ダークファンタジーで女王なおすすめアニメランキング 6

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメのダークファンタジーで女王な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月01日の時点で一番のダークファンタジーで女王なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

79.9 1 ダークファンタジーで女王なアニメランキング1位
黒執事(TVアニメ動画)

2008年秋アニメ
★★★★☆ 3.9 (1395)
8139人が棚に入れました
ファントムハイヴ家の当主シエル・ファントムハイヴに仕える執事セバスチャン・ミカエリスとその使用人達の日常とシエルの裏稼業を描く、アクションシチュエーションコメディ。
物語の舞台は19世紀イギリス風のパラレルワールドである(1巻巻末のあとがき漫画より)。作品世界の描写は基本的には史実のイギリスに忠実だが、携帯電話が登場したり、テレビの存在がほのめかされていたりと、独特な世界が形成されている。

声優・キャラクター
坂本真綾、小野大輔、東地宏樹、梶裕貴、加藤英美里、藤村俊二、田村ゆかり、朴璐美、福山潤、遊佐浩二、矢作紗友里、諏訪部順一、鈴木達央、杉山紀彰、矢島晶子、山口孝史、青山穣、菅沼久義、勝杏里、立花慎之介、安元洋貴、日野聡

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

少年シエルと、あくまで執事のセバスチャン。それぞれの目的のために結ばれた主従関係の結末は…。

「月刊Gファンタジー」にて連載されていた漫画が原作。

人気の高い作品だということは知っていたので見てみることにしましたが、
アニメは原作とは異なるオリジナルエピソードが多めだったようです。

1期できれいに完結しましたが、
2期や3期もあるんですね。

1期は全24話です。


● ストーリー
舞台は19世紀末のイギリス。

名門貴族・ファントムハイヴ伯爵家当主は、
12歳の少年、シエル・ファントムハイヴ。

ファントムハイヴ家は代々政府の汚れ仕事を請け負っており、
シエルも「女王の番犬」として、裏社会の秩序を守る任務を遂行していた。

そんなシエルに仕えているのが、執事のセバスチャン。
料理も武術も、すべてが完璧な執事。

あまりにも完璧なセバスチャンに対して驚く周囲には、「ファントムハイヴ家の執事たるもの、これぐらいできなくてどうします。」「あくまで執事ですから。」と穏やかに語る。

そんなセバスチャンとシエルは、
普通の主従関係ではない特別な関係で結ばれていた。


シエルは過去に両親を殺され、
自分も命を脅かされた過去を持っています。

その復讐を果たすのために、
自分の魂と引き換えにして、
セバスチャンと契約を結んでいます。

シエルが引き受けた事件の解決と合わせて、
両親を殺した犯人に近づいていく。

この2つの物語が並行して進んでいく、
ダークファンタジーです。

幼くて傲慢で「周りの人間は全て駒だ」と冷徹なシエルと、
シエルの魂を頂く日まで、彼を主として仕えるセバスチャン、
その他にぎやかな使用人たちなど。

楽しそうで、幸せも感じられる日々の裏で、
シエルに降りかかるのは、非常な現実。

1話1話すべてに見ごたえがあるわけではないけれど、
それぞれの事件の山場は面白いと思いました。

面白いと言っても、わくわくするような面白さではなく、
時にはショックで、時には衝撃的で、時には残虐で、

でも悲しさとか辛さとかとはまた違って…
復讐や死にまみれた物語なのに、残酷さだけを強く感じない。

セバスチャンのキャラのせいなのか、
全体的に上品な雰囲気は抜けないのです。

後味の悪さもあるし、やるせない展開もあるのに、
鬱な気持ちだけでは終わらない、不思議な作品でした。

何よりも24話で積み重ねた重みに見ごたえがあって、
最終話を観終えたあとの余韻に、満足感がありました。


● キャラクター
やはりこの作品において一番重要なのは、
セバスチャンというキャラでしょう。

あくまで執事な立ち位置の彼ですが、
彼がいなければ、シエルは何もできないだろうし、物語は成り立ちません。

とにかく完璧なイケメン執事、
命と引き換えの契約でも安い!と思う!笑

途中からは、なんだかもう、
何ができても驚かなくなってましたw

話し方も柔らかくて丁寧で、
彼から上品さを学べた気がします。笑

時には色気を武器にしちゃって…なギャップも良いですな(*´Д`)

でもシエルとのコンビが一番安心&安定します^^
二人にならBL展開も歓迎してしまいそうです(*´Д`)ハァハァ

次回予告ではcv.小野大輔さんの遊び心なのか、
しばしば崩壊するキャラも楽しかったですw


シエルのわがままっぷりは少し苦手でしたが、
己の魂に恥じない生き方を選択する、という芯の強さは好きでした。

復讐を果たすことが正しい生き方なのか、そこは肯定できませんが、

周りを利用してでも、己の誇りの為に心に決めたことをやり遂げようとする人間というのはそうそういないと思うので、セバスチャンが魅了されるのも納得です。

他にも個性豊かで魅力的なキャラが多いですね^^

葬儀屋のアンダーテイカーの狂ってる感じが好きでしたが、
その正体には「なんだ、それなら普通じゃないか」と、少し冷めてしまいましたw

…別に狂ってる人がタイプなわけではないけれどw

まっすぐでいい人すぎるアバーラインも好きだったんだけど…
あまりにも救われなさ過ぎて(´;ω;`)

アバーラインに関する展開だけは、
ちょっと鬱な感情が尾を引いています。

最終的にはセバスチャンが一番お気に入りです。


● 音楽
【 OP「モノクロのキス」/ シド 】

最初は1番の、途中からは2番の歌詞が使用されていました。

シドの曲は特別好きというわけではなく、
この曲も以前から聴いてはいましたが、

この作品の雰囲気とよく合っていて、
この作品の曲として聴くようになってから好きになりました^^


【 ED1「I'm ALIVE!」/ BECCA 】

初めは、この作品にしては明るすぎる曲のような気がしましたが、
聴いているうちに気にならなくなりました。

今では好きな曲です♪


【 ED2「Lacrimosa」/ Kalafina 】

明るい曲ではなくなり、OPの雰囲気に近い曲となりました。

でもこの曲も好きです^^

シエルとセバスチャンの、
静かなようで情熱的な関係によく似合っています。


● まとめ
シエルという少年の人生。
それは二つに分かれる。

ひとつは、両親と共に過ごした温かい日々。
もうひとつは、セバスチャンと共に過ごした戦いの日々。

原作とは展開が違うようですが、
アニメの方も24話分の重みと見ごたえを感じられました。

初めはセバスチャンのイケメンさと万能さを愛でる作品かと思ってたけど、
それだけではありませんでした。笑

最終話まで見て、よかったなと感じています^^

とてもきれいに完結したと思ったけれど、
2期もあるんですね。

ちらっとあらすじを見ましたが、
なんだか1期とは異なるお話のようなので、
引き続き楽しみたいと思います^^

投稿 : 2024/06/01
♥ : 15
ネタバレ

♡Sallie♡☆彡 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

“悪の貴族”と呼ばれる少年の側には,必ず一人の“執事”がいた。

これ昔からタイトルはよく聞いてたんですが,わたしがアニメを本格的に観だす前のアニメでなんか偏見もあってこれまで観ずにいました。
でも,「19世紀」「イギリス」「ヴィクトリア朝」「ダーク・ファンタジー」とわたしが好きな要素がぎゅぎゅっと詰まっているような作品で…。
もうアニメを観だした頃と違って偏見とかもあまりないし,これは観るより他ない!!ということで観てみました。
まぁ,こんな感じなので当然オリジナルの方も読んでません。

これ,2008年のアニメなんですね~。もう14年も前だ。
でも,いざ観てみるとそんなに前のアニメって感じはしなかったですね。
この位時間が経ってるアニメだと,作画が不安定だとか,キャラクターデザインに古さを感じたりすることもあるんですが…。
(最近のアニメはほんとに綺麗ですからね~。)
キャラクターデザインでいえば,大人のキャラクターはあまり好きじゃなかったんですが,シエルはけっこう好きでした。
原作のキャラクターデザインはどんな感じなのかなと思って調べてみたんですが,原作の方もアニメとほとんど同じで綺麗な絵だなぁと思いました。
なので,機会があれば原作の方も読んでみたいです。
なんか,さらっと調べたところけっこう原作とはストーリーに違いがあるようなのでそこも気になって…。

物語的には,観る前はダーク・ファンタジーという印象が強くて終始暗い感じで話が進んでいくのかなと思っていたんですが,観てみるとけっこうコメディ感もありますね。
セバスチャンの毒舌というのか慇懃無礼な発言がブラック・ユーモアな感じもあって…。
とことんダークな話も好きなんですが気分まで暗くなっちゃうので,わたしはこういうコメディ感好きでした。
そして,ダーク・ファンタジーをベースにしつつも事件を解決する的なミステリーで話が展開されます。
で,まぁ人が死んだりはします。―が,主人公であるセバスチャンがチートなのでシエルに関してはあまり心配することなく安心して観ていられました。
それ以外だと,イギリス好き,ヴィクトリア朝好きにはたまらないような単語がいっぱい出てきてにやにやしちゃいますね。
「ジャック・ザ・リッパー」とか「クリッパー」とか「1666年のロンドン大火」とかもう盛りだくさんです。
イギリスに限らずヨーロッパは歴史的な建築物が今もいきているので,エリザベスタワーやロンドン塔,タワーブリッジなど名所が出てくるところも見どころです。
カティーサークの船主像がきちんと作画してあるのもにやりとさせられます。
セバスチャンがシエルにサーブするお茶菓子も毎回美味しそう🍰
けど,マナーハウスじゃなくてカントリーハウスじゃないのって思ったけどどうなんだろう??

次はキャラクターについてレビューしていきます。
セバスチャンが主人公と上で書きましたが,わたしの中でセバスチャンはドラえもん的位置づけで,シエルはのび太くん。
なので,物語自体はシエル目線で進んでいきます。
{netabare}セバスチャンは悪魔なので,人間相手には無敵です。
一方,シエルは人間,それも両親とも亡くなっちゃってるみなしご。。
ただ,彼は貴族(それも伯爵!)なのでね。
経済的な部分では安心なのかな。
彼に関しては最初『伯爵と妖精』のエドガーと『それでも世界は美しい』のリビを足して2で割ったようなキャラクターだなと思いました。
地位と傲慢さ,子どもとは思えない知識・才能が備わっているところや冷徹な性格はリビと一緒だし,19世紀イギリスの伯爵という身分や火事で何もかもを失うという身の上はエドガーと一緒ですね。
ただ,上の2人と違うのはそもそもの物語がラブストーリーじゃないという点。
最初は,リビと重なって「くそ生意気なガキ」としか思ってなかったんですが,(セバスチャンは居るけど)メンタル的に支えとなるヒロインが居ない。
高慢な所が目につくけど,実際は孤独なんだろうなっていつの間にか好きになって応援していました。
―というのも,彼のセリフが薄っぺらくないんですよね。
シエルはセバスチャンに頼らなきゃいけない無力な子どもなのに,こういう性格にならなきゃ生きていけないんだなって悲哀を感じたし,だからこそ言葉に力があると思いました。{/netabare}
あとシエルは声が良いですね!!

主題歌はOPが1つとEDが2つあります。
わたしは「I'm ALIVE!」が好きでした。
曲調もアニメーションもダークな雰囲気を吹き飛ばしてくれるような感じですね。
めっちゃ洋楽っぽい!!って思ったらやっぱりアメリカの方が歌ってました♪

こちらの第1期は「えっ。結局どうなっちゃうの!?」って感じで終わってしまい,第2期もあるそうなので続きはそちらを楽しみにしています。
(そのうち観たいと思います。)

(観る前はシエルの名前を知らなかったのですがL'Arc〜en〜Cielのhydeさんがシエルのコスプレしてたのは“シエル”つながりだったのか!!と今頃悟りました(^-^;)

投稿 : 2024/06/01
♥ : 7
ネタバレ

レオン博士 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

19世紀英国史の影で暗躍する優雅な執事

【紹介】
19世紀のイギリスが舞台、坊ちゃんと執事の関係性がとても良い女性向けの雰囲気重視作品
重めのダークファンタジー×史実の裏側で暗躍する人々×女性向けコメディでとても話が面白い
久しぶりにちょっとだけ見たのですが、今見ても画期的な作品と思うし、当時女子の間でバズったのも必然だと思います

【感想】{netabare}
私は原作は読んだことないです

リアリティは全くなくていろいろ変なことは多いですが、細かいこと気にしなければとても素晴らしい作品です
ダークな世界観や設定・全体的に重くシリアスなシナリオと明るく軽いノリの使用人という明暗のバランスが良くメリハリがきいていて退屈しない良作

セバスチャンはじめ使用人のやり取りが面白くて、仲が良くワイワイ賑やかな雰囲気で女性向け作品に多い空気感です
BL作品ではないですが、それっぽい空気は結構出ててシエルが時々ヒロインみたいな立ち位置になります、女装もしますし
私がBL作品大丈夫になったのは黒執事を再放送で見て女装したシエルとセバスチャンの絵がいいなーと思ったのがきっかけでした、美少年の女装とイケメンの組み合わせアリって思ってしまったらだいぶハードルが下がった気がします
本格的なものにいきなり手を出すと拒否感強いでしょうから、これくらいで慣らしたほうがいいかもしれませんね

女性向け作品特有の馴れ合い空気が苦手な人にはきついかもですが、全体的にメインストーリーは暗いのでちょうどいいバランスかも
男性同士で仲良くしているのを見ているだけで虫唾が走る人以外は大丈夫だと思います

※二次創作でそういうものがいっぱい出ているので腐向け作品とみなされているのも仕方ないと思いますが、二次創作もBL作品ばかりではなく、わいわい仲良くしているだけの二次創作も多いです
ファンは絵がきれいな方が多く話の面白さもあって二次創作のレベルがとても高いので苦手じゃないなら是非読んでみてほしいです

世界観がカッコ良く、キャラクターの性格や雰囲気が良くて話が面白いのでとても好きな作品です
かなり昔の作品で映像自体は古いけどキャラデザや演出に古さを感じないです
むしろ映像が古いことで近代英国の薄暗くじめっとした雰囲気がよく出ていていい感じ

近代欧州の歴史背景や雰囲気で世界観はとても魅力的で掛け合いがスムーズ
主人公を取り巻くキャラクター同士の掛け合いと世界観と雰囲気とヴィジュアルに全振りした作品で、シナリオはかなり「あれ?」って思うところ多いけどキャラクターが好きになれれば楽しめると思います
{/netabare}
【キャラクター】
一番好きなのはセバスチャンですが、シナリオ的にはシエルが好きです
{netabare}
最初はシエルがあまり好きになれなくて、セバスチャンのカッコ良さにばかり注目してましたがそれは間違いでした
使用人たちの明るさでほのぼのした空気のお屋敷で親しみを持てるのですが、とても重くシリアスな現実が襲い掛かってきて
若くして戦うことを余儀なくされたシエルにだんだんひかれるようになった

シエルの女装が可愛くてお嬢様として振舞ってるシーンかなり好きです
女装キャラ苦手なんですが、シエルはアリというか素晴らしい!

なんといってもキャラクターが素晴らしいです、声優もとても良かったですし、建物の内装の緻密さや細かい服飾までこだわった服装がオシャレな雰囲気を作っていて素晴らしいです
とても個性的でカッコいいキャラクターが多く、掘り下げもきちんとされていて誰だっけ?ってならないしいらないキャラクターがいない
{/netabare}
【残念なところ】{netabare}
文明レベルは適当ですし、歴史も史実に忠実ではないので細かいことを気にする人は注意
19世紀の英国には存在しないものやこの時代よりかなり前にはすでに定着しているであろう文化が出てこないなど
その時代や世界観に合わないものは雰囲気を壊しかねないので出さないほうがいいと思います

良くも悪くもセバスチャンセバスチャンセバスチャン
シエルはとても苦しい状況に置かれてますがいくらなんでもセバスチャンに依存しすぎで、強気な態度にあまり説得力がない場面もあるのでもう一つくらい強みが欲しいところ

セバスチャンカッコいいけど戦闘シーンは変なことだらけです、気にしてはいけません
{/netabare}
【主題歌】
OPもEDも作品の雰囲気に合った良曲、とても素晴らしいです

投稿 : 2024/06/01
♥ : 20

72.5 2 ダークファンタジーで女王なアニメランキング2位
黒執事Ⅱ(TVアニメ動画)

2010年夏アニメ
★★★★☆ 3.8 (805)
5001人が棚に入れました
19世紀後半、英国名門貴族トランシー家。若き当主アロイス・トランシーは生まれてまもなく攫われ行方不明となっていたが、漆黒の執事クロードとともに帰還した。クロードはアロイスに絶対的忠誠を誓っており、広大なトランシー邸の一切を切り盛りしていたが、名前以外はすべてが謎に包まれていた。
ネタバレ

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

好敵手の出現で1期より見応えがあった

レビューを書くにあたって少し前に1期、2期を通して再視聴したが、
実は僕の場合、「黒執事」を初めて観たのは2期を放送中だった頃の3話からだった。
そのせいもあってか、2期のほうから先に好きになった作品なので、
原作ファンの方とは、だいぶ観方や感想が違っているかもしれない。

というのもこの2期、原作でも1期でも主役であった執事セバスチャンと
その主、シエルの対抗相手として、原作には無関係の執事・クロードと
その主・アロイスが登場し、物語もオリジナルだったからだ。
で、1期を観た上で思うのは、2期のほうがメリハリあって個人的には楽しめた。
でも2クールかけた1期でのセバスチャンの有能さと、シエルとの信頼関係や
細かな設定、人物関係を観ていないと、1クールで終わってしまう2期に
感情移入しにくくなるので、当然1期を観ておくことはオススメ。

ちなみに1期、2期ともシリーズ構成は岡田麿里。
監督、美術、色彩設定のスタッフは変更になったため、違いは随所に見られた。
どちらが良いとか悪いとかは人それぞれ好みもあると思うけれど、
全体的に観て、1期は日常系的な要素のほうが強く、コミカルなシーンも多かったが
2期は笑える部分をかなり抑えてバトル色を濃厚にし、心理描写はさらに細かく深くなっていた。

個人的にキャラデザはクロード&アロイスのほうが好みだったりして、
オリジナルの新キャラであるクロードを、とことん冷ややかな策士にし、
アロイスの傲慢さとしたたかさ、その裏にある孤独や、絶望感と哀しみを
彼の過去とともに描くことで、1期では感じづらかったシエルの正統派お坊ちゃんの
高貴さが浮き彫りになったし、セバスチャンのちょっと人間味のある愛情や甘さも見えて
奥行きを感じ、特に後半は感情移入しやすかった。

OSTのほうは1期同様、ストラヴィンスキーやマーラー、ヴィヴァルディや
ショパンなどのクラシックをモチーフにしたような曲や、
エニグマのようなグレゴリオ聖歌をベースにした曲がいいタイミングで挿入され、
クールな外見に似合わないド派手なアクションや、
エキセントリックな内面を垣間見せるクロードの動きや、
アロイスの歪んだ人間性を哀しげに見せることに成功していたと感じる。

一方、セバスチャンとシエルのほうは、1期の最終回のその直後がどうなったのか
中盤で描かれており、あぁなるほどそういうことだったのかと納得はできた。
そしてセバスチャンがなぜシエルに固執するのか、その理由もよくわかる。
また、それをクロードやメイドのハンナが察知して企てる数々の
エグい展開はなかなか見応えあったし、これでこそ{netabare}悪魔{/netabare}
と満足できた。

特に9話以降は緊迫感で張りつめ、目が離せなくなる。
{netabare} あくまでも悪魔は悪魔ということか。{/netabare}
ラストに対しては賛否分かれそうだが、僕的には2人のひとつの道筋として
そして、実際あるかないかわからないけど3期を期待できる結び方だったかなと。

それにしても、契約を遂行する忠実さは良しとして、悪魔だろうが人間だろうが天使だろうが
やはり女性の持つ母性愛に適うものはないのかもなぁと、しみじみ感じる2期だった。

ちなみに、あにこれでは別作品として登録はされていないが、
この「黒執事」6話あるOVAがすごく面白いのでオススメ。
不思議の国のアリスをモチーフにした物語があったり、ファントムハイブ家を案内してもらう形で
屋敷内のさまざまな場所のことがわかったり、『黒執事』をハリウッド映画に仕立て上げ
オールキャラが俳優としてインタビューに答えたりするのも笑える。
死神たちの裏側のこともちゃんと描かれてたりして、それも楽しいのだが
一番心に残ったのは、アロイスを主人公にした6話の「蜘蛛の意図」
愛情を渇望する彼の痛い心が、2期を観終えた後だとなおさらせつなく。
そして悪魔に関しては、「悪魔としての悦びは悪魔としての苦しみの先にしかない」
って意味がよくわかる話だった。
もちろん、1期2期を観てないと設定や関係がつかめないので観終わってからが前提。

声の出演は以下の通り。

セバスチャン・ミカエリス : 小野大輔
シエル・ファントムハイヴ :坂本真綾
フィニアン : 梶裕貴
メイリン : 加藤英美里
バルドロイ : 東地宏樹
タナカ : 藤村俊二
エリザベス・ミッドフォード : 田村ゆかり
劉 : 遊佐浩二
藍猫 : 矢作紗友里
ドルイット子爵 : 鈴木達央
アバーライン : 菅沼久義
葬儀屋 : 諏訪部順一
グレル・サトクリフ : 福山潤
ウィリアム・T・スピアーズ : 杉山紀彰
アロイス・トランシー : 水樹奈々
クロード・フォースタス : 櫻井孝宏
ハンナ・アナフェローズ :平野綾

投稿 : 2024/06/01
♥ : 34

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

復讐と陰謀に絡めとられた少年の、気高き魂の行方は。

つい先日、黒執事が連載15周年を迎えましたね♪
おめでとうございます^^

1期で物語が完結したと思っていましたが、
これは1期の続編となっています。

原作とは関係のないアニメオリジナルキャラクターが、
もう一人の主人公として新しく登場しています。

全12話です。


● ストーリー
イギリスの名門貴族・ファントムハイヴ伯爵家。
その当主はシエル・ファントムハイヴ。

まだ幼い当主の彼には、
有能な執事、セバスチャン・ミカエリスがついている。

料理、掃除、身の回りの世話まで、
なんでも彼一人で一流にこなす。

完璧すぎる彼に周囲は驚き、
そんな周囲に対してセバスチャンは冷静に告げる。

「私はあくまで、執事ですから」
「ファントムハイヴ家の執事たる者、このくらいできなくてどうします?」


初めは1期の終わりとのつながりが見えず、
時系列や世界線がわからずに混乱しましたが、

とりあえず1期と同じ、
いつも通りなシエルとセバスチャンの日常。

たとえピンチのオンパレードでも、
セバスチャンにかかればなんともなし。

なんでもできすぎて、もう何ができても驚かないよ。
笑ってしまうけど。笑

ただ解決するだけじゃない。優雅に、気品よく。
伯爵家の執事なのですから♪

5話あたりで、
1期からのつながりとシエルの現状がはっきりと語られました。

2期の大きな特徴としては、トランシー伯爵家の当主であるアロイス・トランシーと、その執事であるクロード・フォースタスが登場します。

この二人はシエルとセバスチャンと同様の関係。
つまり、悪魔とその契約者です。

つらい過去を持つアロイスという人物について。
それに加え、シエルを巡るクロードとセバスチャンの争いが2期の見どころとなっています。

2期もお話はきれいにまとめられていますが、
私は1期の終わり方のほうが好きだったなあ。

2期の方がハッピーエンド色は強いので、
こちらの終わり方のほうが好きだという方がいるのもわかります。

2期の終わり方がセバスチャンにとって幸せなのか不幸なのか、
どちらで捉えるかでも、変わりそうですけどね。

1期で十分物語としてまとまりがあったのに、
わざわざ2期を作ったのは、やはり人気があったから?

オリジナルキャラを用意して、
物語にもそれなりに見ごたえはありましたが、

私の中では“おまけ続編”という印象でした。

1期の美しいラストを覆してまで製作されるべきものだったのかは、
やや疑問が残っています。


● キャラクター
1期に引き続き、
シエルとセバスチャンの関係は安定です。

偉そうでわがままなシエルの要求に、
完璧に答えていくあくま(悪魔)で執事なセバスチャン。

シエルの周囲の人たちも、
シエルを愛していて、温かいです。

対して、
2期で登場したアロイスがひどい…。

彼の生い立ちを知ると仕方がないと思うところはあるのですが、
彼の乱暴でわがままな性格がどうも好きになれませんでした。

彼と比べると、
シエルが優しい人に見えるから面白いですね。

普段はぶっきらぼうなシエルの優しさが、
はっきりと浮かび上がってくるw

新執事のクロードは眼鏡イケメンキャラでしたが、
私はセバスチャン派でした。

2期で天使なのは、
アロイスの弟のルカだけです。

ルカの笑顔、可愛すぎる…。


● 音楽
【 OP「SHIVER」/ the GazettE 】

1期と似た雰囲気のOP。

ヴィジュアル系バンドの曲、
この作品には合いますね^^


【 ED「Bird」/ 松下優也 】

OPとは反対に、
こちらは優しい曲。

包み込む愛を連想させます。

包み込まれているのは、
シエルなのか、アロイスなのか…。


【 特別ED「輝く空の静寂には」/ Kalafina 】

最終話など、山場となる回で使われたED。

私はこの曲が一番好きでした。


● まとめ
セバスチャンのイケメンさとありえない芸を楽しむのが、この作品のユニークポイントであり、

シエルの復讐に関わってくるところがシリアスポイント。

このユニークさとシリアスさのバランスがよいと思う作品ですが、
今回はシリアスの方にやや傾いていたように感じます。

もちろん、ユニークポイントもちゃんと描かれていて、
そこは楽しませてもらいました^^

原作を読んでいないのでアニメでのみの印象ですが、
この作品は1期で満足かも。

1期だけでは物足りない、もっと見たい!という方に向けた2期かなと思いました。

3期は2期とはつながりがないようなのですが、個人的にはその方が楽しめそうなので、そのうち3期も見てみたいと思います。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 12

★mana★ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ・・そして、OVAは最高だったのである・・

1期に引き続き~なんて思いきや、
1話を観てみると・・「シエル&セバスチャン」が出てこない(;゚Д゚)
いきなり始まる「謎の執事と、謎の少年」の話。
しかもグロ健在?むしろひどくなってない?
「謎の少年」がメイドを目潰し!(σ´∀`)σ(*□*;)ギャ
これは・・完走出来ないかもしれない・・
と思いきや、颯爽と登場セバスチャン♫
やはり主役は変わらない事に安心し視聴継続しちゃって下さい♪

そうなのです、2期からは新しく「トランシー家」が加わります!
なので1期の「裏家業」とは違い、
「トランシー家」との話が中心になります!
トランシー家の当主「アロイス」・(あくまで)執事「クロード」
は執拗に「シエル&セバスチャン」を狙います( >_[・]) ロックオン
それは何故か・・という所がみどころになって来るのではないかと・・
しかしっ、やはり私が一番に楽しみだったのは、
オカマ死神「グレル」とセバスチャンの掛け合いですかねw
いや~何度観ても飽きないわぁww
\(・д\)ソレハ(/д・)/オイトイテ(グレル再度登場しますので・・w)

そして、注目すべき所は普通なら見逃す「アイキャッチ」
それぞれのキャラがタロットカードを正位置と逆位置で持っているのが印象的でした☆
カードの意味=ストーリーになってるようで、
詳しい方はそこも注目してみたら面白いと思います!

そして次回予告が面白いですね(・∀・)ニヤニヤ
セバスチャンが甘ぁーい声で色々やってくれます!

今回の新キャラの声優、
アロイス役には「水樹奈々」サン。個人的には・・合ってなかった・・かな。
クロード役は「櫻井孝宏」サン。
「イエス ユア ハイネス」が某ギアスのスザクとかぶったのは私だけ?(´・ω`・)エッ?w

1期と違い12話完結で完全オリジナルストーリー
なるほど・・って感じでした。
何で作ったんだ?とまでは言いませんが、
無くても良かったとは言えます・・
3期があってもおかしくないような終わり方。
私はあの終わり方には満足行きませんでした!
「あくまで私の意見ですが、ね|ω・`)」

しかーし、ここで終わらないΣ(*´∀`*;)ドキッ!!
私はレンタルで視聴したのですが、
OVAが収録されていて、ある意味そっちの方が面白かったとも言えます♫

①「シエル イン ワンダーランド(前・後編)」
黒執事版「不思議の国のアリス」ですね~☆
アリス=シエル・衣装が可愛すぎるぅ~(*´ω`)
白ウサギ=セバスチャン・うさ耳(*´ω`)
チシャネコ=グレル・猫耳(*´ω`)
他キャラもたくさん登場!黒執事の注目どころ、衣装が可愛すぎる作品です♥

②「ファントムハイブ家へようこそ」
うぉーーーーーー(゚∀゚)これは自分がファントムハイブ家へ行った感覚になれます♪かわゆいエリザベスのお友達として☆
セバスチャンが手を取ってくれます、シエルが歓迎してくれます、
ソウマに「可愛い」と言われます・・しかし、私には「ある計画」があるんです・・・

③「MAKING OF KUROSHITSUJI2」
黒執事の裏側・・登場人物達が役者のように私服でインタビューをうけたり、NGシーンだったり、グレルが「スッピンを映さないで!」と怒ったり、TVショッピングだったり・・アニメなのに、アニメじゃない・・こういうの好きです(。◕‿◕。)

④「死神ウィルの物語」
事前情報あったので、ウキウキで視聴♪
ウィルとグレルが新人死神に死神派遣協会を案内しながら
2人の過去をご紹介☆
こんな初々しい時期があったのか(*´∀`)
そして、メガネ課?死神にはメガネが必須アイテムらしいです♫

⑤「蜘蛛の意図語」
・・トランシー家の人物紹介?
とりあえず、使用人の3つ子が笑えます( ゚∀゚)アハハッ

Ⅱに満足いかなくても、これを観ればきっと満足出来るはずですよー!黒執事ファンなら是非♥

投稿 : 2024/06/01
♥ : 26

85.6 3 ダークファンタジーで女王なアニメランキング3位
進撃の巨人 Season3(TVアニメ動画)

2018年夏アニメ
★★★★☆ 4.0 (783)
3942人が棚に入れました
百年の長きに渡り人類と外の世界を隔ててきた壁。その壁の向こうには見たことのない世界が広がっているという。炎の水、氷の大地、砂の雪原……。本の中に書かれた言葉は、少年の探究心をかき立てるものばかりだった。やがて時が過ぎ、壁が巨人によって壊された現在、人類は一歩ずつ世界の真実へと近づこうとしている。巨人の正体は何なのか? 何故、壁の中に巨人が埋まっていたのか? 巨人化したエレン・イェーガーが持つ「座標」の力とは? そして、ヒストリア・レイスはこの世界の何を知るのか? エレンら104期兵を加え、新たな体制となったリヴァイ班。行動を開始した彼らの前に、最強最悪の敵が立ち塞がる。

声優・キャラクター
梶裕貴、石川由依、井上麻里奈、下野紘、小林ゆう、三上枝織、藤田咲、細谷佳正、橋詰知久、谷山紀章、嶋村侑、津田健次郎、朴璐美、小野大輔、神谷浩史、子安武人
ネタバレ

ヘラチオ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

安定の内ゲバ

ここの話からは原作を一切読んでいないので、わくわくしながら見た。

話の流れ的にそうだと思ったが、内ゲバ続き。内部が腐ってたらしょうがない。
今回もいっぱい人死ぬの辛い。

ただ、リヴァイの活躍が多めで嬉しい。{netabare}巨人じゃなくて人間相手だが。{/netabare}

ヒストリアが大活躍。{netabare}居座っていた王家は偽者でヒストリアこそが真の王位継承できる。ダイダラボッチなお父さんにとどめを刺したわけだし。{/netabare}
巨人の秘密も段々明かされていく。
{netabare}エレンの父が元々の王家の血を根絶やしにして、人類を救うために巨人になる因子を奪ってエレンに与えた。{/netabare}

アッカーマンにまつわる話も。
{netabare}リヴァイもそうやったんか。ケニーは叔父さんだと!{/netabare}

{netabare}ギャグみたいな最初のほうの訓練も伏線あったとは。教官はエレンの両親と知り合いで調査兵団になってほしくないから、しれっと装置をいじっていたのだな。{/netabare}

貴重な肉ではしゃぐ回は息抜きのギャグ回で良かった。
{netabare}意識を失っても動き続けるサシャと誰も喧嘩を止めてくれないせいで辞め時を失い、しょぼいパンチを繰り出し続けるジャンとエレン。{/netabare}


OP
Red Swan YOSHIKI feat. HYDE
ED
暁の鎮魂歌 Linked Horizon
YOSHIKIとHYDEって豪華すぎる。


以下はアマゾンプライムから引用のあらすじ。
百年の長きに渡り人類と外の世界を隔ててきた壁。その壁の向こうには見たことのない世界が広がっているという。炎の水、氷の大地、砂の雪原……。本の中に書かれた言葉は、少年の探究心をかき立てるものばかりだった。やがて時が過ぎ、壁が巨人によって壊された現在、人類は一歩ずつ世界の真実へと近づこうとしている。巨人の正体は何なのか?何故、壁の中に巨人が埋まっていたのか?巨人化したエレン・イェーガーが持つ「座標」の力とは?そして、ヒストリア・レイスはこの世界の何を知るのか?エレンら104期兵を加え、新たな体制となったリヴァイ班。行動を開始した彼らの前に、最強最悪の敵が立ち塞がる。


1. 狼煙
エレンたち104期生は新たにリヴァイ班へと編入されることになった。ウォール・マリアに開けられた穴を塞ぐという当初の目標を達成するため、巨人化したエレンの体を自在に硬質化する方法を探る実験を進めるハンジだったが、そこへニック司祭が何者かに殺されたという知らせが入る。ニックの殺害が憲兵団の手によるものと断定したハンジの報告を受けたリヴァイのもとに届く、エルヴィンからの手紙。そこに書かれていた内容とは……?

2. 痛み
エレンとヒストリアを乗せた馬車が襲撃され、そのまま二人が攫われてしまった。追おうとするリヴァイの前に立ち塞がる謎の男。その顔を見て、リヴァイは「ケニー」と叫ぶ。どうやらリヴァイにとって、過去に因縁のある相手らしい。二人の戦いは、まさに相手の命を奪おうとするものだった。巨人対人類ではなく、人類同士が立体機動装置を用いて行う死闘。その信じられない光景を目撃したジャンたちもまた、戦闘に巻き込まれていく。

3. 昔話
攫われたヒストリアが目を覚ますと、そこには彼女の父親を名乗るロッド・レイスという中年の男がいた。ロッドはヒストリアを抱きしめながら、レイス家にまつわる重大な秘密を打ち明ける。一方、ハンジも捕らえた憲兵の口を割らせて、レイス家の秘密を掴んでいた。今後の方針を決定するため、エルヴィンにレイス家の情報を伝えようとするハンジ。その頃、エルヴィンはピクシスと面会し、人類の歴史を動かす決意を表明するのだった。

4. 信頼
憲兵団の策により、民間人を殺害した罪を着せられてしまった調査兵団。彼らが潜伏する森の中に、見回りをしていた男女二人の憲兵、マルロとヒッチが足を踏み入れる。水汲みをしているアルミンを発見するも、逆にリヴァイたちによって拘束された二人。だが、憲兵団のやり方に疑問を感じるマルロは調査兵団への協力を申し出る。リヴァイは二人の身柄をジャンに預けるが、ジャンは彼らのことを信用しておらず、ナイフを向けてしまう。

5. 回答
ついに調査兵団の命運が尽きようとしていた。中央憲兵に追い詰められ、エルヴィンの処刑が執行されようとしていたのだ。王の間にて、最後の裁判を受けるエルヴィン。調査兵団を失うということは、人類の矛を失うことを意味する。――エルヴィンの主張に誰も耳を貸そうとせず、処刑台へと連行されそうになった矢先に、超大型巨人と鎧の巨人がウォール・ローゼを突破したとの情報が入る。はたして、人類の未来を託すべきは誰なのか!?

6. 罪
どれほどの時間が経ったのか。礼拝堂の地下で目を覚ましたエレンの体は鎖で拘束され、目の前にはすべての記憶を取り戻したというヒストリアが、ロッドと並び立っていた。ロッドとヒストリアの手が背中に触れたことで、エレンの脳内に浮かび上がってくる忌まわしき記憶。それは、5年前のある夜にレイス家を襲ったという悲劇の真相だった。あの夜、ロッドから家族を奪ったのはエレンの父、グリシャ・イェーガーだというのだが……。

7. 願い
ロッドが語るレイス家の真実。何代にもわたって受け継がれてきた巨人の力は今、エレンの中にあるという。ヒストリアは叫ぶ、その力を手に入れ世界の歴史を継承し、この世から巨人を駆逐することこそが自分の使命だと。一方、真実を知ったエレンは償いきれない罪を犯してしまったと涙を流し、人類の命運をヒストリアに託す覚悟を決める。そんなエレンの想いを受けたヒストリアは、ロッドのもくろみ通り巨人化してしまうのか?

8. オルブド区外壁
ヒストリアはロッドに逆らい、エレンを連れて礼拝堂から脱出しようとする。すると、床にこぼれた薬品を体内に取り入れたロッドが巨人化してしまった。その衝撃で飛ばされるヒストリアと拘束されたままだったエレンを、駆けつけた調査兵団の仲間たちが救う。そうしている間にもロッド巨人の体は形成されていき、その大きさは超大型巨人をも超えるものとなった。仲間が危機に直面したとき、エレンは再び自分を信じることを選択する。

9. 壁の王
エレンは仲間を守ることができたが、同時にロッド巨人も地上に出てきてしまった。高熱を発し、周囲の木々を焼きながら、ロッド巨人はゆっくりと歩みを進める。その先にはオルブド区があるが、エルヴィンはあえて避難指示を出さずに巨人を迎え撃つ作戦を立てる。被害がウォール・シーナの中心部にまで及ぶことを防ぐためにオルブド区の住民をおとりにしつつ、ひとりも死傷者を出さないという困難な戦いに、調査兵団が立ち向かう。

10. 友人
ロッド巨人は倒され、自らとどめを刺したヒストリアは住民や兵士たちの前で自分が真の王であることを宣言する。その頃、礼拝堂の崩落現場から脱出したケニーは大量の血を流し、息も絶え絶えになりながら横たわっていた。ケニーの脳裏に浮かんでは消える自らの壮絶な生涯-。ふと気がつくと、目の前にはリヴァイが立っていた。ケニーは生きるための最後のあがきをするかのように、巨人化する薬品の入った注射器を取り出すのだった…

11. 傍観者
ヒストリアの戴冠から2か月。牧場で孤児たちの面倒を見るヒストリアは、人々から親しみを込めて「牛飼いの女神様」と呼ばれていた。調査兵団ではエレンが得た硬質化の能力に関する実験が行われ、対巨人兵器の開発に成功する。度重なる実験は体に大きな負担を強いるものだったが、エレンは、巨人を一掃できるなら自分の身が削られることなどいとわない覚悟を見せる。そして、ある人物のことを思い出すのだった。

12. 奪還作戦の夜
調査兵団の悲願であるウォール・マリア奪還作戦は、2日後に決行されることとなった。リヴァイは手負いのエルヴィンに対し出陣を控えるよう進言するが、エルヴィンは固辞。「この世の真実が明らかになる瞬間に立ち会わなければならない」と語るエルヴィンの強い意志に、リヴァイも納得してその場を去るのだった。その夜、兵舎で盛大な宴会が催され、英気を養う兵士たち。エレンたちはここまでの戦いを振り返り、決意を新たにする。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 8

ようす さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

「その行いが報われる日まで、進み続けるんだ。これは、お前が始めた物語だろう。」

進撃の巨人・3期。

1期(25話)と2期(12話)または、
総集編劇場版映画3作を見てから視聴してください。

2020年秋には4期も放送予定!

今回はなかなかアツい展開続きだったので、
4期が決定しているのは嬉しいです♪

3期は分割2クールで、全22話です。
まとめてレビューします。


● ストーリー
人を食べる巨人から身を守るため、
三重の壁に囲まれた国の中で暮らす人類。

エレン・イェーガー(♂)は、
壁の外へ遠征して調査を行う調査兵団の一員であり、
巨人化の力を持つ少年。

特別な力を持つ存在として、
正体不明の敵から狙われていた。

エレンの父が世界の秘密を隠したという地下室を目指して、
調査兵団はエレンの昔の家を目指す。


これまでは巨人vs人類という構図だったのが、
3期では人vs人とという場面が多くなっていました。

謎だらけのこの世界で、
いろんな立場の人間の思惑や秘密がぶつかり合っていく。

そして徐々に明らかになる世界の謎。

2期までは謎まみれだったのですが、
3期の終わりには大部分の謎が明らかになります。

この世界はなぜ3重の壁に囲まれているのか、
巨人とは一体どこから来るのか、
エレンを狙う敵の目的とは、
エレン達が持つ巨人化の力とは、

などなど、1期や2期での謎はほとんど明かされます。

その分、新たな謎がまたどーんと置かれてしまったのですが。笑
(これは4期へ持ち越し。)

特に3期後半、エレンの家の地下室を目指す戦いは、
かなり絶望的な状況の中で抗う調査兵団の姿がかっこよくて…。

命をかけて、最後の最後まで己の信じるものだけは貫こうとする姿に、
毎回目が離せませんでした。一気に最終話まで駆け抜けたくなりました。


≪ 失う辛さと自分にできること ≫

巨人がうろつく壁外で調査を行う調査兵団には常に危険がつきまとい、
いつ命を落としてもおかしくない。

今回も恐ろしい数の調査兵団員が命を失います。
誰もが、大切な仲間を失っていく。

辛いなあ。辛いよ。
大切な仲間を失う辛さをこの人たちはどれだけ経験してきたのか。

気が付けば、みんな死んでしまった。
気が付けば、自分だけが生き残っていた。

残された自分にできることは、ただ意思を引き継ぎ、進むことのみ。
だから立ち止まることは許されない。

この世界にいると、ゆっくり悲しみに浸る暇なんてなくて、
誰かを失った辛さも悲しみも、激動の世界に押し流されてしまう。

それでも、己の道を信じて進む。
この先に、彼らが夢見た未来があると信じて。
そんな未来は本当に存在するのか?と挫けそうになる心と共に。


≪ 人と世界 ≫

初めは、壁の外の自由を手に入れたいという願いからだった。
人にとっての脅威は巨人だった。

だけど、気が付けば真の脅威は同じ人間であり、世界であった。
私達と同じだった。

結局のところ、世界のすべての人が平和に過ごすことなんて、
不可能なのだろうか。

平和に、自由に暮らしたい。
たったそれだけの願いを、私達はずっと叶えられずにいる。

誰かより幸せになりたい、誰かより豊かでありたい。
そんな願いを持ってしまった時点で、人間は世界に敗れたのだろうか。

エレン達も同じ道にたどり着いた。
そして繰り返そうとしている。

平和で自由な世界を手に入れる。
そのためなら、自分の周りの世界以外はどうなってもいい。
むしろ、これまでされてきたことへの恨みを晴らしてやる。

エレンたちがこの先どのような道を選ぶのかはわからないけれど、
彼らなら別の道を見せてくれるのではという期待もある。

いつか世界のすべてが平和になる日まで。
自分には何ができるのか。

何かできるとしても、行動に起こすことができるのか。
自分には自信がないなあ。

そう考えると、
次々と行動を起こすエレン達は本当にすごいなと思います。


● キャラクター
世界を変えるために立ち向かうキャラクターたちは、
みんな強くてかっこいいです。

望んだものを得るための戦い、
その中で生きることを選んだ人たちばかり。

誰が一番好きかと問われると悩みますが、
やっぱりリヴァイ兵長かなあ。

今回の無双っぷりも半端なかったです。


● 作画
今回も高いクオリティ!

演出もかっこよくて、
特に立体機動装置でびゅんびゅんする時のカメラワークが動く動く。

BGMのかっこよさと合わさって、
毎回いい演出を見せてもらいました。

かっこよかったです!


● 音楽
【 前半OP「Red Swan」/ YOSHIKI feat. HYDE 】
【 後半OP「憧憬と屍の道」/ Linked Horizon 】

前半OPは1期や2期とは違う雰囲気でした。

でもOP映像の美しさと合わさって、
こちらもいい感じ♪

リンホラOPはやはり初代のインパクトが強すぎるから、
ここで雰囲気変えるのもよかったと思います。

後半OPはリンホラOPに戻ったので、
なんだか懐かしさもありましたw

今までのOPの要素を織り交ぜつつの曲で、
もはや自分には1期~3期のOPの違いを聞き分ける自信がありませんが(笑)、

実際に聴き比べてみるとちゃんと違っていて、
むしろこの3期のOPは今まで以上にかっこよく感じました。

アニメーションもスピード感ありまくりで、超かっこいい!


【 前半ED「暁の鎮魂歌」/ Linked Horizon 】
【 後半ED「Name of Love」/ cinema staff 】

今までOPを担当してきたリンホラが一度ED担当になったのは、
曲の雰囲気も変わってよかったと思います♪

いつもの激しいOPに対して、今回のEDはおとなしいけれど、
雰囲気は抜群でした。

でもそれ以上によかったのが、後半ED。

こちらもしっとりとした曲だけど、
彼らの境遇とぴったりすぎてぐっとくる…。

いつか今の苦しみや悲しさが、
すべて報われる日が来ますように。


● まとめ
作画や演出は見事だし、
ストーリーもわかりやすかったです。

かなり大きく話が進みました。

原作も読んでいるのですが、
そちらは飽きてきていて…^^:

だけど、アニメでまたおもしろいと思えました!
2020年秋からの続編が楽しみです^^

投稿 : 2024/06/01
♥ : 26
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

リヴァイよ、今夜もありがとう

2018.10.17記


原作既読。


初見時TV版1期2期を観てません。3期放送に先立ち下記劇場版のTV放送をおさえた上で参戦しました。

・劇場版 前編〜紅蓮の弓矢〜 / 後編〜自由の翼〜
・劇場版 Season2〜覚醒の咆哮〜


そうですね。いつしか観ようTV版!(※注:その後視聴済)


そしてTV版のおさらい~wikiより~

・第1期:全25話 + OAD5話
・第2期:全12話

第3期は分割2クールのようでいったん1クールめ12話分のレビューとなります(2018年10月時点)。物語の表現上は“第38話~49話”の扱いとのこと。
放送局は天下のN○Kに移り、ほぼ全国同時放送となりました。人気作の続編として期待と不安入り混じる下馬評だったかと思います。


ぱっと見

 “内戦(仮)”


2期までに綴られたであろう巨人VS人類の構図が変わり、壁内の人間同士の争いに焦点を絞り物語が展開します。そしてこれまでの謎が次々と明かされていくことになり目が離せないです。
ニック司祭殺害に端を発し、{netabare}ウォール・マリア奪還作戦手前までと{/netabare}区切りのいいとこまでやって1クール終了です。
原作通りでもあるし、人間VS人間の萌芽は2期までに描かれていた(たぶん)ため驚きの展開というわけではなかったと思います。

冒頭述べたようにTV版未視聴なので、前期・前々期との比較はできませんが、市外戦闘の作画は凄まじかったと思います。
草原など奥行きのある背景でデカブツを相手にするよりも目まぐるしく絵が変わる市外戦は作品通じての見どころになりますね。

それと、全話通してリヴァイ兵長が出演します。録画した回を観る度に兵長の雄姿を拝めるのは眼福でした。さらにはリヴァイの生い立ち含めた過去話に踏み込むのでファン必須でしょう。


バトルもありながら政治重視の様相を呈する展開には、これまでと趣きが変わる分戸惑うかもしれませんが、原作がそうなのでほんとに好き好きということになるかと思います。
これまでOPを担当していたLinked HorizonからYOSHIKI&HYDE組にバトンタッチして、そこにN○K色を感じなくもない今日この頃ですが、結局のところOP画像のミカサの笑顔はいったいいつ拝めるのだろうと願いつつ、人間同士の抗争(正確には権力闘争)に突っ込んでいく3期前半パートとなりました。

{netabare}49話でミカサが「これが終わったらあの頃のように…」的なことをつぶやきます。ほんとそうですね。{/netabare}


2019年4月再開予定の放映も視聴予定のため、そちら含めて完走したらあらためてレビューも纏めたいと思います。いったん「観終わった」にしときます。



【閑話休題】藤井聡教授の見立て
今から7~8年前くらいだったでしょうか。氏のインタビュー映像かなんかで、氏の息子の薦めで漫画版を読んだ時の印象について言及があり、それがなかなか面白かったので紹介しておきます。
ちなみに私が原作を手に取ったのはこの藤井教授に触発されたのがきっかけ。。
※アニメ関係ないので畳みます

{netabare}曰く、この壁の中の人類ってまんま今の日本人のこと指してんじゃん、と。

『壁の中なら安全』壁は未来永劫自分たちを守ってくれると固く信じている
『壁の外は知りません』外界の動向をきちんとウォッチすることを放棄
『上記2つを破るものは制裁』現状維持しようしようと躍起になる勢力がある

こんな主旨だったかと思います。
上記3点はすなわち“欺瞞”ということで、いったん壁破られたらどうなん?を描いたのがアニメ1期ということになります。いましたね、昼から飲んだくれてる憲兵団が。そして既得権力として上記3つを堅持しようとする王政府(偽)が。そして壁破られて右往左往する人類が。

劇中では、外の世界に興味津々のアルミンと触発されたエレン。ならびに外を知らずして人類に未来無し!の調査兵団、という組み合わせでした。
外の世界を知り、その上でしっかりと準備し、外敵が来たら駆逐する、といった当たり前のことを作品を通じて訴えており、そこが琴線に触れたんじゃないか、との氏の見立てです。

だからヒットしたかどうかというのは違うと思いますがね。{/netabare}

{netabare}で、今回は内戦(仮)です。巨人には元々人類だったやつもいるよ、からの3期の展開です。
物語として、巨人VS人類から人間VS人間にシフトして戸惑う部分も多いかもしれない本作ですが、一般論として、外敵と対峙する際に内なる敵を抱えたままだとほぼ勝利を収めることは難しいのが世の常。
そんな事情があったかどうかは露ぞ知らぬところではあるものの、壁の中での争いに物語がシフトしたのはある意味当然なのかもしれません。{/netabare}



視聴時期:2018年7月~9月 地上波リアタイ

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2019.04.09追記

その後、TV版1期2期を視聴済。劇場版のみでもすんなり入れたのは事実なのですが、もう一度3期前半をおさらいしてみると、ライナーのくだりとかTV版を抑えておいたほうが良いように思えました。少しばかり後悔してます。

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2020.01.31
《配点を修正》+0.1



2018.10.17 初稿
2019.04.09 追記
2020.01.31 配点修正
2022.02.27 修正

投稿 : 2024/06/01
♥ : 64

88.7 4 ダークファンタジーで女王なアニメランキング4位
進撃の巨人 Season3 Part.2(TVアニメ動画)

2019年春アニメ
★★★★★ 4.1 (700)
3470人が棚に入れました
人類が永きに亘って壁の中に隠してきた、大いなる秘密――。 その真実に一歩近づいた調査兵団だったが、時の王政により反逆者の汚名を着せられてしまう。 しかし、人類はただ飼われるだけの家畜ではなかった。 真実を追い求めるエルヴィン・スミスの執念は兵団のトップを動かし、遂に現体制に対するク ーデターが勃発する。民衆を欺き続けた偽りの王は退き、真の王家の血を引くヒストリア・レ イスが即位。自ら巨人を討ち果たした勇敢な女王のもと、人類は新たな時代を迎えようとして いた。 エレン・イェーガーが得た硬質化の能力と、そこから誕生した対巨人兵器。 着々と反抗の準備を進める人類は、悲願のウォール・マリア奪還作戦を決行する。 人類と巨人、互いの生き残りを賭けた究極の戦い。 その先にエレンは、人類は、はたして何を手にするのだろうか?

声優・キャラクター
梶裕貴、石川由依、井上麻里奈、下野紘、小林ゆう、三上枝織、谷山紀章、細谷佳正、橋詰知久、朴璐美、小野大輔、神谷浩史、子安武人
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

俺たちの進撃よ お帰りなさいませ!

この絶望と高揚

つくづくこの作品は極限下の人間描写が素晴らしい。

進撃の巨人3期Part2は全10話。継続No.ですのでクレジットは#50~#59ということになります。極めて濃厚あっという間の10話でした。今クール(2019年春期)ひいては今年上半期の最優良物件と感じる自分はこうも思ってます。


 “途中で断念したみんな!戻っておいでよ!”


1期#01~#25、2期#26~#37、3期Part1#38~#49、そしてPart2とこれまで間隔を空けながらも足掛け5年は続いている長編物語は未だ道半ばにあります。
Finalと銘打たれたシリーズが2020年放送予定とのことでクール数不明ながらクレジット#70を超える大作として幕を下ろすのでしょう。

本作の良さはこれだけ長く続いているのに物語の整合性が保たれているところにあります。
私は原作組でもありますが、アニオリ入れても本筋から逸れることがない。その本筋は一本の線で筋が通っている。ブレがありません。
1期で提示されたのは未知なる巨人の圧倒的な力に抗う人類の意思でした。2期で巨人は見えない恐怖から見える恐怖に変わり、3期ではPart1&2を通じてこの世界の仕組みに踏み込んでいきます。
2期あたりから、外形的な巨人の恐怖が変わったことを面白くないとみる層が一定数いたのも事実でした。あまりこういうことは言わないのですがもったいないことをしてると思われます。出戻ってここまで辿りつけば報われる3期Part2と言えましょう。

やや説明的な3期Part1を踊り場にして、3期Part2では1期さながらの対巨人バトルが復活。これまでの物語の積み重ねによって闘う意味に極めて重たい理由が課せられた上での死闘が繰り広げられることになります。
さらにこれまでのあの場面に出てきたアレ。この場面でのあのセリフ。綺麗に伏線の回収がなされていきます。そしてFinalに向けての新たな謎撒き。ここまでくると、未回収の謎にもきっと答えを出してくれるのだろうとの信頼をこの作品に寄せることができてます。だからこそあらためて言いたい。


“途中で断念したみんな!戻っておいでよ!”


RevoさんもOPに返り咲きましたし。正直なところ曲単体での魅力は乏しいといいますかあんまりお上手ではない方ですよね。それでも進撃の物語にはしっくり馴染むのです。名曲「紅蓮の弓矢」を転調アレンジした「憧憬と屍の道」って、虎舞竜「ロード第二章」との既視感がハンパありません。
・・・褒めてんだか貶してんだか、こちらの曲は今から加速してくぞ!ついてこいよ!を宣誓する凱歌のように私は捉えておりました。


さて、全く未経験な諸氏向けにはどうか?
59話終わってなお続きが気になる物語です。長丁場は承知の上、Finalシリーズを共に楽しむために予習を済ませておきませんか?と推薦しておきたいところです。



■野球は巨人 対する阪神は新劇いや進撃
こんな危険球は嫌だ!の声が聞こえてきそうです。
※纏められなかったがこのエモさだけは残しておきたい!的な以下。

{netabare}#50~#55までの獣の巨人戦を軸とした戦闘描写は特濃レベルでした。ここまで6話分。辞書に無駄回という語が載っておりません。{/netabare}

観ていて苦しくなります。民族殲滅を目的とした強大な相手に対してどう対処すればよいというのでしょうか?
話せばわかるが通じない相手に非力な側ができることには限りがあり、“家畜の安寧”を甘受しようとも先細っていくのは避けられません。

{netabare}#54と前後の回は本作のピーク。

1.エルヴィン・スミスの諦観
「そして私は真っ先に死ぬ。地下室に何があるのか…知ることもなくな…」
これまで頼れる団長、超絶リアリストだったエルヴィンも事ここに至りて感情のある人間だったという事実に驚く。一呼吸置いてそりゃ人間だもんなの納得感に落ち着く。
「俺は選ぶぞ。夢を諦めて死んでくれ。新兵達を地獄に導け。獣の巨人は俺が仕留める」
#53はエルヴィンとリヴァイのやりとりだけで通常なら神回相当。

2.リヴァイの誓い
「待てよ…俺はあいつに誓ったんだ…必ずお前を殺すと…」「誓った!」
獣の巨人を仕留めにかかるリヴァイは作画の凄さも相まり冗談抜きで震えがきた。そして何回も観た。
死んでくれ!と自分が言った盟友との約束。死者(この時点では仮だが)との約束は限りなく重い。

3.アルミンの嘘
「エレン…わかってるよね?一緒に海に行くって約束しただろ。僕がエレンに嘘ついたことあった?だから何があっても僕の作戦守ってくれよ!」
「クソ…わかってたハズなのに…」
「わかってた…お前が誰よりも…勇敢なことぐらい…」
大人達から一転エレンサイド。ここまでしないと突破できない絶望的な状況というのがやるせない。エレンも泣き叫ぶでなく静かに咀嚼する。
#54は鋼、超大型、獣と無理ゲー級の負け戦からの大逆転ながらカタルシスはなし。これ凄いことです。

4.そして選択
リヴァイはアルミンを選んだのではなく、エルヴィンを選べなかったのだと思う。
壁の外。地下室に行きたいエルヴィンと海を見たいアルミンとが描く夢は一緒。諦めさせた夢を掘り起しもう一度地獄を見せることは出来なかったのだろう。団長R.I.P(T_T)
何を選ぼうがどれを選ぼうが地獄という世界は残酷この上ない。きっとこの後、“ここに団長がいれば”という展開が予想され、逆でも“ここにアルミンがいれば”となるのは必定な展開が透けて見える。
なにも時間をかけた選択ばかりを指さない。
・獣を足止めして生存者がいないかと逡巡したリヴァイ
・ライナーの取り扱いを巡るジャンとハンジの躊躇
瞬時に最適解が求められる戦場の非情さがものの見事に表現されているのだ。たまらん。

「アルミン、またな…」
リヴァイが団長を選ぶかという時にアルミンを前にしてのコニー。自身の死をも見越した別離の声掛けなんだよね。
#55 気持ち良さがまるでないが目の離せない展開が続きます。{/netabare}

ここまでお涙ちょうだいはないのですが泣けます。



視点を変えて、、、
こんな事態に陥る前に何ができたでしょうか?味方の損失を抑えるために何が必要だったのか? 諸々端折ると、正確な情報(インテリジェンス)が手元にあればということになるんだと思います。

{netabare}ミクロでならライナー達の潜伏位置や作戦内容。いくらこちらが弱くてもこれさえあれば何とかなりますし有能な指揮官なら次善策プランBプランCくらい練るでしょう。
マクロでなら巨人の正体。単に弱点突破の戦術のみならず、そこに係る利害関係者の思惑や力関係までも包括する情報を指します。{/netabare}

極地戦闘だろうが、国防外交だろうが情報をおざなりにして生き残った組織・国家は古今東西あるんでしょうか?答えは否。
戦争を起こさないために、有事に被害を最小限に食い止めるためにインテリジェンスを強化しないといけないのです。ここ無くして交渉もへったくれもありません。
アホが運用したら危険だ。その通りです。ただし仕組みが無ければやられ放題。仕組みを作った上でさっきのリヴァイの1000分の1程度の負担で糞の中からまだマシな者を選ぶ。我々だって当事者なのです。・・・あ、脱線してもうた。


「僕たちは圧倒的に情報が足りない」
アルミンが再三再四指摘していたことは本質を捉えているのです。


本作3期Part.2の後半は、足りない情報が埋められていく話。納得性のある超展開が待ち受けていることでしょう。
そして、来たるFinalシリーズでお会いしましょう。



視聴時期:2019年4月~6月 地上波リアタイ

-----



2019.07.10 初稿
2020.01.31 修正
2022.02.27 修正

投稿 : 2024/06/01
♥ : 71
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

壁を超えた先の遥かなる夢

アニメーション制作:WIT STUDIO
総監督:荒木哲郎、監督:肥塚正史、
シリーズ構成:小林靖子、キャラクターデザイン:浅野恭司、
音楽:澤野弘之、原作:諫山創

人類の歴史とともに生まれた壁に囲まれた城郭都市。
エジプト文明や古代ローマの時代から
外敵の侵入を防ぐための「壁」は、建設されていた。
エルサレムの旧市街やクロアチアのドブロヴニクには、
現在でも城郭都市が残っている。
そんな歴史を『巨人』が跋扈する架空の世界に置き換え、
見事なエンターテインメントとして成立させた作品。
いよいよクライマックスを迎え、
多くの謎が明らかになっていくPart.3だ。

シリーズは2010年代を代表する大ヒット作だが、
個人的には評価が乱高下していた。
異質な世界観は面白いのだが、
観ていると、作者の都合の良いように
ストーリーが展開しているように
より強く感じさせられてしまったからだ。
その違和感から冷めた目で見てしまう。
{netabare}特に女型の巨人が生き残る展開から
付いていけなくなり、興味がなくなってしまった。{/netabare}
それは、犠牲者が出るからということではなく、
人間の生きているストーリーとして
リアリティを感じられなくなってしまったからだった。

ところが、Part.3に入って、
様々なことが明らかになるにつれ、
Part.1と2の話が全て伏線としてつながっていく。
死んだ登場人物たちが意味のある存在として
物語のなかで浮かび上がってくるように感じる。
それによって、深く物語に没入することができた。
多くの事象がクライマックスに向けて収斂していく。
リヴァイを筆頭にエルヴィンや主役の3人の
キャラクター造形もいい。原作者が最初から
ほとんどの設定を決めて書いているだけに、
キャラの一人ひとりが、よりくっきりと
リアルな姿形で象られている。
主要人物の過去が語られることで、
それぞれの信念を追体験できるのが、
大きな魅力となっている。

同時にPart.3には、大きな柱がある。
それは全員が巨人たちによって支配された世界からの
脱却を求めているとともに、
各々が叶えたいと思っている夢が表出することだった。

アルミンの夢は、築いた壁の向こう側にある
遥かなる海を見ること。
未知の世界に対する憧れ。
またエルヴィン・スミスは、
世界を覆う未知の謎を知るためだけに、
全てを捨てて本心を隠し続け、偽りの世界に生きていた。
{netabare}そして、遥かなる夢を未来に見る者と、
全てを偽り続けながら真実に近づこうとする者との間で
命の選択が行われる。{/netabare}

本当に大切なものを守るために、
人は自分勝手になってはいけないのか。
戦時中の心情は、単純なものではないだろうが、
それでも利己的な物語のほうが好感を抱く。
大義で動くよりも、もっと個人的なことで
最終的には動いてしまうほうが
人間らしいと思ってしまうのは私だけだろうか。

ふたつの夢が交錯し、一方は潰えてしまう究極の物語。
SEASON3の最大の見せ場だ。

そしてもうひとつファイナルに向けて
示された大きな夢がある。
それは「進撃」を続けなければならない
人の使命とでも言うべきもの。
57話から59話で語られるエレンの父・
グリシャ・イェーガーの物語。
私はこの物語で、アルベールビル・オリンピックの
原田雅彦を思い出した。

スキージャンプ団体戦の決勝で原田は勝利を目前にした
最後のジャンプで大きな失敗をしてしまい、
日本は銀メダルに終わってしまう。
ジャンプが終わった後に頭を抱えて
うずくまる原田の姿は忘れられない。
日本中が落胆した日だった。
しかし、それ以上に脳裏に焼き付いているのは、
帰国した直後のインタビューだった。
そのときに原田は「私はこのことを背負って、
ずっと生きていきます」と覚悟を語ったのだ。
私は子供ながらに、凄い人だと思った。
帰国直後に、彼は全てを受け止めて前に進もうとしていたのだ。
後に長野オリンピックで、その覚悟を改めて示すことになる。

今回のラスト3話でクルーガーが巨人を託す相手として
グリシャを選んだ理由----
{netabare}それは妹を連れて壁外に出たことが原因で、
妹を殺されたからだった。
人は失敗を犯した日の後も生き続けなければならない。
クルーガーが初めて同胞を巨人にして崖から突き落とした日を
絶対に忘れていないことと同じだった。{/netabare}
何かをやり遂げるには、全てを受け止めて、
過ちの日からも進み続けなければいけない。
そんな強い意志が必要なのだ。

歴史は繰り返すと言われる。
しかし、過去を忘れ去ってしまい、
負の歴史を繰り返してはならない。
そのためには「痛み」が継承されるべきなのだ。
ラストに向けて人類の夢は、
どのような形で示されていくのだろうか。
(2020年2月15日初投稿)

投稿 : 2024/06/01
♥ : 57

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

人類が永きに亘って壁の中に隠してきた、大いなる秘密…。

2019年の春アニメで放送されたのは、第3期の後半クールになります。
視聴を続けてきた方みんなが如実に感じていると思いますが、season3に入って物語がだいぶ核心に迫ってきていると思います。
最近、第2期を再度一巡する機会がありました。
改めて見てみると、これまで何気なく見聞きしてきた台詞や言動が全て今に繋がっている事に気付くことができます。

ライナーやベルトルトの不可解で意味不明だった物言い…
当時、視聴していた時にはすっと流していましたが、それらの伏線が今になって回収されるなんて…
でもこれに気付いたのは再視聴したからで、そうじゃなければすっかり忘却の彼方だったと思います。

今期を一言で総括すると「色々と衝撃的なクールだった」に尽きると思います。
衝撃の具体的内容はネタバレになるので記載できませんが、公式の物語から推察はできると思います。
またネタバレ要素も無いので、以下に紹介しておきます。

第50話 はじまりの街
夜陰に乗じてウォール・マリをめざす調査兵団。深い眠りにつく巨人の横を通り向ける一同の中で、エレンはひとり呼吸を乱していた。
「もしも奪還作戦に失敗したら?」「自分は人類を救えるのか?」震えるエレンに声をかけたアルミンは、エレンとこれまでのことを振り返る…。

第51話 雷槍
「獣の巨人」を中心とした巨人の大群が出現し、調査兵団は完全に包囲されてします。彼らは足となる馬を死守しつつ、「鎧の巨人」の打倒に全力を挙げる…

第52話 降臨
調査兵団が開発した新兵器・雷槍による攻撃を受けて、「鎧の巨人」は完全に活動を停止したと思っていた。そんな彼らの目の前で「鎧の巨人」は再び動き出し、咆哮を上げる…。

第53話 完全試合
辺り一帯が火の海と化した中、さらに、シガンシナ区の内と外で調査兵団は完全に二分されてしまった。一方、エルヴィンやリヴァイらは「獣の巨人」の投擲による石礫の雨にさらされていた…。

第54話 勇者
絶対絶命の状況の中、調査兵団の新兵たちは、エルヴィンの指揮のもと決死の覚悟で「獣の巨人」に突撃する。一方、エレンたちもまた、ある作戦を練っていた…。

第55話 白夜
エレンはアルミンの前に立ち尽くしていた。悲しみに暮れるエレンのもとに、壁の上から2つの影が姿を現す…。

第56話 地下室
シガンシナ区の壁上。生き残った調査兵団はわずかであった。そしてエレンは、自身の生家の地下室へと足を進める…。

第57話 あの日
エレンの父・グリシャが残した本には、彼の記憶が綴られていた。まだ幼い少年であったグリシャは、ある日突然に、この世の真実と向かい合うことになる…。

第58話 進撃の巨人
グリシャが残した記憶。その中でギリシャが、ある任務を託されることになる…。

第59話 壁の向こう側
壁の外の真実と巨人の正体が明らかとなった。それを知ったヒストリアと兵団幹部たちはある決断を下す。そしてエレンは、壁の外へと思いを巡らせていた…。


はっきりと物語が動いているのを感じることができます。
また、「進撃の巨人」のタイトルの伏線が回収できるのも、今期の大きな特徴だと思います。

そういえば、第1話は「二千年後の君へ」というタイトルでした。
その当時は対して気にも留めませんでしたが、ここまで視聴を進めてきて振り返ると、こんなにも壮大な物語だったんだと気付かされます。

原作者の頭の中は一体どうなっているんでしょうね。
原作は2009年の10月から始まったようなので、約10年が経過している訳ですが、そんな前からこの物語の落としどころをちゃんと考えていたんでしょうか。
だとすると、設定や物語の幹が相当緻密でしっかりしているんでしょうね。
これが面白さの秘訣なのかな…?

それと、今回はオープニングも好みでした。
差し出すのは相変わらず「心臓」でしたが、個人的に好きだったのはオープニングアニメ…
特に序盤…スローで動くリヴァイには鳥肌モノでした。

オープニングテーマは、Linked Horizonさんの「憧憬と屍の道」
エンディングテーマは、cinema staffさんの「Name of Love」

1クール全10話の物語でした。
第4期(The Final Season)が2020年の秋に放送が予定されています。
心境はちょっと複雑…
確かに続きは見たいけれど、終わってしまうのは少し寂しい…そんな感じです。
でも、放送を心待ちにしています。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 21

69.4 5 ダークファンタジーで女王なアニメランキング5位
約束のネバーランド(第2期)(TVアニメ動画)

2021年冬アニメ
★★★★☆ 3.2 (414)
1575人が棚に入れました
「約束のネバーランド」は、白井カイウさん原作、出水ぽすかさん作画による、「週刊少年ジャンプ」(集英社刊)にて連載中の人気マンガを原作としたアニメ作品。「週刊少年ジャンプ」28号(2020年6月15日発売)にて完結。コミックス1巻(2016年12月2日発売)から20巻(2020年10月2日発売)までの全世界での累計発行部数は2,500万部以上。第3回「次にくるマンガ大賞」コミックス部門2位や、宝島社「このマンガがすごい! 2018」オトコ編1位など、国内の数々のマンガ賞を受賞。TVアニメ化に際し監督は神戸 守さん、シリーズ構成は大野敏哉さん、キャラクターデザインは嶋田和晃さん、音楽は小畑貴裕さん、アニメーション制作は、「ダーリン・イン・ザ・フランキス」「PERSONA5 the Animation」のCloverWorksが担当する。

声優・キャラクター
諸星すみれ、茅野愛衣、林鼓子、伊瀬茉莉也、日野まり、久遠エリサ、植木慎英、森優子、白城なお、Lynn、青山吉能、神尾晋一郎、石上静香、河野ひより、種﨑敦美
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

姑息な俺は連れて行かないだろう

原作未読 続きもの全11話

鳥籠の鳥が籠を出てから、もとい牛舎の牛が鎖を断ち切り外へ飛び出してからを辿る第2期。
1期は自身クールトップ評価かつ滅多に出さない4.5点と非常に高く評価をしてます。
その際「農園出るまでがピークだよん」の声もあったりで冷静に期待値は控えめで迎えた今回の2期。
籠やら牛舎の中と外と舞台が変わるのに合わせて物語がどんな変化を見せるのか期待というより不安が先行してました。

だからでしょうか。評点は大幅に下げますがそれなりに楽しめた私。
「愛してたのに裏切ったわね?」の気分無きにしもあらずとはいえ許容範囲内に収まった感ありです。
そのへん後述するとしてダメだったとこ↓

構成ですね。全11話・短尺・駆け足・端折り過ぎでした。
やや外野の話。10話までシリーズ構成を原作者の白井カイウ氏が担当。なんで最終話やらんの?で邪推がはかどりそうです。
原作未読のためアニオリどうこうには無頓着ながらそれでも説明不足と感じろところ多々。ただしそれは最終盤に顕著だっただけで、それまではややご都合はあって好き嫌いあるかもねぐらいのレベル。
最終話至る前にやや好意的な評価を固めていたこともあって、飛ばし過ぎスピード違反の最終盤に戸惑いつつもまあこれはこれでいっかぁという感想です。

さてこれからの方に向けたおすすめポイントをば。
ヴィルク(CV上田敏也)なるアニオリキャラクターの醸し出す雰囲気がすこぶるよかったです。あの「小鬼だ…小鬼がおる」で有名な『ラピュタ』のポムじいさん感抜群で常田富士男さんが蘇ったかのよう。中の人上田さんも御年88歳と凄味が伝わる演技でした。
良くも悪くもトータル2クールで完結(たぶん)する手に取りやすいパッケージであることと、やや斜め上から見た「努力・友情・勝利」を楽しめる作品になってると思いますよ。

 

※ネタバレ所感

ここからあえて褒めるターン

■ベストセラー確約

『マム・イザベラの頭脳明晰/強い意志を持つ子供の育て方』

育児本出したら売れそうです。特に日本で。
{netabare}良い意味で引っかかったのは彼女の孤独。子供たちそっちのけで彼女の半生に想いを馳せると目から汗がでてきそう。
エマたちと違って仲間がおらず悲しみも苦悩も一人で受け止めるしかなかった彼女。友がいるからこそ乗り越えられる少年少女らのジャンプらしい“友情”を前に出しながら、むしろ一人で抱えてなお意志を貫いた大人の彼女に亡き友や息子(たぶんレイね)へ抱く強い愛を感じる。他のマムも同様に一人一人がイザベラだったことも想像に難くない。
やや駄々っ子、もはや鬱陶しさすら感じるエマの子供っぽさよりも深みのある情と聡明さを感じる傑出キャラでした。
最終話では“なぜそうしたの?”の説明は省かれてます。私は“そこまでしてでも守りたい一線だったのね”という角度から捉えております。{/netabare}


■エマへ相反する評価

{netabare}「今、日本の会社は、みんな失業者をかかえとるのや。私どもでも一万人は遊んでいる」

松下幸之助の弁。従業員を家族のように扱っていた在りし日の経営者の考え方がよくわかる一言です。
エマの選択で思い出したのがこれ。稼ぎ頭の幹部候補生がノーマンやレイなら平凡なサブリーダークラスがドンやギルダ。遊んでいる社員はちびっ子たち。
実際私だったらレイが言ってたちびっ子たち切り捨て案に乗るんだと思います。効率/生産性や利益確保を考えての合理的判断ってやつです。
しかしながら自身も就職氷河期世代の身。いまさら氷河期世代のリーダークラスいないって言われてもそこを育ててこなかったのお前らじゃん(怒)ってルサンチマンは正直あるんですね。
はっきり言ってエマは理想主義過ぎるのと、掲げる以上提示してほしい具体案に乏しいので苦手です。むしろ嫌いなタイプといってよい。
それでも理想と情熱が合理的判断の壁を越え良い結果をもたらすってのは匙加減間違えなければ大丈夫なわけでして、本作についてはOK組。なにもしないで転がり込んだ幸運ではなく、意思をもって動いたことで幸運の女神が微笑んだものと捉えてます。{/netabare}

お花畑と紙一重なのが悩ましいところですね。ここの線引きは“当事者として振る舞ってるか?”で分けてます。たとえ主義主張が真逆でもケツを拭く覚悟があればついていくのも選択肢。


■そう簡単ではない

なにが正義でなにが悪かわからなくなるモチーフは物語に深みを与えるものです。
こちら二方面から迫っていて良かったですね。

:其の一 正義を標榜し残酷をなす
{netabare}十字軍なんかそうですけど、正義を掲げた時に人は最も残酷になりやすいとか。
ノーマンプランは薬を利用した民族浄化計画でした。
ラートリー弟は品種改良しての食用児大量生産/供給を企ててました。
なかなかの鬼畜の所業。対立する立場の双方えげつないことやってる描写はもちろん、随所で“正義を標榜する”セリフを両陣営に散りばめてました。筋を通してます。{/netabare}

:其の二 主従の逆転
{netabare}圧倒的な人<鬼の格差社会かと思ってたところへの貧しき鬼たちの登場はファインプレーでした。
農園を頂点としたヒエラルキーの存在。上位に位置する人間(ラートリー家のことね)もいれば、そんなとこからのわずかな供給にすがる貧しい鬼たちがいるという仕組み。そしてその仕組みを維持するために汲々とする既得権者としてのわずかな人間。
搾取する側に抵抗する民衆の構図って一歩間違えると赤に染まるわけですが、ここでは善悪の逆転、主従の逆転、そして価値の逆転を提示されて得た驚きを評価したく。{/netabare}

とってつけた“人間が悪い”はむしろ浅さが悪目立ちして逆効果になるところをそうならずに、ここだけはきちんと時間かけて描いてたと思います。


■いやこれ異世界っしょ?

{netabare}同じ地球上で全く異なる価値観をもった世界(文化圏)が棲み分けできてるって…ありえないよね(笑)
最終話のネタバレになるのでさらに閉じます↓
{netabare}現代の超高層ビルが立ち並ぶ人間の世界{/netabare}

大航海時代とかやるメンタリティを持つ欧米列強だったり、版図拡大に余念のないCHINAが鬼の世界をほっとくわけないです。軍事格差すなわち力の不均衡が生じた時に軍事衝突起こるもので、こちら人間を捕食する危険な生命体をほっとく理由がありません。つい数年前の協定を破る同じ生命体が近くにいるくらいなのに1000年前の約束?なんて律義に守ったりはしませんよ。ただしそこにツッコミ入れるのは本意ではありません。{/netabare}

{netabare}エマらの人間世界への憧憬に楔を入れるラートリーが吐き捨てたひと言。

「だって人間同士で残酷なことやってきたんだぜ?」

そこから間もなく場面が現代に飛んだところが示唆に富むメッセージだったんじゃないでしょうか。
火が垂れると書いてホタルと読む某映画の演出同様、なんか問いかけてないかなー?って思うのです。
ま、繰り返しになりますけど、そうだと説明する箇所がほぼないのが玉に瑕です。いやここまで挙げてきたあれやこれやも説明ないですからね。いち視聴者の妄想の域を出てないとご承知おきください。{/netabare}



さて実写版が公開されます。演じるは現在二十歳の女優さん。大人の事情は考慮するにせよ現実問題として演じられるローティーンの役者を揃えるのは不可能です。
そんなえげつない制約はアニメはないはずでして尺がないならないでなんとかやりようはあったでしょう。これしっかり拾ってたらというのはもちろんありますが、足りない尺での取捨選択においてギリ伝わってくるものがあったので私は良しとします。



■最後にもう一点

インド洋に北センチネル島っちゅう、上陸を試みるとそこの部族に殺されちゃう島があります。近接するインド含め現在この島はノータッチ状態になってます。もちろんかの部族も外には出てこない。この物語もそんな感じと思えばいいのかしら。

{netabare}たしかちょい前にアメリカの宣教師がここに渡って消息を絶ちまして、渡航理由聞かれて「ここはサタンの最後の砦」と答えたそう。
この感覚を多くの日本人には理解しづらい。ほっときゃいいじゃんとつい思ってしまいます。

作品に戻って、鬼が人を食わなくてもよいように数年現地に残って奮闘したエマたちって、みかたを変えれば史実のピサロ/コルテスみたいなコンキスタドレスと変わらんし、いくらしんどかろうがラートリー家は秩序を保つ役割を果たしていたわけでして、どうにもこうにも立ち位置の違いで異なる正義の落としどころって答えがないのよね。といつもながら思ってしまうのです。{/netabare}



視聴時期:2021年1月~3月 リアタイ視聴

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2021.04.03 初稿
2022.01.30 タイトル修正

投稿 : 2024/06/01
♥ : 49
ネタバレ

ヘラチオ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

期待通りではないが、叩くほどでもない

原作とは話が違うようで。
原作大好きな人からは批判あびがち。
確かに原作中の重要人物をカットしているけれども、ifストーリーとして見るとそこまで叩くものでもないかと。
期待しすぎていたからかノイタミナで話数が少なく、物足りない。
一応、完結させているのは良いんじゃないかな。

大筋を合わせた感じはする。でも、別物かな。
{netabare}鬼は絶滅させたくない。鬼は人を食べて人型になり、知能を保っているが、ムジカとムジカの血を飲んだ鬼は問題ない。あとはイザベラが裏切って守る側につくところ。{/netabare}


OP
アイデンティティ 秋山黄色
ED
魔法 Myuk


以下はアマゾンプライムから引用のあらすじ。
EPISODE1
ハウスからの脱獄に成功し、ノーマンが残してくれたペンが示した目的地へ向かうエマたち。しかし、その道中で巨大な野良鬼に遭遇してしまう。レイは野良鬼を自分に引き付け罠にかける為、エマ達とは別行動をすることになるが、さらなる窮地へ陥ってしまう。一方、野良鬼から逃れたエマたちだったが、エマの耳の傷が開いてしまい、出血と高熱から意識を失ってしまう。一同の危機を救ったのは、全身を布で包んだ人間らしき謎の少女と大男?だった。

EPISODE2
エマたちを救ったのは鬼だった。名前は「ムジカ」と「ソンジュ」。二人は宗教上の理由から、人間を食べないのだという。エマとレイは、他の子供たちが眠っている間にソンジュの元を訪れ、30年前人間に何があったのか。この世界が今どうなっているのかをソンジュに訊ねた。そしてソンジュはこの世界のこと、そして「昔話」と称し、鬼と人間の世界で交わされたとある「約束」について語り始めた。そして、この世界の真相を知ったエマたちは「鬼の世界」からの脱獄を決意する。

EPISODE3
この世界で生きていく術を学び、ペンが示す目的地への道案内をしてくれたムジカ、ソンジュと別れたエマたちは、ウィリアム・ミネルヴァが居ると思われる「B06-32」を目指し荒野を進む。目的地であるはずの「B06-32」に到着するが、そこは見渡す限り何もない荒野だった。しかし、ペンに新たにパスワードを入力すると、現在地周辺の地図が表示され地下シェルターへと続く入り口が現れた。シェルター内には充実した設備があり、子どもたちは、久しぶりの安息を得るが、生活していく中で、いくつか不思議な点に遭遇する。

EPISODE4
唐突に鳴り響く電話の音。エマは恐る恐る受話器を取ると、それはウィリアム・ミネルヴァからの連絡だった。しかし、その音声は録音されたもので、ミネルヴァから告げられた事実を噛みしめる一同。子供たちは人間の世界を目指すため、ミネルヴァが用意してくれたシェルターで生活基盤を築き、その後GFハウスに戻り、フィル達を救出する計画を立てるのだった。一方、農園本部の地下室には、イザベラの姿があった。脱走者を全員連れ戻すことを条件に、農園からの開放を提案された彼女は、決意の表情とともに、「必ず連れ戻します。」と答える。

EPISODE5
シェルターの襲撃から逃れたエマ達は、鬼の集落から少し離れた廃墟の神殿を拠点としていた。しかし、シェルターやGFハウスの時とは違い食料も限られ、生きていくのがやっとの状態だった。エマは妹弟たちの寝顔をみながら、この状況を打開しなければいけないと思いつつも、その方法が見つからず責任を感じてしまう。そんな中、エマたちと一緒に食料調達へ行っていたトーマとラニオンは、帰り道、鬼の集落で人間だと発覚してしまう。

特別編「道標」
エマとレイの目の前に現れた、出荷されたはずのノーマン。ノーマンが残してくれたプランによって、グレイス=フィールドハウスから脱出できたこと、そして脱出後、今に至るまで何があったのかを、エマとレイは語り始める。

EPISODE6
エマとレイの目の前には、出荷されたはずのノーマンがいた。もう叶わないと思っていた再会に涙し、ノーマンに抱き着くエマたち。神殿に戻り、他の子供たちとも念願の再会を噛みしめる。その後、ノーマンは出荷の日からこれまでに、何があったのか語りだす。自分が移送された「ラムダ7214」のことや、そこで知った「なぜ鬼が人間を食べる必要があるのか」その真実を。そして、エマの望んだ「食用児が笑って暮らせる未来」を作る為、ノーマンは、鬼を絶滅させ、鬼の世界で食用児が安全に暮らせる世界を作る、と伝える。その作戦を聞き喜ぶ子供たちの中で、エマだけは浮かない顔を見せる。

EPISODE7
ノーマンから「邪血の少女」である、ムジカの伝承を聞いたエマとレイ。ムジカの持つ力に驚きつつ、エマはその力に希望を抱く。しかし、ノーマンは自分の作戦に対する危険要素であると考え、ムジカとソンジュを殺すという。エマは、「鬼たちを滅ぼしたくない」と、ノーマンに告げるが、ノーマンも引かず、淡々とエマを説得する。完全に対立してしまった二人だったが、エマは、ノーマンにある取引を提案する。

EPISODE8
発作により血を吐くノーマン。ノーマンがラムダで実験をされていないというのは嘘だった。ノーマンは自分に残された時間の中で、生きてエマ達と再会し、エマ達が安心して暮らせる世界を作ることを望み、戦っていた。一方で、エマ、レイ、ドン、ギルダの4人は、ムジカとソンジュと再会を果たし、二人に助けを求めるが、突如爆発音が聞こえる。ノーマンの作戦が実行されたと考えたエマ達は、集落へ急ぐ。

EPISODE9
エマたちの帰りを待たずして、作戦を実行したノーマン。ヴィルクとその孫鬼を殺すことを躊躇している中、ノーマンの前にエマとレイ、そしてソンジュが現れた。ノーマンは、「作戦は実行され、もう手遅れだ」と告げる。エマは、今からでも絶滅を止めるようノーマンを説得するが、ノーマンはエマの言葉を聞き入れない。そんなノーマンにエマは、彼の本心を見透かすように声をかける。一方、農園本部では子供たちがシェルターの無線を使い、農園の定時連絡を傍受していると気づいたイザベラは、GFハウスの食用児全員を出荷するという情報を流す。

EPISODE10
気球を使い、上空から農園に侵入する作戦を漏らすヴィンセント。その報告をうけピーターも農園の警備を変更、来たる脱走者たちの侵入に備える。しかし、ヴィンセントの裏切りもエマたちの作戦の一つで、気球を陽動につかい、農園への侵入作戦を開始する。一方ハウスでは食用児たちの出荷作業が進み、フィルは既に門へ到着していた。そこへジェミマが現れ、エマの伝言を受け取る。エマはハウスの子どもたちに合図を送り、シスターから子どもたちを引き離すことに成功。ハウスの子どもたちと合流し、みんなで人間の世界へ通ずるエレベータに乗り込むが、グランマとなったイザベラ率いる武装した大勢のシスターとピーターに行く手を阻まれる。

EPISODE11
ピーター・ラートリーは、ラートリー家の前当主である兄ジェイムズを幼い頃から尊敬していた。しかし、約束を守ることが一族の使命であると信じるピーターは、ジェイムズが、「ウィリアム・ミネルヴァ」と名乗り、食用児を救うための支援者となった事が理解できず、兄を犠牲にしてでも、世界の秩序を保つ道を選んだ。自分の運命を悟ったピーターは、「自由になろう」と彼に手を差し伸べるエマに穏やかな表情を向け、自ら命を絶った。そして、遂に人間の世界へ繋がる門に到着した一行は、ミネルヴァのペンを使い、その扉を開け先へ進んで行く。しかし、エマ、ノーマン、レイ、シスロ、バーバラ、ザジは鬼の世界に残り、全食用児の救出を目指すのであった。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 9
ネタバレ

シン☆ジ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

なんだか切ない。。大人の都合で成り立つ世界 

 
塀の外はどんな場所なのか・・こんな大勢の子供達を抱えてどうなるのか・・この世界はいったいどんな成り立ちなのか・・

1期終了後、気になって仕方がなかったのはこれらでした。
評判はイマイチっぽい印象ですが、果たして・・・

 原作:週刊少年ジャンプの漫画
 制作:CloverWorks
  ダリフラ、青ブタ、FGO・・
  A-1系列。さすがです。
 放送:フジのノイタミナ枠
    第1期 2019年1-3月(全13話)
    第2期 2021年1-3月(全11話)
 視聴:2021年4月(Amazonプライム)

へー、なんか、雰囲気は好きです。
間もいい。会話やシーンを詰め込もうとする余り、演出や会話を感じ取って余韻を楽しむ時間を削られる作品も多い中、作中の人物の想いや世界の雰囲気を感じる「間」を有難く感じました。
またEDがいい。絵が写実的でありながら曲と溶け合っててとてもエモい。

■キャラ/キャスト
キャラの声が良かった(演技は言うに及ばず)。
~{netabare}
 エマ  :諸星すみれ
 ギルダ :Lynn
 アンナ :かやのん
 レイ  :伊瀬茉莉也
 ムジカ :種﨑敦美
 ノーマン:内田真礼
 ナット :石上静香

子供キャラが多いせいか男役の女性声優が多かったですねえ。
子供だからってこうまでいつもいつも笑顔でいられるか・・
なんてふと、そんな想いも湧き出てもきますが悲愴感オンリーよりいいアクセントなのかもな、とも思ったり。
{/netabare}~

■ストーリー
今回ツッコミたかったのは・・
~{netabare}
第4話・・追ってきた人間に捕まるも、都合よく野良鬼が出て来て敵だけを食い、銃が効かなかった鬼に弓矢1本がたまたま当たって撃退。。一人も欠けないって、たまたま過ぎるっしょやw
あと例のペン・・どんだけ電池が持つんだらうw

第6話「道標」・・いるの?それとも万策尽きたの?
この回自体は悪くはないけど、そのせいで終盤駆け込みになり過ぎたとしたら、惜しい、惜しすぎる。。いい作品だけに。

脱獄モノはその後はどうしてもテンション下がりますよね。そこは予想していたので残念感はあまりなく、それなりに楽しめたと思います。

でも、次期の可能性を消すような形での無理やり感満載の終劇・・
モヤモヤ感ない終わり方は好きだけどこれじゃ劇場版やるとしても外伝ぽくなるじゃん・・鬼滅みたいに、ちゃんと順を追って丁寧に世に出して欲しかったよフジテレビさん。。
(まさか資本どころか社内が既に外資に乗っ取られてないですよね)

原作未読ですが、アニメを観終わっただけでの感想は・・
塀の外の世界はソマリの世界じゃんってこと。
「ソマリと森の神様」に人間を飼育する農園の設定を追加したインスパイヤ・・といった印象になってしまいました。
(そういえば知性ある敵との共存みたいなテーマはダンまちⅢとも似てますね)

<参考:原作発表時期>
 ソマリと森の神様 :2015年~
 約束のネバーランド:2016年~

企画陣は脱獄編だけがアニメ化に耐え得ると考えたのでしょうか。。
確かにこれだけでも物語としてまとまっているとは思いますが。。
{/netabare}~

せめて・・

~{netabare}
 続きあるかもね?的な終わり方の方が、原作組の怒りを買わなかったかも知れませんぜ。。

 もったいない。。
{/netabare}~

でも・・

 生死の危険を考えず生活できる世の中。。
 それは人類が求めてきた社会。
 今では当たり前なもの。
 でもそれは、たまたま得られるものではない。
 そんな先人の悲願に想いを馳せるのもいいかも知れません。

機会があれば原作を読んでみたいですね。全20巻ならいけそうかな。
 

投稿 : 2024/06/01
♥ : 28

68.9 6 ダークファンタジーで女王なアニメランキング6位
ヴァニタスの手記(TVアニメ動画)

2021年夏アニメ
★★★★☆ 3.5 (175)
589人が棚に入れました
吸血鬼が存在する19世紀のフランス。吸血鬼の青年ノエは、吸血鬼に呪いを振り撒く魔導書「ヴァニタスの書」を探すためにパリへ向かい、その途中の飛行船の中である事件に遭遇した。その最中、吸血鬼の専門医を自称するヴァニタスと名乗る青年がノエの前に現れるが、ヴァニタスはノエの探す「ヴァニタスの書」を手にしていた。
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

ある吸血鬼フェチの実像

原作未読 分割クールの前半12話


“手記”と書いて“カルテ”と読みます。
いわゆるヴァンパイアものですがわりと変化球。
不老不死吸血鬼と命限りある人間が対峙する物語とは違い、吸血鬼に降りかかる災厄が柱となります。
その吸血鬼の“真名”いわば魂みたいなものが奪われちゃうと正気を失って、まるで渋谷交差点ど真ん中で佇むTウィルス感染済の中島美嘉ちゃんみたいになってしまうという呪いに怯えているのが本作の吸血鬼“ヴァンピール”たちです。その呪いからヴァンピールを救うお医者さん役を担うヴァニタス(CV花江夏樹)と呪いについて含みありそうなヴァンピールのノエ(CV石川界人)のW主人公もの。
作中で言うところの“呪い持ち”になったヴァンピールは発症すれば殺処分の運命が待ってるわけですが、唯一ヴァニタスのみが手持ちの“ヴァニタスの書”を使って真名を取り戻すことができる唯一無二の存在というのがポイントです。ジョーブ博士みたいなもんですかね。またこっちは名前を返してもらう書ですが、名前を返してあげる『夏目友人帳』と本質的には変わらなさそうな作品でもあります。

前置きそれくらいで、事前情報からはこちら↓

 ボンズ制作 梶浦由記劇伴

こちらが吸引力となりました。まあ綺麗ですもんね。梶浦さんは事後知りましたがくどいくらいドラマチックで壮大ないつものノリは控えめな印象です。さはさりながら19世紀後半のパリの情景にはよく似合うBGMなのはさすが。美術は総じて美しく印象的だったのはOPアニメーションでの早朝太陽の光具合。綺麗な朝焼けです。ちな本作の吸血鬼は太陽の光浴びても灰にならない設定です。

一通り前半終わってポジティブな印象を持ってます。理由は3点

1.綺麗
 →前述の通り
2.続きが気になる
 →{netabare}「そして…その旅路の果てに」「彼をこの手で殺すまでの物語」{/netabare}
  第1話ノエのモノローグが示唆する結末はぜひ見てみたい
3.俺の好きなヴァンパイア
 →吸血鬼ものにはどこか“退廃”“耽美”を求めがちな私の趣味に合っている

とりわけ3はフェチシズムの世界ですね。美形男子のバディもので女性作者とバイアス入りがちなのですがどうなんでしょう。矢印はノエ→ヴァニタスでも性格や見た目に惹かれてというより「ヴァニタスの血が美味そう」と吸血鬼の本能に則した動機ではあるんでそれほどでもないなぁと見ております。
それよか禁じられているとされる人間への吸血行為の描かれ方が素敵。まぁえっちいです。欲求・衝動・理性との葛藤ないまぜの吸血シーンは親と一緒に観てると確実に気まずくなる水準です。
やはりヴァンパイアものは“耽美”なとこないとね。作品評価は分割前半のため例によって保留ですがこれは好物です。来たる後半待ち~



※余談

■ペース配分

ここ一年くらいで『SLAM DUNK』『空手バカ一代』『カウボーイビバップ』『エヴァンゲリヲン』とクラシックを堪能してたからかもしれません。
{netabare}近年の深夜アニメの1クール2クールサイクルでの話の詰め込みっぷりに慣れてる自分に気づきます。本作は新作の中ではゆっくりめ。
昔のって最初から最後までやるんですよ。なんかしらの大筋があって伏線張りながらゆっくりめの尺の中で丁寧に回収する感じ。最近は大筋があっても描写を削ってスピード解決します。それに慣れてるから“ゆっくりめ”と感じるんですよね。
普通の早さの作品が遅く感じる弊害みたいなのはあって、期を跨ぐものやとりわけ分割クールものにそれは如実に表れると思います。とどのつまり「遅せーな」と感じてしまう。{/netabare}

{netabare}ジェボーダンの獣と新展開をチラ見せして中締めしてエンタメの体裁は保ってるものの、展開自体は??が依然として謎のままのハーフタイム。

 丁寧にやってるので期待がもてる or よくわかんねーまま終わったよ

私は前者の感覚ではありますがみなさんどうでしょう?
分割ものは後から一気にGOも手段でして、とりわけ本作のゆっくり展開でこそアリな選択肢かも。{/netabare}


■耽美

{netabare}ジャンヌ(CV水瀬いのり)良かった。
まずは水瀬さんやってるとはわからんのが良かった。
古今東西チョロイン枠って顔を赤らめてもじもじして照れ隠しのプンプンするようなリアクション芸に長けたの出しときゃ安パイなのに彼女は自ら欲求を満たそうと行動するんですよね。
ハリウッド映画ならそこチューするだろ?みたいなとこでなにもしないのがアニメに対する数少ない不満だったりするんですけどそこを突破する本作のヒロイン。
なお、ただのチューよりいやらしかったです。
ロエの幼馴染ドミニク(CV茅野愛衣)も悪くない。{/netabare}



視聴時期:2021年7月~9月 リアタイ   

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2021.09.19 初稿
2021.11.16 配点修正 -0.1

投稿 : 2024/06/01
♥ : 32

♡Sallie♡☆彡 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

わたし好みのテイストです✧

原作は知らなかったのですが,タイトルに惹かれて観てみました。
わたしが好きな19世紀が舞台で吸血鬼もの,そしてスチームパンク!!
19世紀やスチームパンクというと,イギリスを舞台にしがちだと思うんですが,こちらはフランスはパリ。
そこら辺は珍しいと思いました。
出てくる用語もフランス語が用いられてて雰囲気あって良いですね☆
こちらは分割2クールでやるらしいのですが,第2クールはまた別に出るかもしれないので,取り合えず第1クールまでのレビューをしようと思います。

話自体はファンタジックでとても好みですし,雰囲気も好きです。
ただ,原作を読んでいないこともあり1回観ただけでは用語を覚えられずなんだかよく分からないままお話が進んでいった感はあります。
そもそもこの第1クールでは謎が多すぎて結局それぞれが何を目指しているのか分からないまま終わってしまいました。
ただ,それぞれの回自体は面白くて毎回時間があっという間に感じました。
あとちょいちょい出てくる色っぽいシーンのエロ度が丁度よくて好きでした(笑)。

作画はとてもきれいだと思いました。
まぁ,そもそも元々の原作のキャラクターデザインがあまり好きではないとは思いつつも,背景の19世紀フランスはほんとに素敵だと思ったし,飛空船もとても美しかったです。
最近同じ時代のイギリス・ヴィクトリア朝を舞台にした小説を読んでいて飛行船が出てきたり,パリでタイムトラベルをしちゃう「ミッドナイト・イン・パリ」という映画を観たり,別の吸血鬼もののアニメを観ていたりしたのでなんだか今の気分にもぴったり合っていて観るべくして観たという感じでした。
特にOPの夜のパリはうっとりしちゃいますね♪

キャラクターは上記のとおりデザインがあまり好きじゃないなと思いましたが,キャラの性格自体は割と好みでした。
主人公がトリックスターな感じも他にはあまり無いのでわたしは好きです。
最初,ヴァニタスの髪型がどうなってるのか気になって仕方なかったけど(^-^;
ノエはヴァニタスに振り回される役ですね。
この2人は夢枕獏「陰陽師」の安倍晴明と源博雅の感じに似てると思いました。
初め,ヴァニタスはめっちゃ強い奴なのかなって思ったんですけど,1話目で早くも無様にやられてて面白かったです。
彼は最初からトリックスターな雰囲気が出ていたので,ジャンヌにいきなり無理無体をはたらいた(笑)のにはびっくりしました。
色恋には興味ないキャラかと思ってたので…。
しかも歯の浮くようなこと平気で言うし…(´∀`)
でも,ほんとにジャンヌに惚れてる感じはしなくてただからかってるだけに見えるけどね。
ジャンヌはジャンヌで業火の魔女とかいうからどんなキャラかと思ったらチョロQだし…。
そこら辺も面白かったです。
彼女の性格は好きなんだけど,わたしはショートヘアの女の子のキャラクターがあまり好きではなくて…。
それに,19世紀にショートヘアの女性なんて居なかったよね!?
それが残念でした。
もっとわたし好みの女の子が出てきてくれたら嬉しいのに…。
1番好きなのはルカ様かな。可愛すぎますね,彼は♡
あとムルのふてぶてしい感じも可愛い♪
あと,やばそうな人シリーズですが…
ベロニカはなんで着物を着ているの!?
ジャポニズムがお好きなのかしら??
あと,先生とルスヴン卿は怪しいですよね。
ルスヴン卿はいかにも悪役っぽいですけど,先生の得体の知れない感じも怖い。

OP・EDはわたし好みでした♪
アニメーションも好きです,特にOPの!!
オープニングテーマはそれ自体は良い曲ではあるんだけど,このアニメに合ってるかと言われると合ってないと思いました。
日本的な楽曲だと思ったので…。
エンディングテーマは合ってると思います。

正直,まだまだ分からないことだらけなので第2クールに期待です☆
第2クールは来年の1月~らしいです。
待ち遠しいなぁ。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 10

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

呪いと救いの吸血鬼譚

この作品の原作は未読です。
2021年夏アニメにおける花江夏樹さん主演3作品のうちの一画に位置する作品です。


蒸気機関による技術が発達し、吸血鬼(ヴァンピール)が存在する19世紀のフランス。
吸血鬼の青年ノエは、吸血鬼に呪いを振り撒く魔導書「ヴァニタスの書」を探すためにパリへ向かい、
その途中の飛行船の中である事件に遭遇した。

その最中、吸血鬼の専門医を自称するヴァニタスと名乗る青年がノエの前に現れるが、
ヴァニタスはノエの探す「ヴァニタスの書」を手にしていた。

吸血鬼そのものとも言える刻まれた真名を崩して狂わせることも、
そして復元して正気に戻すこともできる機械仕掛けの魔導書。
それをめぐる人間と吸血鬼の物語。


「ヴァニタスの手記」「あらすじ」でググった結果を引用させて頂きました。

この作品のジャンルは「ダーク・ファンタジー」や「スチームパンク」に分類されるのだそうです。
「スチームパンク」の作品といえば、「甲鉄城のカバネリ」や「プリンセス・プリンシパル」が代表格かと思いますが、言われてみると雰囲気が合っている気がします。

完走して振り返って思ったこと…
やっぱ同クールで花江さん主演3作品はちょっとお腹いっぱいになりますね。
特徴のある声質なので、花江さんだと直ぐに分かりますし…

一方、いのりちゃんも今期は3作品に主演として出演されていました。
・「現実主義勇者の王国再建記」のリーシア・エルフリーデン
・「死神坊ちゃんと黒メイド」のヴィオラ
・「ヴァニタスの手記」のジャンヌ
こちらについては、全く違和感を感じませんでしたけどね^^;

この作品に出演していたいのりちゃんや、かやのんもですけど、一時期に比べてTVアニメ出演する作品が減っているような気がするのは私だけでしょうか。
…と思ったら、お二人ともゲームのCVを沢山演じられているようでした。

しかし、お二人の演じているゲーム作品を改めて見てみると、膨大なゲーム数は世の中に蔓延しているのが実感できます。
正直、これほど需要があるかは疑問ですけれど…

私もアサルトリリィのラストバレットをプレイしていますが、本格的なゲームは正直1つで限界です。
ガチャ回すのもそれなりにお金掛かりますし…

ヴァニタスの内容から思いきり逸れてしまいましたが、分割2クールの前半クールが終了した段階なので、現時点での評価は難しいかな。
個人的には、終盤でのジャンヌの…いのりちゃんの「デレ」が最高だった、というところでしょうか。

物語の方は最終話で次の展開が頭出しされるという、分割2クールならではの構成でした。
100年以上前に人々から恐れられた輩が出現するという、これまでとは全く異なる展開が後半クールで展開されるようです。

作画もしっかりしていて見易い作品だったと思います。
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

オープニグテーマは、ササノマリイさんによる「空と虚」
エンディングテーマは、LMYKさんによる「0 (zero)」
個人的にはエンディグの方が好みでした。

1クール全12話の物語でした。
そう言えば、この作品は分割2クール作品ですが、後半クールがいつ放送されるかは情報がありませんね。
後半クールの視聴も楽しみにしています。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 17
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