当サイトはアリフィエイト広告を利用しています

「リズと青い鳥(アニメ映画)」

総合得点
85.8
感想・評価
548
棚に入れた
2286
ランキング
215
★★★★★ 4.1 (548)
物語
4.0
作画
4.3
声優
4.0
音楽
4.2
キャラ
4.1

U-NEXTとは?(31日間無料トライアル)

レビューを絞り込む
☆の総合評価
文字数
サンキュー数
視聴状況
表示形式
キーワード
この条件で絞り込む

リズと青い鳥の感想・評価はどうでしたか?

ネタバレ

Tnguc さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

【お気に入り】 もしもスマイルがヒーローになった世界で

~
 TV版では雑多な共学高だったはずなのに、今作では男子生徒が取り除かれている。汗臭さや甘酸っぱさが排除された学園は、まるで密やかな百合の花園。閑静な美術館を思わせる校舎の窓の外には緑豊かな木漏れ日が映り込み、初夏の涼しさすら感じさせる爽やかな空間がどこまでも続く。鳥のさえずりと優しい環境音楽で包まれた世界は、まるで、主人公・みぞれの無垢を落とし込んだ真っ白なキャンパスのよう。そこで、みぞれの唯一の友達・希美(のぞみ)に対する「恋」が描かれる。ただし、一口で同性愛と言っても、この作品は単なる甘ったるい百合アニメではない。「恋」という字は「変」に似ているだなんてよく言われる常套句だけど、まさにみぞれの「恋」は、クラスメートからしてみれば「変」だった。それは、希美への甘やかな愛情ではなく、もはや全幅の依存だったから。希美を失いたくないとしがみつくみぞれの姿は、まるでカルガモの雛鳥。そんな希美への執着心は、一人ぼっちだった頃に戻りたくないという気持ちの裏返しなのかも知れない。みぞれも、心の奥底では「変わりたい」と願っていたはず。でも、自分ではどこに進めばいいのか分からない不安から、希美の後ろをついていくことしかできなかった。しかし、月日が流れ、仲間たちと交流を深めていく中で、みぞれは成長し、心の中を占領していた希美への想いが「変」だったことに気付いていく。希美もまた、いつの間にかみぞれが羽ばたけるようになっていることを知り、そこから巣立ちを示唆させるような感情が、あの楽譜のメッセージによって発露する一連の流れは残酷でありながらも美しい。そんな希美に励まされ、ある種の解放を得たみぞれのオーボエは、オオルリのように美しくさえずる青い鳥。その羽でどこまでも飛翔するみぞれの姿を、地上から見上げることしかできない希美がなんとも情感的。これから二人は、進む道も、高度も、大人になっていく過程の中でその距離は更に離れていくだろう。どんどん「普通」になっていくみぞれの姿を、寂しいと思うのは視聴者の身勝手なのかも知れない。でも、あのころ、一途に希美を追い求めていたみぞれの気持ち、誰しもが重ね合える経験があるはず。みぞれも、これからそういう初々しい経験を積んで大人になっていく。雛鳥のようだったみぞれは、たしかに愛おしく見えた。でも、実際はチグハグな人間関係だったことに気づかされたのはあのラストシーンだった。いつもは希美の後ろを歩いていたみぞれが、希美と肩を並べて、屈託なく笑っている。あの瞬間、二人は初めて本物の友達になれたような気がした。どこにでもありそうで、どこにもない、素晴らしい着目点。時を経ても色褪せることのない、エバーグリーンな青春劇だった。

個人的評価:★★★★☆(4.0点)

投稿 : 2022/05/31
閲覧 : 365
サンキュー:

20

ネタバレ

merolin08 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

こんな名作があったのね

 書きたいこと選定せずに書きまくってたらとてつもない量になりました。多分全部読んでくれる方はいないと思いますが、熱量だけでも置いとかして下さい(笑)。

 テレビアニメ「響け!ユーフォニアム」シリーズのスピンオフで、主人公の先輩2人の関係を描いた本作。テレビシリーズは見てたんですが、映画はなんとなく観てなくて、今になってなんとなく観たんですが、これは…!テレビシリーズ観返してから誓いのフィナーレと合わせて観たんですが、映画としての完成度は、個人的にはこちらが圧倒的だと感じました。時系列的には「リズと青い鳥」→「誓いのフィナーレ」の様ですが、もし今から観る方がいればぜひ反対の順番で観ることをオススメしたいです。おそらく分からないところも出ないし、その方が「リズと青い鳥」を堪能できそうな気がします。

 作画・音楽は言うまでもないんで割愛します。これにケチ付ける人いないでしょ。作画演出については思うところ有りなので、物語と合わせて触れていきたいと思います。

 本作は、鎧塚みぞれと傘木希美のお互いに対する「思い」がテーマになっている作品です。テレビシリーズのある種スポコン的な、「チーム」の物語とは打って変わって、個人の思いにフォーカスしており、そのギャップに少し驚きました。これに伴ってまず気になるのが色使い。テレビシリーズと比較すると全体的に淡い色使いになっているように思いましたが、これもテーマに紐づいた表現だと感じました。例えば、アニメ1期で演奏から外されて号泣して悔しがる久美子のシーン、とっても心揺さぶられるシーンですが、だれもがこの時の久美子みたいに自分の気持ちとまっすぐに向き合えるわけじゃない。自分自身でも自分の気持ちが分からなかったり、自分の気持ちに折り合いをつけて無理やり自分を納得させていたりする。そんな「思い」の繊細さを表現するような画面づくりだったんじゃないかと勝手に想像しております。

 この作品、色使いみたいな大きなところからはじまり、あらゆる場面で思いを描写するような「演出」が詰め込まれてます。これにめちゃくちゃ感動したので、ここからは気になった演出について話していきたいと思います。

 まず冒頭の{netabare}2人が音楽室まで学校の中を歩いていくシーン。上履きに履き替え(ここの演出は後で改めて)、下駄箱に手をついて歩いていく希美と、同じ場所に手をついて後をついていくみぞれ。冷水器で水を飲む希美、後に続くみぞれ。みぞれが後をついてくるのは当然であると振り向くこともなく堂々と前を進む希美と、その後をちょこちょことついていきそれが自分の世界だと思っているみぞれ。普通友達同士が歩くときって横に並んで歩くものですが、この2人を対比させるような演出が、すこし噛み合っていないけど互いに強く信頼しあっているという、{/netabare}2人の関係性を表す様なシーンだと感じました。これが物語の中核となっていきます。

 次に2人のパートごとの練習シーンについて。{netabare}2人の思いをテーマとしたこの作品では、「練習」は本筋とは少し離れるためか、そもそも描写自体が殆どありません。それでも練習しているシーンがあるみぞれに対して、パート練の時間であろうシーンでの希美は、そのすべてでパートのメンバーとおしゃべりをしています。1年生の時、先輩がまじめに練習しないからという理由で部をやめた希美の過去を考えると、これも何か意図があるように思えます。個人的には、これも希美のみぞれに対する思いに関係する演出であるように感じました。
 みぞれの持っていたパンフレットを見て自分もその音大を受験することを決める希美ですが、劇中で希美自身が語っているように、これにはみぞれに対抗するような思いがありました。希美は自分が音大に行きたいのか、みぞれと対等でありたいのか自分の気持ちが分からずに悩むわけですが、この練習シーンは、希美の音楽に対する思いとみぞれに対する思いの回答を裏付ける様な位置付けだったのではないかと思います。{/netabare}

 ここからは物語の中核、結局「リズと青い鳥、みぞれと希美はどちらがどちらなのか」に関する演出について。複数の演出が互いに関係しているので、ごちゃついた文章になると思いますが、ご容赦ください。

 前述した{netabare}上履きを履き替えるシーンで、上履きを放るように落として履き替える希美と、丁寧にそろえて置いてから履き替えるみぞれ。これも二人の性格を対比するシーンですが、加えて絵本の世界のリズが就寝するシーンを見てみると、リズはベットに入る前にきちんとスリッパをそろえなおして就寝しています。この2人を重ねるような演出を考えると、みぞれが青い鳥を手放すことが出来ないリズであるかのように思えます。{/netabare}
 次に2人の会話を見ていきます。{netabare}2人の会話シーンでは、みぞれが何か言いかけて(やりかけて)それを待たずに希美が話を進める、という場面がたくさんあります。アニメでよくある演出なだけに視聴中特に何も感じずに流しちゃってましたが、観終わって考えると単純にみぞれの性格を記号的に表現しているだけではないように思えます。結論から言うと、これは希美がみぞれを拒絶するような演出だったのではないかと考えました。もっと言うと、希美はみぞれの変化を怖がっていたのではないかと思います。
 これに関係してくるのが、オーボエの1年生「剣崎梨々花」。内気で心を開こうとしないみぞれに根気強く話しかけ、徐々に関係が芽生えていきます。これがみぞれに小さな変化を生むきっかけとなりますが、希美はこれを少し動揺した様子で見ていたように思います。プールに誘うシーンとか。
 みぞれの自分に対する愛情ともいえる思いは、雛鳥が初めてみたものを母親と認識するような、ある種刷り込みともいえる部分があり、変化したみぞれは自分への愛情をなくしてしまうのではないか。希美は、変化を始めたみぞれに対し直感的にそんな感覚を覚え、踏み込もうとするみぞれを拒絶したのではないでしょうか。そう考えると、青い鳥を手放すことが出来ないリズは、希美のようにも思えます。
 これに関しては最序盤(変化前)でも希美がみぞれを避けるようなシーンがあるので、みぞれの変化が要因じゃない気もしますが、いろんな受け取り方がありな映画だと思うのでこんなんも。{/netabare}

 そして終盤、みぞれと新山先生がソロの演奏について話すシーン、{netabare}ここまでずっと青い鳥を手放すリズの気持ちに悩んできたみぞれは、青い鳥の感情に目を向けることで「思い」に大きな変化が。ここでずっと2人が自分と重ねていたリズと青い鳥の対応関係が逆転します。そしてクライマックスのみぞれが希美に思いをぶつけるシーンへと繋がっていくわけですが、ここでも繊細な演出があったように思います。
 希美のすべてが「好き」と思いをぶつけるみぞれに対し、希美も「みぞれのオーボエが好き」と返す。複雑な思いの中でも、お互いがお互いを思っていることを口に出し、2人の歯車がかみ合ったようなシーンですが、みぞれは「希美」が好きと言っているのに対して、希美はみぞれの「オーボエ」が好きと言っています。これが、青い鳥の羽(みぞれのオーボエ)を思い手放す決心をするリズ(希美)と、リズ(希美)を心から思っているがために羽ばたく決心をする青い鳥(みぞれ)の関係になっているところに鳥肌が立ちました。{/netabare}

 これら演出を踏まえて、結局どちらがリズでどちらが青い鳥なのか。{netabare}物語上は、リズ=みぞれ・青い鳥=希美の関係で進行していき、それが逆転した、という一定の回答が出ているわけですが、個人的には最終的に明確に結論付けるということは出来ないのかなと思いました。ぬるい意見になっちゃってるかもですが、互いに強く思いあっている関係の中では、どちらも相手を縛り付けてしまうことがある。オーボエはみぞれの羽だったけど、最初から思っていたように別の側面でみぞれが希美を鳥籠に閉じ込めてしまうことだってある。{/netabare}そんなただただリズと青い鳥という絵本に対応しているだけではないところが、この作品の味わい深いところだと思います。

 このアニメの結末は{netabare}リズと青い鳥の絵本通り「別れ」です。これだけ聞くと、冷たい現実的な結論のように思えます。{/netabare}しかし、前述したとおり、ただ「絵本に対応して2人の関係が変化しましたー」じゃないからいい。劇中での希美のセリフ{netabare}「物語はハッピーエンドがいいよ。青い鳥はリズに会いたくなったらまた会いにくればいい。」{/netabare}これめちゃ好きです。このセリフを踏まえると、ラストシーンで{netabare}希美が振り向き2人が向かい合うシーン。冒頭のシーンからも分かる互いにすれ違っていた2人の関係が変化したことを表すシーンですが、みぞれは驚いた表情をしています。このシーンは、関係の変化、つまり別れを意味するシーンでもあるわけなので、本来ならみぞれの表情は絵本で青い鳥が飛び立つシーンの表情と一致するべきところのはずです。なのにみぞれは驚いている。これは希美が「ここからは私たちの物語だ、物語はハッピーエンドがいいよ。」と語りかけていることを表していて、現実的な結論の中にも未来への希望を含んだ、絵本とは違う明確なハッピーエンドとして物語が締めくくられているのだと思いました。{/netabare}

 ここまで狂ったように書き綴ってきましたが、こんな感じで本当に何気ない仕草まで「思い」が伴った演出になっていて、この作り込みにめちゃめちゃ引き込まれました。テレビシリーズとは違った、もう一つの青春。観直すたびに発見がありそうな映画です。
 正直テレビアニメしっかり観てないと分からない部分が多々あると思うので、単発映画としては人に勧めづらいところもありますが、本当にいろんな人に観られるべき作品だと感じました。人によっていろんな受け取り方がある作品だと思うので、今から皆さんのレビュー徘徊するのが楽しみです。万が一ここまで読んでくださった方がいれば、拙い長文で相当読みづらかったと思います。自己満足にお付き合いいただき、ありがとうございました!

投稿 : 2022/04/30
閲覧 : 351
サンキュー:

14

ゆうきち さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

見れば見るほど切ない

みぞれとのぞみ,アニメ2期で仲良くなったんかなと思っていたけど,この二人はどれだけ仲良くしようとしても結ばれない運命なのか, いくら仲良くしようとしても心の奥の嫉妬はお互い消えないんだろうな

投稿 : 2022/03/17
閲覧 : 194
サンキュー:

7

タマランチ会長 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

実写映画よりも美しい実写映画的表現!

 冒頭から画面に釘付けになりました。早朝、校門前でのぞみを待つみぞれ、その視点がのぞみの脚やうなじ、揺れる髷にあることが分かります。これ、実写でやったらかなりエロくなってしまうところですが、アニメだからこそ健康的で美しく、また詩的に映ります。実写映画のような画面作りでしたが、その美しさはそれを超えています。階段を1段跳ばしで快活に昇るのぞみの後を一段ずつゆっくり登って付いていくみぞれ。こういったシーンを積み重ねる演出が、2人の関係性を暗示していてとても心地よく、「画面から目を離したくない」と思わせてくれました。パソコンをいじらずに最後まで集中して観られた作品は久しぶりです。
 リズと青い鳥の物語は従来のアニメっぽい演出で、現実世界との差を引き立てていました。2人の関係がリズと青い鳥の逆だと分かってからのしっくり感がとても気持ちよかったです。脚は口ほどにものをいうという演出も納得でした。
 いや、いいものを観ました。傑作です。納得の傑作。

投稿 : 2022/03/12
閲覧 : 245
サンキュー:

21

ASKA さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

響けユーフォニアムのみぞれ主人公のスピンオフ作品。のぞみとの友情物語。

響けユーフォニアムのみぞれを主人公にしたスピンオフ作品。本編のメインキャラの鎧塚みぞれと傘木希美との友情物語。コンクールで吹奏楽部が演奏することになるリズと青い鳥という曲でそれぞれフルートとオーボエを担当するみぞれと希美。その中で絵本のリズと青い鳥のシーンも挿入されながらみぞれ、希美それぞれを描写していきます。

投稿 : 2022/03/06
閲覧 : 297
サンキュー:

28

ネタバレ

けい さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

見てない人ホントに損してる

京アニの本気を見せてもらった。
ホントに今まで見ていなかったことを後悔している。
種崎敦美さん演じる鎧塚みぞれ先輩に感情移入が出来て最高だった。
オーボエとフルートの掛け合いの部分は、情景描写も交えており、なんでもないのに泣いてしまった。
この為にガチもんの吹奏楽の曲をつくったことに、驚きを隠せないし、なんというか、もう語彙力が足りない。
京アニの作品のなかで一番好きになりました。

投稿 : 2022/02/27
閲覧 : 168
サンキュー:

6

〇ojima さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

京都アニメーションが日本映画を作りました。

観終わって思ったのは「京都アニメーションが日本映画を作った。」
と感じました。
アニメの良さは撮影では不可能な設定を差し込める点と伝えたいシーンやパーツを強調できるところだと思っております。
本作品はそこを上手に使って、アニメーション会社しかつくれない良い映画ができたと思います。

あらすじは
二人は性格の違う女子高生。一人は憧れを抱いて接しています。もう一人はその相手がいることがあたり前のように接しています。だけれど、コンクール自由曲「リズと青い鳥」を二人がパート代表で演奏するに当たり、作品の物語を理解することで自分の今の心を理解してゆくお話です。

京アニ、本当は響けユーフォニアムの続編を作ったつもりはないと思いましたが、続編の誓いのフィナーレを観ると本編につながるスピンオフです。
単体で十分に良質な映画作品ですが、順番に観たほうが良いですね。

本流続編作品はユーフォ誓いのフィナーレで2019春公開の作品です。こちらは黄前ちゃんメインでいつもの賑やかさです!

投稿 : 2022/02/04
閲覧 : 782
サンキュー:

90

ネタバレ

キャポックちゃん さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

優しく繊細に描かれた人生のアイロニー

(末尾に【追記】を加えました)

【総合評価:☆☆☆☆☆】
 高校の吹奏楽部で、それぞれオーボエとフルートを担当するみぞれと希美。ふたりは(一見)とても仲が良い。しかし、コンクールで演奏する自由曲「リズと青い鳥」での掛け合いが、どうもしっくりしない。その原因はどこにあるのか…?
 アニメ『リズと青い鳥』は、青春期の戸惑いや心の揺らぎを、優しく繊細に描き出す。声高な主張はない。わずかな仕草や言い淀んだ沈黙を通じて少しずつ明かされる真実は、切なくやるせなく、人生は見かけ通りではないというアイロニーを感じさせる。

【みぞれと希美】
 みぞれはひどく内向的で他者とのかかわりを避け、めったに感情を表さない。一方の希美は外向的でいつも取り巻きに囲まれ、感情豊かに会話する。表面だけ見ると、人付き合いが苦手で立場の弱いみぞれが、希美に庇護されているようでもある。しかし、制作した京都アニメーションのアニメーターたちは、そんな単純な関係でないことを画面にきちんと描き込んでいる。
 作品冒頭、みぞれと希美が校門から部室へと向かうシーン。石段の上で青い羽根を見つけた希美は、太陽にかざして「わっ何これ。めっちゃ青い。きれい!」と声を上げ、「あげるよ」とみぞれに差し出す。みぞれは、ぼおっとした表情のまま「ありがと」と微かに語尾を上げて受け取り、「なんで疑問形?」と突っ込まれる。二人の関係性が凝縮され、見ているだけで切なくなる名シーンである。
 そのまま先に立ってずんずんと進み、軽くターンしてから一段飛ばしで階段を上る希美は、常にどう見られているかを意識し自分を演出する。一方、希美の行為をなぞりながら数メートル後ろを付いて行くみぞれの姿は、外界との距離感を確認しつつ慎重に立ち位置を見定めているようだ。希美にとってのみぞれは、自分の演技を見つめる観客の一人。みぞれにとっての希美は、外界とのつながり方を示す唯一の指標で、それ故に強い思慕の対象でもある。相手への思いに、「親友未満」と「親友以上」という格差がある。
 もっとも、みぞれが頼りないのは外面だけ。{netabare}そのことを示すのが、中盤でみぞれが独りオーボエを練習する場面から始まる(私好みの)シークエンス。オーボエ担当の後輩が「ダブルリードの会(吹奏楽部に4人しかいないダブルリード楽器担当者の茶話会)」に誘っても、「わたしが行っても楽しくないから」とすげない返事。確かに、みぞれが希美のように「朝ご飯に何を食べるか」といったテーマで会話を弾ませる姿は、想像もつかない。ところが、同じ後輩がリードを自作するみぞれに「あたしにもできますかね~」と擦り寄ると、すぐに「今度教える」と答えて、後輩を感激のあまり泣かせる(後輩が何か言うのだが、涙声で聞き取れない…)。
 みぞれは、社会のさまざまな側面に対して適切に対応する柔軟性を欠き、そのせいでいかにも頼りない。しかし、自分には何ができるかをはっきり自覚しており、役割を果たせるとわかれば能動的に行動する。
 これに対して、希美は多くの後輩に慕われ楽しげに振る舞うものの、明確な上下関係が生み出す雰囲気を好んでいるだけで、その言動はあまり主体性を感じさせない。みぞれとの付き合いも、そうした上下関係の一つと捉えているようだ。みぞれをプールに連れて行こうとしたとき、「ほかの子も誘っていい?」と予想外の返答をされ、心底驚いた表情を隠せなかった(映像では、人が前を横切った瞬間に取り繕う)。他の同期生とは対等な会話を避けており、みぞれとの件で部長に責められたときには、まともに返答できない。{/netabare}精神の内奥においては、みぞれの方が希美よりも遙かに勁(つよ)い。
 {netabare}希美の弱さが表に現れるのは、木管楽器の指導者がみぞれだけに音大のパンフレットを渡したと知ってから。音大進学を表明したものの強い決意があったわけではなく、周囲にふと「あたしさぁ、本当に音大行きたいのかな」と問わず語りに口にする。主役のつもりで演じていたのに、スポットライトが傍らを通り過ぎただけと気が付いた---そんな役者を思わせる情けなさそうな表情で。何度見ても、私はこのシーンで泣いてしまう。泣かせるシーンではないのに。{/netabare}

【人生のアイロニー】
 物語が進むにつれて、みぞれと希美の間のひずみはしだいに大きくなる。一見、とても仲が良さそうなのに、相手に対する思いのベクトルは微妙にすれ違う。社交的な希美が孤立したみぞれを庇護しているようで、精神の強靱さも気遣ってくれる友人の数も、希美よりみぞれの方がずっと上である。こうした外見と内実の乖離が前提となって、クライマックスの演奏シーンが強烈なエモーションを生み出す。
 この作品は、人生のアイロニーを強く感じさせる。アイロニーとは、表面的な意味と隠された内実が相反することを表す用語で、主に物語芸術に関して、登場人物の認識と現実の状況が食い違う場合に使われる。例えば、ギリシャ悲劇『オイディプス王』では、己を正義だと信じるオイディプスが前王殺害の真相を追究するうちに、真犯人が誰で自分は誰と結婚したのかという恐るべき事実を突きつけられる。まさに悲劇的アイロニーの極北である。『リズと青い鳥』も、これに似たアイロニカルな状況を描いた作品である。ただし、ギリシャ悲劇のように深刻なカタストロフはない。現実の人生でごくふつうに起こり得る、ささやかなアイロニーである。そんな事態を前にして、人は寂しそうに笑うしかない。

 ところで、この物語の後、みぞれと希美はどうなるのだろうか?{netabare}アニメのラストはハッピーエンドと呼んで良いものだが、二人の性格と置かれた状況を考えると、幸せな状態がいつまでも続くとは思えない。みぞれが「ハッピー・アイスクリーム!」と声を上げたときも、希美はそれがゲームだと気づかない。親友同士のように振る舞いながら、互いに相手のことをよく理解していない状況は、大して変わっていないのである。想像するに、それぞれ別の大学に進学して疎遠になり、その後の人生ラインが交わることは、もはやないだろう。もっとも、それは必ずしも悲しむべきことではない。人生の一時期に、生涯の宝となる貴重な体験をしたという事実は揺るがないのだから。{/netabare}

【アニメにおける人間描写】
 『リズと青い鳥』は、みぞれと希美の内面を深くえぐった心理劇である。アニメは、小説や演劇に比べて心理描写に向かないメディアだと見なす人もいるが、そんなことはない。むしろ、言語による抽象的な観念に束縛される小説や、生身の俳優が持ち込む身体性を排除できない演劇に比べて、純粋に心理だけを描き出せるメディアである。
 アニメの強みは、個人が創作する小説などと異なり、人間が持つさまざまな側面を、各分野の専門的なクリエーターが磨き上げられる点にある。私は、プルーストやヴァージニア・ウルフの心理描写が好きだが、それでもこんなアニメを見せつけられると、言語表現の限界にいやでも気づかされる。クライマックスの演奏後にみぞれと希美が行う対話を使って説明しよう。
 台詞は、言語に対して鋭い感性を持つ脚本家が彫琢する。{netabare}希美は、妙に冷めた見方でこれまでの経緯を振り返り、「違う」「希美」と言葉を挟むみぞれを無視して話を続けるが、途中でみぞれが強い語調で「聞いて!」と遮り、思いの丈を語り始める。「希美の笑い声が好き、希美の話し方が好き、希美の足音が好き、希美の髪が好き、希美の…希美の全部」。希美がそれに応えるように「みぞれのオーボエが好き」。{/netabare}
 声優は、台本だけではわからないニュアンスを言葉に付け加える。過去を振り返る際の、冷静さを装いながら端々に心のざわめきが現れる希美の口調。一方のみぞれは、口数が少なく自分の内面を説明しないが、かすれそうでかすれない口吻は、意外と粘り強い性格を感じさせる。
 劇伴となる音楽も、心理描写に欠かせない。対話シーンでは、当初、バックで音楽が鳴っていることにほとんど気づけないほどかすかな音の連なりが続くが、少しずつ明瞭になり、ほんのわずかな期間、明るく心躍るメロディを奏でたかと思うと、次の瞬間にはスッと消える。まるで、いつも揺らいでいる少女の心のように。
 何よりも素晴らしいのが、表情や仕草に魂を込めた作画。それまで意図的にこしらえた微笑ばかり見せていた希美なのに、ここでは視線が定まらない。一方のみぞれは、まっすぐに希美を見つめる。{netabare}「大好きのハグ」をするときの、二人の手の位置、体の傾げ方、そして、感極まったようなみぞれとどこか曖昧な表情を浮かべる希美の対比。そのすべてが、二人の心の内を照らし出す。{/netabare}
 『リズと青い鳥』は、静謐なアニメだ。長広舌よりも途切れた言葉、目的を持った行動よりもちょっとした仕草の表現が素晴らしい。例えば、希美にもらった青い羽根を、みぞれが両手で包み込んで口元に寄せるシーンのような。シャープペンの持ち方、髪のいじり方、地面を蹴るときの足の動き---そんな些細な描写にも、アニメーターの思いが籠もる。
 アニメとは、間違いなく、日常の奥深さを描けるメディアである。

【監督・山田尚子】
 当然のことながら、アニメの人間描写が優れたものになるには、スタッフの意思が統一されていなければならない。そのために重要なのは、中心的なリーダーの存在である。アニメの場合、通常は監督がリーダーとなり、スタッフと綿密な打ち合わせをすることで、作品世界を明確に設定し、人物像に一貫性を与える。こうしたリーダーの役割は、制作現場の状況を伝える断片的な報告に示される(例えば、イアン・コンドリー著「細田守、絵コンテ、アニメの魂」では細田守、『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX』DVDの特典映像では神山健治、第6回文化庁メディア芸術祭における『クレヨンしんちゃん アッパレ!戦国大合戦』上映前のトークショーでは原恵一が、それぞれスタッフとどんな議論をして作品世界を作り上げたかが紹介された)。
 『リズと青い鳥』がどのような状況で制作されたかはわからないが、監督・山田尚子のインタビュー(『リズと青い鳥』公式サイト liz-bluebird.com に掲載)を読んだ限りでは、テレビアニメの制作を通じてスタッフが原作に馴染んでおり、作品の方向性が自然と一致したようだ。インタビューから引用すると、「「少女たちの溜め息」のようなそっとした、ほんのささやかなものを逃すことなく描きたい」とのこと。
 山田尚子は、監督に抜擢されたテレビアニメ『けいおん!』(2009)で人気作家の座を獲得した。この作品はギャグ中心の4コマ漫画をアニメ化したものだが、アニメでは、話数が進むにつれて、ギャグが薄まる一方で物語の流れが滑らかさを増しており、監督の技量がストーリー重視の方向に成長したことを伺わせる。『けいおん!』の第2期と劇場版、テレビアニメ『たまこまーけっと』とその劇場版も評判を呼んだ。ただし、私の見る限り、話を淀みなくまとめるのはうまいものの、心理描写はそれほど深くない。クリエーターと言うよりは職人に近いという印象だった。
 (私の個人的な)評価が変わるのは、劇場用アニメ『映画 聲の形』(2016)から。聴覚障害者を主人公に人間のつながりを描いたものだが、イメージショットを多用し、流れよりも観客に何かを考えさせることを重んじる。アニメ作家として一皮剥けた感があった。
 続く作品が『リズと青い鳥』で、これまでのところ山田の最高傑作である(一般的な評価とは少し違うが)。『けいおん!』以来、多くの作品で協力関係にあった名脚本家・吉田玲子と、トップクラスの職能集団である京アニ・アニメーター陣の力が大きいとはいえ、山田が着実に成長を続けていることを示す。今後の動向に注目したい。

【『響け! ユーフォニアム』との関係】
 ここで、本作とテレビアニメ『響け! ユーフォニアム』の関係についてコメントしておこう。一言で言えば、まったく別の作品である。
 京アニは、武田綾乃のライトノベル『響け! ユーフォニアム』シリーズを継続的にアニメ化しており、2015年と16年にテレビアニメ第1、2期が放送(いずれも放送翌年に総集編が劇場版として公開)された。これらは高校吹奏楽部の人間模様を描く群像劇で、まじめに作られたウェルメイドな作品である(ただし、私好みではなく退屈した)。さらに、2017年のトークイベントで、石原立也監督による「2年生になった久美子(シリーズの実質的主役)たちの物語」(2019年公開)と、山田尚子監督によるの「みぞれと希美の物語」(2018年公開の本作)という完全新作映画2本の制作が発表された。この2本は、いずれも、トークイベントのすぐ後に刊行されたシリーズ第4長編『北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』を原作とする。
 京アニは、決して大きな会社ではない。同じ原作の(したがってファンがかぶる)劇場用アニメを並行して2本制作するというのは、かなり無謀な企画である。なぜそんな決定をしたのか、私のような部外者は憶測に頼るしかない。おそらく、2016年に、興行収入250億円という超特大ヒットアニメ『君の名は。』が出たほか、興収50億以上のアニメが3本、京アニ制作の娯楽性の乏しいアニメ『映画 聲の形』も興収23億(興収額は日本映画製作者連盟発表のデータによる)に上ったことから、経営陣が劇場用アニメ制作に前のめりになったのだろう。
 原作小説『波乱の第二楽章』は前後編2分冊で、1本の映画にするには少し長すぎるため、2本に分割したと考えられる。ただし、前後編に分けるのではない。1本は、テレビアニメで登場人物の成長を描いてきた石原立也が担当し、久美子らが2年に進級してからコンクールに出場するまでを経時的に描いた。不思議なのは、もう1本が、かなり地味なみぞれと希美のエピソードを取り上げた作品になったことである。
 山田尚子は、『聲の形』に先立つ『映画けいおん!』でも、それまでの京アニ記録だった『涼宮ハルヒの消失』の2倍以上となる興収19億円を達成しており、京アニ最大のヒットメーカーである。経営陣が彼女に大いなる期待を寄せ、その希望を最大限に受け入れたことは想像に難くない。こうして、山田が原作にとらわれず、自分の思うままに作ったのが『リズと青い鳥』なのである。
 近所の図書館にあった原作の一部を読んでみたところ、控えめに言って、本アニメとはかなり趣が異なる(…って言うか、「全然ちゃうやん」というレベル)。原作の北宇治高校は男女共学なのに、アニメでは男子生徒の姿が見えず、完全に“女の園”になっている。目を凝らすと、全体練習の際にちらほら男子が映っているのだが、後方でぼかされた姿に。廊下や下駄箱周りにもモブのように現れるものの、巧みに別の箇所へと視線誘導される。おそらく、本アニメだけを見た人の大部分が、女子校の話と思ったはずだ。敢えて「男子はいない」と錯覚させるような演出がなされている。
 原作には、部員たちの(擬似)恋愛の描写が過剰気味に現れるが、これもほとんどが省略された。それほど、みぞれと希美の関係に集中したかったのだろう。まるで、アンリ・ヴェルヌイユやエリック・ロメールら名匠の手になるフランス映画のように、二人の心理をじっくり描き出す。
 石原立也が監督した『響け! ユーフォニアム』は、原作にかなり忠実なようだが、『リズと青い鳥』は、登場人物が共通するだけで、作品全体の方向性が全く異なる別作品だと思った方が良い。それぞれのキャラも、かなり大きく変更された。部長の優子は、頭の大きなリボンがいかにも不釣り合いな、真面目で他人思いのリーダーとして描かれる。
 ただし、山田には原作から離れているという意識がなかったらしい。公式サイトに掲載された山田のインタビューでは、「原作の持つ、透明な、作り物ではない空気感を映像にしてみたいと思いました」「原作から受けたこの二人の物語の印象をそのままフィルムに落とし込んでみたいというのがまずありました」とある。原作に没入するうちに、行間を深読みしイメージが勝手に膨らんでいったのだろう。脚本の吉田玲子とも見解の相違はなかったようで、「あまり窮屈に打ち合わせるような感じではなかった」と語っている。
 本人に「原作とは違うものを」という気負いがなく、思うがままに作ったため、壊れやすい少女の内面を丹念に描いた、アニメ史上に残る傑作が誕生したと言える。もっとも、山田の感性は『ユーフォ』ファンと少しずれがあったようで、興行的には惨敗に終わった。

【おまけ---オーボエという楽器】
 本アニメでフィーチャーされるオーボエは、2枚のリードを向かい合わせに固定し、その間に息を吹き込むことで音を出す楽器。高音成分が多く震えるような切ない音色が特徴で、それに心惹かれる人も多い。ただし、本格的な演奏をしたければ毎回リードを自作せねばならず、やたらに手間がかかるのに、フルートのような華麗さに欠ける。希美がフルート、みぞれがオーボエを担当するのは、それぞれのキャラに見事にマッチする。
 オーボエの名曲と言えば、モーツァルトやリヒャルト・シュトラウスの作品が有名だが、私は、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハのオーボエ・ソナタ ト短調が好きだ。派手さはないが心に沁みる曲で、みぞれのテーマとして使えそう。

【も一つおまけ】
 作中でアニメ内アニメとして描かれるのが、コンクール曲のベースにもなった童話「リズと青い鳥」。大写しになった本の表紙に「ヴェロスラフ・ヒチル著」と明記されていたので、実在する童話かとおもって検索したが見つからない。ネットの情報によると、映画監督のヴェラ・ヒティロヴァをもじって、武本康弘(京アニ所属の監督で放火事件で亡くなった)が考案した名前らしい。ヒティロヴァには『ひなぎく』というぶっとんだ快作があり、私は30年ほど前、これ見たさに唯一の上映館がある吉祥寺まで遠征した。武本監督とは、そんな趣味も一致していたのか---ちょっと涙。

【追記】
 上のレビューを執筆した時点では、原作となる『北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 前編/後編』のうち、近所の図書館にあった前編しか読んでいなかったが、その後、別の図書館から後編を借りて読むことができた(文庫本くらい買えって言わないで!金欠なんだから)。
 アニメが小説と趣を異にすることは前編と同じだったが、それが心理描写の深化にとどまらず、原作における客観的記述ともかなり食い違っていることに、少々驚いた。出来事の時系列や希美を諫める人物を変更したほか、みぞれと久美子の会話や、みぞれがオーボエソロで名演を示した後の指導者の対応など、ストーリーの上でかなり重要な部分をバッサリ切り捨てている。その一方で、原作では触れられない童話「リズと青い鳥」の細かな内容を、本編とは異なる技法を用いた映像によってたっぷりと見せる。ここまでくると、山田尚子がかなり確信犯的に原作を変更したのではないかと思えてくる。おそらく、原作(前後編)のプロローグ部分に記された希美とみぞれの関係に心打たれ、その部分をどこまでも拡大してアニメ化したのだろう。
 そう考えると、本作が『響け! ユーフォニアム』シリーズの一編として制作発表されながら、公開時にそのことを示す副題がなかった理由も見えてくる。京アニの経営陣は、完成間近になって、原作や(原作に忠実な)テレビアニメとかなり異なると知って驚いたのではないか。「響け! ユーフォニアム」と冠すると、これまでの路線を大きく逸脱したことに対して、ファンの批判が高まりかねない。そこで、独立した作品としても楽しめるという言い訳をしながら、スピンオフ作品として扱わない方針を固めたと推測される。結果的には、それが大爆死と言える興業成績につながったようだが。

投稿 : 2022/01/26
閲覧 : 382
サンキュー:

7

ぴかちゅう さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

すれ違う二人を見事に描き出した作品

「響け!ユーフォニアム」のスピン・オフ作品です。未視聴でも見れるかな、とは思うものの、2期を見ておいたほうが、感動は大きいと思います。映画アニメはあんまり見ないのですが、TVアニメがとても好きだったので、こちらも視聴しました。
吹奏楽部が舞台ですが、TVアニメと比べると、みぞれとのぞみの友情関係がメインで、音楽・部活アニメという感じではないです。

中学までと違って、高校生や大学生になると、進路とか恋愛とか、なかなか単純にはいかなくなって、仲良かった二人が、何かのきっかけや、あるいはきっかけなんてなくても、すれちがったりすることってやっぱりあると思うんです。このアニメは、そんな風にすれ違う二人の女子高生を描いた作品です。

アニメーションはTVアニメとはかなり違い、最初は戸惑いましたが、これはこれできれい。全体的に満足度の高い作品でした。「響け!ユーフォニアム」ファンの方はもちろん、未視聴の方にもおすすめです。

投稿 : 2022/01/12
閲覧 : 172
サンキュー:

15

めあみやまや さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

すごく考えさせられる

実は本編の響け!ユーフォニアムの2年生編と辻褄があっており、本編を見てからでも楽しめます。
この作品は、鎧塚みぞれと傘木希美にスポットライトをあてていて、自由曲の「リズと青い鳥」のストーリーとみぞれと希美の関係を重ねています。
作画に音楽、そして演出はとても素晴らしく流石は京アニと思いました。キャラの表情、風の音、足音まで拘っており、みぞれと希美の心理描写を細かく描いています。
この作品の一番すごいと思うところは見る度に2人の関係性に対しての考え方が変わるというところです。
本編を視聴している方は必須レベル、見ていない方も話についていくことができるのでオススメです!
アニメの見る順番としては
響け!ユーフォニアム(1期)
    ↓
響けユーフォニアム(2期)
    ↓
リズと青い鳥
    ↓
響け!ユーフォニアム(誓いのフィナーレ)

の順で視聴することをオススメします!

投稿 : 2022/01/10
閲覧 : 135
サンキュー:

6

ネタバレ

ひろたん さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

コツコツコツコツ・・・。揃わない足音、ばらばらの気持ち。

実は、この作品は、以前に観たことがあります。
しかも、当時は「響け!ユーフォニアム」と言う作品自体を全く知りませんでした。
普通は、TVシリーズを知ったうえで観る方がほとんどではないでしょうか?
いかに自分がタイトルとキービジュアルだけでジャケ買い視聴していたかですね。
でも、この作品に関しては、それで正解だったんです。
内容は、タイトル通りで、絵本の物語を現実に投影したようなものでした。
そして、キービジュアルで感じた通り、美しい映像の作品でもありました。
つまり、本編を知らなくても1本の映画として十分楽しめる作品だったのです。
ファンにしか分からない、ファン向けの劇場版とは違って、かなり好印象でした。

今回、「響け!」本編を観たので、あらためて観ることにしました。


物語の最初は、みぞれと希美(のぞみ)が連れ立って音楽室に向かっています。
途中、みぞれは、中学の時に希美と歩いていたときのことを回想します。
そして、みぞれは、音楽室の扉の鍵を開けるところで躊躇します。
それを見た希美は一瞬何か思うところがあったようですが気にせず待っています。
このシーン、これからこの二人に起こることを予感していて好きなんですよね。
音楽室に入ったらなにかあるのでしょうか?
回想の中の二人のような今まで通りの関係でいられなくなるのでしょうか?
そして、音楽室の扉は開かれ「disjoint」の文字が・・・。なるほど!
ちなみに、みぞれが扉を開けるのを躊躇した理由は、他にもあるように思えました。

この作品は、こう言うところが上手いと思います。
ただ二人が連れ立って音楽室の扉を開けて中に入るだけです。
でも、ちょっとしたしぐさや表情から、二人の間の気持ちのすれ違いが分かります。


「リズと青い鳥」は、物語の最初に説明シーンがあります。
{netabare}
 ずっと独りぼっちだったリズのところに、ある日、知らない少女がやってくる。
 二人はすごく仲良くなって、一緒に暮らし始めるけど、最後には別れる。
 その少女とは、実は青い鳥で、リズのもとから飛び立っていってしまう。
{/netabare}
中学のときまで友達がおらず、ずっと独りぼっちだったみぞれ。
そこへやってきて吹奏楽部に誘ったのが希美。
この物語では、リズにみぞれを、少女に希美を重ね合わせます。

みぞれにとって、希美は、かけがえのない大切で大好きな人です。
そして、みぞれは、自分は鳥カゴ、希美は青い鳥だと思っています。
それは、鳥カゴの扉を閉めて、大好きな希美をずっと閉じ込めておきたいからです。
みぞれが最初に扉を開けることを躊躇したのは、これを暗示していたんですね。

しかし、実はこれが最後にどんでん返しだったところが、この物語の面白さでした。


終盤で二人がそれぞれ別の廊下を歩き、反対の方向に曲がるシーンが印象的です。
序盤で二人が一緒に歩いているけど微妙にずれていた足音のシーンと対照的でした。
二人がやっと自分を取り戻し、それぞれの道を歩みだしたことを象徴しています。
とても好きなシーンですし、つくづく物語の構成が上手いなと思わされます。

最後は、なんとも言えない爽やかさを感じることができます。
それは二人の間にある澱(おり)が綺麗に洗い流されたことを感じられるからです。
学校帰りの二人の足音は、みごとに揃っていました。
私はこの爽やかさがとても好きです。


「リズと青い鳥」では、最後、青い鳥が飛び去って行きます。
私は、過ぎ去る青春のイメージもそこに重ね合わせました。
この物語では、せっかく仲良くなった友達でも、いずれ進路は別々になる。
当たり前のことですが、そこには、青春の終わりを感じさせる儚さがあります。

この作品は、正直、派手さはありません。
しかし、とても味わい深い作品だったと言うのが私の印象です。
この後、「誓いのフィナーレ」の演奏をもう一度観たことは言うまでもありません。

投稿 : 2022/01/10
閲覧 : 263
サンキュー:

39

うにゃ@ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

京アニらしい耽美な百合

京アニらしい耽美な百合アニメになっている。
女子校にしか見えない男子学生の少ない画面。話はとてもまとまっており、緩やかな時間の使い方の中にしっかり納まっていて、流石劇場版な作品。
ユーフォを知らなくても見れる作品でユーフォ1,2の1年後、黄前ちゃんの1学年上の外交的な傘木希美と内向的な鎧塚みぞれがコンクールの自由曲『リズと青い鳥』の物語を二人の関係性に重ね合わせ、それぞれの進路や二人に関係のなかで成長していく話。

100点中80点

投稿 : 2021/12/12
閲覧 : 205
サンキュー:

3

ネタバレ

にゃん^^ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

レズと青い春

公式のINTRODUCTION
{netabare}
少女の儚く、そして強く輝く、美しい一瞬を――。 高校生の青春を描いた武田綾乃の小説『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』がアニメーション映画化。みぞれと希美、2人の少女の儚く美しい一瞬を切り取ります。制作は、映画『聲の形』で第40回日本アカデミー賞優秀アニメーション賞、東京アニメアワードフェスティバル2017アニメオブザイヤー作品賞劇場映画部門グランプリなどを受賞した京都アニメーション。そして、監督・山田尚子、脚本・吉田玲子、キャラクターデザイン・西屋太志、音楽・牛尾憲輔ら、映画『聲の形』のメインスタッフが集結。 繊細な人の心を映し出してきた制作陣による、 ――誰しも感じたことがある羨望と絶望。そしてそれらを包み込む、愛。 この春、あなたの心に「響く」一作をお届けします。
{/netabare}

スタッフ{netabare}
原作:武田綾乃(宝島社文庫刊『北宇治高校吹奏楽部、波乱の第2楽章』)
監督:山田尚子
脚本:吉田玲子
キャラクターデザイン:西屋太志
美術監督:篠原睦雄
色彩設計:石田奈央美
楽器設定:高橋博行
撮影監督:高尾一也
3D監督:梅津哲郎
音響監督:鶴岡陽太
音楽:牛尾憲輔
主題歌:Homecomings
音楽制作:ランティス
音楽制作協力:洗足学園音楽大学
吹奏楽監修:大和田雅洋
アニメーション制作:京都アニメーション
{/netabare}
キャスト{netabare}
キャスト(声の出演)
鎧塚みぞれ:種崎敦美
傘木希美:東山奈央
リズ/少女:本田望結
中川夏紀:藤村鼓乃美
吉川優子:山岡ゆり
剣崎梨々花:杉浦しおり
黄前久美子:黒沢ともよ
加藤葉月:朝井彩加
川島緑輝:豊田萌絵
高坂麗奈:安済知佳
新山聡美:桑島法子
橋本真博:中村悠一
滝昇:櫻井孝宏
{/netabare}



公式のあらすじ
{netabare}
———ひとりぼっちだった少女のもとに、青い鳥がやってくる———

鎧塚みぞれ 高校3年生 オーボエ担当。
傘木希美 高校3年生 フルート担当。

希美と過ごす毎日が幸せなみぞれと、一度退部をしたが再び戻ってきた希美。
中学時代、ひとりぼっちだったみぞれに希美が声を掛けたときから、みぞれにとって希美は世界そのものだった。
みぞれは、いつかまた希美が自分の前から消えてしまうのではないか、という不安を拭えずにいた。

そして、二人で出る最後のコンクール。
自由曲は「リズと青い鳥」。
童話をもとに作られたこの曲にはオーボエとフルートが掛け合うソロがあった。

「物語はハッピーエンドがいいよ」
屈託なくそう話す希美と、いつか別れがくることを恐れ続けるみぞれ。

———ずっとずっと、そばにいて———

童話の物語に自分たちを重ねながら、日々を過ごしていく二人。
みぞれがリズで、希美が青い鳥。
でも……。
どこか噛み合わない歯車は、噛み合う一瞬を求め、まわり続ける。
{/netabare}
感想
{netabare}
ボッチだったみぞれは吹奏楽部に入ってオーボエをはじめて
自分を部活にさそってくれたフルートの希美のことが好きだったんだけど

希美は1回、自分を置いて吹奏楽部を出てっちゃったから
帰ってきた希美を放したくない、って思ってて
その気もちが、課題曲の「リズと青い鳥」にも出てて

希美は希美で、才能があるみぞれにちょっとやきもちを焼いてたみたいで
2人のソロパートが合わなかったんだけど

今まで、おはなしを自分たちに重ねて
青い鳥は希美のことだ、って思ってた2人が
ほんとの青い鳥はみぞれだ、って気がついたら
自分たちの気持ちの整理がついた。。

ってゆうおはなしだったみたい。。



自分がさそった相手が自分よりうまくなって、焼きもち。。
でも、相手は自分のことが大好きで、ってゆうおはなしは
「ピアノの森」でもあったけど、音楽と青春で悩む

そんな、よくありそうなおはなしでも
セリフをけずって絵で見せる、京アニの力で
すごく気持ちが伝わってくるおはなしになってたって思う^^

「ピアノの森」は男子どうしで、こっちは女子どうし。。

でも、主人公が、さそってくれた子を思う気もちは
こっちの主人公のみぞれの気もちが、音楽より希美に向いてたから
感想のタイトルは「レズと青い春」にしたけど
女子どうしで抱き合ってたりして、たぶんまちがってないって思う^^


みぞれが希美を思う気もちはラブなんだけど
希美がみぞれのこと思う気もちは、うらやましい友だちで
ふつうの恋愛ものだと、告白されちゃったらOKかダメで終わるんだけど
うまくごまかして、ラブストーリーをスポ根にしちゃったみたいな。。

そんなごまかし方が上手で
どっちも傷つかなくって、いい終わり方だったと思う^^


公式のあらすじに「ひとりぼっちだった少女のもとに、青い鳥がやってくる」
って書いてあるけど

はじめは、ぼっちの少女がみぞれで、青い鳥が希美って、思わせて
「リズと青い鳥」とこのおはなしが分かってくると「?」ってなってきて
実はみぞれが青い鳥だ、って気がつくところは
見てるにゃんも、2人とおんなじ気もちになれて、すごいって思った^^


もしかして、童話のリズも
自由に空を飛べる青い鳥がうらやましかったのかも?

それが、自分にはマネできない、すごい能力だ、って分かってるから
そんな青い鳥を、自分の近くに置いとけなかったんじゃないかな?


ほんとは何にもみぞれに勝てない希美は、それを見ないフリして
自分がボスだって、自分にもまわりにも思わせてたけど、いろいろあって
見ないフリができなくなってリリースしようと思ったんだけど
それをみとめたら自分がこわれちゃいそうだから、逃げた。。

でも、そのことに気がついた、みぞれが
愛とやさしさで、希美を抱きしめたから
希美は、イヤなことを見る勇気が出たんだって思う。。

はじめは好きな相手に振り向いてもらえないみぞれがかわいそうだったけど
さいごは痛い自分を受け入れた、希美がかわいそうだった。。

これで、みぞれが希美のこと、そんなに好きじゃなかったら
希美はホントにかわいそうだったと思う。。



「響け!ユーフォニアム」のスピンオフだったけど
「ユーフォ」を見てなくっても分かる、いいおはなしだった^^

でも、おはなしがよかっただけじゃなくって
「ユーフォ」ではメインのキャラもたくさん出てきたから
「ユーフォ」の復習にもなってよかった♪


童話の「リズと青い鳥」も読んでみたくなるおはなしで
うまくシンクロしててよかったし
キャラも音楽も、もちろんよかったんだけど
リズ役の子が、棒読みだったのがちょっとザンネンだったみたい。。


{/netabare}

投稿 : 2021/09/15
閲覧 : 643
サンキュー:

77

たつや さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

心理描写と音の表現が繊細すぎる作品(褒めてます)

響け!ユーフォニアムシリーズの続編で、オーボエのみぞれとフルートの希美、この2人の少女の関係性の変化を、「リズと青い鳥」という物語を通して表現している作品。思ったより淡々と話は進んで行くし、結構重い話であったが、物語が進んでいき、「リズと青い鳥」と向き合う事で、自分の気持ちや相手への気持ちを理解していく様子がすごく良かった。見方によっては、百合映画と分類されるものなのかもしれないが、一切嫌みのない描き方で、女の子の繊細な心情を表現するのが上手だと感じた。作画面に関して、前作のシリーズ1期や2期とは少し違う、ポップ風な、ソフトタッチの作画に思えたが、違和感はなく、むしろこの映画の世界観によく合っている。というか本当に美しいなって感じ。京都アニメーションまじ最高。そしてこの映画で1番良いと感じたのは、音響面である。「吹奏楽」としての音楽はもちろん、学校内の様々な音の表現も素晴らしかったと思う。ドアを開ける音、廊下を歩くローファーのこつこつ、という音、誰かの話し声。そういった日常を感じさせる面での音もすごく良かった。

個人的にフルートが太陽の光に当たってみぞれ側の窓に反射するシーンと、最後のお互いが旅立って自立できたところが好きです。
美しいアニメーションと少し大人向けの丁寧な青春ドラマでした。最後に、ハッピーアイスクリーム!!

投稿 : 2021/09/12
閲覧 : 233
サンキュー:

14

みのるし さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

実写以上の表現力

ハナシは実はそうボクの旨をガシガシ鷲掴みにして離さないって感じではなく、まあたんたんと静かに進んでいきます。

ざっくりとですがボクが感じたこの話ってのは、同性に対するあこがれに近い愛情をもって接してる友達がいて、その思いを伝えるでもなく、だからと言って募らせるでもなく、このままがいつまでも続けばいいのに…って、そうやって昔から思ってたけれども、なんかいろいろあってああやっぱり違うんだなってことになんとなく気が付いて。そしていつか近い将来別れが来ちゃうんだな。。。それってさみしい?かなしい?…わからない。

・・・とゆうんじゃないかと…(滝汗)。


いやーだからこおゆううのん文字にしたらだめっすよねぇ。
とゆうですね、感じのお話なんで見どころは何かといえばずばり!


とにかく芝居。


キャラの芝居がすごい。ってことは演出がさらにすごいってことですよねぇ。
山田監督ってのはいったいなんなんですかねぇ。この人。
まだ結構若いのに素晴らしいセンスだ。

種崎さんも奈央ちゃんもそらあいいですよ!絵に負けてないし。
しかしまあこれはもうアニメーションを超えておりますです。

瞬きもできないほどの緻密な芝居に度肝を抜かれること必至です。


芸術的な作品に触れたいときにはこの作品をぜひ。

投稿 : 2021/08/24
閲覧 : 216
サンキュー:

19

ガバ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

ポップな描写、リアルな描写のメリハリ

 みぞれと希美、2人の少女の関係性の変化が主題でそれを繊細に描いている。
 この手の内面描写を多くしないといけない作品はのっぺりとした退屈な進行になってしまいがちである。(特に序中盤)しかし、本作ではそれを全く感じさせない。劇中に出てくる絵本の世界を描くときには淡いおとぎ話のような感じで、現実の世界を描くときには少しリアル調な感じで、メリハリがあって退屈しなかった。もちろん、こんなことは工夫のうちの一つにすぎず、私が気づかない細かい工夫がたくさんあったのだろう。
 そして、何よりも際立っていたのは、サブキャラクター、剣崎梨々花の可愛さである。
結局アニオタはキャラ萌えには抗えない。物語の中盤は「剣崎かわいい」で見ていた人も多いのではないだろうか。この物語の主題から一歩離れたところからあるゆえに、逆にポップにかわいく描くことができたと思う。(これがメインキャラクターであったなら、細かく内面描写をする必要が出てきて、そのポップさがなくなってしまうだろう)
 剣崎のポップなかわいさも印象に残った一方で、みぞれのリアルっぽい細かい仕種も印象に残った。彼女の伏し目がちに髪をいじる仕種は、見ている方をなにか、もどかしい(?)気持ちにさせ、そのもどかしさがキャラクターとしてのみぞれの魅力やリアリティにつながっている。

 以上、演出の妙やキャラの可愛さ、魅力で見ている人を退屈させない、かつ主題のほうもしっかりしているので大変よかった。(小並感)
 

投稿 : 2021/08/14
閲覧 : 183
サンキュー:

7

ネタバレ

ninin さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

ハッピーアイスクリーム

原作未読 1時間30分

響け! ユーフォニアムのスピンオフ作品、監督は「けいおん!」や「たまこまーけっと」、「聲の形」で監督をつとめていた山田尚子さんの監督作品。

AT-Xで放送されていたので観てみました。

オーボエ担当の鎧塚みぞれ、フルート担当の傘木 希美を主人公に北宇治高校吹奏楽部での高校生活最後のコンクールに挑む2人の関係を描く作品です。

山田監督の他の作品も観ましたが、キャラの仕草やカメラワークが巧みですね。

足元でキャラを表現したり、口元や目など部分的なところで表情を表現したりと山田監督らしい表現でした。
{netabare}
最後のシーンでみぞれさんの笑顔が描かれていたのが良かったです。
{/netabare}
2人の関係は「リズと青い鳥」のお話とリンクしていました。

最後はどちらがリズでどちらが青い鳥か分からなくなりました。2人ともリズであり青い鳥だったのかもしれませんね。

確かに本編観ていなくても大丈夫です。1本の作品となっていましたね。

主題歌はHomecomingsさんが歌っています。

最後に、この作品を観たら劇場版〜誓いのフィナーレ〜を観たくなりました。

投稿 : 2021/08/12
閲覧 : 398
サンキュー:

33

ネタバレ

tinzei さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 3.0 作画 : 4.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

本田望結、声優に向いてない

相変わらず空気の読めない希美と、表現下手のみぞれをメインに据えた話だけど
、これ『ユーフォニアム』知らない人でも楽しめるのかな?
綺麗なアニメーションだけを見るならともかく、ストーリーとキャラの心情を理解するには二年時の騒動を知ってないと厳しくない?


今作でキーになるリズと青い鳥の声を本田望結がやってるけど、演技云々以前に声がアニメ声優に向いてない。声そのものなのか喋り方なのか分からないけど、時々モゴッとした感じがあって、はっきり言って不快。こういう声の人は外国語なら流暢に話せるんだろうけど、日本語には向いてない。


それと、本筋には関係ないけど、プールシーンが省かれたのは残念だった。この作画での水着も観て観たかったんだけどなぁ(笑)

投稿 : 2021/08/08
閲覧 : 1008
サンキュー:

4

スプリット さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

ユーフォから独立していても成り立っている

響け!ユーフォニアムに登場する人物、鎧塚みぞれと傘木希美の二人が主人公の劇場版作品。

ユーフォでも二人の印象的なシーンはありましたが、色濃く描いている作品です。
羨望、嫉妬、絶望、愛情。様々な思いを抱えて生きている高校生活を色鮮やかに優しく描いたいい作品だなと思いました。
リズと青い鳥、まさに作品を表しています。
見るべき作品だと思います。

投稿 : 2021/05/29
閲覧 : 184
サンキュー:

9

ネタバレ

あーちゃん さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

はあ。もう名作。心に沁みすぎ。

のぞみ先輩復帰後の話。
みぞれ先輩とのぞみ先輩の関係をあがいている作品だけど、
結局二人は別々の道を歩むことにしたんだな。

やっと、対等な友達になれったって感じなのかな?

投稿 : 2021/05/08
閲覧 : 254
サンキュー:

11

ネタバレ

まつはや さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

問1.「鎧塚みぞれ」と「傘木希美」の気持ちを記述しなさい。(配点 50)

Amazonprimeで視聴。

本作は鎧塚みぞれと傘木希美、二人の関係性を描くことに終始しています。
大会へ向けて切磋琢磨するわけでも、大きな事件が起きるわけでもありません。ただひたすらに二人の心の変化を追うだけの作品です。
にも関わらず背景美術や声優の演技、様々な意味を示唆する演出が積み重なり心を動かされるという、稀有な作品なのです。

本作は視聴にあたり画面に提示された情報を噛み砕くという作業が必須となります。正直一度目は話の流れを追うので精一杯でした。
一つ一つの演出にこれはどう言う意味なのだ?!と思案する様は国語のテストを解いている感覚に通じるものがあります。

しかし全体的な話の流れを理解してから再度視聴すると、一度目では気付くことができなかった演出の妙や細かな部分を理解することができるのです。
個人的には二度目以降の視聴でで本作の評価が大幅に上がりました。噛めば噛むほど味が出るスルメのような作品なのです。

のぞみが出会った時のことを覚えてないと言った後に回想が流れ、嘘を付いていたのだと分かるシーンは個人的な白眉でした。のぞみはなぜ嘘をついたのでしょうか?様々な解釈があることと思いますが、リズであるのぞみは青い鳥であるみぞれが羽ばたけるよう自ら手を離したのだということは確かだと思いたい。
みぞれがのぞみに向ける気持ちに意識がいきがちですが、のぞみもみぞれに愛情を抱いていたということでしょう。

最後のぞみは図書室で、みぞれは音楽室で真逆の方向へ曲がり別々の進路を歩み始めます。
コンクールの結果は?二人は結局別々の大学に進むのか?その結末は描かれていません。
初見時は若干ぶつ切りに思えたラストですが、物語の結末が視聴者に委ねられるということはある意味救いでもあります。

もしかしたら、のぞみは結局音大を受けるかもしれない。みぞれに、みぞれのオーボエ、ではなくみぞれが好きだよと返すかもしれない。
そんなハッピーエンドを想像できる余白が残されているのです。
やはり物語はハッピーエンドがいいよなと、音大のキャンパスで並び歩く二人の姿を思い描きながら、エンドロールを眺めていたのでした。

投稿 : 2021/05/03
閲覧 : 189
サンキュー:

7

くろわっ3 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2
物語 : 3.0 作画 : 3.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

どっちに感情移入するかな

個人的に少し嫌なことがあって
今日は綺麗な世界の
きれいなおはなしに浸りたかったので、観た。


響け!シリーズを観たことが無いのだけど
大丈夫だった。
良き時間を過ごせたと思う。
やっぱり京アニの作品が好き。


映画としては、
静かなシーンと「間」が目立ち
描写上仕方がないのだが、さすがに眠たい印象。
特に序盤。


描こうとしたものは、
誰もが体験しそうな現実的な葛藤であり、
見た目ほど百合百合していなかったので(←ポイント)
普段映画鑑賞の途中で寝てしまう癖が無い人には
おすすめかもしれない。


観たみなさんは、どっちに感情移入するのだろう?
私は「みぞれ」でした。

投稿 : 2021/04/14
閲覧 : 247
サンキュー:

11

ネタバレ

コーヒー豆 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

仲良しの2人を観るとほっこりしますね。

原作未読、ユーフォニアム1期2期、誓いのフィナーレの後に視聴。

今回は
鎧塚みぞれ・オーボエ担当
傘木希美・フルート担当

この2人に主に焦点があたったお話。
童話のリズと青い鳥も映像化されていました。

スピンオフ作品ということだが、コンクールに向けての様子も観られるので
ユーフォ好きなら観て楽しめると思います。

みぞれの成長や気付きには嬉しさとともに切なさもありましたね。
そこが一番の自分の中では見どころでした。
終盤の
{netabare}
みぞれと希美がハグするシーンはキュンときましたね。
{/netabare}
評判通りの良作でした。

投稿 : 2021/03/16
閲覧 : 331
サンキュー:

32

ネタバレ

ストライク さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

スピンオフ

AT-Xで視聴

感想

あすか先輩達が卒業した後の、ユーフォ2の続きになります。

オーボエ担当の みぞれ 3年生
フルート担当の 希美 3年生
この二人の物語。

童話「リズと青い鳥」の物語に自分たちを重ねる二人。
リズがみぞれで、青い鳥が希美。
全国を目指し、部活を頑張れば頑張り程、次第に関係がギクシャク。

明るく誰とでも仲良くでき、後輩からも慕われる人柄
才能
嫉妬
不安
依存
それぞれ、二人の感情が読み取れてきます。

後半は、リズと青い鳥の関係性が逆なんだと気づき・・・

お互い本音をぶつけ合い、からの大好きのハグは心が和やかになりました。

二人の繊細な心情が描かれてて、観ていて引き込まれます。
正直、細かいとこまで全部読み取れていないと思うけど、最後は良かったなぁっと。
いいもの観れました。
良作ですね。

投稿 : 2021/03/15
閲覧 : 226
サンキュー:

35

ネタバレ

シボ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

羽ばたけ!青い鳥

物語序盤から、コツコツ歩く革靴の音や、服のこすれる音。
あの集音マイクで拾ったような音の世界。
そして足元の描写が多かったり、髪が揺れる後ろ姿。
目線が下向きだったりみぞれの体感している世界観なのかな~なんて
思って観てました。

希美だけを見つめているみぞれですけど、中学時代の頃と
同じように希美にはフルートパートの仲間達の中心に常にいて、
2人きりになれるの朝練のひと時が大事な時間。

序盤は青い羽根を受け取ったみぞれがひたすら希美を追い求めてって
展開で、ちょっと心苦しかったです。

フルートパートって吹奏楽部でも如何にも女子!ってイメージで
賑やかな感じですね。
(フルートの人すいません、花形パートだなって自分のイメージです)
きっとみぞれはその輪には全く興味ないし希美だけ振り向いてくれれば良いんでしょうね。

数少ないオーボエパートには、そんな輪をちょっと羨ましがってる
可愛い後輩がいます。

いつもつれない先輩を慕って頑張る剣崎ちゃんです。
独特の雰囲気で、お礼にゆで卵渡しちゃうような不思議ちゃんなとこも。

フルートパートの先輩と後輩の垣根なく話が弾んでいるのを
羨ましそうに見てる姿は可愛いですね~!

「のぞ先輩」や「つぼ先輩」に対しての「みぞ先輩」ってほのぼのします。
そんな一生懸命に先輩を慕い続ける剣崎ちゃんに
ずっとつれなかったみぞれも少しずつ心を開いていきます。
(この2人のネームってガードの固い鎧を剣で壊していって
 凍った心がみぞれのように溶けていくってイメージなのかな~?
 なんて思ってみたり・・)

オーディションに落ちちゃった~って涙する剣崎ちゃんを励ますために
希美から誘われたプールに剣崎ちゃんを一緒に連れて行ったり、
最初の頃から少しずつ距離が縮まっていく人数の少ない
オーボエパート組を応援したくなります。
(あっ 更に遠慮がちなファゴット2人組もいれてね)

「来年は頑張ります」って2人でオーボエを奏でるシーンは素敵でした。

リズと青い鳥でいう
自由奔放な青髪の少女(青い鳥)は希美で
いつか自分のもとを去ってしまわないかを心配するリズに
気持ちを寄せて考えるみぞれ。
自分がリズなら青い鳥をかごに閉じ込めておくと言い切る姿に
3年生になっても根っこは変わってないねって。

あっ3年生といえば、優子や夏紀のコンビも相変わらず良いですね~。
特に夏紀が色々な場面でナイスフォローする姿、素敵すぎです!

中盤からは
いつも背中からついてきた独りぼっちだったみぞれと
みぞれを常に導いてきた希美の関係が変わってきます。

新山先生から音大を進めれるほどの才能もあって、
後輩からも慕われるようになってきたみぞれに対して
音大を目指すと言いながらも才能の差を感じて嫉妬する希美。

2人の関係が明らかにぎこちなく微妙になっちゃいます。
ハグをしてって、手を広げたまま置いてけぼりになったシーンは
ちょっと切ないですね。

そんな上手くいかない先輩達に対して
麗奈と久美子の第3楽章のソロの掛け合いは、同じメロディーなのに
寂しげな感じがないの不思議です。
楽し気な2人の姿がなんか嬉しいシーンでした。

青い鳥を自ら手放すリズの気持ちがどうしても理解出来ないみぞれに
新山先生は、もしみぞれがリズではなく青い鳥だったらって問いかけます。

愛するが故に寂しいけど自由に羽ばたいて欲しいリズの気持ち。
リズを愛するが故に断ることが出来ずに羽ばたくしかない青い鳥。

そして二人はようやく気づきます。
みぞれがリズで希美が青い鳥とずっと思ってた・・

「でもいまは・・・・」

 二人が同時に声を上げる演出!こっちもゾワっときたよ~~。

自分が青い鳥の少女であることを知ったみぞれの
第3楽章でのオーボエは凄かったですね。
青い鳥の飛び立つ挿絵じゃないけど力強くてどこまでものびやかに
響いて素敵でした。

そしてフルートは希美のUPで抜かれるせいもあるんだろうけど
やっぱりなんか悲しげに聞こえるから不思議です。
掛け合うパートのところはちょっと切なくて涙浮かびました。

合奏後に目を腫らした希美はみぞれに本音をぶつけます。
みぞれも本当の気持ちを伝えての大好き!のハグ。

正直、繊細すぎて彼女達の気持ちをたぶんちゃんとは理解出来てない
のが本音ではありますけど、
西日が差し込む中、抱き合う姿はただ美しかったな。

後半は
お互いの気持ちをぶつけ合って、どこか吹っ切れた爽快感ありました。

進路を決めた2人の朝のシーン
音楽室へ向かうのぞみと図書室に向かう希美。
2人にそれぞれの道へ踏み出すのを、歩みだす足先が
反対へ向くことでわかります。
その歩みはもう迷いがなくて、足音が心地よく聞こえます。

そしてみぞれの楽譜には、青い鳥に はばたけ!のメッセージ。 
(楽譜の手書きメッセージは前にもあったけど泣けますね~。)

お互いの進む道を認め合ったうえでの素直な気持ちがタイミングよく
口をついて出た瞬間
 「ハッピーアイスクリームっ!」

みぞれのこういうところって可愛いし、あのコンクール発表後でも
見せてくれたニッコリで締めてくれました!

微妙に変化していく気持ちをとっても繊細に描いた素敵な作品ですね。
演奏を期待してたのでもう少し聴きたかったです。

最後に羽ばたいたみぞれのあの演奏をフルで聴かせてくれたら
多分泣いたな~(笑)

投稿 : 2020/12/19
閲覧 : 317
サンキュー:

48

つっちぃ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

繊細すぎ(褒めてる)

劇場で鑑賞しましたが咳が出そうになった時は困りました。それくらい静謐な雰囲気で少女らの関係性の推移を見守るような作品。実写で撮れそうだがこの鬼演出の連発は京アニでアニメだからこそだろう。音楽でも百合ぽさでも後々語られる代表的な作品でしょうね。

投稿 : 2020/11/12
閲覧 : 208
サンキュー:

7

ネタバレ

Fanatic さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

単品でも楽しめますが、ユーフォファンなら是非!

北宇治高等学校吹奏楽部所属の鎧塚みぞれと傘木希美が主人公です。
単体としても楽しめますが、原作は武田綾乃さんの「響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏学部、波乱の第二楽章」。
つまり、「響け!ユーフォニアム(二期)」のスピンオフのような内容なので、TVシリーズ未見の場合は少し評価を割り引いて下さい。

製作はもちろん、京都アニメーション。
監督はシリーズ通して務められていた石原立也さんではなく、「けいおん」や「聲の形」の山田尚子さん。脚本も、同作でタッグを組んでいた吉田玲子さんです。

他人と関わることが苦手なみぞれ。そして、彼女が唯一拠り所にしている友人が、明るく天真爛漫な希美。
今期放送中の「安達としまむら」に少し雰囲気が似ていますが、あちらは心情描写をモノローグでどんどん開示していくのに対し、こちらは二人の関係性を、何気ない仕草や歩調、表情をフルに使って描き分けています。

手法の違いなのでどちらが良い悪いというわけではありませんが、アニメーションだけで表現する方が感性も必要としますし、スキル的にも高度なものが求められるでしょう。

二人がオーボエとフルートの合奏練習を始める直前、タイミングを合わせるために互いに二、三度目配せをするカットなんかは、本当に目を奪われます。
実写であれば、ディレクターが逐一指示をしなくても、カメラが無意識の仕草もすべてありのままを拾ってくれるでしょうが、アニメではそうはいきません。
何気ない所作、わずかな背景の動き、そのすべてにアニメーターの意思と拘りが込められています。この、細部に至る描写力は、まさに京アニクオリティ。

冒頭の朝練で二人が合奏したのは、コンクールの自由曲「リズと青い鳥」の中の、オーボエとフルート掛け合いのソロパート。
その曲が、まるで自分たちのようだと無邪気に話す希美でしたが……。
やがて、コンクールや卒業後の進路を巡り、みぞれと希美が抱える葛藤や悩みが徐々に浮き彫りになっていきます。

希美に依存し、自分の演奏者としての可能性よりも希美と一緒に歩んでいくことを優先しようとするみぞれ。
一方、そんなみぞれを愛しく思いながらも、才能の差を感じて徐々に違和感を募らせていく希美。
そんな二人の小さなひっかかりが少しずつ大きくなり、やがて、決定的なすれ違いになろうとしていた時、みぞれは言葉にできない気持ちをオーボエの音に託します。
果たして、こんがらがった二人の気持ちが解きほぐされることはあるのか?

学生生活を共に過ごした友人と、卒業後も同じ人生を歩んでいけることの方がむしろ稀かもしれません。
青春ドラマでは、友人同士の繋がりが強調されることが多いですが、人と人との絆は手を固く握り合ってのみ得られるものではありません。
手を離し、肩を叩いてそれぞれの道へ送り出すことも、時には大切でしょう。

少女たちの若芽のような繊細な心と、そこから芽吹いていく芯の強さを、透明感溢れる映像で紡いだ珠玉の名作です。

投稿 : 2020/10/30
閲覧 : 288
サンキュー:

18

REI さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

響けユーフォニアムのスピンオフ

テレビアニメ「響けユーフォニアム2」を見ると、

のぞみとみぞれの関係が、より解りやすくなると思います。

みぞれが、のぞみに依存している感じは、私は個人的によくわかります。(^_^;)
私もちょっと同じような経験をしたことがあるので

思春期のそういう我儘な部分がよく描けているかと思います。

すべてアニメ制作者に感謝を!!

京アニショックから、まだ、立ち直れないけど、

やっぱりアニメは面白いです。

精神的にも物理的にも厳しいかもしれないけど
京都アニメーションの皆様には
間が空いてもいいので、
是非、この「響けユーフォニアム」の続編を制作して欲しいです。

投稿 : 2020/10/27
閲覧 : 211
サンキュー:

18

ネタバレ

みかづき さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

"敗れざる"もの達へ

私のどーでもいい感想日誌を読んでくれてありがとう。

ユーフォ2の後に、この作品の存在をおしえてもらってましたが、
2の余韻の長さとでっか充実感からか、急いでみる気はなかったところ

ふと、棚の ら行の一番端っこ。 「リズと青い鳥」

なんの作品だろ?(わすれてた)

手にとったら
「これユーフォじゃねぁかァーーーー!!
 あったんかぃぃーーーー!」(思い出し)
「は行のユーフォのとこに(シリーズとして)
 置いとけやァーーー!!!」(無茶ぶり?)

視聴前、みぞれと希美の物語 との情報しかなく、時間も確認せず、
短いショートSTORYだとおもって観始めました。

あれ? みぞれ・・ちゃん?
超麗しくなってない? 髪の毛とか制服とか、ちょ!!・・すごいんだけど。

あれ? こんなに脚 細かったっけ?
10頭身もあったっけ?! ケェェェェーーーーーーーー!!!
お姉さんは聴いてません。。

ちときになるのは
いままでの京アニの黒髪美少女に「似てる。重なる」。。繊細な美しさ だが。

■観終えて
私、みぞれと希美の中学時代。つまりユーフォ2の過去にスポットを当てたショートSTORYだとおもってた。全然違った。。ユーフォ2の後の話じゃん!!
つまり、『あすか達が卒業した後の新生吹奏楽部』。これ劇場版だけど、ユーフォのひとは絶対観なきゃアカンでーーーー!!!(# ゚Д゚)(# ゚Д゚)(# ゚Д゚)


私、当作の余韻で
ノンフィクション作家 沢木耕太郎の「敗れざるもの達」を思い出しました。
陸上、野球、ボクシングなど、"栄光に輝く眩しい光"。その影には、その舞台から消えた多くの星達が必ずいることを。

もうひとつ 思い出す。
高校時代、私と種目は違うけど、実力があって、嘘の言葉をならべない、そうするなら黙ってる、みんなの前で話すことは、いつも「優等生で雄弁」な部活の同期のこと。
私は弱い選手で、この同期の「雄弁さ」が "いつも、ずっと"苦手だった。

私は、黙って努力するタイプがすきで、その同期とは、お互いに距離をとっていた。

卒業後、部活関係の結婚式に同席した時、そのはなしにふれて、『あれは(私にとっての雄弁さ)、いつも"自分に対して言っていた"言葉だ。』 と。 そうだよ なー ととれた。。


最初は、みぞれの"いつも独りで居る"。コミュ障?が気になった。
クラスや大所帯の部活で、いじめや馬鹿にされててもおかしくないと。
でもその描写はユーフォ2にも当作にも一切無い。("いじめ的"内容は恣意に削除してる作品)

そして終盤に
新山先生に助けられ、みぞれは リズと青い鳥 の絵本・物語の難解だった解釈に届く。

う〜ん。。
もし、明朗活発な希美が、今作のみぞれの 卓越した、妬まれるコトもある才能であったなら?
現実世界にはこのパターンも有り得る。

けど、今作のように、
多くの"ふつうの子達"からみれば、学校では最下層たる みぞれが、その才能をもっている。
『劣等感に溢れ、自分はダメ人間』だと"言い続ける日が無いような人間は、
《芸術方面》には長けるケースがあるのが現実。

逆に、このタイプは、《運動系》ではトップ選手足り得るケースがあるのかな??


希美が、みぞれの解釈し、得た才能・溢れる演奏に、涙するシーンからがクライマックス。。
思い出した「敗れざるもの達」のように。。

ー 希美は『敗れる者』だ。

勝負の世界で栄光を掴む一握りの選手になるにはあまりにひとが良く、優し過ぎる。
だけど、周りの多くのひとに気配りができる。会社や病院保育園、サラリーマンでその才能は発揮されるだろう。人生においては「敗れたわけではない」と信じたい。


みぞれは ずっと!休まず!
音楽に、楽器に、そして挫折しそうな自分と戦って 苦しんで 悲しんで 日々誰よりはやく音楽室に入り 恐らく一日中、休日も・・"対峙してきた。" 結果は運だろうけど、過ごし方は超一流の、ストイックな、孤独なアスリート。おかしくない。

■音楽は
もっかい ちゃんと聴くぞ〜〜♪♪(๑•̀ㅂ•́)و✧(๑•̀ㅂ•́)و✧
人間劇にハマリ込みよくわからんかった。笑

■徒然
テレビ版を超える描画。登場人物も風景も"美しすぎ"て、ユーフォ3は初心に帰らんとね。(=o=;)
& 太い脚カムバッ!!٩(๑´3`๑)۶

3年生がいなくなって、下級生だった 久美子、麗奈、みぞれ
トップ奏者に覚醒してきたね。

・・・男性諸君(´Д⊂ヽ(´Д⊂ヽ(´Д⊂ヽ
勝ち気、勝負にこだわる、噛みつき葛藤する男の子
一人はでてきてほしいな
女の子だけでも完結するけどね

相変わらず リアリティあって 思い出させてくれる
とっても繊細で 憐憫な とってもいい作品です。

投稿 : 2020/10/07
閲覧 : 298
サンキュー:

26

ネタバレ

岬ヶ丘 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 4.0 作画 : 3.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

歌にしておけば忘れないでおけるだろうか

 「響け!ユーフォニアム」で描かれる物語のなかで、個人的に2期のみぞれと希美のエピソードは女の子同士の独特の関係性というのもあったのか、個人的にあまり共感というか納得できない部分が少なからずあった。

本作では、二人の関係を童話の登場人物と重な合わせながら読み解くことで、お互いの性格や間柄が分かりやすく伝わってくる。この童話の登場人物をどう・誰に見立てるのかという視点の切り替えが、作品の大きな鍵になっている。

 山田監督作品の特徴でもある女の子同士の関係性を描くという点では、この二人はうってつけのキャラクターだったのだろうか。二人の関係性についてはより深掘りがなされ、二人の関係の大きな変化と一つの区切りまでを切り取っている。

さらに終盤のみぞれのオーボエの演奏は、みぞれの決意と、希美との間にあるもの、あるいはないものの存在をとても残酷に、しかし美しく響かせる。ハッピーエンドがいいという希美の言葉に対して、「ハッピーアイスクリーム」というみぞれの最後の言葉に、ああいいなあと思った。

 違う道を歩くことになる二人だけれど、別々なんだけどでも一緒に、という未来を感じさせるラストは素晴らしかった。

 イメージソングを手掛けたHomecomingsの「Songbirds」は歌詞がとても印象的で良曲だった。「歌にしておけば忘れないでおけるだろうか」という歌詞からは二人が過ごした青春の一つの形、その瞬間を歌に大切に留めておきたいという強い思いが込められているような気がした。

視聴日 19/5/12

投稿 : 2020/09/25
閲覧 : 177
サンキュー:

7

次の30件を表示

リズと青い鳥のレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
リズと青い鳥のレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

リズと青い鳥のストーリー・あらすじ

北宇治高等学校吹奏楽部でオーボエを担当している鎧塚みぞれと、フルートを担当している傘木希美。

高校三年生、二人の最後のコンクール。
その自由曲に選ばれた「リズと青い鳥」にはオーボエとフルートが掛け合うソロがあった。

「なんだかこの曲、わたしたちみたい」

屈託もなくそう言ってソロを嬉しそうに吹く希美と、希美と過ごす日々に幸せを感じつつも終わりが近づくことを恐れるみぞれ。

親友のはずの二人。
しかしオーボエとフルートのソロは上手くかみ合わず、距離を感じさせるものだった。(アニメ映画『リズと青い鳥』のwikipedia・公式サイト等参照)

ティザー映像・PVも公開中!

放送時期・公式基本情報

ジャンル
アニメ映画
放送時期
2018年4月21日
制作会社
京都アニメーション

声優・キャラクター

種﨑敦美、東山奈央、藤村鼓乃美、山岡ゆり、杉浦しおり、黒沢ともよ、朝井彩加、豊田萌絵、安済知佳、桑島法子、中村悠一、櫻井孝宏

スタッフ

原作:武田綾乃(宝島社文庫『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』)、監督:山田尚子、脚本:吉田玲子、キャラクターデザイン:西屋太志、美術監督:篠原睦雄、色彩設計:石田奈央美、楽器設定:髙橋博行、撮影監督:髙尾一也、3D監督:梅津哲郎、音響監督:鶴岡陽太、音楽:牛尾憲輔、音楽制作:ランティス、音楽制作協力:洗足学園音楽大学、吹奏楽監修:大和田雅洋

このアニメの類似作品

この頃(2018年4月21日)の他の作品

ページの先頭へ