医者でトラウマなおすすめアニメランキング 2

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ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月07日の時点で一番の医者でトラウマなおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

72.1 1 医者でトラウマなアニメランキング1位
パプリカ(アニメ映画)

2006年11月25日
★★★★☆ 4.0 (829)
3939人が棚に入れました
医療研究所が開発した他人と夢を共有できる画期的なテクノロジー“DCミニ”。だがそれが盗まれ、悪用して他人の夢に強制介入し、悪夢を見せ精神を崩壊させる事件が発生するように。一体、犯人の正体は? そして目的は何なのか?事件の解明に挑む美人セラピストの千葉敦子は、クライアントの夢の中へ容姿も性格もまったく違う夢探偵“パプリカ”となって入っていくが、そこには恐ろしい罠が待ち受けていたのだった…。

声優・キャラクター
林原めぐみ、江守徹、堀勝之祐、古谷徹、大塚明夫、山寺宏一
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

なるほど分からん(考察)

あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。

 初見でした。90分ほどの作品です。多くの方と同様だと思うのですが、夢の描写については「よく分からない」という印象を受けました。ただ、夢の世界は理解できないように作っているはずですので、この感想はおそらく正しいのだと思います。
 夢の世界とは対照的に、テーマを見つけること自体は難解ではないように思えます。面白いかどうか、どこまで解釈出来るかは、テーマを発見できたタイミングによると思われます。
 作品自体は、スピード感もありますし、退屈するようなことはないでしょう。完成度はかなり高い作品です。
 (追記)初回から2日ほど置いてから2度目の視聴をしました。1週目に聞き取れなかったセリフを拾うためのものだったのですが、かなり面白かったです。満足しました。2週目が本番かもしれません。


対象年齢等:
 子供に見せる必要がないという程度です。
 対象者に関しては特にないですね。この手の作品が好きな人は、読書好きでも映画好きでも、このアニメに辿り着くのだと思います。反対に、アニメ好きだからといって視聴できるものではないです。辿り着くべくして辿り着き、見るべくして見るという作品だと思います。アニメという枠から外れているのに、アニメでしか出来ないことをやっている。そういう作品です。

テーマ:
 夢です。考察に譲ります。

ジャンル:
 夢と現実がごっちゃになるやつです。精神的にどうだとか、夢の話が現実とリンクするだとか、そういうレベルの話ではなくて、物理的にごっちゃになるやつです。


考察:
①夢について{netabare}
 作中の夢は明らかにダブルミーニングですので、ここで分解して、定義を与えます。
  ユメ:寝ている間に見るもの、空想の世界
  ゆめ:将来に実現させたいこと
 以下の記載はこれに準拠しますので、気をつけてください。なお、「夢」と使った場合は、両方を含む場合またはどちらかに限定しない場合です。上記のテーマのところで「夢」と書きましたが、ここで「ゆめ」であると訂正しておきます。テーマは、ユメではなくゆめです。
 この作品の構造として、「夢と現実」という対比が重要なわけですが、注意してほしいのは「ユメと現実」も「ゆめと現実」も対比としては成立するということです。これがこの作品の主題を煙に巻いている原因だと思われます。また、作中のセリフで「夢」が出てきたときに「ユメ」だけでなく「ゆめ」に置き換えられるのかに注視する必要がありました。同じセリフを使っているのに、ユメとゆめという二つのストーリーを追わなければいけないという稀有な作品です。この構造に気付くことが、この作品を楽しめるかどうかにかかっていますので、子供には難易度が高いでしょう。ユメは場面を問わず使われるため、私たちの意識がそこに引っ張られてしまいます。すると、ゆめへの意識が希薄になってしまうんですね。これはゆめという主題を隠すために、意図的に計算されたものだと思います。
 少し乱暴ですが、ユメがただの演出であると断定して、作品から消し去ってしまうと、随分シンプルで分かりやすくなります。映像主体のこの作品にこんなことをいうのは変かもしれませんが、主題を理解するためには、ユメの映像を極力無視すべきなのかもしれません。
 (追記)映像は無視しても、セリフだけはきちんと拾っておきましょう。1週目では気づきませんでしたが、ヒムロのセリフ(人形がしゃべっているやつ)はかなりテーマに沿っていたようです。無視していいセリフは、混乱した人のものくらいです。{/netabare}

②エンディング(メインテーマ)-1{netabare}
 エンディングは「夢見る子供たち」という映画のチケットをコナカワが買うシーンです。あまりに普通すぎるタイトルでスルーしてしまうのですが、よくよく考えてみると、このタイトルは違和感の塊なんです。「夢見る子供たち」を私の定義に置き換えると「ゆめ見る子供たち」です。
 ですが、①で述べたように「ゆめ」についての説明は不親切なのです。登場人物のゆめがどこで述べられていたのかが、漠としているのです。ゆめの解明には、ユメの機械であるDCミニについて、それぞれの登場人物がどのように捉えているかを見る必要があります。
 更なる問題は「子供」の方で、作中ではほとんど出てきません。一見すると大人との対比が不成立に思えるのです。つまり、子どもの代弁者の大人を探す必要があります。

 子供の代弁者とは、子供のまま大人になったと形容されるトキタです。トキタのDCミニへの評価は「友達やチームと夢を共有することは素敵」です。これは「みんなで同じゆめを見る」ということです。突き詰めると「みんなのゆめが叶う」というのと同じようなもので、理想的ですがあまりに現実離れしていますから、大人が持つゆめとしては適当ではありません。そのため、チバに叱責されています。

 トキタを子供扱いしている人物が3名出てきます。チバとオサナイと理事長です。この3人は、子供ではなく、大人の立場でゆめを語ります。
 チバは、トキタを「子供」だと言っています。彼女は、DCミニの利点を「クライアントとの共感」にあるのだと説きます。対人関係の円滑化を述べたものですが、友達ではなく、クライアントに限定していることに注意しなくてはいけません。ゆめを自分の仕事に限定し、仕事が円滑に進んで欲しいという自分の願望や保身を軸として見ているということです。トキタのような全体的志向ではなく、あくまでも個人的志向です。
 オサナイは、トキタを「幼稚」だと言っています。彼は、DCミニを自己の性欲や独占欲のために用いています。こちらも個人的志向です。性的な視点を持っているからこそ、トキタを幼稚と表現したのだと思われます。
 理事長は、「無軌道な才能を善導するのが大人の責務」と言っています。また、DCミニを「夢を支配する」ものだと評しています。この支配欲はオサナイの持つ独占欲の上位概念であり、チバには「誇大妄想」だと言われていました。理事長は、児童向けアニメの悪役のようなシンプルな世界征服的欲求を実行しようとします。個人的なゆめを拡大解釈していくと全体的志向に戻り、大人を突き詰めていくとむしろ子供っぽくなるなど、非常におもしろいキャラクターでした。トキタを悪役として描いたものだと思われます。
 この3人は、DCミニの開発者ではなく利用者です。ユメについてもゆめについても同じです。子供が開発したゆめをスタートにしているのに、大人になるとこうまでかわってしまうという対比だったようです。{/netabare}

③エンディング(メインテーマ)-2{netabare}
 コナカワは非常に特異な存在です。コナカワは、思春期のエピソードである友達とのゆめを語っています。彼は、友達とのゆめを忘れていました。しかし、イマジナリーラインとパンフォーカスを正しく扱うことで、刑事になった経緯を思い出します。残念ながらコナカワは、友人とのゆめを叶えることが出来ませんでした。しかし、その過程において、自分だけのゆめを発見し、叶えることに成功していたのです。
 これは、コナカワが、子供を捨て、思春期を経て、大人になるという正しい道を選んだ存在だということです。トキタのゆめに乗るだけだった上記3名の大人とは明らかに異なった存在で、自らの選択が描かれていました。また、②の4人が、夢を叶えようとしている存在であるに対して、コナカワは既にゆめを叶えた存在でもありました。

 ゆめについて、②の4人が大人と子供という概念に縛られた点であるのに対し、コナカワは大人から思春期へのベクトルとして描かれています。実際の子供が登場しないこの作品において、過去へのベクトルを持ったコナカワだけが、子供のゆめを語る資格を持てたのかもしれません。
 「ゆめ見る子供たち」が何なのかはよく分かりません。「大人よ、ゆめを思い出せ」程度の意味しかないのかもしれません。ただ、コナカワが思春期の頃のゆめを思い出したことで、夢の映画がハッピーエンドになったのも事実です。彼は子供のころのゆめを思い出すことで現実におけるハッピーエンドに至るのかもしれません。{/netabare}

④終盤の解釈{netabare}
 ユメと現実が融合してからは怒涛の展開で、やや置いてけぼりを食らってしまいました。あのバトルで何が起こっていたかを知るために、各々の役割を探っていきます。

 まず、パプリカは何だったのかということです。彼女はチバの分身ですが、セックスシンボルとしての印象が強かったです。パプリカ曰く「女(チバ)に足りないスパイス」です。特徴的なのがオープニングです。赤い服を着ていたパプリカが、コナカワとベッドに座っているシーンだけはガウンになっています。夢の共有には肉体エネルギーが必要とも表現されていますから、性交渉かそれに近いイメージを持たざるを得ません(実際に行っていたかではなく)。

 一方でチバは、「最近夢を見ない」と言っています。これは2つの意味を持ちます。
 一つ目は、「ゆめを見ない」であり、トキタのゆめに乗り、自身のゆめを叶えていない彼女を表現したものです。②③と関連したものですので考察は省略します。
 二つ目は、「ユメを見ない」であり、パプリカと乖離していることを表現したものです。女性的な魅力の欠如またはセックスレスを想像させます。肉体的にどうかは分かりませんが、恋人のトキタとはうまくいっていないために、充実した女性像からは乖離しています。その後、「ユメを見る」ことでトキタを受け入れる土壌が整いました。

 そして、終盤です。倒れたトキタにチバだけが融合しても何も起こりませんでした。ここにパプリカが加わることで赤ん坊が生まれます。男性と女性が正しく融合することで誕生したのが赤ん坊です。この赤ん坊は、チバがベースとなって、トキタの暴食という特性を持ったものとして描かれていたようです。
 一方、理事長は、オサナイを取り込んで巨大化します。こちらは、男性と男性の融合という歪なものでした。理事長を象徴するものは木で、オサナイを象徴するものは蝶です。歩けない理事長(木)とその周りを飛ぶオサナイ(蝶)の対比です。そして、理事長はオサナイの足を掴んで融合し、足を得ます。
 対決シーンは、無垢な存在である赤ん坊が、大人の欲を取り込みながら成長していくという描写だったのではないでしょうか。子供は清濁混合しながら大人に成長するということを表現したのだと思います。

 成長した女性はチバでした。冒頭のエレベーターシーンで、トキタはチバに家に行こうとしていたと言っています。ただの同僚が、仕事の話とはいえ家に行くのはおかしいので、当初から恋人関係だったことは明らかです。ただ、チバの保守的な結婚観もあってか、あまり順調ではなかったようです。しかし、チバが素直になることで個人的志向から脱却し、他人を受け入れられるようになりました。このタイミングで、チバが成長する姿を描き、エンディングにて結婚という流れだったようです。{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 12
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

Don't think . Feel .  …でいってみよう

そういえば原作既読。内容はうろ覚え。


地上波でたまたま流れた『東京ゴッドファーザーズ』を皮切りに~の今敏監督アニメ映画視聴マラソンもこの『パプリカ』でひとまず完走。物理的にもこれ以上これ以外走り続けることはできません。

゛難解な作品” ゛人を選ぶ作品“ ゛芸術性の高い云々”

氏の作品には枕詞のようにこれらの修辞表現が付き纏います。うむ。確かにそんな面はあるかも。でも敢えて私はこうも思うのであります。

{netabare}いいんだよ。そのまんま感じればいーじゃん。テヘッ{/netabare}

絵画におけるレゾネやクラシック音楽の解釈やらもそう。一枚の心奪われる絵を目の前にした時、情感揺さぶる音に触れた時、言葉は蛇足となることがあります。
私のような素人目にもわかる映像表現。強烈なインパクトを残すキャラクター達。{netabare} そして現実世界でのハッピーエンド。{/netabare}
とかく難解だと敷居を上げなくても、娯楽作品として観たまんまで楽しめるアニメ映画だったと思います。凝ろうが凝らまいがあとは受け取る側の判断でしょう。面白いか?面白くないか?それが全てです。

なぜ?そんな当たり前のことを?

氏の作品の多くはどれも90分程度と視聴にあたってのどっこいしょ感がなく、とりあえず4作品鑑賞してどれも粒揃いだったので、できれば多くの方に触れてほしいですし、下手な先入観は持っていただきたくないなというのがその理由です。


さて本作『パプリカ』です。
゛虚構” と ”現実” が入り乱れる秀作を次々と輩出してきた監督の遺作です。今回は 《夢》 。
他人と夢を共有できる゛DCミニ”というデバイスがある。心理療法の次の一手であると臨床試験を重ねていた矢先、DCミニが研究所から盗まれて、という導入。研究所員であるサイコセラピスト千葉敦子/パプリカがヒロインです。
キャッチコピーは「私の夢が、犯されている―」「夢が犯されていく―」。新たな試みはメリットと同様に副作用が付き纏います。DCミニもご多分に漏れず欠陥がありまして、その隙をついてあれやこれやが巻き起こる物語です。

夢の言葉上の定義は

1 睡眠中に、あたかも現実の経験であるかのように感じる一連の観念や心像。
2 将来実現させたいと思っている事柄。
3 現実からはなれた空想や楽しい考え。
4 心の迷い。

と辞書にあります。 夢って何だろう?と突き詰めた形跡が見て取れます。

根幹となる部分はもちろん1。そこに2~4を想起させるキャラがもう一つもう二つとストーリーラインを重ねていくような物語でした。誰がどうかはネタバレ直結なので隠します。

2は{netabare}ヒロインの敦子さんが代表格。もっとも奥にしまってた感情に気づいたということですが。。{/netabare}

3は{netabare}乾精次郎理事長が代表格。現実から逃げ妄想に囚われました。{/netabare}

4は{netabare}粉川刑事。そしてストーリーのもう一つの柱。トラウマに向き合って克服します。{netabare}映画からは前向きなメッセージを受け取りました。{/netabare}{/netabare}
他の登場人物たちも多かれ少なかれこの類型に分類されるのかな~という見立てです。


処女作『PERFECT BLUE』では《劇中劇(虚構)》と《現実》
二本目『千年女優』では《劇中劇(虚構)》と《回想》と《現実》と場面が増えて入り乱れました。
三本目『東京ゴッドファーザーズ』は置いといて(笑)
本作『パプリカ』では《夢(虚構)》と《現実》に夢をモチーフにした登場人物たちが入り乱れました。

作品を重ねる毎に表現の幅を広げていき、本作で集大成、または集大成にならざるを得なかった良作でした。

概念的な話なのでどちらかというと視聴済みの方向けの私の見解となります。
新たに鑑賞される方は先述の通り、そのまんま観ていただければよろしいのかと思います。


そして、゛ならざるを得なかった” の理由。
それは本作のラストを見届けるとその思いが強くなります。


※ラストのネタバレ有
{netabare}映画ラストで監督の過去3作品が背景で流れて粉川刑事が映画館に入っていく。タイトルは『夢見る子供たち』です。

{netabare}なんかの予言だったのでしょうか?
《虚構》と《現実》行ったり来たり。そして溶け合う今敏監督がこれまで手掛けた作品をイメージさせて未来へと繋がるであろう to be continued。{/netabare}
{netabare}次の作品で夢うつつシリーズの完結を構想してたのかもしれませんね。これは私の妄想です。いわばホップステップジャンプのステップ段階で早世されたのかと。{/netabare}{/netabare}

最後の演出は、客観的に作品を楽しむ現実世界の観客を、虚構の世界にいざなう監督の最後の大仕掛け。といったら感傷的過ぎるでしょうか。

例えが妥当かは知りませんが、過去作を上手いこと継承しながらエンタメ作品として爆発的なヒットとなった2016年の映画のようなのが次回作品で来てたかもしれませんね。
それで「俺たちの○○はどこへ行ったんだ?」とオールドファンをやきもきさせたり、一方で新規のファンが出来てたり。
そして、作風をガラッと変えてまた新たな実験を試みたり、と。


夢にはもう一つ。5番目の意味があります。

5 はかないこと。たよりにならないこと。

冒頭でひとまず完走と述べましたが、気分としてはハーフマラソンを走り終えた感じでしょうか。まだ半分、もっとイケる。なんならウルトラマラソンでも構わないのに!

少し、クールダウンしてからいつの日か『妄想代理人』を堪能することにしようと思います。


■雑感
一周しかしてないので、もう一回観たら感想変わるかも



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2019.08.04追記

二周めいってみた!
たまに触れたくなるクセになる感じがありますわ。



2019.02.19 初稿
2019.08.04 追記修正

投稿 : 2024/05/04
♥ : 47
ネタバレ

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

誰かの夢に自分の夢が入り込んだら・・

原作である筒井康隆氏の同名長編小説を、
故 今敏監督が映画化した2006年の作品です。

まず、原作と違う点は多々あるようですが、元々かなりの長編ですし、
90分以内のシナリオに収めるというのは大変な作業だったと思います。

主人公であるパプリカというのは、
千葉敦子というサイコセラピストが使用する、
夢を共有する装置DCミニの中での呼び名なのです。
そのDCミニを発明したのは同僚である時田浩作という巨漢の男性で、
彼は凄まじい大食らい・・・というところが実はミソだったりします。

ある日、そのDCミニが研究所から盗まれてしまい、
それを悪用して他人の夢に強制介入し、
悪夢を見せて精神を崩壊させる事件が発生。
研究所内部の人間達が次々襲われていく中、犯人の正体と目的は何なのか?
また、この悪夢から抜け出す方法はあるのか? というお話です。

本来、夢というものは自分自身でさえ把握できないもので、
目覚めた後、記憶に残っている断片でさまざまな心理分析はできるものの、
他人の夢の中に入り込んで直接的に何らかの問題を治療する、というのは、
現実的にはまだ実験段階なのですよね。

でも、この作品ではそれをやってくれちゃう。
しかもその夢をあんなにも鮮やかに、映像化してしまった。
サーカスの空中ブランコからいきなりターザンになって、
ジャングルをすり抜けたと思ったら列車の中のギャングになってたり、
カップルを撮影するカメラマンになったと思ったら、どこかのホテルの廊下で。
場面と場面は鮮明なのに。繋ぎ目が定かじゃないところなんて
まさに実際の夢そのもので・・・もう、お見事としか言いようがありません。
今監督の映画はこれまでも、こういった手法を得意とされていたけれど、
この映画内容には特にピッタリでした。

数々の人形やぬいぐるみ、おもちゃのロボット、古びた冷蔵庫や招き猫、
家電製品から鎧を身に着けた武者人形やどこかの国のお土産品まで、
カラフルな紙ふぶきの舞う中、ゾロリゾロリと練り歩く、
奇妙でノスタルジックなパレードの光景も圧巻です。

また、いつもながらの数々の映画のパロディも健在。
さまざまな夢の中だけでなく、今回は、映画街のシーンでも、
今監督作品である『東京ゴッドファーザー』や『千年女優』
『パーフェクトブルー』などの看板をチラッと見ることができ、
思わずクスッと笑わせてくれます。

他にも、パプリカが孫悟空やピノキオ、人魚姫、
果てはピーターパンに登場する妖精ティンカーベルに扮したり、
研究所の同僚に監禁される蝶の標本だらけの部屋のシーンでは
ウィリアム・ワイラー監督の古い映画『コレクター』のパロディが・・
さらにポスターや雑誌の表紙、部屋の壁に貼ってある写真などにも
ビックリするくらい細かな演出がされており、
映画好きの自分は、これだけでもう嬉しくなってしまったほどでした。

さて・・・黒幕など後半のことはネタバレになるので
あまり詳しくは書けませんが、
黒幕が言う言葉も、ちょっと考えさせられました。
{netabare}
「夢たちは慄いている。科学によって安住の地が奪われてしまう。
 非人間的現実世界にあって、唯一人間的なものの隠れ家が夢だというのに」
{/netabare}

確かに、科学のめざましい進歩は喜ばしいことである反面、
どんどん人間の内面が暴かれていくという複雑な想い・・・
そこだけは、ちょっと共感できる部分でした。
{netabare}
さて、黒幕を倒すための最終手段ですが・・・
見ようによってはかなりお粗末にも感じてしまいますが、
あれはおそらく、パプリカと誰かさんの想いが合体し
夢=願いを共有したことで可能になったのかなと。
そして赤ちゃんが夢を食べながらみるみるうちに大人へと変貌していく
あの光景は、人間の夢そのものを感じさせてくれました。
{/netabare}

夢の中の、またその夢の誰かさんの夢の中を垣間見て、
パプリカである千葉敦子はきっと決心できたのかもです。
何を決心したのかは、しっかりラストで描かれているので、
観た人だけのお楽しみです。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 43

66.3 2 医者でトラウマなアニメランキング2位
歌舞伎町シャーロック(TVアニメ動画)

2019年秋アニメ
★★★★☆ 3.3 (213)
751人が棚に入れました
新宿區イーストサイド・・・・・・混沌を極めたその街の中心には、ネオン瞬く歌舞伎町が広がっていた。光が強けりゃ影も濃い。悪人どもの潜む暗がりの、そのまた奥に探偵長屋の明かりが灯る。ハドソン夫人の営むその長屋は、なくて七癖、曲者ぞろい。野心満々のケッペキ探偵に、男を化かす姉妹探偵。はたまた刑事くずれのオッサン探偵がいるかと思えば、ヤクザを破門されたアンチャン探偵・・・・・・そして真打は、落語をこよなく愛する天才探偵シャーロック・ホームズ。切り裂きジャックによる猟奇殺人が起きたその夜、舞台の幕は上がった。探偵どもの化かし合いを横糸に、シャーロック、ワトソン、モリアーティ、三つどもえの友情を縦糸に・・・・・・ミステリー? いやさコメディ?なんともはや、判別不能ドラマのはじまりはじまり~。

声優・キャラクター
小西克幸、中村悠一、山下誠一郎、斉藤壮馬、東山奈央、東内マリ子、青山穣、橘龍丸、諏訪部順一

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

探偵どもの謎解き合戦、開幕! 変人づくしのコメディミステリー

この作品はオリジナルだったみたいですね。
アニメーション制作はProduction I.Gさんなのでクオリティも抜群…
しかも奈央ぼう、坂本真綾さんが出演されるとなると視聴しない訳にはいきません。


新宿區イーストサイド…混沌を極めたその街の中心には、
ネオンが瞬く歌舞伎町が広がっていた。

光が強けりゃ影も濃い。
悪人どもの潜む暗がりのそのまた奥に探偵長屋の明かりが灯る。

ハドソン夫人の営むその長屋は、なくて七癖、曲者ぞろい。
野心満々のケッペキ探偵に、男を化かす姉妹探偵。
はたまた刑事くずれのオッサン探偵がいるかと思えば、
ヤクザを破門されたアンチャン探偵…
そして真打は、落語をこよなく愛する天才探偵シャーロック・ホームズ。

切り裂きジャックによる猟奇殺人が起きたその夜、舞台の幕は上がった。
探偵どもの化かし合いを横糸に、シャーロック、ワトソン、モリアーティ、
三つどもえの友情を縦糸に…
ミステリー? いやさコメディ?
なんともはや、判別不能ドラマのはじまりはじまり~。


公式HPのINTRODUCTIONを引用させて頂きました。

この作品…諏訪部順一さん演じるハドソン夫人を好きになれるか否かで視聴の良し悪しが決まるのでは(笑)?
何故夫人なんだろ…見た目はとても夫人には見えませんけどね^^;

物語の流れとしては、だいたい以下のような感じです。
・「BARパイプキャット」に探偵の依頼が転がり込んでくる
・事件の難易度に応じて「S級特盛」や「A級」などの賞金ランクが設定される
・事件への参加は自由で、一番最初に依頼を達成した人が報酬を貰える

物語は、ウエストサイドにある大学病院の法医解剖医であるワトソンが、近頃周囲で不穏な出来事が起きるようになり、その捜査を依頼すべくイーストサイドに渡ってきたところから始まります。
正直言ってこの設定はすっかり忘れていました^^;
そう、ワトソンはシャーロックに捜査を依頼しにきたんです。
それがいつの間にかすっかりうやむやになって、気が付いたらシャーロックのサポート役の座に居座って…物語が動いていきます。

細かい事件はちょいちょい入りますが、物語の大きな幹は2つ…
INTRODUCTIONに記載してあった「切り裂きジャック」事件と、その事件に纏わるその後の顛末を描いた物語です。

切り裂きジャックの事件は相当悪質で、決して許されない行為を犯していました。
そう、ジャッキはただ人を殺すだけじゃな飽き足りず、殺した人間の尊厳までをも平気で奪い続けてきたんです。
どうしてそこまで人間は歪むことができるんだろう…
そう思える事件だったのですが、個人的にはその後の顛末の方が辛かったかな。

全く想像しない方向に物語が流れていくんです。
そして一度走り出した暴走列車を再び止める術は、もう列車を壊す以外の選択肢はありませんでした。
きっと、ここに辿り着く前に立ち止まれるタイミングはあったんだと思います。
もしかすると、サインだって出ていたのかもしれません。
でも、それらに気付くことができなかった…

本当は同じ…
同じであることが嬉しかった…
それなのに少しずつ変わってしまったら、違和感だけじゃなく、孤独、焦燥、といった感情が渦巻いてもおかしくありません。
そうして気付いたら二度と戻れないなれの果て…
そう思うとこの顛末はあまりにも寂し過ぎます…
せめて香菜ちゃん演じるアレクサンドラが居てくれさえしたら、本当に世界が変わっていたんじゃないかと思うと悔しくて堪りません。
自分の存在理由を知らないのは自分だけ…
自分は自分の知ってることしか知らない…
本当はもっと違う自分だってちゃんとあるのに…
こんなことを如実に感じさせる物語だったと思います。

オープニングテーマは、EGO-WRAPPIN'さんの「CAPTURE」
エンディングテーマは、ロザリーナさんの「百億光年」と、石﨑ひゅーいさんの「パレード」
相変わらずロザリーナさんの楽曲が格好良い…
この楽曲も発売後に即ゲットしちゃいましたよ^^

2クール全24話の物語でした。
事件と落語の組み合わせ…
一見すると違和感しか感じませんが、中々良い味が出ていたのではないでしょうか。
特にラストの落語は、人を思う気持ちが言葉一つ一つに込められていて胸が熱くなりました。
2クールで見応えもありましたし、私はしっかり堪能させて貰いました^^

投稿 : 2024/05/04
♥ : 10

ossan_2014 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

オチと推理とエクスカリバー

シャーロック・ホームズは、最もパロディ化、パスティーシュ化された探偵かもしれない。

本作の放送と同期に、同じく『シャーロック』を冠する実写ドラマが放送されているが、競作関係などはないものの、どちらの「シャーロック」も奇人変人である設定は共通しているようだ。
ドイルのホームズ連作の、本格探偵小説が「本格」としてジャンル的に確立する前のプロトタイプ的な性格が、ホームズがキャラクター的な強烈な特徴を持つところに現れているのだろう。

あまたのパスティーシュも、若いころのホームズ、異世界に紛れ込んだホームズはもとより、ホームズの姪っ子や、精神を病んだ夏目漱石が自分をホームズと妄想している、などなど、キャラクター性を強調したものが多い。

その中にあって、本作の歌舞伎町に住む落語家もどきの「シャーロック」も、奇抜さで負けてはいない。
いや、あの髭面の「ハドソン夫人」には勝てないかもしれないが。


シャーロック・ホームズが強力で特異な性格設定を持つのは、一種の文化英雄という性質が要請するからだろう。

「勇者」が聖剣で竜を倒して「世界」を恢復させるように、垂れ込める「謎」を吹き払い「世界」に秩序を回復する「英雄」としての探偵。

歴戦の武勇伝を持つ勇者が特権的な武器として「聖剣」を手にするように、「謎」を切り払う探偵の特権的な武器として与えられるのが、頭脳=論理=「推理」だ。
特異な頭脳=発想の象徴として、特異な性格が要請される。


ところで、別作品の感想で、探偵小説の探偵の推理は論理的な唯一の真理とは限らない、といった意味のことを書きこんだことがある。

エクスカリバーが竜を斃せるのは、数々の「伝説」によって「聖剣」である特権性を保証されるからだ。
探偵の推理=「論理」もまた、「伝説」に類比的な特権性の「保証」が付与される。

オーギュスト・デュパンであれば「アナリシス」、ファイロ・ヴァンスなら心理学的必然、エラリィ・クイーンなら因数分解的数学性、などなど。
ホームズならば、実験科学的な自然科学の論理性、という事になる。

これら「論理」の特権性の「保証」要素は、しかし推理が導く「真相」の論理的正しさを保証するものではない。

「聖剣」にまつわる「伝説」が、その物語内で聖剣の威力を保証するための装置であって、物語外では意味がないのと同様に、実験科学の論理性も、物語内で「論理」の特権性を保証するだけの装置に過ぎない。
デュパンのアナリシスもヴァンスの心理学もエラリィの「数学的」論理も、物語外では何の論理性も保証しはしない。

物語内での探偵の推理が「真相」となるためには、「物語世界内で」の論理性=説得力だけが問題なのだ。
物語内の作中人物全員が「唯一の真相」を導いた「論理的」な推理だと納得しさえすればいい。
そう、これが物語内で最後にたどり着いた「真実」であると、最後に締めくくる「オチ」だと納得しさえすれば。



落語で「真相」の「推理」を語る本作の設定は、「探偵小説的」論理性を巧妙に反映している。

一見は荒唐無稽な「推理落語」だが、語られた物語を象徴し、まとめ上げ、引き受けて、幕を閉じるものとしての落語の「オチ」の一言は、探偵小説の「論理的」推理と全く同型的な役割を果たすものだ。

しかし、それは、どんなデタラメでもおどけて語れば良いという事にはならない。
論理=筋が通っているでも、地口のように連想的な関係性でも、なんでもよい。それまで語られた物語をまとめ上げて「オチ」が付いたと観客に直観させなければ、オチとして機能しない。

落語の『あたま山』のオチは、論理的にはおかしい、不条理でシュールなものだが、練達の噺家が語ることによって、観客に「オチ」を直観させて笑いに巻き込む。

不出来な噺であれば、観客は白けてブーイングが起きるだろう。
不出来な探偵小説が、作者と作中人物だけが納得する「推理」で、読者を説得できずに怒らせるように。

はたして本作の「落語推理」は切れ味良い「聖剣」のような「オチ」をつけられただろうか。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 7
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★☆☆☆ 2.0

1クールでCOOLにまとめる方が良かった気がする。

[文量→中盛り・内容→酷評系]

【総括】
アニオリの推理モノ。しかも、連続2クールという力の入れ具合。

映像など、クオリティはしっかりしていたと思う。

でも、肝心の推理(トリック)がな~。面白くない。

本作はかなりライトな作風だが、トリックまでライトにして、どうする? 91DAYSの脚本を務めた岸本さんがシリーズ構成だから期待はしてたんすけどね。

あと、本作には、ホモホモしい要素もあるので、そこが苦手なら、しんどいかもしれません。


《以下ネタバレ》

【視聴断念(4話まで)】
{netabare}
総括にも書いたけど、とにかく推理が面白くない。

まず、1話目でビックリしたのが、推理のキモに「におい」を使ったこと。

いやいや、視聴者に考えさせる気がないやん。まあ、「世界初、においがするアニメ」を開発したなら別として(苦笑)

他の事件もそうだけど、多くの情報が後出しで、「実はこうでした」だから、興が削がれる。本来、推理モノって、視聴者にもキチンとヒントを出し、推理をさせた上で、その上をいく謎解きをやられちまう、快感。1本取られた感。

それが推理アニメでないの?

まあ、エンタメ的には悪くないので、1クールだったら付き合っても良かったけど、2クール付き合う気にはなれないな~。落語の演出も、わりとどうでも良かった。
{/netabare}


【1話ごとの感想】
1話目「はじめまして探偵諸君」☆3
{netabare}
アニオリらしいメチャクチャさというのは、好印象。ミステリーの深さとしては、まだ感じない。爪とか身長とか、証拠をもっとちゃんと見せてくれないと、追い付けなくて当然。臭いとか、アニメだと反則。本格推理ではなく、エンタメ推理だな、こりゃ。

おそらく、かなりの量の「推理モノパロディ」が混ざっているのだろうが、推理小説はほぼ読まないので、全くワカラン。

《今後の展望》
歌舞伎町の裏のボスとか出てきそうだな。
{/netabare}

2話目「泣きぼくろ見つめ隊はいかが」☆3
{netabare}
歌舞伎町、こえぇな(笑) 花に興味ないバイトだっていてもおかしくないし、コブラとキタがライバルで、質屋をマネーロンダリングに使っていることは、後だしだよな。どっかで伏線として出しとかないとね。

《今後の展望》
てか、この作風(1話完結)で2クール? ダレそうだけど。1クールでCOOLに終わってた方が、良かった、ということにならなけりゃ良いけど。2クールで面白味が増すとしたら、縦軸となるストーリーがちゃんとしてるか、序盤に出てきたサブキャラ(例えば今回の花屋の人)達が、後半の事件にもからんでくるかだな。
{/netabare}

3話目「エース・京極冬人の夢は」☆2
{netabare}
完全に永ちゃんだな。ナイフだと警察は言ってない。いやいや、なんの推理にもなってないな。いくら黒焦げでも、歯形とかDNAとか、いくらでも特定出来るんじゃかいか? 大したことないミステリーに、すでに飽きてきた。

《今後の展望》
制作会社が、永ちゃんに怒られる(笑)
{/netabare}

4話目「お湯は基本熱め」☆2
{netabare}
この銭湯に、桃太郎は来ていない、、、だと!? そんなん、バカでも分かる推理(苦笑) この、落語風の謎解きもつまんないし。面白かったの、金隠しだけじゃ?

《今後の展望》
1クールならまだしも、2クールも付き合える自信がないので、自分はここで途中断念します。けどまあ、映像等のクオリティは低くないので、楽しみにしている視聴者のためにも、維持してほしいっすね。
{/netabare}

監督 吉村愛(やはり俺の青春ラブコメはまちっている・アオハライド・チア男子)

シリーズ構成 岸本卓(うさぎドロップ・銀の匙・ハイキュー!!・僕だけがいない街・ジョーカーゲーム・91DAYS・フルーツバスケット)

投稿 : 2024/05/04
♥ : 17
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