社会風刺でファンタジーなおすすめアニメランキング 5

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの社会風刺でファンタジーな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月02日の時点で一番の社会風刺でファンタジーなおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

84.8 1 社会風刺でファンタジーなアニメランキング1位
人類は衰退しました(TVアニメ動画)

2012年夏アニメ
★★★★☆ 3.8 (2326)
11688人が棚に入れました
わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は”妖精さん”のものだったりします。平均身長10センチで3頭身、高い知能を持ち、お菓子が大好きな妖精さんたち。わたしは、そんな妖精さんと人との間を取り持つ重要な職、国際公務員の”調停官”となり、故郷のクスノキの里に帰ってきました。祖父の年齢でも現役でできる仕事なのだから、さぞや楽なのだろうとこの職を選んだわたしは、さっそく妖精さんたちに挨拶に出向いたのですが……。

声優・キャラクター
中原麻衣、石塚運昇
ネタバレ

ぽ~か~ふぇいす さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

[追記あり]不条理ギャグとブラックユーモアが詰まったSF童話(原作ファンによる解説付)

原作は田中ロミオのライトノベル
田中ロミオはかつては山田一という名義で
アダルトゲームのシナリオライターをされていた方だと言われています

私はアダルトゲームは大分昔に卒業してしまったので
最近の事情はさっぱり分かりませんが
彼のデビュー作である『加奈 〜いもうと〜』
その少しあとに出た『家族計画』
の二つは友人の勧めでプレイしています
もう10年以上前の話なので記憶も不確かですが
どちらもどちらもシナリオに関しては高い評価をつけられる作品だったように記憶しています
原作者が7巻あとがきで「ファンが中年男性ばかり」
なんてネタにしていましたがこの辺に原因があるのでしょうね

まぁしかしそれらとはちょっと毛色が違う作品なのが
この「人類は衰退しました」です

科学文明は衰退の一途を辿り
もはや人類の滅亡は秒読みに入っている
そんな退廃的な世界設定とは裏腹に
不条理ギャグで展開されるようせいさんワールド
童話のようなほのぼのとした一面を見せたかと思えば
次の瞬間には風刺の効いたブラックユーモアが炸裂する
このジェットコースターのような目まぐるしい物語の起伏から
振り落とされずについていけさえすれば
このアニメを楽しむことができると思います
ただしアニメの方はいろいろ端折っていたり
時系列がめちゃくちゃだったりするので
無用な混乱を避けるためにも
原作で予習しておくといいかもしれませんね

以下原作ファンによる各話補足です
原作未読かつアニメ未視聴な方は対象外
無駄に長いので時間の無い方にもおすすめしません
{netabare}
episode.01&02 妖精さんの、ひみつのこうじょう
{netabare}
4巻前半エピソード

エピソードの順番変更には賛否両論ありますが
これを先頭に持ってきたこと自体は正解だったと思っています
最近のアニメは最初の数話で視聴者の心をがっちりつかまなくてはいけません
原作通りに「妖精さんたちの ちきゅう」
を先頭に持ってきていたら
あまりに地味すぎて見向きもされなかったでしょう
そういう意味でアニメの掴みとしては
チキンの反乱や食パンの自害など
シュールで強烈なインパクトがあるこの話
アリだったんじゃないでしょうか?

1~2話のテーマは食糧生産と生命倫理
人間を含めて動物というものは
基本的に他の生き物を食べないと生きていけません
海外ではでは食事の際に神に感謝し祈りを捧げたりしますが
日本では古来より食べる相手に対して
命を譲り受けることに感謝の意を表してきました
「いただきます」というのはつまり「お命頂戴します」という意味です
しかし、その命を分け与えてもらうという感覚は
食品が加工された状態で手に入ることが当たり前の現代では
ついぞ忘れてしまいがちなものですね

1話の冒頭で「食べる」=「殺す」の方程式を
まざまざと思いだす事になった「わたし」ちゃん
調査のために向かった食品工場では
責任者たちさえその工程を知りません
そこで起こっていたのは
人間に食べられるために生み出された
すなわち殺されるために生み出された者たちの反乱でした
しかし、運命への反乱を企てた彼らでしたが
抵抗むなしく結局は人間の糧となってしまうのでありました

ちなみに調理の手間を省くために
品種改良で羽根の無い鶏を作るという計画は
既に 実 現 し て い る という事を
皆さんはご存知でしょうか?
興味のある方はこちらをどうぞ
http://karapaia.livedoor.biz/archives/52076503.html
{/netabare}
episode.03&04 妖精さんたちの、さぶかる
{netabare}
6巻後半エピソード

テーマは娯楽作品の在り方

「Y」が発掘されたマンガをもとにBL同類誌を発行
それが世界レベルで伝播していって
クスノキの里にて大規模な即売会が開かれるに至る
何がすごいかってここまで大事になっているのに
この段階ではまだようせいさんが全く関与していないこと
「Y」・・・おそろしい子・・・

漫画の世界に囚われてからは
人気至上主義のサバイバルゲーム
露骨に実在の作品をにおわせるような風刺や
作品の人気とと本質的な面白さの乖離についての議論など
ある種の業界批判に近いものもあるので
割ときわどいネタだったように思います

2番目のエピソードとしてこれを持ってきた理由は
制作サイドの中でこのお話の評価が高かったからではないでしょうか?
このお話のテーマはアニメ業界にも通じるところが多々あると思うんですね
原作と放送順を変えてきたことだって
「Y」がやった場当たり的な人気取りの手法と紙一重だと思いますし
実際にアニメ制作にかかわっているような人であれば
この話にはいろいろと思うところがあったのでしょう

ちなみに原作だとその後も里では即売会が続き
「わたし」もこっそりサークル参加を試みるのですが
断片データとして発掘された古典文学の抄訳集
なんてニッチなものをを出品した挙句
「Y」に見つかって上から目線でバカにされ
売れ行きも散々という落ちがつきます
{/netabare}
episode.05&06 妖精さんの、おさとがえり
{netabare}
3巻エピソード

他の巻は1巻2話構成になっていますが
この巻だけは1巻1話構成になっている長編です
他の話と同じ密度でやろうとすれば4話必要になる計算
それを2話で強引にまとめた結果・・・大惨事

つぎはぎだらけのアニメ版「おさとがえり」
テーマもぶれていてよくわかりません
本来は2巻後半で初めて登場した「助手さん」と「わたし」
が、大冒険の末に絆を作っていくお話であり
P子とO太郎を巻き込んで(というより捲き込まれて?)
ドタバタ話がとんでもない方向に進んでいくのを楽しむ作品だったはず

ようせいさんまぬある(マニュアル)に説明されていた通り
一時的なようせいさん不在により
どんなに破天荒でも絶対安全な不条理ギャグモードから
生命の危険に満ちたシリアスモードに突入
ようせいさんの加護の無い状態で遭難した二人は
古代遺跡の中を彷徨うも一向に出口は見つからず
次第にに水と食料は底をつき
ついには二人の気力と体力も尽き果てて・・・

というあたりの描写はほとんどカットに近いレベルで
かる~く流されていましたね
こうなるとまぬあるが出てきた意味がほとんどないですね
まぁ「じかんかつようじゅつ」より先に放送しているので
「助手さん」との交流のお話は大幅カットなんでしょうね
正直この順番で放送する意味がまるで理解できないです

後半の怪獣大決戦はアニメにすると絵になるシーンなのはわかりますが
そこだけに力入れてもらっても
そこに至るまでの過程による盛り上がりがないので
ちっとも面白くなかったですね
ラストのP子&O太郎の正体とその後の話も尺不足の中に
無理やり突っ込んだだけという感じで
本当にひどい回になってしまいました
{/netabare}
episode.07&08 妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ
{netabare}
2巻後半エピソード

本来は助手さん初登場のはずのエピソード
つまり読者も「助手さん」について全く知らない状態から始まり
不確実で不明瞭な存在だった助手さんを
「わたし」たちの妄想と願望を練り合わせて
「わたし」好みのショタっ子に染め上げるお話のはずです
つまり助手さんは謎の新キャラでないと意味がありません
このエピソードがアニメ中盤に持ってこられている時点で
もはや話の骨組みが半壊状態ですね

しかしこの不明瞭で不確実な人間というのは
活字で表す分には簡単ですが
アニメでは表現が難しかったのかもしれません
アニメは小説よりも情報が多すぎるのです
それはこの話以外でも随所で問題を起こしています
このシリーズはいわゆる叙述トリックのようなものが
小ネタとっしてちょこちょこ仕込まれていたりします
「ひみつのおちゃかい」におけるクリケットなんかもそうですね
映像化してしまったら身も蓋もないようなものは
アニメスタッフとしても手に余るものだったのでしょう

今回の話でも、もう一つ映像化がうまくいかなかった部分がありました
森の中で「わたし」が「わたし」に遭遇するシーンですが
原作では「わたし」は最初相手のことに気が付いておらず
面識のない女性という表現になっています
そりゃまぁ面識はないですわな
しかし同じ時間を繰り返していくうちに
どうも目の前の相手が自分であることに勘付いていきます
そしてお茶会で助手さんについての噂話を終え
タイムスリップする直前になって
同世代だと思っていた自分の話し相手が品のいい老婆であり、
周りの「わたし」たちの年齢もまちまちであることに気が付いたところで
バナナでスリップしてタイムスリップ

そしてそのあと、ようせいさんから最新型のバナナを受け取るのですが
ようせいさんの説明によると
「ずれなくなりました」
「あと、ちゃんともとのもどるです。ちょーおっけーです」
「ずっとおめしあがりいただけます」
後日事務所の外にバナナの木が植えられているのが見つかります
そのバナナを食べると転んでしまうのですが
怪我をすることも意識が途切れるようなこともありません
バナナは食べても食べても次の日には実をつけています
転んでしまうことにさえ目を瞑れば
つまり一生食べ放題なわけですね

さて…助手さんついて噂をしていた「わたし」たちですが
アニメのように事件前後の「わたし」を集めたのか
小説のように一生分の「わたし」を集めてきたのかで
その噂話の意味合いというか重みが全く変わってくる気がしませんか?
だって「たまには」「大胆?」ですよ?
{/netabare}
episode.09 妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ
{netabare}
4巻後半エピソード

原作で3本の指に入る良エピソードだと思います
なのになぜか今までと違って1話構成
2話使ってもっとしっかり作ってほしかった
...というようなような気もしますが
一気に盛り上がって一気に終息を迎える
あの何とも言えないお祭り感は
一話の中にギュッと凝縮して詰め込んだ方が
上手く表現できるのかもしれませんね

この話のテーマは文明の発達と衰退
どうやら人口の爆発が社会の歪みを生むのは
人間だけでなくようせいさんも同じだった様子
愛くるしいようせいさんの口から飛び出した
「おめーのせき、ねーです?」の衝撃といったら!
そうやってコミュニティからはじかれた者たちが
新天地で新しい文化の華を咲かせていくというのは
出エジプトやら西部開拓やら
人類史でも多々見られることですね

ようせいさんの逞しいフロンティア精神(?)のおかげで
何もない不自由な暮らしが
何も不自由ない暮らしに早変わり
しかしここで重要なシーンが一つカットされているのが
どうも納得いかないんですよねぇ

それは、すっかり女王様気取りの「わたし」のところに
臣下のようせいさんたちが発電所の建設許可をもらいに来た時のことです

以下原作より抜粋
「してその方ら、使い道は置いておくとしても、いかような方式で発電するのかね?」
ちょっとロイヤルに話してみました。
目をそらしながら、監督さんが答えます。
「げんしはつでん」
「原始的な発電だから?」
こっくりと妖精さんはうなづきます。
「原子力発電なんて言い出したらロイヤルにとめてましたよ」
妖精さんたちは口々に囁きあいます。
「やばかたっ」「げんしりょくやばかたな!」「やらんでよかた」「あれかんたんだから」「でもばっちいです?」「んだ」「よごれるです」「かくぶんれつはなー」「おもしろさてきにも、どらいあいすのほうがうえだ」「どらいあいす、にえゆにぶちこむです」
やばかったらしい……。
「原始的な発電。結構じゃないですか。あなたたちはもっと素朴であることの美徳を学ぶべきですね」
「はー」

このエピソードの核心部分の一つといっても過言ではない一節
よりにもよってここを切り捨てやがりますか・・・
大人の事情だか何だか知らないけど
ここをカットしちゃうような連中には
このさくひんにかかわるしかく、ねーです?
{/netabare}
episode.10 妖精さんたちの、ちきゅう
{netabare}
1巻前半エピソード
ようせいさんたちと「わたし」との邂逅を描いたシリーズ第一作
アニメ1話目に持ってくるには地味すぎですね
地味すぎて話が膨らみません・・・ハイ
{/netabare}
episode.11&12 妖精さんの、ひみつのおちゃかい
{netabare}
5巻前半エピソード

原作でもアニメ版でも一番好きなエピソードです
ラストはきっとこの話で〆るのだろう
という予感はしていました
なぜならOPの最後にほんの少しだけ
のばら会のメンバーが映っていたからです
個人的にはラストにこれを持ってきて
他の回よりいろいろ力を入れてあるというだけで
このアニメ化に満足です

ただし、気になるところがないわけではありません
いくつか納得のいかない部分はありました

一つ目は時間的な都合だと思いますが
のばら会の活動がだいぶカットだれているおかげで
彼女らの持っている二面性のうち裏の部分だけが強調されてしまっている点
せめて〈花先輩〉と〈魔女先輩〉の卒業シーンくらい
もう少しちゃんとやってほしかったなぁ
留め絵二枚って・・・

二つ目はおそらく話を簡単にするためでしょうか?
本来なら冒頭にあるはずのようせいさんの町内会旅行の話を丸々カット
卒業直前の壊れかけたRYOBO230rのセリフ
「その後、ご学友はできたでしょうか」
「これからもあなたに、妖精の加護があり続けますように」
もバッサリと削除
さらにRYOBO230rから出てきたようせいさんが一人に変更
物語全体の意味合いがだいぶ変わってきちゃいますがいいんですかね?
あの終わらせ方で「ついしょうめつ」の補足もなしとなれば
「わたし」はようせいさんの言うところのロボットの魂を理解できず
妖精のお茶会は結局見つからなかった
というようにしか受け取れないと思うんですが・・・
話をシンプルにしようとして逆に謎だらけになっているような気がします
原作未読の方はあの話を理解出来たのでしょうか?
{/netabare}
時系列を弄ったのが成功だったのか失敗だったのか
なんとも微妙なところだと思いますね
順番を弄る必要はあったが
結果的に出来上がった放送順にも問題があった
といったところでしょうか?
個人的には「ひみつのこうじょう」のインパクトで客を集めたら
「ちきゅう」から初めて時系列順に展開がベストだった
という気がしてなりません
あと妖精さんの いちにちいちじかんは入れてほしかったなぁ・・・{/netabare}

追記

長い沈黙を破りついに出た最新刊はまさかの最終巻
人退原作完結いたしました
完結はしたもののこれからも短編集を出していくという事なので
それ今までと大差ないんじゃ・・・
という気もいたしますが
一つのSF作品としてしっかりと区切りとオチをつけたことは評価したいです
これまでのお話の意味が根底から変わってしまうという意味で猿の惑星並の衝撃でした
彼らの正体、人類の末期、そして・・・
つまりは{netabare}人類は衰退しました{/netabare}ってことだったんですね!

おまけ

春にBOX化されてだいぶお安くなったので
そのBOXよりさらに安い値段になった初回盤6巻セットを入手
まぁ朗読CDより特典小説のほうが欲しかったし?
でもってそこに入っていたアレにも解説を入れておきましょう

特典映像 人間さんの、じゃくにくきょうしょく
{netabare}
2巻前半エピソード

一話2分の6話構成で
本当にあらすじだけをなぞったような作品
まぁ円盤買うような人が小説持ってないわけがないので
本当にファン向けのオマケ程度の代物です
アニメだけではストーリーをぼんやりと追うのが限界で
人退らしい風刺部分などもかなり抜けています

原作未読の方に向けて説明して何とかなるレベルではないので
原作既読で特典映像を見ていない方向けのキャスト情報
白イタチ:中尾隆聖
妖精:緒方恵美
つまりフリーザ様に襲撃されてシンジ君に救出されるわけですよ!
本編では全く出ていない二人の大物声優が
なんでこんなところに贅沢に使われているんだかw
{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 47
ネタバレ

ゆ~ま さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

12話鑑賞。一応総評的なものも。

原作未読。
原作では背景とか細かい部分、どう書かれているんでしょうか。元を作った人が凄いのか、それを映像化した人が凄いのか。原作への興味が尽きないタイトルではあります(読む時間ありませんがw)。

総評的なものとしましては
・所々に散りばめられた「黒い笑い」が何よりツボでした。
・それに対を為すかのような妖精さんの可愛らしさ、どこかマッタリ感じられる画が良い味でした。
・ツッコミたいポイントを的確かつ冷静?に口にしてくれる「わたし」ちゃんに大いに笑わせてもらいました。
・個人的には「ひみつこうじょう」「さぶかる」「ひょうりゅうせいかつ」「ちきゅう」「おちゃかい」の回が好きです。

{netabare}
12話鑑賞後---------------
Yさんとの関係の深化と「お茶会メンバー」との関係の変化が主なお話だったでしょうか。
「お茶会メンバー」につきましては・・・うん、怖いw 半ば狂気ともいえる執着っぷりで。廃校になるまでよく上手く付き合い切った(表現悪いですが)ものだと。

妖精さん(11話から出てた)と寮母ロボの件は、もう一度通して観てみないとコメントし辛いですね。

11~12話も面白かったですが、一応最終回という立場上なのか、勝手に自分がそう期待していただけなのか、今一つオチが弱かったかな?とも。

11話鑑賞後---------------
10話より更に過去へ。幼少期?少女時代?
Yさんの登場が早くてちょっと意外でした。

登場時の「わたし」は暗いといいますか達観してるといいますか、そんな印象でした。それも表向き?のようで終盤には違った面が見えるようには感じました。基本的には黒くて明るい娘さんかとw

白くて角ばってるサンドウイッチはダメで、白い角砂糖は可と・・・。幸せの白い粉~。

10話鑑賞後---------------
このところ時系列的に逆流しているような展開ですね。
「わたし」がクスノキの里に来た頃のお話のようです。

9話では技術力・進化速度などの面がクローズアップされていた気がしますが、10話ではもう少し妖精さんの根本的なところに焦点が当たっていたように思います。

前任者の手記(?)が、あからさまにバイオハ(略w
相変わらず食べ物の素材は謎なんですね。

今回は神様扱い。以前似たネタあったような?と思ったら、その時は女王様扱いでした。
毎度毎度、妙なカリスマを発揮なさる女性だw

ナカタさんはこの時からナカタさんなんですね。どこら辺が日系っぽいのか謎ですがw

9話鑑賞後----------------
ずいぶんとテンションの低い妖精さんからスタートだな~と思ったら、後半に進むにつれて恐ろしいほどの展開にw

というか文明の発達速度が尋常じゃないw 何も無いところからあそこまで発展するのに1ケタ日数とは。

今までも色々やらかしてくれた妖精さんですが、今回は彼らの怖さがよ~く感じられたと思います。

そして相変わらず「わたし」ちゃんは神経が太いといいますか動じないといいますか・・・w

7~8話鑑賞後-------------
え~と、助手さんとのファーストコンタクトのお話ということで。

8話観てないと、一体何周目なのか、どう展開しているのかサッパリでw いえ、正直に言えば、時計の件とか時間が微妙にズレていたりする辺りとか理解できていなかったり。

おじいさん・・・「チャリをとりにいく」って、「チャリオット」かよ!?とw 思わず画面にツッコんでしまいました。


5~6話鑑賞後-------------
ここ2話は・・・今一つ話の方向性がよくわからず。のでコメントできずにいましたw 6話まで観た今でも・・・よくわかってません。

相変わらずツッコミたい所は多数。心でツッコむと、ちゃんと「わたし」がリアルにツッコんでくれるので、快適w

1話でのベリーショート以下の髪型は、ココからだったんですね。
・・・あれ? では、「同類誌」の話は何処に入るんでしょうか?
原作読めばいいんでしょうが・・・やっぱり時間足りませんw

4話鑑賞後----------------
絵描きでも物書きでもない身なので、コメントがしづらいw

いえ楽しかったです。
色々台無しな展開だったようにも思いますがw
「引き」だけで点数稼ぎてw

稼業(家業)を継ぐ呪いというのは、「わたし」だけに降りかかる物だったんでしょうか? Yさんとか助手さんは?

妖精さん方、編集作業ご苦労様でした。

3話鑑賞後----------------
確かにいきなり白背景では、状況が不明ですがw それにしても前振りが長いw

雪の上で車を意のままに操り現れたYさん・・・てか本当に「Y」なんですね~。
で中の人は沢城さん。
そして何故か話は「同類誌」(個人的にですが同類誌って響きは微妙に感じ悪いw)の話へ・・・。
・・・あれ?絵は違うのに話の流れと声のせいか、軽くデジャヴといいますか、別のキャラが頭にw

一応電気は通っているんですね~w コピー機動かせるのか不安でした。

キャスト・スタッフロール内に山本麻里安さんの名前を見つけて、ビックリしました(1話だったか2だったかの絵本のナレーション(川村さん)にも驚きました)。

次回はどうお話が展開するのか・・・全く読めませんw(次回予告がないのもありましょうが)

2話鑑賞後----------------
いや~今週も黒くて良かったです。

意訳~翻訳(意訳)眼鏡(字幕かよとw)辺りのコンボはかなりツボでした。
髪の毛のオチもw

といいますか随所にネタが仕込まれすぎ。そして先が読めない。で黒い。いい感じで楽しめてます。

裏の番組(DOGDAYS2期)との競争は・・・結局両方録る、両方観る。そんな方向で決着しました。

1話鑑賞後----------------
意外にもストライクゾーンな作品で、困っております。
冒頭の鶏をしめる話から満遍なく、どちらかというと「シュール」といいますか「黒い」といいますか、そんなネタを淡々とこなしていく様を個人的に評価しています。
元々黒めなジョークやギャグが好きなので・・・。

それでも2話からは時間がカブるため、どうしたものかと。
録るには録れますが、HDDの容量が・・・。
これなら観なかった方が良かったのかも?ともw
{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 23
ネタバレ

moaimoai さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

好き嫌いというより興味深い作品

全12話
ライトノベル(全10巻)原作 未読

科学が進んだ(終焉した)未来の社会を舞台とする、ファンタジー溢れるお話(メルヘンチックなSFモノ)。
基本的には、主人公が語り部として自身の経験を物語っていく。一種の私小説形式

"物語の展開"・"キャラデザインをはじめとする画"など、作品の表層は穏やかな癒しの雰囲気。
だが本作品の本質は節々に散りばめられた毒素溢れるブラックユーモアにある

原作者がSF好きのようで(資料を見た主観です)、パロディ・オマージュの多さも特徴

『Angel Beats!』など多くの人気作品を手がけた岸誠二さんが監督

一部覗き二話(前・後編)構成で展開


■さくっとあらすじ

物質文明が終焉を迎え、人類は2種類に

「旧人類」…主人公をはじめとする人間のこと

「新人類」…"妖精さん"と呼ばれ、旧人類よりも遥かに高度な文明をもつ。見た目・言動はとかく可愛い(笑)
背丈が10cmほどでエルフのマスコット?的な愛らしさ。
但し、妖精さんを目撃する旧人類は極めて少ない

主人公は妖精さんと旧人類との関係を取り持つ役目「調停官」として、妖精さん達が原因?の奇妙な出来事に巻き込まれていく…


■感想

不思議な作品でした

『電波女と青春男』の視聴後と似たような感覚。笑

一見、言動が穏やかでわかりやすい毒素は弱い印象がありましたが、

1話ごとに考察していくと、際どい風刺やテーマ自体がブラックユーモアだったりと

風刺やテーマの考え方はともかく、単純な好き嫌いとは違う興味深い作品でした


ただ本作品
「過去」と「現在?」の時系列が混合しており、特に初回は何の説明もないまま展開されるので、まあまあの困惑フェイスに…笑

※"時系列シャッフル"(原作とアニメ版は時系列が異なる)についてアニメ製作サイドは
「インパクトのあるお話を最初に」のもと、より印象に残る順番で見てもらえたら。とのこと


●第1、2話「妖精さんの、ひみつのこうじょう」

正直初回視聴時の印象は、ローテンポで主人公の毒素も痛烈な類ではなく"本音にそこそこの知識を足しただけ"
と、ブラックユーモアに強烈な毒素を求める末期の中毒者としては「…寝そうだ…ぜ…zzZ」ヘタリア寸前。笑

しかし3話のY(声:沢城みゆきさん)登場で萌え豚は悶え苦しむことに…笑

後後でテーマを考察すると
{netabare}「食糧と生命」という、銀匙の豚エピソードと似ているようで
こちらはより風刺寄り{/netabare}

本作はこうした{netabare}根底にあるブラックユーモア{/netabare}が興味をひきます


●Yが登場した第3、4話 「妖精さんたちの、さぶかる」

{netabare}サブカル(同人誌)の歴史を、例えば「まんがで読破」シリーズで論語を学ぶかのごとくわかりやすく表現されてて面白かったです。

それでいて人気と面白さの不条理など、際どい風刺も根底にしっかりとあります。笑

それにしても漫画をコマの中、真っ白な世界から作っていく展開にワクワクしちゃいました。笑{/netabare}

この回から、主人公のブラックユーモアが「本音」というより「本質」ベースなんだなと理解し始め一気に観やすくなりました


●第5、6話 「妖精さんの、おさとがえり」

{netabare}水樹奈々さんと檜山修之さんのオンエアバトルw

ロボットの倫理はSFの話から、最近は現実でも議論になってますよね
{/netabare}


●第7、8話 「妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ」

{netabare}エンドレスエイトのトラウマ(全視聴した時間、プライスレス)が蘇るタイムパラドックス展開

あれだけ犬がサブリミナルされると最後のオチは自然と予想…笑

初見だけでは理解に苦しむ内容

でもシュタゲよろしくSFモノとしては王道で、「時間改変は心地良いもの?」という問いにおいては、
「不明確」というキーワードは、"理解・認識出来ないもの・ことの不気味さ"
もっと言えば「人智の及ばぬ領域への恐れ」も感じられました。{/netabare}


●第9話 「妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ」

{netabare}「物質文明のディストピア」というブラックユーモア(笑)

メッセージ性の強弱で意見が別れるかもしれませんが、表層が愛くるしい"癒し"の妖精さんとお嬢さんなので
個人的には笑って観れました。笑

麻薬表現の毒素はツボ…笑{/netabare}


●第10話 「妖精さんたちの、ちきゅう」

{netabare}「あれ?これが初回っぽくねえか?」と感じ調べると
やはり原作第一巻の内容。笑

登場人物など(妖精さんは相当数出るが)情報量が限られており、わかりやすさではこちらが初回向け(原作では初回なんだから当然。笑)

ただ、アニメ版初回が説明されないまま展開されたことで疑問が多々浮かび
その問いを各話で自分なりの答えに咀嚼していったことで作品にそれとなく思い入れが育まれ
妖精さんの愛くるしさがより引き立って感じれました。笑{/netabare}


●第11、12話(最終話) 「妖精さんの、ひみつのおちゃかい」

{netabare}不覚にも胸がキュッとなる終わり方…泣

作品を通じてドライな印象の主人公の内面描写が、喜怒哀楽鮮やかに表現されていました

また、他登場人物の、特に巻き髪のヤンデレ具合は予想していたとはいえウケました(巻き髪は攻め担当)。笑


古い宿舎でボロボロの旧型ロボットに独り言を語る日々…

でも、独りじゃなかったんだ

寄り添う思いやり


涙は流さなかったけれども、胸がキュッとなる締めでした{/netabare}



とまあ、総括するとめちゃくちゃ面白い!!!!

という作品ではなかったのですが、

単純でわかりやすい表現ではなく

各話の舞台やテーマそのものがブラックユーモア

謎解きはディナーの後でではないですが、

問題定義としては興味深い

そんな不思議な魅力のある作品でした


以上
EDからあずまんのOP連想する
かぐら・Y押しのとあるショートカット愛好家がお送りしました

ご静聴ありがとうございました♪

投稿 : 2024/06/01
♥ : 8

78.8 2 社会風刺でファンタジーなアニメランキング2位
キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series(TVアニメ動画)

2017年秋アニメ
★★★★☆ 3.7 (751)
3294人が棚に入れました
主人公の人間キノと言葉を話す二輪車エルメスは、目的もなく、世界をあちこち旅している。世界のあちこちには個性豊かな国があり、人々は自分たちなりの法や常識をもって暮らしていて、キノとエルメスはそんな国々を訪れ、基本的に3日間だけ滞在し、また次の国へと旅立っていくのだ。そんなキノとエルメスの旅の話は、時に優しく、時に哀しく、時に滑稽で、時に胸に突き刺さる。そして、珠玉の物語たちは、一言では言い表せない鮮烈な光景を読者に見せてくれるのだ。“美しくなんかない。そしてそれ故に、美しい"世界を。

声優・キャラクター
悠木碧、斉藤壮馬、梅原裕一郎、松田健一郎、佐倉綾音、Lynn、興津和幸
ネタバレ

ブリキ男 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

思考実験の国を巡る、ならず者の旅、キノの旅、シズの旅

ライトノベル「キノの旅」のアニメ化作品。原作は時雨沢恵一さん。映像化は2003年のテレビシリーズ、短編映画2作を経て、今回で4作目。

本作「キノの旅 -the Beautiful World-」で主役を務めるのは、前作に引き続き、キノとエルメス、一人と一台のコンビの他に、前シリーズのコロセウム回で登場したシズと陸{netabare}とティーを加えた2人と一匹のトリオ、(通称)師匠と相棒、フォトとソウの4組。{/netabare}

一貫してキノの旅のみを描いていた旧作と比較すると、今回は"キノの旅"が全体の約2/3を占め、そこに別の旅人達のお話が変則的に差し挟まれる構成。そのためロードムービーの色は薄くなり(元々それ程強くは無かったけど)オムニバスないしは短編集といった、原作により近い体裁を取っているという印象を受けます。

全12話中3話が旧作のリメイク、それ以外の9話の内4話+がキノ以外を主人公に据えたお話になっています。以下にサブタイのリストを載せときます。(リメイクはサブタイの頭に"Re:"付記)
{netabare}
第1話 人を殺すことができる国(キノ)
第2話 Re:コロシアム(キノ)
第3話 迷惑な国(キノ)
第4話 船の国(シズ)
第5話 嘘つき達の国(キノ)
第6話 雲の中で(フォト)
第7話 歴史のある国(師匠)
第8話 電波の国(シズ)
第9話 いろいろな国(キノ、シズ)
第10話 Re:優しい国(キノ)
第11話 Re:大人の国(キノ)
第12話 羊たちの草原 (キノ)
{/netabare}
リメイクは「コロシアム」「優しい国」「大人の国」の3本。キノの旅の起点であるエピソードの「大人の国」は、新作から見始めた人たちの為にどうしても除けないとしても、残念ながら他2つについては再構築の意義があまり感じられませんでした。アンケート結果に従って再アニメ化が決定されたそうなので仕方ない気はしますケド…。

各話についてのあれこれ
{netabare}
リメイクに対する不満を挙げればあれこれありますが、取り分け残念だったのが2話「コロシアム」。こちらは元々活劇描写の多いお話なのですが、それだけに作画面の劣化がひどく目立ちました。旧作と比べてキャラが全然動きません。また、前後編の2話に渡って描いたお話を無理矢理1話にまとめているので、これも物語の質を下げる原因になりました。時間的な余裕が無いので、キノ、シズ以外の人物-王、コロシアム参加者、門番(被支配者層)-の心理描写が丸ごと端折られており、台詞に重みが乗らず、結果、淡白かつ殺伐とした印象だけが残る薄味なお話になってしまいました。

6話は狂気に近い利他的精神を持った奴隷フォトが人間性を取り戻していくお話。主人公が特異な風習を持つ国を訪れるという毎度のパターンからは外れるものの、フォトを旅人とし、それ以外の登場人物を訪れた国の住人と見なすと、本質的には似た形式の話と捉える事が出来ます。自由をぎこちなく受け入れていくフォトの姿が、「大人の国」の女の子の姿と重なりました。今回のテレビシリーズでは最も印象に残るお話でした。

劇中に登場した毒草は多分トリカブト。ここで描かれた様に、開花前の状態では(葉の形状が酷似している為)ニリンソウやサンリンソウとの見分けが難しく、その致死性のある神経毒と共に、とても危険な事で有名です。トリカブトの花の特徴は名の由来となったとされる鳥兜に似た形状。山中等でなくとも(わたしは見た事無いけど)公園とか、その辺の道端とかにも群生している事があるそうなので、特に小さなお子様をおもちの方はくれぐれもご注意あれ。野草好きのわたしでも大事を取ってニリンソウにはあまり手を出さない様にしています。

7話は"師匠"とその相棒のお話。人伝に聞いた話という体裁をとっているので、他のお話と比べて明らかに話が出来過ぎていて、より寓話的、もとい精細さに欠ける与太話っぽいテイストではありますが(笑)ならず者ストーリーテラーの語るお話として相応しい雰囲気が出ていたと思います。

昔話というのは大抵そんなものですが、わたしは特にミュンヒハウゼン男爵の「ほら吹き男爵の冒険」をモチーフにして作られた映画、テリー・ギリアム監督の「バロン」を思い出しました。つまり、真実など、どこ吹く風、世の言い伝えは全てまゆつば、それならば、人は真実よりも自分の気に入った嘘を信じるという(笑)なかなか皮肉の効いたお話になっているのでした。

8話「電波の国」も7話と同じく、やはり真実よりも都合の良い嘘を選ぶお話。4話の「船の国」も似たテーマを扱っていますが、ひとたび流布した(ほら)話や長年続いた悪習は、払拭したり撤廃したりする事が非常に困難であるという事を寓話的に描いたお話になっています。~という言い伝え、~は常識、~は安心安全(汗)など、多数派がその様に唱えれば、その情報の内容がいくら不条理なものであっても、人は容易に騙されてしまうという事を示唆しています。

現代においては、マスコミによる情報操作、都市伝説、(インターネット)プロパガンダ等がその類と言う事が出来ますが、ここで描かれるのは"※国"という狭い社会の中でのお話。

家族、学校、職場、サークル、宗教団体等の様に、閉鎖された社会の中では、嘘が是正される機会が少なく、その中での"常識"は偏りの激しいものになりがちです。本作で度々描かれる、内輪の常識が外の世界では(その逆もまた然り)通じない、延いては丸っきりのお笑い種だなんて、悪夢みたいな冗談みたいな光景、皆さんの周りには無いでしょうか? わたしは良く目にします。そう言えば、このあにこれも一種の内輪でしたね(笑)

※:本作では都市国家の様な小国家をただ単に国と呼ぶ。

9話「いろいろな国」は小説で言う所のショートショートを幾つか集めた回。コメディ色の強い小話が殆どですが、その中の一つ「徳を積む国」のみは皮肉の効いたいつものテイスト。かつて殺人を望んだ男が、その願いを叶える為に善行を積み続けた結果、善人そのものの様になってしまったと言うお話。ウソでもホントでも、行動が精神に、精神が行動にと、フィードバックを繰り返す内に、両者の境が曖昧になり、それが本質になってしまうという事はままあるもの。模倣という行為の本質を掠めた、微笑ましくなる様な、怖ろしくなる様な、若干嫌~な後味を残すお話でした。(褒め言葉)

10、11話はリメイク。「コロシアム」程がっかりする事は無かったものの、やはり私的には旧作の描きの方が心動かされるものがありました。「優しい国」ではキノが感情を顕にする貴重なシーンが省かれてしまっていた点がとても、「大人の国」では(一代目)キノのキャラデザが刷新されていた点がちょっとだけ残念でした。別にイケメンにしなくても良かったのに(汗)

最終12話は全話中最悪の印象を残す回となりました。理由は以下に。

一つ目。クルマで撥ねられた羊がゴムまりの様に飛ぶシーン。描写を誤魔化す事で殺戮行為をコメディにしてしまっている点が非常に不快でした。キノの残虐行為にワンクッション置く意図が明白で、却って見苦しい表現になっていたと思います。救うにせよ奪うにせよ、命を軽々しく扱う(作中人物ではなく制作者が)描写はわたしは嫌いです。旧作2話にはキノが狩ったウサギの皮を剥ぐ前に脱帽し、一礼するシーンがありますが、こちらとの演出の違いに大きな差がある様に思いました。

二つ目。設定上では品種改良によって異常なまでに闘争心を高められたという事になっている羊たちが、なぜ内輪もめもせず、群れを作り、十年もの間、平和に暮らしていたのかという点が疑問でした。闘技場の様な狭い場所に押し込められていた時分にはあった、過度なストレスから開放されたからと解釈すれば良い気もしますが、それならば元々同族同士で争う様に改良された羊なのに、人間にのみ襲い掛かるのは何故?という別の疑問が生まれます。

羊たちの行動原理の根底にあるのが"人間への恨み"としてしまえば、ファンタジー的にはそれで結構ですが、そうすると品種改良云々という科学的な話とどこか噛み合いません。両者を都合よく合成した作り話という印象を受けました。

踏まえると作中後半にある「何故闘う?」というキノの問いは、羊たちに向けられた言葉ではなく、争うにたる合理的な理由も無いままに争いを続ける現人類(視聴者)に向けられた、作者の代弁とも取れる問い掛け(第四の壁を越えたメタ的な)だったと解釈出来るのではないでしょうか? この台詞に辻褄合わせする形で物語が組まれたのかと思うとかな~り興醒めしてしまいました(汗)

最後。エピローグのシーンについて、上とはまた別の意味で取って付けた様な印象があり、蛇足に感じました。元々数冊の本からの抜粋で全体が作られているアニメなので、特にエンドマークに相当するエピソードを入れる必要は無かったのではないかと思います。3期への布石とも取れますが、内容は取り留めの無いものだったし…。
{/netabare}
キャラについて、キノのアウトロー的な面、奔放な性格はそのままに、外見的描写はあからさまに女性寄りになり、旧作にはあった中性的な雰囲気が弱くなりました。コートを着用しないシーンが不自然なほど多くなり、体のラインをこれ見よがしに目立たせている風にさえ見えます。作中9話でもちらっと触れられていた様に、性別を隠す事は道中の無用なトラブルを避け、延いては自己防衛の有効な手段ともなり得るので、それを敢えてしないキノが何だか旅人として間抜けに見えてしまいました(汗)物語と演出の間の矛盾を感じます。

また、キャラデザ全般についても大きな変化があり、旧作とは異なり、よりラノベ的な、端正な顔立ちのキャラが多くなり、それぞれの個性が薄くなった印象を受けました。シズ、師匠、相棒あたりなんかは特に顕著で、理想的な顔立ちを追求すると、皆同じ顔立ちになってしまうと言わんばかりにそっくりさんで無個性でした。髪型と服装以外の外見的特徴で個々が区別が出来る様にして欲しかったです。「世界は美しい、ゆえに美しい」ではなく、「世界は美しくない、ゆえに美しい」が本作のキャッチコピーでもありますので(笑)

総評として、旧作と比べて全体的に雰囲気が明るく、キャラデザも今風、アニメが時代を映す鏡として機能している事を如実に表す作風の変化を感じました。命のやり取りなど殺伐としたシーンが度々描かれる作品なので、この変化は手放しでは受け入れ難いものがありました。構成の不備が第2話「コロシアム」と第12話「羊たちの草原」にあった事も残念です。

心待ちにしていた再アニメ化だったので、期待度が大き過ぎてがっかりしてしまう箇所もいくつかありましたが、なんだかんだで前期では取り分け楽しみなアニメの一つになっていました。原作ストックが山の様にあるので、次回のアニメ化に際してはリメイクエピソードを除外して、もう少し雰囲気暗めに作って欲しい(笑)というのが一視聴者としての願いです。

いつかまた始まる旅人の物語に期待を込めて!

投稿 : 2024/06/01
♥ : 52
ネタバレ

pister さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

流れの革命家ごっこ

2話までの感想
{netabare}あっれー?こんな作品だったっけ?
あっれーーー?
ま、まだ2話だしね、今後の挽回に期待。{/netabare}

3話までの感想
{netabare}↑の感想ではあんまりなので2話の感想から。
敵を倒して──イヤな奴をやっつけて気分爽快って内容な場合、相手のやろうとしてたことを挫(くじ)くのが最も爽快であり、じゃあ相手のやろうとしてたこと(=意思)が見えないのであればそれは物足りないこととなる。
将棋…でなくてもでも勝負事でよく言われるのは「相手の最も嫌がる手を打つ」であり、じゃあ何を最も嫌がるのかってのは相手の意思を読まなければ(エンタメだったら見えてこなければ)ならない。
これといった理由を書かずとも納得させることができる「一番嫌がること」は死ぬことで、ぶっ殺せばそれで爽快ってのはある意味正解ではあるけど、それだけではやっぱり手抜き感を覚えてしまう。
そんなんだったら敵はモンスターにでもしとけばよく、人間である必要性が無い。
要は主人公側の意思だけでなく、それぞれの立場のそれぞれの意思(それが正しいかどうかは関係ない)が描かれてなければ面白いとは思えない。

で、2話の王様って、単に気が触れてただけちゃうん?
保身のために国民を蔑(ないがし)ろにしてたなら「保身=死にたくない←嫌がること」としてぶっ殺してザマァとなるが、ただ狂ってた奴を殺したのであれば「楽にしてやった」だけにしか感じない。
別に国のためを思ってああいう制度を入れたワケでもなさそうだし、国が滅んだとしてもやっぱりザマァにはならない。
むしろ国を思ってた者にとってはトンだ迷惑であり、そしてそういう立場のキャラが登場しないことに違和感。
王子がそうなんじゃないのかよと思うのだが、王子も王子で国はもう諦めてるみたいだし…。
教条染みた内容であるが「○○党は出来が悪いから××党に“試しに”政権執らせてみよう」ってことをして手痛い目に遭った経験を知る者なら「トップを挿げ替えれば良くなる」という発想には至らないでしょう。
あの事件が起きる前ならまだアリだったのかも知れないが、今となってはどうしても時代遅れのような…。
これはもう作者も「あの頃は若かったな」と苦笑いしてそうな予感…いやどんな人となりか知らんけどさ(※)。

そして3話は…ああ、うん、まぁアレか。
政治的な話はあんましたくないのだけど、領土の概念がハッキリしてないのでテーマとしてイマイチのような。
それこそ移動する国は摩擦を起こしたくないのであれば自分とこの領土を決めてその中でグルグル回ってれば良いだけ。
城壁を築いて通せんぼも、某島の実行支配を揶揄ってるように思えるが、先にも書いた通り領土の概念、領有権が不明なのでナンともかんとも。
こういうのって当事者同士でどうこうだけでなく第三国にどう映るか(バックに何が着いてるか)ってのが問題で…999だったら星系レベルで離れてるから気にならないけど、キノの場合は…ねぇ。


1話から通して謎なのは、国であることの必要条件、城壁外の統治・治安、城壁は無尽蔵に広げていっていいの?等。
恐らくリアルでは海なところを森にして比喩ってるんだと思うけど、それにしたって実際には領海があるし、何処の領海でもないのなら好きにしていい(海洋投棄など)ってことでもなかろう。
「城壁の外はどの国の支配下にもしてはいけない」って取り決めでもあるんかな?その場合も結局は国際合意の元でしか無いワケだが…。
例えば城壁の外で金脈見付かって、その鉱脈の所有権巡っての争いとか…今後そういう話来るのかな?
他の国との経済交流など必要なく自給自足で各国が独立して存在できるとしたら、どれだけ身勝手に振舞えるだろうか?というシミュなんかね?



今の時代に軍のコンピューターが「地球ノ環境ノタメニハ人類ハ不要ダ」とかいって暴走する話なんかやったら「古っ」ってなると思うんだ。
科学万能説も、あるいは科学万能説に警鐘を鳴らす作品も、今となっては古臭いと思うのだが…。
だからといって昔そういう作品が多く作られたのはくだらないってワケではなく、キノについても似たようなもので…別に作者批判ではないのだが、人によってはそう見えちゃう?{/netabare}

4話感想
もうどこから突っ込んでいいやら分からない。
下書き書いたらめっちゃ長文になってしまって誰も読まない予感。
次回以降どうにかうまくまとめて書ければいいのだが…。

8話までの感想
{netabare}真面目に書いたらすごく長くなってしまって誰も読まなさそうだし、簡単に。

5話、ああ、木枯し紋次郎のディスりね。
7話、安田講堂かあさま山荘の映像見て思い付いたのかな、連合赤軍大勝利で機動隊が大惨敗ねぇ…。
8話、ラマルク主義批判か…まぁそれはいい。
ただ、シズは真実をいきなり市民に明かすのではなく、国のトップにだけ明かし、どう報道するかはお任せしますって行動は思いつけないのか。
この「間違ってないから正しい」と、必要な過程を何段も飛ばす行為は船の国でやらかしたのと一緒、まるで成長してない。

作劇に於いて、他の作品や出来事を見て「オレだったらこうする」って書くのはよくあることだと思うが、だからといってテーゼまで描き切れないのであればアンチテーゼじゃなくてアンチでしょ、ってのは何かの感想で書いた気がするが、キノは正にそれを感じる。
「あてつけがましい」って言葉が一番シックリ来るかな。
こうなってくるとマグリットもディスってるんじゃないかとさえ思えてくる。
他にも色々言いたいことはあるけど、それは最後まで見てから(書かないかもしれないし、気が変わるかも知れない){/netabare}

断念{netabare}
8話で断念。
いつか見るだろう見るだろうとずっと「今観てる」状態のままでしたが「途中で断念した」にします。

↑でも書いた通りグチグチと小姑みたいな小言は長々とあるのですが、それは割愛するとして、その一方でゲゲゲの鬼太郎第六期が始まりまして。
それを見て「ああこれだ」と思ったのでこちらの〆の感想を書くに思い至った次第(あんまり他作品と比較するのは良くないんだけどさ)。

鬼太郎の方を先に書くと4話、妖怪の森へ少年が迷い込み、持ち出し禁止の木の実を持ち出して森の主が激怒するって話でして。
オチは木の実を返して謝罪して「どの世界にも侵してはならぬ掟がある」と説教されてエンドですが、自分の価値観的にはこっちでして。
これがキノだと山の主をスタイリッシュに銃殺して、エルメスが「木の実は本来タネを遠くに運ばせるもので、森の外へ持ち出したっていいのにね」と知ったような口聞くんかなぁ、と思ったり。
つまりはその世界の歴史文化風習を踏みにじるのがカッコイイと思ってるみたいで、自分にはどうにもダメでした。
「それぞれの国はバカにしやすいようにバカな風習しか書けない」ってのが透けて見えるけど、例えそうだったとしてもそれが歴史としてそうなってるのならそうならざるを得ない沿革があったんでしょう、と自分は思ってしまうので。
女人禁制の土俵に女性議員登らせてニヤニヤしてた政党もあるくらいなので、そういうのを支持する人も居るってのは分かるけど、ちょっとねぇ。

まぁなにより何話だったか町の英雄の遺品をディスったこと、元々“誰かが整備した道路”が無ければ役立たず、その程度でしかないバイク如きがその“誰か”に感謝することなく常に上から目線なこと。
住所不定無職が地に足ついて生活してるカタギに知った口聞くのがどうにも耐えられませんでした。
(木枯し紋次郎はカタギの人が道を歩いてたら自分は端っこを歩くと仰ってますぜよ)
よく銀河鉄道999に例えられるけど、あれは「あんなトンでもない路線を敷ける鉄道会社が発行した切符を持ってる」ってのが身分保障になってるワケで、それすらないキノは賊と同じなワケで…。{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 10
ネタバレ

四文字屋 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

世界の静けさ。人の、醜さと脆さと強さ。第1級のファンタジーとしての雰囲気、名作に成りそうな風格が漂う、制作陣の本気がそのまま直球で伝わってくる作品で、

世界は美しくなんかない。
そしてそれ故に、美しい。
というキャッチコピーそのままの物語が展開して行きそうで、
一話にしてすでに、名作の予感さえただよっています!

前作未視聴、原作未読、前知識なし、で視聴に及んで、
これは素晴らしいファンタジーだ。と、視聴後はしばし、
その空気感にたゆたってしまいました。

もちろん、ファンタジーといっても、
ドラゴンが空を舞っている訳でもなく、
エルフやドワーフが出て来る訳でも、
魔法が飛び交う訳でもないけど、
まさに寓意に満ちた、ホントの意味での優れた「ファンタジー」で、
一発でその秀逸な世界観に心をもっていかれたのです。


鑑賞しながら思い起こしていたのは、「星の王子さま」のことでした。

ご存知の通り、王子さまは、作中で寓意に満ちた話を、
遭難した飛行士である「私」に話してくれますが、
星から落ちてきたって話も、さまざまな寓話も、
すべて王子さまが話して聞かせたことだけで、
ただの「脳内ファンタジー」なのかも知れません。
そして、砂漠で二人きりの時間を過ごす間、
なんのファンタジックな出来事も起きません。

でも「星の王子さま」は、まごうことなき最上質のファンタジーで。

キノの旅は、凄く、それに似た匂いがしたのです。



相棒のオートバイがしゃべるってことを除けば、
アニメとしての、いわゆるファンタジー要素は何もない。
機械がしゃべるってことだって、
それで自律起動したり勝手に走りまわったりすることもなく、
ただキノとお話しできるだけ。
これだって一人旅の寂しさ故の脳内会話だったってことにしてしまえば、
全ては現実世界と何も変わらない。



でも実際に、この一話だけで、一級のファンタジーとして成立している。

それは、おそらくは、物語の世界のあり方が、
そこだけが私たちのいびつな現実世界と違って
少しだけ違う方向に歪んでいること。
そしておそらくは、それぞれの都市国家が、
独自の文化をもち、独特の風習に倣って存立していること。

キノ自身は定住する場所をもたない旅人であること。

その前提条件があって、その上で、人と人が係わりあうことが、
凄くデリケートな出来事として存在すること。
そういった、人の在り方と、人に対する視線が、
ファンタジーとして見事に結晶していることが、この物語の魅力な訳です。
生き残る術として、夜ごと銃の訓練を怠らず、
寝るときには銃を握って胸に抱いて眠る。
そういう世界に生きていて、なお、都市から都市へ、
流れ続けて生きていく。
この少年の生き様は、それだけで寓意に充ち満ちた、
美しくなんかないからこそ、美しい。
そんな魅力的な話として心に刺さったのです。


第2話視聴。
第1話に比べると、先が読めてしまう展開ではあったんだが、
驚いたのが{netabare}キノが女の子だったってこと。これ、前知識ゼロの私だけで、どうやら周知のことではあるみたいなんですけど。でもこの、明かし方も、犬のリク君にエルメスが「スケベ犬!」と怒鳴って、そのあとリク君がシズに耳もとで囁いて、シズの呼びかけ方が、「キノ君」から「キノさん」に変わってってところまで気づけませんでした。その前に、キノがシズの、同行しようという提案に対して「知らない男に付いていっちゃいけないって言われてるんで」って発言で気づかなきゃいけないところなんですけどね。{/netabare}
そして、世界は美しくなんかない、と、キノが珍しく抑えられない程に怒っていたのが、{netabare}本来なら自暴自棄になっていてもおかしくない状況で、夫を喪ったばかりの、美人で、うら若き未亡人に、にこやかな笑顔で騙されて「コロシアムの国」を訪れていたこと。そういう目に会っていたからこそ、コロシアムの国を目指すときのキノが妙に弾けて道を急ぎ過ぎていて、その反動で、未亡人の所業にやり切れない憤懣を抑えられず、怒りを国王に、ひいては国王とともに堕落していった国民皆に向けていたことに、納得がいきます。{/netabare}


第11話視聴。
{netabare}これまでは、淡々と、様々な国が描かれ、その国と係るキノ、ときにはシズのエピソードが綴られてきて、
悪くはないんだけど、なんか作品世界としては広がりがなくて物足りないかな、なんて思い始めてきたところで、
この11話。

キノの誕生秘話が明かされました。
「滑稽な悲劇」とでもいうべき様々な国の成り立ち方を傍観して、ときに加担してきたキノたちにとって、
自分の出自に関する、悲劇的な現実が提示され、
世界の醜さ、残酷さが、冷厳に提示されます。
世界と係る当事者である以上、滑稽に映る国についても、
キノには悲劇なのだと、思い知らされます。
タメが長かったけど、やはり凄味がひと味違う作品だと痛感しました。{/netabare}

最終話視聴。
{netabare}ラストを締めくくるにふさわしい、素晴らしいエピソードだった。
世界の残酷さとともに、
自然や生物の残酷さも、無辜の人々の善意の残酷さも、
主人公キノの残酷さも、すべてを余すことなく描き切ってくれた、
という満足感とともに、
あらためて、世界が、美しくないからこそ愛おしいのだと、
そう感じられる話だった。
途中中だるみかとも思えるエピソードもあったが、
ローファンタジーなりのリアリティを追求したからこそ、
こういうはなしになったのだ、と、
十分に満足のいく仕上がりだった。{/netabare}
「10月クールTVアニメ 早めの折り返しBEST10」1位→https://www.anikore.jp/anime_rankings/view/46297/

↓「最速!2017秋アニメBEST10」にランクイン↓
https://www.anikore.jp/anime_rankings/view/46224/

投稿 : 2024/06/01
♥ : 48

67.2 3 社会風刺でファンタジーなアニメランキング3位
星のカービィ(TVアニメ動画)

2001年秋アニメ
★★★★☆ 3.8 (147)
906人が棚に入れました
ある日ナイトメア要塞から魔獣「カービィ」が追放された。彼は魔獣として生まれながらも正義の心を持ち、ナイトメアの命令に従わなかったのだ。カービィはどこからか手に入れた宇宙船の中で眠りにつき、ナイトメアに対抗する力をつけることになった。しかしナイトメアの活動が急激に活発化したためにカービィは予定よりも200年早く目覚め、未熟なままで魔獣の送り込まれている国、プププランドへやってくることになってしまった。
カービィはプププランドに住むフームやブン達と友達になり、彼らの助けを得ながら星の戦士としての力を高め、ナイトメア打倒の日を目ざすことになった。


声優・キャラクター
大本眞基子、吉田小百合、小松里歌、緒方賢一、龍田直樹、長嶝高士、水谷優子、神崎ちろ、秋田まどか、千葉一伸、銀河万丈、私市淳、細井治、瀧本富士子

ぱるうらら さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

大人でも見られる子供向け作品

『星のカービィ』はオリジナルアニメ(ゲーム原作)、8クール(全100話)のパロディ・子供向けファンタジーアニメです。


このアニメは、毎回様々なテーマに基づいてストーリーが練られている。元々がゲームが原作の作品のため、基本はゲームに基づいた設定だがオリジナルな設定も多く、特に登場人物以外はオリジナル要素が強い。そして世界観も独特。

各話の主な物語構成は、①デデデ大王がカービィを倒す目的または悪巧みのために『魔獣』を"ナイトメア"という黒幕から購入し、②色々あってほぼ100%の確立でカービィ大ピンチ、③カービィがコピー能力を駆使し魔獣+デデデを倒す、④デデデ涙目、という流れだ。まさにポケモン等の王道アニメの典型パターン。
また、『格闘型バイクレース大会』や『自動車レース大会』のような、各話に一度は存在するカービィ側とデデデ側のいざこざとはまた異なる、前後編に渡った競争もなかなか白熱して面白い。特にそれら回で使われるBGMは『カービィのエアライド』や『スーパーデラックス』等のゲームBGMを引っ張ってアレンジした物があり、共に良いムードを作り上げている。この作品のBGMレベルは結構高い。
【地球温暖化や酸性雨などの環境問題・依存症・教育問題・メディアの影響力・・】のような当時の社会風刺ネタをテーマとした話では、ブラックユーモア的なギャグや戦いなどを加えて、時には面白おかしく時にはシリアスに、子供たちがイメージし易い形で取り入れられていた。


物語の流れについてだが、序盤は主要登場人物の紹介を背景とした、純な子供向けのストーリーの印象が強い。主人公のカービィ自体が「ぽよぉ?」や「ピギャ!?」のような擬態語しか喋らないので余計だ。しかし、カービィがプププランドに馴染んでいくまでに、村の人々から部外者として散々な扱いを受けたり、一方で様々な住人・動物達との出会いや皆強力して何かをやり遂げる…といったストーリーが展開され、それらはどれも子供向けながらに面白い。特にウイスピーウッズの回や花火大会の話は序盤のわりには神回だった。

序盤を過ぎると、序盤の様なカービィが町に馴染むまでの話は無くなり、プププランドにてデデデ達やフーム達(カービィの友人且つ保護者ポジション)、村の流れ者や人型魔獣、そして村民達などと共に何かをしたりされたりする話が多くなる。基本構成は上記の物と変わらず、基本的にコミカルな話が多いが、社会風刺ネタやシリアスな話の割合も増える。腹を抱えて笑えるギャグも豊富。

終盤に近づくにつれ、このアニメの黒幕が徐々に動き出しシリアスな展開が多くなる。そして、終盤(第96話~)はそれまでのコミカルな雰囲気をぶっ壊した『インディペンデイス・デイ』のような展開に。その後『宇宙戦艦ヤマト』に出て来そうな戦艦(ゲームにて元々存在)や用語も登場。『スターウォーズ』をリスペクトしたような戦闘も展開される。まるで、名作の寄せ集めの結晶体のようだが、ストーリー展開・設定・映像共々、大変良く出来ていた。戦闘シーンではCGをフルに活用した迫力や臨場感のあるものとなっており、殆んど登場しなかった『星の戦士達』も輝いていた。この戦闘シーンだけでも楽しめるだろう。


アニメ版『星のカービィ』は一度語り出せば止まらなくなるほど思い入れのある作品。100話という長編アニメのため、あまり他人に勧められる作品ではないが、子供でも大人でも楽しめる作品ではある。個人的には小学生にガンガン進めたい作品だ。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 6

前原由羽 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

カービィ学を考える

放映されて10年以上も経ったドラマやアニメに懐かしさを感じても、今に通じると思うことはあまりないだろうと思います。

だけど、人の性に関わる事項・社会問題というものは10年そこらではそれほど変わりません。カービィをみて、懐かしさよりも考えさせられるところに共感を覚えるのはそこなのでしょうか。

カービィが放送されたのは2001年から2003年、私が小学校に入学したころですね。あれから14年の今、様々な技術革新が進んだけれど、世間の倫理観がそれに追いついているのか疑問だし、そもそも問題点ですら改善しているか怪しいところです。初期の話だけでも情報操作や研究不正といった今現在もホットな話題が提示されています。

また、いろんな出来事に対する各キャラの捉え方も面白いですね。何でもお見通しのフームと、気づいたり気付かなかったりのブン、いつもカスタマーサービスに騙されているデデデ、悪いとわかっているのに(いながら?)権力には逆らえないエスカルゴン。視聴しているときは我々はフームの気分になってみても、いざ現実ではブンやエスカルゴン(はたまたデデデ!?)にしかなれないのでしょう。

カービィを見ていた当時の私でも全ての風刺内容には気づいてはいなかったけど、現代社会は様々な問題を抱えていて、カービィのように1つ1つ解決していかなきゃならないというテーマを感じていました。あれから10年以上経って社会に出る準備をしている身として、カービィの時代よりは社会問題が改善するように個人レベルで努力しなければならないと強く思いました。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 6

ワドルディ隊員 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

任天堂のゲームを原作とした名作アニメ

ご存知の方も多いと思うが
このアニメは任天堂のゲーム「星のカービィ」をベースに
作られたアニメである。

基本的な流れとしては
デデデ大王がカービィを倒すためにナイトメアから魔獣を
ダウンロードする。魔獣がカービィを求め町を襲撃するため
住民は大パニック。ピンチに陥るものの、敵の武器や味方の支援を元に
コピー能力をゲットし魔獣を退治するというもの。

だが、このアニメがすごいところは
王道的なストーリーの中に社会問題を取り入れていることである。

環境問題、教育問題、メディア問題、食糧問題、動物問題といったように
様々である。当然アニメに関する話も2回程作られている。

「アニメ新番組・星のデデデ」と「オタアニメ!星のフームたん」
である。この2つはカービィアニメの中でも相当カオスな回
のため視聴の際は覚悟を決めるべし。

それに加え、登場人物における名言も心に刺さるものがある。
「歴史はスタジオで作られる~♪」
「環境破壊は気持ちいいZOY」が有名だろうか。
他にも色々あるが多すぎるので2つにした。

CGやBGMもクオリティが高く、スタッフの作品愛がすごく伝わってくる。
「新春!カービィ・クイズショー」や
「ワープスターの危機!後編」はサービス精神旺盛である。

100話もあるため、人を選ぶ作品ではあるが
大人になったからこそ意味が深く理解できるアニメだと思う。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 10

75.7 4 社会風刺でファンタジーなアニメランキング4位
キノの旅(TVアニメ動画)

2003年春アニメ
★★★★☆ 3.7 (636)
4008人が棚に入れました
『キノの旅』の世界には様々な「国」(実態は都市国家)が世界中に散在している。「国」はそれぞれまったく違った文化をもっており、技術的な格差もきわめて大きい。
しかし、各国とも言語は統一されている様子(ただし、1巻「平和な国」では隣国と「言語も違う」と書かれている)。
たいていは高い城壁に囲まれており、城壁内は各国の法律が機能して比較的秩序が保たれている。しかし、城壁の外は盗賊などにも遭遇することがある無法地帯である。
ネタバレ

アリス★彡 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

傍観者のキノとおかしな国々たち

ライトノベル原作。ディストピア。
電撃文庫では、エンターテイメントよりではなく、テーマを真剣に考えるタイプの作品として売り出されています。
寓話的で、おとぎ話チックです。

男の子なのか、女の子なのか分からないキノと、喋るバイク「エルメス」の独特の風味の旅。

現実味の無い話をつらつらと並べているように思えますが、モチーフは長い歴史をみればどこかで見つかるといった話が多いです。その分に、感情移入がしにくいので、絵本を読んでいる感覚を思い出して視聴してみると良いと思います。桃太郎や浦島太郎を読む感覚です。

特徴的なところとして、ディストピア特有の管理社会の国や格差社会の国があったりします。
重要なのは、主人公が自己主張をあまりしないということですね。そのために、何が言いたいのか、何を感じて欲しいのかは、視聴者に委ねられるといっても過言でもありません。残酷なシーンだけを見せられて、そこから何かを感じ取るのは、視聴者の想像力次第なのです。

例えるなら、「人間が一人死んでいるのを誰かが呆然と眺めて、それをどう感じるか」それと似たような感覚でしょうね。
ここでハッキリとした描き方が好きな方は、何が言いたいのかよく分かりません。それなので、そういう方にはおすすめできません。

しかし、ここで物凄いメッセージ性を感じる方にはおすすめします。
孤児の写真を見て、それをどう感じるか、そんな感覚に近いかもしれませんね。

孤児が可哀想だと思った方は状況から感情を浮かべるタイプです。
そこから、社会状況を考察する方は、ワンステップ進んでこの作品をもっと楽しめる方でしょう。

作画は匿名掲示板で批判されていますが、これを萌え画やリアルチックな作画でやるのは合っていないので、まだ良い方でしょうね。
とても残酷で救いようのない絵になりそうなので...。
シャフトの映画の作画がちょうど良いくらいだと思います。

ストーリーはディズトピアとしてテーマを上手く伝えることが出来ており、エンターテイメントのような楽しいと思える作品ではなく、思い切り考えて自分が生きるための材料にする作品です。



■人の痛みが分かる国

{netabare}
テレパシーで話せるようになった国。
童話チックに描いていますが、残酷なお話。
{/netabare}

*

{netabare}
人の気持ちが一日中分かるということは、陰口や本音まで相手に包み隠さずにバレてしまうと言うことです。
その象徴として、作中の村では良好だった恋愛関係が崩壊しています。

人の悪口を一度でも頭に思い浮かべるだけで、相手に聞こえてしまい、それに反応するだけで会話が成立してしまいます。
「会話を止めることが出来ない世界では、人間は社会は作れない。」
こういう事を揶揄していましたね。
{/netabare}

これは現代の高度な科学技術への危惧なのでしょうか。


■多数決の国
{netabare}
多数決で何かも物事を決めてしまう。
この国では国王が権力を握っており、逆らう者は処刑していました。
その為に、国民が不満を持ち革命を起こして、民主的な国家を築こうということになったのです。

「国王が一人で決めた方からおかしくなった」と国民は考えました。
そもそも「一人で決めたからおかしくなった」ではなくて、「反対意見の者を排除したからそうなった」が正しいと思うのですが、国民はそう捉えて、「ならば、多数決で全て決めてしまおう」という政治体制を取るようになります。

最初は上手くいっていました。荒れ果てた土地は回復して、このまま豊かな国が出来ると思いきや。
ある法案に反対した人がいました。その人は「多数決だけでは速く決まらないから、代表者を決めてその人に決めてもらおう」と言い出したのです。
「何を言っているんだ。逆戻りになってしまうではないか。死刑だ」
反対意見を持つ人を多数決で死刑することに決まりました。

そして、国民たちは「それが正しい」事だと思い込み、徐々にエスカレートしていきます。反対意見を出す人たちを一部の人が「死刑にしてしまってどうでしょうか」と提案して、それが通ってしまいます。国王に近い考えを持っていった人は次々に排除されていくのです。
「流石にやり過ぎだ」と思った人もいて、それに反対すると、その人たちも死刑にしてしまいました。
「税率が高いから下げろ」と言った人も死刑。
「死刑制度反対!」と言った人も死刑。

国の人口は徐々に減っていき、最後は三人になってしまいます。
三人は国民のリーダー格だった男と、その妻と、長い付き合いだった男だけになってしまいます。
ある日、長い付き合いだった男は「国を出て行く」と言い出します。

「あろうことか、自らの国民の義務を放棄して抜け出そうなど」
多数決でその男は処刑されます。

それからしばらくたって、妻は病気で亡くなります。
{/netabare}
---
{netabare}
「さようなら、王様」
キノが去り際に放った一言。
男は反対意見のものを排除するうちに、独裁をしていた王様になっていたのですよね。「良識が無い人が上に立つとこうなる」という事を作者は言いだけ。

反対しても殺さなければ良かったのです。国家反逆罪で死刑?
反対意見を述べるだけで国家反逆罪なんですね。
そんなことしていたら、国民がいなくなりますよ?
{/netabare}
民主政治だから正しいと言って、少数派を排除しているとこうなるということですね。マイノリティ差別の危なさを説いています。

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キノの旅の童話チックな所は、この部分ですよね。
現実離れした事を描いて、視聴者に訴えかけます。
現実離れしているといっても、人間の歴史を辿ればそういったことがあるかもしれませんね。

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■レールの上の三人の男

↓ネタバレ
{netabare}
-----
「進むべき、方角か」



キノのエルメスが旅をしていると、一人の男と出会います。
その男は、線路の周りの草をむしり、線路をピカピカに磨いています。
「これ...全部あなたがやっているんですか?」
というニュアンスで聞くと、男は苦にもならない様子で、「ああ、それが仕事なんじゃな」と答えます。

「何年くらいやっているんですか?」という問いに対しても、苦にもならない様子で「五十年くらいかな」と答え、その次の問にも「国は一度も帰っていない」と答えます。
どうやら、生活が苦しくて、家族を養っていくには国に帰る暇は無かったらしいです。



老人と別れた後、線路は灰色の砂利が敷き詰められた上にあり、老人がどれだけ仕事をしてきたかを象徴しています

しばらく、モトラドで線路沿いを走っていると、とある老人に出会います。
老人の近くを見てみると、線路のレールが外されていることに気づきます。

「レールが無くなっている」
「ああ、わしが外した」
(引用)
キノの呟きに老人はそう答えます。


「あのレールを外しているのは、どうしてですか?」
「仕事でのう。一人でずっとやっとるよ」

ここまで来たら、先は分かると思いますが...。

「ずっととは...どれくらいですか?」
「五十年経ったかな。ちとよく分からん」


「国には帰ってないの?」(エルメス)
「ああ、わしには弟が五人もいてな。あいつらの食いぶちを稼ぐためじゃ。病んでなんかはおれんて」

「レール長年、使ってないわりには綺麗ですよね?」
「ああ、ずっとじゃ。不思議じゃのう。しかし、外しやすくてええよ」
「・・・・・」


*
キノがしばらくレールと枕木が外された砂利道を走っていると、
そこに一人の老人が見えます。

老人と「こんにちわ!」軽く挨拶。
すると、キノとエルメスはある事に気づきます。
レールがあるのです。

*

「直しているんですか?」
「直しているんだ。列車が走れるようにな。枕木を撒いて、レールをのっけてスパイクで止めているんだ」

引用終わり
*
「あの、お仕事、ですか?」
「もちろん、そうさ。ずっとさ」
「ずっと、とは...]
「かれこれ五十年くらいになるかな? ちと計算苦手でね」

....
どうやらこの方も、家庭の事情が厳しいようです。
両親が病気で、働けなくなったから、三人分を稼がなければならなかったよう。


「旅人さんはどこへ行くんだい?」
老人はそうキノに問いかけます。


----
{/netabare}

{netabare}
ざっと引用してみましたが、この話を「労働のお話」と捉えるのか、それとも「人生の方角」と捉えるのか、色々と受け取り方で考えが変わりそうです。

労働のお話だと、「もっと広い視点を持つと意味はあるけれど、労働は虚しい事」でしょうか。


私の場合はこう感じました。
「誰かが磨いたレール(歴史)を、誰かが取り外して(塗り替えて)、誰かがまた敷きなおす。
仕事だけを見れば、価値のあるものかもしれないけれど、全体として見て、誰かが作ったものを壊して、それを敷き直していかければならない社会は残酷ですよね。」

引用した所だけを見ても、作者は病んでいたのではないかと感じますよね。
ネット上でもそういった憶測が飛び交っています。

私がこうやって考えをまとめているのも、誰かの意見にのまれて、また新しい意見が出るという流れに消えていくのでしょうね。
{/netabare}
「旅人さんはどこに行く?」
私たちは何を目指して、何のために仕事をするのでしょうか...。

-----



■働かなくても良い国の話
{netabare}
三人のレールの上での話で、持ち出されたお話。
キノたちが働かなくても良い国に立ち寄っただけです。
{/netabare}
---
{netabare} ~
適度にストレスを与えないと人間はだらけてしまう。

中東で、太陽光発電を発展させ、働かなくても暮らしていける社会を作る計画が進んでいますが、どうなんでしょうね?

果たして本当に働かずとも生活できる社会が作れるのでしょうか?
{/netabare}
働くという形式は無くなっても、何かをしなければだらけてしまう。
そのために、働く人は減らないと思います。
人の助けになりたい、といった自己満足の精神が働いて、概念自体は無くならないと思います。

そういう事を言いたかったのでしょうか。


■予言の国
{netabare}
どこかの国の予言が、実はどこかの国の詩だったという話。
{/netabare}
---

言いたいことは、「誰が発した言葉が、誰が解釈して影響し合っていく。」といった事でしょうね。
極論で何かに例える回りくどい方法です。しかし、視聴者の目を引くことが出来ています。詩の下りは童話の一部を聞いているようでした。


*
{netabare}
作中の旅人が来るたびに、風習を変える国というのは、それだけを見ると、他人の目を意識してしまう人間と捉えます。

しかしながら、「誰が発した言葉が、誰が解釈して影響し合っていく。」といった予言の国のメインテーマを考えれば、このエピソードも補足なんですよね。
{/netabare}



■コロシアム
{netabare}
格差社会で、一級市民になるために奴隷や殺し屋が殺し合う話。
{/netabare}
----
{netabare}
悪いことをする心理でしょうか。
対戦相手はこんな大会に出場してしまいました。
キノの対戦相手をよく見てみると、なぜこんな殺し合いをしているかを丁寧に話してくれています。
王様については、自分で悪いことだと分かっているのに、快楽主義者だった事から、大会を止められませんでした。

因果応報とも捉えられますよね。女の殺し屋は一人を殺していますから、王様に銃で撃ち抜かれいます。一方、一人も殺さなかった王子は、無事に生還していますよね。
しかも、王様は、最後はキノに殺されています。一級市民は殺し合いを笑ってみていたので、「同じように殺し合いをしてね」とルールに付け足されました。
罪を犯したものはしっかりと罰を受けています。しかし、罪を被るものが多すぎたせいで、あの国は崩壊してしまうでしょうね。
{/netabare}

罰を間違えると何かを崩壊させてしまうというアイロニーも含まれています。

■大人の国
{netabare}
親の権利が膨張した国のお話。
親権が強化され、子供が親の所有物に。
{/netabare}
{netabare}
キノは可愛らしい女の子だったんですね。
口調から冷静になることは予想は付きますが、男装の麗人になるなんて...

おかしいと思ったところ。
①失敗作になれば処分される。
②何でもかんでも「大人だから」ということで正当化される
{/netabare}

これは作者が子供視点に経って、児童虐待、もしくは親だからといって何かも正当化している人を揶揄しているのでしょうか。
{netabare}
キノは大人の国から逃げ出す...これは自立でしょうか?
{/netabare}
*

エルメスがキノの幻聴に見えたのは私だけでしょうか。エルメスを旅人のキノに似せて...十分あり得ると思うのですよね。

■平和な国
{netabare}
心理学から引用しますが、人間は人の悪口が共感できるものだと、一気に仲が良くなるみたいです。
戦争の話と悪口の話はまた別物かもしれませんが、同じようなものを感じました。

誰かの幸せは、誰かの不幸。これは極端ですが、誰かが幸せになることは誰かが不幸になることがあるかもしれません。
例えば、社会で評価される人間は限られています。一番になれる人間は限られています。
一番になることが目標の方は、不幸になる可能性が高いのです。
同じ夢を持った方は沢山いますからね。

現実世界でも、同じ敵を持った者は共闘して戦うことが多いでしょう?
「敵の敵は味方」
孫子の兵法書にはこう書かれています。

最初は仲が悪かった者同士でも、同じ目的を持つと仲良くなってしまうこともあります。もちろん、大切な人間を殺されたり、恨みつらみが重なっている人物はそうでないかもしれません。
三国志の晩年の劉備みたいな感じです。(詳細↓)
{netabare} 呉と同盟を組んで魏に対抗するべきなのに、呉に関羽を殺されたからといって、呉に戦争を挑む。魏の国土は、当時その地を制すれば天下は決すると言われた中東を抑え、更には巨大な土地を持つ河北を抑えています。
しかし、呉の南は異民族が多く、荒れ果てているために発展させることが難しく、蜀は山ばかりで発展しにくいです。この状況を考えれば呉と同盟を結ぶべき時なのに、復讐をするために呉に戦争を仕掛けました。
{/netabare}

このように、感情で大局を見誤ってしまうこともあるかもしれません。

(反論もあるかもしれないので↓)
{netabare}
※蜀が呉に対する武力的な威嚇と捉えている方もいますが、兵站が長すぎるのでその線は無いと思います。兵站が長すぎれば補給が難しく、あの地域は明らかに戦争する地域ではないと曹丕に言われています。威嚇のためであったとして、敗北する可能性が高い場所に果たして出兵するのでしょうか?
しかも、そこを陸遜に突かれて敗北しましたしね。
{/netabare}

キノの旅の平和な国。これもまた極端な例のように思えるかもしれませんが、世の中の争いにこういったことは付き物なんですよね。

三国志の例を出すと、蜀と呉は戦争した後に、劉備が没して、諸葛亮が呉と和解して同盟を結びます。
戦国時代の今川、武田、北条の同盟もそうです。三国がお互いに覇権を握っていたのに、各自の目的のために同盟を組みます。


「国と国が組んで、敵国の国民を迫害することはどうなのでしょうか」
ということが、この話の一番の味噌でしょうね。

「あなたが子供を宿せば分かるようになるわよ」
キノに言われた一言。
まるで、大人になれば分かるようになるとでも言いたげですね。

本作では、「代案を出せないから、最善の選択をしたまで」と主張がまとまっています。そういった状況を作り出したのでしょうね。

作者はそうなる前に何とかして欲しいのでしょう。そうなる前に。
そんなことがキノの発言から読み取れます。
「僕には分かりません」という発言とかですね。
{/netabare}

■機械人形の話
{netabare}
機械人形が製作者の家族になるというお話。
製作者は幸せに暮らしますが、果たして本当に幸せなのでしょうか?
役目を終えた機械人形は、水に沈んだ街へ飛び降ります。
キノはそれを無表情で見送る。

ロボットの使い道、生き方のお話でしょうか。
誰かの代わりに誰かスペースに入る事について、とも捉えられますね。

おばあさんは報われたのでしょうか?
自分を機械人形にして、主人を作って、そこで毎日を過ごす。
ワンパターンのような気がします。
これではまるで奴隷人形のようですよね。

キノが最後に冷たく機械人形に接したのは、こういう感情が裏に合ったからではないでしょうか。キノは元々傍観者だということもありますが。

死んだ人間を蘇らせる事は出来ないです。
その時点で、お祖母さんが不幸という事は決まっています。
テレビで子供を無くした親子が新しい子供を作っているドキュメンタリーを観ましたが、それと同じようなものなのでしょうか。

機械人形として幸せな事。
最後に機械人形の一人が、自分たちの幸せについて語っていましたよね。
主人のために働くこと。結局、お祖母さんを助けたのは機械人形の自己満足でしかないのです。
客観的にみれば、良い人だと思うかもしれません。実際に、その通りだと私も思います。
皮肉ですね。同じものは手に入らないのに、それ以上のものを手に入れようとする。

何もすることが無くなった機械人形は沈んだ街に落ちていきます。
やる事が無くなったロボットの末路ですね。可哀想です。

人間のわがままのために作られたロボットは、理不尽に襲われた主人を守るため、「理不尽に」時間を費やすのです。

ロボット問題に、「ああしろとかこうしろ」は作中には言及されていません。
キノは「知りません」と答えていますしね。

これは視聴者に、「機械人間の話」のテーマを投げ捨ているのですよね。
これを観て、どう感じるのは視聴者次第なんです。
{/netabare}

■本の国
{netabare}
創作物について色々。
作者の現実に対する哀れな価値観が滲み出ています。

ディストピアとして特徴的な表現規制。
表現の自由が失われており、本が規制されています。


本の愛好家は地下に籠って、その規制と戦いますが、相変わずキノは傍観姿勢を貫いています。

作家「人間は体という器を通して、現実世界を見ている。つまり、この世界は脳によって作られた世界だ。それと本の世界と何か違いはあるか?」

現実世界の映像は一度、脳で分解されて再構築されます。
そう考えれば、今見えているものが他人と同じものかどうかは分かりません。
カメラを使っても、その写真を見るのは人の目なのですから。
例としては色覚異常。何かが違っていれば、見え方も変わってくるわけです。

その考えだと、虚構と現実を一緒にしてしまいそうですね。この理屈は納得しないほうが良さそうです。あなたも現実と虚構を一緒にしてしまいますよ?

そもそも、虚構と現実は成り立っている物質レベルで違いますから。よく考えると、人間が痛みを感じて、行動を起こしにくいのは現実の方なのですよね。

キノはそれをただ聞いているだけ。どうでも良さそうですね。
傍観者にとっては、世界が二つあるのに、どちらかを選択しなければならないという事に疑問を持っているのでしょうか。
しかし、作中でキノが本の世界にいるような描写が入っていますから、キノも自分のいる世界が本の中の世界なのではないか、と感じているのでしょうね。実際、その通りなんですが。


批評家たちが、健全なのか、それとも不謹慎なものなのか、本を仕分けしています。しかしながら、その批評家は、本を読みすぎて現実と虚構の区別の付かなくなった病人ばかりなのですね。

そもそも批評家といっても、病人を集めて、健全か不健全か調べられるのでしょうか。批評家の様子を見て、管理者が判断するのでしょうか?
どれだけ影響を受けたのか、とか。

健全な本ばかり出回る自体になれば、エンターテイメントは廃れることは間違いないでしょうね。殴るのもだめ、危険な思想(国家反逆とか。正当な理由があっても)卑猥なものもだめ、小説の類は全滅でしょうね。

そもそも、何を持って健全とするのか、不健全なのか、という定義自体も難しそうです。


そして、挙句には管理者が「批評家は人の楽しみを邪魔をする厄介者ね」とまで言い放ちました。

最後には本が全て焼け落ちて、規制派も反対派も泣き叫んでいます。キノは悠然とその場を後にする。
{/netabare}
「表現問題で熱くなっている内に、本が無くなってしまいますよ」ということを言いたそうですね。

-----

表現問題について、「熱くなるのは勝手だけれど、その媒体が無くなっても知らないよ」ということでしょうか。
規制派も本が健全なものになって欲しいから、規制しているだけで無くなって欲しいと思っている方は描かれていませんでした。

この考えから行くと、作者は傍観者だけれど、無くなるのは困るという立場でしょうね。

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■人を喰った話

【物語のポイントまとめ】
{netabare}
台詞は覚えていないので、ニュアンスのみ。

キノがうさぎを狩る
「うさぎのためにも生きないとね」



キノが遭難している人を助ける
「僕がどちらかに加担することは出来ないんだ。うさぎの命を狩るのは自分を助けるためだ。でも、あの人たちを助けると、変わりにうさぎの命を犠牲にしてしまう。どちらか一方に加担してしまうことになるだろう?」



キノが助けた人のために、うさぎを狩る
「僕はあの人たちを助けることに決めたからね。その為には最善を尽くすさ」



キノが助けた人間は、実は「奴隷売り」だった。
キノは躊躇なく三人を殺害。
トラックの中を見ると、人間の骨と少女の衣装が置いてあった。
「三人を助けられてなくてごめんなさい」



{/netabare}
-----


人間と動物の命の価値は同等なのか...といった話は置いといて。

食物連鎖のお話でしょうか。

人間は生きている上で、動物の命を犠牲にしなければ、生活が出来ません。

例えば、人間は生活する上で、食料品を手にしなければなりません。
魚や肉、野菜などを食べなければ活動することが出来ないのです。
そういえば、インドで日光に当たるだけで生活できる人物が紹介されていましたね。嘘っぽいですが。
そういう人間はそうそういないわけですから、その辺は置いておきますね。

森や草木を伐採することだって、間接的には動物の生活圏を奪っていることになりますから、いくら配慮しても動物を犠牲にしなければならない状況がします。

薬品を作るために、殺されている動物たちと人間を一緒にしてみたらどうなるか。化粧品を作るためには、動物を使った薬品テストが必要になってきます。


「人間は生活している上で、誰かの犠牲無しでは生きていけない。」
そういう事を表した話だと思いました。


■魔法使いの国

「人間の持つポテンシャルの低さと高さ。」
{netabare}
ある所に空を飛んでみたいと思っている少女がいました。
しかし、その子は周りから馬鹿にされ、「空を飛ぶことなんて不可能」だと烙印を押されてしまいます。
そのあとに、飛行機を使って、空を飛べるようになると、周りの人々の態度が一変して、チヤホヤされ始めます。遂には魔法使いに例えられるようになるのです。
{/netabare}
率直な感想として。

ライト兄弟のお話?
キノの旅の世界では、凄まじく科学が発展した世界が存在します。それなのに、「空を飛ぶ機械が無い」というのはキノの嘘でしょうか?

*

「人間の持つポテンシャルの高さと低さについて、実感していてね」
初めから偏見を持っていると潜在的な力を発揮できない、ということでしょうか?


もしくは、人間は見たことの無いことを軽視して、誰かが何かを成し遂げるとその人を神様だと拝める馬鹿馬鹿しさとも取れますね。説得力の話にも聞こえます。




■彼女の旅

{netabare}
ある所に、自意識を失わされた人間がいました。
国家は犯罪の原因は、過剰な自意識から来るものだとしました。
窃盗が行われるのは自分の生活が危うくなったり、自分が得をしたいという心理などから。
その根本的にあるものは自意識。

では、自意識を無くしてしまってはどうだろうか?
実験対象として選ばれてしまった彼。

実験は成功して、彼は犯罪を起こす心理を失いました。
しかし、彼は働く気力さえも沸くことは無かったのです。

国が求めていたのは、自意識が無くしつつ、働く気力が損なわれていない人間です。
その男は、失敗作だからということで国から追放されてしまいます。
まるで、中世のおとぎ話のようですね。
{/netabare}

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ここから読み取れることは...。
会社の求めているのは、自分勝手な人間ではなく、働く気力もあって集団に馴染む人物。
って、作者はどれだけ働くことが嫌いなんですか(笑)


三人のレールの話でも同じことが言えますが、作者は管理社会の体制があまり好きでは無いようです。私も作者と同じような価値観を持っているのですが、そこまで強くない思想です。

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{netabare}

その男は自意識を取り戻す方法を探します。
ある時、催眠術師に出会います。

そして、その男から自意識を取り戻す方法を知り、
男の言った言葉を探すために旅をすることになります。

男は老人と化し、キノと出会い、これまでの経緯を話すことになるのですが...。
{/netabare}
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{netabare}
催眠術師の答えは「そんなものはない」でしたね。
取り戻す方法なんて無い、つまり男は騙されて、人生を「そんなものはない」のために使い切ったという事ですね。

「それって世界で一番青い空の話に似ていますね。」
そう言って、「世界で一番青い空は何?」と聞かれた時の回答を伝えるキノ。
「世界で一番青い空なんて、日照りやその時の天気によっても変わるのに、決めようがないじゃないか。そんなものはないよ」
騙されたことを素直に教えるキノ。残酷ですよね。
伝えたといった解釈もありますし、話を持ち出したという捉え方もあると思います。
あの時に例えば話を出すのは、伝えるために言い放ったとしか思えないのですよね。
キノの旅はファンタジーチックな舞台なんですけれど、キノの考え方は現実主義です
{/netabare}
----
{netabare}
男が発狂して、感情が爆発します。自分の人生の無意味さを知った所で、自意識を取り戻したのでしょうか。
キノは黙って、その場から立ち去ります。

男の近くに側におり、自意識を取り戻さないか監視していた女性。
実は「自意識を無くして、労働の意欲を持った人間」でした。

その監視役にキノは言います。
「どうして、あの時におじいさんを殺さなかったんですか?」

発狂したのなら、あの時に殺しておけば楽だったのに。

監視役はこう答えます。

「分かりません」

自分の仕事は男が自意識を取り戻したら、殺害する事。
しかし、監視役でさえも、自分の目的について、分からなくなってきたのです。
{/netabare}
この話だけを見ると、自意識を持たずして、労働することは難しいということを伝えたいのでしょうか。
彼女の旅というまとまりで見ると、「旅」というテーマに収められているような気もします。

----

【武力を使わずに旅をする彼女】
{netabare}
キノが旅をしていると一人の旅人と出会います。
武力を使わずに各地を回って、平和な旅を実現して見せるという願いを持った女性でした。

キノと女性が別れると、その相方がある事をキノに伝えます。
「彼女を狙ってくる敵は全て私が排除しているんだ」
そういったニュアンスで、事実を伝えます。

キノが歩く道には無数の死体が、彼女が知ったらどういう思いをするのでしょうね。
{/netabare}
----


旅をする事は一体?
キノも自分の旅が「何の意味があるのか」を疑問視するようになります。


■優しい国
{netabare}
集団自殺ともとれるお話。
「滅亡する日に近いから、旅人さんに優しくしよう」
そういった趣旨で、キノに優しくするのですが、前半はミスリードでごく平凡な国を演出しています。

後半は火山の噴火で、国民全員が死亡。
ハリケーンが迫っているのに、家から離れたくない人の話を思い出しました。ニュースでやっていましたね。自分が育った家や場所を失うくらいなら、いっそのこと一緒に死のう、という考え方ですね。

エルメス「無駄だよ。キノは何も出来ないよ」

火山が噴火した時に、エルメスはキノにそう伝えます。
この時に、大きくキノは感情が揺れ動きます。それでも、自己主張はしません。黙ってその場を立ち去るのみです。
{/netabare}
----
{netabare}
滅亡するということが分かっていれば、国民はその時までに逃げ出すか、それとも残って最後のひと時を楽しむか、選択肢は幾つかあります。
物語で補足はされていませんが、国民は逃げ出した人もいるのでしょうか。

そこは大して重要ではなく、大切なところは残った国民は優しくしたという所。優しい国といったトピックにもあるように、この国は優しい国でした。
{/netabare}

「災害に対しての人間の無力さ」
もしくは、「本当の優しさ」でしょうか?

■総評

映画やOVAも全て視聴済みで、レビューがとても書きにくかったです。
難しい所は、「主人公が自己主張しない」という事。
その為に、解釈が難しく、一つの物語を見て、どう思うかは視聴者次第なのです。社会システムについて否定的に思うのも、「こういうのもありかも」と思うのも、視聴者次第なのです。

テーマを投げ捨てる、という表現がしっくりくるかもしれません。

この作品は投げかけられたテーマについて、ゆっくりと考察する。
もしくは、悲観的な感情を抱いて、楽しむ。
この二つが本作の楽しみでしょうね。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 13
ネタバレ

石川頼経 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

かつてない程、面白い作品でした。しかしこれって「アニメ」としての面白さなのかな?

前に新作の一話を見て「月刊ストーリーランドの謎の老婆」を思い出した。と書きましたが、むしろ「アラビアンナイト」や「銀河鉄道999」に似ているかもしれません。

総評
こんなに面白い、アニメを見たのは初めてかもしれません。
dアニメストアで13話を一気に見入ってしまいました。正直、こんな事は初めてです(ニコニコ動画などの一挙放送とかは除いて)
総合点数的には、奇妙なストーリーの魅力で持っているので伸びませんが、本当は「物語の評価」は5.0を大幅に上回ります。10点つけたいくらいです。
キノの奇妙奇天烈、摩訶不思議な旅は本当に面白かったです。
話しの寓話性、哲学性、アイロニーなどはいろいろかんがえさせられます。
そして、バトルもちょくちょくあり楽しく、幼少の頃の女の子っぽいキノも可愛かったです。
そして、キノは異常に強いです。あの世界では男女の運動能力差はないんでしょうね。

キノの飄々としたエゴイストぶりや中立主義、「断る事は丁重な態度ながらきっちりと断る」「正当防衛でなら平気で人を殺める」など「正義」にこだわってない部分、(これらの点はちょっと間違ってましたネタバレになるので最下段に補足します)も奇妙な物語を加速させていました。

声優に女優の前田愛さんを使った点を叩いている人もいますが、他の人はともかく、少なくとも彼女の演技に不満はなかったです。
むしろ、キノの声に非常にあってました。

さて、あえてケチを付けると確かにかつて見た事のないほど面白い作品でしたが、これって原作小説、つまりシナリオや設定の面白さであって、
「アニメ作品として面白さなのか? 高評価なのか?」という疑問は確かにあります。
秀麗なキャラデザイン、ヌルヌル動く動画、声優の見事な演技、心に沁みるアニソンなどのアニメ作品ならではの魅力、総合力は「ほどほど」だった気もします。
「アニメ作品として面白い作品」の好例と言えば「まどマギ」とかだと思いますが、キノはそういった作品からは離れている気がします。
まあ、その辺は新作キノに期待ですね。

補足その1 キノの主義について(かなり長文)
{netabare}別にキノに正義感とか人間としての情け、感情が欠如しているわけでありません。ただ彼女はそのために法律、ルールを破ったり、自分の権利を損なったり、自分の主義以上の事をしないだけです。
キノでも口調は丁重なままながら怒りを感じる事はあります。
例えば「コロシアム」がそうですが、注目すべきは彼女はちゃんとルールもしくは権限にのっとってやっています。
一つは「観客席への誤射は処分がない」、もう一つは「優勝者には国の法律を一つ付け加えられる」です。
キノはその二つを利用しただけです。それ以上の事はしません。キノにとって王や一級市民以上に怒りを感じたであろう、
キノを騙してコロシアムに行かせた貴婦人に対しては何の制裁もしてません。単にその機会がないというのもありますが、おそらくというか間違いなくキノはその後に貴婦人に会っても嫌味を言う程度で襲ったりはしないでしょう。それを正当化するルールがないからです。
正直、新作二話はキノが激オコだったのは改悪っぽい感じがします。旧作ではキノはもっと飄々としてます

実際、キノは鬼畜外道な事をしている「平和な国」でも「これって単なる少数民族に対する虐殺なんじゃないですか?」と丁重な口調ながら怒りをこめて言いますが、それ以上の事はしません。する権限がないからです。

また「人を喰った話し」でも、キノはまず餓死寸前の商人たちに自分の持っている携帯食料を分けようとはしません。それがキノの権利を損なう行為でキノの主義に反しているからです。
しかし、「獲物を刈ってくる事は出来る」とキノは動物を狩ってきて商人たちに栄養剤と共に与えてます。
また、商人たちはキノに御礼に高価な指輪を差し出しますが、キノは最初は受け取ろうとせず、あまり薦められるので、「じゃあ、まずは預かって貴方たちを助けられたら御礼に貰います」と約束します。
しかし、キノあの手この手で助けた商人たちにキノは裏切られて銃を突き付けられて奴隷として拉致されそうになります。
間一髪でキノは商人たちを殺して難を逃れますが、キノはちっとも商人たちへの怒りを示そうとせず、ただひたすら自分が助かった事に安堵します。
これはキノは「旅の間に盗賊に襲われるなんて当たり前の事」と考えているからです。
おそらくは盗賊に襲われるのは「自然災害のようなもの」「襲われた自分が間抜け」とでも思っているのでしょう。
別の作品を例に出すのも何ですが「カイジ」という漫画でも「ゲームで騙されるのは俺が間抜けなだけ」と発言するシーンがありますが、それと同じ考え方なんでしょうね。
最後にキノは商人たちの死体に「この指輪はあなた達を助けるという約束を果たせなかったのでお返しします」と言いますが
それは決して「商人たちへの皮肉をこめた怒りを示した」とかではなく、「契約を果たせなかったから」に過ぎないと思います。
キノは決してぶれません(少しは怒り悲しみを覚える事はありましたが、そっと胸にしまい込みます)。前述の商人の件でもエルメスに「またこんな事があったらどうする?」と聞かれて「こういうこともあるさ、ぼくらは人間なんだから」の一言で済ましています。

困っている人たちに助けを求められても自分の出来る事、自分の主義以上はしませんし、
圧政に苦しんでいる人たちに助けてくれと言われても「僕は三日間しか滞在できないので無理だ」と断ります。凄い異色の主人公です。 {/netabare}

補足その1に追加考察
{netabare}ダークで人間性悪論そのもののキノの世界観とキノの指針は二話にしてきっちり語られていると思います。キノは自分を裏切った商人たちに対して怒り、憎しみも示さなず、さらに自分の取った行動に対して後悔もしませんでした。
ただ、自分に襲い掛かってきた商人たちを正当防衛で殺害して「旅が終わるかと思った」と安堵しただけでした。
全ては自己責任の世界観なんですよ。若干、違うかもしれませんがJOJO
の奇妙な冒険でジョジョの父親がディオに殺された時にスピードワゴンが言ったセリフが思い出されます。
「おれは自分が困るとすぐ泣きぬかす甘ちゃんはだいっきらいだがよォ!
この親子はちがう自分たちのしたことを後悔しない最高の大甘ちゃんだぜ!」と
「人間性悪論」たるキノの世界観の中で、キノは制限付きとはいえ、人にそれなりに親切ですし、その善意が仇で返されたところでキノは全く怒りも後悔もしません。。{/netabare}

補足その2 声優について
旧作キノはキノとエルメスを声優ではなく俳優を使った点を叩いている人がいるようですが、
キノは上記にも書きましたが、喜怒哀楽の感情をほとんど出さないキャラ。
エルメスに関しては所詮は人間ではなく「喋る機械」に過ぎないわけですから、これはこれで良いと思います。
翠星のガルガンティアのチェインバーの声を「セリフ棒読み」とかいって叩くようなものではないでしょうか?
キノとエルメスにいても「そういうキャラなんだ」と割り切れば大しては気にならないと思います。

補足その3 「コロシアム」と「優しい国」の解釈について
{netabare}これは単なる考えすぎかもしれませんが、コロシアムでキノがやや怒りを示していたのは自分を騙した貴婦人や腐敗した王や国民ではなく、
つい自分の主義を曲げて復讐をした自分に対する怒りかもしれません。その証拠にシズに対して「復讐なんてバカバカしいですよね」と言ってます。

優しい国で、大人たちが子供たちを道連れにした事を「エゴだ」と怒ったあとに幼女のサクラが自分に「将来、幸せな結婚が出来るという大きな種」を
「私には必要ないものであなたに贈ります」という書き置きと共に渡していた事に気づき、怒りをおさめたように思います(悲しみの念は残ったでしょうが)
おそらくはサクラは大人の話しを立ち聞きするなどして、国が滅ぶ事を知っていて自分の意志で国と運命と運命を共にする事を決意したのでしょう。
{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 24
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

主人公キノ役・前田愛(注・声優じゃない方を指す)についてアレコレ推測してみる

原作ライトノベルは20巻まで購読中(注・但し『学園キノ』は2巻途中で挫折w)

主役に“ちゃんとした声優”ではなく子役・タレントの前田愛さんを起用。
ぼやけた棒読みが賛否を呼んできた配役です。

私も演技については下手……と言うより、
そもそも演技させるつもりがなかったのでは?と捉えています。
感想としては好き嫌い以前に、
受け手の予断を許さない『キノの旅』らしいキャスティングだったなと思っています。


原作者・時雨沢恵一氏による『キノの旅』、特に初期の構成、文体等には、
読者を敢えて不安にさせることで、固定観念が通用しないぞ?と警戒させ、常識外のシナリオも覚悟させる。
その上で平時では理解しがたい価値観、許容しがたい言動を受け止めさせる。
そんな仕掛け、遊び心、危険性が満載。

その性向は主人公の旅人・キノと相棒の喋るモトラド・エルメスについても顕著。
例えば本作でもアニメ化された第三巻・第四話「機械人形の話」の序盤の一部を引用してみると……


 {netabare} そこにいたのは、若い人間だった。十代の半ばほど。短い黒髪に、大きな目と精悍な顔を持つ。
黒いジャケットを着て、腰を太いベルトで締めていた。
右腿にはハンド・パースエイダー(注・パースエイダーは銃器。この場合は拳銃)
のホルスターがあって、大口径のリヴォルバーが入っていた。腰の後ろにもう一挺、自動式もつけていた。
 人間のすぐそばには、旅荷物を積んだモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)が止まっていた。
「今日は」
 人間が挨拶をして、
「はい今日は。旅人さんですね?」
 老婆が笑顔で返した。
「そうです。ボクはキノ。こちらは相棒のエルメス」
 キノと名のった旅人が、モトラドを紹介する。エルメスと呼ばれたモトラドが、どうも、と短く挨拶した。そして聞く。{/netabare}


少し長くなりましたがw
原作はこのような初巻・第一話冒頭だけで済ませておけばいいような紹介文が、
次の話でも、二巻でも三巻でも表現を少しずつ変えながら毎回のように続くのです。
要するに読者は毎度、この話の主役も本当にいつものキノ&エルメスなのか?
とまず疑心暗鬼になるわけです。

キノの造形についても、精悍な若者であるらしいことは分りますが、
年齢については上記の十代半ばのこともあれば、それより若いこともあり、言及がないこともあります。

と言うより、そもそも、原作も本アニメ化作品も、
ショートエピソードが時系列順に並んでいるわけではありませんし、
シャッフルされたと思われる時系列が説明されるわけでもありません。
物語を読み込んでいくことで、キノの装備、設定等から類推することはできますが断定はできません。

性別もなかなか明示されません。
実は私は原作読み始めた当時、{netabare} 最初キノを多くのラノベ主人公と同様に男の子だと決めつけていましたw
話数を重ねていって、どうやら女の子であるらしいと分ってくる感じでした。{/netabare}

こんな表現どーせ常識が通用しない世界観に引きずり込むための作者によるトラップ。
名前を出し惜しみしているが、結局、主人公はいつものキノだろう……。
そう高をくくっていたら、原作では別キャラがメインの回もあったり、
或いは{netabare}「大人の国」みたいに本当に“違うキノ”が出てきたりするから油断できません。
因みにエルメスは空を飛ばないモトラドですが、本作には空を飛ぶ戦車が登場します。
蛇足に思われる括弧書き注釈説明にもちゃんと役割があるのです。{/netabare}


こうして喋るモトラドという違和感だけじゃなく、
受け手に主人公ですら、あなたの思っている人間とは限らないぞ?と想像を逞しくさせた上で、
異国、異文化のありのままを感受させていく。
「世界は美しくなんかない。そしてそれ故に、美しい」という作品を象徴する一見、意味不明な言葉も、
上記のような洗礼を受けた後なら、何となく理解し、共有できてしまう。

そこに『キノの旅』の醍醐味があるのだと私は思います。


だから私は原作読む時も、アニメ版を見る時も、
話の冒頭、登場したキノは、自分が知っているいつものキノなのか?
まず常識を捨てて、世界をありのままを受け止める覚悟で物語に入っていきます。

その上で改めてキノ役・前田愛さんという判断について考えてみると、
敢えて掴み所のないボーイッシュな地声を、ほぼそのまま当てることで、
疑念から『キノの旅』の世界に入る手助けをする。らしい配役だったなと思うのです。

キノを単純に物静かなガンファイター系のアニメキャラとするならば、
“ちゃんとした声優”にちゃんとした演技をさせるのが最適です。
静かめな声を得意とする演者、
例えば電撃文庫版権物でキノ役をやっている久川綾さんでも良かったと思います。

ただアニメ声優はキャラクターに強烈な色を付けます。
卓越した声の表現力で、一声聴いただけで判別できるレベルで、性別だけでなく年齢すらも演じ分け、
キノをキャラ立ちさせ、記号化し、受け手に作品への安心感を与えることでしょう。
それは普通のアニメなら喜ばしいことです。

でも『キノの旅』にて一声でキャラクタ-を確定されると、
性別、年齢不詳のキノをまず疑うことから始める、常識の遺棄と、世界への没入という、
私なりの『キノの旅』満喫法が通用しなくなってしまいます。


一方で、近年の層が厚くなったアニメ声優業界ならば、
一般的なアニメのキャラクター作りとは違う、
キノ役に挑戦できる人材もいるのでは?との期待もあって、
続編アニメ化の際は是非“ちゃんとした声優”をとの願望もありました。

そういう意味で今秋からの『キノの旅』再アニメ化にて、
キノ役に悠木碧さんを起用した件は、
この旧作が奇しくも悠木さんにとって、子役・八武崎碧として声優デビュー作となった縁も含めて、
またアニメ声優の活動領域を広めるという観点からも、誠に興味深いチャレンジだと思います。

悠木さんと言えば、私にとっては感情が振り切れた時の熱演が好印象な声優さん。
原作も近年、エピソード主役を張る登場人物が増え、キャラアニメとしての素質も有していく中、
悠木さんもアニメ声優ならではの個性的なキノをぶつけてくるのか?
或いは旧作出演者としてキノを掴ませない、らしい仕掛けを声で構築し投げつけてくるのか?

私がPVにて声を聴いた限りでは、この秋は後者の意味で、いい旅になりそうです♪

投稿 : 2024/06/01
♥ : 30

74.1 5 社会風刺でファンタジーなアニメランキング5位
デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章(アニメ映画)

2024年3月22日
★★★★☆ 4.0 (28)
108人が棚に入れました
東京で女子高生ライフを送る小山門出と中川凰蘭。学校や受験勉強に追われつつも毎晩オンラインゲームで盛り上がる2人が暮らす街の上空には、3年前の8月31日から、突如現れた巨大な宇宙船「母艦」が浮かんでいた。異様な光景は日常に溶け込み、当たり前となっていたが、ある夜、東京で悲劇が起こる。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

クソやばい地球人の青春に遭遇した宇宙人には同情を禁じ得ません

3年前“8.31の悲劇”以来、宇宙からの“侵略者”の巨大<母艦>に覆われる東京。
その下でハイテンション女子高生ライフを送る主人公少女らの日常と、
<母艦>という非日常が混ざり合う中で、やがで開示されていく真相と共に、日常と世界の破滅が示唆される同名コミック(未読)の劇場アニメ化作品の前半部。


【物語 4.5点】
作風は青春の一頁が世界の一大事とシンクロするセカイ系の再生産。
2014~2022年連載作ということで東日本大震災後、コロナ禍の世相も取り込んだ人間&世界模様が描かれる。


大抵のセカイ系でイタいのは主に思春期主人公の周辺になりますが、
本作の場合は災害、事故での犠牲者ニュースをも、スマホゲーのイベントと並行してコンテンツとして高速消費して、飽きたらもうオワコンだと使い捨てていく情報過多社会の病理。
マスコミを不信する余り、ネット上の陰謀論界隈に沼る母親。
個体ごとの正義を絶対化し、SNS上でマウントを取り合うまででも十分イタいのに、武器を持って傷つけ合うまでエスカレートする人類の異様。
など、東京及び日本、地球全体がイタくて終わってる感が、痛いトコロをマシンガンのように撃ち抜く台詞回しによって醸し出されています。

大体、宇宙からの“侵略者”として<母艦>に防衛利権の匂いをプンプンさせながら、大仰なレーザー兵器で攻撃を仕掛けているわけですが、
彼らの目的が侵略かどうかなどは真剣に議論されることはなく。
そもそも実は{netabare} “侵略者”が直接手を下した犠牲者はゼロなのでは?とすら思います。
8.31の被害は<母艦>を<A爆弾>により攻撃した米軍によるものですし、
作中での犠牲者も小型&中型船への“防衛行動”の巻き添えを食ったものなのではないでしょうか。{/netabare}
リスクをあると決め付けた人間社会のおぞましさ、滑稽さの炙り出しも上々です。


人間視点のSFとして挑むと、全体に日常がとっ散らかった感、
後半、主人公少女2人の青春が事の発端と結びついた回想という、世界がひっくり返るシナリオ転換などに振り回される危険性もあります。

が、私の場合は冒頭から、これは地球人を観察する宇宙人の視座で俯瞰した方が折り合えると割り切って観たので何とか付いて行けました。

特に産業革命以後、200年程度という宇宙から見れば瞬きする間に、
文明を急発達させ、爆発的に増殖し、地球を壊す勢いで戦争や大量虐殺(ジェノサイド)を繰り返して来た人類。
この原爆を持ってしまった猿の如きキモい地球人。
果たして心の成熟は伴っているのだろうか?
ちょっと“イソベやん”の“内緒道具”を渡して裁定してみよう。

前章終わった段階で世界は一層波乱含みですが、
後章に向けて、命綱となるテーマは提示されていると思うので、
手応えを感じながら後半戦に挑みたいです。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・ Production +h(プラスエイチ)

個人的に、初代『ガンダム』、今敏監督の方の『パーフェクトブルー』など、
人間の顔ってちゃんと観察すると美形一辺倒ではなく、
時に昆虫の如く気持ち悪くもある。
そこを再現できている人物デザインに対しては点数を盛る傾向にありますが、本作も同様。
私は特に、おむすび顔に円な瞳のメガネ娘・出元亜衣のデザインが好きです。

<母艦>周辺に揺らめくレタリング?が、
ゴシック体で打ち出される作中テロップの生成、解体過程でも垣間見えるのも意味深。

観察者視点に一歩引かせる地球人デザインと、テロップのレタリングが、
私を冒頭から宇宙人視点に誘導した主因。


細部の背景美術にも社会風刺などを含んだ表現が散りばめられ情報量は多め。
私の脳裏に焼き付いているのは、8.31以降は数える程しか出ていない“侵略者”への防衛行動での民間犠牲者。
それをトップニュースで大騒ぎする傍らで映し出される交番の看板。
<母艦>関連を遥かに凌ぐ数の交通事故死傷者数。
この辺りも騒ぐと決めたニュースばかり取り上げるメディアと、
反発して陰謀論に囚われるネット民という両極端を想起させられジワジワ来ます。


総じて巨大<母艦>の大技だけではない、地球人のイタい所を表現する小技も効いた刺激的な作画です。


【キャラ 4.5点】
主人公の眼鏡っ子・小山門出(かどで)
ロングツインテールの中川凰蘭(おうらん)こと“おんたん”
メイン2人に、恋愛リア充を目指す栗原キホ、出元亜衣、
無口な長身黒髪ロング・平間凛。
JK5人グループが頭のネジが外れた掛け合いを繰り広げて、
<母艦>の非日常に対峙する日常世界を構築。

例えば門出は担任教師の渡良瀬を慕っていますが、
この教師と生徒2人の会話も、ちゃんとした型に収まり切らない人間と青春を示唆していて不謹慎で面白い。

あとは、おんたんのイケメンメタボな兄で“ネット監視員”(ニート)のひろしが挑む、
SNS空間に広がる“情弱”どもの“総意”とか。

全体に、情報社会に監視されることを前提として、
火を点けられないように社会が強いた役割を仕方なく演じてやってる倦怠感が滲み出ており、
これもまた地球人のオワッてる感を濃厚にします。


【声優 4.0点】
主演・小山門出役にはYOASOBIのボーカルとしても活躍する幾田 りらさん。
相方の中川凰蘭役には、あのさん。
メイン2人にアーティストをオーディション選出して周りをアニメ声優で固める布陣。

“ナチュラル”なボイス素材を求めてのアーティストの主演起用。
確かにおふた方とも、地声が高音スウィートなアニメ声で天然素材としては上質。
ですが、私はやはり自然体を求めるにしても、演技力を磨き上げた声優にナチュラルな演技をさせるのがベストと考えるので、この点数が上限。

ただアーティスト2人でと決めた以上は、
下手に声優の枠にはめずに、2人の表現者としての感性に任せるという判断は、素材を活かす上ではベターな選択。
掛け合いシーンでは同じ歌手ならではの波長が合い、
仲良く喧嘩する良いリズムが生まれていたそうで。
声優陣も交えたJK5人組のバカ騒ぎの空気感もスムーズに出ており心地良かったです。

原作者いわく、アフレコ時は、主演おふた方とも作品世界に入るための準備はしてくれていたとあって、
宣伝目的で起用した俳優・タレントを“お客様”扱いする劇場アニメ作品よりは良好な仕上がりだったと感じました。


EDクレジットの最後には、
門出が愛読する作中漫画でシナリオにも深く関わる黒い『ドラえもん』?wこと「イソベやん」にて、
イソベやんに“内緒道具”をせびる自堕落女子・デベ子を演じたTARAKOさんへの追悼コメントが表記。
『ちびまる子ちゃん』のさくらももこ役など、だらけた演技も天下一品の楽しいお方でした。
ご冥福をお祈り致します。


【音楽 4.5点】
情報過多な東京の日常社会に溢れる生活音、
そこを切り裂く<母艦>絡みの非日常の異音、放たれるレーザー兵器の発射音など、
立体的に表現された音響は、本作劇場鑑賞の一番の意義と言っても過言じゃありません。

主題歌は主演アーティストのお二人が担当。

前章はano feat. 幾田りら「絶絶絶絶対聖域」
作編曲を凛として時雨のTKが担当。

曲調はテンション高めの無邪気な作風ですが、
歌詞世界は“地球オワタ”“地球が壊れたよ”などとシッカリ病んでいるので油断は禁物ですw

投稿 : 2024/06/01
♥ : 19

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

衝撃作です。青春と正義と災害を描いた壮大な日常系本格SF。追記 2回目見ました。

 インデペンデンスデイ、ニーアアンダー7、ヒドゥン、デスノート、マイケルサンデル、ゴジラ、時をかける少女、311、機動戦艦ナデシコ、タコピーの原罪、ドラえもん…の要素が入った日常系です。
 他にもあるでしょうが、要するに要素が多いです。それぞれの視点で分解する難易度は高くないです。

 いや、すごかったですね。上映時間120分らしいですが、体感時間は80分くらいかな。情報量は180分くらいのが圧縮されている感じです。ジェットコースターの様でいてのんびり女子だけ(ではないですが)青春ものでもあります。

 浅野いにお氏の作品は「うみべの女の子」が好きで何度も読んでいますが、それ以外はどうも性が合わず本作も1話を試し読みかにかをして切っていたと思います。ただ、本作を見てやはりマインドは一緒かな…と。読んでみたくなりました。結末は違うと公言されているみたいですし。

 大人になる意味、現実社会に生きる思春期の精神の中身といえばいいのでしょうか。進路、恋愛、性、親、天才と凡人、いじめ、正義、友人…そういうものが襲い掛かってくる小学校から高校時代の生きづらさをSF的表現で見せたような感じです。

 災害のオマージュとして、日常と非日常のシームレス感あるいは断絶感が同時に存在するような作品ではありますが、一方でこの思春期に襲ってくる精神的なクライシスのオマージュとも見えます。

 テーマは結末を見ないと何とも言えませんが、ストーリーとしての結末は分かりませんけど、思春期の落としどころになるのかなあ、という気はします。

 特筆すべきは映像がすごい…というと語弊がありますかね。2次元アニメ的なアニメ表現ですが明らかに3DCGですよね。見やすいのなんの。エフェクトだよりでなく、戦闘シーン頼りでもないです。それでいて構図はいいんです。

 脚本も詰め込んだなかに映像表現で上手く補完しているので、結構頭を使わなくても話の筋は素直に読めます。伏線とか考察とかそういうのを無理にする必要がない分かりやすさです。考察系とエンタメ系の要素のいいところが上手く組み合わさっています。演出も面白さと迫力と緊迫感と上手く表現できていたと思います。

 むしろ頭を使うのは別のところですね。頭がクラクラします。SFと書きましたけど表題がデーモンなので…まあ、それは後半ですね。

 稀にみる名作になる可能性を秘めています。後半次第ですけど。私は絶対に行きます。
 で、映画で一儲けした後でいいので、120分×2で240分です。つまり20分×12で1クール行けますよね?広く世間に公開してはどうでしょう?

 私平日に見ましたが、サービスデイなのに2人しかいませんでした。この作品が埋もれるのはもったいないです。



追記 無理無理時間作って前章も見てきました。

 後章がもう始まっていますが、なんとか上映館を見つけ無理無理見てきました。やはり面白いのは前章、感動・深さは後章という印象です。

 前→後→後→前という順番で見ました。

 で、2回目を見て気が付きました。この作品は「これからどうなるの?」がとても素晴らしい構成にまとめられています。ですので、面白さで言えば1回目が圧倒的に面白かったです。

 ただ、後章をみてから前章を見ると、ああ、そういうことか…とか、微妙な伏線に気が付いたり、意味が重層的になったり見方が変わったりという深堀りができるようになります。

 まこととふたばがなんで田舎から出てきたの?とか東京という意味が分かってくると味方が変わります。
 あるいは、前章の小学生の門出の正義と、後章のシップと小比類巻の正義の対比の構造とか面白いですね。
 イソベやんはもちろん「トモダチ」ですが「未来」「正義」「便利道具」などなどいろんな意味を後→前で見ると感じました。

 で、あとはアメリカで12巻まで含めたであろう、配信版が始まったらしいですね。コミックスで確認しているので、マストではないですが、見たいものです。

 あと、EDのANOさんという声優の人の曲の入りは本当に良かったです。(いやもちろんANOさんという人の名前と顔くらいは知ってますけどね。歌手だったんですね)

投稿 : 2024/06/01
♥ : 10

takato さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

後章前夜に一挙轟音上映をやるだってぇ〜!!??。(お金は何処からも貰っておりません)

 まだ前編なので評価は確定できませんが、評判通りの次が楽しみな意欲作です!。


 原作は読んでないし、浅野さんの作品は弟が中2期に「プンプン」にはまっていたのを横目で見ていたくらいであんまり縁がなかったですが、本作は「地球外少年少女」を制作した新鋭のProduction +hが手掛け、脚本はお馴染み吉田玲子さんと私の興味を引く要素が揃い、信頼がおける方々の評価も高いので見に行っちゃいました(監督さんの前作が評判悪いから二の足を踏んでたのですが)。



 第一声としては、やはり「セカイ系」はこういうダークな破滅へ向かう話のがイイネ!ということに尽きます。新海さんの「君の名は」以降の作品や「シンエヴァ」も、独りよがりなくらいにセカイ=自分であるが故に現実の世界や他者に対する恐怖だったり不安だったりがダイレクトに出ていた、歪だからこその魅力だったのに作家性を捻じ曲げて無難な大衆性に着地しちゃった感が物足りなかった。


 しかし、本作はちょっと直接的過ぎなくらいだけど、社会というトンネルのカナリアとも言える作家が3.11後やコロナという不安を感知して描いた作品として非常に社会性が高い。だから立派で価値がある!なんて言いませんが凡百の作品より遥かに興味深く、かなり風呂敷も謎も広がっているのでどう収拾するのか?或いはケンイシカワの如くぶっ壊して終わるのか?。とにかく続きへのヒキが素晴らしい。


 アニメーション全般としては、浅野さんのとは少し違うかもだが背景とキャラが非常に上手く調和していて、主張し過ぎないが実に良い「雰囲気の魔術」を産み出せてるし、タレント声優ともいえる主役の二人も非常にはまっている!。デブ過ぎるがイケメンな諏訪部さんのお兄ちゃんも良かった。ただ、声優といえばまさか本作がTARAKOさんの遺作とは知らず驚きました。イソベヤン、漫画の中だと杉田さんなんだから劇中でも杉田さんの方が良かったのになぁ…ってもあります。


 まぁ、後半で力を得たあの子がああなっちゃうのはちょっと展開に無理ないか?とか、親が毒親なのもなんか作為的な毒親感で少々不満もあった。これからはわかりやすい明白な毒親より、全然悪人じゃなくて一般的には良い親なくらいなんだけど根本的に大切なことに対して無力だったり思考停止してたりするリアルな駄目親の方が描かれて欲しい。


 繰り返しになっちゃいますが、結局まだ前編なので評価は保留な感じですが、とにかくこの物語やキャラがどんな結末に行き着くのか見たくてたまらなくさせてくる作品ではあることは間違いないでのオススメです!。子供時代のオンたんだけで個人的には良し!。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 11
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