夏休みで田舎なアニメ映画ランキング 9

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の夏休みで田舎な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月04日の時点で一番の夏休みで田舎なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

69.9 1 夏休みで田舎なアニメランキング1位
夏へのトンネル、さよならの出口(アニメ映画)

2022年9月9日
★★★★☆ 3.6 (78)
287人が棚に入れました
あの日の君に会いに行く。

ウラシマトンネル――そのトンネルに入ったら、欲しいものがなんでも手に入る。
ただし、それと引き換えに……

掴みどころがない性格のように見えて過去の事故を心の傷として抱える塔野カオルと、芯の通った態度の裏で自身の持つ理想像との違いに悩む花城あんず。ふたりは不思議なトンネルを調査し欲しいものを手に入れるために協力関係を結ぶ。

これは、とある片田舎で起こる郷愁と疾走の、忘れられないひと夏の物語。

テナ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

青春の共同戦線~ビニール傘をかして返してもらうまでの時間~

この作品は私が、ずっと楽しみにしてた作品の1つです。
原作を知ってる訳でもありません。
私はよくアニメ映画を見にくのですが、その中に必ずある映画告知でよく流れていたからです。
その時に、面白そうと感じたのが「夏へのトンネルさよならの出口」です。

2022年10月も凄く気になる作品がありますが、見に行きたいなぁ(*´˘`*)ニコッ
見たらきっとレビュー書いてると思います。




さて、私がこの作品に感じた事を書いていきます。
物語は、ウラシマトンネルと言う外と中では時間の流れが違うトンネルを発見する。
そのトンネルを潜ると欲しい物が何でも手に入る。
その対価として100年歳をとる。

そんな都市伝説的なトンネル発見した主人公とヒロインはお互いの願いの為にトンネルを攻略する共同戦線を張る!


主人公 カオル

彼の願いは「妹を取り戻す事」
妹のカレンは優しい女の子でした。
彼女は人の幸せを心から願える女の子です。
彼女の夢は「人が幸せになる世界にする事」
この幼い年齢でこの願いは凄いw

この歳だと、普通に可愛いぬいぐるみとか、欲しいゲームとか、願いませんか?
自分が恥ずかしくなるww

主人公のカオルの願いは「カブトムシが欲しい」コレコレ!コレが子供の夢よww

ある日、兄妹喧嘩をしてしまいます。
カオルは妹に「大嫌い」と言われて「大嫌い」と返して家を出ます。
妹はすぐに「嘘!大好き!いってらっしゃい!」と返すのですが、兄はそれも無視します。

彼が帰ると妹は木から落ちて事故死してました。
兄と仲直りしようとして兄の欲しいカブトムシを取りに行ったから起きた事故でした。

うん、これって結構キツいよね。
喧嘩なんて当然します……
でも、喧嘩をして永遠に会えなくなるのは……
私も似た経験あって中学生の時の思春期におばあちゃんと喧嘩しました。
その後、数日後におばあちゃんは亡くなってしまいました。

二度と謝る事もなく一緒に暮らしてる訳でも無かったので、それから言葉も交わさずに……
今でも心残りです。
だから、カオルの気持ちって凄く解ります。

彼が妹を生き返らせたいってのも凄く解る。
正直、多分、ずっと心残りになると思う。
いつになっても、「あの時なぁ〜」ってなります。

それに彼は妹が自分と仲直りしようとしての事なら尚更……
何を犠牲にしても叶えたい願いだと思いました。



アンズ

彼女の願いは「特別な才能が欲しい」
彼女のお爺さんは、漫画家でした。
しかし、売れる事もなく借金してまでも漫画を描き続けた。

そんなアンズも漫画を書く楽しさをお爺さんから教えて貰って彼女も漫画家になりたいと願うも踏み出せないでいました。

父に「お爺さんと同じになるつもりか!」と原稿をビリビリに破かれたそうです。
だから、彼女は漫画家になりたかった。
お爺さんを反面教師扱いする両親を見返したかった。

でも、自分の漫画は、どうしても普通にしか見えなかった。
出版社に持ち込んでもダメだと思い込んでしまう。

でも、自分も何か残したいと考えていました。
それが、彼女にとっては漫画でした。

実は私は彼女に凄く共感出来ました。
私も産まれて来たからには「世の中に何かを残したい」と思ってしまいます。
せっかく産まれてきたのですから私が私個人が生きていた証を……

で、私が他にも共感出来たのは自分の作品を自分の線引きで出版社に持ち込めないって点です。
自分の作品は普通だから……勿論書くがわからすれば面白いから書いてるけど、世の中には更に面白い漫画は沢山ある……だからこのレベルではダメだと……

実は、私も物語を書いていました。
今は書いてませんが……当時は、文庫本作家になってみたいなぁ〜とw
電撃大賞とかに出したいなぁ〜と思って書き上げたりしてましたが、結局は私も同じ理由で足踏みしてました。
文才も言葉も拙いのでw

結局、彼女は最後に編集に持ち込むので私なんかとは全然違うのですけどねw
で、アンズと私って多分、そんなに年齢変わらないです。
2005年になってたから1つか2つ先輩かな?
でも、同年代の子だと考えたら凄いなぁーって本当に思いますね。


だから、彼女の気持ちって色々共感出来ちゃいました。


ウラシマトンネル攻略 8月2日

攻略前日……アンズから自分の漫画を出版社に持ち込んだら気に入って貰えたそうなんです。
担当さんが付いて一緒に漫画を作りませんか?と提案されたのだと。

相談されたカオルは攻略の延期を持ちかけます。
それはウラシマトンネルの中と外では時間の流れが違うので数時間で数年経つ……すると多分、この漫画家への道は失われる……

しかし、カオルは1人でウラシマトンネルへ行きます。
アンズが気付いた頃には手遅れでした。

カオルのした事って正しくはあると思います。
共同戦線だからって最後まで付き合う必要はないし、トンネルは願いを叶えるのではなく、失った物を取り戻すトンネルだからです。
つまり彼女の才能は手に入らない。
それなら、尚のこと自分で掴んだ才能とチャンスを手放してまで一緒に来る必要はないのです。


でも、カオルはその反面考えが足りなかった。
アンズが自分の漫画が気に入られた時に相談したのは一緒に考えたかったのだと思います。

2人で共同戦線を辞めて2人で共に過ごす時間と、一緒にウラシマトンネルで妹のカレンを取り戻して3人で過ごす時間

その為なら、全てを投げ出してでも一緒に居たかった。
彼女は恋をしていたのです。

特別な才能が欲しかった彼女は、今はカオル特別な存在になりたかったのでしょうね……

でも、彼の決意は硬かった。
カレンダーを8月2日から破り捨ててました。
それは、それから先の時間は彼にはないからです。
更にはメールも全て消して、携帯も捨てて……
だから、決意の強さが伝わりました。


カオルは妹に再会します。
妹と兄の失われた時間。
カオルも子供になってました。
つまり時間が戻ったのです。

妹は自分が捕まえたカブトムシを兄にプレゼントします。
あの日、兄と仲良くする為に捕まえようとしたカブトムシ。

2人は幸せそうに話をする。
けど、カオルは気づく。鏡に映る自分の姿は高校生である事に……

そこに捨てたはずの携帯がメールの着信音を鳴らします。
そこには消したメールが全て復活してました。

ウラシマトンネルは無くした物を取り戻すトンネルですが、これでは言葉足らずです。

ウラシマトンネルは大切な物を取り戻すトンネルってのが正確だと思います。

過去の時間に戻ったって事は、元の時間の世界の大切な物を失ったと言う意味です。
だから、携帯もメールも戻った……そして自分の気持ちも。

妹も大事だけど妹と同じくらい好きな人……

実はカオルとアンズの2人はトンネルの外から中へのメールは届かないと実験していました。
しかし、今はメールが届いた。
それは、アンズの時間軸から無駄だ……届かない……そう知ってても送らずにないられなかったメール

経過する時間の中、アンズが送り続けたメール。
そのメールは、カオルが失った時間に送られたメールです。
だから、失った物としてトンネルを通じて彼に届いた。

彼は現実世界に戻るために走り出す!
カレンは知っていたのかもしれません。
兄が別の時間軸の兄だと……だから背中を押した。

カレン「大好きだよ!いってらっしゃい!」
自分に囚われてないで、気にしないでって彼女なりの優しさで。
喧嘩した時に本当に言いたかった言葉を添えて。

彼女の願いはなんだったけ?
「人が幸せになる世界にする事」
彼女が生きた時間のアンズは、引きずってる……カオルの事を……夢を叶えて連載を持っても彼女は笑えなかった……カレンの言う、人が幸せってのはアンズも含めてです。
だから、兄の背中を押した。
兄の幸せを考えられる強さを持ってるから。

私は死んだ人に生きてる人が出来る事って多くはないって思います。
でも、カレンにカオルがしてあげられる事がある。

それは現実世界で幸せになる事です。
人の幸せを願える妹の兄に出来るのは自身が幸せになり好きな人を幸せする事だと思います。
何故ならそれがカレンの願いだから……その1歩になる事が彼女に唯一してあげられる事なのかな?と思いました。

そうして、カオルとアンズは十三年ぶりに再会する。
13年……ウラシマトンネルの時間差……
13年間、ずっと待ち続けてくれたアンズ。
彼が戻る確信なんてなかった。
それでも、彼を待ってくれていた。
本物の愛なんでしょうね。
好きな人にそこまで待って貰えるカオルが幸せ過ぎますねw

理由はどうであれカオルは13年間アンズに心配を掛けて悲しませてきました。
これからの時間は、全力でアンズを幸せにしてあげて欲しいですね(*´˘`*)ニコッ

正直、この作品、ウラシマトンネルの調査中に大幅カットされてるような描写もあるけど、私に共感出来る事が多い作品でビックリしました。


因みに、ココに出てくる大人は最低の象徴として描かれています。

酔って暴力を振るうわ、息子が体調を崩すと心配すらしないで暴言暴力を振るう父親。

娘の夢を反対して原稿を破るわ、田舎に転校させ1人で暮らして頭冷やせとか言う両親。


この2人の出会いに……「親なんか居ないわ」「いいねそれ」って言葉があります。
最初は、カオルのいいね発言にビックリしましたが、これは2人が友達ではなく理解者であるんだろうなぁ〜と見ていて感じました。
ウラシマトンネルの共同戦線もお互いの利害が一致してるからでしょうし、お互いに理解者から恋人になるまでが描かれているのかな?とw

さて、この作品のタイトルって、「夏へのトンネル」はカレンの死んだ夏への入口、「さよならの出口」ってカレンへの未練を断ち切る為の、さよならの出口なんですね。
劇場版みた後に気づきました。
ある意味タイトルで盛大なネタバレされてるけど意外と気づけない上手いタイトルですね。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 9
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

ウラシマ効果と願いの狭間で浮き彫りになる若気の至り

【あらすじ】
{netabare}欲しいものが何でも手に入る「ウラシマトンネル」
鹿との衝突事故により電車が止まるくらいの田舎を舞台に、
{netabare}亡き妹・カレンと幸福な家庭{/netabare}を取り戻したい高校生男子・カオル。
{netabare}漫画で世界に爪痕を残せる才能{/netabare}が欲しい女子高生・あんず。
二人が願望の代償として世界を捨てるに等しいウラシマ効果をもたらすトンネルを前に、
“共同戦線”を張る内に、距離が縮まる同名ライトノベル(未読)の映画化作品({netabare}83{/netabare}分){/netabare}

【物語 4.0点】
監督・田口 智久氏。

実写「デートムービー」も意識して、主人公の少年少女二人に焦点を絞り原作を再構築。
ヒロイン視点補強を試みて、二人の出会いなどの節目を詳述するため、
三度にわたる駅のシーンをアニメオリジナルで追加し、ボーイ・ミーツ・ガール成分増量。

「ウラシマトンネル」になかなか飛び込めずに事前調査を重ねる二人。
浦島太郎が予め竜宮城に行った後の顛末を知ってしまったら、
亀に乗るのにメッチャ逡巡して物語が停滞するでしょうがw
これが青春を生きる高校生二人なら、人生経験の少なさもあって不安定なアイデンティティや居場所のなさ。
“共同戦線”に下心や恋心はないのか?など整理できない自分の気持ち。
モヤモヤが些細な衝撃で暴発しかねない危なっかしさ。
若さは逡巡すらメインストーリーとして魅力十分な甘ずっぱいドラマに昇華させます。

トンネルの先を描いた終盤も、既視感は覚えるものの見応え十分。
何を言ってもネタバレになりますが敢えて一言だけ叫ぶと、
{netabare}気づくのおせーよ{/netabare}ってことでしょうか。


ガラケーがスマホに駆逐される前の時代が舞台とあって携帯メールが活躍するシナリオ。
連絡事項に改行スペースを重ねてスクロールさせ末尾に{netabare}「塔野くんてちょっとエッチだよね」{/netabare}と本音を仕込む技もベタですがあざといです。
ケータイ共々爆発して下さいw


【作画 4.5点】
アニメーション制作・CLAP

草薙(KUSANAGI)提供の細密な背景に押し負けない映像作りで、夏を始めとした季節感を好表現。
同スタジオの前作『ポンポさん』でも多用した、
色トレス(近景等の色彩に人物の主線の色を合わせる)も駆使して、
世界と登場人物の一体感をアップ。

小物に“演技”をさせる演出も上々で、
特に上記アニオリシーンで“助演俳優賞”級の活躍をしたビニール傘については、
描き込みが面倒な透明色にもめげずに二人の仲を橋渡し。
終盤の{netabare}錆{/netabare}の描写も良い仕事してました。

ただ私としては“助演俳優賞”は笑顔を彩ったヒマワリに授与したい心境です。

ケータイ画面やビニール傘が濡れる心情演出も文学的。
CGで構築された水面もまた波紋で揺れる男女の言動を反映する“役者”ぶり。


【キャラ 4.0点】
主人公の高校生男子・塔野カオル。
携帯プレイヤーは音楽鑑賞じゃなく外界の音を遮断するために使う系。
家庭に安寧の場所はなく、斜に構え、田舎で朽ち果てつつある典型的な疎外感を抱えた主人公少年。
世界から外れかかっている彼のメンタルこそが「ウラシマトンネル」を招き寄せた
という作中での考察、一理あります。

ヒロインの女子高生・花城あんず
東京から田舎に転校して来た、これまた典型的な孤高の黒髪ロングJK。
寄らば斬る(むしろ{netabare}殴り倒すw{/netabare})
そんなテンプレでツンツン、デレデレされたって俺は萌えないぞ。
……と頑なになっていた私ですが、彼女が{netabare}カオルに初めて自作漫画を読まれ論評{/netabare}されるシーンの足芸で、
あっさり萌えて陥落しましたw

それ以上にあんずにグッと来たのは世界に爪痕を刻むと決意する強さ。
特に{netabare}絵で物語る漫画がなくなるはずがない{/netabare}と熱弁する件。
「特別」を目指すヒロインのカッコ良さには異性としてではなく人として惚れ込みます。


【声優 3.5点】
実写とアニメの中間領域を志向し、メインキャストは俳優をオーディションで選出。

主人公・カオル役の鈴鹿 央士さんは声優初挑戦。
スタッフ陣はナチュラルなボイスがハマり役と好評していますが、
私は走って息切れるシーンの演技にしても、自然さより経験不足を感じてシックリ来ませんでした。

声に人生が滲み出る演技だなとも感じはしましたが、
哀しみ故に荒れた生活を送るカオルの父役の小山 力也さんにはまだまだ及ばない印象。

その点、ヒロイン・あんず役の飯豊 まりえさんは、声優経験もありまだ安定感がありました。

それでも、脇に回った畠中 祐さん&小宮 有紗さんじゃ駄目なんでしょうか?
という私の疑問をかき消すほどの演技ではなかったかなと。

ただし、カオルの妹・塔野カレン役の小林 星蘭さんは子役時代のスキルも生かした幼女ボイスで上々。
塔野家の天使に免じて評点は基準点+0.5点で。


【音楽 4.0点】
劇伴は富貴 晴美氏のフィルムスコアリング。
氏のBGMは管弦楽の迫力でねじ伏せるよりも、ピアノを中心に心情にそっと寄り添う方が味わい深いです。
本作でも遅効性の恋に繊細な音色がマッチしていました。

主題歌、挿入歌はeill。
アップテンポな劇伴ソング「プレロマンス」では二人の恋愛未満を的確に射抜き、
主題歌バラード「フィナーレ。」では濡れるリスクが増える相合傘の利点を恋愛面から力説。
一番刺さったのは既存曲のアコースティックアレンジとなった「方っぽ」
世界から外れそうな位の喪失感が痛切で抉って来ます。


【付記】
イケメン俳優&朝ドラヒロインをキャスティングして、
実写恋愛映画の如く、カップル集客も目論んでいるという本作。
ですが初週鑑賞時、まばらな観客は私も含めてアニメ&ラノベファンと思しきソロの男性ばかりで、
デート中のカップルなんて一組も見当たりませんでしたw

プロデュースが滑っている以上、上映期間も長くはないと思われるので、
興味がある方は、夏が消え去る前に、お早めに劇場に行くことをオススメします。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 17
ネタバレ

ハウトゥーバトル さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2

ありがとうの入口

この話は転校生が来た話
個人的には嫌いでは無い

元々小説の存在は知っていて、いつかは買おうと思っていたのですが、先延ばし先延ばしにしてたらアニメ映画をやるというではありませんか。しかも結構作画が良さそう。見るしかないですよね
そんなこんなで見た本作ですが、個人的には嫌いでは無いです
もちろん(というと失礼に聞こえるかもしれませんが)「超好き!」という訳では無いのですが、予想していた中(俳優さんたちが声優をやるような映画という意味)では結構良い作品でした

異世界ほどファンタジーではありませんが、完全に物理法則をガン無視しているため、「現実的な作品しか私は見ないんだ!」という方には厳しいかもしれませんが、特にこだわりがない方は見ても良いかもしれません。

主人公がいわゆるダウナー系ですので、「こんな根暗な奴が主人公だったらコッチまで気分が沈むわ!」という過激派も厳しいかも。

アニメ映画ですので、やはり内容が凝縮されています。原作が激厚小説とは言わずとも短編とはとても言えないようなボリュームなため、アニメ映画という形が正解だと私は思いました。これでTVアニメだったらどんなにグダっていたか。

完結します。恐らく今後追加されるストーリーはないでしょう。あるとしても物語の本筋にあまり関係のない所か二次創作のどちらかでしょう。(と言ったが入場者特典をしっかり読んでいる)

悪かった点としては全体的に内容が薄い

{netabare}
見かけない女子高生(花城あんず)に傘を貸した主人公(塔野カオル)の学校に花城が転校生としてやってくる。父親から逃げた主人公が偶然発見した祠は時間の流れが極端に遅くなる代わりに願ったものが手に入る「浦島トンネル」だった。ついてきた花城に事情を話し2人の秘密(共同戦線)とした。調査を重ねる毎に二人の仲は深まる。家族から忌避されてる漫画の才能を手に入れたい花城の元に編集部が来た事を知った塔野は死んだ妹を取り戻すために単独でトンネルに入り妹に会う。そこで届かないはずのメールが届き花城がまだ待っていることを知る。自覚した塔野は花城にメールを送り13年越しに再開しキスをする

「有り得ない」とひと言で切り捨てることも可能ですが、私は本作を嫌いには慣れませんでした。主人公含め登場人物みんな(父除く)好き、ということもあり素直に面白かったと表現できます。
ヒロインが可愛い恋愛アニメはどうにも嫌いになれない、の典型例だと思います

見る前は「どうせトンネルはただのトンネルでトンネルのジンクスを経て人間として成長する、的なやつだろう」と思っていたのですが、まさかのガチファンタジー。ただのトンネルではなく、怪奇現象そのもの。これには甘く見ていた私もびっくり目を見開いて話をちゃんと楽しもうと決心しました。

合理的、というと少し違いますが、下手に人情を重んじるキャラではなく非常に助かりました。ちゃんと妹の為に身を犠牲にしようとしたのも好感が持てますし、花城ちゃんを置いて行ったのも非常に好感が高い。あと、花城ちゃんが後を追いかけなかったのも非常に良い

とはいえ13年以上帰ってくるか分からない人を思い続ける、なんて現実では相当有り得ませんが、まぁ浦島トンネルがある時点で「なんでもありだね」という結論に至ってしまうため、あまり深く考えないようにしましょう

話は変わりますが、妹の幻覚によってメッセージを受け取るあのシーン。非常に優秀ですよね。失ったものを取り戻す、という浦島トンネルでメッセージを受け取ったということはそのメッセージ、ひいては花城ちゃんを失った、ということ。そして「失った」、ということは同時に「得てた」という示唆であり、それに気づいた主人公が自覚をする、そして妹にあの日言えなかった「行ってきます」を言う。
この行ってきます、がマイナスなものではないことは明白ですが、過去にすがるのではなく未来に対して行ってきますと言うのは非常に素晴らしい。そしてその失った妹は「行ってらっしゃい」と言った。これは主人公の中での「失った妹」が過去に縋っていると自覚していた現れ、だと私は思っています。
果たして妹が言ったから自覚したのか、自覚があったから妹が言ったのか、恐らくそこを言及する必要はないでしょう。
なにせこの話は「未来」へ向かう話ですから。
{/netabare}

好きではありませんが嫌いでもありませんので時間があるときに見てください。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 5

88.1 2 夏休みで田舎なアニメランキング2位
サマーウォーズ(アニメ映画)

2009年8月1日
★★★★☆ 4.0 (4181)
21248人が棚に入れました
世界中の人々が集うインターネット上の仮想世界、OZ(オズ)。そのメンテナンスのアルバイトをしている高校生の健二は、憧れの夏希先輩から田舎に行くというアルバイトを頼まれる。気楽に応じた健二だったが、実は夏希の本家とは武家の血筋を受け継ぐ旧家、陣内家であり、曾祖母である烈女・栄のために夏希のフィアンセのふりをするというアルバイトだったのだ。さいわい栄は健二を認め、芝居は平穏のうちに終わるかに見えたが、その夜健二はケータイに届いた謎の数式を、数学の問題と考えて解いてしまう。しかしそれは、OZ世界を崩壊させ、現実世界をも混乱させる大事件の幕開けだった。

声優・キャラクター
神木隆之介、桜庭ななみ、谷村美月、仲里依紗、斎藤歩、富司純子
ネタバレ

◎TARGET さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

【残念賞】ストーリー構成が雑すぎて冷めた

❏総評

細田守監督作品。
前作の「時をかける少女」が面白かったので見てみたけど
う~んちょっと物足りなかった。何かイマイチだった。



❏作品テーマについて

テーマは以下の2つ
「コンピュータに依存しすぎる社会への警告」
「(大)家族の絆、人の絆」

そしてこの2つのテーマを交差させたものが、この物語の骨組み。
コンピュータに依存した社会で問題が発生したけど、
家族の絆、人の絆があれば乗り越えられるんだ。涙。(←でなかったけどw)

テーマと骨組みは別に悪くない。いくらでも面白くできそうなテーマだ。



❏何故イマイチだったのか?

・2つの作品テーマを結びつけて、物語を収束に導くために不合理で必然性がない設定を多用しすぎ

・問題を解決したのは「家族の絆」ではなく「個人のスキル」の度合いが強いのに、
 映画は「家族の絆」で解決したような印象操作をしている

上記の2点により冷めてしまった。

一旦冷めた気持ちは温まることなくラストまで継続。


以下、具体的にネタバレ込みでダメなとこ書きますね
{netabare}


1. OZシステムにリアリティがない。

 これは技術的にハードルが高すぎて現実的に不可能という意味ではない。
 仮に技術的に可能だとしても、このようなシステムを多くの人が利用し、
 ここまで人々の社会の隅々にまで入り込むはずがないという意味だ。

 ツッコミどころはたくさんある。

 ・仮想世界に店舗を出すメリット、必要性が見いだせない
  (アバターがアバターの服を買うなど仮想世界内だけで完結するものは別として)

 ・社会インフラと仮想世界がつながるメリット、必要性が見いだせない。
  しかも、OZシステムがハッキングされただけでこの大騒ぎって、どんだけ脆弱なのかw
  普通はセキュアなシステムとは外の世界と繋がらないようにするものだ。
  だからこんなこと100%ありえないと感じてしまう。

 ・AIはゲームをしたいんだみたいな感じだったが、
  何故AIはそう思うのか?米国政府が興味を持つようなものがそんなんでいいのか?

 ・AIがアバターとして視覚的な存在になって、
  戦闘行為とかするのは非効率じゃないのか。(AIさん遊びたかったの?)

 ・アカウント乗っ取るとAIの戦闘力が増す意味がわからん、ハッキング技術があるなら
  数値調整すりゃいいじゃんw

 ・衛星落とすのになんでAIさん2時間くれたの?そのまま落とせよw


 設定担当の人にITリテラシーが無いか勉強不足なのかもしれないし、
 視聴者はITリテラシーが無いという前提で、わかりやすくするためにこのような表現になったのかもしれない。
 いずれにせよ、もうちょい煮詰めて欲しかった。



2. 家族の絆のおかげで問題が解決したのか?

 映画では一生懸命そういう風に見せようとしてますが、
 問題を解決したのは結局のところ「個人のスキル」です。

 AIと戦闘できたのも、池沢佳主馬の「スキル」だし
 AIに花札で勝てたのも、篠原夏希の「スキル」だし
 最後に暗号解いたのも、小磯健二の「スキル」だし
 AIを制御できたのも、陣内侘助の「スキル」なのだ

 ちなみにAI作ったのが陣内侘助ってのもOZシステムに負けず劣らず都合が良すぎで閉口。

 栄婆ちゃんが、色んな人たちに電話かけてがんばってたり、
 陣内家の男性陣が、仮想世界内でアバターでちょびっと助けてくれたりして、
 家族が最後一つになって雰囲気はよくなってたけど、
 問題を収束させる役にたったのかというと残念ながらほど遠いw

 花札のシーンで世界の人が協力してくれたのは唯一スキルではなく「絆」が
 役に立ったシーンですが、設定に必然性がなく冷めながら見てたので
 ここも感動が薄まった。

 このシーンを活かすには、
 例えばもっと前の場面で非協力的だった傍観者を伏線として描いておいて、
 そしてラストのここにきてようやくなんらかのきっかけで協力させるとかしないと薄いです。
 唐突すぎて「あ、助けてくれてありがとう。ややジーンとした」レベルwです。


 映画製作者は
 家族が一つになって問題解決したよーやった!→感動
 って方向に持ってきたいのに、

 こちらはスキルで解決しただけじゃん って思ってるので
 正直終始興醒め状態ですw

 スキルを身につけるのに血の滲むような努力をして、
 最後、それでAIを倒すのなら感動できるでしょうが、
 スキルで解決しても「すごいじゃん」って一人ぐらい若い子が言うだけで
 大家族の殆どはスキルの凄さを誰も認知していない。

 なんかこのレビュー書いてて段々腹が立ってきたw

{/netabare}



❏ささやかなフォローをしてみる

物語の進行中にいちいち設定で冷めながら見てましたが、
人物の表情や心理描や声優さんの演技に救われて、
他の面に関しては楽しく見れた。

なので上記でダメ出しは多いけど、時間の無駄とかにはならなかった。

さらに言うと設定の部分や絆の描き方に何ら疑問を持たずに見れたラッキーな人に
とっては素晴らしい作品だったのではないかと思う。


❏世間一般の評価

・観客動員数123万人
・Blu-ray Discは初登場5.4万枚の売上げで週間ランキング1位
・初動記録としては当時のアニメ作品歴代1位
・BD総合歴代2位
・同日発売のDVDも総合ランキングで初登場5.5万枚で1位
・同一アニメ作品のDVD・BD両メディアダブル首位
・シッチェス・カタロニア国際映画祭アニメーション部門 (Gertie Award) 最優秀長編作品賞(第42回)
・日本SF大会星雲賞メディア部門(第41回)
・『金曜ロードショー』での地上波初放送視聴率は関東地区で13.1%
・『金曜ロードSHOW!』2回目の地上波放送。視聴率は前回を上回る14.1%

↑自分の感覚との違いにびっくり。
 何でここまでの評価と実績があるのか疑問。
 作品のプロモーションにお金かけたから売れただけなのでは?と疑念を払えないw

投稿 : 2024/05/04
♥ : 7
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

夏の清涼感たっぷりの作品です

あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。


 初見でした。
 時をかける少女と同じ監督の作品とのことですが、随分違う描き方をしていたので驚きました。あまりフラグや考察ポイントを作らずに、ストーリーとテンポでぐいぐいと引っ張っていくような作品です。時をかける少女よりはより子供向けを目指していたのだと思われます。顔が赤くなる、鼻血が出るなどアニメ独特の表現をふんだんに取り入れているため、荒唐無稽とも思える設定(設備とか才能とか)も許せてしまうようになっています。面白かったです。鬱になるシーンもないのでまだ見ていない方はぜひとも気軽な気持ちでご覧になるといいでしょう。

テーマ:
 人とのつながりでしょう。家族との対面でのつながりを描いたのちに、黒電話によるアナログ感たっぷりの人とのつながり、ネットによる架空での人とのつながり。話が大きくなるにつれてつながりの質も規模も変化していくところは本作における見どころのひとつになっていたと思います。
 主人公におけるつながりの表現も良かったです。一人で食事をし、友達も一人しか登場しない主人公。最初に、訳も分からずにおばあちゃんに認められます。そして、ある人を「よろしくお願い」されることになります。最後に、とある家族とつながりを持つようになりました。ストーリー展開の規模に比べて随分小さなステップですが、確実に踏み越えていくこの描写は、夏の背景と合わさって清涼感たっぷりのエンディングを迎えさせてくれました。


疑問点・不満点:
{netabare}
①探査機の名前
 探査機のモデルは明らかですが、名前はオリジナルですよね?探査機のニュースは随所に出てきますが、襲われることには唐突な感じを受けてしまいました。探査機の名前が、過去のいくさや野球の対戦相手、地名などと同じであったり模してあったりすると襲われることも腑に落ちたかな、と思いました。裏設定があるのでしょうか?それとも見落としたかな?

②探査機のターゲット
 ターゲットが犬なのか家なのか、どちらか分かりませんでしたが、「なぜここに!?」というのはありましたよね。まぁ敵と認識したところに落としただけなのでしょうが説明不足な感じもありました。
 ①と関連するのですが、探査機の名前か犬の名前でこの違和感を解消して欲しかったです。おばあちゃんと犬のエピソードを入れてその中でフラグを立てておくのも良かったでしょう。犬の名前は作中で出ていましたが、確かほとんど意味のない名前だったように記憶しています。いずれにせよ、当然ここに落ちてくる、と視聴者が気構えておけるような理由付けをして欲しかったです。

③花札
 最後の花札のシーン、決め札がはっきりとは確認できませんでした。バトルの締めのシーンなので、決め札を「思い出の札」にすべきだったと思います。視聴後に確認したところ、雨四光に桜を加えた五光でした。つまり決め札は桜。ここだけはやや強い不満があります。サマーとタイトルが付いた作品で、桜で締めでは納得しがたいものがあります。名シーンであるだけに心残りとなってしまいました。

 では、決め札は何にすべきだったのか。花札には種類ごとに月が決まっています。五光に限っていいますと、松に鶴は1月、桜に幕は3月、ススキに月は8月、柳に道風は11月、桐に鳳凰は12月です。夏に対応する五光はありません(8月は秋です)。適当な候補がないんですよね。

 ということでストーリー上に五光のどれかにふさわしいシンボルを用意しておくべきだったのでしょう。ここで注目すべきは家族の象徴である鳥型の家紋です。家紋はおばあちゃんの背中で強烈に印象付けられるのですが、その後使われたのは敵を閉じ込めるシーンだけです。家族の象徴なのにこれだけなんてもったいないように思えます。
 鳥を模した家紋なので決め札は鶴が妥当でしょう。作中の家紋の鳥(おそらく鶴ではない)を鶴に改編して、家紋の鶴の札で勝った(=家族の力で勝った)、という結末のほうがスッキリしました。このためのフラグとして、2回ある対人戦ではいずれも鶴の札で勝利させてあげるべきでしょう。おばあちゃんに鶴の札に関する思い出を語らせるのも良と思います。おばあちゃんは家紋と同じだから鶴の札が好き、ワビスケはおばあちゃんの好きな札だから鶴の札が好き。こうすることでワビスケからおばあちゃんへの愛情にも重みが増すと思われます。作中では手をつないでいるシーンくらいしか直接的な表現はありませんから。
 作中の家紋自体は実在のものを使っている可能性もありますが、前述したようにアニメらしく作っている作品です。山に船を運んでしまうくらいですから、鶴をモチーフに創作したオリジナルの家紋でも良かったのではないでしょうか。

 一度敗れた敵に、仲間とのきずなでリベンジする、という技法は少年漫画で散見されるものですが、この作品に採用しても上手く機能したと思えるのです。もっとテーマを露骨に表現して欲しかったです。
{/netabare}
 この3点を解消するだけで、物語の説得性と厚みが増すと思うのですが、いかがでしょうか。
 とはいえ、気になった程度であり、作品をダメにしているのでは決してありません。アニメ表現を利用したご都合主義を採用しているのですから、とことんやってしまえ、と思った次第です。現状でも十分な名作であることは間違いありません。

対象年齢:
 ただ見るだけなら小学校低学年くらいからでも大丈夫だとは思いますが、理解することを条件とするなら小学校の高学年くらいからでしょう。家族ものですのでそれ以上の年齢であればどなたでもご覧になれます。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 5

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

7月と言えばサマーウォーズ。見る度に評価があがります。

 7月なのでサマーウォーズです。夏になると見たいアニメが沢山ありますが、その筆頭ですね。多分公開された翌年くらいから毎年見ている気がします。
 21年と22年の夏にレビューして、追記もありました。ごちゃごちゃになるのでまとめます。もう10回以上再視聴しているので、評価はオール5にしておきます。

 この映画の特徴はビジュアルの良さでしょう。バーチャル空間の見せ方と田舎の古きよき旧家の対比。クーラーの無い部屋で食事をする様子。扇風機やスイカなどなど。子供が走り回ったり、皆で風呂に入ったり。スダレとか縁側とか。それだけで見る価値があるくらい素晴らしい画面です。

 本作はバーチャル空間の描写が話題でした。また、その中で独自のアルゴリズムによって「悪意」を巻き散らかすプログラムが敵なので、あたかもそこにテーマ性があるように感じるかもしれませんが、それは舞台でしかないと思います。
 あまりバーチャル空間とAIにテーマ性を求めると矛盾もあるでしょうし、テーマも浅く感じると思います。
 あくまで「家族」が戦う物語の敵役として、人間ではない敵を用意した、という感じでしょう。侘助=ラブマシーンに見えてしまいますが、ミスディレクションです。ビジュアルが凄すぎるのでそっちに視点がどうしても向きますけど。

 本作で一番の見どころは、家族と言えば家族なんですけど、統一された意思の元で「自分の役割を果たす」というところだと思います。あのイヤな警官ですら自分の役割を自覚していました。

 そしてなんといってもこの映画の良さは、解決に沢山の人が寄与する、ということです。
 主人公が1人でなんとかするではなく、家族みんながハイスペックPCを用意する、VR格闘技で戦う少年とその師匠、氷をもってくる、電源の船を持ってくる。女たちはバーチャルではなく、現実で奮闘しています。葬式の準備やご飯の支度、甲子園の応援などなど。
 それがおばあちゃんの死後でも、ちゃんと機能しているところが素晴らしかったと思います。おばあちゃんの遺志を継ぐのは恐らく夏希で健二がサポートするのかなあと、キービジュアルを見ると想像してしまいます。

 そして、満を持してヒロインも戦います。これも力を合わせると言うところにつながっていきました。ここは今見ても恥ずかしいご都合主義ですけど。夏希も戦いに参加するにはここしかなかったんでしょう。ここにメッセージ性を求めるのは牽強付会かなあという気がします。
 映画としては、その後の健二の活躍があるので、それほど気にならないと思います。

 夏希が健二を田舎に連れ出す時、2人の候補者の中から健二を選んだシーンは見せてないですよね。これは夏希が迷ったフリをしながら健二になるような作為があったのだと考えられます。
 もともと叔父の侘助に似たところを健二に見ていたのかなあ、という想像ができます。
 人を見る目があるおばあちゃんが健二に夏希を託したところで、健二も家族になったととることができるでしょう。だから、最後は力を合わせて戦うシーンにつながったのでしょう。

 この映画の難点は、夏希の内面描写かなあと思っていましたが、今年見て気が付いたのは、健二の視点の映画なので、夏希の内面が分かるとつまらないですよね。健二への気持ちが本当はどうなの?というところとか、侘助への態度に嫉妬してしまうとか。
 声優さんの演技が棒という批判もあるみたいですけど、この子の不思議な感じによく合っていた気がします。と言ってももうサマーウォーズと言えばこの演技なので、気にもなりません。

 いろいろ批判も出来なくはないでしょう。バーチャル空間やAIに絡んで、いろいろ批判も見かけますが、上述の通りそれは舞台であり、エンタメとしての華やかさです。ド田舎の大家族という「点」と世界と言う広がりが同じ場所にある、という対比はある気がします。

 何より、批判するのが無粋な映画の筆頭かなあと思います。本作は話のつながりと、構成・演出が良すぎて、スーッと通り過ぎてしまいます。それだけエンタメとして出来がいいということでしょう。
 夏にみるのに、爽やかで面白く、感動もできる名作だと思っています。

 細田守氏の映画では一番好きな映画です。脚本や企画が本人じゃないし、今よりも案件臭が無いし、我儘もきかない立場だったころだから奇跡的に素晴らしいバランスの映画が生まれたのかなあなどと想像します。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 15

80.8 3 夏休みで田舎なアニメランキング3位
花咲くいろは HOME SWEET HOME(アニメ映画)

2013年3月30日
★★★★★ 4.1 (1281)
7233人が棚に入れました
美しい北陸の四季を背景に、祖母の経営する温泉旅館に住み込みで働くことになった東京生まれの女子高生の成長を描いたTVアニメ「花咲くいろは」(2011年4~9月放送)の劇場版。温泉旅館「喜翆荘(きっすいそう)」での住み込み生活にも慣れた松前緒花は、次第に変化していく自分に気づきはじめていた。そんなある日、緒花のクラスメイトでライバル旅館「福屋」のひとり娘・和倉結名が、女将修行のため喜翆荘にやってくる。自由奔放な結名に振り回されながらも、面倒をみていた緒花だったが、物置の中であるものを見つけて……。監督の安藤真裕、脚本の岡田麿里、アニメーション制作を担うP.A.WORKSほか、TVシリーズのスタッフが再結集。

声優・キャラクター
伊藤かな恵、小見川千明、豊崎愛生、戸松遥、能登麻美子、梶裕貴、本田貴子、久保田民絵、浜田賢二、間島淳司、山口太郎、恒松あゆみ、諏訪部順一、チョー
ネタバレ

シス子 さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

おはなのオハナのおはなし

テレビ版を視聴してから観ました


{netabare}先ず最初に
「劇場版」というより
テレビ版を含めて
この「花咲くいろは」という作品の
私の主観的な感想を述べさせていただきます

この作品を観た
{netabare}ほとんどの石川県民が・・・{/netabare}

いいえ
{netabare}石川県出身の女性の多くが・・・{/netabare}

っていうか
{netabare}石川県出身の"ある年齢層"の女性の大半が・・・{/netabare}

もとい
{netabare}石川県出身のある年齢層の"独身女性"の一部が・・・{/netabare}

じゃなくて
{netabare}ごく一部の女性が・・・{/netabare}

もしかしたら
{netabare}私だけが?・・・{/netabare}

{netabare}「輪島巴」(わじまともえ)という人物に
極めて強い共感を覚えたのではないでしょうか{/netabare}

{netabare}輪島巴ちゃん・・・


喜翆荘の仲居頭
28歳
独身・・・

(以下Wikiの巴データ){/netabare}

{netabare}キャラクターカラーはピンク
部屋着は黒いタンクトップだったりと大人の女でもある
左眼の下に泣きぼくろ

さらには・・・{/netabare}

{netabare}噂好きかつ覗き見好きなのが玉に瑕・・・云々
学生時代の友人が次々に結婚してゆく・・・云々
多忙ゆえに・・・云々
三十路を前に・・・云々
嫉妬心を隠せない・・・云々

・・・云々かんぬん{/netabare}

{netabare}なんか笑いながら涙出てきた~(ToT{/netabare}


{netabare}そして
なんといっても
その声の主{/netabare}

そう
あの・・・

{netabare}「能登麻美子」さんです!!! キャァァ~!!!{/netabare}

{netabare}石川県金沢市出身ですよ~ キャァァ~!!!{/netabare}

{netabare}どうでもいいけど私と同じ石川県出身なんですよ~ キャァァ~!!!{/netabare}

{netabare}金沢弁がとてもハマってて迫真の演技~ キャ{netabare}・・・あ

実は私
出身が金沢市じゃないからよく分かりませんでした~^^!
(金沢以外の"地方"はビミョーに違う){/netabare}{/netabare}

{netabare}っていうか・・・
「バカタレどもが~」って迫真のアドリブ・・・("ぼんぼり祭り"での本人コメント)

これ
金沢弁じゃないよね・・・(冷{/netabare}

{netabare}おうちが金沢なのに
なんで名前が「能登」?・・・(冷{/netabare}

{netabare}まあ
とりあえず・・・{/netabare}

{netabare}麻美子ちゃん最高だよ~ キャァァ~!!!{/netabare} 

{netabare}能登かわいいよ能登~ キャァァ~!!!{/netabare}

{netabare}キャァァ~!!!・・ゲホッゲホッ・・オエェェェ~

叫びすぎた^^{/netabare}











気を取り直して^^{/netabare}
    ↑
(どうしようもないことなので興味のない方スルーしてね)

この作品
個人的に
とても印象に残っているのは
たまに出てくる金沢の風景です(ほんと・・・たまにですよ)

あえて
城下町金沢をイメージさせる観光名所など
いかにも"不自然な"描写を控えめにして

普通の街中や田舎の風景が多いのは
地元の人間にとって
とても興味のあるところです

でも
観ていると
いつも思うんです

なんか違う・・・
って


「湯涌温泉」(作中では湯乃鷺温泉)に
「のと鉄道」乗り入れ?
あの"3セク赤字企業"が事業拡張?(失礼^^

便利になったもんだ~^^
のと鉄道さん太っ腹~^^

っていうか
そもそも
湯涌に鉄道敷けるほどの広くて平らな地面あったかな?

多分
実際に電車を走らせるとなると
箱○登山鉄道みたいになっちゃいますね

金沢市街の建物などの位置関係もなんか変・・・

なこちゃんの妹のまなちゃんを
おはなちゃんとなこちゃんが探すシーンでは

(多分)金沢駅から
(多分)安江町の商店街を抜けて
いきなり
(多分)香林坊ってどういうこと!?

しかも
二人が来たのは
駅と反対の方向から^^
(あきらかに香林坊アトリオに向かって片町方面の"横に変な走るオブジェがあるミスド"の方向から来ている)

どー考えてもおかしい・・・
こりゃいったいどこなの?

・・・超ローカルな話題で申し訳ございません!

気になる方は
一度
金沢に遊びにきまっし~^^
実際の町並みと比べてみるのも面白いかも


さて
お話は
テレビ版での「ぼんぼり祭り」の少し前のお話だそうで

「喜翆荘」と
おはなちゃんたち仲良し女の子4人のエピソード
さらに
おはなちゃんのお母さん
「松前皐月」(まつまえさつき)さんのお話

キャッチコピーの「私、もっと輝きたいんです……!」のとおり
みんな輝いてました!
みんなぼんぼってました!
ホビロン・・・叫んでました!

そして
おはなちゃんはというと
いつものごとく
元気に走りまくってました!

いつでも
走る!走る!走る!

どこでも
走る!走る!走る!

廊下の雑巾がけで
走る!走る!走る!

さつきさんも
走る!走る!走る!

そして
{netabare}泳ぐ!泳ぐ!泳ぐ!・・・{/netabare}

{netabare}泳ぐ???{/netabare}

そう
冒頭の{netabare}「クソババァ」(失礼^^){/netabare}のシーン

これ
どこかの{netabare}競泳BLアニメ{/netabare}を
パクったんじゃね?
って思うくらいの
{netabare}みごとな
夜間の飛び込みシーンでした^^
(※製作はこっちのほうが先です){/netabare}



最後に
もう一つ
とても気になったのは
おはなちゃんのお父さんのお話です

さつきさんとお父さんの出会いから
おはなちゃんの誕生(ここで"オハナ"の秘密が明らかに・・・)
そして
お父さんが・・・

ここでもまた涙が・・・(ToT

って
あれ・・・
よく考えたら
おはなちゃんって
{netabare}病弱なジャズシンガーのお母さんと
港にやってきた米兵さんの間に生まれたんじゃなかったっけ?(テレビ版第1話より){/netabare}


とにかく
いっぺん石川に遊びに来てみんけ~^^

投稿 : 2024/05/04
♥ : 34

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

「私、もっと輝きたいんです……!」

2011年に放送されたこの作品のTVアニメ版は「P.A.WORKS 10周年記念アニメーション作品」として制作されました。
P.A.WORKSにとって、単独製作した初の完全オリジナル作品であり、P.A.WORKSの「お仕事シリーズ」の第一弾に相当する作品です。

あにこれでの評価も高く、TVアニメ版は2020年11月時点で総合得点90.1点、感想・評価6058件、棚に入れた25866人という驚異的な数字を叩き出しているにも関わらず、ランキングは50位なんですよね。
トップクラスの層の厚さを物語っている証拠だと思います。

一方、この劇場版のあにこれでの評価は、総合得点79.3点、感想・評価1212件、棚に入れた6887人でランキングは399位と、TVアニメ版の1/4~1/5人しかこの作品に触れていないようです。
かくいう私もその一人でしたけれど…
ですが、この劇場版はTVアニメ版を視聴したなら見ないのは勿体ない、と思える作品でした。

私がTVアニメ版を視聴したのは2013年の5月なので、もう7年以上前になりますが、私にとって「お気に入りの棚序列51位」の作品は、今でも色褪せることなく輝いています。
その劇場版なんです…思わず視聴にも気合が入りましたよ。


祖母の経営する温泉旅館"喜翠荘"(きっすいそう)での住み込み生活にもすっかり慣れた
東京生まれの女子高生・松前緒花は、
板前見習いの鶴来民子や、仲居見習いの押水菜子らと過ごす毎日の中で、
少しずつ変わっていく自分に気が付きはじめていた。

秋も深まってきたある日、クラスメイトでライバル旅館"福屋"の一人娘である和倉結名が、
喜翠荘に女将修行にやってくる。

奔放な結名に翻弄されながらも面倒を見ていた緒花は、掃除をしていた物置の中で、あるものを見つける。


公式HPのSTORYを引用させて頂きました。

改めて視聴して気付いたこと…
作画が緻密で綺麗だと言うのは認識していましたが、声優陣がこんなにも凄かったのは気付いていませんでした。

喜翠荘で働く女子高生3人組がコチラ↓
松前 緒花(CV:伊藤かな恵さん)
鶴来 民子(CV:小見川千明さん)
押水 菜子(CV:あきちゃん)

喜翆荘の仲居頭がコチラ↓
輪島 巴(CV:能登麻美子さん)

喜翆荘のライバル旅館である福屋の一人娘がコチラ↓
和倉 結名(CV:ハルカス)

これだけの面子が揃っているんですもん…
当時この作品にハマった自分の行動原理にも納得です。
それに「P.A.WORKS 10周年記念アニメーション作品」と銘打っているだけあって、作り手の気概がヒシヒシと伝わってきますから…

私が感じたこの作品のテーマは「家族の在り方」です。
例え働いている場所が一緒でも、たとえ境遇が似通っていたとしても、一つとして同じ在り方はありません。
だから、きっと正解は無いんだと思います。

夢を叶えるために目標を定め、最短コースを全力で走り抜ける…
夢は十人十色でコースの長さや起伏も人それぞれ…
だけど、時には家族のために立ち止まったり振り返る余裕は残しておきたいと思いました。

何も言われないからって、それで良い訳じゃない。
周りには言いたいことを必死で堪えている人だって居るんだ。
だから臨界点を突破して破裂しちゃう前に気付きたい、そう思えました。
それが家族なら猶更ですよね…

それとこの劇場版で明らかになるのは、緒花の名前の由来です。
緒花はハワイ語で「家族」を意味する「ohana」から取ったそうです。
この命名の方法は今まで発想にありませんでした。

命名するとき、「その子が将来どんな風になって欲しい」という子供を主体とした発想だったり親の気持ちだったり…
各家庭のしきたり、という場合も考えられると思います。
そう考えると「家族」を意味する名前って、奥が深いと思いました。

上映時間66分の作品でした。
いやぁ、しっかり満喫させて貰えましたし、しっかり涙で前が見えなくなる展開も用意されていて大満足でした。
ここ最近、TVアニメ版は視聴済ですが劇場版を視聴していないという作品が
結構あることに気付きました。
少しずつ記憶を辿りながら、昔の作品にも思いを馳せていけたらなぁ…と思っています。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 22
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

さっぱりとした良作です

あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。

 初見でした。65分くらい。
 テレビシリーズはチラッと見たことがある程度で、内容はすっかり忘れていました。ストーリーもキャラの名前すらもあやふやな状態での視聴となってしまいました。
 ただ、見始めてすぐにキャラクターの名前や性格、抱えているエピソードなどが伝わってきました。ここまでしっかりとキャラクターが描かれいるのならば、テレビシリーズもきっと良作なんでしょうね。

 で、この映画版なんですけど、記憶があいまいだったせいもあって、楽しめないかもなと覚悟していました。ただ、そんな心配は無用なもので、想像以上に面白かったです。一番の見どころは生き生きとした登場人物たちですかね。モブもきちんと演技をしてましたし、作画関連に突っ込みどころは感じませんでした。

 軽くストーリーで描かれていた要素をまとめてみます。


客観視:{netabare}
 物語の大半は「客観視」をすることに費やされていました。
 「自分が見ている自分」「自分が見ている親」「自分が見ている家族」というのを、「第三者の視点」を通すことで理解しよう、というのがストーリーの中心です。

 例えば、学生時代のオハナママが見ている「自分が見ている自分」というのは、「写真に写った自分」を介して再評価がされることになります。
 同じように「オハナが見ているオハナママ」は「豆じいの業務日誌」を介して、「オハナが見ているオハナファミリー」は「ナコのファミリー」を介して、客観視されていきます。

 これは他の登場人物にも表れていました。例えば、ミンコは宿泊客の視点で、板長のレンジですらトモエの視点で、それぞれの思惑に対しての再評価がなされていました。
 描かれているのは「客観視」というたった一つの要素なんですけど、マンネリにならないように非常に上手くストーリーが組まれていました。一貫して描き続けよう姿勢というはすごく伝わってきましたね。
{/netabare}

オハナとオハナママ:{netabare}
 一番面白かったのは、オハナとオハナママのエピソードの書き分けですね。

 まずはオハナから。
 「オハナが見ているオハナ」を第三者の視点から見るエピソードはありません。思春期における自己の客観視は、オハナママのエピソードで足りているからかもしれませんし、テレビシリーズの話なのかもしれません。
 で、オハナは、「オハナママ」と「自分のファミリー」の両段階を、他人の目に頼っています。上で述べた「豆じいの業務日誌」と「ナコのファミリー」のことです。

 一方でオハナママ。
 学生時代の自分を客観視するためには「写真」に頼っているんですが、「オハナママの親(女将のスイ)」と「自分のファミリー」を客観視するためには、他人の目を必要としていないんですね。いずれも子供のオハナを抱えた状態で、自分の目で客観的に見れています。

 この構造的な違いというのは、そのまま年代や境遇の違いになるんだと思います。学生という未熟な視点と、子を持つ親の成熟した視点ということなのでしょう。このオハナとオハナママの似ているようで全く違う描き方が絡み合いながら、エンディングを迎えます。

 「私、輝きたいんです!」の源泉は、自分をきちんと見つめることにある。そして、親や家族に対してもその視点を適用することで、映画版のサブタイトルである「HOME SWEET HOME」につながる。これがテーマでした。
{/netabare}

対象年齢等:
 予備知識はそこそこあれば問題ないと思います。もちろん、あった方が楽しめるのは否定しませんけどね。私程度の予備知識でも楽しめましたから、コアなファン向けってわけではないと思います。
 家族ものですから、思春期以上なら視聴年齢は特に気にしなくても大丈夫です。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 7

80.9 4 夏休みで田舎なアニメランキング4位
劇場版 のんのんびより ばけーしょん(アニメ映画)

2018年8月25日
★★★★☆ 4.0 (394)
1786人が棚に入れました
旭丘分校」の生徒はたった5人。学年も性格も違うけれど、いつも一緒に春夏秋冬の変わりゆく田舎生活を楽しんでいます。ある日、デパートの福引で特賞の沖縄への旅行券を当てた「旭丘分校」の面々。夏休みを利用して、皆で沖縄に行く事になるのですが……。

声優・キャラクター
小岩井ことり、村川梨衣、佐倉綾音、阿澄佳奈、名塚佳織、佐藤利奈、福圓美里、新谷良子
ネタバレ

はあつ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

残暑お見舞いなのん~

テレビアニメ「のんのんびより」のファンムービーとしては期待を遥かに上回る出来映え!
美しい自然と可愛く楽しい女子キャラたちによる極上の和みと癒し。
ストーリー性も充分あり、70分という、映画としては短めの尺ながら満腹度は100分以上の長編並みに感じる密度の濃さがありました。
作品の魅力が存分に表され、テレビ版を未視聴の方でも、日常癒し系アニメの人気作たる所以に納得し楽しめるのではないでしょうか。

《ストーリー》

旭丘分校の生徒たちをはじめとする田舎の村民9人の沖縄旅行顛末記。
ユーモラスなキャラたちの個性に沿った小ネタ満載の展開にニヤニヤと和むことしきり♪
そんな中にしっかり描かれる、脚本・吉田玲子さんお得意の、ちょっぴり切なくも心温まるハートウォーミングなエピソード。
のんのんらしい優しさもたっぷり伝わり大満足です!

《作画&演出》

テレビ版と同じく手書きの自然風景は美しく、キャラ画との親和性も高くて目の保養になります。(特に夜のワンシーンにうっとり!)

本作のシリーズを通して川面真也監督の演出面でつくづく感服するのは、シーン毎の間尺の取り方。
今回の映画でも、静止したキャラを見せられる度に笑い声や涙をこらえるのに必死になり、長回しで映る自然風景や建物などの器物を見てるだけでうっとりと癒されたり感慨に襲われてしまう。
しっかり情感を汲み取れる時間を充分とりながらも、決して間延びを感じさせないのは卓越した手腕ですね。

《音楽》

テレビドラマと同じくnano.RIPEさんによるOP。
nanoさんは作品に合わせた曲作りが上手く、海をイメージさせるサウンドでバカンスへの出発気分を盛り上げてくれました。
そしてこれまた同じくキャラ4人によるEDは、バックで場面を振り返りながら名残惜しい余韻に浸れました。

また、劇場ならではの音響システムで、水しぶきや波の音、無数の虫の音に包まれながら美しい景色を眺めてると、マイナスイオンのシャワーを浴びながらキャラ達と共に大自然の中に居るような幸せな気分になれました。

《キャラ》

今作では、なっつんこと夏海が一番活躍?
メンバーそれぞれの個性で笑わせてくれる中、いつもはからかい上手の彼女にキュンとさせられます!

あと個人的に一番楽しめたのは宮内三姉妹。
末っ子れんちょんの才能と感受性の豊かさは要所に描かれ、ホント、将来が楽しみな小学1年生。
長女かず姉には、意外な一面に驚きつつ楽しめました。
そして、キャラたちのお笑いの中でも突出してたのが次女ひかげ。
可愛い一面も見せ、今作のR-1グランプリ受賞でしょう♪

《声優さんの舞台挨拶初見学記》

今回、映画上映後にれんちょん役の小岩井ことりさんとほたるん役の村川梨衣さんの舞台挨拶を見る事が出来ました。

幅広い年代の250人程度の観客のほとんどは男性で平均年齢35歳といったところ。
小岩井さんの生「にゃんぱす~!」で始まるおふたりのトークは、村川さんの盛り上げ方も上手で、アニメ関連イベント初参加で変に緊張してた私も和やかな気分で楽しめました。

村川さんの地声は、ほたるんより「ヒナまつり」のアンズっぽく聞こえ、個人的に好きなキャラ声を生で聞けるのはテンション上がる~!
作品の架空の田舎の事をキャストみんなで「(仮)のんのん村」と呼んでるそうで、制作現場の楽しい雰囲気が伝わりました♪

小岩井さんのトークで、 {netabare} れんちょんがスケッチをプレゼントした夏海への気遣いについて、「テレビ版のひらたいらさんのエピソードで、夏海が機転を利かせてれんちょんを元気づけた事に繋がってる」と言われ、 {/netabare}私の感想も深まると共に、小岩井さんの作品への思い入れを強く感じました。


観光地の旅行先がメイン舞台なので、田舎の「のんびりさ」だけが成分不足ですが、それを補う「強壮バカンス成分」がてんこ盛り。
この夏の暑さを和らげるくつろぎと癒しの清涼剤をぜひご一服どうぞ~♪

投稿 : 2024/05/04
♥ : 34
ネタバレ

ぽ~か~ふぇいす さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

上映館が倍以上に増えるようです!

初日の舞台挨拶は抽選漏れしたため
翌日にあにこれ面子と一回目
今週の舞台挨拶には当選したので
舞台挨拶付きで2回目を観てきました

そんなかんじで初めて観た日は
アニサマ全通の3日目に
会場に行く前に新宿まで寄り道して観たのもあって
かなり疲弊した状況での鑑賞となりました

しかし、この最上級の癒しアニメのおかげで
だいぶ活力を取り戻して3日目へと向かえたように思います

ふだんののどかな田園風景とは舞台は違えど
やっていることはいつも通りの
ゆったり日常アニメ
ゲストキャラクターのあおいちゃんとの
ハートフルな交流もあったりと
とにかく沖縄の情景がとてもきれいに描かれていて
なんだかキャラクター達と一緒に
沖縄旅行を楽しんでいるような気分になりました

あとはサブキャラクターのくせに
{netabare}ジャンピング土下座にはじまり
難聴ネタ
ふとん
リバース
天然記念物
泣いてねーし!{/netabare}
と要所要所でギャグ要員として出動し
美味しいところを全部持っていくひかげに
今回はかなりやられましたw
ほんといいキャラしてる

そしてあまり間を置かずに2回目を見に行ったわけですが
舞台挨拶は置いておいても
2度目の鑑賞でも1回目と変わらず癒されたし
楽しく見れました

そして今は久々にTVシリーズを見返したい思いに駆られています
1期2期ともにdアニメにあるので
今期のアニメをいくつか切れば見れるけどどうしよう?

閑話休題

この映画かなり見れる劇場が少なく
基本的に都会の映画館でしかやっていない感じでした

隣の芝は青いと言いますか
田舎の人は都会にあこがれ
都会の人は田舎にあこがれるものです

のどかな田園風景とゆったりしたスローライフに
まるで異世界ファンタジーでも見るような感覚で
憧憬の念を抱くのは基本的に都会の生活に摩耗しきった層なので
都会に絞っての公開は戦略的に正しかったと思います

この戦略が吉と出たのかどうかは定かではありませんが
館数からするとかなり好調な収益を上げているようで
今回の舞台挨拶にて上映館が27scrから71scrへと
大幅拡大されることが発表されました

特に東北と九州は仙台と福岡で1館づつの上映だったものが
各県で1~2か所みられるようになり
だいぶ見やすくはなってるんじゃないでしょうか?

もし今まで観たいけど近くでやってないからと敬遠していた方がいれば
ぜひもう一度上映館情報を確認しなおすことをお勧めします

この後全国でさらにヒットすれば
劇場版をもう一作
あるいは3期の制作なんて話になるかもしれません
応援のためにもみんなでぜひ観に行きましょうw

おまけ(舞台挨拶内容・ネタバレ含)

{netabare}今回はれんちょん役の小岩井ことりと
なっつん役の佐倉綾音が登壇
映画に関してのちょっとした裏話などをしてくれました

あやねるの話で面白かったのは
夏海とあおいの関係について

あのど田舎の生活では
同い年の子供がまったくいなかったので
夏海にとってあおいは初めての同い年の友達
そして初めて仲良くなった同い年の子と
出会って数日で別れなくちゃいけない
「ほんと切ないよねー」
と、こっこちゃんと頷き合ってました

こっこちゃんは演じる際に考えていたことを
いくつか話してくれましたが
中でもハッとさせられたのは

TV版ではひらたいらさんとの別れを悲しむれんげを
夏海がなかなかにニクい形で元気づけていました
今回の映画であおいとの別れを悲しむ夏海を
れんげが慰めるシーンは
れんげが夏海に教わったことを
夏海にお返しするシーンだと思っているというお話
言われてみるとなるほどという感じで目からうろこでした

りえしょんみたいに難しいことは何も考えてなくて
それでいて感覚的に何でも器用に演じれてしまう人もいれば
こっこちゃんみたいに一つ一つのセリフの意味を
自分なりにあれこれ考え抜いた上で演じてる人もいる
っていうのが面白いですねw{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 33

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

みんなでもっと遊ぶのん!

テレビで2期が放送されてからもう3年…
この作品の大好きな方は、この劇場版を待ちわびていたのではないでしょうか。
かくいう私もその一人です。

テレビアニメ本編は基本的に1話完結型…
そのため劇場版から視聴しても話は通ると思います。
でも作り手の愛情が目一杯注がれたこの作品を隅々まで堪能するなら、是非前期からの視聴をお勧めします。

続編の放送をテレビにするか、それとも劇場にするかは議論の分かれるところだと思います。
個人的にはその作品に合っているなら、どちらでも良いと思っています。
劇場版には尺に限りがあるので、内容を詰め込み過ぎては物語が発散してしまいますし、テレビで放送する場合も尺が合わず中だるみした作品だって無い訳ではありません。

それではこの「のんのんびより」はどうだったか…
個人的には劇場版で正解だったと思います。
物語の構成から劇場版を選択しても尺の長さに違和感が無いこと…
そして繊細かつ緻密な背景のクオリティが半端無く、作り手の徹底的なこだわりが窺えること…
何よりそこまで手がかけられるのが劇場版の醍醐味だと思うんです。

鮮やかな空の青…
新緑に彩られた森の木々…
普段なら何気なく過ぎてしまう背景の一場面にも細やかな配慮が散りばめられているんです。
作り手の皆さんがこの作品を愛してやまない何よりの証拠なのではないでしょうか。
だから視聴にも気合いが入りますし、作り手の頑張りが感じられる作品は見ているだけで幸せな気持ちになれる気がします。

物語は夏休みもあと少しの時期…
いつもの4人組は今日も一緒に遊んでいました。
いつもと少しだけ違ったのは、駄菓子屋とかず姉が車で出掛ける姿を4人に目撃されたこと…
この僅かな差が、このあとの超展開へと発展する訳ですが…
その立役者は、存在は認識されているものの、殆ど出番がなく空気みたいな人…
と言えば、もしかしたらピンと来る方がいらっしゃるかもしれませんね。
こうして「いつもの日常」を大きく逸脱しながら物語が動いていきます。

途中まで視聴して気付いたこと…
それは物語の「間」をとても大切にしている点です。
思考が巡り、次の展開を思わず期待してしまうような「間」だったり、掌を帰すようにツッコミは秒殺だったり…

それもこれも、この作品に登場するキャラが愛されているからだと思います。
しっかりキャラの特徴が定着しているので見ていて安心感が半端ないんですよね。
でもそれだけじゃありません…
4人は多感な時期であると共に、成長期でもあるんです。
そんな彼女たちが時折見せるギャップがグッと胸に響くんですよね。

誰かのために何かをしてあげたいという純粋な気持ち…
そんな気持ちと優しさは伝染する…
この作品の優しさは心底温かいんですよね。
そして、いつもと違う日常をみんなは満喫していくのですが…
緻密で繊細な作画がキャラの躍動感と魅力に拍車をかけてくれているのが分かります。
この作品のキャラと背景…最強の組み合わせだったのではないでしょうか。

どうして楽しい時間ってあっという間に過ぎてしまうのでしょうね。
勿論時間は有限だから一秒たりとも無駄になんてできないし、決してしなかった…
だからこそ…なんでしょうね。
終盤の夏海の言動…私の涙腺は耐えられませんでした。
だって、私も夏海と同じこと考えていましたから…
こうして物語は「いつもの日常」に戻っていきます。

オープニングテーマは、nano.RIPEさんの「あおのらくがき」
エンディングテーマは、4人による「おもいで」
nano.RIPEさんのオープニングは鉄板ですね。
今回も抜群の楽曲を提供してくれています。
エンディングは「4人らしさ」が感じられる曲でした。

上映時間1時間強の作品です。
相変わらず笑いと癒しのバランスが秀逸な作品ですね。
万人にお勧めできる作品だと思います。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 26

80.6 5 夏休みで田舎なアニメランキング5位
蛍火の杜へ(アニメ映画)

2011年9月17日
★★★★☆ 4.0 (1070)
5192人が棚に入れました
祖父の家へ遊びに来ていた6歳の少女・竹川蛍は、妖怪が住むという山神の森に迷い込み、人の姿をしたこの森に住む者・ギンと出会う。人に触れられると消えてしまうというギンに助けられ、森を出ることができた蛍は、それから毎年夏ごとにギンの元を訪れるようになる。

声優・キャラクター
内山昂輝、佐倉綾音
ネタバレ

★mana★ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

10年分の想いを、今ここに・・(ギン視点で観てみました)

ねえ、蛍。
俺はずっとここに居るよ?
何年、何十年たとうとも。
たとえ、君の瞳に写らない
そんな存在だとしても。

俺が過ごした、途方もない時間。
そんな中で、蛍と過ごした時間は ほんの一瞬だった。
でもね、俺にとってはその一瞬が大切で愛おしくて、仕方がなかった。

蛍は俺に、優しくて、温かい感情をたくさんくれたね。
でも、それは、切なくて、苦しくもあったんだよ?
蛍は気付いてないかもしれないけれど・・
まるで夏の夜に光る、ホタルのヒカリのような、
そんな儚くて脆い、だけど、強くて、美しい。
そんな日々だったね。

蛍は俺に「忘れないで」と言ったよね?
忘れる訳がない。忘れたくない。
でもね、蛍は忘れてしまってもいいんだよ?・・


蛍に出会ったのは、蛍がまだ小さい時だった。

{netabare}

~蝉の詩、笑い声・・~
鳥達の囀り、木々の揺れる音・・
そんな森達の雑談と共に聞こえた、泣き声。
それが蛍だった。
蛍は、俺を見ても少しもこわがらなかったよね。
むしろ、楽しそうに俺に触れようとして来た。
まだ小さい蛍には「消える」という意味さえ理解出来なかったんだろう。
でも、俺には それが素直に嬉しかったよ。
1人の存在として認められているようで。

~夕やけの茜色、帰り道、遠回り~
「何かデートみたいデスネー」「色気のないデートデスネー」
そんな他愛ない会話を繰り返したね。
手をひいてあげる事は出来なかったけれど、
その先から伝わるこの想いは、一体何なんだろう?
何だか、胸の奥が温かくなるような・・

別れる時、蛍は俺の名前を聞いた。
俺の名前は・・無言・・疑問と不安。
そんな時、風が俺の背中を押した気がした。

~約束は「また明日」~
明日も来ると走って行った、蛍。

「ギンだ」

翌日 本当に蛍はやって来た。
そして、約束の場所で、待っていた俺が居た。

~夏はただ、咲き誇り~
冷たい小川に、暑い夏の日差しが差し、キラキラしてる。
全てが美しく、夏が輝いていた。
それは、蛍が側に居るからなんだよ?
蛍と見る全てが、今までとはまるで、違って見えた。

~その命輝かせ~
俺はただ、生かされて、ただそこに存在しているだけだった。
何も意味をもたない、あやふやなモノ。
だけどね、今まで感じた事のない、自分の存在。
俺は自分というものをこんなにも感じる事が出来るんだ。
夏が待ち遠しい、蛍に会える事が、素直に嬉しい。
そう思えた。
そんな夏が何度も何度も訪れた。

ある夏の事だった。
蛍は俺を驚かせようとして、見事に木から落ちて来た。
俺は、そんな蛍を受け止める事が出来なかった。
自分の存在が無くなってしまう事を恐れたのか・・?
そんな気持ちとは裏腹に、蛍は安堵の顔を見せた・・
そして、大粒の涙を流した。
何故泣いてるのかは、分かってた。
涙は止め処なく流れ続ける。
でも、俺は その涙を拭ってあげる事も出来ず、ただ、その泣き顔を見続けた。

出会わなければ、こんな想いをさせなかった?・・
出会わなければ、こんな想いはしなかった?・・

~終わらない、お話のその先に気付いて~
蛍は毎年、会う度に、成長していく。
それは、普通の人間の子なら当たり前の事なのは分かっていた、、つもりだった。
少しづつ、目線が近くなって来る。
それを複雑に感じつつ、俺の感情に違う何かが芽生えはじめた。
いつか感じた想いとは、全く別物。

蛍に・・会いたい。
蛍に・・触れたい。

この胸を締め付ける感覚は・・

~カラス達遠ざかり、どこかへと飛んでゆく~
離れてる時間がこんなにも長く、辛く感じるなんて・・
今まで考えた事も無かったよ。
蛍は今何をして、何を見て、何を考えてる?
いつからか、俺の中は蛍でいっぱになっていた。
いつか、こんな気持ちが届く日が来るのだろうか?

真っ白な雪の上に散る椿が一際紅く見えた。
俺の心の中のように。
真っ白な心の中に、真っ赤に燃える感情が一つ・・
蛍がくれた温もりで、いつもの冬より、身体も心も温かかった。

~夏はただ駆け抜ける、宝物、しまうように~
ある夏、蛍は言った。
春も、秋も、冬も、俺の事を考えていた、
そして、もっと一緒に居たいと。
俺は、自分という存在の全てを打ち明けた。
打ち明けなければならないと思った。
俺は、蛍を幸せにはしてあげられないから、永久に・・
こんな俺の為に犠牲になる事なんてない、もうここには来なくていいよ?
俺はずっとこうして、だだ存在しているだけで、何も変わらない。
“決して忘れられない、かけがえのないモノが一つ増えた事以外は”
だけど、蛍から返って来た言葉は優しく、心が苦しくなった。
そして思った。もう、こんな夏を続けていてはいけないと・・

~いつまでもなつかしい、あの頃は黄金色~
いつか蛍と行きたいと思った、 「妖怪達の夏祭り」。
誘うのは、ちょっと照れ臭かったけど
蛍は喜んで、行きたい!っと言ってくれた。
そして、少し不安な言葉を口にする。
不安な事はないよ、だって蛍は、俺が守るよ?
そう言うと蛍は、少し頬を紅くして
「そういう事を言われると、飛びつきたくなってしまう」と言った。
・・「飛びつけばいい、本望だ」
もし、それで俺が消えても何の後悔もない、今なら全て受け止める事が出来る。

~何気ない毎日の片隅を照らしてる~
手を伸ばせば、届く距離。
一番近くに居るのに、一番遠い存在。
俺は、蛍を抱きしめたかった。
そして、その手に、その髪に、頬に、
一瞬でいい・・その温もりに触れたい。
もう、気持ちが抑えきれなくなっていた。

~夏はまた、やってくる約束を守るように~
祭はいつもの夏と同じようにやって来た。
でも、今年は隣に蛍が居る。
毎年思い描いていた光景。
「デートみたいデスネー」「デートなんデスネー」
10年前、初めて会った日に交わした会話。
10年越しの、始めてのデート。
やはり、あの日のように手はひいてあげられない。
でも、振りなら許されるよね?

息を吹きかけると回る風車。
金魚すくいをする子供は、尻尾を隠しきれてなくて。
偽物の綿あめが空に浮かび上がり、その空に花火が咲き誇る。
蛍はそんな光景に、ずっと笑顔だったね。
その笑顔を見て俺も笑った。

このまま時間が止まってしまえばいい・・。
そんな、叶わぬ願いをそっと胸にしまい込んだ。

楽しい時間は一瞬だった。
蛍と過ごした10年分の夏がそうだったように。
そして、俺は帰り道に全ての想いを蛍に伝えた。
こんな事を言っても困らせてしまう事は分かっていた。
だって2人は決して交わる事はないのだから。
そして、お面越しにくちづけをした。
これが蛍に触れられる精一杯。
蛍に捧げる、精一杯の気持ち。

蛍は今どんな顔をしてる・・?

そんな時、小さな子供が飛び出して転びそうになった。
俺は咄嗟にその腕をつかんだ。

・・刹那、指先から光を放つように消え始めた。
「あの子は、人の子だったのか・・」

もう、何もこわくはなかった。
ただ、願いは一つ。

「来い、蛍!やっとお前に触れられる」


ねぇ?蛍、覚えてる?
初めて会った日の事を。
笑いあった夏の日々を。
俺は忘れた事なんてなかったよ。
春も、秋も、冬も、会えない日々
ずっと蛍の事を考えていた。
蛍としたい事でいっぱいだった。
蛍とみたい物でいっぱいだった。
蛍と感じたい事でいっぱいだった。

でも、もうさよならなんだね。

蛍、こんな俺に気付いてくれてありがとう。
こんな俺を受け入れてくれてありがとう。

蛍の温もりを感じながら、最後に伝えたい事があった。




「好きだよ」



~夏はただ咲き誇り、その命輝かせ・・~






※~〇〇~
ED・おおたか静流『夏を見ていた』

{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 58
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

切なく儚い夏の物語

あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。


 初見でした。自業自得ですが、短編と知らずに見てしまったため、少々の後悔が残ってしまいました。短編と気付いたのは終盤になってからです。短編と知っていれば、見方も少し変わったと思うのですが、残念です。作風はゆっくりしているのですが、テンポは速く感じました。賛否はあるかもしれませんが、もう少しキレを悪くした方が余韻が残ったかも、とも思います。シナリオ自体はかなり良いものです。セリフ回しに感情の機微が表れてますので、逃さないようにしましょう。短編ですので時間がないときでも見やすいです。


ジャンル:
 ジャンルは、妖怪との恋愛ものです。
テーマ:{netabare}
 テーマとして、子供時代との決別を描いていると思われます。主人公の蛍は、中学生で凧揚げ、高校生で釣りと、およそ年齢に相応しくない遊びをしています。ギンの近くにいるためには、子供でなければならなかったのです。蛍が大人に近づき、ギンとの間で愛情が生まれると同時に、ギンとの生活も終わりを迎えます。蛍の子供時代は遅まきながらも終わりを迎え、大人として歩んでいくことになります。 {/netabare}


エンディングへのフラグ:{netabare}
 この作品は、エンディングに至るために、特殊なフラグ管理を行っています。
 エンディングへのフラグは、大きく分けて二つ立てられます。一つ目は、ギンが蛍を助けるために触れてしまう、というものです。これを補完する水辺のシーンが複数あります。二つ目は、時間が二人を分かつまで一緒にいようという蛍の願い、つまり、蛍が死ぬまで一緒にいるというものです。蛍は作中で、卒業後にギンのいる街で就職すると述べています。触れたいと願いながらもこの二つ目のフラグを期待していました。ですが、いずれのフラグもエンディングとは異なるものでした。
 エンディングは、つまづいた少年を助けるためにギンが少年に触れてしまうというものでした。突然の事故であり、それもかなり小さいものです。視聴者をかなり驚かせます。
 作品におけるどんでん返しとは、構造自体を変えてしまうことが普通です。Aだと思っていたものが、実はBだったという手法です。例は控えますが、多くの作品に使われています。
 しかし、この作品では、構造自体がフラグになっているのです。転んだ少年は、お面の少女を追っています。いずれも年のころは幼少期の蛍に重なります。これは、男女を逆転させてはいますが、お面を受け取る前の蛍とギンの関係性と同じです。転んだ少年は蛍を象徴するキャラクターであり、ギンは蛍に触れたに等しいのです。つまり、蛍とギンという構造自体がフラグとしてエンディングを導いているのです。
 ギンも蛍に触れたいと願います。死別というフラグの否定です。しかし、触れる選択肢はありませんでした。触れるという結末は、ギンのせい・蛍のせい・合意の3種類が考えられますが、いずれにしても蛍が大きく傷付くことをギンは理解していました。だから、蛍との離別を選んだのです。実際には上述の事故が発生し、蛍を模した第三者(蛍のせいではない)をきっかけとして触れ合うことで、蛍の傷は小さいもので済みました。

 ちなみに、蛍が心に傷を負っていたことは確実です。物語の冒頭、蛍はおじいちゃんの家へ「毎年行っていた」と言っています。「毎年行っている」という継続表現ではないことから、1年以上の間が空いていることは明らかです。履歴書をもって出かけていることから、時系列としては、「ギンと分かれた高1の夏」「行けなかった高2・3の夏」「就活のために行く卒業後の夏」となっているのではないでしょうか。
{/netabare}

手つなぎ、木の棒、布:{netabare}
 エンディングと並ぶ見どころの一つです。
 ギンと初めて会ったシーンでは、木の棒を二人で「握り」ます。木の棒越しに伝わるギンをよっぽど気に入ったのでしょう、蛍は山を下りる際に木の枝で草を撫でながら鼻歌まじりに歩き、ギンの存在を手に反芻します。そしておじいちゃんと手をつなぎます。
 二日目には、ギンは木の棒を携えて登場しますが、その木の棒は持っていきません。代わりに蛍からアイスを受け取っています。もう木の棒は必要なくなりました。
 蛍が中学生になると、学友と手をつなぐシーンがあります。しかし、蛍には思春期特有のドキドキ感がありません。ただ「引っ張ってもらっている」だけという描写になっています。
 夏祭りでは布で蛍とギンの手首を「つなぎ」ます。重要なのは、布を「握っている」のではなく、手首で「つながっている」ことです。赤い糸も「握っている」とは言わず「つながっている」といいます。二人の思いが通じ合っていることが表現されています。子供が間を駆け抜けてもほどけることはありませんでした。もう手を「つなぐ」必要はなくなりました。
 その後、ギンに「来い」と言われ、蛍は飛び込むようにギンに抱き付きます。抱き合うのではなく、抱き付くという描写も、初対面の時に繰り返しチャレンジした願望を成就させたものです。
 なお、紐ではなく布であったのは、蛍が送ったマフラーへのギンなりの返答だからでしょう。
{/netabare}

蝶とホタル、天井:{netabare}
 蝶はギンを、ホタルは蛍を象徴していたようですが、使われ方は少し雑に感じました。要所で、すなわち心情が動くシーンで出ていたようですが、その前後であったりと統一感に欠けていたように思われます。理由付けをすることは出来ますが、ややごり押し感があるためここで述べるのは控えます。エンディングでは、蛍の周りがホタルから蝶へと変わり、乗り越えた感は感じられます。
 一方で、3回出てくる天井は分かりやすい表現となっていました。蛍が山に行けなかっただけでなく、おじいちゃんの家にも行けなかったのは、天井の木目にギンを見てしまうからでしょう。就職が決まったら、ギンのいるあの部屋で生活するのかもしれません。
{/netabare}

 短編ですが、エッセンスは十分に盛り込まれていたと思います。唐突に来るエンディングも、切なさと儚さを上手く演出していました。対象年齢としては思春期以上が望ましいでしょう。特に女性に好まれる作品ではないでしょうか。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 8

半兵衛♪ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

【ネタバレ有】『最後に残る最高の“余韻”―。 一つの“掟”に縛られた、切なさ全開の恋物語―。』

 
   
 原作の“緑川ゆき”に加え、“大森貴弘(おおもりたかひろ)”監督をはじめとする「夏目友人帳」のスタッフが製作を手がけた劇場版アニメ作品―。

 上映時間40分余りの、いわゆる“中編作品”なのだが―、そこら辺にある凡百の中編作品とは桁違いの魅力が、この作品には詰まっている―。

 一目見ただけでそれと分かる、「夏目」らしさを感じる“優しい空気感や世界観”―。彼女たちにしか描けないその“澄んだ雰囲気”と“心温まるストーリー”は、「夏目友人帳」ファンなら(いやそうでなくても)必見の一作である―。



 (簡単なあらすじとしては―)、妖怪が住むという“山神(やまがみ)の森”に迷い込んだ人間の少女“蛍(ほたる)”が―、「人に触れられると消えてしまう」という、この森に住む妖怪の青年(正確には人間でも妖怪でもない)“ギン”に助けられ―、それから毎年夏の間だけ、ギンの住むこの森を訪れるようになる…という物語―。


 物語の最初に、最も重要な「人に触れられると消える」というテーマを見せる事で、この作品の“(悲しい)終着点”が垣間見え―、同時に、そこに至るまでの二人の会話ややり取りの中に、(そのテーマが)終始、“触れられないもどかしさ”となって付きまとう―。


 蛍が出逢ったのは6歳で、最後の場面では18歳―。

 40分余りの上映時間であるが故に、粗雑(そざつ)にも感じる作中の時間経過(の早さ)が―、逆に、二人の間には、互いが一緒に過ごせる“夏の一時(ひととき)”しか無い事を余計に感じさせ―、だからこそ、かけがえの無いその時間を楽しそうに過ごす二人の姿が、観ていて余計に切なくなる―。



 たとえどんなに心が通じ合っていても、二人の間には、決して看過出来ない“時の流れ”が存在する―。だからこそギンは、自分の気持ちに向き合い、全てを投げ打つ“覚悟”を持って、蛍を夏祭りに誘ったのだろう―。

 そうして迎える最後の場面―。

 ―― (蛍) 「デートみたいですね~」――

 ――(ギン)「デートなんですね~」――

 出逢った日の事を連想させる蛍のセリフ―。けれども、返ってきたのは以前と“真逆”のギンの言葉―。あの時は、子供をあやすかのような反応だったからこそ、全く同じ軽い調子で、全く逆の事を言うあのシーンには、ギンの、蛍への想いや…覚悟や…寂しさが…全て込められていて―、余計に涙腺を刺激する―。


 いつもと違うギンの態度が、ずっとお互いの事を考えて過ごして来た蛍には、口にしなくても伝わり―、(本当はずっと一緒にいたくても)、彼の覚悟を何も言わずに受け入れる―。

 ギンの気持ちを察し、蛍自身も覚悟したからこそ―、夏祭りの帰り道、偶然、人の子に触れて消えゆく事になったギンとの“突然の別れ”にも、その瞬間、ただ真っ直ぐに、“お互いの本当の気持ちを伝えることだけ”を考える事が出来たのだと思う―。

 ――(ギン)「来い、蛍―。やっとお前に触れられる―」――

 最後の瞬間になるはずなのに、二人は“最高の笑顔”をしていた―。それは、二人が本当にしたかった事はこれだったから…。その後の別れの不安など消え去るほどに、ずっとずっと二人はお互いに触れたかった…。あの一瞬の抱擁で、きっとギンは人間の…“蛍の温かさ”を感じることが出来ただろう―。



 (その後の妖怪たちの優しいセリフも良かったが…)、とにかく終始、涙が止まらず、何度見ても泣いてしまう…。「人に触れられると消えてしまう―」。たった一つのそのテーマで、ここまで心に響かせられる―。

 最後の最高の“切なさ”が来る瞬間を徐々に感じながら、その“一瞬の儚さ”を感じて観終わり―、そうして“圧倒的な余韻”だけが最後に残る―。


 時折、「時間が少し短過ぎる」とか「せめてEDの後にもう少し何かが欲しかった」などという感想を目にするが―、もしもこの作品が、2時間の長編映画だったなら、本作に感じた淡さや儚さは“色褪(あ)せる”だろうし、(最高レベルの)あの余韻を感じる事も無かっただろう―。

 お互いの気持ちやその後の出来事など、描く必要は全くない―。観終わった人達それぞれが、各々で感じる“余地”を残すことで―、この作品の“淡さ”や“儚さ”を、“余韻”として感じられるのである―。


 最近観た劇場版作品の中では、最も感動し泣けた、切なさ全開の“傑作”であった―。



 最後に―、山神さま…もう少し“緩い”掟でも良かったんじゃないですか…(涙)。


  (終)

 

投稿 : 2024/05/04
♥ : 7

67.4 6 夏休みで田舎なアニメランキング6位
劇場版 ハヤテのごとく! HEAVEN IS A PLACE ON EARTH(アニメ映画)

2011年8月27日
★★★★☆ 3.8 (344)
2027人が棚に入れました
 大富豪のお嬢様ナギと、ひょんなことからその執事となった平凡な高校生ハヤテが繰り広げる騒動をコミカルに描く畑健二郎原作の人気TVアニメの劇場版。同時上映に「劇場版 魔法先生ネギま! ANIME FINAL」。夏休みも残りわずかとなり、ハヤテとナギはゲームもアニメもない田舎暮らしを体験すべく西沢さんの田舎へとやって来る。ネットもケータイも繋がらない田舎生活に退屈しながらも、夏休みを無事に終えられると思っていたハヤテだったが…。

声優・キャラクター
白石涼子、釘宮理恵、田中理恵、伊藤静、高橋美佳子

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

パロディギャグの「さらにその一歩先」を行く傑作の誕生! 【ナギとハヤテの神隠し】或いは【三千院ナギの消失】

これは本当に良い映画でした!
時は夏休み、舞台となるのは日本のド田舎
三千院ナギお嬢様と執事の綾崎ハヤテ、そしていつもの面々が西沢歩さんの招待でやってきたのはネットもゲームもアニメも無いド田舎


まず驚いたのは前作であるテレビアニメ2期では原作の時間軸で言うところの『3月』までのお話だったのですが、今作では『8月後半』が舞台ということで知らん間に時間が進んでやがりましたw
特に説明も無しに新キャラがいたりとかで【アニメ3期を先取りする内容】なんだなーと一瞬で補完しましたわw
ほらほらw視聴者の『物語を補完する力』が試されてますよー
ハヤテにしては粋な計らいやなー、ってかこんなの超初級ですよー
皆さーん着いて来てますカー?


けど、後々調べてみると『そもそも原作の最新話がまだ6月』らしいので【原作より先行したお話】だったようです;
新キャラもまだ原作に出ていないらしいので、原作ファン的にもサプライズがチラホラとあるようですね、これは率直にスゴイ!の一言


もちろんシリーズお馴染みのパロディギャグも健在で、今回は特に『伏せ字』などはせずにバンバン実名でパロってきますのでwこちらもお楽しみに


さて、今回の劇中ではナギお嬢様ほか数名が『神隠し』にあってしまい、この他の人物達の記憶が改編されるという事件が発生します
書き換えられた記憶でハヤテは自分の仕えるべきお嬢様が『とある別人』に入れ変わってしまったことに気付きません
この辺のパラドックス的な困惑の描き方が本当に最高です!
さらにこの事象そのものが「ハルヒ消失」や「千と千尋」のパロになっているという高度な作品でした


ヒナギク、マリアといったハヤテとの恋模様が気になる二人のヒロインにも、ちゃんとスポットを当てている所も素晴らしい限りです
ナギお嬢様一辺倒なシナリオで、どうせ『釘宮病患者向け』なんでしょ?って敬遠されてるお方はモッタイナイですぞ><


オチに関してもスゴイ!
今回の事象を引き起こした人物に動機が無いのはオカシーだろーwとか高を括っていたオイラですが
ラストで黒幕の素性が明かされ、全て納得しましたw


作画面では流石にJC制作の2期を超えられまいw
と思っていましたが、原作のデフォルメ絵の再現など2期よりさらに磨きが掛かっていて大変満足です
小森監督は本当に良い仕事をしてくれましたね!今後も是非監督を続けていただきたいです^^b

投稿 : 2024/05/04
♥ : 14

ともか さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

本編視聴者へのプレゼント。 良い意味で意表を突かれる内容だった。

約70分のアニメ映画。
アニメ第1期『ハヤテのごとく!』と、第2期『ハヤテのごとく!!』を視聴済み。

原作にないオリジナルの物語だそうだが、登場人物の説明等がないので、
アニメ版の視聴、もしくは原作既読であることが ほぼ必須だと思う。

本編に登場した主要人物たちが夏休みの最後に田舎へ遊びに行くお話。
そして、着いた先で不思議なことが起こる。
約1億5千万円の借金だけを残して両親に捨てられ、
40年間執事として働くことで借金を返済することになっている主人公・綾崎ハヤテ。
そんな彼が今すぐに借金を全額返済できて自由の身となり、
普通の少年として人生を歩み直す権利をもらったら、彼はどんな判断をするか、
というシンプルな内容の物語。

そう、「ハヤテ」シリーズといえばドタバタパロネタ(ラブ)コメディのイメージだったが、
この作品は単純ながら一貫したストーリーがある。
そういう意味で、私にとって意表を突かれることになった。
個人的には、少しだけ子供の頃に見そうな不思議な夢を見ていた気分にもなれた気がする。
また、ハヤテがどんな展開を通じて答えを出すかを、
ちょうど良い尺でコンパクトに楽しむことができた。


声優は本編と変わらず。
作画は長い間見てきたものから変わっていたので少し不思議な感じもしたが、
大崩れしているわけではないし、簡単にキャラの見分けもつくので問題なかった。

演出面では田舎の雰囲気を出しているためか、
バックミュージック等が少なくて全体的に静かな気がした。

キャラについては本編と同じ人物だけれど、
(ハヤテシリーズの作品としては)物語が重視されているので、
ひたすらギャグを連発していた時に比べると少し元気がなかった印象。

音楽について、1回しか視聴していないため使用された曲も覚えていないけれど、
雰囲気は作品に合っていて良かったと記憶している。


とても易しく、嫌なこともほとんど起こらない物語なのでストレスなく楽しめそう。
ハヤテシリーズをご存知で この劇場版を未試聴の方は、
短時間で手軽に観られるので、試しに一度観てみてはいかがでしょうか?

投稿 : 2024/05/04
♥ : 17
ネタバレ

ツキ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

ナギ倒す

約1時間でお送りする劇場版ハヤテのごとく!
いやー!個人的にはちょっと非の打ち所がないぐらい良い出来でした。本作が好きな人にはすごくオススメしたい作品です。

色々と誉めたい所はありますが、なんと言ってもキャラの魅せ方がすごく上手。
二期の終了から二年以上経過してるのを全く感じさせないほど自然に、しれっと物語が始まります。普通これだけ時間が空いたら序盤にキャラ紹介するような場面があったりしてテンポが悪くなるイメージが強いんですが、それがないことが逆に久々の本作の視聴でもこの世界観にすんなり引き戻してくれます♪
その自然さもあって登場キャラも殆ど選りすぐらずに多数のキャラを活き活きと描けていますね。
言っちゃえば視聴者が作品に合わせる感じなのですが、そこに悪意は全く感じませんでした。

中盤からは{netabare}ナギとハヤテが別々になった状態でストーリーが進行し、他のキャラもそれに合わせて二分割されますが{/netabare}キャラの良さが全く損なわれることなくしっかり立てられてます。そのためのキャラの分配もこれしかないってほどバランスが良いです。
それでいてストーリーはナギとハヤテを中心とした展開。執事とお嬢様、なにより二人の絆を丁寧に描けています。
この辺の内容に関しては本当に見て頂くのが一番良いです。見て損することは絶対にないです。{netabare}ちょびっとだけハヤテの過去にも触れられててこれもどこか儚くて良いものでした。{/netabare}

ちなみに全く知らない新キャラも出てきますが、これに関してもなんら問題なしです。
要は、当時の原作よりも先に新キャラを登場させちゃうっていう言わば遊び心に近いものだと思います♪もちろんストーリーの中軸を担う訳ではなく他のキャラと同じ立ち位置なんで妙に溶け込んでて違和感なしですw

オススメの本作、時間のある方もない方も是非ご視聴あれ♪

投稿 : 2024/05/04
♥ : 9

69.0 7 夏休みで田舎なアニメランキング7位
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(アニメ映画)

2017年8月18日
★★★★☆ 3.3 (462)
1771人が棚に入れました
物語の舞台は、夏休みのある一日。花火大会をまえに「花火は横から見たら丸いのか?平たいのか?」の答えを求め、町の灯台から花火を見ようと計画する少年たち。一方、クラスのアイドル的存在・なずなに想い寄せる典道は、時間が巻き戻る不思議な体験のなかで、なずなから「かけおち」に誘われることに……。何度も繰り返す一日のなか、なずなと典道を待ち受ける運命は? そして、果たして花火は下から見ても、横から見ても丸いのか?

声優・キャラクター
広瀬すず、菅田将暉、宮野真守、松たか子、花澤香菜、浅沼晋太郎、豊永利行、梶裕貴
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

視聴者をタイムリープさせる映画

[文量→大盛り・内容→考察系]

【総括】
中学生の恋愛をテーマにしている。青春アニメって感じ。

原作は、1993年にフジテレビで放送されたドラマで、その後1995年に実写映画化。そして本作は、2017年にシャフトによってアニメ映画化。米津玄師さんの作った歌が、かなり耳に残ります。

シャフトらしさは残しながら、一般受けするように演出は控えめにしている印象。作画は流石の劇場版クオリティ。

私は本作の評価を☆3(普通)にしましたが、☆3の中でもやや低評価です。良さもある作品だと思うので、レビューでは、その両面に触れたいと思います。

《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
つまり、「可能性はたくさんあり、自分の行動、言葉選び、そういう選択によって変化する可能性があるのが、未来」であることと、「それでもどうしようのないこと、変えられないことはあって、その現実の中でどんなかたちであって前に進んでいくこと」を表現したかったのだろう。

それは、相反することではあるけれど、人生というものは、そういう矛盾を孕んでいる。

それを、少年少女が実感し、体得するための装置が、あの丸い球。

人が、なぜこれほどまでに花火を愛するかというと、花火には華やかさと儚さがあるから。パッと咲いてサッと散る。その美しさが心の中に残るから、また観たい、また感じたいと思う。求める。

でもそれは、完全なかたちでは叶わない。

同じ様な花火はまた見られるけれど、全く同じ花火はもう二度と見られない。それは、青春時代(思春期)にも似ている。

美しくて、儚くて、もどかしい。「あの時ああしていれば、ああしなければ、今、どうなっていただろう」というある種の後悔はつきものである。丸い球が砕け散ったとき、様々な「あったかもしれない未来」を見ることで、ようやく一歩を踏み出した少年少女。ある者は長年伝えられなかった愛を叫び、ある者は海の中でキスをして別れを伝える。

アニメという美しい世界の中で、そんな眩しい青春時代を擬似的に追体験できるのは楽しい。

でも、どんなに美しい花火も、常夜灯のようにそのまま一年中夜空に開きっぱなしなら、逆にウザくなってくる。クソ、眩しいんだよ、と。だから多分、実際は思春期なんて、大人が回顧するほど美しいものではないのだろう。アニメで懐かしむくらいでちょうど良い。

「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」という印象的なタイトルは、「恋」の捉え方なのだろうか。

美しい「花火」=「恋愛」を、「下から見る(見上げる)」のは、「恋に恋する」状態を指す。ようは、1周目の状態。好きだけど、素直に言えない。好きだ好きだと言いながら、いざ実際に付き合うことになると、ビビって逃げてしまう。駆け落ちとか無謀なことを言う。「横から見る」は、恋を自分の現実として受け止めている状態。最後はみんなこの状態になった。うまくいかないことも含めて、相手との付き合い方を考えられる。

少年少女達は、下から見上げるだけではその正体を掴めなかった花火を、高い位置から見る(自分が成長する)ことで、その全貌を掴んだのだ。

シャフトの幻想的な演出、美しい映像、米津玄師の印象的な歌によって、こういう切なさを表現したかったのだろう。それは、ある程度は成功していて、挑戦的だ。

と、ここまであえて、詩的で難しい言葉を連発しながらも、あまり中身のない、「この作品のような」誉め言葉レビューを書いてみたが、要約すると、「綺麗だけどつまらない」(苦笑)

クオリティ的には悪くなかったが、作品全体を俯瞰すると、やはり失敗している部分が目立つ。

まず第一に、この物語には「ドラマ」がない。

シャフトの演出を抜き、タイムリープという装置を取っ払うと、ただ単に、「好きな人が転校しちゃう」というだけの話だ。中身が空っぽなのを、どれだけ華美に装おうと、かえって虚しく見えてしまうものだ。

中身、というのは例えば、二人がお互いを好きになる過程や理由だ。二人は小学生からの付き合いのようなので、まあ、きっとなんか色々あったのだろう。でも、映画の中だけで分かることは、典道はナズナの「顔」が好きだということくらい(まあ男子中学生なんてそんなものだが)。ナズナに関していえば、典道のどこをそんなに好きなのかが全く分からない。他の男友達に比べ、典道が何か特出しているわけでもないし。あれだと、「母親への反抗」の為に、「好きでもないのに好きになった」感じすらする。(実際は純愛なのだろうが)そう感じさせてしまうこと、視聴者が典道を好きになれないことが、この作品の「無理矢理盛り上げてます感」に繋がっているように感じる。

てか、両思いで、ただ転校するだけなら、LINEでもテレビ電話でも、毎日繋がれる。90年代の中学生なら、転校なんて「永久の別れ」に近いものを感じたかもしれないが、今時の学生なら、「そんなにおおごとか?」と思うのではないだろうか。

また、映画のターゲットが誰なのかも不明。

主役の2人に、旬の若手俳優を使う時点で、我々のようなアニメ好きに照準を合わしたわけではなく、一般受けを狙ったのだろうが、だとしたら世界観が複雑で、演出も(シャフトにしてはシンプルだとしてもまだ)クドすぎる。あれなら、小学生には理解できず、中高生なら中身の空っぽさに気付く。親子で見るにしては、ちょいエロもあって、気まずい。

ちなみに主役の2人は、俳優の中ではマシな方で、特に広瀬すずさんは頑張ってた(菅田将暉さんは微妙)と思うが、当然、プロの声優には及ばない。普通に、花澤香菜さんと宮野真守さん(か、梶 裕貴さん)がやってれば、これだけアニメ好きに叩かれはしなかっただろう。

あと、走って電車に追い付く中学生集団には噴飯し、ちょっと絡まれたくらいでよく知らない中学生に顔面パンチし放置して帰る、ナズナの義父と、それを咎めない母親にはドン引きした。あんなクソ親の下で過ごすなら、そりゃナズナも家出したくなるわな。むしろ、あのクズ義父と暮らすナズナの身を案じてしまう。

本作、私は正直、3回寝落ちして、その都度巻き戻した。もしこれが「視聴者をタイムリープさせる演出」だとしたら、脱帽する(笑)
{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 26
ネタバレ

YwJje43950 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

打ち上げ花火 ”もしも玉”

{netabare}”もしも玉”というものが時系列的に一番最初に確認されたのは、なずなの、死んだ父が海で手に持っていたところだったと思うんです。
取り敢えず1回観ただけなんだけど、この”もしも玉”とは何だったのか、というのが掴めない。メタファー的な意味でね。
それがあると、最後の方の、歪んだ、されど理想的なあの空間と、その崩壊・消失に意味を持たせられる気がするんだけれど。
頭良い人に何かしら、良い感じのをこじつけて貰いたいところだ。皮肉じゃないよ。
より良い解釈を示して欲しいという、頭の良い他人の頭で感動したいという、楽したいという気持ちです。いちから解釈するには、少々難解な部分の多い作品だからね。

岩井俊二が脚本の会議段階で提案した”もしも玉”というアイデアは、元々のオムニバステレビドラマにおいて前提とされた『If もしも』という、物語の基礎の説明という役割を担わせるという目的があったようだ。
パンフレット内の”もしも玉”に関しての言及といえば
『いろんな人たちの”もしも”っていう思いが凝縮された何かなんだろうっていうところに固まっていって、玉ということで花火と対極としてひとつのシンボルにもなる...』
というものと、他には劇中のあらゆるキーワードの紹介をしているページ。
私としては、最終的に2人が行き着いた閉鎖されている感のある例の歪んだ世界では、まるで”もしも玉”の中にいるかのようではなかったか?と思ってたんですけど、その【キーワード集】を読むと、制作側もやはり、なずなと典道の行き着いた歪んだ空間のデザインは、”もしも玉”の中に居るようなイメージでコンテを描いたとのことだ。
ただ、『(そうすると)きれいかなと思って、...』という、文脈なんですけど。
花火と対極的な玉の形をもって、”もしも”という思いが凝縮された、”もしも玉”。
なずなの父は、生前使っていたのかな。
それとも、父の思念的なものが生んだのかな。
劇中、これに関してヒントはあったのだろうか。
ここまで書いておいてなんだけど、1回観て分かるほど私は頭よくないよ?


ところで、あの歪んだ空間は、まるで”もしも玉”の中であるかのようだったけど、あの町を囲うドーム状の歪んだ壁は、典道の空想・妄想の限界なのではなかろうか。
言い換えれば、典道の”もしも”の限界だったのではなかろうか。
町の外の事を、子供の彼らはまだ何も知らないからね。
そういうふうに意味付けるとどうだろう。
出来事の順番を忘れたけど、どこかのタイミングでドーム状の歪んだ壁は消失した。
彼は、周りより一歩先に大人に近づいたという事かな?
だから最後のシーン、クラスに典道は居なかったのかもしれない。
追記:海中のシーンで、2人の顔が大人になってるというツイートを見まして、確かめたい気持ちが強まりますよ〜。
あと、コレうろ覚えだったもんで書かなかったんですけど、劇中、電車に乗って、海の上を走って、結果何処へ行きましたっけ?
何処にも行けずに戻ってきたと記憶しているのですけれども...。
これってやはり、上で書いた”もしも”の限界によるものではないかなと思うのです。
”もしも玉”が砕けて、彼らに降り注ぐのは外へ飛び出していった彼らの可能性。
やっぱりあの夜って、彼らが大人になる劇的な瞬間だったのでは?
あぁ、記憶力よ。もどかしい。
追記2:”打ち上げ花火”と同じくシャフトの作品である、”まどかマギカ”の、劇場版、”叛逆の物語”ってあるでしょう?
{netabare}劇中の、ほむらの生んだ魔女空間と、”もしも玉”の空間とは似てるっていうレビューを読んで、正直、あまりピンときてなかったんですけどね、コレの意味が遅ればせながらようやく分かりました。
そういえばアレも、バスに乗って街の外へ行こうと試みて、行けなかったんですよねぇ。
何故なら、ほむらはその行き先の街並みを知らないから、再現のしようもないという。
たしかに、”もしも玉”空間とそこは同じですよね。
{/netabare}

打ち上がった”もしも玉”が花火のように破裂して、その欠片に、選択によってはあり得た”もしも”の世界が映り込む。
その一欠片を手にした事で生じるのは何だったか。
海の中での一連の出来事の意味は?
今作品の最初のほうのシーンで、なずなが玉を拾ったのと、歪んだ空間内のラストとが同じ場所であることは何を意味するか。
あの脱ぎ捨てた服だって、思い返すと最初のほうに伏線があった気がするぞ?
いやぁ、うろ覚えだ!1回観て語れるようなものではないわ!

追記:あにこれのレビューを改めて読んでいたら、ストライクさんの、今作のラスト、典道がクラスに居ない事についての解釈、良いなぁなんて思いました。
”男の典道は、願望の世界に浸るロマンチストなのかもしれない。”
でも、それだとハッピーエンドでは無いよなぁ...
典道のほうはその夏の恋に囚われちゃうって事でしょう?
"秒速5cm"的な関係でしょう?言いたいこと分かります?
やはり私としては、”もしも玉”空間の壁が砕けて外の世界へ飛び出していった彼らの可能性が降り注ぐあの演出を思い出すと...
でもね、いずれにせよ私の中で正直、未だに完全に納得いく解釈は得られてないんですよね〜。
まぁ、このよく分からない感じも好きですけどね、夢見心地で。

グダグダと書きましたが、この作品について簡単な感想としては、
シャフトには向かない題材ではないか、という事。
これは正直観る前から思っていた。
だからある程度、滑る覚悟はしていたりもした。
実際、賞賛するようなものでは、たしかに無かったと思う。
話が難しい以前に、例えば不自然なCG。冒頭の自転車等の動きなんか気になってしまった。
元の作品の人気、アニメとしての粗もところどころ見えてたし、また、分かりやすい感動!の物語を求めていた、脳の動かない人の多さも、大衆に向けた広告があっては仕方なく。
批判の多さも妥当かと思う。
でもね、ネット上のこの作品に対する批判はどうも(この作品に限らないけど)誠実でないものが多い。
後半の展開が原作と違うという点がお気に召さず、ただ叩きたいだけの価値のない批判をしてるブログが、少なくとも今、私がこの文を書いている時は検索上位にあったりして、嘆かわしい限り。{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 13
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

蠱惑の球面

元ネタである岩井俊二監督のスペシャルテレビドラマは視聴済み。

球とは実に不思議な形をしています。
どの角度から見ても見える形は同じですが、
見えてる面は視点によって全部違う。

その上、光の加減まで考慮すると球はさらに神秘的。
特に例えばガラス玉のような透過性の高い球体ともなれば、
光の屈折まで加味されて見る視点によって輝き方が目まぐるしく変わる……。
そして、その透き通った球体は、あらゆる光を集めると共に、
球の境界を隔てた人々の視線や思念、願望をも惹き付け誘惑するのだ……。


本作は原作にもあった花火の見え方のウンチクによる好奇心刺激に加え、
シャフト作画によって全編に散りばめられた円柱、球形への違和感、興味。
それらが心を浮つかせる夏の空気、ヒロイン少女の魅惑的な美しさ等により加速され、
常識や倫理の壁をも超越して行く、真夏の青春アニメ映画。

主人公少年らと共に気持ちよくジャンプするには、
映像全体が醸すムードに憑かれることが必須で、ハードルはやや高めですが、
私としては夏に劇場鑑賞チャレンジした甲斐があった作品でした。



本作は単純に興味を持って観る。のとは別に色々な動機での鑑賞があり得る作品ですが、
以下、それぞれの立場からの見え方を想定してみると……。


①岩井俊二監督作のリメイクを期待して本作を観る。

……これは正直かなり失敗するリスクが高いと思われます(苦笑)

{netabare}私が思うに原作ドラマは脚本、シナリオ等により賞賛されているだけでなく、
90年代当時の子供の世界。その再現性によるノスタルジーにより、
年々、思い出としても美化され続けている作品。

(例えば{netabare}本アニメ映画だと少年宅でプレイされるゲームは『キラキラスターナイトDX』という
2016年発売のファミコン用新作レトロゲームという恐ろしく懐古狙いなマニアックぶりですがw
原作ドラマではスーパーファミコンの『スーパーマリオワールド』という大衆向け定番作 {/netabare})

それら当時の流行も取り込みつつ、しょーもない冗談や下ネタを言い合うw
ガキの会話あるあるな掛け合いが醸す、子供の世界にリアリティや説得力があります。
こうした子供の世界に背伸びしてる感を纏わせつつ、
大人の都合と対峙させることにより、物語の推進力と共感度をアップ。
さらに当時15歳の美少女だったヒロイン役・奥菜恵さんを画面に閉じ込めた希少性と相まって、
今なおタイムカプセルのような輝きを放ち続けている原作ドラマだと思います。

対して本作は後世、思い出となり得るような同時代性の強調は控えめ。
(例えば{netabare} スマホが出て来ない時点でタイムカプセルにはなり辛いですし、
松田聖子さんだの観月ありささんだの叫んでいる時点で
原作の時代に対するオマージュの方が勝っています{/netabare})

むしろ本作は花火の見え方というSFファンタジー世界展開の着火点により注目し、
そこからオリジナル要素も広げていくシャフト作品。

加えて本作では何故か主人公少年らを原作ドラマの小6から中1に設定変更していますが、
原作の掛け合いの流れも引きずっているためでしょうか?
少年少女たちの言動が今風でない感じがするだけでなく、
微妙に小学校卒業してない感じが、
原作ドラマ視聴後だと目につきやすく、それらがストレス要素になりかねません。{/netabare}

いずれにせよ、リメイク期待組とのキャッチボールは波乱含みのようです。

もしも原作ドラマ未見で、ドラマ観てから本作観に行こうと検討されている方がおられたら、
私としては是非、そのまま、よそ見をせずに映画館に直行することをオススメします。


②『君の名は。』川村元気氏のプロデュース作として、前年の感動再現を期待して観る。

……これも大分、失敗するリスクが高いと思われます(苦笑)

{netabare}特に『君の名は。』を気軽なエンタメ作品として楽しんだ方は、
それを期待して本作を観ると事故る可能性がいっそう高まると思われます。

『君の名は。』は何となく観ていても状況は説明してくれるライトな作品でありつつも、
深読みしても得るものがあるコアな作品でもあった、
間口の広いヒット作だったと私は考えていますが、

本作の場合は作画や表情、ちょっとした台詞の違いなどを深読みしに行かないと、
状況すらも把握し難く、物語の迷宮入りと共に、失意の途中下車に追い込まれかねません。

逆に些細な違和感から考察を巡らすことができる方なら価値を見出せると思います。{/netabare}


③シャフト、新房昭之監督のファンとして本作を観る。

……これはまだ割と期待できそうです。

{netabare} そもそも背景絵等が醸すムードが作品を牽引する構造である以上、
まず本作でも相変わらず癖がある作画、構図等に興味を持って鑑賞し続けることが、
作品と折り合うための必須条件。

何じゃ!?このワケわからん絵は~~wとなるか、
あっこれやっぱりシャフトだ(笑)イヌカレーだ(笑)とニヤニヤできるかは、
本作でも満足度を左右する重要な分岐点になると思われます。

但し作画レベルは背景画等については良好ですが、
人物描写、特にキャラ造形の安定度等については標準レベルなので、
至高の劇場版作画を求める等の過度なハードル上げはオススメできないと思います。{/netabare}



以上、色んな角度から長々と書いてしまいましたがw

簡潔にまとめると本作は普段あまりアニメを観ない層にはあまりオススメできませんが、
コアなアニメファンや、あにこれユーザ等には、
合う合わない、好き嫌いも含めて、是非、感想、考察を聞いてみたい作品だと思います。

例えば核心部分について、私見を述べると……

{netabare}あの夏、最後、典道は平行世界に飛翔したまま戻って来なくなった。
なずなは元の世界に戻って転校し、典道を待ち続けている……。
というのが私の解釈と言うより願望?ですが、如何でしょうか?

典道も平行世界から一応、戻っては来たけど……という見解が多そうかつ、
妥当性も高そうなラストではあったのですが……。
「もしも玉」と平行世界の妖しさに取り憑かれた私としては、
あっさり元の世界に戻って来るのは何か勿体ない感じもするんですよね……。{/netabare}

みなさんの評価、感想……お待ちしております♪

投稿 : 2024/05/04
♥ : 41

67.8 8 夏休みで田舎なアニメランキング8位
おもひでぽろぽろ(アニメ映画)

1991年7月20日
★★★★☆ 3.5 (339)
1742人が棚に入れました
東京の会社に勤めるタエ子は東京生まれの東京育ち。27歳のある日、結婚した姉の縁で、姉の夫の親類の家に2度目の居候をしに出かける。山形へ向かう夜汽車の中、東京育ちで田舎を持つことにあこがれた小学生時代を思い出し、山形の風景の中で小学5年の自分が溢れ出す。

声優・キャラクター
今井美樹、柳葉敏郎、本名陽子、伊藤正博、寺田路恵、増田裕生、山下容莉枝、三野輪有紀、北川智恵子

◎TARGET さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

この作品は大人にならないと良さがわからないってことを、今日知った

❏総評

 高畑勲監督。1991年作。

 ジャンルは昭和ノスタルジー

 設定では主人公は1956年生まれとなっているので、
 2013年現在57歳ぐらいの人が若かった時代のお話。

 ネタバレしない程度に簡単にあらすじ

 東京でOLをしている岡島タエ子。彼女は代々東京育ちの家系なので
 田舎というものに憧れていた。そして彼女は休暇を取って汽車で
 山形へ向かうのだった。

 彼女は小学校時代田舎に憧れていた自分を思い出し、そこから
 子供の頃の記憶が次々と溢れだす。

 彼女は田舎で何を感じ取り、子供の頃の記憶から何を思うのか…


❏大人になってから見て欲しい唯一のジブリ作品

 子供の頃見た時は、主人公に感情移入できなかったので
 まったく印象に残らず、ふ~んって感じだったのだが、

 だいぶ人生経験を積んでから見てみると脇役も含め、
 全ての登場人物の気持ちが手に取るように分かるので、
 作品に深みが増し、評価が格段にアップ事は確かである。

 だから子供は見ちゃダメw
 最低でも主人公の年齢27歳は超えてから見るぐらいがオススメ

 そもそも私と主人公の世代が違うので、作品内の価値観全てに共感
 できるとは言いかねるが、昔はこうだったんだなと思いながら
 すーっと感情移入できちゃう作品。


❏昭和の親は厳しく、子供は我慢強い

 昔のお父さんって、あんな感じなんだろうか。もし今あんな親父が居たら
 子供に反感買っちゃうかもしれないけど、少なくとも当時の家庭には
 秩序があるよう見えるし、それはそれで良かったのかもしれない。

 また、子供たちも今の子に比べて我慢強いような雰囲気がある。

 こういうのって昔は良かったとかって美化されることもあるんだけど、
 昔の子供は今の子供に比べると、悪く言えば抑圧されていたわけで、
 どっちが正解ってのは難しい所である。

 個人的には現代の方が好き。

 昔より自由があるし、
 大人への主張も許されてるし、
 大人からの体罰も無くなったし

 でもトレードオフで秩序が無くなってしまったけどね。

 まぁバランスが大事ってことで。


❏しわイラネ。笑うとババァに。

 顔の表情をリアルに出すために、この作品は先に声優の録音を済ませ、
 絵を言葉に合わせていく作り方をしたそうだ。

 その際、頬骨の動きを表現するために顔に線をつけてるだけど
 27歳の岡島タエ子の顔が一気に40代ぐらいの見た目になる。

 その後のジブリアニメには、この老けジワは登場していないので
 よっぽど不評だったのだと思われる。


❏最後に

 この作品は大人にならないと良さがわからないってことを、今日知った。

 昭和ノスタルジーが苦手な私でも普通に見れた。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 3

しまっちゃうおじ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

時を経て

子供の頃に幾度と無く視聴しています。

私の実家はクソ田舎です。小学校からも離れていて家の近くに友達の家は無

く、学校から帰ると金曜ロードショーを録画したビデオをテープが切れるほ

ど何度も繰り返し見ていました。父が録画していてくれていたのでほとんど

がジブリとルパン、アクション系の洋画でした。セリフなんかもほとんど覚

えていました(笑)その中にもちろんこの作品も入っていました。

当時、キャラクターのほうれい線が大嫌いだったのを今でも覚えています。

主人公のキャラクターデザインも全然可愛くなくてジブリの中で1位2位を争

う嫌いな作品でした。だけど、ギバちゃんが何故かツボにはまって腹を抱え

て大笑いしてました。夜も布団の中で思い出して1人で笑っていたのを覚えて

います。客観的に当時の自分を思うと「子供のくせにギバちゃんの良さがわ

かっていたのか」と少し感心してしまいます(笑)

何ヶ月か前にやっぱり金曜ロードショーで放送されていて、「久しぶりに見

てみるかー」なんて軽い気持ちで視聴しました。




「なにこれ・・・最高じゃん。」




と、ジブリの凄さを思い出してしまいました。


現代(大人の妙子)で起こる出来事が「あの時は」と小学5年生の自分と照ら

しあわせて、今と昔を交互に移し替えながら物語が進んでいきます。

小学五年生の自分が今の自分に何を伝えようと、おもひでとして出てくるの

か、自問自答し答えはわかっているのにその答えから目を反らしているよう

に感じます。人間臭さがいい味を出しています。

そして、最後の「おもひでを置いていく」と思わせるカットは胸に来るもの

があります。


ジブリの作品の中でも「大人向け」と評価はいまいちですけど、今だからこ

そ評価できる作品だと思います。

「あの時」だけを切り取って日常モノとして「妙子の日常」なんてあったら

面白そうなんて思うのは私だけでしょうか?妙子と妙子を取り巻く登場人物

は個性があっていい物語になると思います。特に妙子をないがしろにするま

ん中の姉と人生を達観していそうな祖母の一言、貫禄があるのに娘に甘い父

が良いキャラクター過ぎます。

今まではジブリ作品の中でも下から数えたほうが早い順位でしたが、今回一

気に急上昇しました。「千と千尋の神隠し」以降ジブリは観なくなってしま

いましたが

「ジブリってほんっとに良いものですね」

「あの頃は」なんて言いたくはありませんがこの頃のジブリはホントに良い

と思います。


「妙子の日常」はマジで観てみたい。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 7

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

「小学5年生、それは女の子が一つ階段を昇って成長するためのさなぎの季節なのかもしれない。」

最近だと「かぐや姫の物語」でよく名前を聞いた高畑勲監督。

1991年公開のジブリ作品です。

大人向けの作品。大人の人が、昔の自分を懐かしむ作品。

私はとても気に入りました^^


●ストーリー
岡島タエ子は、東京で働く27歳のOL。

小学生の頃から田舎にあこがれていたタエ子は、姉の夫の縁で山形の農家に居候に出かける。

小学5年生の思い出があふれ出し、昔の自分とともに山形へ旅立つ。


大きなテーマは「小学5年生の思い出」「農家」「田舎」かな。

見ながら自分も小学生の時のことをたくさん思い出して温かい気持ちになりました。

小学5年生って自分にとってもたくさんの思い出があって、とても大好きで大切な時期でした。

何度あのころに戻りたいと思ったことか(笑)

友だちも、恋も、クラスでのいやがらせも、男と女の微妙な距離も、未来への迷いのない気持ちも…。

そのすべてが繊細に表現されていたように思います。

タエ子ちゃんの子どものころの時代背景は、ミニスカートだったり、スカートめくりの流行だったり、ひょっこりひょうたん島だったり。

テレビに映っているひょっこりひょうたん島のBGMとタエ子ちゃんの心情がリンクするところは素直に「うまい描写だなー。」と感心しました。


●名言
この作品には名言が多いなあと思いました。

レビューのタイトルもそうだし、タエ子ちゃんが分数の割り算について話すところも私はとても気に入っています。

大人向けの作品だと最初に言いましたが、子どもたちが見ても共感して、ほっとできるセリフがちりばめられているように感じました。


●エンドロール
主題歌は「愛は花、君はその種子」。

あま~い感じの歌です。この曲知ってたけど、この作品の主題歌なのは知らなかった。

甘い曲と一緒に流れるエンドロールに…涙がぽろぽろ…(TT)

過去を懐かしむ本編から、未来へつなげる。

小学5年生=さなぎ
27歳の自分=さなぎ

だからこそ、27歳のタエ子ちゃんは同じさなぎだった小学5年生のことをたくさん思い出したのかな。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 20

63.8 9 夏休みで田舎なアニメランキング9位
虹色ほたる~永遠の夏休み~(アニメ映画)

2012年5月19日
★★★★☆ 3.7 (126)
579人が棚に入れました
ネット小説として人気を博した原作を、大人気アニメ『ワンピース』のシリーズディレクターを勤めた宇田鋼之介を監督に迎え映画化。現代から1970年代にタイムスリップしてしまった少年のひと夏を、日本を代表するアニメーターたちが表情豊かに描く。自然の美しさや、子どもたちの活き活きとした姿を“アニメならでは“の表現で描いている。

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

ボーイ・ミーツ・ミステリアス・ガール

これはホントもっと評価されるべきっ!!!
今年一番面白かった映画の最有力候補です!!!


原作は『ネットから生まれたベストセラー』の代表格、川口雅幸が04~05年頃に自身のホームページに掲載したものから


亡くなった父親との思い出の地へ昆虫採集にやって来た小学六年生の男の子『ユウタ』は山奥のダム湖で不思議な老人に出会う


山からの帰り道で大雨と土砂崩れに巻き込まれてしまい、気を失ったユウタに老人は救いの手を差し伸べるのだが、気が付いた時にユウタはなんと1977年にタイムスリップしてしまっていた
そしてこれからダムの湖底に沈むはずの地に、小さな村と人々の営みが広がっているのを目撃する


なぜか全く見覚えのない祖母と名乗る老婆はユウタの素性を知っており、心温かな村人や村の子供達にすんなりと受け入れられる
謎の老人はユウタを元いた時代へ帰すことを約束してくれるが、それは1ヶ月も先になることを告げて姿を隠してしまう


そんな中、村で一番最初に出会い「ユウタくんは私の従兄弟」だと言い張る謎の少女『さえ子』にも秘密が隠されていることをユウタは知ることとなる・・・


さえ子に隠された秘密が、今作を大きく引っ張ってくれる魅力になっています
最後まで目が離せないっす!










まず今作は色々と不幸な偶然が重なってしまったことで業界内外での話題が振るわなかったことが非常に残念でした


『虹色ほたる』と『タイムスリップ』というキーワードが、まんま【今年の映画ドラえもん】の『ゴールデンヘラクレス』と『タイムスリップ』というキーワードと丸被りだったのです
オイラもてっきりドラえもん的なSF映画なのか?と激しくカンチガイw


さらに1ヶ月ほど先立って公開された映画【ももへの手紙】が今作と同じ『主人公が母子家庭』で『日本の田舎風景が舞台』というのですからトコトンツイてないw
こうなってしまうと“圧倒的に後発の方が不利”なのは古今東西相変わらずですよね;


ただ今作で描かれている村の風景は『地方の○○が舞台』という特定のものではなく、日本の原風景とも言うべきドコの田舎にでもありふれていそうな親近感あるものとなっています
ダムの底に沈んでしまう村という儚いお話も、ダム大国日本ならではのポピュラーなネタで、老若男女問わず入り込み易い作りになってると思います


それとCGなどは使わず、暖か味ある手描きの背景画で日本の自然を表現することへの拘り、これ自体は割りとドコの作品でも見られるんですが、今作の最もたる特徴の<作画>
この作画が世界観を引きたてる画面作りに大いに発揮されておるんです!


例えば、ふと空を見上げたときの『太陽から照り付ける夏の強い日差し』といったエフェクトの類は、普通ですと撮影処理で作り出すもので作画することは無いんです
ところがこの作品の場合、なんとその日差しのエフェクトを手描きの作画でやってしまっているのですw
もうこれは正気の沙汰とは思えないwwwwwwwwwwww
他にも川の水しぶき、舞う様に飛び交う蛍の淡い光とゆるやかな動き
なぜこうもアニメ向きじゃないことばっかり手描きでやってしまうのかw
これらデジタル技術に片寄らぬ手描きによるアニメートが、作品全体の雰囲気を作っているんですよ!
ちょっといくらなんでも凄すぎますw


作画、のお話が出たところでオイラが最も燃えたポイントをば・・・


この作品が公開される直前まで、オイラは例の【ももへの手紙】での素晴らしい作画に感銘を受けていたわけなのですが、今作は【ももへの手紙】とは全く違うアプローチの作画をしているんです


【ももへの手紙】はスタジオジブリ作品など大型アニメ映画作品の例に従い、作監によって整ったカタチに修正された、アニメ映画として最も純然たる美しさを目指したまさにメジャー向けな作品でした
多少ですが原画を担当したアニメタの個性が見え隠れしますが、それをキャラ表のデザインに近づけたり、特定のカットだけ突出してヌルヌル動いたりしないように
と、作品全体の画面作りに調和が図られているのがよくわかります


対して今作では腕は立つがアクの強い絵柄のアニメタを場面ごとに上手く配置して各々のアニメタの個性を打ち消すことなく自由に作画させているのがポイント!
アニメタによってはやたらとフルアニメーションでヌルヌル動かしたがって、それが涙に揺らぐユウタの心情を表現していたり
また大平晋也さんなんかは相変わらずキャラデザを無視しまくってラフなアウトラインのデッサン調でいわゆるリアル系に描いていたりもして、それが使われるのが現実と虚構の入り混じった極めて抽象的な場面であったりとか
作画に興味の無い人にしてみれば「キャラの顔がコロコロ変わってイミフ?」なことになること請け合い;


単純に綺麗なのはモチロン【ももへの手紙】タイプなのですが、【鉄腕バーディーDECODE】や【ハガレンミロ星】の作画に理解を示していただける方ならきっとこの作品の作画の凄さに気づいていただけると思います!
オイラ的には今作の方が断然好きで、どちらも作画評価は5.0点にしてるんですが気持ち的に今作には10点ぐらいあげたいですw
マジでw


で、もちろんどれほど作画が良かろうがお話がツマランかったら容赦なくぶった切りたいトコロだったのですが、、、お話もホント良いんですよ!


はじめにユウタが手に持っている携帯電話がロッドアンテナ付きで白黒液晶
それと1977年の村の少年の「ゴレンジャーの何が好き?」という問いに対してユウタの「タイムレンジャー・・・とかかな?」という会話
これらですぐユウタのいた時代が2000年前後に設定されている、とオイラにもわかったんですが、それにしてもなんで?
そこは2012年でいいだろw
超無意味じゃん!
そう思っていた時期が、、、オイラにもありましたw


その辺をしっかりラストで伏線回収
マジで最後の最後までハッピーエンドに転がるのか?切なさを残すような〆方に転がるのか?もう目が離せないんすよ!
とにかく手放しのエンディングってワケではないんで!作画だけでなくお話にも期待していただきたいっす!


時を経て、人は変わる、風景も変わる、子供も大人になる、でも変わんないものもある
それでも、こどもたちは今を生きる―――そして未来へ


【銀河へキックオフ】といい、オイラの中で最近の宇田鋼之介監督の株は急上昇ですw
ホントにいい映画をありがとうございましたm(__)m
今作、埋もらしておくにはモッタイナイ名作ですぞ!

投稿 : 2024/05/04
♥ : 35

らしたー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

「きれいすぎるもの」に対する耐性があれば。

さる方面から猛烈にプッシュされ、観た。

人に勧めたいかと言われると、2分くらい悩んでしまうのですが、「きれいすぎるもの」に対する耐性があるのであれば、まあ、けっこうベタに完成度高いので観ても損はない、とは思います。

なんかこう、あらん限りの「きれい」を集めてきたなあ、という意味で感心した。なにせ、虹色でほたるで夏休み、ですからね。もう軽く引くくらいの眩しさだったりするわけです。
切なさとか甘酸っぱさとか、そーいうとこもひっくるめた上での、物語の味わいとしての「きれいすぎる」に対応できる方ならたぶん楽しめる。

※個人的にこの手の宝石箱みたいなアニメってご無沙汰なんで、わけのわからない久しぶり補正みたいのがビシバシ入っちゃってるかもしれません


どなたかのレビューで「これ完全に大人向け」みたいな指摘がありましたが、たぶん、ていうか間違いなくその通りで、疲れた大人がやわらかい魔法に包まれたい時に観る、そういう映画でしょう。むしろそうとしか考えられない。

ユウタの異常な適応力の高さとか、まあ子供ならではの柔軟性という解釈もあるけれども、あれ余計な描写をオミットしてるだけって気もするんですよね。現代とのギャップにその都度一喜一憂されてもカット数を食うだけで、大人に訴えるものは皆無ですから。

だからもうほとんど社交辞令的に黒電話とか500円札とか、ある種の記号的なものにだけさらっとツッコミを入れてもらって、あとはもう「そーいうもの」として世界に溶け込んでいってもらう。

そのほうが制作側にとっても受け手にとってもありがたい。ウィンウィンで正しい判断かと思います。子供目線でのエンターテインメントだったら、もっともっと時代的なギャップに目が行くように描かないと、いわゆる感情移入てのが浅くなりますから。

そういえば、どうでもいいことだけど、携帯電話をちゃっかり持っていかないあたりが、制作側の時空パトロール的な老婆心を感じて笑ってしまった。まあ別に、このアニメの緩さであれば、持ってったら持ってったでどうせつながらないし、「おまえ珍しいもん持ってんなァ」でさっくり終わる気はしますが。

でもこれさ、よく考えるとこの作品のオールドグッドデイズ指向って案外ぼやっとしてるのもかもしれない。というのは、「古き良き」という時代的な対比に、もうひとつ「都会と田舎」という対比が微妙に入り混じってて、それらが互いに互いをファジーにし合ってる感覚も多少なりとあって。
だからって何がどうでもなく、それ込みで「原風景」を表現しているわけだから、テーマがぶれたりってことでは全然ないですが。


こういうベタベタなものって、今の時代どんどん難しくなってきてると思ってて、過去に出されたアレとかソレとか、偉大な先達に対して明確な差異を打ち出していかないと、駄作とは呼ばれないにしても、非常にスルーされやすい、って気がしてるのです。事足りちゃってる、みたいな。

ましてや本作みたいに「アニメを見る大人」がターゲットになると、どこかしら苦にならない程度の「尖ったもの」があったほうが肌感覚的にむしろ受け容れられやすいんじゃないかと思うのですよ。

そんな中で、こういうケレン味がなくて優等生なノスタルジックファンタジーを出してくれるってのは、それはそれで貴重っていうか、歓迎すべきことなんだろうなあ、とか。いろいろ考えてしまった。

この手のやつ、定期的に作ってほしい。
まあ、あえて望まずとも毎年夏になると一本や二本それっぽいのが勝手にどこからか湧いてくるのだけども。変な話ですが、「自分は観ないかもしれないけど定期的に作っていてほしい」という思いがある。たまに見ると一周して逆に新鮮だったりするから、その時にたくさん選択肢があると嬉しいし。


全然関係ないけど、この「永遠の夏休み」って副題どーにかならないですかね。なんかこう字面からビューティフルドリーマー的な肌寒さを覚えるのは私だけでしょうか。

そこにくわえて、雰囲気こそぜんぜん違うけれど、物語のテイスト的にどこかしら一昔前のギャルゲADV的なものを感じていて、

BAD END 02 終わらない夏休み

みたいなのを期待しちゃう黒い自分がいたりして。

そんな真っ黒い人間ですら軽蔑せずに包み込んでくれる、母親のように優しい作品でした。



あと、うん、能登ですよ能登。じらしすぎじゃね?w

投稿 : 2024/05/04
♥ : 6

ろき夫 さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

スカウターが派手に壊れた。

最高でした!^^


ジャンル:心のサプリ系アニメ。

2012年5月公開。上映時間105分。

「夏休み。とある少年と不思議な老人との出会いからすべては始まる。
昆虫採取のために父と訪れた思い出の場所。その近くのダムの底には昔、村があった。
少年は、老人の手引きでその村が無くなる直前の過去へとタイムスリップしてしまうことに。
そこで出会った人たちとの心温まるストーリーが展開される。」


7月1日に観に行きました!公開から一カ月以上経ってたのでメチャクチャ空いてました。


以下、感想↓

序盤の方は、展開がゆっくりで謎に包まれている部分も多いので、退屈な感じがしなくもないです。
ですが、細部まで描き込まれた昔ながらの美しい田舎の風景や、子供たちの自然と一体になって遊ぶ姿など、懐かしさを感じさせてくれる部分も多く、なんかジンワリきちゃいましたw

そして何といっても印象に残ってるのが、夜空を舞う蛍のシーン。
足元にはひんやり冷たそうな清流が静かに波打ち、真っ暗な夜空には一面に輝く虹色の蛍が。

凄まじく綺麗で感動的。このシーンで一気に心奪われました。
良すぎて目からアツいものが…w
それから中盤にかけてさらに盛り上がりを見せ、最後まで目が離せなくなります!


数々の灯篭を乗り越えて…。
時の流れは止められない。失ったものはもう元には戻らない。
けれど、悲しみを乗り越えたその先にはきっと明るい未来が待っている。
そんなメッセージを感じました。


もうね…、何回泣いたか分かりませんw客が少ないのを良いことにw
完全に予想外ですねw
高評価を聞いてはいたので期待はしてましたが、まさかここまでボロ雑巾にされるとは…。
購入したポテトの為に用意されたおしぼりしか手元に無かったので、それで頑張りました。
ポテトの油と目汁が混ざり合って何だか気持ちの悪いことになりましたがw

スカウターがまじでぶっ壊れましたよ!ドッカーンとw派手にね。この子の破壊力は計測不能です!

ていうか、いろいろ卑怯なんですよ~。
松任谷タッグによる心地よい音楽。終盤でまさかの能登センサー反応!w
テンションの上がり方ハンパ無かったですw


~あと、作画とかについて~

人物画が凄く独特で、墨画に色を付けた感じ。
ぱっと見荒削りな印象を受けますが、どこか郷愁さ漂うタッチで作品の雰囲気と合っていて好感が持てました。
また、場面のもつ感情によって作画が急激に変化したり、やたらウネウネ?したりしますw

なんで、テーマ自体は万人ウケすると思うのですが、作画の変化などによるクセのある演出は人を選びそうな気がしますね。
でも、そこがツボにハマればお気に召すこと間違いなし!だと思います。


気になる方は、劇場で観ることをおススメしますよ!
終っちゃわないうちにお急ぎを!w

投稿 : 2024/05/04
♥ : 17
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