sajou_no_hanaでシリアスなおすすめアニメランキング 2

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメのsajou_no_hanaでシリアスな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月07日の時点で一番のsajou_no_hanaでシリアスなおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

82.8 1 sajou_no_hanaでシリアスなアニメランキング1位
モブサイコ100 II(TVアニメ動画)

2019年冬アニメ
★★★★☆ 4.0 (474)
2278人が棚に入れました
ごくフツーの暮らしがしたいと願う中学2年生・影山茂夫、通称「モブ」。
一瞬で人混みに紛れてしまうほど、サエない外見をした彼は、
じつは誰よりも強力な超能力の持ち主だった……。
そんなモブと彼を取り巻く人々との青春や恋、静かに降り積もりやがて爆発する数々の感情。
そして、かつてモブの前に立ちはだかった謎の組織「爪」の再臨。
思春期真っ只中の少年の魂が咆哮する、明日はどっちだ!?

声優・キャラクター
伊藤節生、櫻井孝宏、大塚明夫、入野自由、松岡禎丞、佐武宇綺、藤村歩、細谷佳正、國立幸、松井恵理子、楠大典、丹沢晃之、M・A・O、石田彰
ネタバレ

ヘラチオ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

さらに敵のスケールがアップ

弟の圧倒的覚醒に。弱めだけど、超能力者たち。
前期よりも圧倒的にパワーアップした敵。心の闇もパワーアップしてるかも。
エクボもさらに活躍していて面白いなあと。

窮地に追い込まれる展開になる茂夫だけどもやっぱり強いね。
霊幻新隆のインチキ具合も増しているような気がするけど、そこもまたアクセントということで。
{netabare}ラストバトル後のブロッコリーなんでやねん。{/netabare}
3期が楽しみになる2期。


OP
99.9 MOB CHOIR feat. sajou no hana
ED
グレイ sajou no hana
メモセピア sajou no hana
目蓋の裏 sajou no hana
いきるひとびと sajou no hana
挿入歌
脳感メルヘン♡ 暗田トメ(種﨑敦美) with 犬川(山下誠一郎)
sajou no hanaがかなりプッシュされている?結構、癖になる


以下はアマゾンプライムから引用のあらすじ。
『モブサイコ100』100になったとき何かが起こる青春サイキックストーリー。 第20回文化庁メディア芸術祭 アニメ部門審査委員推薦作品受賞、Crunchyroll アニメアワード2016 ベストアクションシーン/ファイトシーン賞 1位を受賞するなど、全世界を震撼させたサイキック青春グラフィティが再び開幕!ごくフツーの暮らしがしたいと願う中学2年生・影山茂夫、通称「モブ」。一瞬で人混みに紛れてしまうほど、サエない外見をした彼は、じつは誰よりも強力な超能力の持ち主だった……。そんなモブと彼を取り巻く人々との青春や恋、静かに降り積もりやがて爆発する数々の感情。そして、かつてモブの前に立ちはだかった謎の組織「爪」の再臨。思春期真っ只中の少年の魂が咆哮する、明日はどっちだ!?

1. ビリビリ ~誰かが見てる~
霊幻新隆が営む「霊とか相談所」にかかってきた、一本の電話。依頼主は畑に現れた不気味な黒い影の正体を突き止めてほしいというのだが……。一方、モブが通う塩中学校では、生徒会長を務める神室がいきなりの辞任。新たな生徒会長を決めるための、選挙が開かれることに。モブを「人の上に立つ人間」に成長させようと、クラスメイトの米里はモブを焚きつけ、生徒会長に立候補させるのだが…

2. 都市伝説 ~噂との遭遇~
お客のいない状況が続き、すっかり暇を持て余した霊幻は、モブを引き連れて出張相談に出かけることに。ふたりが赴いたのは最近、都市伝説の目撃情報が多発している深爪町。到着早々、霊や不思議なものを呼んでしまう“引きつけ体質”の女性から、悩み相談を受けるのだった。町で偶然知り合った霊能力者・森羅万象丸とともに、霊幻とモブは深爪町にはびこる4つの都市伝説の謎に挑む!?

3. 重ねる危険 ~変質~
ホームページを開設した効果で、妙に繁盛している「霊とか相談所」。呪いをかけたいと話す中年男、霊につけ狙われていると話す女性……。彼らの相談を聞くうちに、モブの中でひとつの疑念が膨らみ始める。正体が悪霊か人間かで、どうして人はこんなにも対応が変わるのか?悶々としているモブを横目に、霊幻のところにまた新たな依頼が。大学生グループが心霊スポットで撮影した写真に霊が映っていることが判明して……。

4. 中身 ~悪霊≒~
霊幻たちのもとに新たな依頼が舞い込んだ。今度の依頼人は、資産家としても知られる浅桐正志。超がつく大金持ちからの依頼にいそいそと現場に向かう霊幻とモブだったが、屋敷には同業の霊能力者たちが大挙して押しかけ、中には日輪霊能連合会の会長・浄堂麒麟の姿も……。浅桐の依頼内容とは、一見、普通に見える娘のみのりに取り憑いた、悪霊を追い出してほしいというものだった。

5. 不和 ~選択~
最上啓示が生み出したパラレルワールドに囚われてしまったモブ。みのりがクラスに転入してきたことをきっかけに、イジメの標的にされたモブは、誰かに救いを求めることもできず、次第に負の感情を溜め込んでいく。そして明かされる、生前の最上を襲った悲劇の真相。一方、浅桐邸では霊幻たちが、モブの意識が戻るのを待ち続けていた。エクボはモブを救おうと、みのりの体に侵入を試みる。

6. 孤独なホワイティー
肉体改造部や脳感電波部の仲間と過ごす時間に、これまでにない楽しさを感じるモブ。しかしそんな楽しい時間に、霊幻からの呼び出しが水を差す。「いきなり呼び出すのはやめてほしい」というモブに対しつい、いつもの調子で高圧的に応対してしまう霊幻。ささいな行き違いから、2人の間には溝ができてしまう。モブ抜きで仕事をしなければならなくなった霊幻は、改めて自分自身を見つめ直す。

7. 追い込み ~正体~
モブと仲違いし、ひとりでバリバリと依頼をこなすようになった霊幻。そんな彼のもとにテレビ番組への出演依頼が舞い込む。喜び勇んでテレビ局に赴く霊幻だったが、じつはその番組は日輪霊能連合会の会長・浄堂麒麟が仕掛けた罠にほかならなかった。生放送の最中に浄堂に追い詰められ、インチキが暴かれてしまう霊幻。世間から猛バッシングを受ける霊幻は、記者会見を開くことになるが……。

8. それでも  ~前へ~
毎年恒例、塩中の全校生徒によるマラソン大会の日が近づいてきた。モブは10位以内に入賞したら、ツボミに告白すると宣言。その心意気に打たれた周囲の声援を受け、モブは本番までひたすら練習に励むことに。一方その頃、霊幻の「霊とか相談所」に依頼に来たのは、ツボミと彼女の友人のミキ。兄の代わりに手伝いに来ていた律はそこで、ツボミの口から飛び出した意外な言葉を聞いてしまう。

9. 見せてみろ ~集合~
自宅が炎に包まれ、焼け焦げた家族らしき姿を目にしたモブとエクボ。すぐに犯人の跡を追った彼らは、謎の組織「爪」の構成員たちを発見する。怒りに震え、あっという間に彼らを叩きのめしたモブ――その前に現れたのは、元「爪」第七支部の誇山と桜威だった。向かった隠れ家で、自分と同じく爪の構成員に襲われたテルや霊幻と顔を会わせるモブ。果たして「爪」は、何を企んでいるというのか?

10. 衝突 ~パワー系~
世界に向けて宣戦布告し、調味文化タワーに立てこもった「爪」のボス・鈴木統一郎。瞬く間に警察の包囲網を排除すると、彼らはさっそく次の行動へと移る。一方、隠れ家に逃げ込んだ霊幻たちも、この状況を手をこまねいて見ているだけではなかった。霊幻の指示のもと、タワーへの潜入を試みる元第七支部や覚醒ラボの面々。さらには律とショウも、鈴木の野望を阻止しようと独自に動き始める。

11. 指導 ~感知能力者~
調味文化タワーの入口に到着した律とショウの前に現れたのは、「5超」のひとり、島崎だった。先に行くようにショウを促し、ひとり立ち向かう律。しかしテレポート能力で先回りする島崎に、逆に追い詰められてしまう。一方、目を覚まし、タワーへ急ぐモブの前に立ちはだかるのは、同じく「5超」のひとり、峰岸。自在に植物を操る峰岸に苦戦させられるモブだが、そこに予想外の援軍が現れる。

12. 社会復帰戦 ~友情~
3年前、暴走する超能力に悩む芹沢の前に現れたのは、ボス・鈴木統一郎その人だった。初めて出会った理解者に、信頼を寄せるようになる芹沢。しかしモブは言う。あなたは利用されているだけだ、と。「僕があなたの友達になる」。そう宣言するモブに対し、芹沢は……。一方、ショウを打ちのめしたボス・鈴木は、構成員に分け与えていたエネルギーを再び我が身に戻し、エネルギーの怪物と化そうとしていた。

13. ボス戦 ~最後の光~
調味市の上空に浮かぶ文化タワー。モブとボス・鈴木の、最後の決戦の幕が上がろうとしていた。思う存分、力を開放する喜びに呑み込まれそうになるモブ。そのとき彼に飛び込んできたのは、弟・律の姿だった。気を取り直し、再びボス・鈴木に立ち向かうモブだが、敵の力はあまりにも強大。説き伏せることを諦めたモブは、持てる力のすべてを彼にぶつけようと試みる。壮絶な戦いの結末や、いかに?

投稿 : 2024/05/04
♥ : 6

takato さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

少年漫画主人公の最前線。スーパーな作画、ひたむきな心!。

 本作は大人気作品ですから私が今更しゃしゃり出る必要はないと思います。本作だけでなくone先生の作品についての分析では「山田玲司のヤングサンデー」で先生ご本人を混じえて解説しているのでそちらをご覧になっていただくのがベストだと思います。


 そこで、今回はモブが少年漫画主人公の新たなエポックだと私は考えるのでここまでの少年漫画の主人公の変遷、その結実としてのモブ、という視点で書いてみます。


 かつて主人公は公明正大な正義の象徴であった。戦前から戦後すぐまでの漫画における主人公は何の影もない理想、道徳の権化といっていいものでした。この主人公像を後年も受け継いでいるのは「ドカベン」こと山田太郎などであります。時代が良い意味でも悪い意味でも邪気なく正義を信じられた時代において、主人公も正にその流れを受け継いでいたのです。


 しかし時代を経るとそうも言ってられなくなってきました。高度経済成長の矛盾、リアリズムを求める作家たちの想い、なにより学生運動に代表されるプロテストの時代がやってくると主人公も変化します。


 アメリカン・ニューシネマの主人公たちと同じように破滅的な程に若い主人公たちが、影のある社会の中で苦闘する梶原一騎に代表される暗い影がある主人公へ、もはやイノセントではない主人公、社会の時代になっていったのです。その代表が「あしたのジョー」の矢吹丈でしょう。


 そんな流れが主流になるも、ニューシネマと同じで10年も暗い話を見てるとお客さんはいい加減ウンザリしてきました。しかも、好景気のビックウェーブが訪れて主人公はまた変化します。80年代以降の二大潮流はイノセンスと不良です。


 80年代少年漫画の主人公の代表は当然歴史的な存在である「ドラゴンボール」の孫悟空でしょう。主人公観が一周したように思えますが、ポイントはこちらはアホという点です。不良もまたアホという点では共通しています。彼等は完璧な存在ではない。彼等はアホだけど、いやアホだからこそ真に重要なイノセンスな持っているというところがポイントです。


 バブルの時代ではもはや努力も影もあんまり必要ではなくなり、純粋さが強調されるようになります。そして強さを正当化するのに「選ばれし者」という視点が重要になります。血縁だったりなんなりで、努力するまでもなく特別な存在という流れが生じてきます。当時ジャパン・アズ・ナンバーワンだった日本としては、自分たちが「選ばれし者」だ、という認識が意識的、無意識的に存在していたからこそこのような主人公が時代を象徴したのでしょう。


 しかし、バブルは崩壊してカオスがやってくるとなかなか主人公像が定まらなくなってきます。混迷の時代がやってきて、もはや少年漫画自体が危うくなってきます。「選ばれし者」であることが呪いであるエヴァのシンジ君のような存在が現れたが決して主流にはなりませんでした。


 そんな中で突如、流星のごとく現れたのがone先生の主人公、特にモブでした。モブは少年漫画の脱構築でありながら、その流れを継承する真に偉大な新たな主人公像だと言いたいのです。


 モブは、冷静でもはや積極的に争うはないし競い合いません。彼等は海賊王を目指したりせず、トーナメント勝ち上がるわけでもありません。これらは「悟り世代」と呼ばれる現在の気分を体現していると言えます。


 なんでそんな競争するの?、なんで大きな夢だの出世だのに血道をあげないといけないの?。「そんなこしてもモテませんよ」。モブにはもはや単純な成長神話を信じていない、信じられない現代の象徴なのです。無条件で信じられていたことに距離を置いて、冷静に分析する脱構築の眼差しがここにはあります。


 では、彼は熱くなれるものが何もないのか?、それでは少年漫画の主人公としてどうなのか?。そこでもう一つの主人公の流れが活きてくると私は思います。それはアウトサイダーとしての主人公という観点です。


 歴代の主人公たち、特にジョジョの主人公たちが典型ですが、ジョナサンを除いてみんな不良であり、学校や社会の外にいるアウトサイダーたちです。しかし、いやだからこそ彼等は黄金の魂を有している。学校や社会に組み込まれて単なる歯車としての「良い子ちゃん」にならない気概なくして黄金の魂は宿せないのです。


 このアウトサイダーの流れは歴代の少年漫画主人公の変遷の中でも変わらず活きています。彼等は決して主流派ではなく例外の存在であり、自分の道を生きているという点では同じなのです。


 そこでモブを見てみると、彼もまたアウトサイダーだとわかります。彼の師匠が霊幻な時点でそれは明らかでしょう。師匠が強くもないし、人間的に完成されているわけでもない、むしろ社会から見ればダメ人間というのが重要なのです。彼は何にも持ってないようで、モブには一番大事なものを持っています。それは「良い奴になれ」という精神です。


 クソみたいな社会、感情が劣化しきった人々の中で、「良い奴」であれ!。コレほど簡単そうに見えて成し遂げがたい、アウトサイダーな生き方が現代にあるでしょうか?。もはや社会が良くなることは殆どありえない、抜け駆け上等な世界の中で、それでも「良い奴」であれ。投げるな、諦めるな、真っ当であれ。


 成功しなくても、夢を追いかけなくてもいい。それよりも出会って深く繋がれた人々に対するリスペクトを、「選ばれし者」じゃなくて「モブ」であっても「良い奴」であることが一番のヒーローなのだ、という主張が彼からはビシビシ伝わってきます。この大人さと気高さ、テーマとエンタメの融合度の見事さは他にはピクサー、近年のディズニー作品くらいしか類例がない見事さです。


 是非とも3期をやっていただいて、あの感動的なラストを早く見たいものです。「良い奴」になろうと努力しあがいてきたモブが最後に救ったものは…。そして、エクボは最高の相棒キャラである。


2019年最高のアニメは本作だと確信してやみません。たぶんラストになる3期は号泣だろうなぁ…。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 27

カンタダ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

「最強」という名の退屈

漫画作家のONEの人気作品だった「モブサイコ100」がアニメ化され、その第二期が放映された。彼の作品だと他に「ワンパンマン」があるが、どちらの作品の主人公もその世界で「最強」の力を持っているというのが特徴だ。これはある意味、作品としてはかなり異色と言える。他の少年漫画の大抵では、主人公は幾多の困難を乗り越えてようやく「最強」に育っていくのが王道だからだ。


いや、最近の「小説家になろう」の作品群では、主人公は他の追従を絶対に許さないようなチートクラスの最強主人公たちが活躍(?)するもので占められているので、決して珍しいとは言えないかもしれない。が、それらのほぼ全てが踏む轍とでも言おうか、必ず躓くのがその「最強」の力のせいで話が続けられなくなってしまうという問題だ。


最初から「最強」なのであれば、成長する必要がないわけだから、成長するために困難に立ち向かう必要がない。となれば、全ての敵対者は鎧袖一触で倒されてしまうため、全然話が盛り上がらない上に、成長する楽しみが絶無だ。せいぜいが主人公の取り巻きが驚愕して読者のルサンチマンを満たして終わるのが落ちなのだ。後は手を替え品を替えて、読者を飽きさせない手法しかとれないのだから、話は尻すぼみになりがちだ。


そこをONEは巧く回避している。「ワンパンマン」だと主人公の取り巻きが、次々に襲ってくる敵勢力と悪戦苦闘を繰り広げ、一通りやりあった最後に出てくるという手法だ。言ってみればTVドラマの「水戸黄門」で、助さん格さんが露払いした後にご老公が印籠を出す、というようなものだ。


「モブサイコ100」であれば、物語の上で純粋な力に主軸を置かず、人間としての成長に重点を置いているため、早い話が、最強の超能力者である主人公の人格的成長を描いたヒューマンドラマなのだ。したがって、主人公は自分が超能力者であることに全く優越感を抱いていないし、特別視もしないどころか、「超能力が使えたってモテない」とまで言って力を貶めている。そこがこの作品の面白さなのだ。


とはいえ、「モブサイコ100」の主人公のモブが言うように、「超能力が使えたってモテない」のだろうか。もちろん違う。実際、もし、この現実世界で超能力が使えたとしたら、相当異性からのアプローチがあるはずだ。それがないとしたら、それは使い方を間違えているか、有効な使い方を知らないかのどちらかだろう。「小説家になろう」の作品群にも散見されるようにハーレムを作ることだって難しくない。なぜなら「最強」であることで世界は手のひらサイズの容易いものだから、出来ないはずはないのだ。


そこで、もしある日、自分が世界「最強」の力を手に入れたならどうするだろうかと想像してしまう。世界を征服するか。金儲けを考えるか。異性を虜にするか。いや、しかし、きっと持て余してしまうに違いない。その好例として奥浩哉の「いぬやしき」に登場する獅子神皓のような人物があげられる。彼は持て余した力を場当たり的に使って犯罪者になってしまうのだ。


絶大な力を手にした時、人はその力をどう使うのか決断を迫られる。善良な人間で消極的であれば封印しようとするだろう。積極的であれば、その力を正しいことに使おうと考えるだろう。では、具体的にどう使うか。犯罪でも取り締まろうか。わかり易い暴力沙汰ならそれもいいだろうが、それなら知能犯罪でなければ警察にだって容易い。ならば戦争でも止めに行こうか。悪徳政治に終止符を打とうとする、民衆の戦いまで止めようというのか。悪徳政治と書いたが、本当に悪徳かどうかも容易に判断がつかないだろう。


では力をどう使うか。使い途がないのが普通だろう。時々人に見せびらかして悦に入る、その程度が関の山だ。せっかくだから世界征服でも目指してみるのもいいかもしれない。が、こういうものは征服した後の方が大変だ。なぜなら、古今東西、世界征服を果たした人間はいないのだから、どうやって統治すればいいのか誰にもわからないからだ。


事後の思いつく方法としては、力で抑えつけるか、力を使ってその場しのぎに諸問題の解決を図るくらいなもので、必死にやっていても民衆からは不満の声が絶えず、テロも各地で起こるだろう。そのうちに自分が何をしたかったのかわからなくなりそうだ。


「小説家になろう」の多くの転生・転移モノの作品はこの問題を放置したまま書いているのが大半だが、これらがつまらないのも「最強」に最大の原因がある。圧倒的な力をチートで手に入れて、初めは調子に乗ってサクサク敵を倒したり、ハーレムを作ったり、奴隷を買ったりと、好き放題愉しんでいても、さっさと魔王を倒してしまえばそれでお仕舞いだから、なんとかそこまで間を持たせようとする。魔王を倒すという最終目的まで行けば大したもので、大抵は作家が書くのに飽きてきて途中で止めてしまうことが少なくない。新しい玩具を与えられた子供が、そのうち飽きてしまうのと同じことだ。


ここで見えてくることは、「最強」である世界の王者にとって最大の敵は「倦怠」なのだ。同じ「最強」の超能力漫画である「斉木楠雄の災難」の言葉を借りれば、レベルが最高で、強力だが外せない呪いの装備を身にまとった状態でロールプレイングゲームをやらされているようなものだ。ゲームであればクリアーすればお仕舞いだが、日常生活であれば、また最初から何度もプレイするようなものだろう。馬鹿ばかしくて、やっていられなくなるに違いない。


いい加減話を纏めよう。要するに「最強」は扱うには難しすぎるということだ。ONEはその点、巧く描いている。が、作中の主人公らは「特別」であることには悩まされているが「最強」には苦しんでいない。「最強」が虚しいものだと達観しているからなのだ。もっと苦しんでほしい私には、そこが少々飽き足らない。とはいえ、それが彼らの魅力でもあり、時に美徳でもある。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 9

68.4 2 sajou_no_hanaでシリアスなアニメランキング2位
天狼 Sirius the Jaeger(TVアニメ動画)

2018年夏アニメ
★★★★☆ 3.5 (206)
827人が棚に入れました
昭和初期、帝都 東京府。楽器ケースを抱えた奇妙な一団が、東京駅に降り立った。彼らは、吸血鬼たちを狩るためにやってきた「狩人」――。そのなかに一際静かでただならぬ雰囲気を漂わせる青年がいた。狼と人間との混血で、吸血鬼に故郷を滅ぼされたその男、名をユーリィという。「天狼の匣」と呼ばれる聖櫃を巡り、吸血鬼と死闘を繰り広げるユーリィたち。彼らが戦いの果てに知り得た真実とは……? 悠遠たる恩讐と策謀の螺旋が交錯する、至極のサスペンス・アクション、ここに開幕!

声優・キャラクター
上村祐翔、櫻井孝宏、堀内賢雄、森なな子、小林裕介、武内駿輔、間島淳司、高橋李依、田所陽向、津田健次郎、子安武人、大原さやか、飛田展男
ネタバレ

yuugetu さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

ユーリィの「孤高」

2018年夏アニメ。全12話。オリジナルです。
奇を衒わないキャラクターとストーリーが個人的には好印象でしたが、物足りないという人もいるかも。
個人的には洒落た雰囲気でキャッチーな印象の2話まではあまりハマらず、3話からは人間関係がかなり重要視されているのがわかり注目度が上がりました。バトルを重視するかドラマ性を優先するかが序盤ではわからず、ターゲットが絞り切れていない感じはするかも。

声優さんはキャラクターにも合っていましたし、主人公のユーリィ以外は割と鉄板な配役だった印象。敵キャラクターはもう少し捻ってくれても良かったかな?
主演の上村祐翔さんとても良かったです。アニメ以外のお仕事も多い方みたいですね。若さと落ち着きを感じる好演でした。

作画と演出は常に安定して高い質を保っています。
OPED、BGM、音楽の使い方はかなり質が高く、幾度か再視聴してもほぼ違和感はありません。


【良かった点】
物語は王道展開で、ユーリィが復讐心から脱却する1~7話と、新しい生き方を実現しようと行動する8話以降でおおまかに2部構成になっています。
結構設定を詰め込んでいるので、ベタな展開が多かったのがかえって観やすく感じました。
{netabare}
ユーリィの成長・変化・描写については特に一貫していて素晴らしかったと思います。
ユーリィ本人がシリウス(人狼)と人間(サチという名前から日本人女性と思われます)のハーフであること、生き別れた兄が復讐すべきヴァンパイアとなっていたことも結論に繋がっていて良かったです。

アレクセイにせよこれまでのシリウス一族にせよ、匣を悪用されないことを第一に考え、誰かを犠牲にしてきたのでしょうね。シリウス一族の「孤高」は、匣を封印するためにシリウスの王族の魂を用いるように、時に孤独を生む。
けれども、シリウスの最後の生き残りであるユーリィは、「種族を越えて繋がる」ために匣を使うことを前提に考えた。それは村の外の世界を知ったから、そして自分が暴走しても仲間が止めてくれると信じているからです。

「血におぼれたら狩人ではなくなる」…ユーリィがウィラードから言われた言葉です。その言葉の通りユーリィは復讐心から脱却しますが、しかし同時に狩人でもなくなります。
ユーリィの凄い所は、組織と種族を超えて行動しながらも、それらの大切さもよく解っていることだと思うのですよね。
全体通してユーリィの視野は大きく広がっていき、人間性が大きくなっていく。結果シリウス、人間、ヴァンパイアが共存する未来を実現するために匣の力を使うという結論に達します。そして最後には実の父からシリウスの匣(古くから伝わる力)を託され、育ての父からその対となる匣(力を制御する理性あるいは技術)を託される。
組織や種族を超え、しかし拒絶もせず、自身の信念に沿って孤高に生きる。まさしく新しい人狼の生き様です。


それに対比されるのがエフグラフですね。
彼は病による滅亡を受け入れてしまった長老たちに失望し、病を根絶するために動いていたはずでした。目的のために他種族を利用していたのに、部下や仲間を犠牲にしても心を痛めることも無くなり、やがては自分のことしか眼中になくなる。エフグラフは匣を手に入れても使い道など無く、力と血に溺れることになります。


ユーリィが出会った者たちは皆、信念のために行動する人達でした。
本部の命令を破りユーリィのために行動するV海運の仲間たち。
陸軍大佐でありながら、匣が本当に日本に必要か自分の目で確かめようとする伊庭大佐、アレクセイへの友情から異国で生きることを選んだ赤坂大尉。
ヴァンパイアにされながら弟のために行動するミハイル、同じく失った仲間のためにユーリィに協力したビショップ。
所属する組織がありながら自分の信念を貫く彼らは、ユーリィと尊重しあうことが出来る。


そして本作のラストで、組織や種族を越える想いを新たに手にした人物が二人います。
涼子とタマーラです。

第1話のユーリィは「ヴァンパイアには独自の世界があって、人間の世界とぶつかることはあっても重なることはない」と言い切っています。それは人間同士でも同じで、ユーリィもV海運の面々も涼子のような一般人とは住む世界が違うと考えている。
しかし涼子は、当初ユーリィが作ってしまっていた世界の壁を積極的に乗り越え、ユーリィやV海運を通して外の世界を知り、普通の人間の日常や父との関係をユーリィに教えました。涼子の父の会社を継いで世界に出るという目標は、つまり自身の所属する場所に対する責任を考え直し、その上で壁を越えてユーリィと志を共にしたいということです。
タマーラは逆に、ユーリィに種族間の壁を乗り越えられる側。ヴァンパイア一族の誇りにこだわることをやめ、けれども自分の血族のために他種族を受け入れようとしている。ラストで電車から姿が消えたのは、ヴァンパイアの長老たちの元に戻りユーリィの来訪を待つつもりなのだと思います(病死なら遺体が残るし、灰になって死んだら殺されたということだけど、ユーリィがそんなことをするはずないですし)。

涼子とタマーラは、ユーリィの意思をそれぞれ人間とヴァンパイアの社会に持ち帰る役割を担っていたのだと思います。この点には特に感心させられました。
{/netabare}


【気になった点】
{netabare}
全体的にキャラクターの人数が多く持て余し気味だったのは気になったかも。敵味方ともに掘り下げられればもっと良かったと思うし、2クール欲しかったですね。
あと最初は涼子の役回りが分からなくて結構困惑しましたw
タマーラのラストが非常に好みなのですが、それだけに伏線としてユーリィとの関係性を作るエピソードがひとつ欲しかったです。たしか赤坂さんの小屋の前で戦った時に殺すのを躊躇したシーンがあるくらい。タマーラとラリーサの差異もそれだけだったので、タマーラだけでも話としては十分だった気がしますし。 {/netabare}

惜しい部分はありますが、アニメーションとしては高いクオリティで安定していて見やすい作品です。
主人公の生き様を見たい人におススメです。(2018.10.25)

投稿 : 2024/05/04
♥ : 23
ネタバレ

pister さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.9

友人に「どんな内容?」と尋ねられ「IGが好きそう」と答えたら通じた

3話までの感想{netabare}
いきなり淵源ネタ{netabare}
1話で作中時代で日本最先端?の花育ててるってシーンがあって、そこで咲いてたのは百日草(敢えてジニアとは言わない)。
現代において昭和の懐かしい風景をイメージしたガーデニングってのもありまして、ヒャクニチソウは鉄板中の鉄板。
品種改良されて現代風の「ジニア」も出回ってるけど、敢えて昔ながらのヒャクニチソウを好む層ってのも居たり。
で、作中時代としては恐らく妥当なんじゃないかな、書いてる人結構詳しい?
更に2話ではトマトと明かされる前から葉っぱが明らかにトマトで──あ、やっぱちゃんと取材してるわコレ、と思ったり。
因みに自分はヒャクニチソウは一年目は上手く行ったけど二年目は芯食い虫にやられて壊滅した経験があります、あれも連作障害に含まれるんだろうか。{/netabare}

と、賛同者あんま居なさそうな変な方面から掴みはバッチリ。
他にも気になる部分あって、OPでシルエット見せてるロボット的なやつ…フランケンか?
シルエット見る限りはスゲーカッコ良さそうで、これの扱い次第ではハマるかも?

そして3話、2話最後に出てきたのがバンパイア化した兄貴で…ってのはよくある話だけど、ユーリがその一件と「兄を殺せるかどうかワカラン」と素直な胸中を上司に語ったのは好印象。
仲間に黙って一人悩み続ける展開になるんじゃね?ってかそれでグダグダと話数費やすんじゃね?と身構えかけてたので痛快ささえ覚えてしまった。
そういう方向(一人でグダグダ悩む)は今飽きられてるっしょ、と作ってる側も判断したのかな。
って、3話最後、マッドサイエンティストが出てーの、その声が…飛田じゃねーかw
マッドサイエンティスト役って何度目だ?
こういう所はお約束守るのね、良いのか悪いのかはちとワカラン。
(おかげでシリウスの箱ってのが零時迷子的なものに思えてきたり来なかったり)

一方でちょっとひっかかったのは、たまたま保護された病院のセンセがバンパイヤの欲しがってるものの研究第一人者ってのはどうなんかな。
もうちょい以前から因縁があった方が良かったような。
でもってシリウスの箱ってのはフランケンの材料として重要だったってことだろうか、動力かどうかまでは不明。{/netabare}

最終回までの感想{netabare}
途中までは良かった。
狩人メンバーは役職上殺伐としてて事あるごとにユーリにつっかかって来るのかと思ったらメッチャ優しい連中で、憎きバンパイアですらユーリの兄貴だと知ったら銃を下ろすくらい。
バンパイアは倒せたけど人間に恨まれるっていう苦い展開も無い。
お嬢様も非力なクセに危険なことに首突っ込んできて邪魔に感じることになるかな?と思ったら剣の達人で。
“なろう”じゃないけどストレスに感じる部分は極力排除した気遣いを感じた、これが今風ってヤツなのかなーと好意的に見てた。
最初の頃期待した人造人間が思ったほどマッチョじゃなくて痩せっぽちで「あれ?」と思うも(当初はアシュギーネ※みたいのを期待してた)、それでも面白かった。


パソゲや神崎将臣の漫画ではなくCMの方、当時はモンスターとメカの融合が妙にカッコ良く思えたモンです
http://www.nicovideo.jp/watch/sm30038491

が、途中からは「ええ~」って感じで評価が転落。
よくある多段の謎。
なんでバンパイアはシリウスの箱狙ってるの?→シリウスの箱って何なの?→どこに隠してるの?
こういうのって順を追って謎を明かすものだと思うんだけど…明かし方が、雑!!!
いきなり飛田博士がベラベラ喋り出した時は眩暈がした、“Key The MetalIdol”(糞作品、LD全巻持ってる)のイヤ~~~~な記憶が蘇ったぞ。
こういうやり方はちょーっとなぁ…。
更に同じ回で、今度は箱の封印されてる泉?へ飛び込んで「過去の記憶を見る」って形での謎の明かし方…これも、どうなん?
なんで一気に説明しちゃうかなぁ。
こういうのって小出しにしてくのがセオリーだと思うのだが…打ち切りじゃないんだからさ。
同期に放送してたアニメで「シリウス人の最後の生き残りが兄貴の亡霊に導かれる」っていうナンとも非常に被ってる作品がありまして、あっちも失った記憶を夢で思い出すって手法を執ってたけど、ちゃんと「小出し」にしてたぞ?
なによりそっちはヒロイン(メガネの方ね)が物語的に重要な役割を果たしてて…翻ってこっちのお嬢様は居ても居なくてもどうでもいい存在でした。
せめてユーリの決心のキッカケになるとか、できなかったんかなぁ?
欲を言えば太刀回って欲しかったけど…結局剣抜いたのって一回だけじゃね?
ユーリ追ってロンドンへ→実はユーリは樺太へ行きました、からの合流までの経緯も強引だし。
これだったらバンパイアの双子の片割れをヒロインにした方が良かったんじゃないかな。

最後のオチは「オレが箱の力を使って人間やバンパイア、その他いろんな種族が共存できる橋渡しをするぜ」エンド、“ファントムインザトワイライト”のリージャンかな?
それは良い、それは良いんだが…なんでそのタイミングなの?親父は何でそれをしないで封印したの?って考えると、ヴァンパイアが病気にかかって大ピンチ、恩を売るのに丁度良い頃合になるのを待ってたとしか自分には思えない。
やっぱユーリの急な心変わりが引っかかりますね、一族を皆殺しにしたヴァンパイアを“赦す”描写がヌルいというか…バンパイアの病気の件を知って同情を寄せるシーンとかも無いし、兄見てヒヨって勝手に悟っちゃった感が強い。

総評
クライマックスから逆算すると(思い返すと)前半の話が要らない、お嬢様要らない、白虎党要らない。
逆に面白さで言うと後半が要らない、博士要らない、箱って何よ?ってデカい謎はあるんだしバンパイアの病気の件くらいはもっと早くから明かしても良かった予感。
これってシリーズ構成のせいになるのか?
全体を通してバランスが悪いというか、もうアニメの作品数が膨大で、一つ一つ深く考えてる暇が無いって状態なんだろうか?{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 15

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

惨劇を招きし吸血鬼 復讐に生きる人狼

この作品はオリジナルアニメだったようですね。
アニメーション制作がP.A.WORKSだったので視聴を楽しみにしていた作品です。
P.A.WORKSと言えば、春アニメで放送された「ウマ娘 プリティーダービー」が久々の作品…
少し間が空きましたが、2018年は春アニメからこの作品を含め3期連続で放送されるのも、私にとっては朗報でした。
やっぱりP.A.WORKSの作品というと、視聴にも気合いが入りますから…

この物語の舞台は昭和初期の帝都東京…
人間の他に吸血鬼と、吸血鬼を狩る「狩人」である人狼が同じ場所に存在する世界…
人狼が吸血鬼を狩るのには理由がありました。

吸血鬼は人狼の故郷を滅ぼしたから…

ですが、吸血鬼にも人狼の故郷を襲った理由があったんです。
吸血鬼は人狼が持っている言われている「天狼の匣」(シリウスのはこ)を狙うという、単一種族のことしか考えていない身勝手な理由だったんですけどね。

でも、「天狼の匣」を狙っているのは吸血鬼だけでなく、人類も虎視眈々と様子を窺っていたのでした。
所持すると絶大な力が得られると言われている「天狼の匣」を巡り、吸血鬼たちの起こす事件を皮切りに物語が動いていきます。

最初は色々と意外でした。
P.A.WORKSが「復讐」という負の感情を原動力にする作品って、これまで殆ど手掛けてこなかったのではないでしょうか。
「true tears」「Angel Beats!」「花咲くいろは」「凪のあすから」「SHIROBAKO」「Charlotte」「クロムクロ」
これまでP.A.WORKSが制作してきた作品を抜粋で列挙してみましたが、マイナスの感情がゼロという訳ではないにしろ、その感情が血で血を洗う争いに発展するような作品は無い様に思います。

P.A.WORKSの新ジャンル開拓という位置付けなんでしょうか?
いずれにせよ、P.A.WORKSの持つクオリティが発揮されればジャンルは問わないんでしょうけどね。

完走して振り返ってみると、とても繊細な作品だった…というのが率直な理由です。
欲しいモノは力づくでも手に入れる…弱肉強食の生存競争の原理ともいえる言動は、人間社会にとって必ずしも是ではありません。

でも、誰だって自分の種族が一番可愛いんです。
そして問題を抱えていない種族なんかいないんです。
もし「天狼の匣」の存在を知らなかったら、自力で打開したかもしれません。
慎ましく生きる道を選択する手段だってゼロでは無いと思います。

だから「知る」と「知らない」では導かれる結論に天地程の差が生まれるんです。
人狼以外の種族がどうして「天狼の匣」の存在を知ったかは分かりません。
それに人狼が「天狼の匣」を作った理由も…

色々分からないことのある中、「天狼の匣」を手に入れること以外の選択肢が見出せなかったのは少し残念だったかもしれません。
本来ヒトとして…或いは吸血鬼や人狼としてどうあるべきだったのか…という理想像が見えなかったからです。

そして、大きな戦いのあと…汽車で移動するシーンがありましたが、あの場面に至る経緯についてももう少し見たかったと思います。
主人公であるユーリィは一人の少女と一緒でした。
でもほんの少し前までは有り得ない光景だったはずです。
多くの言葉は交わされなかったかもしれない…
けれど、たくさんの葛藤は間違いなくそこに存在したはずだから…

そう考えてみると、物語の展開は綺麗になぞれていましたが、登場人物の心理描写については、もう少し深掘りされていた方がより印象的だったと思います。
尺の長さ…これが最大の障害であるのは認識しています。
でも、尺の長さが言い訳にできる範囲とそうじゃない部分ってあると思うんです。
だから何でも十把一絡げにして言い訳していたら、進化が止まってしまう気がします。

凄く難しいテーマの作品だと思います。
きっと誰もが手掛けられる作品ではなく、P.A.WORKSだからここまで漕ぎ付けることができたんだと思います。
貪欲にあらゆるモノを吸収して次に繋げたいですよね。
それは私たちの仕事も一緒です。

人狼の悲しい復讐の物語…
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

オープニングテーマは、岸田教団&THE明星ロケッツさんの「シリウス」
エンディングテーマは、sajou no hanaさんの「星絵」
オープニングの格好よさは相変わらず…
エンディングのグループは今回が初めてだと思いますが、こちらの楽曲も個人的には好きでした。
どちらも通勤途中に聞いています。

1クール全12話の物語でした。
P.A.WORKSならではのクオリティが感じられる一作だったのではないでしょうか。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 18
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