2020年度のアフタヌーンおすすめアニメランキング 2

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの2020年度のアフタヌーン成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月05日の時点で一番の2020年度のアフタヌーンおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

73.7 1 2020年度のアフタヌーンアニメランキング1位
空挺ドラゴンズ(TVアニメ動画)

2020年冬アニメ
★★★★☆ 3.6 (301)
1229人が棚に入れました
空の覇者、龍<ドラゴン>。その存在は多くの地上の人々にとっては脅威・災害であり、同時に薬や油、そして食用としての価値がある“宝の山"でもあった。その龍<ドラゴン>を狩る存在がいた。捕龍船を操り、空を駆け、龍を狩り、旅をする。彼らは「龍(おろち)捕り」。これはその中の一艇“クィン・ザザ号"とそのクルー達の物語である。

声優・キャラクター
前野智昭、雨宮天、斉藤壮馬、花澤香菜、諏訪部順一、関智一、櫻井孝宏、鳥海浩輔、釘宮理恵、熊谷健太郎、古川慎、松山鷹志、武内駿輔、上村祐翔、赤﨑千夏、榎木淳弥、井上和彦、佐々木啓夫
ネタバレ

フリ-クス さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

龍(オロチ)取りを題材にした『情熱大陸』

アメリカへ海外番販に行って一番げんなりさせられるのは、
なんと言ってもレーティングの厳しさです。
なんせ「首が飛ぶから残酷」という理由でアンパンマンに年齢制限かかっちゃうお国柄ですから。

おじさんが女の子見てにんまり笑う、なんて演出も、
性犯罪を助長する危険があるとかで年齢制限の対象になります。
けんか売ってんのかこんにゃろ。

子どもの誘拐なんてもってのほか。
暴力表現や流血も基本的にご法度と考えた方がよく、
もちろん、ナイフだの日本刀だの、
武器を使ったバトルものは軒並み年齢制限の対象になります。

ただし、スターウォーズのライトセーバーはOKなんです。
なぜかというと『現実に存在しない武器』だから。

いやいや、トイザらスで
プラの日本刀とライトセーバー並べて売ってんじゃん、
とか言っても、指をちっちっちっと横に振られるだけです。

だけどまあ、それをひっくり返すと、

    捕鯨はダメだけど捕龍はいいよね

という理屈が成り立つわけで。
言うことあるなら言ってみろ、シーシェパ-ド。


さて、本作『空挺ドラゴンズ』は、
ポリゴン・ピクチュアズ制作のフル3Dファンタジー作品です。
その内容を簡潔に、身もふたもなく言ってしまうと

   商業捕鯨を『捕龍』におき変えた日常もの

ということになります。いやほんと身もふたもないな。


もちろん『捕龍』だから、見た目の感じはかなり違います。
{netabare}
この世界の龍は空を飛んでいるので、
捕龍船は海を渡る『船』ではなく『飛行船』ですし、
その関係で船体部を大きくするわけにもいかず、
龍を仕留めるたびにいちいち地上に降りて解体しなければなりません。

獲物を求めて仲間たちと大空の旅を続け、
龍を見つけると銛を打ち込み、追いかけ、仕留める。

地上に降りて、乗組員総出で解体し、バラした部位を積んで再び大空へ。
脂肪の部位は船内で煮込んで『龍油』を摂る。
点在する街へ降りて肉や油を換金し、物資を補給したらまた大空へ。

ほんと、その繰り返し生活です。

もちろんそれだけでは物語にならないので、
大小さまざまな事件が起こってメリハリがつくのですが、
事件が終わったらまたみんなして元の生活へ。

楽しみと言ったら食うことぐらいなので、
『龍料理』の描写やバリエーション作りにはかなり力が入ってます。
けっこう丁寧にレシピの解説もしてくれていますが、
素材がアレなので誰にも作れません。
ただ、食べてみたくなるほどおいしそうに見えることは確かです。
{/netabare}

正直、地味なのか派手なのかよくわからない作品なのですが、
少なくとも僕は、
二つの点で、最後まで楽しく観ることができました。

一つめは、物語の根幹となる龍(オロチ)取りの生活が、
緻密に、生き生きと描かれている点。
このあたりは『情熱大陸』のノリではないかと。

もう一つは、群像劇の中でとりわけフォーカスされる新米乗組員、
タキタの成長譚としての魅力で、
こちらは『情熱大陸』に加えて『銀の匙』入ってます。

『銀の匙』なんか知らね、という方のために補足しておきますと

  原作は荒川弘さんで、制作はA-1 Pictures。2013年OA。
  受験ノイローゼになって農業高校酪農科に進学した優等生が、
  第一次産業の実情や『命を食らう』ことの意味を知り、
  新たな夢に向かって仲間とともに駆け抜けていく青春群像劇。

という感じですね。大名作なのでご存じの方が大半かと。
ちなみに、どうでもいいことですが
同作のヒロイン御影アキは、僕にとって、これまで視聴してきた全アニメの中で、
ダントツ、ぶっちぎりで『理想の女の子』NO.1です。
いやほんとどうでもいいな。


酪農でも捕龍でも『生命を奪って、食らう』という本質は同じです。
{netabare}
ごく一部のベジタリアンなどを除き、
日本などの先進国に生きている方の多くは、
  屠畜場の映像を見るのは御免だが、お肉を食べることはやめられない
という『業』を背負っています。

そして酪農を学んだり捕龍船に乗ったりすることは、
否が応でも、その『業』と向き合うことに直結してしまいます。

最初はタキタも、そのあたりは曖昧に考えていました。
しかし、仲間の話を聞き、いくつもの経験を重ね、
十一話では泣きながら母龍の猟師鍋を食らい、
ついに決意を固めて、誇りある言葉とともに子龍を群れに返します。

そこに大層な蘊蓄や哲学はありません。
ただ『あるがまま』です。
永遠のように繰り返される人々の営みの、ごく一部の意味を、
すとんと肚のなかへ落としただけのことです。

日頃はパックでしか食材を手にすることのない僕たちにとって、
一度は直視しておくべき『あたりまえ』のことを、
タキタは疑似体験させてくれているんです。

よく見とけよ、シーシェパ-ド。
{/netabare}


おすすめ度としては、Aランクに位置すると思います。

いやオレは手書き以外はアニメと認めん、とか、
ジェットコースターみたいな起承転結こそが物語だ、とか言う方には、
あまりおすすめできません。

あと、細かいところが気になって仕方ない方にも難しいかな。

捕龍船の甲板って、空を飛んでいるくせに安全柵がありません。
そのくせ常に命綱をつけているわけでもなく、
  いやそれ落ちるだろとか思ってたら、
  案の定、タキタが落っこちたりしてるわけで。
そういうツッコミどころは、けっこうたくさんあったりします。

だけど、龍取りという未知の世界、
そしてそこで奮闘する若者たちを描いた群像劇として見るならば、
他のロ-ファンタジーと比較しても出色の出来です。

タキタ役の雨宮天さんが、きゃんきゃんしたアニメ芝居ではなく、
リアルな元気ムスメに寄せているのも好感度大。
バニー役の花澤香菜さんも、やさぐれたいい味出してます。

前野智昭さん、諏訪部順一さん、関智一さんなど、
豪華男優陣のがらっぱちな感じも、リアリティきっちり仕上げてますし。
ワケありふうの男が大勢乗っているというのは、
捕龍船というよりも
なにやら『マグロ漁船』っぽい気がしますが、それは置いといて。


視聴後には、東欧の田舎カフェに座って一人で街を眺めているような、
どこか不思議な気分にさせてくれる逸品です。

見知らぬ世界で営まれる人々の暮らしに思いを馳せ、
ライ麦パンなぞかじりながら、
『生命と食』みたいなものを改めてじんわり考えてみるのも一興かと存じます。


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本作のED楽曲を提供したバンド『赤い公園』の津野米咲さんが、
昨年10月、お亡くなりになりました。
表現力あるギタリストであり才能あふれるコンポ-ザ-でもあった彼女の、
あまりにも突然で、早すぎるお別れでした。
ご冥福を心よりお祈り申し上げます。

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投稿 : 2024/05/04
♥ : 22
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

開店!タキタ食堂

原作未読 +ultra枠

さて問題です。
「テロ等準備罪」を新設した『改正組織犯罪処罰法』が2017年7月11日に施行されてからの変化について次の選択肢より妥当なものを選べ。

1.居酒屋で政権批判をすると逮捕されるようになった
2.“共謀罪”という呼称が浸透し一般化した
3.{netabare}シー・シェパードが和歌山県太地町から退散した{/netabare}

答えは3.穏やかな海が戻ってきたようです。
もともと捕鯨問題を知ったのは『美味しんぼ』。小学生の時だったかなぁ。捕鯨国日本と国際包囲網との理不尽な関係に憤りを覚えたものでした。
本件に限らず、「原発問題」その他社会問題に鋭く切り込む原作者雁屋哲氏もきっと法案成立とその後の動きを喜んでいらっしゃることでしょう(鼻ほじ)。

「龍を守れ~」な愛護団体や環境活動家を登場させても面白かったかもしれませんがそれをしませんでした。英断だったと思います。舞台を穏やかな海から空に移し、喧しい外野の声を極力排除して人間と龍との関係からなにかしらを伝えたかった力作。

本作『空挺ドラゴンズ』についての視点の置き方。

狩猟対象を鯨から龍に置き換えてみて何かを訴えたいのかしら?
タイガーモス号ばりのイカした飛空船で龍の巣に突っ込む冒険活劇を見せたいのかしら?

 前者だったかと。

ポリゴンピクチュアーズさんのごりごりな3DCG眺めて感心することも一興。美術は流麗。
メインテーマ『捕鯨』or『ラピュタ』どっちなんでしょう?
“龍捕り(オロチとり)”“捕龍船(ほりゅうせん)”とネーミングセンスいい感じ。
対して…“空中海賊(くうちゅうかいぞく)”。ラピュタ寄り案件のネーミングにやる気とセンスを感じなかったのが『ラピュタ』を後方に置いた理由です。そこは“くうぞく”でよかろうに。
別に「両方だよ」ってのでかまわないんですけど、主人公らと龍だったり、人間同士だったりの闘いに視点の重きを置いてしまうと後々に見誤ってしまいそうです。
そしてお待たせしました本題。露骨ともいえる捕鯨の比喩で訴えたかったもの。


 いただきます と ごちそうさま


生命をいただくこととは?をシンプルに感じること。
捕獲した龍を解体する場面がよう出てきます。肉・内臓・皮・脂、と余すことなく解体利用されます。
ウチの母親はウナギを捌いてるところと牛の解体を見たかなんかで両方とも食べられなくなったと言ってまして、半世紀くらい前まではそこらで見物できてた風景も町中から消えて久しい昨今。架空の龍を通して生命をいただくさまを拝める機会を得られたってことになるのかな。

主人公である龍を捕る人たち。龍を購入し潤う町の人々。そして狩られる龍。捕食する側される側。食料問題もさることながら、経済問題にも直結するのっぴきならない世界での持ちつ持たれつな関係を自然に描いております。
自然かつシンプルで根源的なテーマのためカタルシスには程遠い。つまり地味ったら地味。だがしかしけっこう後からジワってくる仕様。物語の地味さとバランスを取っての見ため担当は捕龍船“クィン・ザザ号”のデザイン、いろんな顔を見せる空特に雲や風を感じる背景美術、そのへん頑張ってる3DCGということなんでしょう。
原作はまだ続いているようで、それでも全12話で一定の結論を提示してくれたことも親切。

なんか『老人と海』の読後感だったり、『密着ドキュメント!大間のマグロ漁師』の視聴後感にも通ずる捕食者と被捕食者との対話の物語。地味であり滋味に溢れてる感じ。良作だと思います。
日々の営みを切り取っただけのシンプルさを評価してます。



※ネタバレ所感

■+ultra枠ということで

海外向けですから(笑)
レビュー冒頭で「テロ等準備罪」に触れてますが、そのような好戦的な煽りは一切ない本作ですのでご安心ください。
捕鯨で有名なネタだと、油目的髭目的で乱獲してた西欧と余すことなく利用してた日本との対比なんかありますよね。

{netabare}クオーン市で出会う別の龍捕りらの所業がその悪い意味での西欧趣味で興味深い。

 ・生態不明な龍への畏敬の念が薄い
  ⇒傲慢になる
 ・毒を盛って屠る
  ⇒ピンポイント利用の経済目的
 ・町への被害想定への無配慮
  ⇒共存共栄より略奪文化の反映

食文化を理由に捕鯨続行を訴える日本に対して「鯨は人間の次に賢い生き物」の謎ロジックで対抗してきたり、調査により生態系を犯すくらい鯨の頭数が増えていても捕鯨再開にストップかけたりするくらいに感情で動く人たちに向けた作品に期せずしてなってます。{/netabare}

さりげなく毒を仕込んでるくらいでちょうどよい。


■町娘カーチャ

{netabare}唯一といっていいラブ要素良かったです。波止場の娘みたいな。

 「見たかったな、ジローが龍を取るところ」

この世界においては漱石で言うところの「月がきれいですね」ばりの I love you . だと思ってます。{/netabare}



視聴時期:2020年1月~3月 リアタイ

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2020.03.27 初稿
2020.10.07 修正

投稿 : 2024/05/04
♥ : 60
ネタバレ

pister さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

空挺ホエールズ

8話までの感想{netabare}
最初見た時はまたグラブルのスピンオフかと思ったらそうじゃなかったw
放送時期が放送時期ならコトブキ飛行隊を連想してたかも?
そうはいいつつ1話見た段階では結構好印象だった…のだけど、回が進むにつれあれ?あれれ?って感じに。
つまらないワケじゃないけど何か物足りない。
メインとなるストーリーが無いのも関係してるだろうけど、それ以上に…緊張感が無い。
キャラ達の態度もさることながら画面は妙にのほほんとしてて、命を張ってドラゴン狩りをしてる割にはなんかのどかな気分。
じゃあなんでここまで緊張感が無いのか考えてみたら…ああ、強風が吹きすさばないんだ。

更に6話以降、巨大な竜が町を破壊するという、巨大怪獣モノ好きには垂涎の内容だったにも係わらず…全然迫力が無い。
ドカーンと巨大質量が落っこちたらミニカー吹っ飛ばさせよう、ビルのカラス割れさせよう、あの世界でそういうのが無いにしても変わりの何かでそういうことしよう。
咆哮したら肌をビリビリさせよう、ドラゴンが頭上を低空で飛んでいったらその後突風起こそう、町に火の手が上がってる様子も無いのもどうなんだ。
兎に角「空気」を感じない、あの世界は真空なのかも?
なんなんだろう、CGだから出来ないってことじゃないよねぇ、宮崎駿フォロワーかどうか知らんけど宮崎に見せたら全カットリテイクになりそう。

と妙に辛口になっちゃったけど、だってねぇ、空挺といいつつ風を感じないのは非常にマズい気がして。
バイク乗りが風を感じなかったらバイク乗らないと思う。{/netabare}

総評{netabare}
苦痛を感じることなく最後まで見れたから悪くはないハズなのだけど、飛び抜けてダメという部分も無ければ飛び抜けて面白い部分も無い。
何でこんなにのっぺりしてるんだろう?と考えると、画面から伝わる緊張感の無さなのかな?
危険な仕事をやってる感がしない、死んでもペナルティなく復活して続行できるゲームのプレイ動画の様。
キャラに緊張感が無いのはまだいいんだ。
肝心なのはあんな開放された飛空挺の上なのに「一歩でも足を滑らせたら大変・ちょっとでもバランス崩したら死ぬ」を予感させるものが無く、もしそれを満たしてれば「そんな中で飄々と歩き回るオロチ捕りの連中スゲー」にも繋がったのだろうけどそんな感じもしない。
各話感想の時に「そう思うのは風(空気の重量)を感じないせいかな?」と書いたけど、これはフルCGだからってことでは無い…と思う。
例えば飛んだ帽子が果てしなく落下し続けるとか、CGでも描けるでしょう。
で、空賊の回なんて…もうなんなんだろう、お遊戯回?
これって意図的?だとしたらどうして?ってことになるけど、その意図は分からない。

余りにも細かい部分で恐縮だけど私程度でも気付いた一例として、7話最後と8話冒頭、話を跨ぐ“引き”のシーンで結構重要だと思うのだけど、ジャイロから爆雷?を落とす描写。
ジャイロに乗ってる人からは真下に落としたことでも、地上から見たら進行方向に向かって斜め下に飛ばした様に見えるハズ、慣性があるから。
けどそういう「おっ」と目を引く描写はされず、特徴のない構図ばかりで淡々と出来事が進んでくだけ。
ジャイロの件以外でもそういった「おお、ここ拘ってるねぇ」と関心を引くシーン・絵的に目を引くシーンが全話通して…私には無かった。
無機質っていえばいいのかな、そこにフルCGが被さって安定した並クオリティで、こんなんだったら作画崩壊してる方が面白い。

話に関しても盛り上がるとことはこれといって無く、食べ物に対する考え方、哲学や宗教観も…これみよがしに他作品挙げるのは悪いと思いつつ“ゴールデンカムイ”のアイヌのソレの紹介に比べると非常に弱い。
ドラゴンの乱獲云々も、“ヴィンランドサガ”のバイキングみたいな価値観(欲しいものは力で奪い取るもの、より多く戦争(殺し)をした者にはバルハラ(天国)への門が開かれる)なんじゃねーの?と思うと大して何とも思わない。
娯楽で龍狩りしてる貴族でも出して対比させれば印象も違っただろうけど、作中の描写だけでは単に貧乏臭いだけ。
最終回も鮭の稚魚の放流みたいな感じかな?と、分かるっちゃあ分かるのだけど「だから何?」って感じで、う~ん。

と、辛口めいたことばかり書いてしまったけど、退屈なだけで不快感は無い。
ボケーっとダラーンと環境ビデオを流す感じで見る分には良いのかも知れない。{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 16

72.1 2 2020年度のアフタヌーンアニメランキング2位
無限の住人 IMMORTAL(TVアニメ動画)

2020年春アニメ
★★★★☆ 3.6 (137)
598人が棚に入れました
武士というものがまだ存在していた江戸の世——。百人斬りと呼ばれた【不死身】の男がいた。その男の名は「万次」。万次は、父母を殺され復讐を誓う少女「凜」と出会う。凜は万次に、復讐の旅の用心棒になってくれないかと言う。初めは断る万次だが、凜に亡くした妹の面影を見た。一人では危うい凜の姿に、仕方なく手を貸すことに決める。しかし凜の仇は、剣の道を極めんとする集団——逸刀流。それは、不死身の万次すら追いつめる凄絶な死闘の始まりを意味していた。

声優・キャラクター
津田健次郎、佐倉綾音、佐々木望、鈴木達央、花輪英司、咲野俊介、桑島法子、ふくまつ進紗、秋元羊介、小原雅人、中田譲治、林真里花、白熊寛嗣、奈良徹、小林親弘、関智一、真山亜子
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

MUGE・ん…異能っぽい

原作未読 Netflixもの

なんですけどなんとなく

 なんかタイトル知ってる~

三池崇史監督でキムタクの実写版が遠くない過去にやってましたね。それでみたいです。マンガそのものは1993年から20年ほど連載し完結。これはきっとブックオフで見かけてますね。実物に触れるのはこのアニメが初です。


 限り無き世界の住まい人


のお話。八百比丘尼より不死を授かったおっさんを主役に据えた時代劇全24話。ちなみに終始物騒なアニメ作品ですよ。痛快さとはほど遠く『カムイ伝(白戸三平)』『どろろ(手塚治虫)』の世界観に寄せたような感じがします。自分は無条件で好きなタイプな作品なので抵抗はなくそのまま完走。おそらく第1話からして雰囲気はばんばん伝わってくることでしょう。

まあけっこう身も蓋もないのがいいんですよね。生命は限りなく重くそして軽い。

 {netabare}『この奥方は好きにしていい。ただし娘の方には構うな』

平気でこんなこと言っちゃってる世界だったりします。{/netabare}

エロ・グロ注意表現がテロップで流れますので推して知るべし。主役のおっさんを津田健次郎さんが演じられてるわけですが、朝ドラでツダケンを知って「あら、アニメもやられてるのね?」とうっかり迷い込んだ奥さまが卒倒するグロレベルではあると思います。
声優さんに触れておくともちろん名の知れた方もいるわけですが、そんなこと以上に、セリフの多い主要どころに無名な声優さんがけっこう配置されてるのが特筆すべき点でしょうか。“代表作無し:主役級無し”な声優さんがわんさかいます。それがいいです。人知れず生まれ人知れず死んでいく儚さをキャストから感じたのは私だけでしょうか。

そして理不尽な理由で生命を落とすなんてことはザラな物語です。それを具現する尸良(CV奈良徹)みたいなキャラもおりますが、その点でなによりウケたのはOP曲by清春ですかね。傍若無人なエピソードに事欠かないアーティストさん。その頃SNSがあったら日々炎上しまくってただろう方のお声を冒頭に聴けるのは幸せでした。あれ!?よくわかんないですか!?僕だけに響いてる感じでしょうか。 くすんだ色調のアニメの中で鮮やかにここだけ色づいてましたね。
なおEDはものすごく好きです。毎度変わるというのも良いのですが、作品世界を見事に表現してるといっていいでしょう。贔屓の引き倒しみたいになってきた(・_・;)


少しだけ具体的なところも。
ヒロインは浅野凜(CV佐倉綾音)。町道場の師範の娘だった彼女は目の前で父を惨殺され、母を凌辱された末に行方不明という憂き目にあう。犯人は勢力拡大中の一門“逸刀流(いっとうりゅう)”で面も割れてるところでヒロインが仇討ちを誓いスタート。道中「用心棒が必要じゃろうて」との婆(八百比丘尼)の助言から、万次(CV津田健次郎)と接触し助けを乞うみたいな導入です。そこに万次の不老不死という設定が絡んでくるわけです。
だいたいこういうのも暗黙の境界線みたいなのがあって、

【仇討ちもの】
 並:仕留めたぞ!ヒャッハー
 上:憎しみを超えたなにか
 下:{netabare}憎しみを超えたなにかに挑戦した似非ヒューマニズム{/netabare}

【不老不死もの】
 並:ゲットしてハッピー
 上:そう良いことばかりではない。むしろ…
 下: …

シンプルに夢見てウヒャウヒャする“並”は場合によっては清々しさが際立つ良作だったりします。そんな物事は単純じゃないのよってのを巧みに見せてくれると“上”。さらに「そうきたか!」と驚きのようなものがあると“特上”になるんだと思います。“下”は書くつもりありませんでしたが、“上”に挑戦したもののツメが甘くてうすら寒い作品の山が横たわってる現状を憂い一応書いときました。本作でもヒロインが正義感溢れる一本気気質だったので一歩間違ったらドン引きする展開が待ってたと思いますよ。でもまあそうはなりませんでした。ちなみに不老不死ものはあまりハズレを引いたことがない気がするので“下”相当は該当なしとしてます。

 ・死ねないことの苦しみ哀しみ
 ・寿命差で生じる死に別れの悲哀

あたりがお約束でしょうか。本作は“上”を狙って“上”を獲得した作品だったといえます。雰囲気や見た目もしっかりと世界観に合わせながら、変化していく仇討ちの意義を見つけようと凛が迷い悩み答えを出していく過程は納得感を得られます。不死である万次の諦観みたいなものには“もののあはれ”すら感じた私です。
難点は少しばかり雰囲気勝負だったところ。けっこうな登場人物数を回しきれたかも微妙なところ。おそらく詰め込んだ部分もあるのだろうと思われます。それでも破綻したとはならないのは、物語のエッセンスをきちんと抽出し省略せずに我々に提示してたからだと思います。しっかりと堪能しました。



※ネタバレ所感

■万次さんのここが良い

強くないところです。万次さんいつも殺されてるのに自信満々なんですよね。それが強がりだとわかってくると深みとコクが増してきます。

{netabare}どこだったかで「こんな(身体)になる前に100人斬ってんだぞ」と言ってたような。不死身の肉体なんて妖(あやかし)ないし化け物扱いです。だから無敵なんだよという目を向けられたのに反して出た万次の一言。人間の頃から強かったんだぞ!と叫んだわけです。
正しくは不死身ではなく死ぬこともある万次さんの肉体に本人はとうに嫌気がさしている。でもどうしようもない。自嘲気味ながら自分の体を呪う手前みたいなスタンスで己に向き合ってたかと思います。そんな諦観めいたある種の達観した境地までいったおっさんのように見えて実はそうでなくて「人間の頃の良かった自分」への憧憬めいた感覚が残っているところが面白い。{/netabare}

{netabare}剣術も最強ではない。おそらく“町(村)レベルで強い!”くらいなもんだったんでしょう。
手練れがわんさか登場する時代劇です。熟練の剣客同士の手に汗握る熱戦を主人公を主語にして展開されればわかりやすかったのかもしれません。
同時に流れるような達人の剣技を作画で魅せてくれれば拍手喝采だったでしょう。

だがそうではありません。最初私はそこが不満でした。気持ちよくない。
しかしながら、そこらへんにいる腕自慢のおっさんがひょんなことから不死を得てしまった悲哀を表わすにはベストな選択だったような気がします。最強剣士が不死になる設定なら不老不死の意義や意味なり目的がわりとはっきり見えやすいとなるはずのところをそうではなくしてるわけです。
死んだと油断させといて不意打ちするみたいなとこあるので、バトルとして見たら消化不良もいいとこですがこれはこれで良し。流麗な剣技は他の人に任せてるところあるのでそっちで満たしましょう。{/netabare}


■日本の風景

欧州を舞台にした作品だと100年前200年前と遡っても街の景色がそう変わらないことは多々あります。橋だったり教会だったり平気で築400年とかあって、この前観たルネサンス期を描いた作品では舞台のフィレンツェの観光名所ともなってる有名な橋がそのまま描かれてたりもしました。

 石造と木造の違い

日本とヨーロッパの違いです。日本は戦争で主要都市が焼け野原になったこともあり、文明開化や大正浪漫はたまた戦時を描いた作品での街の風景は今と異なり当時の建造物はほぼ残ってません。またそのことを特に違和感なく当たり前のことと受け止めてきました。

 切り取った時間軸で風景は変わる

{netabare}それが何話だったかの“白川郷”。江戸を抜けて金沢へ向かう道中ということで道程も合致する。作品で描かれた白川郷がそれこそ観光で訪れた景色そのまんまでいたく感動しました。なにせ時代劇において今現在見てる景色そのまんまという経験がなかったもので。歴史の縦の糸が繋がったかのような稀有な体験でした。{/netabare}


■いっとうりゅう

最終話でサラッと…

{netabare}時が流れてましたね。

「土佐で魚釣ってたらアメリカ船に連れてかれ」
「萩で牢に入れられ」
「京都で久々にいっとうりゅうの名を聞く」

ってそのまんま竜馬さんじゃないですか(笑) 投獄されたかは知らんけど萩行ってますしね。吉田松陰に会ったり新撰組連中と親交があったことを伺わせる最終回です。なんか歴史の影に万次あり!みたいな。これ個人的には微妙でした。歴史の本流にはかすりもしないところで徒花のように生きた人達の物語だと思ってたところがあったのでなんとなく腑に落ちなかったです。
※注)ジョン万次郎説もあるとのご指摘あり{/netabare}



万次と凛の仲の描き方もあれで良かった。
ごちゃごちゃ言わんでも目と目で通じ合うくらいの信頼関係はできてたんだと思います。実写版でキムタクを起用したのはそういうメタファーなんですよ(嘘)。



視聴時期:2020年4月~9月 リアタイ

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2020.09.16 初稿
2020.10.30 修正
2021.06.11 修正

投稿 : 2024/05/04
♥ : 40
ネタバレ

青龍 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

本当の強さってなんだと思いますか?

【リアルな最強(※本作の紹介のつもり)】
本作の主人公である万次は、天下無双の剣の使い手ではないけれど、例え腕や足を切り飛ばされても、不死身の身体(IMMORTAL)で最後にその場に立っている。

そんな「最強」とは、「勝ち続けることではなく、決して負けないこと」という「リアルな最強」をわかりやすく体現したのが本作の主人公。

例えば、ボクシングの世界チャンピオンは、勝ち続けることで最強の称号を手に入れる。しかし、いくら史上最強のチャンピオンであっても、いつかその座を譲る時が来る。チャンピオンを維持するには、勝ち続けなければならない。

他方で、「負けない」というのであれば、勝負から逃げたっていい(※勝ち続けるだと勝負になった時点で逃げられない)。そうやって自分に不利な状況をどうにか凌いでいる間に、相手の油断なり隙なりを待つなり作るなりして、確実に勝てる状況をつくりだす。相手と正面から向き合わず、相手の力をいなす、受け流す、状況に合わせて自分を変化させる。
正々堂々とは程遠いので、決して格好よくはないのだけれど、勝負に対するすごく泥臭い考え。

わかりやすい例でいえば、宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島の戦いで、武蔵が大遅刻したことを卑怯と捉えるか、勝負に徹した狡猾な作戦と捉えるか。

本作は、時代劇ということで敵をバッタバッタと切り倒す殺陣を期待しているのなら、期待外れになるかも。しかし、どちらかというと実戦重視の武道をかじったことがある身としては、不死という設定はリアルではありえないものの、勝負に徹する「最強」に対する泥臭い考えには共感できる。

というわけで、本作の主人公は、一般的な格好いいとはちょっと違うかもしれません。


【武術の終焉(※本作のネタバレ有りの感想)】
剣術、柔術といった武「術」は、古来、もっぱら人を殺すための技「術」として発展してきました。

それが戦国時代という戦乱の世から江戸時代という泰平の世を迎え、暗殺術が流布すると治安上危ないという幕府の意向から、華道や茶道といった芸事と同じ「道」を探求する剣道、柔道(まとめて、武「道」)に変わっていったといわれています(先人は、武術のエッセンスを何とか残すため、何でも有りから礼儀作法や形式を重視することで、その危険性が弱まったことをアピールして、やむを得ず変化することを選んだともいえます。)。

最終話で、逸刀流統首天津影久は、{netabare}「逸刀流、何不自由ない泰平の世に武の隆盛と剣の再生を掲げて暴れたその剣によって、ほんのわずかでも何かが変わったのか。それを誰かに見届けて欲しかった。」と言っています。

とにかく相手を倒せばいいのだという逸刀流の剣術は、既に泰平の世である江戸時代において必要とされていなかったし、そのような殺人剣はこれからの世においてもない方がいい。
だから、凛は影久に対して復讐心から個人的な恨みを晴らしたというより、「そのような剣術を影久で終わらせる」(武術の終焉)という意味で彼を刺したのでしょう。
もっとも、影久自身も「ほんのわずか」と言っていることから、自分が分の悪い勝負を挑んでいることに気づいているし、本当に何かを変えられると思っているのなら見届け人も不要なので、敗北することも覚悟していた。
影久は、時代の流れに抗い、剣術の再興を夢見て江戸中の道場破りで一世を風靡するものの、やはり時代の流れには抗いきれず、儚く散っていく運命にあった。

彼とは対照的に、凛は、逸刀流に道場破りされた父親の道場を再建している。彼女は、親の敵である影久を追いかけるうちに、自分と同じように先祖の無念を晴らそうとする影久に自分の姿を見たのか、復讐心に囚われなかった。
時は、敵討ちが周囲から称賛され思考停止でその期待に応えて生きることが求められる時代である。その空気に流されることなく、彼女は、敵討という「生きている自分の人生」を「既にこの世に存在しない者」のために犠牲にすることの虚しさに気づいて立ちどまる強さを持ち合わせていた(現代においても復讐の連鎖はなくなってはいないけれど…)。
結局、生き残った者、最後まで立っていた者が強いを体現した一人。

最後に、幕府の役人である吐鉤群(はばきかぎむら)も、影久と同様に剣術の腕は作中最強格。世が世なら、侍大将として大いに活躍したことでしょう。しかし、残念ながら剣の腕で出世できる時代では既になかった。異常なまでの彼の出世欲は、生まれる時代を間違えたという焦りの裏返しなのでしょう。
もっとも、時代にあわせて変化することをよしとせず、あくまで武士(もののふ)としての生涯を貫き通そうとした鉤群もまた、その家族とともに滅びる運命にあったのではないでしょうか。


まあでも、影久と鉤群は、生まれる時代を間違えた者同士、対立はしていても内心この状況を楽しんでたんじゃないかと思うんですよ。
泰平の世に、殺人剣の使い手なんて、ただの危ない人でしかなく居場所なんかない。しかし、居場所を無理矢理作ろうとすれば、社会から拒絶される(彼らがやったことを見ればわかる)。それをわかっていて、変化するのではなく己を貫き通した。周囲は大迷惑ですけどね(笑)。


さて、影久たちの生き方には、日本人特有の無常観、常なるものはなくあらゆるものは儚く滅びる運命にあるという美学がありますが、これは破滅的な思考と表裏一体です。
確かに、影久や鉤群のように時代の流れに真正面から立ち向かうことも強さでありましょうが、万次や凛のように時代の流れを柳の木のように受け流すこともまた強さといえましょう。
時代が流転するならば、自分もそれに合わせて流転すればいい。

そんなリアル最強の万次が、純粋なゆえに時代にあわせて上手く変われなかった不器用な人たちの最期を見届け、死なない彼が彼らを思い出すことで弔う、そんなお話であったと思うのです。{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 4
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

滅びゆくものたち

アニメーション制作:ライデンフィルム、
監督:浜崎博嗣、シリーズ構成:深見真
キャラクターデザイン:小木曽伸吾
音楽:石橋英子、原作:沙村広明

単行本が発売されて間もない頃から
20年ほど追いかけてきた。
初めて読んだときは、常識を覆す
大胆なストーリー、仇討ちと剣術に対する
哲学的思考、そして筆を用いたことによる
血なまぐささを感じさせるような
独特なタッチの絵柄に夢中になった。

『波よ聞いてくれ』を観た人なら分かると思うが、
沙村広明の作品は、キャラクターの魅力が秀でている。
主人公の万次はもちろん、天津影久や黒衣鯖人、
凶戴斗、乙橘槇絵、川上新夜、百琳など、
序盤に登場する面子と出会うだけでも気持ちが高ぶる。
カッコ良いし、奥深さを湛えているのだ。
それに加え、尸良や山田浅右衛門吉寛のような
狂気の人物が、読者を心の底から嫌な気持ちにさせる。
それも、また作者の特徴のひとつだ。

作品でいちばん惹かれたのは仇討ちに対して
主人公の浅野凜が何度もその正しさと
どうしようもない恨みの感情によって苦悩するところだった。
映画ファンだった私にとって、
仇討ちは西部劇やカンフーものの影響で常識的な思考。
ところが凜は、その正しさについてずっと自問自答する。
仇討ちを目指すのが万次ではなく、
女性である凛であるからこそ行き着いた
とてもよく分かるストーリー展開だった。
それが明確に表れているのが6幕の川上新夜の話。
敵討ちの連鎖を断ち切るために凜が苦悩するさまは
とても心に残り、普通にはない時代劇を感じさせてくれた。
この頃の物語の繊細さは、藤沢周平が思い浮かぶ。

凜が仇討ちをしようとする相手は逸刀流のメンバー。
彼らにも大義といえる理屈がある。
個人の想いと武術に対する志。
敵も人間であって、自らの信じる道を歩んでいるのだ。

型にこだわらず、本質にのみにこだわる。
それが逸刀流の美学。
武術の重要性が薄れつつある江戸時代において
真の力を追い求める者たちの究極の考え方。
それは人の命よりも重い。
「強さ」以外の理由で後継ぎになれなかった
父を見てきた影久の無念と恨みが滲み出てくる。

信じた道を突き進む天津影久は逸刀流を結成し、
江戸における道場破りを繰り返し、力を誇示していく。
しかし、それによって恨みが連鎖する。
所詮は烏合の衆である者たちゆえに起こる
下衆の行動と蹂躙によって、
被害を受けた者たちは怒りに燃える。
そのひとりが凜なのだが、
自分の追っている逸刀流の危機を目にするたび、
そして党主の天津影久という男を知っていくたび、
凜の心は揺れ動き、自分のやるべきことに
ためらいを感じるのだった。
また凜と話をすることで天津の心にも変化が生じる。

凜に手を貸すのが不死の運命を背負った万次。
旗本の不正を許せなかったことが原因で
100人斬りとして知られるようになった男は、
1000人の悪党を葬ることで罪滅ぼしを目指す。
その思考はとてもシンプルなものだった。

アニメのストーリー展開としては、
{netabare}1~12幕…凜の仇討ち、天津影久との2度目の出会いまで
13~19幕…万次捕縛&不死虐殺実験&救出まで
20~終幕…逸刀流vs. 吐鉤群の六鬼団と
分けることができる。{/netabare}

単行本のことを思い返して、改めてアニメを観た感想としては、
個人的には1~12幕が断然好きだ。
剣士としての矜持や生き様を感じさせてくれる。
しかし、それ以降はただの殺し合いになっていく。
好みの問題なので、そこが好きな人も多いと思うが、
私としては引き延ばしの感があった。

特にいちばんうんざりしたのが、
途中から作者が尸良に思い入れすぎて、
誰のための物語か、焦点がぶれてしまっていること。
また尸良の凄惨な過去がほとんど語られないため、
ただの殺人鬼が好き放題に暴れまわる
展開になっているのが少し残念。
これをやるのなら、尸良の過去をもっと
深く掘り下げ、しっかりと描かなければならない。
また、それは吐鉤群についても同様で、
幕臣である彼が剣士を排して、
平和を求めていたようには感じられない。
何を考えていたのかは、ほとんど見えてこない。

作画については崩れることもあり、
特に瞳阿の絵は安定していなかった印象。
この作品のなかではあまり重視されていなかった。
また最も重要と思われる斬り合いのシーンに
迫力がなかったのもマイナスポイント。
漫画のほうは、かなりこだわっていた部分なので、
そこも物足りなく思えた。
ただ、物語の構成は30巻分もある原作を
2クールでとても上手くまとめていた。
全体のバランス感覚が素晴らしかった。

ほとんどの侍が死滅した世界。
{netabare}万次だけは、江戸時代が終わっても生き永らえている。
滅びゆくものたちを間近で見ていた万次。{/netabare}
その目に映る世界は美しかっただろうか。
(2020年10月24日初投稿)

投稿 : 2024/05/04
♥ : 36
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