。
あんな風景が日常的に見えていたら、そりゃ目をつぶしたくなるのもわかります。


さて、自分の中の織という人格が消えてしまい、体の中に「空(から)」が生まれてしまった。
橙子「"生"と"死"のどちらも選べずに、"境界"の上で綱渡りだ。心が伽藍胴(がらんどう)にもなるさ」

しかし、一度「死」に触れたことで「死」だけは避けたいと思う式。
怨霊に襲われたとき自分に「迷うな!!」と呼びかけ、生と死の境界線上から生の方へ移動します。


この後の戦闘シーンは鳥肌モノでした。

式の「なら、お前がなんとかしろ」
橙子の「承知!!」
式「あれは、"生きている死体"だろ……なら、なんであろうと殺してみせる!!」
式「私は弱い私を殺す、お前なんかに、『両儀式』は渡さない!!」

いちいちかっこいいです……。

そして、戦闘が終わったあと、式の一人称が「私」から「俺」に変化します。
失われてしまった男性人格を埋め合わせるかのような行動。

その後のセリフ、
式「なら好きに使え。どうせ、それ以外に目的はないんだ」
目的がない、1章で言った「浮遊」という「逃避」行動です。

だから橙子は「お前はまだ間違えたままだ」と言ったのだと考えられます。

橙子「伽藍胴ということは、いくらでも詰め込めるということだろ、この幸せものめ」

織は式に夢を託し消えました。
その代わりに残された孤独感。
そんな伽藍の洞窟を吹き抜けるような「ARIA=空気」がEDテーマです。

しかし、眠りの中で聞こえた「俺はお前が気にいったから近いうちにまた会うよ、コクトー」。
織の残した意識が式に記憶を取り戻してくれました。

織が使っていた「コクトー」という呼び名。
フランスの詩人とは、ジャン・コクトーを表しているそうです。


【全て見終わった人へ】
{netabare}
蒼崎橙子が病院に訪れた際、看護婦が「荒耶先生の後任の先生よね」と言っています。
つまり、蒼崎橙子が来る前に、荒耶宗蓮が式の元にも訪れているんですね。
{/netabare}

{/netabare}

投稿 : 2024/05/11
♥ : 38
ネタバレ

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

喪失と獲得 絶望感と覚醒の境界線

1998年6月、前回の第3章の1ヶ月前であり第2章の直後にあたる、
時系列的には2番目のエピソード。

事故で救急車に運ばれ、一命を取り留めたものの昏睡状態が続き
そのまま2年の月日が経っていた・・というところからスタート。
目を覚まさない式のもとに、黒桐幹也は花束を持って見舞い続けていた。
そんなある日、2年ぶりに目を覚ました式だったが、
彼女はあるものを獲得し、あるものを喪失していた。
その絶望感と、獲得したものと喪失したものについて。
そして、黒桐が働く人形工房「伽藍の堂」の社長で人形師であり
魔術師でもある蒼崎燈子との出逢いを描いたこの第4章、登場人物も動きも少なく
地味ではあるが、この『空の境界』の世界観を物語る上で重要な回になる。

{netabare}
手に入れたのは、直視の魔眼。
生きている物にはすべて、ほころびがある・・という考えをベースのもと
ものの死にやすい「死の線」が見えてしまうという能力。

失ったものは、両儀式の中にある「織」(しき)というもう1つの人格。
式はその姿、肉体からして本来は女性だが、これまで織の人格が表に出てきた時は
男性口調で立ち居振る舞いも変化していた。
が、それだけでなく、織こそが生の実感を与えてくれていたので絶望感は大きい。

なぜなら、外見は女性でありながら男性人格を内包している彼女にとって
織という人間は普段、押し殺されているわけで、そのことを式は自覚しており
ゆえに生まれつき他人を知り、他人を殺してきた、と考えてきた。
なので、織としては生まれつき傷つけられ押し込められているので
その防衛本能が生の実感ということのようだ。
傷つくこと、痛みを知ることで生きている実感を持つというのは
当たり前のようでいて、その実とても痛々しい部分ではある。
がしかし式の場合、無差別にというわけではなく一応のポリシーは持っている模様。
なお、通常の多重人格の場合、他の人格が現れている時、その他の人格は
自覚がないとされるが、式の場合は特殊な例として「複合個別人格」と
蒼崎が説明しているシーンがある。

式の中にあった織という存在の大きさ。
失ってますますその重みは増したと思う。
が、彼女はやはり強かった。
喪失感からくる絶望の中、式の肉体を器にしたがる死霊との戦いによって
獲得したばかりの魔眼を使いつつ、彼女は新たな、生への執着に目覚めていく。
{/netabare}

式の中の織を失って抜け殻のようになった彼女の伽藍の堂。
そして蒼崎燈子の経営する工房である「伽藍の堂」
何もない器、空間というものは、孤独感を増幅させる。
でもそこには、いろんなものを詰め込める。
これからどんどん埋めていけばいい。
そう思えば気が晴れていく。

だけど、なぜ織が消えなければならなかったのか、なぜ消えたのか。
式が消えて織が残る可能性もあったということなのか。
事故だけが原因だとしたら、脳の損傷によるものと考えるのが妥当だろうか。
そのあたりは詳しく描かれていなかったのが少々残念ではあるものの、
この作品の主旨としては、そこまで描くほど重要な部分ではない気がする。
というより、織が消えたからこそ成り立つ物語『空の境界』なのだものね。

死霊との戦いで式が覚醒していくシーンは感動的。
織は失っても、身体能力と剣術に優れた式の肉体はそのままだし
彼女の口調からすると織は完全に消えたというより、
式に吸収されたと考えたほうがわかりやすい。
蒼崎燈子の魔術師としての本領発揮なシーンも存在感たっぷりで
なかなかカッコよかった。
そして忘れてならないのが、幹也の純愛とも言うべき式への愛情。
彼と彼のこの気持ちがなくならない限り、大丈夫な気がする。
そんな安堵感をもたらしてくれる第4章だった。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 35

ninin さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

からのきょうかい 式が覚醒したその瞬間は……

原作未読 約45分

病院に救急車で運ばれた式、緊急手術を経て一命は取り留めます。そのまましばらくの昏睡状態後、覚醒するところからお話は始まります。

今回はバトルもありましたが、会話が中心でしたね。
このお話で主人公 両儀 式(りょうぎ しき)は何者か?そして1話から出てくる蒼崎 橙子(あおざき とうこ)とは?いうことが、ある程度分かる内容となってます。

この四章までで大体世界観が分かってきましたね。

でも、またまた最後に謎を残して物語は終わっています。徐々に明らかになってくるのは、うまいなぁと思いました。観る方としても次は?次は?と観ていてワクワク感があって楽しみです。

ED Kalafinaが歌ってます。曲名「ARIA」章ごとに曲が変わりますが、その中で一番好きな曲です。

続けて第5章を観てみます^^

投稿 : 2024/05/11
♥ : 35
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