2017年度の格闘アニメOVAランキング 1

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70.3 1 2017年度の格闘アニメランキング1位
ブレードランナー ブラックアウト2022(Webアニメ)

2017年9月26日
★★★★☆ 3.8 (38)
200人が棚に入れました
『ブレードランナー2049』へ至る、空白の30年間。2022年に起きた大停電<ブラックアウト 2022>とは?

「ブレードランナー」から「ブレードランナー2049」の橋渡しとなる作品。

視聴はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=MKFREpMeao0
ネタバレ

ブリキ男 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

人類へようこそ!

映画「ブレードランナー 2049」の公開に先駆けて制作された15分の短編アニメ。

レプリカントと呼ばれる人造人間達の苦悩、人類への反抗を描きます。

舞台となるのは1982年に公開された実写映画「ブレードランナー」から3年後の地続きの世界、人とレプリカントの対立構造がより苛烈になった2022年のロサンゼルス。原作に当たる「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」とは直接関係のないパラレルワールドを描いた作品となっています。

「ブレードランナー」と比べると、ショートフィルムの割に物語のスケールが大きく、その必然として展開は急ぎ足、作風はアクション偏重。人間ではなくレプリカント視点からディストピアを捉えている点にも大きな違いがあります。

アメリカンコミックから飛び出した様な荒い画のコマ飛び映像を交えて語られるプロローグは冒頭の2分間くらい。本編ではCG(トゥーンレンダリング等)をふんだんに駆使した美麗なアニメーションが展開されます。息をのむほど精密に作られた最高級のムービーは一見以上の価値あり。レプリカント少女トリクシーの儚くも華麗な舞に注目されたし!

ただ物語については良くも悪くも生粋のハリウッド印なので、過度の期待は禁物です。
{netabare}
SF設定についてもEMP攻撃に絶大な威力を持たせている点がややマンネリでお約束気味(汗)EMP対策は現代でも着々と進んでいる様ですし、未来社会の大企業ともなれば、より堅牢なデータの保護措置が取られているはず。ネット黎明期では通用するネタだったのかもしれませんが、これについては時代錯誤な印象を受けました。ブラックアウト-レプリカントに関する大部分のデータを消去する=物語を振り出しに戻す-の手段として手っ取り早く、分かりやすい方法だったのかも知れませんけど(汗)

元ネタは色々と挙げられると思いますが、わたしはやや古めの映画「エスケープ・フロム・L.A.」を真っ先に思い出しました。(だってLAだし‥笑)

※:高高度で核爆弾を爆発させて、そこで発生した電磁パルス(放射線)を利用し地上の電子機器に広範囲に打撃を与える戦術の事。
{/netabare}
本作の他に、その後日譚に当たる「2036:ネクサス・ドーン」と「2048:ノーウェア・トゥ・ラン」というショートフィルム(この二つは実写)も公式からYoutubeとかにアップされていますので、劇場版に備えてそれらで予習しておくのもよろしいかと。

おさらいに時系列に沿って並べたものを以下に。

2019年:ブレードランナー(通常版、ディレクターズカット、ディレクターズカット最終版)
2022年:ブラックアウト
2036年:ネクサス・ドーン
2048年:ノーウェア・トゥ・ラン
2049年:ブレードランナー 2049

「ブレードランナー 2049」の日本公開日は今月27日。もう目と鼻の先ですね。前作で主人公を演じたハリソン・フォードが今回もリック・デッカード役で続投するそう。作中でも30年が経過しているので、おじいちゃんハリソンでも違和感無し(笑)活躍が楽しみです。

それにしても新作映画の宣伝の為に本作の様な高品質なアニメも含めたショートフィルムを3本も撮るとは、流石ハリウッド、度し難い(汗)おかげでブレードランナーの名を冠する映像作品が一気に7本に増えてしまいました。

2つで充分ですよ!‥とかはくれぐれも言わないよーに(笑)

投稿 : 2024/05/04
♥ : 25

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

ブレードランナーの視聴が前提ですが素晴らしい短編でした。

 本作は映画「ブレードランナー」と「2049」という続編の間を補完するものだそうです。ユーチューブでお勧めに出てきてその存在を知りました。
 オリジナルの「ブレードランナー」はSF映画の名作中の名作です。ナンバー1と言っても言い過ぎではないでしょう。名作過ぎる故に、その続編である「2049」は蛇足の可能性が高いと思い触れてきませんでした。

 オリジナルの「ブレードランナー」は寿命が4年と設定され感情を持ったネクサス6型というロボットの最後のあがきの物語です。ロイの最後のセリフが素晴らしい作品でした。
 AIと感情の問題を取り扱った、日本のロボットもののアニメの中核となるメッセージを含んでいる作品です。ただし日本には手塚がいますけど。

 その退廃した世界観は本当に画期的で、現在のサイバーパンクの世界観を作り上げた作品と言っていいでしょう。動物が絶滅しかけ非常に高価なものになっている。日本の台頭と環境破壊によってずっと雨が振り続く…などです。セリフではなく物語で読み取ることができます。

「攻殻機動隊」は本作の影響を非常に強く受けています。それが逆に「マトリックス」に影響して行くなど、ハリウッドと日本アニメの相互の交流が面白いですね。

 さて本作です。いや、アニメとしての出来はなかなかいいです。「攻殻機動隊」の「プロダクションIG」が忘れてしまったものを引き継いでいる感じがしました。監督の渡辺信一郎さんって「カウボーイビバップ」の方ですよね。さすがという出来でした。

 短い作品ですが、イギーとトリクシーの関係性は「ブレードランナー」の物語であるロイとプリスの関係性を彷彿とさせます。作画技術もいいですが、キャラと演出・演技は非常に上手く作ったなあという作品でした。

 本作だけだと恐らく話の理解は難しい面があるとは思います。が、本作だけ見てもSF心があれば、そのテーマや世界観は染みわたってきます。素晴らしい作品だと思います。いや、やっぱり「ブレードランナー」という作品の存在が前提かな。日本のアニメを楽しむなら前提として見ておいて損はない作品だと思います。

 そして私は「2049」を見てみようかな、という気にはなりました。


 

 

投稿 : 2024/05/04
♥ : 6

たわし(爆豪) さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

「今」の日本

「マクロスプラス」「カウボーイビバップ」「サムライチャンプルー」「残響のテロル」の渡辺信一郎監督が、たった15分のブレードランナーの短編アニメに監督の演出センス抜群の傑作として仕上げている。

いやはや驚きである。まだまだ現役ということか。

ブレードランナー2022はアニメーションと言うよりは「映画」である。コンテの切り方、画面の構図、人物の動きは「マンガ」ではなく「実写」のそれであり、このまま俳優を置いて撮影できるだろう。そこが、「アニメ」ではないリアリズムで、どちらかといえば、アメコミやバンドデシネの世界である。そもそもブレードランナー自体がフランスの漫画家ジャンジローメビウスの世界観であり、名作SF「エイリアン」やデビットリンチの「デューン」、「アバター」などのジェームズキャメロン作品のコンセプトであり、世界的に有名な漫画家である。あの士郎正宗、大友克洋や宮崎駿は彼の影響下にある。映像を目指したことのある人間はその名を聞いたことのない人はいないだろう。

汚れた未来と言ってしまうと古いイメージなので、現代の日本の状況と照らし合わせてみてほしい。情報ネットワークの異常な発達、AI問題、アダルトビデオ問題、少子化、独身率の高さなどをとってみても「現代」がブレードランナーの世界とリンクしているのだ。

そういった意味でも、このアニメ作品はたった10分という枠の中でありながら2017年年間通してもトップクラスなのである。そうそこには我々の社会そのものが描かれている。

あとがき:本編はアカデミー賞の視覚効果賞と編集賞を受賞。どちらの賞もハリウッドベテラン勢が受賞したのでそこまで目新しくはない。どちらかといえば、ギレルモ・デルトロ監督の「シェイプオブウォーター」の作品賞を含む4部門受賞の方が驚きであり、ハリウッドでキワモノ扱いされてきたような映画がその年の作品賞をとることは、アメコミや特撮ブームもあって世の中が変わったのかもしれない。アメリカでもいまやコミックや日本のアニメ漫画はネットの普及で若者を中心に広まっているので、世界的にオタク化の方向に向かっているのかもしれない。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 20
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