イムラ さんの感想・評価
4.3
あだち充作品の原型
<2021/9/23 初投稿>
たぶん本放送で見た気がするなー、とWiki調べたら
1983年にフジテレビで単発のスペシャルで放送されてたんですね。
1時間強の映画サイズ×全3話で完結。
本稿ではその3回分をまとめてレビューします。
もともと小学生の頃から本作の原作漫画(※)が好きで、何度も繰り返し読んでいました。
(※)あだち充作「ナイン」全5巻 1978-1980年に少年サンデー増刊号に掲載
「ラブコメ×肩の力が抜けた平凡な主人公×高校野球」というあだち充の方程式の嚆矢です。
それ以前も同氏は高校野球ものを描いていますが雰囲気は当時よくある劇画調熱血でした。
ナイン連載開始の前年に終了した「ああ!青春の甲子園」は(原作者付ではありますが)週刊少女コミック連載なのに熱血メインで肩に力入りまくり。
肩の力が抜けた「あだち充メソッド」の始まりは間違いなく「ナイン」だと思います。
というわけで物語紹介
青秀高校への入学を控えた5人の男女が春に出会うところから物語は始まります。
登場人物
・新見克也
主人公。100m走の中学生新記録保持者。
でもそれ以外は普通。
普通に優しいし。
普通に正義感強く。
普通にヘタレ。
普通に思春期なので女の子にムラムラもする。
でも優しさは普通以上かな。
とある理由から青秀高校では陸上部ではなく野球部に入部。
漫画復刻版ではかのイチローがあとがきを執筆していたのですが
「克也の『俊足・粘って出塁するタイプの1番センター』という立ち位置が堪らない」というようなコメントしてました。
ちなみに最終巻の最終戦では克也くん。
0-0が続くひりひりするような投手戦の中、死球出塁からなんと{netabare}パーフェクトスチール{/netabare}決めました!
{netabare}パーフェクトスチールとは二盗、三盗、本盗すべて盗塁で1点取るという離れ業!{/netabare}
これは普通じゃない!
そりゃイチローも堪んないでしょう。
CVはアムロ・レイ、安室透、サボ、星飛雄馬の人
・中尾百合
ヒロイン。
青秀高校では野球部のマネージャー。
監督はお父さん。
黒髪ロングの美人。
思いやりもありおしとやかな大和撫子。
でも話すと案外普通だったり
ニックネームは「百合ちゃん」「百合っぺ」
・・・「百合っぺ」って時代だなぁ
水ダウで「〇〇っぺというあだ名の人、今はもういない」説とかやって検証してみてほしい。
というかですよ。
CV:石原真理子(1話)、倉田まり子(2話)、安田成美(3話)っておかしいでしょこれ 笑。
本レビューで声優評価高いのはほかの皆さんが凄いから。
あ、でも確か倉田まり子さんは割とちゃんとしてたような記憶があります。
・安田雪美
もう一人のヒロイン
明るいショートカットの女の子。
青秀高校の陸上部・短距離のエース。
とにかく明るくて可愛い普通の女の子。
この子のエピソードは普段明るい分、じんわりきました。
このキャラ造形はこの数年後に発表され大ヒットするあだち充作品「みゆき」の「妹の方のみゆき」の原型のような印象あります。
CVは坂本千夏さん
・唐沢進
克也とは中学時代からの親友。
中学時代は柔道部で県大会優勝の猛者。
仲良しだけあってヘタレなところもほどほどに優しいところもむらむらしやすいところも内面は二人よく似ている。
克也と同じ理由で青秀高校では野球部。
5番ライト。
西武ライオンズのおかわりくんポジション。
おかわりくんより煩悩多そう。
打率は悪いです。
美術部の高木さんとのエピソードは秀逸
CVはヤン・ウェンリー
・倉田進
中学時代、全国優勝経験もある野球部のエース。
サウスポー。
クレバーな頭脳と精緻なコントロール、回転の良いファストボールが武器。
とにかく沈着冷静で誠実、穏やか。
でも登場の仕方は最悪。
青秀高校でも野球部で無事エースになりました。
よかったよかった。
CVはマ・クベでブンドルでブラスター・キッドでRの人
そしてこの5人に後輩や年上のライバルキャラなどが加わって普段はのんびり、時々ちょっと切ないラブコメが野球とともに繰り広げられていきます。
その後のタッチやみゆきなどのあだち充漫画の原型ともいえる作品ですが、肩の力の抜き方がまだ試行錯誤している感じでたどたどしいです。
でも自分はそのたどたどしさが結構好きでした。
好きなあだち充作品BEST3の一つなんです。