星雲賞で陰謀なアニメ映画ランキング 3

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の星雲賞で陰謀な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月10日の時点で一番の星雲賞で陰謀なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

90.5 1 星雲賞で陰謀なアニメランキング1位
風の谷のナウシカ(アニメ映画)

1984年3月11日
★★★★★ 4.2 (1960)
12594人が棚に入れました
極限まで発達した人類文明が「火の七日間」と呼ばれる最終戦争を引き起こし、瘴気(有毒ガス)が充満する「腐海」と呼ばれる菌類の森や獰猛な蟲(むし)が発生した。それから千年余り、拡大を続ける腐海に脅かされながら、わずかに残った人類は、古の文明の遺物を発掘して利用しつつ、細々と生きていた。腐海のほとりにある辺境の小国「風の谷」は、大国トルメキアの戦乱に巻き込まれる。風の谷の族長ジルの娘であるナウシカは、運命に翻弄されながらさまざまな人々と出会い、自分自身と世界の運命、太古より繰り返されて来た人の営みに向き合い、大国と小国、そして腐海と人類との共生の道を探っていく。

声優・キャラクター
島本須美、納谷悟朗、松田洋治、永井一郎、榊原良子、家弓家正、辻村真人、京田尚子
ネタバレ

Tuna560 さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

『風の谷のナウシカ』作品紹介と総評+考察「宮崎駿の自然観①」

言わずと知れた宮崎駿監督の代表作の一つ。
元は漫画作品で、原作の途中までのアニメ化となっています。

(あらすじ)
産業文明を崩壊させた最終戦争から千年後の世界。猛毒の瘴気を放つ「腐海」と呼ばれる樹海が拡がり、人類の末裔が住まう土地は日々失われている。辺境の峡谷にある小国「風の谷」は風向きにより瘴気から守られ、穏やかな農耕生活を営んでいる。族長ジルの娘ナウシカは剣術や飛行術を修めた勇女であり、人々が忌み嫌う腐海の生き物と心を通わせる優しい少女でもあった。
ある夜、風の谷に大国トルメキアの輸送機が墜落する。積荷は工房都市ペジテから略奪した巨大生体兵器「巨神兵」の卵。谷は追っ手のトルメキア軍により占領され、ナウシカは捕虜となる。司令官の皇女クシャナはかつて世界を焼き尽くした巨神兵を現世に復活させ、腐海を焼き払わせようと目論んでいた。(wikipedia参照)

1984年公開の作品というと、もう30年前の作品になるのか…。
いや、決して「古い作品だ」ということを強調したいのではないですよ?
むしろ、”時代を感じさせない作品”の代表ではないかと思います。

まずは何と言っても作画の素晴らしさ。私も昔から何度も観ているのにも関わらず、毎回観るたびに画の綺麗さにビックリしてしまうんですよね。人間の躍動感ある動き、王蟲の触手や体の動き、神秘的だが同時に恐怖と気持ち悪さを感じる腐海の描写、爆発や燃焼の描写などなど…。一度でいいから大スクリーンで観てみたいと思ってしまいます。

ストーリーのテーマとしては”人間と自然の共生”について。宮崎監督と言えばやはりこのテーマだと思います。特に本作で特徴的なのは”人に恐れられる自然”が描かれている点でしょう。自然の脅威に曝され、人類滅亡の恐れがある終末世界で、人と自然の歩むべき道を求めるナウシカの姿にとても感慨深い物を感じます。

もちろん、最初に観たとき(子供の時)は「よくわかんないけどすごい!」という感想しかありませんでした。しかし、色んな知識や教養を身につけた現在では、また違った視点でこの作品を楽しめている自分を発見しました。世代を超えて楽しめる作品は本当に素晴らしいと思います。

さて、ここからは少し考察をしていきたいと思います。先にも述べましたが、宮崎監督の作品にはよく「自然との共生」というテーマが含まれていますが、その本質を探っていきたいと思います。テーマとしては、ずばり「宮崎監督の自然観」についてです。


{netabare}・自然観の形成
まずは「自然観とは?」についてお話ししておきましょう。
自然観とは、”自然への根底的な価値観や共通認識”を意味します。それは文化や風土、生活様式などから形成され、その地域古来から培われているものでもあります。

では、ここでよく比較される自然観について見ていきましょう。「自然観=共通認識」とお話ししましたが、ここではその最も古い共通認識であろう”信仰”をベースに比較していきましょう。

1.キリスト教的自然観(西洋的)
西洋諸国の大多数が信仰する”キリスト教”は、まさしく”西洋社会の精神基盤”と言っても過言ではありません。絶対唯一である”神”が万物を創世し、人間も自然も同じく神によって創られたという信仰です。そして、人間にとって自然は、偉大な神の摂理を紐解く”観察対象”という考え方を持つ様になったのです。つまり、自然は”客観的に観るもの”という自然観が形成されたのです。西洋社会で近代科学が発展したのはこの為ですね。

2.神道的自然観(日本的)
”神道”とは、日本固有の信仰宗教とされています。”八百万の神”と言われるように、数数多の神がいると信じられていました。この信仰の由来は、山や川、草木などの自然や自然現象の中に”自律的な神”がいると信じられていたからです。つまり、自然と神は同義であり、自然は”畏れ敬う対象”という自然観が形成されたのです。

上記のとおり、西洋と日本では全く逆の自然観となっています。この比較は自然観だけでなく、文化や価値観の形成にも大きく関わっている点が面白いのですが…話が長くなってしまうので、またの機会にしたいと思います。

では、本題に戻りましょう。
”人間と自然の共生”を作品テーマに据える宮崎監督はどちらの自然観に近いか?
これは言うまでもなく、”日本的自然観”の方ですよね。


・『風の谷のナウシカ』の中に見られる自然観
実は、上記の比較は本作の中でも登場しています。例えば、トルメキアとナウシカ(風の谷)がそうですね。猛毒の瘴気を放つ”腐海”に対し、トルメキアは巨神兵を用いて焼き払おうとします。人類の危害をもたらす物は排除するというスタンスです。これに対し、ナウシカは”腐海”ないし”蟲”との共生の道を模索します。これは自然に対する”畏敬の念”と取る事が出来ますね。これにより、自然に対し客観的なトルメキア(西洋的)と自然を畏れ敬うナウシカ(日本的)という構図と見て取る事が出来ます。

また、日本的自然観は人類の恐怖の対象である”腐海”と”蟲”の設定にも表れていると思われます。
”腐海”は猛毒の瘴気を放ちながら拡大し、人々の生活圏を脅かしています。しかし、実は”腐海”の植物は汚染された土壌の毒素を浄化している事がわかりました。そして、凶暴な”蟲”達はその浄化機関である”腐海”を守っていたのです。”凶暴”な側面と”再生”を促す側面の二面性が描かれ、”自然とは畏れ敬う”対象であるということを示唆しているように思われます。


・”森”を描く理由
宮崎監督の作品ではもう一つ、”森”をテーマにした作品が多くあります。本作でも物語のキーとなる”腐海”もそうですね。これについては、宮崎監督が影響を受けた”照葉樹林文化論”の為だと言われています。

”照葉樹林文化論”とは、簡単に言えば”風土による文化の形成”という学説です。
照葉樹林が形成された地域に住む民族の文化要素には、森林や山岳に結びつくものが多く、衣食住から伝承に至るまで共通が多い一つの文化圏と捉えたのです。

宮崎監督はこの学説と出逢い、人間の文化を形成したのが国境や人種ではなく”自然環境”なのかと感じ、”森(照葉樹林)”をテーマとした作品を製作するようになったそうです。この学説が宮崎監督の自然観の原点であり、日本的な自然観へと目を向けさせた原因だと言えるでしょう。

さて、宮崎監督の自然観を読み取れるのは本作だけではありません。
別の作品でもまた自然観について考察していきたいと思います。(続く){/netabare}

(記述:3/2)

投稿 : 2024/05/04
♥ : 42
ネタバレ

シス子 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

恐怖、「シス子の館(やかた)」に謎の多足生物出現!!

某月吉日(金)

その日はとても暑い日でした

お勤めを終え夜の11時に帰宅
これだけ遅い時間なのに部屋の中はまだ気温が30度を超えていました

すぐにエアコンをつけ火照ったからだを冷却

涼んだところでお着替えでもしようかと
なにげに床においてある洗濯物に目をやると
3センチほどの灰色の塊があるのに気づきました

ホコリかなにか落ちているのかな?

なんて思って手を伸ばすと
なんと
突然その黒い物体が動き出したのです

しかもものすごい速さで
ゴキブリくらいの速さでしょうか

でもあきらかにゴキブリとは違います

なんだかもじゃもじゃと毛のような触覚のようなものがたくさん生えていて
その毛がムカデの足のようにうねって進んでいるみたいです


その得体の知れない
なんとも表現のしがたい不気味な物体を見て
私は思わず悲鳴をあげてしまいました

ギャァァ~~^^
グエェェェ~~(吐いてないよ^^)

そのまま
とるものもとりあえず
お着替えも中途半端に
エアコンも電気もつけっぱなしのまま
部屋を脱出し実家に避難してしまいました

謎の生物の出現を口実に
実家で上げ膳据え膳
3食昼寝付きの贅沢三昧を貪った私は
(※以前にもゴキブリが出たとき非難した経験から
  着替えなどが常時置いてあります)

翌日から仕事に行かなければということで(社畜ゆえの本能です)
家出から二日後に母親同伴で帰宅

恐る恐る部屋に入り
謎の生物がいないことを確認し
すぐさまバルサンを焚き
ベランダや玄関の前に虫除け用の薬剤を散布

一昨日の悲鳴と
私たちのなにやら怪しげな行動が気になったのでしょう
お隣さんが玄関の扉から顔をのぞかせ
心配そうにこちらを眺めています

このままではご近所関係が険悪になる・・・と
懸念した私は
変な宗教活動や
対テロ対策などではない旨を説明し
なんとか納得していただきました


幸いにも
その日以降は
謎の生物は出現していませんが
帰宅後1週間ぐらいは
落ち着いて眠ることが出来ませんでした


ちなみに
この謎の生物の正体
後で調べたところ
「ゲジ(蚰蜒)」というムカデのなかまだそうで
たまに餌(虫など)を求めてお家の中にも進入してくるそうです

なにはともあれ
侵入を防ぐには
お部屋の中はいつも清潔にし
餌となる虫を駆除しておくことが望ましいとのこと








さて
なんで作品レビューに
こんなお話を書いているのかというと


この「ゲジ」を目撃し
実家で避難生活をしている間
改めて思ったのです

私って虫がスゲー苦手なんだな・・・って

そして
虫関連で嫌な思いをしたとき
いつも思い出してしまうのが

この
「風の谷のナウシカ」という作品なのです

巨匠
宮崎駿氏の原作・脚本・監督作品

「火の7日間」と呼ばれる戦争により崩壊した文明
それから1000年
汚染された大地
「蟲」と呼ばれる巨大で不気味な昆虫
人間の体を蝕む毒「瘴気」
その瘴気を放つ植物が群生し拡大し続ける「腐海」
「蟲」「瘴気」「腐海」に怯えながらもたくましく生き抜く人々

そんな荒廃した世界の辺境の地「風の谷」のお姫様「ナウシカ」を描いたお話


私がいままで観てきたアニメ作品のなかで一番たくさん観ている作品ではないでしょうか
10数回くらい?

しかも
ほとんど
というか全部「金曜ロードショー」で^^

当然
元手が掛かっていません^^
なんともリーズナブルなアニメ作品です^^


一番最初の視聴は小学校の低学年
もしかしたら保育園のころかも知れません

それから10数年(←ウソつけ)

先に書いた作品の世界観からもわかるように
テーマとなるのは
「戦争」や「自然破壊」などちょっと重めのハズ

なのに
自分自身が印象に残っているシーンはちょっと外れたところが多く
しかも視聴した頃の年代によって色々

幼い頃では

巨神兵の笑い顔ってどんな顔?
アスベルって布切れだけで大丈夫なの?(←ご想像にお任せします♡^^)
アスベルって長靴を食器代わりにするの?
(※アスベル:ペジテ市の王子)

だったのが

最近では

ナウシカってノーパン??
ナウシカがラステルの胸見て「自分のより大きい」ってキレてる^^
でもナウシカも結構大きい^^
(※ラステル:アスベルの双子の妹)

なんて
テメ~なんかにナウシカ観る資格ね~!!
などと「ナウシカファン」の方からお叱りをいただきそうです


でも
そんな他愛のない印象もさることながら
年代に関係なく強く心にのこっているのが
さまざまな「蟲」が出てくるシーン

小さい頃からインドア派
しかも大の虫嫌いの私にとっては

虫・・・

しかも「王蟲(オーム)」みたいな脚のたくさんあるものは
とてもノーサンキューでして
レビュー書いている今も思い出しただけで
体中がかゆくなってくるほどです

アスベルが蟲の大群に追いかけられているところとか
アスベルがなんか平べったい空飛ぶ巨大なムカデみたいなのに食べられそうになったところなんか(なんかさっきから“アスベルネタ”ばっか^^)
見てられなかったけど

それよりも圧巻(?)だったのが

ナウシカが幼い頃に
王蟲の子供を隠して飼っていたお話

そこで
ナウシカが小さい王蟲を抱きかかえるシーン

子犬ほどの大きさの王蟲
でもこれ冷静に見たら

「巨大なダンゴムシ」なんですよ!!

最初みたとき卒倒しました(←大げさに書きました)

とにかく
最近では「~ナウシカ」を視聴するときは
蟲が出てくるシーンは目を閉じて
音だけで楽しんでます^^



余談になりますが(なにがメインだったのか謎ですが^^)

虫が苦手とさんざん書いてますが
一応
普通の昆虫は大丈夫なんですよ・・・一応・・・

小学生の頃には
男の子に触らせてもらったりもしてましたからネ

男の子が
「お、俺の大きいだろ?」って出してくるから
私が先っぽのほうを触ると
ピクッて動いたりして{netabare}(←角(つの)のことですよ(汗){/netabare}
意外とかわいい・・・
なんて思ったりしました^^

{netabare}カブトムシのことですよ(汗{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 14
ネタバレ

シェリー さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

その者青き衣をまといて、金色の野の降り立つべし。

かつて人は大いに栄え天に届く壮麗な都市を築き奇蹟の技をもって天かける船をつくり星々にまで運行させるに至った。
やがて人は神をまねて魔神をつくった。
ひとたび生命を得た魔神は炎を吐いて暴れ狂い何者も止めることはできなかった。
やがて世界に蟲と毒が現れ世界を覆った。
人々は青き衣をまとう者により清浄の地へと導かれ、失われし大地との絆を結んだ。

これは『風の谷のナウシカ』の時代背景です。言葉は絵コンテから拝借しました。

僕は宮崎駿監督の作品の中でナウシカが一番好きです。
独特な世界観と義侠に富んだナウシカという1人の少女。
不気味なほどに生を感じさせる蟲やたくさんの立場を描いた人物描写。
どこにも妥協がなく、虚構だと感じさせない面白さがあると思います。

特にナウシカは色んな意味で美しいです。
彼女の信念や生きる様というものには魅了されてしまいます。

幼い頃は金曜ロードショーでやるとなると親から「早く寝ろ」と言われても歯ブラシ咥えて観た記憶があります。
ビデオで借りてきて観るのとはまた違っていいんですよね。

昔に何回も観たという人でもちょっと集中して観てみたら違ったところを発見できる深さもあるのでそういうところもこの作品の魅力のひとつだと思います。


{netabare}


ナウシカは非常に自然を愛し尊び、そして信じていました。
それは幼時のころから。そして今でも腐海の植物を持ち込んで調べていました。
世界の真理とはいささか大袈裟な表現ではありますが確かに腐海は大地を浄化にするために存在していました。
けれど他の人々はナウシカとは違いました。腐海の瘴気の影響やその繁殖力を恐れて焼き尽くそうとしました。
ものごとの外枠だけをみて行動しているわけです。もっと言えばそうやって生きているのです。
その意味でナウシカは外殻だけで自然を邪険にせず本質のより深いところへと手を伸ばそうとしていました。
自然に悪意はない。生きているものに悪意はない。
足枷になるものは切り捨てるといった普通で典型的な価値観に決して左右されることのない彼女の信条こそが真理に届いきました。
それを描いたところが好きです。

そして、これは現代に存在できるものに投射できると思うのです。
結局のところ腐海、自然はどうあれ価値中立的なものだったわけです。
僕らがこれと同じように考えるべきものとして挙げられるものは科学技術です。
例えば、「原子エネルギー」。
これは使い方次第では戦争の寵児にもなれば、稀代のエネルギー資源にもなります。
扱い方ひとつ、捉え方ひとつでそれは希望にも陥穽にもなり得るのです。
これらの危険性を伝えてくれたという意味でも、とても現実的効用のある作品だと言えます。

でもやはり僕が一番好きな面は自己犠牲のナウシカです。
状況を見て一秒の迷いもなくサッと動けるところは本当にかっこいいです。
ラステルを助ける、ペジテに同行するときに子どもたちに向けた笑顔、クシャナすら助ける、腐海でマスクを外す、
王蟲の子のために銃を向けられてもメ―ヴェを飛び降りたところ、そして王蟲の大群の前に立つところ。
僕はこういう姿に感動し、そして憧れてしまいます。
自分の利益を数えたり、なにかしたらあれを失う、これを失うって考えるのはあまりかっこいいことではありませんし
たとえ人間らしくともそういう人とあまり一緒にいたいとは思えません。
だからナウシカのように自分の身を投げ打ってでもという覚悟は本当に素晴らしいと思います。



どうしてそんなに強く惹かれるかというのにはあるわけがあります
僕が高校2年のときにある出来事を体験したことがきっかけでした。

(これ以下にはレビュー的なものはなく個人的なことを書くのでご承知をw)

夏期講習でちょっと遠くまで出たその帰りでした。
その日が最終日でやっと終わったーと少しうつらうつらなりながら改札に向かっていたら、10メートルくらい後ろでいきなりバンって音がしたんです。
パッと目を向けると駅構内にあるカフェの看板に足を引っ掛けて転んだおっさんがいたんです。
酔っ払いか?なにしてんねん。と最初は思いながら見ていたのですがしばらくしても動きがまったくないんです。
え?あれ?ちょっとやばいんとちゃうか?
と思いながら寄ろうかどうしようか迷ってるうちに他の人が寄って行って大丈夫ですか?とかいいながらあれこれしてるうちに
義侠心を重んじる人たちがどんどん援護して、救急車呼んで!とか聞こえて。
気が付けば僕はただ少し離れたところからみてるだけの野次馬。
今更近寄って行っても何も出来はしないし見ているだけならば迷惑になるし
ここは立ち去ることが一番良いだろうと考え改札を抜けました。
そのあと、電車を乗る前に聞こえた救急車が奏でる不安定な旋律がとても怖かったのを覚えています。
帰りの電車ではひどく落ち込み、何日か引きづりました。
それが僕の人生の転機とも呼べる出来事でした。


まあ、こういういきさつがあって僕はナウシカのそういう面が好きなんです(笑)

ここまで読んで下さった方ありがとうございます。
なにか感じて頂ければ幸いです。

よしなに。


{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 17

72.0 2 星雲賞で陰謀なアニメランキング2位
王立宇宙軍オネアミスの翼(アニメ映画)

1987年3月14日
★★★★☆ 3.9 (273)
1123人が棚に入れました
所属が10人に満たず「失敗ばかり」「なにもしない軍隊」と揶揄され、世間に落第軍隊として見下されているオネアミス王立宇宙軍の士官・シロツグ=ラーダットは、欲望の場所でしかない歓楽街で献身的に布教活動を行う少女・リイクニ=ノンデライコとの出会いをきっかけにそれまでのその日暮らしの自堕落な生活を捨て、宇宙戦艦という名目の人類初の有人人工衛星打ち上げ計画に参加し宇宙を目指すことになる。

声優・キャラクター
森本レオ、弥生みつき、内田稔、飯塚昭三、村田彩、曽我部和恭、平野正人、鈴置洋孝、伊沢弘、戸谷公司、安原義人、徳光和夫
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

庵野秀明、貞本義行、坂本龍一、藤原カムイ、山賀博之、、、

[文量→特盛り・内容→考察系]

【総括】
1987年にガイナックスが初めて制作したアニメ。SFアニメ映画で、2時間ほどの作品。

とにかく制作陣が豪華。

レビュタイのメンツの代表作を並べると、

監督 山賀博之(ピアノの森)
脚本 山賀博之(0080ポケットの中の戦争)
音楽 坂本龍一(戦場のメリークリスマス)
キャラデザ 貞本義行(エヴァンゲリオン)
作画監督 庵野秀明(エヴァンゲリオン)
デザイン 藤原カムイ(ロトの紋章)

他にも、

プロデューサー 山科誠(バンダイ 社長)
企画 岡田斗司夫(トップをねらえ! 原作)
助監督 樋口真嗣(ひそねとまそたん 監督)
助監督 増尾昭一(ブレイブストーリー 作画監督)
作画監督 飯田史雄(宇宙戦艦ヤマト2199 作画監督)
作画監督 森山雄治(うる星やつら 作画監督)
美術監督 小倉宏昌(ストライクウィッチーズ 美術)
脚本協力 大野木寛(創聖のアクエリオン 構成)

など、豪華なメンバー。

声優陣でいくと、

森本レオ(俳優・ナレーション)
弥生みつき(逆襲のシャア チェーン・アギ)
曽我部和恭(破裏拳ポリマー 鎧武士)
内田稔(俳優・吹き替え)
大塚周夫(ゲゲゲの鬼太郎 ネズミ男)

特に作画が評価されていて、同期(1987年)のテレビアニメでいくと、「シティーハンター」や「きまぐれ☆オレンジロード」、映画でいけば「ルパン三世 風魔一族の陰謀」「ドラえもん のび太と竜の騎士」
なんかと一緒。当時の中では、神作画と言えるでしょう(今見ても、わりと度肝を抜かれます)。

アニメ自体が面白いかは、それぞれの見方があるでしょうが、アニメ史に残る作品として、1度は観ておくのも良いと思います。


《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
まず、観た感想としては、「こりゃ売れんわな(苦笑)」というもの。

凄い作品だというのは、誰でも感じる。でも、終始暗く、静かで、難解。ストーリーを重視する見方をする自分としては、正直、退屈だった。3回、寝落ちをした。

総製作費8億円に対し、配給収入は3億4700万円に終わったのも頷ける(ただし、ビデオなどの売り上げがよく、15年をかけて、総製作費を回収)。

でも、この作品には、大きな価値があると思う。特に、今の若い人にオススメしたい1本である。

私の感想を書く前に、まずは、当時の巨匠達がどう評価しているか(以下、Wikiから引用)。

シド・ミードさんやマイケル・ビーンさんらは{netabare} 「素晴らしい映像美」を高く評価した。{/netabare}

宮崎駿さんは、{netabare}金のない無名の若者たちが集団作業で作る姿勢に好感を持って応援し、完成した作品にもある程度の評価をしているが、劇中のロケット打ち上げのシーンで将軍が簡単に打ち上げを諦めたことや、主人公以外の努力してきた年配者を描かないことを批判。{/netabare}

安彦良和さんは、{netabare}「全然素晴らしいとは思わない。何のメッセージもない。ただ映像は素晴らしい。誰がやったんだこんなとんでもない作画。そういうことをやって何を言いたいんだっつったら、地球は青かったって言うんですよ。それガガーリンだろ、50年代だろ、ふざけんな(笑)。青いの当たり前じゃない、みんな知ってんだよ。それが物凄い気持ち悪かったんですよね。こんなに無意味なもの、これだけのセンスと技術力を駆使して表現しちゃうこいつら何なの?って」と、厳しい言葉を交えつつも評価している。{/netabare}

押井守さんは、{netabare}「本格的な異世界ファンタジーをちゃんとやりきれたフィルムなんて数えるほどしかない」と述べ、アニメでの例として『風の谷のナウシカ』とともに本作を挙げている。{/netabare}

これらの指摘は、全部正しいような気がする。

私はこの作品を観て、「ただ世界を描きたかっただけ」だと思った。

この作品のストーリーは、「やる気のなかった主人公が、宇宙船を作って、宇宙に行く」というだけ。そして、その「宇宙に行く」ということすら、「何のために」ということが欠けている。きっかけは女のためだったし、宗教や哲学的なことが絡んでくるが、深くは語らない。

この作品を読み解く前提は、「宇宙に行く」=「アニメを作る」だと思う。

本作の世界観の中で、有人宇宙飛行に対し、即物的なメリットは示されない。人工衛星などはすでに実用化され、その利益を得てはいるが、有人である必要はない。ただの浪漫、趣味、道楽であると言っても良い。

アニメというものも、そういうものだと思う。別に今すぐなくなったって、世界はちゃんと回っていく。

そういう「無駄なもの」に、命を懸けて、全ての時間と情熱を傾ける、価値を求めるのが、主人公のシロツグであり、庵野秀明さんをはじめとした、ガイナックスの面々なのだろう(シロツグやその仲間、ガイナックスの面々はほとんど、20代)。

つまり、極度の厨二病で、極限のオタク。

現に、ロケット打ち上げ段階で敵に攻め込まれ、「命」か「打ち上げ(宇宙)」かの選択を迫られた時、年寄り(53歳)のカイデン将軍は、こう言う。

「やむを得んだろう。悔しいのはワシも一緒だ。今度こそは上手くいくと思ったんだがな。仕方がない、引きあげよう。くだらんことだ。命を懸けてまでやって割りが合うようなもんではない。諦めよう。」

それに対し、シロツグはこう返す。

「ちょっと待ってくれ。俺はやめないぞ。なぁにがくだらないことだよ。ここでやめたら、俺達なんだ? ただのバカじゃないか。ここまで作ったものを、全部捨てちまうつもりかよ? 今日の今日までやってきたことだぞ? くだらないなんて悲しいこと言うなよ、立派だよ。みんな歴史の教科書に載るくらい立派だよ。俺、まだやるぞ! 死んでも、上がってみせる! 嫌になった奴は帰れよ! 俺は、まだやるんだ! 充分、立派に元気にやるんだ! 応答しろ!」

このシロツグの演説中、うつむいていた老人達は顔を上げる。演説直後、若者で現場に立つものは、「電圧いける!」「油圧充分!」「ポンプ、やれる!」と、「自分の判断で」打ち上げを強行する。それにつられ、老人達も動き始める。そして、カイデン将軍は「やってみるか」と、心を動かす。

この場面は、あからさまに「(アニメ界における)若者と大人達」が意識され、自分達若者がアニメ界をリードしていくというガイナックスの意気込みが感じられる。と同時に、上の世代を否定する、挑戦状でもある(ちなみに、宮崎駿さんが「主人公以外の努力してきた年配者を描いていない」と強く批判した場面でもある。ちなみに、唯一、努力した年配者であるグノォム博士は、早々と無意味に死ぬ)。

そして、ロケットは宇宙に飛び立つ。

この作品には、「意味のないもの」がたくさん描かれているが、私には、ガイナックスの面々が「描きたいものを、ただ描いているだけ」に思えた。写実主義的であると言っても良い。

数えきれない墓標。煩雑で猥雑な街並み。宗教にどっぷり漬かる少女。過去の打ち上げを失敗を嘲笑う若者。美しい雲の上の世界や、星空。仰々しい儀式。やたらとリアルに揺れる、乳首丸出しのおっぱい。戦車や戦闘機といった戦争の道具。

それら全てが生きる上で必要不可欠かと問われれば、そうでもない。世界は実に無駄に溢れている。

押井守さんは本作を「本格的な異世界ファンタジーをやりきった」と評価している。

それは多分、世界にあふれる無駄なものを、正しく描写しているからだ。例えば、ポーカー風だが謎のカードゲームに興じたり、本が縦開きだったり、カメラのフラッシュがおでこに付いてたり。そんな細かいことろまで、「異世界」なのだ。ストーリーにはなんの貢献もしない、無駄な部分にまでこだわる、狂気。

その「無駄なもの」の極致である、「有人宇宙船」が宇宙に飛び出す瞬間、敵も味方も全員がその姿に見惚れ、戦いを止めた。たとえ一瞬だとしても。

宇宙船が離陸する時の描写なんて、あれを手描きで作ってるんだから、狂気以外の何者でもない。完全に自己満足の世界だ。

最後に、シロツグは宇宙で述べる。

「地上でこの放送を聞いている人、いますか。私は、人類初の宇宙飛行士です。たった今、人間は初めて星の世界へ足を踏み入れました。海や山がそうだったように、かつて神の領域だったこの空間も、これからは人間の活動の舞台としていつでも来れる、くだらない場所になるでしょう。地上を汚し、空を汚し、さらに、新しい土地を求めて宇宙に出ていく。人類の領域は、どこまで広がることが許されているのでしょうか。どうか、この放送を聞いている人、お願いです。どのような方法でも、かまいません。人間がここに到達したことに、感謝の祈りを捧げて下さい。どうか、御許しと、憐れみを。我々の進む先に暗闇を置かないで下さい。罪深い歴史のその先に、揺るぎない、1つの星を与えて下さい。」

このあと、これまでの地球の歴史、人類の破壊と発展が一気に描かれる。

数多ある工業技術や科学技術。芸術作品なんて最たるものだが、人は、なんの役にたつか分からんものを作っていても、それが誰かの心を動かし、人類は歴史を紡いできた。

「宇宙飛行=アニメ制作」とした時、この作品、特にラストシーンは、「無駄なモノを作っている自分達は、無駄じゃない」という物凄い自己愛、自己憐憫に溢れている。

実にオナニー的である。

こういう作品は(絵でも音楽でも映画でも)、大衆にはウケない。売れない。

私自身、大衆的な感性の持ち主なので、シンプルに楽しめなかった。だから、☆は3止まり。

でも、芸術とは元来、自己愛に満ち、自己憐憫的でエゴイスティックなものだと思っているから、彼等の創りたかったものは、コレで良いのだと思う。そして、後世に残っていくモノって、そういうモノであることが多い。

何を感じるか、あるいは何も感じないかは、受け手の自由。何を作るかは、作り手の自由。

安彦良和さんの皮肉混じりの評価には、ある種の侮蔑と羨望があるように思う。

私はこの作品を楽しめなかったが、1アニメファンとして、この作品に出会えたことは感謝したい。

あと、「やっぱりオッパイにこだわりがあった」。

と軽く韻を踏んで、この映画くらい長くて退屈なレビューを終わりにしよう(最後の感想が、それ?)w
{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 28
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

マナの微笑みの意味を考察すると、答えが見つかる気がします。

 月とライカと吸血姫を見て、久しぶりに見たくなって再視聴しました。

 正直申し上げて、面白いかといわれれは面白いですが、エンタメ性はそう高いものではありません。作画の凄さがあるのでアニメ作品として見ると驚きはありますが、それはあくまで中身があってのことです。

 で、中身です。テーマは、ちゃんと物語で語られていると思います。アナロジーというか直接述べていない部分があって、分かりづらいところはありますが、神と人類の罪である火。それをリイクニと宇宙開発で表現した映画と言えるでしょう。


 内容についての解釈です。{netabare} さて、本作の最大のポイントは後半半ばくらいでリイクニの妹、マナがシロツグに向かってニコっと笑う場面ではないかと思っています。

 シロツグは当初は恐らく不純な動機でリイクニに近づき、カッコつけというかいところを見せようとパイロットを目指します。

 リイクニの純粋さだと思いますが、シロツグはリイクニに心を惹かれて行きます。と、同時に宗教に傾倒してゆきます。

 シロツグは宇宙飛行士としてもてはやされると同時に、宇宙計画の意義について問われます。この時、シロツグは教会の天井にある神の姿を模したステンドグラスを見上げます。彼にとっての意義は宇宙に行くことそれ自体だったのでしょう。ですが、問われてみれば、神の教えと自分の行動の矛盾に気が付いたのかもしれません。

 そして宇宙計画には膨大な予算が必要で半分の金額で飢える人を3万人救えると言われます。シロツグは教会の前にたむろしていた貧民にお金を投げつけます。つまり、この段階では彼は自分を肯定しきれていないということでしょう。

 その直後、リイクニとともにビラをまきます。ここが彼の悩みを表現していたのかもしれません。本当に宇宙に行くことが正しいのかという自問自答。あるいは神に許しを乞うていたのか。

 ですが、ここで小さな出来事が起きます。今まで敬虔で穏やかだったリイクニが、雨に濡れてイライラしていたのでしょうか。マナに対して一般の小うるさい母親のように小言を言います。そして、靴からお金がこぼれるという描写がありました。これがシロツグにとって、リイクニもやはり普通の女性であるということが解ったのでしょう。有名なレイプ未遂のシーンになります。



 そして、その後のリイクニの反応は狂気でした。シロツグに対しシロツグは悪くない悪いのは自分だ、と理屈にならない理屈を述べます。恐らくここでシロツグはリイクニの異常性に気が付いたのでしょう。そして狂信的に宗教にのめり込むことについて恐らく疑問をもったのでしょう。

 多分、ここでだったら神というものを確認するために、あるいは人類の罪とは何なのかを確かめるために、宇宙に行く決意を固めたのではないか、と思います。

 マナは別れを告げにきたシロツグに対し微笑みます。それが恐らく答えなのでしょう。リイクニに対して一切笑わなかったマナの微笑みの意味はリイクニの否定、シロツグの肯定と取れます。
 
 最終的にシロツグの宇宙からの問いかけの意義については、まあそれぞれが何を思うかでいいと思います。

 リイクニが最後に言葉を止めて空を見上げたのはなぜでしょうか。シロツグが空にいることを思い出したのか、それとも自分の行いに初めて疑問を持ったのか。{/netabare}

 テーマが深いかといわれると、実はそうでもないです。「2001年宇宙への旅」を初め文明の進化についての映画など腐るほどあります。ただ、SF設定の凄さは持ちろんですが、キャラ造形が良いのと、物語とテーマの関係がすごく自然で脚本のうまさが光っていると思います。

 前半ちょっと飽きる部分はありますが、後半からどんどん面白くなって行きました。ただ、再視聴のハードルは高いですね。前回見たのは10年以上前だと思います。

 アニメそのものの凄さは語りつくされているので、これくらいでいいでしょう。1点だけ下衆な話で申し訳ないですが、リイクニのヌード。すごい美しいスタイルでした。さすがガイナックス、力の入れどころを間違えません。


追記 肝心なところを書き忘れました。初見のとき、リイクニの売春的なものを疑った記憶があります。家を失いおじさんにコートを貰った、良くしてもらっている。そしてお金をばらまきますからね。しかも、シロツグが拗ねていました。シロツグには手をつなぐことにすら拒否したのに…と。その直後にレイプに踏み切った、という動機から考えてもそう採れなくはありません。

 ただ、現在はそうではないと思っています。リイクニは電車に乗っていましたから、文明の恩恵を全否定していないし、お金も使っています。それに彼女の宗教的な純粋性を否定してしまうとテーマがぶれる気がしました。どちらが正解かはわかりませんが、キャラを読み解くとやっていないのが自然な気がします。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 15

nani-kore さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1

ン十年前の若き才能を乗せ、高らかに羽ばたいたオネアミスの翼!!

自分にとって、大変思い出深いアニメである。

私が漫画やアニメに触れたのは、ひとえに家族の影響だ。
母は漫画を描くのが好きで、松本かつぢや岡本一平(古っ;)ばりの画力の持ち主だったし、画力こそ皆無であったが、父は漫画雑誌「アクション」を定期購読し、「どん亀野郎」等、趣味の良い珠玉の漫画単行本を所蔵していた。
そんな両親の影響を受けてか、子である私たち4人姉妹も、マンガ本を買い漁っては読み回していたのだ。

「私、アニメーターになるっ!」宇宙戦艦ヤマトにインスパイアされた長姉は、ある日、鼻息荒く高らかに宣言した。当時アニメーターは、子供がなりたい職業のNO.1であったこともつけ加えておこう。
とはいえ、アニメはまだまだちびっ子の観るべきモノだった時代、思春期になりたての姉は恥ずかしさを隠すためか、まだお尻の青みもとれていない3番目の妹である私を、アニメ映画が上映している映画館へ連れ回した。
長姉には逆らえなかったが、内心、私はそれがイヤでイヤでたまらなかった。地元の映画館は吐き気をもよおすほど臭くて、ゴキブリが肩に止まったコトもある位の汚らしさだったのだ。それにそもそも、姉の観たいアニメ映画は、ちびっこ向けの内容では無かったのである。
当初はイヤイヤ連れ回されて観るアニメ映画だったが、物心がついてくるに従い、アニメの素晴らしさに目覚めていった。
前置きが長くなったが、本作「王立宇宙軍オネアミスの翼」は、そんな私がイヤイヤではなく自分の意思で、初めて観たアニメ映画だったのである。

アニメがお子様向けのみならず、大衆文化へと変化する黎明期。
昨日までアニメーターのバイトをしていた大学生が、いきなりTVシリーズアニメのキャラデザをまかされて、花形アニメーターとして羨望を集めちゃったりしていた時代だった。
うちの長姉のみならず、多くのアニメ好きの若者が、そんなシンデレラを夢見たのであろう。。本作「オネアミスの翼」は、まさに夢見る若きアニメーター達を乗せて羽ばたいたのだ!!
監督の山賀氏を始めとして、ナンとスタッフの平均年齢24歳。当時の若き才能が集まり、NASAまでロケハンへ行き、執念といえる程の情熱が込められた本作、否が応にも数々のアニメを見慣れた私が口をアングリ開けるほど、作画は当時の最高峰で本当に素晴らしかった。
だがその内容は。。アニメ好きとはいえ、胸もペッタンコ(今もだが;)だった私には、面白味も感動(スゲー作画以外は)も、何も得られなかったのが正直なところだ。

思うに大人向けのアニメだったのである。
それも本当の大人ではなく、夢いっぱいで青臭い情熱に満ちた、大人の入り口に立ったばかりの。。そんな作品に、思春期も迎えていない少女が共感できるワケがない;
今、観直しても無理だろう。だってもう、大人の入り口なんか、とっくにスルーしちゃったから;;
じゃあ、本作を今の若者に。。ともいえない。
ン十年前の若者が作ったアニメは、作画のみならず内容もキツイと思えるからだ。もし共感してくれるなら、それも面白いけど。。

長姉の影響で、「じゃあ私もアニメーターになるぅ~」と無邪気に触れ回っていた私だったが、映画館を出る頃には、アニメーターはムリだと自覚した。アニメーターになる!と高らかに宣言していた姉も、社会に出て普通の会社員である。
。。そんなワケこんなワケで、自分にとって大変思い出深いアニメなのだが、さして評価できる作品でもない。
唯一、作画がスゴかった(当時)ので、★3.5にしとこー。

申し訳程度に追記しておくと、オネアミスの翼に乗った若き才能は、ちゃんと高らかに羽ばたいている。
興味のある方はウィキってみてください♪

投稿 : 2024/05/04
♥ : 16

73.5 3 星雲賞で陰謀なアニメランキング3位
機動戦艦ナデシコ The prince of darkness(アニメ映画)

1998年8月8日
★★★★☆ 3.9 (435)
2160人が棚に入れました
先の戦争終結より3年が経った西暦2201年。地球と木星間に和平(休戦条約)が結ばれ、人類は再び一つになろうとしていた。そんな中、ボソンジャンプを新たな交通手段として使用する計画「ヒサゴプラン」のコロニーが次々と襲撃される事件が発生する。連合宇宙軍ナデシコB艦長ホシノ・ルリ少佐は、事件調査のためターミナルコロニー「アマテラス」へ向かうが……。

声優・キャラクター
南央美、うえだゆうじ、桑島法子、日髙のり子、三木眞一郎、伊藤健太郎、高野直子、岡本麻弥、飛田展男、小杉十郎太、小野健一、横山智佐、菊池志穂、長沢美樹、置鮎龍太郎、松井菜桜子、大谷育江、一城みゆ希、山寺宏一、仲間由紀恵

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

テレビ放送編から5年…状況は大きく変化していました

この作品はTVアニメ版の続編に位置する作品です。物語の内容に繋がりがあるので、TVアニメ編を未視聴の方はそちらからの視聴をお勧めします。

火星での壮絶なラストから5年…物語は突飛なところから始まります。
ミスマル・ユリカの父が墓前の前でお墓に向かって話しかけているのですが、その相手が何とTVアニメ版の主人公とメインヒロインだったアキトとユリカなんです。

メインキャストを序盤でバッサリって…頭の中は?マークでいっぱいになりました。
「どんな展開になっていくんだろう…」
と思っていた矢先にナデシコが登場するのですが…艦長はなんと電脳美少女のホシノ・ルリだったんです。

ルリちゃんは16歳になっていました。
世間では「史上最年少の天才美少女艦長」と呼ばれており、大人から子供までもが知っている人気ぶりなんだとか…
そしてこの劇場版は彼女を中心に物語が動いていく事となります。

TVアニメ版のナデシコの乗組員は個性派揃いでしたが、憎めない人たちばかりでした。
劇場版で見たかったのはみんなの勇姿…けれども蓋を開けてみると当時の面影は僅かにしか残っておらず、みんな地球でバラバラになってしまっていたんです。

「ナデシコに乗り込む」という事は、危険に向かって自ら進んで行く事…
だから地球上で危険と隣り合わせではない普通の生活を臨んでも構わない訳ですし、自分がその立場なら間違いなく安全を取ると思います。

でも、全員が安全を選択したかというと必ずしもそうではありません。
ナデシコの新艦長であるルリちゃんが良い例です。
彼女はナデシコを自分の居場所とし、メインコンピューターである「オモイカネ」との繋がりをとても大切にしていました。
それにオモイカネも相変わらず茶目っ気タップリで応えています。

変わる事は決して悪い事ではありません。けれど、変わらない事を選択する勇気も大切だと思います。
彼女が変わらずナデシコに自分の身を置いているのは、この場所を守りたかったから…
アキトがいて…ユリカ艦長とみんなと過ごした大切な場所だから…
自分を変えてくれた場所だから…

改めて考えてみると、ナデシコに乗り続ける理由ってたくさんあるように思います。
自分の意思でそれを忠実に実行しているルリちゃんを見ていると本当に彼女は変わったんだなぁ…と思いました。

一方、物語の方は謎のコードネーム「OTIKA」がコンピューター上に表示されてから予想外の方向に転がり始めます。
ここで感じるのは5年の歳月がもたらした傷の深さ…だったと思います。

絶対変わりたくなかった…だけど変えられて…もう戻れなくなった…
時間の使い方は自分で決める…そんな当たり前の事すらできなくなった…
途切れない思いと行き場を失った思いが交錯する…答えなんて出せないくせに…

そしてルリちゃんは呼びかけます…
旧ナデシコ乗組員はその呼びかけにどう応えるのか…気になる方は本編でご確認下さい。

約80分の作品でした。ラストも綺麗な纏まっていたと思いますが、個人的にはそこまで綺麗に纏めなくても…と思ったのも事実です。
でもルリルリの衝撃発言や続編を示唆する伏線がたくさん残されています。
絶対続編を期待させる展開なのに…
大人の複雑な事情が色々あるようですが、続編が決まったらファンが大喜びする事間違いなしの作品だと思いました。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 18

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

ホシノルリが美しい。ブラックサレナがカッコイイ。

 バブルが崩壊しているのにノリだけは引き摺って、真面目が間抜けと同義になったころの作品。アニメの演出も悪ふざけ的でそういった時代性が色濃くでています。
 ただ、初めは悪ノリが鼻につきますが、ワンカットワンカットがえっというくらい尻切れトンボで作られており、戦闘シーン、ナデシコ艦橋、SF的な設定などの確かさと相まってこのノリというかテンポが心地よくなって行きます。すぐに映画世界に引き込まれてゆきます。もちろんこのノリは昔のナデシコの続きである証でもあります。

 その後、地上での墓参りのシーンなどに象徴されますが、そういった悪乗りは抑えられて、物語のダークな部分を際立たせています。

 で、中盤の終わりの墓場のシーン。非常に印象に残っております。青空の下の喪服姿のルリルリの美しさはもちろんですが、レシピを渡すシーン。彼には未来の無いことをアキトはルリに宣言します。明示されませんがレシピが彼の人生の象徴なのでしょう。たとえユリカが救われても2人には将来が無いような予感がしました。ここが本作の一つのクライマックスな気がします。
 アキトとホシノルリの強い絆が伝わって来て、美しいながら悲しいシーンでした。

 このシーンを見て思い出すのが、ホシノルリもまた遺伝子操作された人間だということです。こういう非人間的な暗さを相対化するためにも、悪ノリが必要だったのでしょう。TVシリーズもノリの部分が強調されて明るいストーリーに見えますが、実はすごく暗い設定が根底にあるので、そこを強調したのだと思います。

 で、本作はボソンジャンプの支配権をめぐっての争いと陰謀がストーリーの幹になっていますし、それこそがアキトとユリカの悲劇的な状況の元凶ですが、これ自体はストーリーの本筋ではありません。
 やはりナデシコという戦艦に乗り込んだ人間たちが勝手な事をやっているように見えて一致団結して敵を倒すということ、何よりボソンジャンパーとしてのアキトの悲惨な現状と未来をちゃんと説明して結末を迎えるのが、この映画のメインストーリーだと思います。

 TVシリーズの続編として、ナデシコの世界を終わらせるストーリーは暗く悲しいストーリーですが、いい話だったと思います。2期の企画が駄目になった話をよく聞きますが、この映画の出来からいってこれでも良かったのかなという気がします。

 結論を言えば面白いと言うよりは非常に「いい映画」でした。時代性はありますがそれが素晴らしくて味わいたくなります。アニメの出来は最高水準でした。

 それにしても、ホシノルリは美しかったです。デザインもさることながら、演出や画が良くできていました。ナデシコ艦橋でほぼ立ったような姿勢で、指揮を執る姿はゾクゾクしました。
 あとはブラックサレナですね。音楽の良さと合わさって、鳥肌が立つくらいカッコ良かったです。
 ホシノルリとブラックサレナは出色の出来なので、これだけでもこの映画を見る価値がありました。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 2

lostmemory さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

あまりにも衝撃的だった劇場版

当時リアルタイムで見に行ったけど
これほど出だしで衝撃を受ける劇場版も
まあそうないよなあという感じ
ネタバレは防ぐけど、ちょっとだけ。
普通アニメで主人公務めたキャラはそのまま
劇場版でも主人公なのが当たり前だが
主人公が交代した時点で驚きに値する

なおアニメの方を見てないと分からない
ところだらけなのでアニメの方は先に
必ず見ておこう。

作画は今見てもかなり高いレベルで良い
ちゃんと色々設定を練り込んで作ってある
のが良い。あと音楽。個人的に最高だった

ロボットアニメではあるけど主役はタイトル
通り戦艦。こういのって宇宙戦艦ヤマト以来
な気がする。それはともかく戦艦も一応活躍
するけど、それ以上に多くのキャラクターの
群像劇がこの作品の最大の魅力。パトレイバー
とか思い出す。ロボットや戦艦はあくまで
引き立て役というか。個人的にロボットアニメ
の理想がソレなんだよねえ

多少脱線したがアニメを見て気に入ったら
こっちも見ておいて損は無い。凄くショック受ける
人もいるかもしれないが、個人的にはここまで
挑戦した意欲的な劇場版アニメはそう無いので
高く評価したい。よくあるアニメで人気でたから
勢いで劇場版も作りました!みたいな軽いノリの
作品ではないので。むしろ重すぎる


※追記※
この作品の終わりに納得出来ない人は、ちょっともう
手に入りにくいですがキャラデザと作画監督努めた
後藤圭二氏の画集でルリがドレス着ているのが表紙の
やつを買ってください。これの巻末に後藤圭二氏自ら
描き下ろしの後日談の漫画があります。これが凄く
良い内容で、何故これを映像化しなかったんだ!と
言いたくなるくらい綺麗な終わり方してます。
本作ではメインヒロインから交代したユリカがしっかり
メインヒロインに戻ってるのが素晴らしい。
ただ画集自体はナデシコは半分くらいなのでそこは注意。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 2
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