カタルシスアニメ映画ランキング 4

あにこれの全ユーザーがアニメ映画のカタルシス成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月03日の時点で一番のカタルシスアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

89.6 1 カタルシスアニメランキング1位
時をかける少女(アニメ映画)

2006年7月15日
★★★★☆ 4.0 (4031)
21138人が棚に入れました
東京の下町にある高校に通う女子高生・紺野真琴は、ある日踏切事故にあったのをきっかけに、時間を過去に遡ってやり直せるタイムリープ(時間跳躍)能力に目覚めてしまう。最初は戸惑いつつも、遅刻を回避したり、テスト問題を事前に知って満点を取ったりと、奔放に自分の能力を使う真琴。そんなある日、仲の良い2人の男友達との関係に、微妙な変化が訪れていく。

声優・キャラクター
仲里依紗、石田卓也、板倉光隆、原沙知絵、谷村美月、垣内彩未、関戸優希
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

どうしようもなく、時は過ぎ去っていく

アニメーション製作:マッドハウス
監督:細田守、脚本:奥寺佐渡子、音楽:吉田潔
キャラクターデザイン:貞本 義行、原作: 筒井康隆

子供から大人になるとき、私たちは色々な痛みや哀しみを経験する。
そのことによって、私たちは屈託のない気持ちのままでは
いられなくなってしまう。
それは「良し悪し」ではなく、誰もがいつかは通る道だ。
ただ15歳のときに通る人がいれば、
40歳まで通らない人もいる。大人になるということは、
何か大きな洗礼が必要なのかもしれない。

『時をかける少女』は、真琴が子供から大人になる物語だ。
そういう視点で作品を見ると、テーマがより鮮明になる。
最初の真琴は、ただの子供だ。
とても明るく屈託のない性格が、多くの人から愛されている。
彼女は「今」の生活がとても気に入っていた。
「今」がずっとずっと続けばいいと思っていた。

{netabare} ある日、真琴は偶然に時間を戻す能力を身につける。
それによって夏休み前の楽しいひとときを繰り返せるようになる。
失敗してもやり直せる。考えなければならないことが起こったときは、
その問題が自分には起こらないようにしてしまう。
何が起こってもやり直せる世界は、とても居心地が良かった。 {/netabare}
しかし「今」という時を先延ばしにしたことで、
真琴の周りの環境は大きく変化していく。
多くの人の歴史が変わり、自分自身を含め、
たくさんの人が傷ついてしまう。
また、どれほど時間を戻しても取り戻せないものもある。
それは、いくつもの偶然が重なった瞬間だけに存在する、
人の気持ちだった。

未来は少しのことがきっかけで大きく変わってしまうこともある。
だからこそ、「今」という時間のなかで起こる出来事に、
真剣に向き合って考えることの大切さに真琴は気付く。

この作品はタイムリープの部分などで難点があるとは思う。
しかし、真琴の想いは、とても上手く表現できている。
誰かのために必死になって走る真琴の姿は魅力的だ。
そして奥華子の曲がシーンと絶妙に重なって、深く心に残った。
(2018年12月4日初投稿)

忘れられないシーン(2018年12月5日追記)
{netabare} 私はこの作品が大好きで何度もリピートしているのだが、
雀犬さんのレビューを読んで色々思い出したことがあったので、
少し追記したいと思う。

ひとつは、やはり坂道で転がっていくシーン。
ここは動きとともにとても印象的だ。
止め絵やスローモーションを効果的に使って、
転がってボロボロになっていく様子は衝撃的だった。
新海誠監督の『君の名は』にも同じようなシーンがあって、
観たとき、これは明らかに時かけのパクりだろうと思っていたら、
どこかのインタビューで監督が、あっさりと認めていた。
それほどインパクトのある良いシーンだった。

次にスクランブル交差点のシーン。
全てが止まったお互いの姿が見えない人込みのなかで、
真琴はこれからやりたいことについて、
千昭を探しながら会話を交わす状況がとてもせつない。
人込みのなかで、声だけが響くシチュエーションは
観ている者の心を動かすほどの哀しみを感じさせる。

また、奥華子の曲が流れる最後の跳躍のシーンも忘れられない。
時間を遡るなかで転校生としてクラスに来た千昭が喧嘩をしたこと、
仲良くなった功介と3人で雨の日にひとつの傘に入って
帰ったこと、千昭が真琴に告白をしたことなど、
これまでの色々なことを思い出していく。

そして、ラストの河原のシーン。
実写映画で使われるような望遠での固定カメラ。
煌めく川が流れ、車が左右にゆっくりと走っている。
真琴のそばを自転車が通り過ぎる。
どうしようもなく過ぎ去っていく時間のなかで、
ふたりが別離を迎えるシーンには心を揺さぶられた。
監督のこだわりがとてもよく分かる絵作りで、
これをやりたかったから、監督は作品を作ったのではないかと
思えてしまうほどの名シーンだ。
良い映画には、こういう心に刻まれるシーンが
たくさんあるものだと再認識させてくれた。 {/netabare}

投稿 : 2024/04/27
♥ : 92

MKT さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

夏に見たい青春アニメ

この映画がきっかけで奥華子さんのガーネットに完全にハマりました(笑)

☆時をかける少女 / ガーネット
http://www.youtube.com/watch?v=b_Y4XXkJDW0

いやぁ なんとも言えない切ない余韻が残るエンディングでした。
まさに夏に見たい青春アニメという感じです。

タイムリープで過去に戻れるかぁ。
俺ならいつに戻るかな?
小学生からやり直したいなんて欲は言わないから、
去年の夏に戻りたいかなぁ・・・。

でも戻れないしなぁ。

過去になんて戻れないこそ、後悔の無いように人生楽しんで行こう!と改めに思い返すきっかけになりました☆

投稿 : 2024/04/27
♥ : 20

せもぽぬめ(^^* さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

時を越えても良い作品なのですね!!

「時をかける少女」ってタイトルだけは昔から良く耳にしていたのですが、原田知世さんの映画を含
め、今までまったく見た事がありませんでした!!
アニメ化されてからも、観た記憶はなかったので、よし、観てみようと思って視聴を開始・・・・
(^・ω・^).....ンニュニュ?デジャブ!?
無機質で嫌な予感を感じさせる、商店街の機械仕掛けの音楽隊!!
・・・・・なんか知ってるよこれw
どうやら、ふとつけたテレビでちょうど放送されてた所をそのまま観たのだと思いますね♪
まったくもって覚えていなかったので、面白くなかったのかなぁ~などと考えながら見ることになっ
たのです♪
 
物語は、真琴(まこと)・千昭(ちあき)・功介(こうすけ)の仲良し3人組がいつものように野球をした
り、ごくごく普通の学校生活を送るはずだったのです。
でも、この日はちょっと不幸な1日だったのですね♪プリンを食べ損ねたり、家庭科で油に引火させ
たり・・・それだけでは終わらずに、帰り道に死を覚悟するような踏み切り事故に遭ったのです!!
その瞬間にタイムリープに目覚めた日でもあったのです♪
タイムリープを手にした日からの真琴の日常が劇的に変わって行くのですよ!!
 
■「時をかける少女」で外せないポイント♪\_(*゚▽゚)
・黒板に書かれた「time waits for no one」観終わった後でこの意味の重みを感じてくださいね♪
・真琴と千昭の関係に注目!!親友から恋心に変わるタイミングってどこだったのでしょうか?
 友達の友梨との会話なんかもヒントになりますね-(・0・。)
・魔女おばさんの言葉に注目!!「待ち合わせに遅れてきた人がいたら・・・」この言葉に真琴がとった
 行動とは・・・
・千昭の言葉「未来で待っている」に込められた想いとは・・・o( ̄ー ̄;)ゞううむ
 その後、真琴が功介言った「実はやることが決まったんだ」に答えが見え隠れしますね♪
 
色々突っ込み所は満載でしたけど、人間観察が好きな人ならきっと楽しめたはずですよ♪
タイムトリープ後の世界で微妙に違っている人間模様をぜひ堪能してみてください、そして、真琴の
心理描写を絶妙に表現・演出している所も、全体を通して注目して欲しいですね♪
何気なくすごしている、何気ない時間って、良く考えたら取り戻せないのですよね(゚-゚*)(。。*)ウンウン
「時は金なり」って言う言葉がありますが、まさに、時間は貴重であり有効なものであるから、無駄
に費やしてはいけないよって、改めて時間の尊さを教えられたような気がするのです♪
そんな貴重な時間を割いても、観て損はない作品だと思いますよo(`⌒´*)oエッヘン!
 
最後に、主題歌:ガーネットの歌詞は真琴の気持ちが込められていて、観おわった後に改めて聞くと
改めてジーンとなれますよ♪歌詞が千秋の言った言葉のネタバレにもなっているからなのかもw

投稿 : 2024/04/27
♥ : 42

72.2 2 カタルシスアニメランキング2位
ズートピア(アニメ映画)

2016年4月23日
★★★★☆ 4.0 (187)
1096人が棚に入れました
体の大小や、肉食か草食かに関わらず、動物たちが平和に共存する大都会ズートピアを舞台に、夢を信じる新米警官のウサギ・ジュディが、夢を忘れた詐欺師のキツネ・ニックと共に、ズートピアに隠された驚くべき事件に挑んでいく姿が描かれる。

声優・キャラクター
上戸彩、森川智之、三宅健太、玄田哲章、竹内順子、高橋茂雄

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

子供向け?ケモナー向け?いいえ大人向け!僕らには思い付かんだろうシュールで皮肉の効いた痛快爆笑劇!!ピクサーじゃねぇよ!!!ディズニーだよ!!!!

ピクサーではなく“ディズニー”の最新作です
『ラプンツェル』のバイロン・ハワード監督と『シュガーラッシュ』のリッチ・ムーア監督、今のディズニーが持てる最強の二人が遂にタッグを組んだファンタジックコメディ
2D、字幕版で観ました


かつて世界は草食動物とソレを捕食する肉食動物に二分されていた
しかし二足歩行と文明を確立するまでに進化した哺乳類はやがて手を取り合う関係にまで発展、世界は一つとなった
ソレを象徴する大都会「ズートピア」
ズートピアではありとあらゆる哺乳類が暮らしており、まさにソコは動物達の楽園と呼ばれいていた
田舎の町で生まれ育った正義感の強いウサギのジュディは警察官になる夢を抱いていた
が、身体は小さく力も弱いウサギに警察官は無理と馬鹿にされ、両親からも反対されていた
負けず嫌いのジュディは並大抵ならぬ努力と知恵を活かし、遂に警察学校を首席で卒業、念願のズートピアでの警察官の任に就いた
が、一部を除いて上司や住民達は“ウサギの警察官”を信用しておらずジュディには冷たかった
一方ズートピアでは肉食動物が次々と失踪する怪事件が起きていた
失踪事件の捜査へ参加を懇願したジュディに、僅かながらではあるが時間の猶予が与えられる
ジュディが手掛かりとして捉えたのはウサギの天敵であるキツネ、それも詐欺を生業としているニックであった・・・


二足歩行する動物による擬人化ファンタジー
所謂ケモナーものです


まず注目して欲しいのが世界観描写ですね
『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』でも書きましたが、何種類もの動物がいっぺんに暮らせばまぁこぉなるよな、ってズートピアの街並みに注目して欲しい
砂漠、ツンドラ、熱帯雨林、そして全てがネズミ用のミニチュアサイズの街等など
エリアで区切られたズートピアの街並みとそのハイテクっぷりはワクワクせずにはいられません


次に逆境に負けず、ただただ直向きなジュディの姿
田舎から夢見た大都会へ来たはいいが、理想と現実のギャップに強く打ちのめされる
それでもなお立ち向かうジュディの姿は、全ての社会人、新生活を送る人々に向けてエールを送るかのよう
とても美しいですb


そしてバディもの、カップルものとしてドラマ
コレも『アーネストおじさんとセレスティーヌ』でも書きました
ウサギとキツネ、警察官と詐欺師、メスとオス、真逆の二人が困難を一つ乗り越えるたびに織り成していくハーモニー
カプ厨にはタマりませんw
ジュディとニックは各エリアを転々と巡り捜査を進めていくのですが、その様は実にスリリングでもありました
ドキドキする映画お好きな方にもオススメ出来ますb


そしてシュールなギャグ
次から次へとテンポよく繰り出されるギャグにさりげなく挟まれる皮肉がイイ!
陸運局の職員が全員“ナマケモノ”ってのは毒づき過ぎだろwって思いました


そして表面的なギャグに隠されつつも、今作の深遠には深いメッセージ性があるのが、今作の最も評価したいポイントです
動物の理想郷たるズートピア、しかし沢山の動物が集まれば集まるほど深刻化する“ある問題”が今作のキーになっているのですが・・・コレはまさに現代の【多民族国家アメリカが抱える問題】をそのまま訴えているかのようです
よくこんな映画を大統領選挙前にぶっ込んで来ましたね(笑)
(笑いのベールで包まれているものの)あまりのド直球ぶりに良い意味で【ディズニーらしくない作品】に仕上がったと思います


また、ピクサー作品群との最大の差異ですが、ピクサーは露骨に泣かせに来ると言うか、彼らは“お涙頂戴こそが最高の感動”と信じきっている節があります
もちろんオイラも『インサイドヘッド』とかで素直に泣いてたんですが、今作は爽やかな感動を呼ぶシークエンスこそあれど、涙も乾くほどの笑いでソレをぶっ飛ばしてしまうんです
湿っぽいのはイヤ!面白いか否か!でしょ!?そー言ってるのかようでした
根本的にコメディなのですし、全体のベクトルがとてもしっかりと取れてる作品だと思いました


最後になりましたがテーマソングとして最初から最後まで絡むSHAKIRAが演じるガゼル美しすぎですwありゃ惚れるわw
オイラは原語版で観ましたが日本語版のキャストの演技はどのようになっているか気になるところではありますが声優の評価は少し抑え気味にしておきますね
あ、ちなみに原語か日本語かで(正確には公開地域毎に)劇中で流れるニュースのキャスターがキャラクターごと変わるそうですよ
原語版はヘラジカ、日本語版は芋洗坂係長が演じる狸(たぶん『平成狸合戦ぽんぽこ』のイメージなんでしょうw)
芸が細かいなぁ
3D、4Dも残念ながら未視聴です;
子供にでも、ケモナーにでもなく、立派な大人にこそ観てもらいたい1本でした!

投稿 : 2024/04/27
♥ : 13

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

これが本当の《意識高い系・社会派アニメ》。やるなディズニー!

本作については、一時あにこれの2016年春シーズン作品ランキング1位になっていたことから、個人的に結構気になっていたのですが、わざわざ映画館に足を運んで鑑賞するに至らないまま、いつの間にか上映期間が終わってしまいました。

それが先日、たまたま視聴する機会があり、これが私の事前の期待を遥かに超えて興味深い内容だったので、これは早速、紹介レビュー書かなくちゃな、と思った次第です。

さすがのディズニー作品・・・というよりも、むしろこれ、アメリカじゃないと到底、発想が生まれないし企画も制作も通らない種類の作品だったんですね。

幾ら金が掛かっているのか分からないフル CG技術は勿論秀逸だと思いますが、それよりも本作の場合は、シナリオが実に見事で、見ていて何回も「う~ん、そう来たか」と唸ってしまいました。

だいたい、CG技術だけなら『アナと雪の女王』で既に同等なものを見ていますし、私の場合は、以前書いたレビューのとおりアナ雪のシナリオは実は大して評価していません(・・・というより字幕版と日本語吹替版の2回も鑑賞したにも係わらず、アナ雪は私の頭の中ではとっくの昔に風化した作品になってしまっています)。

だけど本作は、たった一回視聴しただけなのに、かなり鮮明というか、今後もきっと長く忘れられないだろうな・・・と今から確信できる程の強い印象が残りました。

それは、アナ雪に代表される「安心できるけど詰まらない」印象(私だけ?)のディズニー作品というよりは、アメリカという国と社会が現実に地上に存在し、そしてそこへの“問題意識“と、しかしそれでも、それを努力して乗り越えようとする制作者側の“希望”とが滲み出ているようなコンセプチュアルな作品、“日本という国と社会”があってこそ生まれる見事なアニメ作品(*1)があるのとパラレル(平行)な関係で、現代の“アメリカという国と社会”があってこそ生み出された作品・・・という風に私には見えたわけで、そういう意味で、本作こそ正真正銘の《一見の価値がある作品》と個人的に捉えたいわけです。


◆「被害者ビジネス」「弱者利権」「ポリティカル・コレクトネス」「ソーシャル・ジャスティス」

要は、こういう言葉に少しばかり関心がある人にとって、見応えのある作品ではないか、と私には思えたわけです。

そういう意味で本作は、日本のアニメ作品の中でも《社会派アニメ》とか《意識高い系》と一部で評されており、私も実は以前に少しばかりの期待をもって視聴してみたものの、結局「何だコレ?こんな浅い内容で終わっちゃうの?ガッカリだなあ・・」という感想にしかならなかった作品群(あえて具体名は出しませんが)とは、完全に一線を画す作品に個人的には見えたわけです。

ちょっと解説すると、「被害者ビジネス」とか「弱者利権」というのは、読んで字の如くですが、“自分が被害者だ・弱者だ”ということを(それが事実かどうかはともかく)殊更に強調し感情的に捲くし立てることによって、相手側のまっとうな理屈に基づく異論反論までをも遮断して、自分の都合を押し通すタイプの問題行為であり、とくにアメリカでは、1960-70年代のいわゆる「それまで差別され抑圧されていた人々」の「解放の時代」が一段落したあと、1980年代に入って以降に、今度はそのやり過ぎの反動として顕在化してきた問題で、政治的あるいは社会的に「ポリティカル・コレクトネス(政治的適正さ)」とか「ソーシャル・ジャスティス(社会的正義)」とは何か?ということを巡って、長々と真剣な議論が続けられ、司法的ないし政治的な判断が時に示されたり、双方の部分的な合意がこれまで積み重ねられ続けている重要かつセンシティブな事柄です。

そういう点で、アメリカとは国や社会の成り立ちや在り方に違いのある我が国の場合は、問題意識そのものが、アメリカに比べるとどうしても浅く甘い感じになってしまい、問題の片方の側だけ(つまり自称「弱者」の側の主張だけ)をやたらに扇情的に強調するだけのタイプの作品がこれまで目立っていた(今も目立っている)ような印象が個人的にはあり、前述のような《社会派アニメ》とか《意識高い系》とされる作品について、これまで視聴済みだけれども特に評価すべきほどの感想も持てず、かといって別に酷評するほどの感想もないので、そのまま放置してきた作品が幾つかあるわけです。

その点、本作は、私にとってほぼ初めて、肯定的な意味で《社会派アニメ》として高く評価したい作品となったわけで、そういう意味では、自分がこれまで高評価を付けてきた、自分が何度も見たくなる《大好きな作品》というわけではないので、個人的な評価点数をそうした種類の作品の限界と決めている4.4としました。

公式サイトによれば、8/24にBD/DVDがリリースされるそうで、それを機会に、より多くの方に視聴していただきたい個人的な《お勧め作品》となりました。

(*1)日本ならではの作品・・・それは主に、世界基準だと異常なくらいに“感情描写が繊細な”作品群と個人的には考えています

投稿 : 2024/04/27
♥ : 37

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

新・伏線の教科書

2D吹き替え版を劇場鑑賞。


物語における伏線の張り方は二種類に大別されると思います。

一つはバチン!バチン!と音が聞こえるくらい、
これ見よがしに伏線を張り、受け手にもろに意識させるパターン。
ホラーや泣きゲーなどに多い伏線です。

もう一つは受け手に伏線と意識させないようにヒタヒタと伏線を張って、
受け手のガードがら空きになった脳天に向けて伏線を起爆させ、
心の奥深くにテーマやメッセージを食い込ませるステルス(隠密)型の伏線です。


“ウサギ初”の新米女性警官の奮闘記であるこのディズニー映画はどちらかと言うと後者。
ステルス伏線の巧妙な使い方で鑑賞者を魅了し、楽しませる逸品です。

元より、本作はそれぞれの動物らしさという世間の先入観で、
外見や行動パターンが構築されたアニマルキャラたち。
○○らしさ、ありのままという固定観念。
それらを何にだってなれるというズートピアの理想や、
主人公ウサギ警官による夢パワーで、揺さぶったり、乗り越えたりするのがテーマ。

そのため、伏線を秘匿するための化けの皮は街中にいくらでも転がっています。
大体、ウサギ警官の相棒からして、キツネの詐欺師w
ステルス伏線にとってはズートピアは圧倒的なホームグラウンドなのであります。


が、それ以上に、伏線を張るスタッフの技術が老獪過ぎて素晴らしいです。

単なるアメリカンジョークかと思いきや物語の重要な鍵だった。
この程度なら特にハリウッド等ではよくある伏線技術。

ですが、本作ではさらに、伏線回収されたと思ったら、実は回収こそが次の伏線でもあった。
あるいは回収された伏線は一本に過ぎず、実はあの場面にはまだ伏線が隠されていた。
その他、小物を活用した伏線の刷り込みも多彩。
サバンナの生態系並に多種多様な伏線技術が
小気味よいテンポで披露され飽きさせません。

伏線回収のタイミングも上手いの一言。
例えばジョークのネタに偽装した伏線。
それを場面の印象を忘れかけた頃に、コツンと伏線回収して、
ノーガードのハートに喜怒哀楽や社会風刺を突き刺してくる。

こうした手練手管の限りを尽くしたエンタメ精神が実にお見事。
伏線回収で私がこんなに舌を巻くのは、
私的伏線のバイブル『ダイ・ハード』一作目以来かもしれません。


ちょっとした詐欺が横行するストーリーだったからなのか、
伏線を張るのって、何だか詐術に似ているな。
という着想も得てしまいましたw

でもこういう詐欺だったら大歓迎♪
振り込め詐欺は多くの人を騙して、金品を奪い、泣かせます。
でもズートピアの詐術の如き鮮やかな伏線技術は、
せいぜい私の心と主題歌ソングのダウンロード料金をかっさらうくらいw
実に気持ちよくキツネにつままれ大満足な劇場映画鑑賞。

スタッフには万感の想いを込めてこの“詐欺師”め!という謝辞を贈りたいと思います♪

投稿 : 2024/04/27
♥ : 29

77.7 3 カタルシスアニメランキング3位
劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE(アニメ映画)

2023年5月12日
★★★★★ 4.2 (46)
304人が棚に入れました
2118年1月。公安局統括監視官として会議に出席していた常守朱のもとへ、外国船舶で事件が起きたと一報が入った。同じ会議に出席していた厚生省統計本部長・慎導篤志とともに現場に急行する朱だったが、なぜか捜査権は外務省海外調整局行動課に委ねられていた。船からは、篤志が会議のゲストとして呼んだミリシア・ストロンスカヤ博士が遺体となって発見される。事件の背後には、行動課がずっと追っていた〈ピースブレイカー〉の存在があった。博士が確立した研究…通称〈ストロンスカヤ文書〉を狙い、〈ピースブレイカー〉の起こした事件だと知った刑事課一係は、行動課との共同捜査としてチームを編成する。そこには、かつて公安局から逃亡した、狡噛慎也の姿があった――。博士が最後に通信した雑賀譲二の協力を得て、文書を手に入れるべく出島へ向かった一係だったが…。
〈ストロンスカヤ文書〉を巡り、予想を超えた大きな事件に立ち向かっていくこととなる朱と狡噛。その先には、日本政府、そしてシビュラシステムをも揺るがす、ある真実が隠されていた。ミッシングリンクをつなぐ〈語られなかった物語〉が、ついに明らかになる――。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

シリーズ第3期の解答編に位置付けられるマニアックな劇場版

【物語 3.5点】
時系列としては2019~2020年に展開したシリーズ第3期及びその劇場版完結編の2年前に遡るエピソード。

灼(あらた)&炯(けい)3期ダブル主人公の家族にまつわる事件の真相。
朱(あかね)が監禁されるに至った経緯。

3期で未消化だった部分を補完しつつ、
『PSYCHO-PASS』シリーズ全体のテーマを原点に戻って再整理。


脚本も、構成担当の冲方 丁氏と深見 真氏との3期の共同体制が継続。
冲方氏が関わる『PSYCHO-PASS』は刑事ドラマ成分がより強くなるため、
引き続きSFよりも刑事物の間合いで受け止めにいくのが折り合いのコツ。

深見氏が上げて来た3時間半分の脚本を、冲方氏が2時間程度に調整し押し込んだとのことで。
重複する主語と目的語は、容赦なく台詞から省略。
しかも内容は哲学的、宗教的。3期を中心に予習復習は大前提。
集中力を高めて話の流れを捕まえに行かなければ、取り残されて脳がオーバーロードしますw

よって2D鑑賞の私が体験もしていない4Dを否定するようで恐縮ですが、
本作は動く座席で騒ぐものではなく、地に足をつけて傾聴する作品だと思います。
何なら集中力に自信のない方は、今回に関しては無理に劇場鑑賞せずに、
配信等を待って、一時停止して巻き戻しながらというのもアリだと思います。


本作にて、システムを神に見立てて人類の完全服従を求める勢力の狂気が補完。
前作までに3期が描いてきた、システムを利用し“ゲーム”に興じる人類の権限者の傲慢。
両極端の末路が語られたことで、朱が提唱する法治主義の一定の存続と、シビュラシステムと人類の共生といった理想論が、
中庸たる折衷案として浮上。

3期全体として見ればテーマのバランスは取れたか。
ですが法治主義に強い不信感を持つ私にとっては、朱の主張は根拠がまだ弱いとも感じましたし、
3期もまた堂々巡りだったなという感想は変わらず。

ただ今作で大風呂敷を畳もうとする意志も汲めたので、続編次第ですね(これ毎回思ってる気がするw)


【作画 4.5点】
アニメーション制作・Production I.G

22世紀の日本を再現する背景美術は相変わらずリッチなSF。
今回はそこに十字架、西洋教会風の挙式、春節と、
法治主義の代替に神や伝統を求める人間心理を背景、作画がフォロー。

その上で陸海空で繰り広げられる派手な戦闘シーン。
ですが本作のアクションはエンタメとして映える人知を超えたスピードよりも、
スローペースで人間らしい泥臭い肉体言語に原点回帰した感。
この面でもやはり4Dアトラクション向けではないですが、
私は『PSYCHO-PASS』の拳にようやく人間哲学が戻ってきたようで嬉しかったです。


この続編も結局、色相をクリアにする裏技でシビュラ逃れする敵に、
お預けにされたドミネーターの活躍を、終盤に解禁するワンパターン。
それでも執行シーンの無双アニメーションを見るとスカッとしてしまう。
私にこの感覚がある限り『PSYCHO-PASS』はやめられないのでしょうw


【キャラ 4.0点】
常守朱と狡噛慎也。久々のバディ復活がウリの一つ。
釈然としない別れや過去の言動へのわだかまりをスッキリさせたい朱に、
天然・狡噛は相変わらず鈍感w

鎖国から開国に向かうシビュラ下の日本。
されどヒロインとヒーローの心の開国は未だ遠く。
罪は法で裁きたい朱。暴力には暴力で制裁したい狡噛。
思想の相違以上に男と女の心の交流は難しいw
雑賀さんじゃないがそういう所だぞ狡噛wと微笑みつつ、
人間心理を数値化管理するなど正気じゃないと認識を新たに。

停滞する朱と狡噛以上に“ヒロイン力”を発揮するのが宜野座。
{netabare} 何、今更戻ってきてんのよ!?{/netabare} って感じでギノさんが狡噛に突っかかるシーンなどヒロインとしか言い様がありませんw


灼(あらた)の父・慎導(しんどう)篤志。
炯(けい)の兄{netabare}・ 甲斐・ミハイロフ(煇(あきら)・ワシリー・イグナトフ)。{/netabare}
など大義や信念に基づく自己犠牲精神も乱舞。
これがラスト(※核心的ネタバレ){netabare} 朱による捨て身のテロリズム{/netabare} も後押ししていく。

私の心に残った、相対的に正しいが受け入れ難い義勇への反発。
自己犠牲への違和感が、ストーリー破綻の予兆ではなく、
シリーズ最後の大団円への伏線であって欲しいと願います。

ただ今回も退場者が、しかもかなり重要な人物の最期がありますが……。


【声優 4.0点】
おっさん成分で作品に渋みを与えるベテラン・大塚 明夫さん。
今回は敵勢力“ピースブレイカー”隊長・砺波(となみ)役として、
システムのために罪を犯し続ける人間の暴力装置の末端としての絶望を体現し、対象に憑依、侵食。
朱の理想論に対し、システムに身を捧げよと反証し議論を深める。

官僚組織でスルスルとのし上がる慎導 篤志役には齢70歳の菅生 隆之さん。
落ち着いた口調で状況を俯瞰し、協力者を囮にしたり。
自己犠牲リスクも含めて淡々と計画を遂行するキャラを好表現。
私にとっては砺波以上に背筋が凍る柔和で不気味なサイコパスでした。


【音楽 4.0点】
劇伴はお馴染み菅野 祐悟氏。
今回はシステム(神)が人を裁く演出のためか宗教色の強いコーラスも目立つ。
新味もありましたが、私が待ってました♪と時めくのはやはり、ドミネーター処刑用BGM「PSYCHO-PASS」

OP主題歌は凛として時雨「アレキシサイミアスペア」
TKの超高音男性ボーカルと345の女性ボーカルのデュエット色がより濃厚になったアップテンポナンバー。
alexithymia(失感情症)を冠して、システムに圧迫される人間心理の無事をカウンセリング。

ED主題歌はEGOIST「当事者」
事件に立ち向かう人間の葛藤を語ったバラードナンバー。
OP同様、劇場公開前にMVがフルで事前公開されていますが、
できればラストの決断を踏まえた上で噛み締めたい一曲。

主題歌アーティストも1期に原点回帰し、広げた大風呂敷の整理に着手。

投稿 : 2024/04/27
♥ : 12

デルタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

原点回帰

PSYCHO-PASSの二期や劇場3部作の続きとして自分が求めていたのは三期ではなくこの作品でした

第三期で出てきた疑問点にも概ね説明がつきましたし、この物語の終盤の展開も自分としては腑に落ちました。アクションも派手でよかったです。

自分はPSYCHO-PASSという作品が大好きなので、放映から10年たってもまだ続きが見られていることは素直にうれしいです。

ただどう考えてもこのprovidence抜きで第3期を放映するのは話を理解するうえでも無理筋だったと思うのでそこはもったいなかったなと感じます

投稿 : 2024/04/27
♥ : 2

66.1 4 カタルシスアニメランキング4位
ドラえもん のび太とブリキの迷宮(アニメ映画)

1993年3月6日
★★★★☆ 3.6 (86)
555人が棚に入れました
のび太のパパのところに不思議なトランクが届いた。開けると門が現れ、その先は一年中海水浴やスキーが楽しめ、ブリキのおもちゃだけが住むブリキン島。のび太とドラえもんはその島のブリキンホテルで大歓迎された。スキーで遊ぶうちにドラえもんとはぐれたのび太は、いったん戻ってからジャイアン、スネ夫、しずか達とホテルへ行くが、突然ブリキの飛行機の大群による爆撃を受けてしまう。ドラえもんは彼らに捕まっていた。びっくりするのび太達の前にサピオという少年が現れ、実はブリキン島はチャモチャ星人の宇宙船であることを告げる。

声優・キャラクター
大山のぶ代、小原乃梨子、野村道子、肝付兼太、たてかべ和也、中庸助、千々松幸子、田中亮一、皆口裕子、大木民夫、一龍斎貞友、堀内賢雄、屋良有作、佐久間レイ、加藤治、緒方賢一、森山周一郎

ちあき さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

便利になるだけが幸せじゃない

子供の頃何度も観ていたドラえもんの長編アニメ映画、第14作目。
便利なことだけに溺れるととんでもないことになる……と子供ながらに思いました。こういうことを言葉でなく、なんとなくのイメージで訴えかけている点やそうやって子供の頃感じたことが、今でも心に残っているのは驚きです。

ドラえもんのアニメ映画では、武田鉄矢氏が手掛ける歌がとても印象的で、作品の良さを更に引き立ててくれます。本作は「何かいい事きっとある」

投稿 : 2024/04/27
♥ : 3
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