目覚めで怪異なおすすめアニメランキング 2

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早速見ていきましょう!

86.2 1 目覚めで怪異なアニメランキング1位
傷物語 鉄血篇(アニメ映画)

2016年1月8日
★★★★☆ 3.7 (1689)
12987人が棚に入れました
それは3月25日― 春休みのある日のこと。
私立直江津高校に通う高校二年生・阿良々木暦は、
偶然に学校一の優等生・羽川翼と知り合う。
彼女の口から飛び出したのは、最近出没するという「金髪の吸血鬼」の噂だった。

普段人との関わりを避けているものの、気さくな翼のことを好ましく思う暦。
その夜、暦は噂の吸血鬼と遭遇する。
“怪異の王”キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード。
金髪金眼の彼女は、四肢を切断され、周囲に血を撒き散らしながら、暦に助けを請う。

求められるままに、キスショットに自分の血を与える暦。
次に目覚めたとき、彼は彼女の眷属に生まれ変わっていた。戸惑う暦に、キスショットは告げる。

「ようこそ、夜の世界へ―」と……。

声優・キャラクター
神谷浩史、坂本真綾、堀江由衣、櫻井孝宏
ネタバレ

ぽんちぃ さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

物語シリーズ全体の時系列・放送順などをここでちょっと整理してみた

時系列では、一番初めのお話のはずですが、いったいいつ放送してくれるんでしょうか。
早く見たいです。やっぱり劇場版? TVアニメ?いったいどっち?

物語シリーズ全体の流れを一度ちゃんと理解したいと思い
原作の内容とこれまで放送された分と照らしあわせて
ここでちょっと自分なりに整理してみた。

ちなみに原作は読んでないので、ネットで調べてまとめただけです。
間違ってるところもあるかもしれません。あしからず。

先日放送された花物語のあと、アニメ化・TV放送などの今後の予定は、
まだ、ないのでしょうか?

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■原作の主な出来事をおおまかに時系列順に整理してみた
(原作は未読なので、正確ではないかも)
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{netabare}「傷物語 こよみヴァンプ」 アニメ化・放送未定
{netabare}阿良々木暦が三年生になる直前の春休みのこと。
阿良々木暦が吸血鬼キスショットに出会い、吸血鬼になり、吸血鬼ハンターに襲われるものの、忍野メメ・羽川翼の協力の下で、人間モドキに戻り、キスショットは吸血鬼モドキになってしまう物語。
この物語以降、人間モドキになったキスショットは、無口になる。{/netabare}
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「猫物語(黒) つばさファミリー」放送済み
ゴールデンウィークのこと。
{netabare}羽川翼が、家のストレスが元で自ら障り猫という怪異になってしまい、怪異の専門家である忍野メメですらその対処に困るが、吸血鬼モドキにして旧キスショットの活躍で、元の人間に戻る物語。なお、羽川翼はこの物語の記憶をほぼ失う。{/netabare}
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「化物語(上・下) まよいマイマイ/ひたぎクラブ/するがモンキー/なでこスネイク/つばさキャット」放送済み
ゴールデンウィークが終わって、まもなくから、6月の中頃のこと。
{netabare}阿良々木暦が、戦場ヶ原ひたぎ、八九寺真宵、神原駿河、千石撫子、羽川翼の五人がそれぞれ抱える怪異の問題を、忍野メメの助力の下で解決する物語。なお、この時に阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎは恋人関係になる。{/netabare}
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「偽物語(上・下) かれんビー/つきひフェニックス」放送済み
夏休みのこと。
{netabare}阿良々木暦の妹、阿良々木火憐が貝木泥舟という詐欺師の引き起こした事件に巻き込まれた事件を、阿良々木暦が解決する物語。
および、阿良々木暦の妹、阿良々木月火が影縫余弦と斧乃木余接のコンビに狙われるが、阿良々木暦の奮闘により、阻止する物語。
なお、この物語にて、戦場ヶ原ひたぎ、神原駿河、羽川翼は髪型をそれぞれ変えた。
また、忍野忍が口を開くようになり、阿良々木暦と和解した。{/netabare}
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「傾物語 まよいキョンシー」セカンド・シーズン 放送済み
夏休み最終日のこと。
{netabare}阿良々木暦は、わけあって過去へタイムスリップして、その時代で生前の八九寺真宵を助けるが、元の時代へ戻ると、そこは全てが破滅した世界であり、元通りの世界に戻すために尽力し、改めて幽霊の八九寺真宵と再会する物語。
なお、この物語と二つ下に書かれている猫物語(白)は、若干同じ時を送る。{/netabare}
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「鬼物語 しのぶタイム」セカンド・シーズン 放送済み
二学期の始業式。
{netabare}傾物語にてタイムスリップした後に、自宅へ帰宅する阿良々木暦と八九寺真宵が、突如としてクラヤミに襲われて、斧乃木余接と臥煙伊豆湖の協力でクラヤミの脅威から脱するが、八九寺真宵が成仏してしまう物語。
なお、この物語は、下の猫物語(白)とほぼ同じ時間にある。
また、この物語における後日談が描かれているのは、もう少し後の時間。{/netabare}
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「猫物語(白) つばさタイガー 」セカンド・シーズン 放送済み
二学期の始業式。
{netabare}羽川翼が、白い虎の怪異に出会った直後に自宅が火事にあい、他の家庭に宿泊する中で家族というものや己に対して向き直り、自ら白い虎――もとい苛虎を吸収して、さらに失恋する物語。
なお、この時、羽川翼は自らの髪の毛が半分ほど白髪になってしまうが、外では黒く染めている。{/netabare}
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「終物語(中) しのぶメイル 」 アニメ化・放送未定
猫物語(白)とほぼ完全に同時期。
{netabare}臥煙伊豆湖の依頼で、阿良々木暦は神原駿河を呼ぶが、謎の鎧に襲われた。その鎧は、実は忍野忍がキスショットだった頃に作った一人目の眷属だった。阿良々木暦は、忍野忍の隣にいるために、その鎧と決闘をすることになる。{/netabare}
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「終物語(上) そだちロスト/そだちリドル/おうぎフォーミュラ」
アニメ化・放送未定
10月が終わりになる頃のこと。
{netabare}阿良々木暦が、忍野メメの姪の忍野扇と出会い、彼女の導きのままに自分の過去と向き合い、老倉育と和解する物語。{/netabare}
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「囮物語 なでこメドゥーサ」セカンド・シーズン 放送済み
10月最後の日から11月2日までのこと。
{netabare}千石撫子が、蛇神に憑かれて、蛇神の死体を探すことになるが、その過程で己の恋愛や学校の問題と向き合ったらブチ切れてしまい、阿良々木暦が隠し持っていた御札で神になり、全てを破壊しようと決心する物語。{/netabare}
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「恋物語 ひたぎエンド」セカンド・シーズン 放送済み
冬休みのこと。
{netabare}貝木泥舟は、突如として戦場ヶ原ひたぎから、神となった千石撫子を騙して欲しいという依頼をされて、なんとか依頼を全うして、阿良々木暦までも騙し切るものの、かつて騙した中学生からの襲撃で意識を失う物語。{/netabare}
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「憑物語 よつぎドール」アニメ化・放送未定
2月の中頃のこと。
{netabare}阿良々木暦が自らの体が吸血鬼化していることに気付き、影縫余弦と斧乃木余接の協力でそれが真実であることを知るが、そんな中で手折正弦の奇襲を受けてしまい、なんとか解決の緒を探すものの、斧乃木余接が手折正弦を殺すことで解決してしまう物語。
なお、これ以降、斧乃木余接は人形として阿良々木火憐と阿良々木月火のオモチャ扱いになる。{/netabare}
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「暦物語 こよみストーン/こよみサンド/こよみウォーター/こよみウインド/こよみツリー/こよみティー/こよみマウンテン/こよみトーラス/こよみナッシング/こよみデッド」 アニメ化・放送未定
阿良々木暦の一年を通しての物語。
卒業式の日のこと。
{netabare}影縫余弦が行方不明になってしまった中で、阿良々木暦が臥煙伊豆湖に殺されてしまう物語{/netabare}
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「終物語(下) まよいヘル/ひたぎランデブー/おうぎダーク」 アニメ化・放送未定
{netabare}阿良々木暦が臥煙伊豆湖に殺された直後からのこと。
忍野扇との決着の物語。
なお、この物語で阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎは、互いのことを下の名前で呼び合うようになった。{/netabare}
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「花物語 するがデビル」セカンド・シーズン 放送済み
阿良々木暦が高校を卒業してまもなくの4月のこと。
{netabare}神原駿河は、怪しげな噂を忍野扇から聞いて、かつてのライバルの一人である沼地蠟花と再会し、怪異化していた左腕を元に戻されてしまうが、改めて沼地蠟花と対峙して、沼地蠟花を成仏させる物語。
なお、この時には阿良々木暦と貝木泥舟は生きて登場する。
また、忍野扇が男になっている{/netabare}
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■TV放送順に整理してみた
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<ファーストシーズン>
{netabare}「化物語」2009年7月3日~9月25日 全15話
{netabare}1話「化物語 ひたぎクラブ 其の壹」
2話「化物語 ひたぎクラブ 其ノ貳」
3話「化物語 まよいマイマイ 其ノ壹」
4話「化物語 まよいマイマイ 其ノ貳」
5話「化物語 まよいマイマイ 其ノ參」
5.5話 総集編
6話「化物語 するがモンキー 其ノ壹」
7話「化物語 するがモンキー 其ノ貳」
8話「化物語 するがモンキー 其ノ參」
9話「化物語 なでこスネイク 其ノ壹」
10話「化物語 なでこスネイク 其ノ貮」
11話「化物語 つばさキャット 其ノ壹」
12話「化物語 つばさキャット 其ノ貮」[終]初回TV放送時の最終回{/netabare}
インターネット配信ほか 2009年11月3日 ~
{netabare}13話「化物語 つばさキャット 其ノ參」
14話「化物語 つばさキャット 其ノ肆」
15話「化物語 つばさキャット 其ノ伍」[終]{/netabare}
*2011年10月9日~12月31日の再放送では全15話が放送された。
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「偽物語」2012年1月~3月 TOKYO MXほか 全11話。
{netabare}1話「偽物語 かれんビー 其ノ壹」
2話「偽物語 かれんビー 其ノ貳」
3話「偽物語 かれんビー 其ノ參」
4話「偽物語 かれんビー 其ノ肆」
5話「偽物語 かれんビー 其ノ伍」
6話「偽物語 かれんビー 其ノ陸」
7話「偽物語 かれんビー 其ノ漆」
8話「偽物語 つきひフェニックス 其ノ壹」
9話「偽物語 つきひフェニックス 其ノ貳」
10話「偽物語 つきひフェニックス 其ノ參」
11話「偽物語 つきひフェニックス 其ノ肆」[終]{/netabare}
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「猫物語(黒)」2012年12月31日にスペシャル番組として、TOKYO MX、BS11ほかにて放送された。
{netabare}1話「猫物語(黒) つばさファミリー 其ノ壹」
2話「猫物語(黒) つばさファミリー 其ノ貳」
3話「猫物語(黒) つばさファミリー 其ノ參」
4話「猫物語(黒) つばさファミリー 其ノ肆」[終]{/netabare}{/netabare}
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〈物語〉シリーズ セカンドシーズン
{netabare}2013年7月より2クール 全26話で 恋物語までを放送
「猫物語(白)」
{netabare}1話「猫物語(白) つばさタイガー其ノ壹」
2話「猫物語(白) つばさタイガー 其ノ貮」
3話「猫物語(白) つばさタイガー其ノ參」
4話「猫物語(白) つばさタイガー 其ノ肆」
5話「猫物語(白) つばさタイガー 其ノ伍」
6話「総集編Ⅰ つばさファミリー」{/netabare}
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「傾物語」
{netabare}7話「傾物語 まよいキョンシー 其ノ壹」
8話「傾物語 まよいキョンシー 其ノ貳」
9話「傾物語 まよいキョンシー 其ノ參」
10話「傾物語 まよいキョンシー 其ノ肆」
11話「総集篇II」{/netabare}
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「囮物語」
{netabare}12話「囮物語 なでこメドゥーサ 其ノ壹」
13話「囮物語 なでこメドゥーサ 其ノ貳」
14話「囮物語 なでこメドゥーサ 其ノ參」
15話「囮物語 なでこメドゥーサ 其ノ肆」
16話「総集編Ⅲ」{/netabare}
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「鬼物語」
{netabare}17話「鬼物語 しのぶタイム 其ノ壹」
18話「鬼物語 しのぶタイム 其ノ貳」
19話「鬼物語 しのぶタイム 其ノ參」{/netabare}
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「恋物語」
{netabare}21話「恋物語 ひたぎエンド 其ノ壹」
22話「恋物語 ひたぎエンド 其ノ貳」
23話「恋物語 ひたぎエンド 其ノ參」
24話「恋物語 ひたぎエンド 其ノ肆」
25話「恋物語 ひたぎエンド 其ノ伍」
26話「恋物語 ひたぎエンド 其ノ陸」{/netabare}
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「花物語」セカンドシーズンのひとつ。
「恋物語」の後、時間を空け、2014年8月15日にTVアニメとして全5話一挙放送済み
{netabare}27話「花物語 するがデビル 其ノ壹」
28話「花物語 するがデビル 其ノ貳」
29話「花物語 するがデビル 其ノ參」
30話「花物語 するがデビル 其ノ肆」
31話「花物語 するがデビル 其ノ伍」{/netabare}
{/netabare}
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<ファイナルシーズン> アニメ化・放送未定
『憑物語』、『暦物語』、『終物語(上・中・下)』、『続・終物語』の6巻。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 9
ネタバレ

ほったっる さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

待ちに待って待ちぼうけを喰らってまた待ちぼうけ

大人気物語シリーズの劇場版作品。
物語シリーズも「終物語」まで来ましたが、シリーズの原点ともいえる今作品が待望の放映となりました。

私が化物語を観始めたきっかけというのは友人からの勧めでした。
「内容なんてないからー」というような雑な理由で勧められましたが、今思えばあれはフリだったのかなーっと。
内容なんてないはずのアニメにあの衝撃の冒頭シーン。あの2分間の映像を何度見直したかはわかりません。

といったこともあり、本当に待望の傷物語。原作未読の私にとっては待ちに待ちました。
そもそも化物語を観始めたのが、偽物語放映時でしたので、その時点では映画化されることは決まっていました・・・。
決まっているのになかなか放映されない。今年に放映される!という噂がちょいちょい出ながらなかなかやらない。
その一方で、物語シリーズのアニメ化は続き、傷物語の内容を醸し出すような場面も増えてきて・・・。
時系列がめちゃくちゃなアニメとは言え、一番最初の傷物語の内容がわからぬまま進められていく「物語」は私にとってはなかなかの苦痛でした。

そんな中、待望の放映情報!上映日も決まりいよいよというところでした!
しかし、1回で終わりきるかと思えばまさかの三部作。
加えて本編は上映時間が75分・・・。ちょっと出し方がせこすぎませんかね?映画を見るなら120分は観たいところですが・・・。挙句は毎週変わる特典の情報。
一部の熱狂的なファンから搾れるだけ搾ろうとする、某アイドルグループ的な興行収入稼ぎに辟易しながらも、待望の作品を観てまいりました。
(まぁ、観方によっては、熱狂的なファンに対してはそれ相応の特典を付けるという新たなビジネスモデルですかね。消費性向に合わせた商品づくりといったところでしょうか)

と、相当長い前置きになりましたが、以下本編の印象について。

まず驚いたのは作画。あるいはそれを含む演出。
映画ならではと言ったところでしょうか。今までの物語シリーズも変わった演出に合わせて、変わった作画が施されていましたが、今作品はそれが顕著に表れています。
一番最初のシーンから画面に吸い込まれていくような画になっています。

そして音楽。物語シリーズのBGMは耳に残るような印象深い音楽が多いですが、今回は本作品の雰囲気に合わせ、重厚な感じのBGM。劇場ならではの緊張感を引き立てます。
{netabare} 主題歌がなかったので、若干減点。
別にこよみんに歌って欲しいわけではないのですが、期待はしているので{/netabare}

一番すごかったのは声優さんの演技です。
今作品の主な内容としては阿良々木くんが初めて怪異と出会う場面であり、その怪異というのが奇しくも怪異の王、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードであったというもの。
その絶望感たるや、吐息一つにまで演者の魂が吹き込まれているという感じでした。
絶望感で言えば、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの坂本さんにも迫真の演技でした。

キャラについてもシリーズ原点の作品ともあって、安定していない笑
阿良々木くんは見たことないほど卑屈で根暗で痛いし。
羽川もまだまだただの委員長ちゃん。だが、それがいい。
忍野さんはまだまだかっこいいオッサン。
キスショットはまさかの・・・。

ただ物語自体の内容で言えば、序盤も序盤。まだまだ物語は動き出したばかりといったところで第一部が完結します。
おそらく今作品の特徴となりそうなバトルシーン(ここに一番期待)は第二部に譲ることになりそうです。

夏までまたもや待ちぼうけが続きそうです。

さて、以下内容についてネタバレを含む感想。
{netabare} まずいきなりのこよみん燃焼シーンには驚きましたね。ちょっと時間かけすぎな感じもありますが、太陽に焼かれるシーンの絶望感たるや恐ろしいものですね。

そこから、羽川のパンチラシーン。
あんな恐ろしい風ある?笑 あれ一回スカート吹っ飛んだよね、たしか笑
パンチラというよりパンモロになって、荒ぶるお胸さまがもはや面白い笑
豚さんでもさすがに笑っちゃいました。
笑ったと言えば、羽川と友達となった阿良々木くんのスキップ。
今作品は笑いのシーンが少なかったのもあり、不意のスキップにはさすがに笑いを禁じ得ません。

いよいよ阿良々木くんとキスショットの邂逅シーン。
血痕を辿り徐々に近づくキスショットとの距離。映画館ならではの緊張感が存分に感じられる場面でした。
そこからキスショットの絶望、阿良々木くんの苦悩を描くこのシーンは、今作品屈指の名場面になったと思います。

その後に最初のシーンにつながると。なかなか憎い演出ですね。

三人のハンター、忍野との邂逅のシーンも見どころと言えるでしょう。
第二部では、このようなシーンの連続であることを期待します。
{/netabare}

さて、ぶれいくたいむ
{netabare}阿良々木くんに絡む羽川かわいすぎぃいいいいいいいいいいい!!
キャラが安定していない阿良々木くんに接する羽川の可愛さたるや、もはや怪異。
人間強度のくだりに驚く表情とかは、「守ってあげたい。この驚き」と思わざるをえない!
照れ隠しにスカートのセキュリティに難癖をつけて茶を濁すところとかもいいよね!ぐっじょぶ!

もちろん忘れてはならないのは短髪忍ちゃん。
阿良々木くんの横ですやぁしてるところから可愛すぎ・・・・ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!
肩のところが赤みをおびているのが、やらしい演出。
華奢だけどぷにぷにの肌感がこちらを犯罪者にさせるよね、ほんと。
あの短い髪で生意気な口を利く幼女の様相はもはや事案と言えるでしょう。
あ^~ずっとなでなでしてたいんじゃ^~。

ま、でもあれだね。萌え要素を出しても打ち消されるような内容になっているから、さすがにブヒれないね笑(プロの挫折)
{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 13

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

化物語の前日譚の「第1弾」に該当する本作は甘く…そして苦しい出会いで出来ていました。

この作品の原作は未読ですが、視聴を待ちわびていた作品の一つでした。
何せアニメ化する事は2010年に発表されていましたが、次々と別の「物語シリーズ」が先行してアニメ化され、ようやく公開されたのが2016年の1月でしたから…

そのため暫くこの作品に触れる事が無かったので、あにこれの「観たい」棚に入れっ放しにしていて、今回ようやく視聴する事ができたので久しぶりにジャケットを見たのですが、デザインが思い切り変わっていたのをそこで初めて知りました。
傷物語のジャケットといえば、キスショットが凡そ妖刀ココロワタリと思える刀を手に不敵の笑みを浮かべていたデザインだったと記憶していたのですが、いつの間にかキスショットが幼女バージョンになっているだけでなく、劇場版3部作分に分割されていたなんて…

でも、何故このタイミングでの上映となったのかは分かりませんが、少なくても「偽物語」「猫物語(黒)」「〈物語〉シリーズ セカンドシーズン」「憑物語」「終物語」と5段階の作品を先行する必要があったのかは何となくですが分かる気がしました。

物語シリーズの時系列では一番最初のこの作品ですが、この作品を時系列を追って視聴する事に大きな意味を感じませんでした…むしろ、時系列を追って視聴してはいけない、と思ったくらいです。

その一番の理由は、登場人物に対する思い入れの深さ次第で、この作品に対する受け止め方が変わると思えたからです。

西尾先生の作品はいつも登場人物が少なめ…それはこの作品も一緒です。
登場人物は主人公である阿良々木 暦と、キービジュアルにもなっていたキスショットとあと少しだけ…
だから5つもの作品を先行したとしても、それらの作品で登場したキャラ全てがこの作品で出てくる訳ではありません。

でもある意味回りくどいと思えるくらいの段階を踏んできた…それはこの作品に登場するキャラを徹底的に深堀りさせる必要があったからではないでしょうか。

例えば結果的にこれまでの作品でずっと頑張り続けてきた阿良々木 暦…
でも何故彼がそんなに頑張るのか…この劇場版3部作だけでこれまで視聴者の心に刻み付けてきた阿良々木 暦の人となりを表現することは、多分絶対に出来ないと思います。
それはキスショットにしても然り…あと少し登場するお馴染みのキャラにしても然り…

だからこれまでしっかりと段階を経てこの作品を手にした人にとっては、堪らない1作だったのではないでしょうか。

3部作の第1弾は、化物語の一幕から始まります。
ほんのちょっぴりの懐かしさと甘さと恥じらいを感じる出会いのシーン…
でも正直少しビックリしました。
だっていきなり彼女が出てくるとは思っていませんでしたから…
でもこれまで何度も見てきた彼女…
そして何度も聞いたお決まりの台詞が出てくるまでそう時間は掛かりませんでしたが、既に物語はトップスピードで動き始めていたと思います。

この先で待っていたのは阿良々木 暦とキスショットの初めてのご対面のシーンだったのですが、急転直下の展開と言っても過言ではないと思いました。
だってあんなに痛くて苦しい出会いだったなんて想像すらしていなかったから…
「かか…」と笑いながら不敵の笑みを見せるキスショット…忍はこれまで何度も見てきましたが、きっとこんなキスショットは今まで見たことありませんでした。
だからこそ阿良々木 暦は手を指し延べたのでしょうけれど…

阿良々木 暦とキスショットが紡ぐ物語…
要求と選択の先に何が待っているのか、気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。
きっと物語的には抜群の入りだったのではないでしょうか。
引き続き、第2弾に相当する「熱血篇」を視聴したいと思います。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 24

80.1 2 目覚めで怪異なアニメランキング2位
どろろ(TVアニメ動画)

2019年冬アニメ
★★★★☆ 3.8 (529)
2174人が棚に入れました
時は戦国時代、武⼠の醍醐景光は、天下を取るという野望をかなえるために、⽣まれて来るわが⼦の体を⻤神に与えてしまう。そうして⽣まれた⼦供は、命以外すべての⾝体を奪われており、川に流され捨てられてしまう。時は流れ、戦の世を旅する少年・百⻤丸。実は彼こそが、魔物に体を奪われた⾚ん坊の、成⻑した姿であった…。

声優・キャラクター
鈴木拡樹、鈴木梨央、佐々木睦、内田直哉、千葉翔也、大塚明夫、中村千絵、麦人
ネタバレ

kororin さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

何故に今頃リメイクか分からないけど、とにかくホゲホゲタラタラホゲタラポン!(ひょっとして作品登場後、半世紀記念?)

2019.01.23 初見印象◎

東京オリンピックも終わった翌年の1965年(昭和40年)以降、水木しげる御大の「墓場鬼太郎」が「ゲゲゲの鬼太郎」に改題連載され、人に害をなす妖怪を退治する鬼太郎のブームがジワジワ浸透してきた頃、
戦後コミック・アニメの先駆者&神様と言われつつも同業漫画家の才能に何かと嫉妬深い手塚先生。(楳図かずお先生や石ノ森章太郎先生とか、他にも色々の方々に対しても)
「ボクにだってね、コレぐらいの事はやれるんですよ!」と対抗して生み出されたのが『どろろ』ではなかろうかという『噂』も最近では囁かれてます。(あくまで『噂』です)
そして1967年(昭和42年)、少年サンデーにて漫画「どろろ」連載開始。でも暗いストーリーに不評だったらしいです。 ああ、あれから半世紀。(ホント、50年も経ったんだ!)
言わずと知れた手塚先生の異色作で、何かと主人公を逆境に追い込み追い詰め、どん底から這い上がる「生命力の強さ・尊さ・美しさ」を謳(うた)う『手塚テイスト』作品の一つ。(ホント手塚漫画って作品により読んでて何度心が折れそうになったやら)。

・1969年(昭和44年)には白黒アニメ。劇中の男性コーラス(「ん~ん~ん~ん~・・・」っていう暗いコーラスのアレ)も相まって、子供向けTV漫画(アニメ)なのに「物凄く暗い」仕上がりでやや不評。
・2004年(平成16年)のプレステ2では「無限の住人」の沙村広明先生がキャラデザしたゲームが出たり、
・2007年(平成19年)には妻夫木くん主演の実写映画になったり、
・2000年以降から、たま~に舞台演劇にもなったり、
・成長した「どろろ」が「ドロロンえん魔くん」と一緒に「百鬼丸」を探す旅をする永井先生の漫画が出たり、
未だ何かしら『尾を引く』作品。(白黒アニメは一応完結した〆方にしたものの原作漫画や映画は未完で終わっており、何かしらモヤモヤした感じが作品にふれた人それぞれの妄想を掻き立てるのでしょうか?)

そんな「どろろ」が2019年1月から放送。アニメーション制作は「MAPPA」と「手塚プロダクション」。製作は「ツインエンジン」と『質』が高そうです。
リメイクにあたって色々改変(改正)&ディティール設定なんかもあり、原作で不明瞭だったところが付加したストーリーで描かれて見応えありそうですネ。

身体部位を奪った妖怪を倒して取り戻す百鬼丸の物語ですが、勧善懲悪色がやや濃いめの鬼太郎と違い「人の業」の深さを描いているので今回も暗そうです。

三話まで見て、{netabare}
・原作と違い今回の百鬼丸は、序盤「会話に近い意思疎通(テレパス)」が出来ず「魂の色」を感じて敵味方を判別することしかできないので、声も出せずコミュニケーションはかなり不憫。少しづつ『人の心』を創り出すような今後の成長が注目。
・原作ではゲスト扱いだった盲目の琵琶法師で居合いも嗜む琵琶丸が準レギュラー?でもスートリー進行を助けるような役回りは好感。
・原作で百鬼丸が恋した(愛した)戦災孤児の世話をしている未央(みお)。OPやPVで意味ありげに出てるので彼女の登場に見る前から心が痛みます。(若い頃、原作読んだ時に軽いトラウマになったもんです)
・百鬼丸の育ての父・寿海が何故『侍』を辞めて医者になったかというエピソードが熱い!しかもCVは医者だけにブラック・ジャック(大塚明夫)と何か嬉しい。(笑)
・残酷な戦乱描写もさることながら、戦災で手足を無くした子供の描写もあり、今回何故「地上波放送」されないのか納得。(暇な「クレーマー趣味」の輩を煽らない対応策?)
・百鬼丸の両腕の仕込み刀。長さが収まりきらないのか、肘からハミ出ている感じがちょっとリアルで面白い。
などなど。{/netabare}
「ヘタな仕事」はしたくない意気込みが感じられるますし今後も期待出来そうです。

幼少時は子供特有の憧憬で仕込み刀の百鬼丸がカッコよく見えたもんですが、年を経た今では生まれながらに親の業を背負い、身体部位が戻る度に激痛でのたうち回り、そうまでして「人」になろうとする姿を見ていると色んな意味で心苦しいです。

さて、
・PVにも出てた「妖刀・似蛭(ニヒルって・・・)」にとり憑かれ、凶剣鬼となった仁木田之介(にき たのすけ)と百鬼丸との対決。
・「どろろ」は何故{netabare}女の子なのに「男の子(生意気なクソガキ)」のフリ{/netabare}をしなければならなったのか?(大体皆さんご存知でしょう?)
・どろろの両親、盗賊集団の頭だった火袋(ひぶくろ:手塚スターシステムのブーン)とその妻・お自夜(おじや)の末路。
・OPにも出てた盗賊集団の裏切り者・イタチ(手塚スターシステムのハム・エッグ)の策謀(野望)。
・実の兄弟と知らずに邂逅、そして敵対してしまう百鬼丸と弟・多宝丸(たほうまる:蟹頭)の行く末。
・因縁の実父・醍醐景光(だいごかげみつ)と実母・縫の方(ぬいのかた)と百鬼丸の運命は?
・百鬼丸は果たして『人』に成ることが出来るのか?(何か「ダーク・ピノキオ」みたいに思えてきた)

と、色々ドラマイベントはありますが、どんな風に味付け調理した仕上がりになるか今後も楽しみです。



2019.07.15
【感想あにこれ・・・じゃなかった。あれこれ】
現代風解釈と創意工夫を盛り込んで良作の部類であったと思います。自分は満足です。 ただ、キャラたちの「物分かりが良過ぎる」展開がチョット不自然すぎたように思えます。なので予想して身構える程『鬱』な感じはしなかったです。

自分で言っててなんですが「ピノキオ」的ファクターも少しありましたね。
百鬼丸→ピノキオ
どろろ→コオロギの幽霊・ジミニイ(ジェミニ)
寿海→ゼペット爺さん
{netabare}
[百鬼丸]
これまでの百鬼丸と違い、「ニヒルで物憂げで危ないお兄ちゃん」ではなく「本能に生きる無垢なモノ」というようなキャラ設定。当初は声も出せず、声を取り戻しても「言葉」を知らないのでカタコトで少ししか話せないまどろっこしさが「リアル」でイイ。
対人、対物の識別を『魂の色』で感じるというアイデアはよかったですネ。敵意あるモノに対しては視聴者側にも解るように小さな「赤い炎の数」で判るという、まさに『人間ドミネーター(サイコパスガ規定値ヲ超エテイマス。執行対象デス)』(笑) 人体欠損部位も48カ所から12カ所に変更されてるのも何となく納得いく設定(そら、48カ所もなかったら生きてられないって!)。
様々な経験で取り戻していく「体」、育まれていく「心」。本来あるべき「人」になっていく百鬼丸。しかし最後の試練は・・・鬼気的なもので、一歩間違えれば「闇堕ち」でした。
声は2019年の舞台版・百鬼丸と同じ鈴木拡樹さん。セリフ殆ど無いですが悪くはないです。

[どろろ]
もう大体ネタバレされてる様に「女の子」です。父母を死に追いやった「侍社会」を憎み、無鉄砲・啖呵と威勢だけは一人前で天涯孤独。女々しさで生きられるほど世間は甘くなく、男装で悪業(コソ泥稼業)をしてまで生き抜こうとするバイタリティー。原作では「バカなクソガキ」でしたが、今回は小さいながらも百鬼丸を気遣う母性(女性?)的な面や、社会体制(民百姓の暮らしなど)を真剣に想い悩み考える「賢さ」がステキ!
声は鈴木梨央さん。本業は子役からの俳優・タレント業ですが、それほど悪くはなく良かったと思います。「下手クソなのに無理くり入れたアイドル」よりは!「滑舌悪いのに採用されるタレント」よりはっっ!!!(笑)

[寿海・琵琶丸]
かつては武士だった寿海。戦さ(殺傷)に無常を感じ、武士を辞めて大陸(朝鮮か中国?)に渡航して医術を学び、「白」一族からはからくり人形の技術を習得。(ココは嘘です。でも時代的に白銀・金兄弟が西欧目指したのもこの時期かも。)(笑)
帰国後は戦場で「かたわ(身体を切り落とされた)」の遺体に義手義足を取り付け五体満足の「人の姿」にして供養したり。戦傷で無くした手足を義手義足で補う治療医師を行い戦没者に対しての贖罪のような生活・・・う~ん、業が深いような・・・
原作では、この頃の医術って「薬湯」が主流なのに対し、寿海は「外科」をを行う「異端医師」なので、人里離れたところに居を構えてたんだけどね。

気がついたら何故かいる琵琶丸。困った時に現れる琵琶丸。出てくる度に禅問答みたいな「道」を示す名バイプレーヤー。(笑) 全盲なので視界が百鬼丸と「同じ」というのも面白い。

[未央]
「相愛同士は結ばれず、悲運を乗り越えてこそ人間賛歌」という手塚トラウマの一つ。(苦笑) 幼少時、原作読んでび未央が百鬼丸に「汚れた女」という告白の意味が良くわからなかったのですが、大人になって察しがつき、今回気を引き締めてみましたが・・・やはり辛かった~~。(泣)
劇中歌「赤い花白い花」は昭和童謡なので作品(時代的)に合っていたかたというと・・・私個人としては△デス。

醍醐家の人々
[醍醐景光]
原作では野心の強い憎たらしい「外道暴君」でした。今回は領地の君主としてやや人間味ある感じに思えます。作中寡黙なシーンになると、ヤってしまった事(生まれたばかりの息子を鬼神に貢いだ)への後悔やら、贖罪やら、無かった事にしようと払拭する思いやらが、普段の固い表情からジワジワ伝わってきそうでした。毎度作品によってオチが違う景光。今回は・・・コレでもアリかなと思います。

[縫の方]
悲しい程典型的な普通の女(ひと)。身を痛めて産んだ我が子が人の姿をしてなくても慈しみ、しかし家長・景光の命で泣く泣く手放した事への後悔と懺悔。
運命の再開で叫んだセリフ。「百鬼丸!許してください!わたくしは・・・わたくしは!・・・そなたを・・・救えませぬ!」。コレは心底身につまされる思いです。それでもなお、「母」の愛は強かった(?) 終盤は結構立ち回ってくれました。

[多宝丸]
どろろに次いで準々主役。原作では武家社会にふんぞり返った憎らしい若き暴君でしたが、真っ当に次期・醍醐家当主になるべく日々研鑽し、国(領地)と領民を思い、歳の近い戦災孤児・陸奥、兵庫の姉弟を幼少時から従者に付けて人間味ある若様ぶりに成長してきました。が、ただ気になるのは頑張っても母・縫の方が自分を気にかけてくれないこと。その原因となる百鬼丸が現れると・・・兄が居たことに嬉しかったのもつかの間、
・百鬼丸が鬼神を倒して体を取り戻す度に醍醐の土地は疲弊していく。
・母の憂いの原因は実兄・百鬼丸への愛のみにあった。
という事実に、
・領主としての使命感20%
・母の愛を独り占めされてるような嫉妬感80%
ぐらいの比率(笑)で執拗に百鬼丸と対立。いろいろガンバッたんだけど・・・ものすごく不憫で可哀想な役まわりでした。

でも城下町でお団子喰ったら、ちゃんと銭は払おうね。(笑)

[オリジナル・エピソード]
幾話かアニオリがありましたが、
第七話「絡新婦」
女性型人外と若者(男)のなれそめ話ってケッコウ好き!

第十九話「天邪鬼」
終盤間際なのに、イキナリの手塚ギャグ・テイストの投入!ヒョウタンツギにスパイダー(オムカエデゴンス)まで出てくるとは!!(笑)
{/netabare}
厳密にツッコめば甘々なトコロも多少ありますが、リメイク物として設定や時代考証など割と丁寧に作り込んでた部類だったと思います。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 12
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

This is Japanimation

[文量→中盛り・内容→考察系]

【総括】
日本で、近年に制作されたアニメの中で、「外国人にオススメしたいアニメ」と言われたら、本作を勧めます。

それは、「最近のアニメで一番面白い」というのではなく、「外国人が喜びそう」という観点です(やや安易ですが)。

例えば私は、食べ物の中でラーメンが一番好きで、日本のラーメンはもはや日本食と言って良いレベルに昇華されているとは思うものの、やはり、「外国人にいきなりラーメン屋を勧めるか」といえば、その勇気はなく。もっとベーシックな和食(の中で旨い店)を勧めるでしょう。

そないな感じです。

作画は、ディズニーやピクサーのようなポップさや、ジブリのような幻想的な美しさがあるわけではありません。が、日本のアニメ独特の格好良さがありました。世界観など、やはり外国人にウケるものに感じます。

原作漫画は、多分大昔(小学校低学年の時)に1度読んでいるはずですが、内容はほぼ忘れています。薄い記憶頼りですが、多分、アニメ化にあたり、かなり簡略化し、現代風にしているように思います。この辺は、賛否あるでしょうね(私はまた別物として楽しめました)。

もし、視聴のポイントを言うなら、「部屋を暗くして近づいて観てね」ですかねw(画面をいっぱいに感じてほしい)

《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
「人になることは、人として生きることは、不幸なことなのか?」

そんな問題提起を感じました。

百鬼丸が体を取り戻す瞬間に、初めて得た感覚は大抵、「苦痛」であった。感覚が戻れば、切られた痛み。聴覚が戻れば、雨音に啜り泣きの声。嗅覚が戻れば、硫黄の悪臭。両手が戻れば、血に濡れた武器を持つ。

それでも、それでも百鬼丸は、自身の体を取り戻そうとする。それは、利便性や復讐などではなく、もはや、「性(さが)」。本人にも分からない、どうにもコントロールできない、「熱いなにか」が、百鬼丸を突き動かしていた。

それは、生物として根元的な、「生きる」という意志。最後に目(全身)を取り戻した時、見たものは、母の姿に夕景に、どろろ。全て、美しいものだった。わずかな、救い。

そういう意味では、圧倒的なまでの、「生命讃歌」だった。

原作をちゃんと読んでいないので、手塚先生がこの作品に何を込めたかは分からない。でも、アニメを観た限り、そう感じた。

他にも、考えるべき事柄は多過ぎて、1回観た程度ではまとめきれない。

例えば母親。多宝丸の件に関しては、明らかに母親の愛情不足なのだが、もしかして、百鬼丸は「愛した男の子供」であり、多宝丸は「もはや愛していない男の子供」なのかな? だとしたら、母親もだいぶ、業が深い。

例えば、多宝丸。彼はたくさんの「宝」を持っていたが、最も大切な「愛」をもっていなかった。それは不幸ではあるが、百鬼丸からすれば、また一般の庶民からすれば、「金持ちの無いものねだり」にも感じられる。結局、人間とは、どこまでいっても「足りない」ものなのだろうか。だとしたら、業が深い。

他にも、イタチの死に様、というより生き様は、たんなる悪役と切り捨てられ無いだけの印象を残してくれた。善人も悪行を成すし、悪人も善行を成す。そんな人間の矛盾を感じさせてくれた。

みよ姉も、たんなるゲストキャラとは言えないだけの印象を残してくれた。最後まで汚れずに死んだお自夜(どろろの母)も立派だし、汚れながらも生きようとしたみよも立派だった。この辺は、簡単に良し悪しで語れるものではないだろう。

この色々と五月蝿いご時世に、よくこの原作をアニメ化したなと、感心。勿論、身体に障害を抱えた方にとっては、心が痛む内容であり、許せない部分も多分にあるのではないかと心配する。でも、やはり「表現する」という部分において、力がある原作であることは間違いなく、清濁併せ飲む覚悟で、後世に残すべき作品だろうと思った。

まあ、「人として生きる上で追求すべき普遍的なテーマ」ならまだしも、「アニメ」という「娯楽」において、あまりに「尖った主張」をすること自体は、好きじゃないんだけどさ。
{/netabare}

【余談~ 作品における原作者の影響 ~】
{netabare}
以前、私の大好きな小説家が覚醒剤で逮捕された。そして、本屋から彼の本が消えた。

勿論、覚醒剤は悪いことだ。覚醒剤をやった彼も悪い。きちんと罪を償うべきで、いくらファンだからといって、擁護する気は1㎜もない。

でも、彼の生み出してきた作品に罪があるかと言われたら、私は「ない」と思っている。

勿論、「クソみたいな彼が書いた本はクソだから読みたくない」と思うのも、自由。本屋も商売だから、彼の本を置かないのも、自由。

でも、それ言い始めたら、芥川や太宰の本なんか1冊も置けないでしょ。なんで、芥川や太宰は許されて、彼は許されないんだろうか?

それは勿論、「格」が違うから。

芥川や太宰なんかは、なんていうかもう、「絶対的な是」なんだろうね、国民の中で。芥川や太宰は、もう、「芥川龍之介」や「太宰治」という「存在、ジャンル」であり、「人」としての枠組、常識に当てはめる必要もない。

であるならば、同じように、「手塚治虫」もまた、「絶対的な是」と言える格があるだろう。だからこそ、このような「問題作」もスルーされる。

私が何を言いたいかと言うと、「それで良い」ということ。

芥川や太宰の小説も、手塚治虫の漫画も、全てが道徳的というわけではない。中には、差別的なもの、犯罪まがいのものもあるだろう。でも、それを「臭いものに蓋をする」ように、全てを「無かったこと」にするのが正しいとは、どうにも思えない。

小さい子に読んで聞かせる絵本や童話を、全て「良い話」にするより、「恐い話」や「悲しい話」を混ぜた方が、豊かな情操が育まれるとも聞く。保育園の角という角の全てに柔らかいスポンジを取り付ければ、確かに保育園では怪我はしないが、無闇に走ると痛い思いをするという学びは得られなくなる(勿論、それで死んでしまったら最悪だし、幼い内から汚いモノに触れすぎ、他人を平気で傷付けるようになってもいけない。この辺のバランスは難しいところではあるのだが)。

話を初めに戻すと、私は、芥川の作品も太宰の作品も手塚治虫の作品も、もっといえば、過ちを犯したの彼の作品も、生み出されたモノ(作品)は出来る限り後世に残すべき、伝えていくべきだと思っているということ。

あくまで、フィクションはフィクション。それ自体に人を傷付ける力はない。

人を傷付けるとしたら、そういうものに影響された、人だ。常に。

それが毒なのか薬なのか、それは個人が、あるいは後世の人が判断すれば良い。私たちは、正しく取捨選択するだけの価値観や倫理観、知性を磨けば、それで良い。かめはめ波で人は殺せるが、かめはめ波を実際に撃とうと思う、人を殺そうと思うバカを育てなければ、それで良い。

どろろ のアニメ1作目は、「大人の事情」により、ほとんど再放送されないと聞いた。そんな「問題作」を、これほど高いクオリティで再アニメ化した制作陣に、拍手を送りたい。
{/netabare}


【各話感想(自分用メモ)】
{netabare}
1話目 ☆4
スタートからいきなり深いな。仏への疑心が生まれる前に死ねるのが救い、って、もう疑心は生まれているわけね。

戦闘シーンは、よく動くな~。

前期のグリッドマンでも感じたが、やはり、「ガチの熱量」で作るアニメは、面白い。

2話目 ☆3
焼き魚に驚く、つまり、命が見える。魂の色。話の筋としてはよくある話。自らの身体を取り戻す話。

3話目 ☆4
かなりグロいんだけど、なぜだろう、グロさを感じないのは。古典的な話しがきっちりハマってるんだよな。まあ、そもそも古いんだけど。大陸で学んだという設定がな、オーバーテクノロジーだよな。二組の親子の対比。

化け物が人の器官や感覚を欲しがる理由。痛覚戻りは、この段階では不利だろうな。

4話目 ☆4
聴覚を取り戻し、最初に聞いたのが、雨音と啜り泣きか。

5話目 ☆4
みよ姉、川でナニを新って洗っていたか、だよな。身体を売っていても、魂は綺麗なんだな。歌も美しい。みよ姉、死亡フラグだよな~。得るものがあれば、失うものもある。

6話目 ☆5
痣? 性病? 田んぼを持つのが、夢、か。死んでも身体を売らなかったおっ母ちゃんも偉いけど、身体を売ってまでも生きるみよ姉も同じくらい偉い。

足、戻るもんなの?

心は取り戻したの? それとも元からあって、身体を取り戻したことで復活したの?

性善説、性悪説、そんなところかな?

7話目 ☆4
愛を知り、魂が浄化されるアヤカシ。ますます、性悪説だな。最後の蜘蛛といい、一話目の羅生門感といい、このへんは芥川オマージュなのかな?

8話目 ☆3
なんか前向き過ぎるが、サルは、死というものを身近に感じてきてたかな? と思わせての、夜泣き。緩急が上手い。初めて人間の感覚が役に立ったな。ただ、あの高さから落ちたら死ぬよね。初めてかいだ臭いが硫黄、悪臭か。

9話目 ☆4
どろろの過去。母の強さ。餓死、か。厳しいな。なぜか、ラブコメの波動が(笑)

10話目 ☆4
多宝丸、お坊ちゃんだけど、なかなか優秀。

11話目 ☆4
百鬼丸も、赤くなる。生きていくことは、汚れていくこと。

12話目 ☆4
確かに、言い分としては、分かるんだよな。因果だね~。

13話目 ☆3
新OPも格好良いね。EDは一期の方が好き。 背中に地図。ストーリーが動くかな?

14話目 ☆4
金があれば、余裕ができ、未来を考えられる。その通りだな。

15話目 ☆4
平和な村の様子は、コミカルで、どこか浮世離れしている。作り物の世界のよう。妖怪か、神か。背骨が戻ったか。

16話目☆4
イタチのキャラは、なんだか難しいな。基本的に悪役だが、それだけでもなく。正直、というところかな。

17話目 ☆4
狼狽するどろろ。いよいよ、真実に近づく?

18話目 ☆5
イタチの生きざま、死にざま。良し悪しではなく、ひとつの真実。敵キャラとして、かなり記憶に残るキャラとなった。

19話目 ☆4
珍しい、コメディタッチ。オチまで含めて、素敵な話だったな。こんなんも、箸休めには良いな。

20話目☆3
作画力、落ちてきたな~。

21話目☆4
シリアス、シリアス。らしくはなってきた。

22話目☆4
魔神の力に手を出したらね。壮絶な最後。執着。人とはなんだ? おいらが、手足になる、目になる、だから鬼になるな。母親がな、多宝丸に愛情を注がなかったから、こうなる。でも、もしかして百鬼丸は、「愛した男の子供」であり、多宝丸は、「もはや愛していない男の子供」なのかな? だとしたら、母親もだいぶ、業が深い。あってもなくても、足りない。思えば、鬼神も人間になりたかっただけ。
{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 29
ネタバレ

ossan_2014 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

成長の在処

*微修正



手塚治虫のマンガ『どろろ』の再アニメ化。

1969年の白黒アニメのリメイクではないが、それでもあの主題歌はどこかで挿入して欲しかった気がする。
「主題」を歌うものとしてのTVアニメ「主題歌」の傑作の一つと思うのだが、動画サイトあたりで試聴できるかもしれないので見かけたら聴いてみてほしい。


末法を思わせる、戦国の地獄のような世界であがく子供と若者の物語。

手塚のマンガには「戦争」や「戦場」が無数に描かれるが、例外なく「人間の人為的な行為」として、「責任者」や「実行者」が設定されている。
「戦争」は、「責任者」が「実行者」に命じて行わせている「行為」であって、降ってわいてくる「現象」ではない。

おそらく自伝マンガでも描かれているように、戦時中の軍需工場の勤労動員の経験から来ているのだろう。
手塚にとって「戦争」そのものである理不尽な「命令」は、眼前にいる顔のある「担当者」が、頂点の「戦争責任者」が組織した機構に沿って順繰りに「人の手によって」手渡されてきた、行動の「連鎖」として捉えられている。
「命令」と、手渡す「実行」を行う行為との合体として。

それは、仏教の末世を思わせる『どろろ』の戦国世界でも変わらない。
これは宗教的な「地獄」ではない。
「サムライ」が引き起こしている「戦」による結果なのだ。
大将が「戦」を決断し、足軽が実行することによって初めて現出する、「人の」世界。

こうした手塚マンガの視点は、69年の初アニメと同様、本作へも引き継がれている。

農民や職工などの「常民」からは理不尽な「地獄」のように見えている「この世」は、戦を望む「サムライ」の意思決定から生じる「人為」であることを、半ば「この世」からはみ出す「怪異に取り付かれた若者」と、棄民として「常民」から排除された「何ものでもない子供」の視線が暴き立ててゆく。

主演の二人は専業の声優ではないようだが、周囲の声優の演技から少し浮いた感じが、「常民」から遊離して「この世」から半分浮上したキャラの距離感とよくマッチしている。


{netabare}しかし、21世紀アニメの本作では、怪異に取りつかれた若者が肉体や感覚を取り戻す過程は、若者が「世界」を「知っていく」過程として描かれ、奪われた「自身」を「取り戻して」いく完成した「大人」として最初から登場した原作や前作とは対照的だ。

確かに現代的な視点ではあるとは思うものの、まるで赤ん坊が「成長」する過程とダブらせるような展開のさせ方は、やがては物語を破綻させるのではないかという不吉な予感を感じさせてもいた。


アニメの視聴に際して、「成長」に対して、つい身構えてしまうような警戒心を抱いてしまうのは、「成長」というタームは無前提に特定の価値観を肯定する場合が多いからだ。

事象は様々に変化するものだが、「成長」は、特定の価値観のフレームを通して見たとき、肯定的=「良い」とされる変化に対して使われる「評価」だ。

咲き誇る花に「価値」を見るフレームからは、花を咲かせるまでが「成長」と呼ばれ、しおれる様は「老化」という事になる。
種子を実らせることに「価値」を見るならば、しおれて枯れ落ちる花弁は「成長」途上になるだろう。

逆に言えば、ある変化の過程を「成長」と呼ぶことは、背後の価値観を「肯定」しているということだ。
ある変化を「成長」=「正しい」変化と受け入れてしまえば、自動的に評価基準であるその「価値観」が正しいと受け入れることになる。

違う言葉で言えば、「成長」という言葉を使えば、背後の価値観の是非を問われることを避けられる。
何処の職場にもいる、二言目には「成長」や「進化」という言葉で説教する上司は、その時々で自分に都合のよいものを「正しい」と押し付けられるから、こうした言葉を振り回し続ける。

現実世界の子供の「成長」のように、ある程度、成長を定義する価値観の共有がなされているならばいい。

が、まったくのフィクション、それも怪異や異能が登場するような架空「世界」で、世界観やストーリーラインの価値観を説得的に構築しないまま「成長」を振りかざすと、異なる文脈上での「成長」=価値観が混乱して、意味不明かご都合主義の印象にしかつながらない。

本作ではどうだろう。
赤ん坊に類比的な、社会の構成員として周囲と調和的に生きるすべを身に着けていく「成長」的価値観と、「奪われた」ものを回復していく「奪還」の価値観には接点がない。
いや、「周囲との調和」と「奪還」は、両立が不可能な対立項とさえいえる。

終幕で、難民化した「常民」たちが、生活を脅かす「怪異」の根本は、青年が鬼神から自らを「奪還」する結果ではないかと推量する場面は、この対立項の「対立」性が、物語の表面上に浮上してきた瞬間でもあるだろう。


ここで現代人である視聴者が誤解、あるいは見落としがちなのは、サムライ=「領主」は領民の「代表」として領地を治める「義務」を果たしているのではない、という点だ。
「領主」はその国における唯一の「主権者」であり、領地も領民も、一切の(政治的)権利を持たない領主の所有物に過ぎない。
形式の上では領主の奥方も子供も「所有物」であって主権者などではない。ましてや「領民」は言うまでもない。

だからこそ、国の為といいながら、犠牲に捧げるのは自分という「主権者」ではなく、子供という「所有物」なのだ。
「領地=所有物」と「子供=所有物」の交換であって、主権者という特権的な位置から見比べて手持ちのモノの価値を計量したに過ぎない。

国を「治める」行為の一切は、いわば所有物の手入れであって、「奉仕」や「施し」のごとく語るのは厚顔無恥の度が過ぎるというものだ。

旧作の白黒アニメの主題歌が使われないかと期待したのは、あの主題歌が、正にこうしたサムライの自讃じみたタテマエが、ただの宣伝文句に過ぎない欺瞞であるとハッキリと歌詞として言語化したものだったからだ。

領民を「保護」=育成することは、「所有」=管理を言い換えただけのことで、「サムライ」の善意でもなければ義務でもない。
サムライに護って「もらって」いるかのような領民の日常感覚は錯誤に過ぎないことを、この場面での主人公の「アジテーション」は暴き立て、生贄=「所有物」である青年を、領民=「所有物」が犠牲にしようとする倒錯と欺瞞を糾弾する。

サムライの所有物として存在する「領民」であることを捨て、自身が自身を支配する新しい「この世」を提示する「アジテーション」は、こうして「成長」と「奪還」の対立による物語の空中分解を阻止するとともに、阻止自体が、そもそも青年の「変化」には「成長」を重ねる「価値観」など含まれていなかったのだと証明するものでもある。

そう、作中に頻繁に登場する手足を失った人間たちは、手足を失ってもなお「人間」だ。
手足を喪失したからと言って、「人間」以外の(以下の)ものになるわけではない。
青年もまた同様に、成長するまでもなく最初から「人間」であるのだ。

琵琶法師が「修羅」と仏道=「慈悲」の間でもがくのが人間かもしれないと呟くように、顔のない仏像に始まり完全な仏像で終わる物語は、人間としての社会的「成長」を限定的に肯定するのではなく、その先の見果てぬ「価値」を追い求めるものとして人間を定義しようとしたのだろうか。
破綻なく「奪還」と調和した物語は、そう語っているように思える。



もしも敢えて「成長」を探すとしたなら、それは主人公の「棄民の子供」が提示した「サムライ」のいない「この世」の可能性=「未来」と、「奪還」を完了してこの世に生まれなおした青年との再会の可能性=「未来」の中にあるのだろう。

まるで早すぎた市民革命のような主人公の構想は、戦国の世を知る視聴者には、虚しい夢のように見えるかもしれない。
が、戦国時代には、一向衆によってサムライの支配を拒絶した社会を創ろうという一向一揆が頻発している。
加賀では、そうした「国」が90年ほども維持された。

歴史の流れの中では一瞬の夢かもしれない。
しかし90年は、平成と昭和の全期間を合わせた時間とほぼ等しい。
昭和の後期に固まった社会機構が、存続するのか潰え去るのか不透明な現代の視聴者が、一瞬の虚しい夢と冷笑することはできないだろう。

だが、現実の市民社会が理想郷ではないように、主人公が構想するサムライのいない「この世」も、理想郷ではありえない。

難民による青年のリンチをかろうじて防いだ主人公の「アジテーション」だが、「自分たちの生活を安定させるために、『生贄』は抵抗せずに黙って犠牲になれ」という難民の主張は、現代のSNSで毎日うんざりするほど凡庸に繰り返される放言と同型的だ。

犠牲を要求する難民の主張は「サムライ」のプロパガンダする欺瞞に捻じ曲げられた誤謬だと指摘する「アジテーション」の論理は、「領民自身の社会」において、「領民自身の意志」として主張されたとき有効性を持たないだろう。

新たな「犠牲の否定」の論理はどのようなものになるのか。
本作の、修羅と慈悲の間でもがく戦国の人間へ投げかけられた問いかけは、SNSに妄言のあふれる現代にも変わらずに問いかけられているようだ。{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 11
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