オリジナルアニメーションで怪物なアニメ映画ランキング 5

あにこれの全ユーザーがアニメ映画のオリジナルアニメーションで怪物な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月05日の時点で一番のオリジナルアニメーションで怪物なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

77.6 1 オリジナルアニメーションで怪物なアニメランキング1位
甲鉄城のカバネリ 海門決戦(アニメ映画)

2019年5月10日
★★★★☆ 3.9 (310)
1645人が棚に入れました
世界中に産業革命の波が押し寄せ、近世から近代に移り変わろうとした頃、突如として不死の怪物が現れた。鋼鉄の皮膜に覆われた心臓を撃ち抜かれない限り滅びず、それに噛まれた者も一度死んだ後に蘇り人を襲うという。後にカバネと呼ばれる事になるそれらは爆発的に増殖し、全世界を覆い尽くしていった。 極東の島国である日ノ本で、カバネの脅威に立ち向かい、前線をくぐり抜けている分厚い装甲に覆われた蒸気機関車(通称、駿城)の一つ甲鉄城で生き残った生駒たちは、カバネと人の攻防戦の地、日本海に面する廃坑駅「海門」で玄路、虎落、海門の民と「連合軍」を結成し、カバネ撃退の策を立てていた。そんな中、生駒は、海門の地のカバネたちは統制され、集団行動をとる特徴を持っていることに気づく。そのことを連合軍へ報告を行う生駒だったが、相手にされず、逆にカバネリであることから連合軍から虐げられてしまう。怒りに身を焦がし冷静さを失った生駒は単身で敵地へ乗り込むことを決意する。一方無名は、これまで自分を支えてくれた生駒に対してこれまでとは違う感情が芽生え始めていた。しかし、そこへ生駒が単身で敵地に乗り込むつもりであるという知らせが飛び込んでくるーー。新たなカバネとの戦い、そして、無名と生駒の運命はー!?

声優・キャラクター
畠中祐、千本木彩花、内田真礼、増田俊樹、沖佳苗、伊瀬茉莉也、逢坂良太、佐藤健輔、マックスウェル・パワーズ、三木眞一郎

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

その旅路の先に、新たな運命。

本作は、2016年の春アニメでTV放送された「甲鉄城のカバネリ」の続編となります。
TVアニメ放送後に総集編の前後編が上映されましたが、そちらは未視聴です。

劇場では2019年5月10日から2週間限定で上映されるようですが、私はNetflixで視聴しました。
劇場での上映と配信が同時に行われることってあるんですね。
最近、Netflixに入っていて良かったな…と思えることがちょくちょくあります。

一番嬉しいのはNetflixオリジナル作品のバリエーションが増えてきたことです。
それと最新のTVアニメも放送されているので、万が一、録画に失敗したとしても追いかけ視聴ができるのもメリットの一つだと思います。

カバネリ…といって真っ先に頭の中に浮かび上がるのが無名の存在です。
TV本編では色々と大変だった彼女でしたが、甲鉄城の旅はまだ終わっていなかったのです。
生まれ故郷を目指す一行が辿り着いたのは、日本海に面する「海門(うなと)」という廃坑駅でした。
ここでは海門を奪取すべく、人間とカバネの激しい抗争が繰り広げられていたんです。

ここを通らなきゃ故郷に帰れない…
甲鉄城に乗った菖蒲らは、カバネを撃退する連合軍に参戦することとなり…物語が動いていきます。

アニメーション制作が「WIT STUDIO」で監督が荒木哲郎さんといえば「進撃の巨人」と一緒ですよね。
カバネが人間を襲う様を見ていると、お互いの作品の共通点に成り得ると思いました。
そしてこの作品でも見惚れてしまうほど圧倒的なのが、戦闘シーンにおけるキャラの躍動感です。
本作品は劇場版で特に気合いが入っていたからでしょうか…
無名の…生駒の戦闘シーンの迫力は半端ありません。

きっと、何もかもがTV版の延長だったら、レビューで書けるのはきっとこのくらい…
でも、TV版とは大きく違っている点がこの劇場版にはしっかり用意されていたのです。

それは、ベタですが無名と生駒の関係です。
これまではお互い信頼関係にあって、カバネとの戦いにおいて背中を預けられる間柄でした。
でも、この劇場版ではもう数歩気持ちの面が進んでいるんです。

特に作中における無名と、炊事や子守りに精を出している鰍との会話シーンがあるのですが、見方によってはコイバナに見えちゃったり…
無名…戦闘スキルの高さとカバネに対する残忍さは相変わらずですが、こと生駒の話になると態度が急変するところも、彼女の可愛らしさに拍車をかけています。

そりゃそうだと思います…
あれだけの激戦と苦しい状況を切り抜けてきたのですから…
そんな気持ちの変化が戦闘や普段の言動にどの様な影響を及ぼすのか…
この作品の見どころの一つだと思います。

それと根っこの部分の共通点は忘れられません。
正直カバネリになって良いことなんてあったでしょうか…?
強くなったかもしれない…
でも所詮はどっちつかずの中途半端な存在である上、いつカバネ化するか分からないリスクだって孕んでいます。
それでも、無名と生駒の二人がカバネリだったから乗り越えられた局面だってありましたし、二人にしか感じられない世界を共有することだってできるんですから…

でも、そのくらいの恩恵はあって然るべきなのかも…
甲鉄城に乗っている時間が長くて忘れていましたが、カバネリって人から虐げられる存在だったんですよね。
様々なリスクを想定して進言してもまともに取り合って貰えないし、挙句の果てには諸悪の根源みたいな存在を受ける始末…
心が折れても仕方無い場面だってゼロではありませんでした。

ですが、軍人や民衆が二人をどの様に評価しても、これまで一緒に苦難を乗り越えてきた甲鉄城の仲間は、二人に対する疑念など一点の曇りもありません。
最初は彼らだって違ったのに…甲鉄城で過ごした時間と揺ぎ無い実績が、絶対的信頼に値することを彼らは知っていますから…

海門での決戦の行方…気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。
個人的には、その後の…無名の行動の方がよっぽど気になりましたけどね…^^
あんな真っ赤な顔の無名…きっとそうお目にかかれるモノではないと思いました。

主題歌は、EGOISTの「咲かせや咲かせ」
個人的に、この楽曲は結構感慨深かったです。
何故なら、この楽曲の背景で流れているのは、甲鉄城の乗組員…無名、菖蒲、鰍に生駒ら男性陣も加えたヨサコイなんです。
彼らの旅が終わったかどうか…私には分かりません。
ラストの風景に、それらしさも感じられましたが、日ノ本の殆どを覆い尽くしているカバネの影響はそう易々とは無くならない事でしょう…
それでも、笑顔でヨサコイが踊れるのは少なくても今は平和だから…にほかなりません。
束の間かもしれない…これからどんな試練が待っているかも分からない…
何せ伏線が回収しきれていませんから…
けれど、ここで見せて貰った笑顔は本物だったと思いました。

願わくば、みんなのその笑顔が少しでも長続きすることを…
みんながこれから手にするのは人殺しの道具ではなく、鳴子のような人々を笑顔にする道具でありますように・・・

投稿 : 2024/06/01
♥ : 27
ネタバレ

シン☆ジ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

まあ。。もう少しインパクトは欲しいけどヒロインが好きなら

 
2期かと思ったら劇場版なんですね。
ノイタミナ枠のTVシリーズは視聴済み。
(レビュー書いてないけど・・)

導入部で説明があって背景が分かり易い。
TVシリーズを観てからの方がいいけど、
観てなくてもワケわからんくはないかな。

てか『日の本』の状況、そうだったんだw

さて、ゾンビ系は好きなジャンルですが果たして・・

■ストーリー
~{netabare}
日常シーンから入るのは好感。
カバネの異質性やキケン性がわかる。
少しは観る人に恐怖心を持ってもらわないとね。

出し惜しみなく無名参上。
ほどなく生駒も登場。

やっぱ無名カワイイw
女子の描き方がわかってらっしゃる。
表情とか、身体の丸みとか・・
(この絵で『みるタイツ』とか作って欲しいなあw)

日常の無名、編み物してる姿もカワイイ。
すれ違い・・王道ですなーw

しかし人間どもはなぜにこうもお決まりでカバネリを疎むのか。。
異質なものを排除したくなる心理はわからないでもないけど。。
でもこれってコロナ禍の世の中に似てなくもないか。

さて、特に刺さったシーンは・・

 無名:喋らなくていいよ
 生駒:ずっとそばにいろ。俺から離れるな
 無名:もう一回、言って・・

うぐぅ・・w
定番かも知れんけど胸に響くw

最後のキスシーン、控えめだけどそこがイイ・・
真っ赤っかな無名もレア感ありw

でも・・
{/netabare}~

劇場版なら、もうちょっとインパクトがあってもいいかなーw

■作画
背景は綺麗だし、異形もイタい絵じゃないし、バトルも見応えあり。
トリッキーな動きは殺陣師でもいるのかな。
そんな動きに絵もちゃんとついて行ってる。
普通かも知れないけど、その普通がいかに大変なことか、色んな作品を観ると感じてしまうw

■キャスト
ほぼ自分用メモなので畳んどきます。
~{netabare}
生駒(いこま):畠中祐
 ちょっとハスキーだけど
 若くて危うい青年にドンピシャな
 感じは適役で好演。

無名(むめい):千本木彩花
 千本木さん、声好き。
 ガーリッシュナンバー(烏丸千歳)
  初主演。よかったですw
 転スラ(シュナ)
 空挺ドラゴンズ(ナナミ)
 などなど・・
 共演した内田真礼が絶賛?へー。
 同じ日ナレ出身だけにw

菖蒲(あやめ):内田真礼
 もう一人のヒロインですなw

侑那(ゆきな): 伊瀬茉莉也
 惡の華(仲村佐和)
 フォトカノ(前田果音)
 宝石の国(アンタークチサイト)
 約束のネバーランド(レイ)
 そして・・
 スクスト(天音)
 メイドインアビス(レグ)
 呪術廻戦(佐々木先輩)
 けっこうお世話になってました。
{/netabare}~


 原作:オリジナル
  にしては珍しく面白い。
  やはり色々なテイストは感じますが。
 制作:WIT STUDIO
  新劇の巨人、終わりのセラフ、
  魔法使いの嫁、恋は雨上がりのように、
  GREAT PRETENDER、など
 公開:2019年5月
 視聴:2020年11月アマプラ/dアニメ

EDは歌とかキャラとか踊りとかボーっと観ていたら、なんか・・・ジワっと来てしまった。
 ~{netabare}
 いや尿漏れじゃなくてw
 
 目頭ですからw
 {/netabare}~
 

投稿 : 2024/06/01
♥ : 22
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

暴走特急、北陸を往く。

石川県内の映画館が上映してくれないのでイジけてw
久々にネトフリ臨時会員に復帰して視聴。

それにしても架空の“日ノ本”とは言え、一応、北陸が舞台なのに、
“ご当地”の北陸三県上映総スルーするとはw


愚痴はさておき、“裏日本”にて、数々の“陸の孤島”を生んできた山の絶壁。
2時間サスペンスで船越栄一郎氏が説教でもかましそうな、海岸の断崖。
それらの隙間を掻き分けて、へばり付くように敷設された路線という北陸のロケーション。
列車というアクションのメッカを際立たせるのに有効な舞台設定でした。

作画も道中息切れの心配無用な劇場版クオリティーで、
無名ちゃんによるカバネ連続キルも華麗に再現され、
相変わらず色んな所がよく爆発していましたw
{netabare}列車砲にトロッコまで登場♪
ついでにお姫様抱っこもあるし、さらには{netabare}チュ~{/netabare}もあるよ♪
という実に楽しいアトラクション?でした。{/netabare}

反面、心情や過去のいきさつの詳述を、車外に放逐する制作スタンスも健在。
特にラスボスの動機に関わる部分は例の如くサラリと触れられるだけで、
視聴中、想像力で補いながら、
人とカバネリの関わりについてテーマを深める好機なのに、
勿体ないなぁ~と眺めていました。
他にも生きる意味などがテーマだったようですが、
私は正直、これだけの尺と心理描写では十分に伝わっては来ませんでした。
2時間サスペンスでも、崖の上で真犯人の身の上話をさせたりして、
もう少し心理を掘り下げる気がします。

TVアニメ版のレビューにて、私は、
本シリーズはもっと“各駅停車”でじっくり心情を表現すれば、
名作になるポテンシャルがある。との主旨のコメントも残しましたが、

そんな“些末事”を描くよりも、まずはアクションする、
無名ちゃんに萌える。むしろ踊るwという劇場版の姿勢に気圧されて、
私はそういう方向での名作路線はもう諦めましたw
({netabare}EGOISTを春満開の舞に浪費されたら、もう白旗挙げて、酔い痴れる他ありませんw
やったね♪無名ちゃん♪って感じで、ED映像や「咲かせや咲かせ」PV、
結構病み付きになってリピートしていますw{/netabare})

視聴中1クールアニメならばもう少し繊細になったのでは?との考えも頭をよぎりましたが、
本シリーズの場合は爆発の回数が増えたり、
花見の宴が延長したりするだけでしょうw

アクションの爽快感を第一にするなら、今回みたいにTVアニメ三話分の長さで、
スピード感を追求するのもアリなのかもしれません。

どうせ、ここまで突っ走ってしまったなら、本シリーズは
日本発の暴走バイオレンスアニメとして、
『沈黙』シリーズ、『暴走特急』などのスティーブン・セガールや、
巨費を投じて人情話などの“ムダ”を省いて、
魅せたいアクションやロマンスから表現していく
B級ハリウッド映画みたいなテンポ重視のアクション路線を爆走して
酔わせて欲しいと願います。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 19

66.2 2 オリジナルアニメーションで怪物なアニメランキング2位
星を追う子ども(アニメ映画)

2011年5月7日
★★★★☆ 3.6 (645)
3186人が棚に入れました
ある日、父の形見の鉱石ラジオから聴こえてきた不思議な唄。誰かの心がそのまま音になったような唄を、忘れられずにいた少女アスナに訪れたひとつの出会い。お気に入りの高台に向かう途中、異様なケモノに襲われたアスナはシュンという少年に助けられる。アガルタという遠い場所から、どうしても会いたい人と見たいものがあってやって来たと語るシュン。2人は心を通わせていくものの、突然シュンはアスナの前から姿を消してしまう。そして聞かされる哀しい知らせ。それを信じられずにいたアスナは、学校の新任教師モリサキから地下世界の神話を教えられる。そこはこの世の秘密が隠されたあらゆる願いが叶う場所で、アガルタとも呼ばれているという。そんな中、アスナの前にシュンに瓜二つの少年と彼を追う謎の男たちが現れる。男たちの狙いは、アガルタへの鍵であるクラヴィス。追いつめられた少年とアスナの前で、ついにアガルタへの扉が開かれる。そこでアスナは、男たちのリーダーが亡き妻との再会を切望しアガルタを探し続けていたモリサキだったということ、少年がシュンの弟シンだということを知る。アガルタへの入り口を目前にして、アスナはある決意をする。「もう一度、あの人に会いたい」。アスナ、モリサキ、シンの3人はそれぞれの想いを胸に、伝説の地へ旅に出る―。

声優・キャラクター
金元寿子、入野自由、井上和彦、島本須美、日高里菜、竹内順子、折笠富美子
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

新海作品ファン向け

あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。

 初見でした。2時間のファンタジー作品です。
 宮崎駿監督(庵野監督も?)のオマージュなのはよく分かりましたし、やりたいことも何となく伝わって来ました。秒速と違う作風にチャレンジしたことは良かったと思います。でも、正直に言って面白くなかったですね。有名作品をオマージュ出来るほどの構成力はなかったです。

ストーリーについて:
 ブラックアウトして気が付くとシーンが変わって・・・という表現が複数回使われていたのが気になりました。これじゃあストーリーをつなげられないと宣言しているようなものです。視聴者が置いてけぼりになってしまいます。
 象徴物もよく分からなかったですね。{netabare}トンボの交尾、妊婦の先生と来て、最後の二人が食べられるシーンでケツァルトルも妊婦っぽく描かれていたような気がします。が、やっぱりよく分からない。この後、アスナとシンが実質的に再生し、祝福を受けるというのは分かります。でもそれならケツァルトルだけの表現で事足ります。トンボを使うとすべての生命の賛美みたいな感じになるけど、そういうテーマを強く感じることはなかったです。妊婦の先生は次に来るモリサキを意識して、ストーリー全体に係っていると取れなくもないけど、複数回登場させるほどの重要性は一切感じなかったですし、むしろ混乱しました。先生が妊婦であることが何の効果も持てないなら、むしろテーマを背負わせる描き方をすべきではなかったと思います。モリサキは新しく来た図書館の司書くらいで十分です。{/netabare}
 メインテーマも分かるのですが、それはキャラクターのセリフに表れているからというだけで、作品の中で「表現」として出ている類のものではないです。著名な監督たちが1分1秒を大事に作品を作っていることに比較して、無駄が多いと言わざるを得ないように感じました。

作画:
 キャラクターの動きは良かったと思います。ジブリっぽさ以前に、新海作品でキャラクターの動きが特別悪いと思ったことはありません。
 むしろ気になったのは背景ですね。写真をトレースして描ける部分はさすがにきれいです。しかし、建物や遺跡、室内のデザインなどはオリジナリティが感じられませんでした。どこかで見たことあるようなものばかり。オマージュを通り越してコピーに近いです。地下の風景も星空と草原と水ばかりでいずれも地上と何ら変わらないものでした。つまり、風景はトレースで、建造物はコピー。新海監督の中にあるオリジナルのファンタジーの世界を見つけることは出来ませんでした。

キャラクター:
 ベースは悪くないのですが、掘り下げられてないとは思いました。
 唯一、お母さんの描き方は無駄もなく、とても良かったと思います。{netabare}お母さんは家に入る前に煙草を吸っているのですが、足元のある吸殻は1回の量ではないようでした。つまり、毎日家に入る前に吸ってはいる。娘を気遣っているよりは、娘に会うのをためらっているように見えました。朝食のエピソードもそっけない感じでしたしね。アスナの寂しさの原因の一つであることは十分に伝わってきました。その後、娘と同世代の子の死に触れ、夫の死を思い出し、エンディング近くで娘への祝福、そして娘を送る姿となっていました。登場シーンは少ないですが、過不足ない描写で上手い描き方をしていたと思います。{/netabare}
 一方でお父さんの設定は全然活きてない。マナもいまひとつでした。シンの描き方も全然ダメだったと思います。つまりファンタジー側の人物表現が上手くないんですよね。ファンタジーの設定を活かせないとなると、キャラクターに魅力があるとは言い辛いです。

総評:
 ファンタジーとしては駄作だと思います。

対象年齢等:
 メインターゲットの10代の人にオススメする要素は乏しいです。大人の視聴に耐えられる作品ではないように思えます。
 ただ、新海作品の風景に価値を見出せるなら大丈夫でしょう。純粋にファン向けの作品だと割り切って視聴することを推奨します。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 7

hiroshi5 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

私にしては珍しく作品内容では無く、今作品の見方について語ってみた

酷評が多いこの作品ですが、個人的にはかなり気に入っている作品です。
ジブリの雰囲気をかなり醸し出していますが、どこかに新海誠監督を連想させる何かが張り巡らされている感じでした。
特に時々描かれる鷹やツバメなど秒速と同じ技法を使っているな〜と思わずにはいられませんでした。

キャラの方は特に不満はありませんが、これはちょっとジブリを意識し過ぎた感が否めませんねw
私としては秒速や雲のむこうと同じ感じのキャラで良かったのですが・・・

音楽、作画は共に素晴らしいデキで、これだけで十分見る価値はあると思いました。
新海さんの作品はホント見てて和みます。

さて肝心の物語の方ですが、私は世界観を楽しむには合格を、感情移入からのキャラ視線で内容の合理性を楽しむには不合格を上げたいと思います。

まず世界観から↓
この作品で注目されてるジブリ風作画&物語ですが、私はまったく問題無いと思っています。
私もジブリの作品は大好きで、ラピュタなどは今でも見た時の感動を覚えています。
ラピュタやもののけ姫はその圧倒的なストーリー展開と誰もが夢見る架空世界をハイクオリティーで表現しています。
しかし、実はこの両作品を見る度にリメイクしないかな〜なんて思ってた訳です、私は。なぜなら古いだけあって、物語のスケールの大きさに作画が追いついていない感じが見るたびに伝わってくるからです。特に背景。ラピュタの風景を今の立体感溢れる作画技術で表現したらどんな凄い作品になるんだろうか・・・なんていつも考えてました。
そんな時に登場したのが今作品!
出てくる化け物はもののけ姫作品内に存在する化け物そっくり!しかも壮大な世界感はラピュタのよう(ナウシカなど他の作品も含む)。
まさに待ち望んでいた展開がそこに存在していましたw
実を言うと、最近のジブリの作品(ボニョやアリエッティーなど)はあまり好きではなく、どうしても昔の大作と比べてしまっていました。ブランドが同じなだけに、期待値がどうしても高くなってしまうのです。
しかし、この作品がいくらジブリに似ていようと、監督が新海さんなのには違いありませんから、比べる対象にならないんですよね。

内容がいくらジブリに似てようが、ジブリの大作を下回ろうが、新海さんの素晴らしい作画とジブリの壮大な世界観が楽しめるんなら十分だと思うんですよ。
ということで、今作品はジブリの新海風リメイクと考えれば見応えのある作品として捉えることが出来ると思います。

あと、まったく関係ないんですが最初に化け物が現れ、シュンがアスナを助けるシーンがどうしても亡念のザムドと重なってしまい、笑ってしましましたw

さて、本題に戻ります。
感情移入からのキャラ視線で内容の合理性を楽しむには不合格と申し上げた理由を書きたいと思います。
これは、既に多くの人がレビューで書いていましたが、キャラの詳細な説明がなさ過ぎましたね。
特に先生、アスナ、シュン、シンなどの重要キャラクターのバックグラウンドが足りなかった。
確かにこの物語の焦点が「生と死」にあるから、そこまでキャラクターの詳細設定を語らなくて良いかもしれません。
しかし、視聴者は主人公であるアスナが何を求めてアガルタに行っているのか映画の途中になるまで理解できません。他のキャラとの関連性も薄く、シュンとの関係もあそこまで深くなる理由がいまいち納得いかない。

やはり今作品は世界観や作画を楽しむべきだと思います。
この作品のテーマである「生と死」に関しても、あまりにキャラ説明が少ない為今ひとつ来るものがないですしね。人を基準に、または合理性を基準にするとホント色々訳の分からない点がぞくぞく出て来るのが今作品です。
だからこそ、(私にしては珍しく!)今作品は内容重視ではなく、その不確かな、しかし圧倒的な設定が作り上げる世界感を楽しむべきなのだと私は思う訳です。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 14

大和撫子 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

それは、"さよなら"を言うための旅

もしホントに地球の地下に私達の知らない世界があったら、それはすごくロマンのあるお話ですよね♪

◆この作品の内容は・・・
主人公の女の子アスナはある日、見た事もない怪物に襲われるのですが、そこで不思議な青年に助けられます。
その青年は『アガルタ』という遠い世界から来たらしく、アスナはその青年と仲良くなります。
しかし仲良くなった矢先に、その青年が死んでしまったという話をアスナは聞かされます。
悲しむアスナですが、転任してきた教師から恋人を生き返らせる為に地下世界に行く神話を聞き、『アガルタ』の名を耳にします。
そして地下世界『アガルタ』に行くことに・・・。

◆この作品を見る前にまずはここを予習 p■qω・´)シャキーン・・・
『イザナギとイザナミの伝説』
はるか昔、天上界には神々が住み下界には大地がなく海だけが広がっていた頃、天上界の偉い神様はイサナギとイザナミという2人の神様に島作りを命じました。
2人は結婚し本州・四国・九州などの島々を生んでいきました。
島々が出来上がると次はその島を治める神様を生んでいきました。
風の神様、石の神様、山の神様など・・・そして火の神様も・・・。
でも火の神様を生んだ時にイザナミは大やけどをして、その火傷が原因で死んでしまったのです。
悲しんだイザナギは黄泉の国の奥深くに行って、死んだイザナミを見つけて、一緒に地上に帰ってほしいと頼みました。
イザナミは「黄泉の国の神様に地上に帰る事を頼んでみるから、それまで私の事を決して見ないで」と言いました。
でもイザナギはその約束が守れずイザナミを見てしまいました。
イザナミの体は・・・腐敗してウジ虫が湧いた醜い姿に・・・。
醜い姿を見られたイザナミは怒ってイザナギを殺そうとしました。
イザナギはなんとか地上に逃げ帰り、地上と黄泉の国の出入口を大岩で塞ぎました。
このお話は『古事記』に記された日本の神話ですが、似たような死の世界・地下世界のお話は世界中にありますよね。
有名なのはギリシャ神話のオルフェウスの伝説。
そしてこの作品で登場する世界が地球空洞説で有名な『アガルタ』という地下世界なのです。

◆タイトルの意味は・・・
地下世界の話なのになぜ星?
星は私達には決して手の届かない場所にあります。
新海監督がいつも作品に込めるテーマは「喪失」。
この作品は死者を取り戻そうとするお話、でもそれは星を掴むような話ですよね。
星を追った先にあるものは果たして?

◆声優陣は・・・
渡瀬明日菜  : 金元寿子(侵略!イカ娘のイカ娘)
シュン&シン  : 入野自由(あの花のじんたん)
森崎竜司    : 井上和彦(夏目友人帳のニャンコ先生)

◆総評・・・
ジブリ作品にいろいろな面で似てると言われてますが、\(・_\)その事については(/_・)/端っこに置いといてっと。
余計な先入観がこの作品の本質を見誤る恐れがあるので^^;
地下世界へ旅立つという物語。
まずはこの設定に非常に興味が持てました。
『アガルタ』という未知なる場所、そこにどんな世界が広がっているのか?
普段は何事も起きないような平凡で静かな田舎町の風景から始まり、我々の知らない未知なる地下世界を広大で神秘的に描く映像美の美しさは目を見張るものがあり、地下世界の冒険をワクワクさせました。
それだけに地下世界の冒険の内容が薄く感じてしまったのも否めませんでした。
この冒険劇を劇場版の2時間枠でなく、もっと長い尺で描く事ができたらもっとスケール感の大きい物語になったに違いないと思ったので、そこが残念でした。
とはいえ未知なる世界への冒険劇に加え、「喪失」を描く新海監督らしさが終盤には非常によく描かれていて、なかなか面白い作品でした。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 27

61.5 3 オリジナルアニメーションで怪物なアニメランキング3位
センコロール(アニメ映画)

2009年8月22日
★★★★☆ 3.6 (143)
733人が棚に入れました
奇妙な生物「センコ」を飼う少年・テツと、同じような生物を飼う少年・シュウとの間でモンスター同士の戦いが起こる。テツの秘密を知った同級生の少女・ユキはその戦いに巻き込まれる。

声優・キャラクター
花澤香菜、下野紘、木村良平、森谷里美

シェリー さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

「何もなかったね。」

日常から非日常性を引き出して、そこからあっさりと去っていくのが特徴的なこの作品。



 何がしたいとか、これをぶつけたいとかいった強い衝動は特に見られないが、画やカメラワークから湧いてくる雰囲気にそれらは溶け込んでいるのだと思う。落ち着いていて、グッと抑制されたようにみえる作品自体がすべてなのだろう。アニメとして直接肌にくるものを作ったという点では良くもあり、悪くもある。この何か起こるかもしれない前兆を感じる空気感が好きな人にとっては楽しめるが、始めから終わりまでずっと水平的に並べられているので少しバランスが悪く感じる節がある。感覚的なアニメを作ったわりには盛り上がりには欠けるし、デザイン性、創造性はいまいちときている。寂しい言い方をしてしまうと、抜きん出た面白さは見当たらない作品だ。


 内容は、1人の男子高校生がある女子高校生に秘密を見つけられてしまうところから発展する。その秘密とは、白い怪物のことだ。アマミヤは「センコ」と呼んでいる。センコは白い大きな怪物で何にでも変身できてしまう。それこそ、自転車でも冷蔵庫でも飛行機でも。大きさも重さも自由自在だ。何にも変身していないときは熊のように大きく、丸い体に使い物にならなそうな小さな四本の足が付いている。顔もはっきりとあるが、しゃべることはなくただいつも不満そうな顔を掲げている。その異物感もさながら、どこにいても不気味で存在を疑うような不思議な奴である。ただひとつ悪いことはしないところが可愛い。そんな彼の秘密を知ったユキは面白がってアマミヤについていく。するとアマミヤに攻撃してくるものが現れる。彼と同じ力を持った人間だ。いつしかその戦いは規模を広げ、都心は大惨事になる。軍が出動し、ミサイルが投下される。が、そんなことをものともせず2人は対峙する。しかし、最終的に勝負を持っていったのはユキだった。アマミヤの力はユキに移り、襲ってきた人間をバットに変身したセンコで殴ってケリがつく。でもユキは勝って嬉しがることはなく、腑に落ちないアマミヤを前に淡々とその場から立ち去ろうとするのだ。そりゃあそうだよね。センコがあっさりと宿主を変えて、さらにユキが全部持って行っちゃうんだもん。アマミヤとしてはなんだか納得いかないよね。でもそんなこと気にせずユキは他の人に見つからないように「ほら、急いで」とアマミヤの手を引っ張って連れて帰る。まるで何事もなかったように。


 僕は個人的にこの作品のここが好きだ。現実にはない奇妙な怪物や無限の変身や都心で繰り広げられる大きな戦いなど、非現実性を帯びた要素をこれだけ持ち出しておきながら、主人公のヒロイズムはあっさりとユキに渡され、そのユキもそれに浸ることなく、ほとんど見向きもせずにそこから立ち去ってしまうところが面白い。飽きるでもすごく嫌がるでもなく、ふっと離れていく彼女の姿にはどこか惹かれるものがある。ここには皮肉っぽいところもあれば、意味があるようでないようなフリも、アマミヤの「なんなんだよ」と逆に振り回されるところが可笑しくもあって僕は好きなのだ。最後に心の中でふふっと笑えるこの感じはたまらない。



わざわざ何度も観るものでもないけれど、最後のシーンに感じたことが心の片隅にひっそりと残っている作品です。それだけでも充分僕にとっては特別な作品です。そんなふうに残るものって思っているより少ないから。そんな感覚をぜひ味わってみて下さい。






余談

EDがsupercellの「LOVE&ROLL」でした。
僕はけっこうというかかなりsupercellとやなぎなぎを聴く方で好きです。
歌詞なんかは割とどうでもいいものだけど楽曲や歌声がとても気に入っています。
歌詞はまあJ-POPだから個人個人ピンとくるものに差があり過ぎるからこれは仕方ないw
アルバム『Today Is A Beautiful Day』はよく聴いています。でも真剣に聴くことはあまりないかも。
好きなのは「君の知らない物語」「ヒーロー」「LOVE&ROLL」「星が瞬くこんな夜に」「うたかた花火」です。
その中にも特に好きなのはこのアルバムの始めと終わりにある2曲の「終わりへ向かう始まりの歌」「私へ」、そして「さよならメモリーズ」です。
なぜか前2曲は好きで、歌詞にも共感を覚えます。彼女の透き通った声に不安の色が青くスッとかかっていて、
若い頃に盲目的に信じていたことの崩壊や将来への漠然とした不安などに思わず頷いてしまいます。
正しかったのかな?わたしはいま幸せなのかな?と焦る若さ特有のこの気持ちが正直に語れていてとても好きです。
「さよならメモリーズ」は最後の「好きでした。」とこの一言を言うまでの流れと盛り上げ方がとても好きです。
いつも聴くと、とうとう言えたんだね、って1人で思ってますw

まあ割に好きなアーティストです。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 7

けみかけ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

ビッグバジェットとも自主制作とも違う、もうひとつのアニメ制作のカタチか否か

色々と思い出深い映画です^q^


当時、今は無き池袋のテアトルダイヤにてコイツを観るためのチケットを買おうとその日に初めて顔合わせをしたそうたんと一緒に早朝6時から入り口に張り込んだのも今は昔(笑)
あんな必死の想いで映画館に行ったのはコイツと『らっきょの5章』ぐらいですよw










事の始まりは『動画革命東京』という個人制作のアニメ作品を専用ウェブチャンネルで公開、その中から商業利用価値のありそうな作品やクリエーターを発掘するという東京都支援のプロジェクトからです


最近では『つり球』のキャラクター原案などでもお馴染みの漫画家、宇木敦哉さんが作画はモチロンのこと、背景や仕上げまで全て一人で手掛けた作品でして、今作の原点となるトレイラーが例のウェブチャンネルで公開されるやいなや、アニメーションの面白さの原点回帰ともいえる【変身(メタモルフォーゼ)】をする怪獣とソレを見つめる少女の表情など、キメ細やかな作画描写が多くの視聴者やオイラの心にワクワク感をもたらしてくれました


その後、アニプレックスが本格的に短編映画として公開する権利を買い取り、実に2年に渡る宇木さんの孤独な制作作業が始まった・・・










で、完成した内容は【ポケモン世代の怪獣映画】とも呼ぶべきモノになったとさw


たぶん怪獣好きなら誰しもが一度は考えるであろう、
「我が街にもし怪獣が現れたらきっと、目の前の高層ビルなんて軽く粉砕して、自動車なんかオモチャのように投げ飛ばすんだぜ。しかも怪獣はオイラの思いのままさ!」
って妄想の具現化ですよw
(この場合、舞台となるのは宇木さんが在住する北海道の札幌)


肝心の作画の方も先述のトレイラー版からは明らかにクオリティダウンしており、正直に言えば肩透かし感を食らいました^^;
(この2年の間に宇木さん自身の絵柄が、線や影の少ないシンプルなモノに変化したことも理由にはある)


ただ本格的な商業作品化に当たってキャストには花澤香菜、下野紘、木村良平といった豪華な面々を起用
(当時のこの三人はまだまだ駆け出しのイメージが離れていませんでしたけどね)


エンドロールの主題歌にはちょうどメジャーデビューしたばかりだったsupercellが担当し、劇中BGMやメインテーマもryoPことryoさんが手掛けるというのも大きな話題となりました










結局のところ【大して面白くないしそんなに作画も良くない!】というのを言い忘れてはいけない作品なんですよw


だけど興行収入やDVDの売り上げなど、商業的には成功を収めたわけですし、ウェブ発のアニメのもうひとつ新たな試みとして歓迎出来る歴史的な作品になったわけです
(こういった試みの裏にはいつも、アニプレックスの南成江Pがいることも忘れたくないですね)


東京在住のryoさんと北海道在住の宇木さんが、特に顔合わせ等することは無い代わりに、「skypeで制作現場から直接打ち合わせをした」というお話も新しい時代の到来を感じさせました










それとなんか色々酷ぇこと言いましたが、オイラは宇木さんの大ファンやからな!w

投稿 : 2024/06/01
♥ : 8

ハネマン さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

作画になにか惹きつけられるアニメ

あにこれ友達でもあり、高校の同級生でもある友人から薦められたので視聴してみたアニメです。

宇木敦哉さんという方がほぼ一人で作成し、若手アニメクリエーター支援事業の一つである動画革命東京の第一期支援作品に選出された作品です。30分完結短編アニメですね。

このアニメの舞台は札幌市をモデルにしてるんですが、実は作中に登場する高校は僕の母校です、なんて自慢をしてみたりします。

ストーリーは変な生物「センコ」を従えるテツが、ふとしたことで同級生ユキに秘密にしていた「センコ」の存在を知られ、なんやかんやあって同じく変な生き物を従えるシュウとの戦うお話です。

ストーリーに関して言えば、良くも悪くも30分完結アニメだなという印象。丁度30分で得られる程度の満足感でした。それ以上でもそれ以下でもないですね。
30分でまとめるんで、やっぱり端折る部分が出てきて、少しストーリーとしてチグハグな感じが出てきますが、しょうがないのかなと割り切れば大丈夫でしょう。

キャラクターもやっぱりこのストーリーにおいて30分で良さを理解しろっていうのは野暮ですね。なんともいいようがないです。ただ、センコは妙にリアルで正直キモイっす。でも、キモカワイイ…のかな??いや、やっぱかわいくないかも(笑)

声優はビックリしたんですけどテツ役・下野紘さん、ユキ役・花澤香菜さん、シュウ役・木村良平さんと今をときめく声優さんを重用したりしてます。ここはテンション上がりポイントでした。
ただ、もちろんそれぞれの声優さんの良さが出てるんですが、花澤さんに関してはデビューしたてなのか、少し今と比べるとたどたどしい感じがしますね。

作画は一番このアニメでスゴイと思った所です。なんていうんですかね、遠近感がすごくリアルに感じるんですね。人間の視覚的な作用をうまく利用されている感覚でした。
そしてキャラクターの所にも書きましたけど、妙にセンコ等の変な生き物がリアルです。センコとか変な生き物なんて実際に存在しないし、それが人間に飼われるなんて論外なんですが、なぜか日常的に犬感覚で普通に飼われていて、実在しているように感じてしまいました。
ちなみにこのアニメを作った宇木さんは、この頃ではつり球のキャラデザもしている方です。そう言われれば、確かに似てますね。でもつり球よりはキレイですね。

音楽はエンディング良かったと思います。特筆するほどではありませんが。

総じて、ほぼ一人で作ったと考えれば、感服するレベルだと思います。作画に関しては特に。

30分で観れるんで暇な時にでも観てください。戦闘シーンはありますがグロさはないんで、意外と気軽に観れますし、損はしないと思います。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 10

68.6 4 オリジナルアニメーションで怪物なアニメランキング4位
UNDER THE DOG Jumbled(アニメ映画)

2018年6月23日
★★★★☆ 3.7 (17)
131人が棚に入れました
国連管轄の特殊部隊「フラワーズ」。そのナンバー06である「冬月ハナ」は、ある任務の遂行の為、江の島のとある公立高校に転入する。任務対象は、クラスメイトの「七瀬俊一」。ハナが俊一に接近を図る頃、時を同じくしてある中年男性がその高校に俊一を訪ねてやってくる。さらにその中年男性を追うようにして、在日米軍までもがハナと俊一のいる高校へと進出を開始。急速に戦場のきな臭い匂いが漂い始める中、さらに一人の少女が彼の地へと向かっていた。

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

【フラワーズは必ず全滅する】

『428〜封鎖された渋谷で〜』で知られるゲームクリエイターのイシイジロウと『CANAAN』『花咲くいろは』『天狼Sirius the Jaeger』の安藤真裕監督が2014年にアメリカのOTACONで発表したプロジェクトを発端に、当時Kickstarter(アメリカのクラウドファンディング)で『リトルウィッチアカデミア』の$62万5518を超えて、アニメとしては史上最高額の$87万8028を集めて制作された作品


原作自体は1996年に既に書いていたとのことで、少々古臭さが残るものの、『LEON』のマチルダを意識したようなあどけなさが残る少女が銃器を手に取り死闘を繰り広げるというバイオレンスアクション作品です


30分のアニメ作品『UNDER THE DOG Episode 0』自体は2015年12月には完成し、出資者へのリワード品として配布されました
その後、今作の劇場公開や主題歌制作の為の第2弾クラウドファンディングが2017年10月に発表され、2018年6月に満を持して国内の劇場での一般公開となりました


劇場公開された『UNDER THE DOG Jumbled』では、短篇ギャグアニメ『アンシアちゃん』と真の主人公であるアンシアの人物像を掘り下げる実写モノローグ『Overture to UNDER THE DOG』と『UNDER THE DOG Episode 0』本編、そしてアンシアを演じる瀬戸麻沙美による主題歌がセットになって約50分の作品として公開され、数量限定でブルーレイも劇場と通販で発売
ちなみにBD版では『Overture to UNDER THE DOG』の中で劇場版ではカットされてしまったくだりが収録されいるので、より世界観への理解を深めたい方はBD版も手に取ることをオススメします


























さて、前置きがだいぶ長くなってしまいました;


東京オリンピックが大規模テロで中止され、軍事的規制が強化された2025年の日本が舞台
特殊な能力を有する年端も行かぬ少女達だけで構成された国連の特殊部隊である「フラワーズ」通称:Under the dog(負け犬部隊)に所属する、普段は普通の女子高生である冬月ハナ
ハナは家族を人質に取られ、危険で汚れた任務を任されることとなる
ハナの今回の任務は同級生の中にいるフラワーズの様な能力者達の解放の鍵を握る少年を保護することだった
しかし別のターゲットを狙ってなんと米軍タスクフォースの介入が始まってしまう
やがてターゲットは能力の暴走によって「パンドラ」と呼ばれる怪物に豹変、一瞬にして戦場と化す校舎
ハナは一縷の望みを託す少年を必死に守る為、銃を手に血生臭い死闘を繰り広げていくのだが…


『KITE』『ノワール』『GUNSLINGER GIRL』『Phantom』といった作品はアメリカでは「ガン&ガールズ」と呼ばれ一定の人気がある様です
クラウドファンディングでの結果がそれを示しています
今作、最も力を入れてるのはやはりガンアクション、というかミリタリーアクションシークエンスです
タスクフォースの無駄の無い動き、HK416やM4A1といったリアルな実銃、ブラックホークやアパッチからの支援射撃、SF要素を多く持ちながらもとかく軍事考証が良く出来てます
『ブラックホークダウン』とか『トランスフォーマー』の実写映画とか好きな人には特にオススメです
また、実写モノローグを絡めた辺りも含めて押井守監督作品からの影響をだいぶ感じます


ところがこの作品、アメリカ映画ならば【どう生き抜くか?】を描くところなのですが、イシイジロウ氏も言うとおり、【どう死ぬのか?】を描いた作品と言えるでしょう


タスクフォースやパンドラといった強敵に対し、いくら並外れた才能と異能力を持ち合わせていようとも、ハナ1人では到底生き残れない過酷過ぎる状況
やがて力尽きてしまうハナを見届ける真の主人公アンシアのゴーグルに映ったハナに表示された「Pandoralization」というゲージ
アンシアに危惧される「ゲノムハザード」「パンドラ化」という状態を示す言葉
クライマックスでアンシア自身に見受けられるパンドラと同じ身体的特徴


つまりコレですね…フラワーズはいつか必ずパンドラ化してしまう日がやってくる…そして人質にされた家族もまず助かることは無い…という悲劇的結末が既に暗示されているんです


そのことがわかる文言は『Overture to UNDER THE DOG』の中にも登場していて、アンシアはこの中で自身を日本の桜に例えています
桜は枯れない花、であると同時に、全て散るという特徴を持っています
醜いパンドラの姿になるのではなく、散り様、つまり美しい死に様をアンシアやフラワーズは今後も模索していくことになるのです


もちろん、今作でハナが守り抜いた少年が作中で「希望」と呼ばれていた様に、フラワーズにも何らかの救いが残されている可能性も無きにしも非ず
しかし少女の家族を人質に取って人殺しを強要するような組織が真実を謳っているとは到底思えませんね、僕は
果たして真実とは何なのか、このシリーズは『Episode 0』と題されている通り、人気によっては今後の展開が期待されるところであります


“フラワーズが全員死ぬその日まで”けみかけは『UNDER THE DOG』を応援し続けます

投稿 : 2024/06/01
♥ : 4

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

せめて艶やかな死を…。

この作品は、友人からの勧めで視聴に至りました。
少しググってみると、アメリカのクラウドファンディングにおいて当時歴代最高出資額を集めた作品なんだそうです。
日本でも、最近放送された「Dies irae」や、募集開始から僅か5時間で目標金額を達成した「リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード」などクラウドファンディングを利用したアニメが制作されています。
こんな事を調べていたら、こんな記事を見つけました。

『発売10周年を迎える「リトルバスターズ!」 そのスピンオフ企画「クドわふたー」は同一の世界観を元にした“if”の物語です。』
何と目標金額3,000万円に対して、7,800万円もの支援があったそうではありませんか。
元々20分のOVAの制作で出資を募った結果、支援金が6,000万円を超過して劇場版アニメに昇華したんです。
しかも、制作スタッフから6,000万円を超過した支援金は、必要経費を除き全て本編のクオリティアップに使用するとの約束付き…
2019年の秋に劇場でクドに会えるそうです…

個人的な意見ですが、このクラウドファンディングは作り手と支援者との間に一体感を醸成できるシステムなのだと思います。
今回の場合も支援者の方々の力添えが無ければ劇場公開は実現できなかった訳ですから…
支援者だからこそ感じられる誇りや自負だってゼロじゃないと思います。

クドの姿を見て勝手に盛り上がってしまい、レビューから思い切り逸れてしまいました^^;

Under the Dogの主人公…
完走して振り返ってみると主人公って誰だったんでしょう…
確かに主人公らしき人は登場します。
国連管轄の特殊能力を持つフラワーズと呼ばれる7人の子供たち…そのナンバー06である冬月ハナは任務遂行のため、とある高校に転入するところから物語が始まります。

何故フラワーズの一員となったのか…
物語では触れられていませんが、フラワーズに入る前に相当な葛藤があったことだけは推察できます。
何故ならフラワーズの一員として背負った十字架があまりにも重たすぎるから…
確かな事は、フラワーズに入ったら全力全開以外は許されないということ…

ハナは命令を忠実に実行しようとします。
そんな健気な女子高生と対峙するのは、火力と数の暴力の数々…
女子高生一人を相手にたくさんの戦車やヘリコプターが容赦なく弾丸を打ち込んでくるんです。
正にこれが壮絶と言わんばかりの展開と言わず何と言うのでしょう…

フラワーズのメンバーは他にも登場します。
ハナ以外のメンバーも凡そ特殊な能力を持っているのが分かります。
ですが、その能力は戦闘に特化しているかと問われると正直分かりません。
もっと日常の…普段の生活に僅かばかりですが彩りを与えてくれる能力なのかもしれません。

満身創痍でも引き金を引き続けるハナ…彼女が口にする台詞は「まだやれる…」
どこまでも残酷で救いの無い作品…だったのではないでしょうか。

テーマソングは瀬戸麻沙美さんの「少女たちのメロディ」
深いピアノの調べと切ない歌詞とメロディが印象的な曲でした。

物語は序盤で終わった…という感が強いです。
これまでの様々な投入が決して無駄ではなかった事を証明するためにも続編の制作を希望します。
そしてこの作品を勧めてくれた友人に改めて感謝したいと思います。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 12
ネタバレ

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

殺し屋、軍隊、怪物だったです。

 良く分からなかったけど、たまたま劇場のHPで見かけたため興味本位で見てきたです。

 ショートムービーから始まり、なんか実写が出てきて、本番といった流れだったです。

 朗読の続く、緑の大地をメインとした実写を見たときには、何なのかなぁ?と思ったです。
 {netabare}アンシア・カレンバーグ、心の回想だったようです。{/netabare}

 本番になるとフラワーズが何なのか?を始めとする意味ありげな世界観の説明から、物語が展開していく設定だったです。

 失敗したら終わりという、展開が急すぎる感があってこのアニメ自体が、これからの始まるみたいな印象だったです。

 私たちの希望といっている物は、本当に希望なのだろうか?が、見所だと思うです。

{netabare} 学校でいきなり外人軍隊が襲撃してきたり、怪物が出てきたり、アンシア登場、これまでの展開は何のためだったのか?と思ってしまう衝撃?の最後・・・・これも一つの面白みなんだろうなぁです。{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 4

69.7 5 オリジナルアニメーションで怪物なアニメランキング5位
KUBO/クボ 二本の弦の秘密(アニメ映画)

2017年11月18日
★★★★☆ 3.8 (25)
106人が棚に入れました
 三味線の音色で折り紙に命を与え、意のままに操るという不思議な力を持つ少年・クボ。幼い頃、闇の魔力を持つ祖父に狙われ、助けようとした父親は命を落とした。その時片目を奪われたクボは、最果ての地まで逃れ母と暮らしていたが、更なる闇の刺客によって母さえも失くしてしまう。 追手である闇の魔力から逃れながら、父母の仇を討つ準備を進めるクボは、道中出会った面倒見の良いサルと、ノリは軽いが弓の名手のクワガタという仲間を得る。やがて、自身が執拗に狙われる理由が、最愛の母がかつて犯した悲しい罪にあることを知る―。

声優・キャラクター
アート・パーキンソン、シャーリーズ・セロン、マシュー・マコノヒー、ルーニー・マーラ、レイフ・ファインズ

ワドルディ隊員 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

日本へのリスペクトは物凄く伝わる

この作品は、トラヴィス・ナイトが
初監督を務めたストップモーション・アニメ映画である。
封建時代の日本が舞台になっている。

おおまかなあらすじとしてはこんな感じ。
主人公のクボは、三味線で折り紙に命を宿し、思いのままに
扱うことが出来る特殊能力を持っていた。幼い頃、闇に
取りつかれた祖父に襲われたことがあり、父は彼を守るために
命を落としてしまう。その時に片目になったクボは、母と遠い
場所で暮らしていたのだが、祖父からの刺客に目を付けられ
母さえも亡くしてしまう。両親の仇を取るため、仲間になった
サルとクワガタと共に旅をするのだが…。

良いと思ったのは、ストップモーションアニメとCGによる映像美。
これは、ストップモーションなのかと一瞬疑ったほど。細部にまで
徹底した滑らかな動きに見とれてしまう人もかなり多かったのでは。

アクションシーンもかなり気合が入っており、緊張感を生み出す
ことに成功している。
個人的には、巨大な骸骨との戦闘がお気に入り。でも、
倒し方は結構呆気なかったような。
まあ、敵キャラの中では一番好きだったので、そこが
強く記憶に残っているだけなのだが。

だが、ストーリー構成は卓越したものではない。普通なのだ。
よく言えば王道だが、悪く言えば捻りがない。
後半に進むにつれて、尺が足りなくなってくる点は否めない。

特に終盤。主人公が黒幕と対峙するシーンは、かなり急展開だと感じた。
その際、主人公は「瞬きすら、してはならぬ」と言っていた
ような気がするが、あの結末では瞬きする人が出ても
不思議ではない。むしろ、瞬きしていない人を探す方が難しい気がする。
その上、全体的にテンポよく進まないので、退屈だと感じる可能性が高い。

劇中において、魅力的なキャラクターがいなかったのもきつい。
主人公は良くも悪くも普通な少年。要は、大衆にはない特殊能力を
持っているだけに過ぎない。
終盤においては、主人公の折り紙と三味線を組み合わせた
特殊能力が強すぎて、剣の存在が掠れてしまうほど。恐らく、
あの剣はサルとクワガタが、クボを守るための武器として配慮
されたのではないかと推察される。

サルとクワガタの正体も、勘がいい人ならすぐに気づきそうだ。
クワガタに関しては、一瞬「あれ?」と思ったがよくよく
考えれば拍子抜けするほどでもない。サルに至っては、丁寧
な前振りがついてくる有様。
気づていない人がいたら、それこそ瞬きしてしまいそうな
心境に陥るだろう。

黒幕の存在が、予想していたよりも薄っぺらいものに見えてしまった。
なぜ、悪の道に進んできたのかの説明が不十分なので、特に
記憶に残らないのだ。
異形の化け物に変身する場面が、一番の見所だという印象が強い。
道中で出てきた、巨大な骸骨や一つ目の化け物の方が感情が
見えない分、身震いしそうになる程怖い。彼らと比較しても
全てにおいて完璧に負けている。
彼に関してはもう少し描写すべきだった。本当に勿体ない。

映像に関しては、文句なしと言えるレベルで素晴らしかったのだが、
それにストーリーが追い付いていない作品だと感じた。
内容重視の方は、無視してみる必要はないだろう。
個人的には良作だと思う。

※2019年3月下旬に公開されたバンブルビーを
劇場で視聴したので、それに関する追記を。
トランスフォーマーシリーズの一つであり、ベイ・ハムでお馴染みの
マイケル・ベイが監督を務めたトランスフォーマーのスピンオフに
当たる。
バンブルビーを視聴済みの方なら、既にお気づきであろうが
バンブルビーの監督は、このアニメ「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」
と同じトラヴィス・ナイトなのだ。

意外とハートフルな作風になっており、伏線回収もされていた
良作であった。迫力溢れる爆発やカーチェイスの描写に定評がある
破壊大帝ベイトロンとは違い、トラヴィス・ナイトは
キャラクターの心情に焦点を当てていたように思う。
他のアニメ映画に例えるとアイアンジャイアントが一番近いと思われる。
アイアンジャイアントを視聴済みの方なら、ピンと来るかも?

ベイトロン版トランスフォーマーだと、終始、トランスフォーマー
が満員電車レベルの終結具合になり、ぐっちゃぐちゃな戦闘シーン
が多いのだが、トラヴィス版トランスフォーマーでは、中盤以降
無闇に主要ではないトランスフォーマーのキャラは出ておらず、
凄い見やすかった印象がある。

デザインがアニメに忠実だったのも大きなポイントだ。
物心ついた時に、80年代のトランスフォーマをよく見ていた方なら
直に引き込まれるであろう。私も見ていてオオッとなったのは事実だし。
只、ベイトロン版トランスフォーマーのデザインが嫌いという訳ではない。
かなり、ディティールに凝ったデザインではあるが、それはそれで
味があるという考えだ。

メガトロンや、ショックウェーブ、サウンドウェーブといった
ディセプティコンのデザインは今でもお気に入りだ。定期的に
見直したくなる程である。(但し、ベイトロン版の映画そのものを
支持しているという訳ではないので、そこは勘違いしないように)

雰囲気が80年代の映画に近いという意見を見て納得した。
実際、劇中でよく80年代の音楽流れるし。まあ、これに関しては、
自分が好む映画に80年代の作品が多いからというのも一つの理由だが。

少なくとも、今までのトランスフォーマー映画の中では一番出来のいい
良作であることに変わりない。

KUBO/クボ 二本の弦の秘密が好きな方は勿論の事
従来のトランスフォーマーファンなら見る価値はある。
機会があれば是非。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 12

さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

世界最高峰のコマ撮りアニメスタジオが制作、日本を舞台にした長編アニメ映画

という触れ込みに興味が出たので、東京国際映画祭で一足先に観てきました。

制作会社はLAIKA
アメリカのコマ撮りアニメーションスタジオで、コープスブライドの制作にも関わったそうです。

観るにあたって、アメリカの会社が何故日本を舞台にしたのか、どのようなイメージ感を持たせているのか、アカデミー賞にノミネートされるに値する、魅力はどこか等、気になっていましたが、上映終了後のスタッフトークショーを含めておおむね納得できました。

注目点①
何故日本を舞台にしたのだろう。
スタッフのトークショーより、企画者の友人にクボという相性の日本人がいるそうです。直接の要因は語られていませんでしたが、そのご友人のおかげで親近感を抱いてくれたのだとしたら、嬉しいですね。
商業的には2014年のベイマックスのヒットも要因となっているのかも。
2015年に公開されたリトルプリンスでは、和紙を使ったコマ撮りアニメが話題になっていましたし、意外と人形劇と和モノって合うのかもしれませんね。

注目点②
日本に対してのイメージは如何様なものだろう。
例えばベイマックスは、架空の町のようで、端の方に日本らしさを感じる侘寂のような趣がありました。日本らしさを前面に出している訳ではないけれど、日本人スタッフ総動員で行うリサーチの徹底ぶりで流石ディズニー、コレジャナイ感を全く感じることはありませんでしたが、やはりアメリカ映画では、未だに?(其方の方が面白いから?)日本に対するプロトタイプな見方が主流ですよね。
別にそれが嫌という訳ではありません。制作体制に日本人がいなかったのかなとか、日本に対しどのようなイメージ感を持っているのか、いろいろ推測するのも楽しいです。
それでは、この作品は何方なのでしょうか。
小物系は日本っぽいのですが、建物の配置がどうもファンタジーっぽい感じがしました。
クボのおじいちゃんが豊臣秀吉風だったり、灯篭流しがあったり、かなりリサーチをしている雰囲気はありましたが、微妙にニュアンスが違うのが違和感であり、面白いなと思いました。

注目点③
アカデミー賞にノミネートされるほどの魅力はどこ?
けれはもう、映像の凄さでしょう。
このコマ撮りアニメ、バトルシーンが沢山あるんですよ。
アクションシーンは黒澤明監督作品を参考にしたという話が、トークショーの最中にありましたが、迫力ある映像でした。(恥ずかしながら黒澤明監督作品観たこと無いので比較しようがありませんが)これを一コマ一コマ撮っているのかと思うとこちらまで気が遠くなりそうです!


娯楽と言うより芸術作品なのかなと思います。
楽しいかどうかは、感性次第でしょう。話はシンプルで分かりやすいです。感動的なシーンもあります。しかし、私は泣いたり、笑ったりという気分にはなれませんでした。
ただ、上でも申した通り、コマ撮りの技術を観るという点において申し分ない完成度だと思いました。コマ撮りでここまでのアクションは観たこと無いので、良い物を観れたな、と視聴後の満足度は高いです。充分おススメ出来る作品だと思いました。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 12

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

人形、細工に魂を宿す

吹き替え版を配信レンタル視聴。

海外制作会社がストップモーションで構築した
封建時代の和風ファンタジー世界を舞台にした冒険活劇。


西洋人が好奇の目で日本を面白おかしく取り上げた
軽薄な諸作品とは一線を画した良品だと感心しました。

万物には魂が宿っている。意志を込めれば物に命を吹き込むこともできる。
日本という対象を咀嚼し、その精神性の深い所まで掘り下げて行く。
それらを、人形やセットを多角的に、丹念に一コマ一コマ撮影して映像化することで、
キャラクターや世界観を躍動させる撮影技術の根幹と共鳴させる。

こうして始まった折り紙に三味線の音色で紙細工としての命を与える少年の冒険譚。
結果、実現した映像美には目を見張る物がありました。
人形劇の弱点である表情描写も多彩なパーツで見事に表現されていて驚かされました。
あまりにも緻密で、時々、最近の海外CGアニメは綺麗だなぁ~といった感じで、
本作がストップモーション・アニメであることを忘れてしまう程ですw


永遠は完璧で不変だが冷淡。命は不完全で有限だけど温かい。
命は尽きても、他者の思い出となって継承されていく。
物語はいつか終る。けれどキチンと締めくくることで新たな物語が始まる。

物にも命を宿すことで、去りゆく存在の形見となり得る。
灯籠に願いを込めれば、刹那、死者との再開の夢も垣間見えるだろう。
ただ、それすらも永遠ではない。形ある物はいつかは壊れる。
だが、そこからまた新しい物が生まれ、魂が宿り、想いは連綿と続いていく。
かの地では魂を持った有限の万物が語り出すことで、物語が動き始めるのだ。

本作の撮影もまた、被写体となった多数の人形、道具が、
各々受け継いだ役割を完遂し、次にバトンタッチしていく
果てしない物語のリレーにより成立しています。
こうした部分でもストップモーションと日本が
共有する精神性が伝わり、感嘆の溜息が出ました。
特にEDアニメーションにて、一つの物が次々と変化し物語を紡いで行く演出に、
その真髄が表現されていたと思います。

決してネタに困窮して、奇をてらって日本に手を出したのではない。
ストップモーションの心技を極めた先に
万物に神が宿る日本の精神性と鉢合わせた。
日本である必然性を終始感じた有意義な鑑賞でした。


私も精神を疎外し、能率を優先する現代物質文明に毒され、
墓参りとかネット墓地でいいんじゃないか?
などと自堕落な戯言をのたまう今日この頃ですがw
本作を観ていると、やっぱり命ある物は大事にしないといけないな。
祖先には感謝しなければならないな。
と日本人として正気に戻った気分になります。

1週間の平均制作尺3.31秒。制作期間94週。途方もない時間を費やしたことで、
人形やセットに取り憑いた魂が、日本人の心の琴線にも触れる逸品です。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 16
ページの先頭へ