大学で熱いなおすすめアニメランキング 7

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの大学で熱いな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年04月26日の時点で一番の大学で熱いなおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

78.5 1 大学で熱いなアニメランキング1位
風が強く吹いている(TVアニメ動画)

2018年秋アニメ
★★★★☆ 3.9 (413)
1409人が棚に入れました
夜。逃げるように街を駆け抜ける蔵原走(くらはらかける)。その横に、不意に自転車が走り込んで来る。見知らぬ男が、走に向かって問いかける。「なあ!走るの好きか!」。男の名は清瀬灰二(きよせはいじ)。走は、灰二に導かれるまま、竹青荘という古びたアパートに辿り着く。そこに暮らす個性豊かな9名の住人。最後の空室を勧められ、戸惑いながらも、押し切られていく走。まさか自分が、『10人目の男』だとは、夢にも思っていなかった…。

声優・キャラクター
大塚剛央、豊永利行、内山昂輝、入野自由、榎木淳弥、上村祐翔、興津和幸、株元英彰、北沢力、星野貴紀、木村珠莉、中村浩太郎、河西健吾、日野聡
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

「あり得ない」のその先へ

 ぺー 「敗北を知りたい」
 同窓A「全く強すぎるというのも罪ですな」

仕事始めここ数年では恒例のご挨拶。箱根駅伝は年始の楽しみの一つな私。箱根路を疾走するランナーには遥か及ばないものの自分も走るので、彼らがどれだけ凄いかのさわりくらいなら理解できてるつもりです。

だからこそ視聴する前から「あり得ない」のはわかりきってたこと。ん?それ以前に、ランナーでなくてもそりゃわかるか。素人込みの大学生が箱根を目指す物語だなんて。。。
視聴動機は“三浦しをん”。原作の出来が仮に直木賞作家の駄作だったとしても一定水準は満たしてるやろ、とだいぶ上からの入りでした。どうもすみません。原作も漫画も未読です。


で、掌を返すわけであります。あり得るあり得ないはいったん置いときますね。全23話。ハイジの表情(かお)に全てが集約されてると感じた最終回。
注)いきなり最終回のネタバレなので観終わった人だけ開けてね!

{netabare}ゴール直前で膝爆弾が爆発した瞬間だけ顔を歪めました。しかしその刹那以降、ゴールテープを切るまで苦悶の表情を浮かべることは一度もありませんでした。{/netabare}
{netabare}これには正直やられました。ハイジが倒れるか大ブレーキで足を引きずりながらゴールするかのイメージしか持てなかったからです。脳裏に浮かぶはロス五輪のアンデルセン選手的な展開。{/netabare}
{netabare}9人が繋いだ襷の意味=ハイジが求めた“走る意味”がシンクロし、プレッシャーや不安とは別次元の喜びに満ち足りていたあの表情です。おそらく選手としては人生ラストラン。″頂点”を見つけてカケルのもとまで辿り着き崩れ落ちました。理想の走りに近いと評されたカケル。なぜ走るのか?一生かけても未完で終わるだろう物語の襷はハイジからカケルへと託されたのです。{/netabare}
そのハイジの表情に至るまでの紆余曲折が丁寧に描かれた青春ストーリーでした。

メインは学生寮竹青荘住人の寛政大学に通う大学生10名。


ハイジ(清瀬灰二)声豊永利行
カケル(蔵原走)声大塚剛央
ニコチャン(平田彰宏)星野貴紀
ユキ(岩倉雪彦)声興津和幸
キング(坂口洋平)声北沢力
神童(杉山高志)声内山昂輝
ムサ(ムサ・カマラ)声株元英彰
王子(柏崎茜)声入野自由
ジョータ(城太郎)声榎木淳弥
ジョージ(城次郎)声上村祐翔


すくすく伸びゆく″青竹”の字が逆転していることが何かを指しているのか、皆ここに至るまで何かを諦めたり挫折したり、痛みを抱えている面々です。
メイン10名と登場人物が多い弊害は、2クールかけて各人に焦点をあてられたことであまり気にはなりませんでした。
取ってつけたような理不尽エピソードによるトラウマ発生ではなく、なにかどこかでちょっとボタンを掛け違って停滞してしまった駅伝メンバーたちです。
{netabare}ケガに対して切り捨てる監督と焦るなと慮る監督。結果として教え子二人は走ることに背を向けます。本人の意向より適性を重視する監督もいました。何が正解だったかはわかりません。正解がないからこそそれでももがいて足掻いて答えを見つけ出そうとする彼らに共感を覚えました。{/netabare}


放送が日テレ系と本職の駅伝中継職人だったこともあって予選会を含めたレース再現度は高いです。
そのため走ってる人がついこの間まで素人だったということを除けばレースの臨場感は充分伝わってきました。

よくある高校の青春ドラマと比較して自由度の高い大学生という設定。選択肢が多くある中であえて無理ゲーに挑む彼らの心の変化をぜひ見ていただきたい。
挑む壁は無理ゲーだとしても、挑戦を通して向き合わなければならない自分自身の課題は身近にありそうな素材ばかりです。


 「あり得ない」のその先へ


箱根を目指すという題材のリアリティはほぼ無いといって差し支えがなくても、描かれる人物にはリアリティを感じられる。
本作は後者の視点により軸足を移すことで満喫できました。逆に前者が気になると本作は楽しめません。こういった場合こう思うわけであります。


 物語くらい夢があってもいいよね


嗚呼、久しぶりに使うこのフレーズ。そして物語には続きがあるのです。

{netabare}まずは微笑ましいやつ。。。
・ジョータ続けてるんかい!
と走りに魅せられたこの間までの初心者さん。
・カケルと藤原の終わらない旅
常人には見えない景色を二人は見ていてさらにその先を追い求めて止まないことでしょう。
・ハイジの親父さん
王子の公認記録突破の時のハイジ。大事なところでは寡黙なのは親譲りなのか。
時は流れて、親父さんは妻とは離れた場所で息子を見守る。贖罪?応援?息子への想い? 震えるストップウォッチに父親が息子に抱く感情が痛いほど伝わってくる。父もつらいのだ。
そして、ハイジは父と同じ指導者の道へと進む。{/netabare}


カケル、ハイジ、そして王子の人気が高いようですが、誰が良いとかはあえて触れず。
バラバラだった10名が繋ぐ襷の物語。力作です。


■オマケ1
酒を飲むときくらいはちょっと陸上から離れようかww
{netabare}最終回Cパート。一升瓶の差し入れは右手に『天下の険(麦)』左手に『ニライカナイ(泡盛)』
箱根から理想郷(ニライカナイ)へ(笑)
ユキかニコチャン先輩は気づいてそう{/netabare}


■オマケ2
「予選会は昭和記念公園に隣接する自衛隊駐屯地からスタートする」
軍用飛行場が母体のこのエリア近所には今は社名変わって存続中の“立飛飛行機”があり、冬期作品「コトブキ飛行隊」の“隼”の製作協力をしてたりしました。
軍用研究の名残りなのか同じくご近所には「宇宙よりも遠い場所」でお馴染みの“極地研究所”なんていうのも。聖地巡礼が捗るかもしれません。
{netabare}そういえばハイジの親父さん、一人で見に来てなかったな?これは自信ない。{/netabare}


あー、ちょっと恋要素は蛇足に見えました。



-----
2019.08.28追記


視聴時期:2018年10月~2019年3月リアタイ視聴

前半ED「リセット」がお気に入り



2019.04.20 初稿
2019.08.28 修正

投稿 : 2024/04/20
♥ : 53
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

それぞれが感じる、美しきこの世界

アニメーション製作:Production I.G.、
監督:野村和也、
シリーズ構成・脚本:喜安浩平、
キャラクターデザイン:千葉崇洋
原作:三浦しをん

完璧なフォームで走る蔵原走(カケル)。
それを自転車で追いかける清瀬灰二。
猛スピードのなかで、灰二は問いかける。
走るの好きか?

主人公のカケルは、高校時代に
長距離の有望選手だったが、陸上をやめてしまっていた。
ある日、竹青荘の寮長である灰二から誘われ、
カケルは寛政大学の寮に住むことになる。
そこは灰二が何年もかけて計画していた
箱根駅伝を目指す陸上部のための住まいだった。
事情を何も知らされていなかった寮生たちは、
灰二に翻弄されながらも箱根駅伝に向けて走り出す。

どれだけ上手く嘘をついているか。
創作物を目にするときに私が重視していることだ。
サークルにも入っていない大学生たちが
1年足らずで箱根駅伝出場を目指す。
このあらすじを読むだけなら、そんなことは不可能、という
ひと言で終わりだろう。
健康ブームにも乗り、昨今は市民ランナーが増えている。
走ることに対するリアリティの感覚は、
より厳しくなっていると思う。
ジョギングの経験がある人なら分かると思うが、
1キロ3分のタイムは、普段から走っている人でも
才能がなければ、まず難しいスピード。
それを20キロとなると、ほとんど超人だ。
しかし、この作品はキャラクターの心情に寄り添い、
過程をとても丁寧に描いているため、
いつの間にか嘘の物語に引き込まれてしまう。

原作は未読だが、実写映画は視聴済み。
映画は2時間を超える作品だったが、
やはり、そのくらいの時間では
箱根を目指す描写が足りないように感じた。
その点、この作品は23話をかけて、
きっかけから葛藤、10人それぞれの想い、
ハードな練習、予選会などを描き切っている。
主人公ふたりはもちろん、ほかの部員たちの出身や
性格、バックボーン、家庭の事情、
子供のころの出来事など、細部まで考えられていて、
全員の人間像が見えてくる。
生き生きとしたリアルなキャラクター設定。
どの人物も本当に魅力的なのだ。

そして全話を通じて展開がとても上手く考えられている。
メンバーがひとつになっていく心の動き。
いちばん遅い王子の走りを皆で応援するときの団結。
カケルの過去を全員で共有する温もり。
「何のために走るのか」という
ジョージとジョータの問いに対する灰二の答え。
全ての出来事がラストに向かって絡み合いながら
一本の道になっていく。

{netabare}予選会の歓喜の通過後、箱根駅伝に挑む。
1区/王子、2区/ムサ、3区/ジョータ、4区/ジョージ、5区/神童、
6区/ユキ、7区/ニコちゃん、8区/キング、9区/カケル、10区/灰二。
走っているとき、それぞれの心に大切な思い出が蘇る。
全員が色々な想いを抱えて走っている。
秀逸なのがその時に自分の生き方を振り返り、
心のなかで何かが大きく変化する描写だ。

王子は灰二からかけられた言葉、
ムサは風呂場で灰二と交わした会話、
ジョータは弟への期待と葉菜ちゃんへの恋心、
ジョージは戸惑いと後悔、
神童は寛政大学ランナーの全ての想い、
往路5人それぞれの感情と向けられる期待を受け止めて走る。

特に心に残ったのは復路の21話の描写だった。
ユキは、カケルのスピードを箱根の山の下りで感じる。
その世界は美しいが、あまりにも寂しすぎた。
生きた人間には耐えられそうにない。
そのときにユキの母親の声が響く。
母は新しい父との間に妹を身ごもった。
とても柔らかい幸せそうな母の笑顔。
ユキは耐えられず、家族と疎遠になった。
その母が箱根まで来て、妹や義父とともに
息子のために声を張り上げていた。
ユキのなかで世界が変わるのだった。

ニコちゃんにとって走ることは、厳しく、楽ができない世界。
一度は完全に諦めてしまったことだった。
高校時代の顧問に体格の問題から
別競技への転向を薦められる。
走ることが大好きだったニコちゃんは、
そこで気持ちが切れてしまった。
灰二がいたから、また味わえた気持ち。
「走ることが好きだ、愛してる」
改めて想いが強烈にこみ上げてくるのだった。

キングにとっての現実は演じなければいけない場所。
しかし、走っているときだけは演じる必要がなかった。
そこは最も自分自身を感じられる世界になった。

カケルは、走ることについての特別な想いを
走り出す前から噛みしめていた。
そして、幻の自分を前方で見つめながら、
究極ともいえる領域へと踏み込んでいく。

灰二は怪我をしてから、ここまでの道のりを思う。
自分は弱いと思い、強さを求めてきた。
速いことよりも強さが欲しかった。
それを手に入れたことを証明するために、
灰二はゴールを目指す。{/netabare}

走ることによって辿り着くゴールは全員が違う。
しかし、タスキをつないで想いを共有できることは、
かけがえのない、とても幸せなことだった。

美しい世界が、確かにここにあった。


走ることに対するちょっとしたつぶやき。
{netabare}何のために走るのか。
昔は、よく考えた。
走ることは物心がついたころから大好きだった。
空気を切り裂き、筋肉が躍動する。
スピードに乗って加速した世界の変化に夢中になった。
それはユキが感じた「美しきこの世界」のようなものだと思う。

今でもよく思い出すのが中学の陸上部で
先輩たちとともに走ったインターバル練習。
学校の周囲の長い距離をゆっくりと走りながら、
合図とともに100メートルほどのダッシュを何度も繰り返す。
先輩から褒められるごとに自信を深めた。
しかし、学内でいくら速くても、
広い世界に出ると、速い選手はたくさんいる。
たった3キロほどの大会に出ても、
そのほとんどの時間がメチャクチャ苦しくて
耐えられないほど辛いものになる。
自分との闘い。
勝つためには限界を超えた苦しみを
ずっとひとりで抱えなければいけない。
何のために走っているのか分からなくなった。
私は高校生になってサッカー部に入った。

社会人になって忙しくなり、フットサルをやらなくなって
時おり、健康のためにひとりで走るようになった。
私はやはり走ることが好きなのだと実感した。
この作品を観ていると、そんなことを思い出した。{/netabare}
(2019年5月3日初投稿)

投稿 : 2024/04/20
♥ : 58

〇ojima さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

そして、次に襷をつなげるのです。

「風が強く吹いている」は
等身大の男子大学生が本気で箱根駅伝に向かって物語を創り、進んで行く作品です。

箱根駅伝出場は無謀ですか?
物事に本気で立ち向かったことはますか?
無理だと笑っている人に本気で笑い返せますか?
努力のあとの結果には何を求めますか?


竹青荘寮生は10人。
10人もいるけど、すぐに憶えられるほど個性的です。
その中で陸上経験者は3人。
陸上を諦めたニコチャン先輩
高校で実力がありすぎて孤立したカケル
過去に何があったかわからない主将ハイジ
残り7人は陸上未経験ですが全員が箱根の為に努力する姿はカッコいいです。

8話から面白くなってきます。
正直、本作品4話まで観て、物語の動きが鈍いなぁと思い保留作品にしてましたが、8話からは目が離せなくなりました。
中盤からは見逃せない展開で、チームとして順風満帆ではない物語の中でどの様に団結して行くのかも見所です。

最後まで襷をつなぐ箱根駅伝というスポーツの清々しい青春物語を楽しめます。

是非、観て頂きたい作品です。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 59

73.6 2 大学で熱いなアニメランキング2位
名探偵コナン ベイカー街(ストリート)の亡霊(アニメ映画)

2002年4月20日
★★★★☆ 3.8 (356)
2627人が棚に入れました
工藤優作(コナンの父)がシナリオを提供した新型ゲーム機「コクーン」の披露パーティーに招かれたコナン達。会場で発生した殺人事件の手がかりを求め、コナン達はコクーンが作り出す仮想空間へと入るが、システムは人工頭脳ノアズ・アークに占拠されてしまう。

「日本という国のリセット」を企てる彼は、プレイヤーである子供達が一人もゲームをクリアできなければプレイヤーの脳を破壊すると宣告。コナン達が選んだゲームは「オールドタイムロンドン」。19世紀末の殺人鬼・切り裂きジャックを追いかける、命がけのゲームに挑む。

一方、現実の会場では優作たちが殺人事件の捜査に乗り出していた。ゲームの世界と現実の世界。ノアズ・アークがゲームに仕掛けた現実の事件の解決に至る真実とは何か?ノアズ・アークはゲーム世界のどこに潜むのか?

現実世界の殺人者は誰なのか?そして、その動機は?これらの謎に立ち向かうため、工藤親子は二つの世界を隔てた「親子による共闘」を開始する。

声優・キャラクター
高山みなみ、山崎和佳奈、神谷明、山口勝平、茶風林、緒方賢一、岩居由希子、高木渉、大谷育江、林原めぐみ、田中秀幸

青陽 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

蘭ねーちゃんが他のアクションゲームの世界に行けば余裕でクリアできてたと思う

自分のスペックがそのままゲームキャラに活かされるという点で、ちいさな子どもたちにはたぶん不利なアクションゲームでしたが、蘭ねーちゃんなら…?

バイキングでもトレジャーハンターでもグラディエーターでも、きっと持ち前の破壊力でそのゲーム世界を制圧できたはずです。もし京極さんがいれば間違いなくできていたでしょう!
そんな話をTVアニメスペシャルでいいから見てみたい。ジャンルが推理→アクションになっちゃうけど!

投稿 : 2024/04/20
♥ : 3
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

AIは「ノアの方舟」伝説たり得ない

仮想ゲーム内の19世紀末のロンドン。
コナンたちが現実世界で起きた殺人事件の手掛かりを探していく、
2002年公開の劇場版『名探偵コナン』第6作。

【物語 4.0点】
『コナン』としても、ミステリーとしても、SFとしても異色。


緻密なミステリーや推理より、
大がかりなシナリオによるドラマ性が追求される劇場版。
本作に至っては、仮想世界なので、
リアルでは絶対に死なない登場人物も“ゲームオーバー”で退場に……。
仮想世界の権限を有するAIによる“介入”もあるので常識は通用しない。


親の血統や地位を笠に着た、今風に言うところの“上級国民”の横柄さも描かれる本作。
それに対するアプローチも変化球で、
本作は、それらを腐敗と断罪して、庶民のストレスを発散する痛快さは提供せず、
むしろ、血筋を受け継ぐ“貴族”たちに、
今後も世の中を背負って立つよう奮起を促す渋い“説教”


人工知能(AI)についても、上記の旧態を打破するための革新として過信はしない。

19世紀末、栄華を極めた大英帝国にも矛盾はあった。
そもそも我々は「ノアの方舟」伝説で腐敗が一掃された世界で選ばれた創造物ではないのか。
今の世の中が汚いからと言って、安易に浄化とか、“リセット”とか言うもんじゃない。

そんな示唆も残して、AIは……{netabare}今は技術悪用の恐れがあり時期尚早と去っていくのだ。{/netabare}


【作画 4.0点】
最後のセル画制作による劇場版『コナン』となった本作。

VRロンドンの霧も、風情のある現象としてではなく、スモッグとして描き、
時代の光としてのホームズ、闇としての切り裂きジャックが求められた、
激しい格差といった歪みも抱えた往時の英国の社会心理まで再現しようという意欲が伝わる。


AIが主催するデスゲーム等、未来テクノロジーのデモとしての華やかさがある一方、
ゲーム内で、博士による秘密道具及び超絶アクションを封じられたコナン君は、
名実ともに頭脳だけ大人の小一に……。
鑑賞者は久々に、この縮んだ身体で追い詰められて行くもどかしさも共有することに。
『コナン』アクション映画としても本作は異色。

但し、某空手少女は本作でも元気はつらつ♪

最後も{netabare}列車アクション{/netabare}で見せ場はあり。


【キャラ 4.0点】
本作の鍵を握る“天才少年”ヒロキ。
出る杭を打つ日本の教育への毒針、本当は友達が欲しい孤高の天才。

犯人役もまた、{netabare}血筋を背負いきれなかった存在{/netabare}として描かれる。

そして、上から目線の“上級国民”チルドレン。

各々テーマ性を内包したオリジナルキャラが物語深化に寄与。


一方でコナン君は親父同様、重度のホームズオタクぶりを発揮し、
ピンチの中でも妙にイキイキ!?
悪党であるモリアーティ教授への愛まで語り出したら、いよいよ重症ですw
今回は推理力よりホームズ知識力に舌を巻く。


【声優 4.0点】
モリアーティ教授(CV.小林 清志さん)、モラン大佐(CV.藤本 譲さん)
切り裂きジャック(CV.速水 奨さん)
などリアル世界だけでなく仮想世界内の敵役までベテラン声優で固める盤石の布陣。

コナン君の親子の絆もテーマの本作。
CV.田中 秀幸さん&CV.島本 須美さん。
工藤夫妻のボイスがVRロンドンの何処で出張ってくるかも注目w

{netabare}父ちゃん、いくら奥さんが好きだからって、
妻をホームズが愛したオペラ歌手に当てはめて、美声披露まで美化するのはやり過ぎやでw{/netabare}

緒方 恵美さんによるセレブ少年グループのリーダーの生意気ボイスも〇
{netabare} 実は真相を隠す煙幕だったりする。{/netabare}


【音楽 4.0点】
劇伴はお馴染みの大野克夫バンド。

いつものコナンのテーマ曲もロンドン仕様?にアレンジするなど、
現実&仮想世界にまたがるシナリオを好アシスト。


ED主題歌はB'z「Everlasting」
孤独の中から絆を取り戻す壮大なバラードと共に、
実写のロンドンの街並みを眺め余韻に浸るひと時。


【感想】
血縁やコネにより腐敗する人間による統治より、
決定のいくらかを人工知能に委ねた方がクリーンな政治ができる。
地方議会レベルではありますが、そうした主張も出ては来ている昨今。

とは言え、その水準まで、AI技術や信頼が高まるのは、
もう少し先になるのではと私は思います。

“家”の宿命を背負った“貴族”の底力も中々の物。
古くて汚いからと一掃するのは勿体ない。

だから二世、三世の皆さんには、どうか“リセット”されないように、
襟を正して奮起して欲しいなと願います。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 18
ネタバレ

scandalsho さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

コナン版『ソードアート・オンライン』

今や国民的アニメの名探偵コナンの劇場版第6作。

{netabare}
(Wikipediaより抜粋)
コナン一行は仮想体感ゲーム機「コクーン」の完成披露パーティーに招かれた。そのパーティーの最中、殺人事件が発生し、コナンは被害者のダイイング・メッセージから、事件の手がかりがゲームの中にあると考え、コクーンに乗り込む。
ところが、ゲームのスタート直後にシステムが人工頭脳「ノアズ・アーク」によって占拠され、コクーンに乗り込んだコナン達を含む50人の子供達が人質に取られてしまう。
「日本という国のリセット」を企てるノアズ・アークは、プレイヤーである子供達が全員ゲームオーバーになってしまったら、プレイヤー全員の脳を破壊する、つまりプレイヤー全員を死亡させると宣告する。
覚悟を決めコナン達は、5つのステージの中から「オールドタイム・ロンドン」を選択した。19世紀末に実在した殺人鬼・切り裂きジャックを追いかける、命がけのゲームに挑戦する。
{/netabare}

どうです?『ソードアート・オンライン』の世界、そのものですよね。
面白くない訳がありませんよね。
事実、かなり面白かったです。

最近流行の『異世界』物の先駆け。【本作は2002年公開】

投稿 : 2024/04/20
♥ : 25

74.2 3 大学で熱いなアニメランキング3位
夜は短し歩けよ乙女(アニメ映画)

2017年4月7日
★★★★☆ 3.8 (334)
1734人が棚に入れました
クラブの後輩である“黒髪の乙女”に思いを寄せる“先輩”は今日も『なるべく彼女の目にとまる』ようナカメ作戦を実行する。
春の先斗町、夏の古本市、秋の学園祭、そして冬が訪れて…。
京都の街で、個性豊かな仲間達が次々に巻き起こす珍事件に巻き込まれながら、季節はどんどん過ぎてゆく。
外堀を埋めることしかできない“先輩”の思いはどこへ向かうのか!?

声優・キャラクター
星野源、花澤香菜、神谷浩史、秋山竜次、中井和哉、甲斐田裕子、吉野裕行、新妻聖子、諏訪部順一、悠木碧、檜山修之、山路和弘、麦人
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

ロマンチックエンジン

湯浅政明監督作品、原作森見登美彦。

黒髪の乙女を語り部として、
四季折々の京都の夜を舞台に、
四つの季節の物語を一夜の出来事のように語る。
春の結婚式二次会、夏の古本市、
秋の学園祭、そして冬に流行した風邪の猛威。

意味不明でありながらどこか意味ありげ、
孤独を拗らせた若者の妄想に夜明けは来るのか!?
先輩と黒髪の乙女の恋愛ファンタジーです。

四畳半神話大系から、
娯楽性だけを抜き出したような、
奇抜ではありますがポップな作品です。
詭弁踊りがクスッと笑える、
星野源、花澤香菜の好演が光ります。

{netabare}運命の赤い糸に導かれて人を繋ぐ「ご縁」、
人は孤独ではなくどこかで誰かと繋がっている。{/netabare}
そんな簡単なことが時々わからなくなる。
人生はとても短いのですから、
そんなメッセージがここにあるのかな。

素敵な一夜を乙女は颯爽と歩く、
それは爽快で心躍る青春の日々だ。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 66
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

初湯浅作品はこれで御座いました

森見登美彦って誰? そこからスタートです。


『映像研には手を出すな!』を放送するNHKでの畳みかけかなにか。湯浅正明監督の過去作品『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』を正月二本立てで地上波放送です。

昨年今頃は今敏作品にずっぷりだった私。ちょうど一年前にこの道を通った夜。今年は湯浅監督です。
お薦めいただく『ピンポン』『四畳半神話大系』はまだだったりします。つまり本作が初湯浅作品。


タイトルから想像するに

「命短し 恋せよ乙女」
「書を捨てよ 町へ出よう」

あたりの大正期ないし昭和初期の浪漫な匂いがします。
それは遠からず近からず。雰囲気重視な作風に思えました。

星野源さん演じる冴えない大学生。“黒髪の乙女”との偶然の出会いを装うことウン十回かウン百回。いつか添い遂げるその日まで。
そういえばずっと夜の出来事でした。夢か現か大学生の妄想か。ファンタジーな演出と現実っぽいのが入り乱れ、場面も良く変わる。足元ではあまり見たことのない独特な映像。

わたし混乱しとります。例えるならこんな感じ↓

・お作法知らずに吉本の新喜劇を鑑賞する
・とりあえずの現代アート美術館で途方に暮れる
・ストーリー求める心持ちでインド映画観てしまう

心のコンディションで受け取り様が変わってきますね、こりゃ。
正直よくわからなかったしつまらなかったです。実際よりも長く感じる不毛な時間。


第20回山本周五郎賞受賞作品。第137回直木賞候補。2007年本屋大賞第2位。
これ原作の受賞歴。そしてアニメーションもいろいろ賞を獲っております。

勲章がっつりぶら下げた制服を着た軍人さん目の前にしても、魅力を感じないといいますか。
どういう態度を取ったらいいか困る感じに似てます。実際そんな場面人生でなかったけど。。。


思うに、活字が合うのだろうなというのは伝わってきます。夢か現か妄想かの幻惑は活字で読者の想像を掻き立てるのに具合が良さそうな仕様。原作を読んで想像したとことの答え合わせが面白そうです。
メタもふんだんにありそうでしたしきちんと鑑賞すればってとこでしょうか。偽電気ブランばりのアルコール飲みながら鑑賞した自分が悪いのさw



■李白風邪か~

{netabare}李白といえば杜甫ですね。
なるほど、杜甫=徒歩の言葉遊びでしょうか。よって黒髪の乙女は夜通し歩く。なんちゃって。{/netabare}



偽電気ブランにはそそられる。それだけ。



視聴時期:2020年2月 

-------


2020.02.21 初稿
2020.09.19 修正

投稿 : 2024/04/20
♥ : 46
ネタバレ

こた さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

芸術的要素多め

原作未読。
正直言うとストーリーあまり入ってこなかった…。
それほどに展開が目まぐるしかったと言おうか。
90分と映画としては短い時間に集約され過ぎているせいか、少しばかし無理があったと思える。
ユーモアがふんだんに使われていて、演出もところどころ恥ずかしくなるくらいにはっちゃけていたのはまあ良しと…(^^;
あと四畳半神話大系で御馴染みのキャラがいたのも嬉しい要素。

因みに原作読んでる友人と観に行きました。本当は3部とかになっていてそれぞれ別な話?なのを一夜の出来事にまとめたのだとか。

アジカンが手掛けるEDは耳に心地いい。カッコいい。

あとアニメファンは心配なところ、キャストに俳優・芸人の起用。
そこは{netabare}星野源さん、ロバート秋山さん、演技はとても良かったと思う。キャラもハマってた。{/netabare}

黒髪の乙女……
黒髪の美少女とも違う響きと奥ゆかしさ。
黒髪の萌えキャラは数多いけれど、黒髪の乙女というフレーズが似合うのはこの作品(と四畳半)。

追記。
なんか違和感が否めなかったので、タイトルの「感性」→「要素」に訂正してみました。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 44

75.5 4 大学で熱いなアニメランキング4位
ランウェイで笑って(TVアニメ動画)

2020年冬アニメ
★★★★☆ 3.7 (383)
1479人が棚に入れました
身長158cmの藤戸千雪の夢は、パリコレモデル。モデルとして致命的な低身長を理由に、周囲は「諦めろ」と言うが、それでも折れない。そんなとき、家族を養うためにファッションデザイナーの夢を諦めようとする都村育人に出会う。――これは一途に夢を追って走り続ける、2人の物語。

声優・キャラクター
花守ゆみり、花江夏樹

takato さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

マガジン、恐ろしい子…。2期あるなら悪いけど制作会社変更で…。

マガジンといえば、メジャーなのは「はじめの一歩」か「金田一」くらいで少年漫画トップ3では最弱、そんな風に思ってた頃が私にはありました…。


最近ジャンプの弱体が著しく(ヒロアカや鬼滅が好きな人にはすいません)、サンデーなんてもう…って状態で、少年漫画自体が心配になってきてるのだが、マガジンが地味に新たな道を開拓していってるという予感を「進撃」や「声の形」では感じていたが本作でその想いは畏怖にすら変わってきた…。


本作は正直言って作画はあんま良くない。そんなに作画廚ではないが、ファッションを描く話でそれはどうなの?感があるし、原作ファンの方にすれば切りすぎて物足りないという意見もある。しかし、だからこそ私は恐怖ではない震えを覚えたのだ。だって、欠点があるのにこんなに面白いとか…、原作はどんたけ面白いんだよぉー!?。この作品を少年誌でやらせたマガジン編集部が怖い!、有能すぎて怖い。


本作のテーマは単純明快。現代日本で夢を追うなんて馬鹿なこと、身の程を知れ!、お前は天才でも特別でもない、最初から持ってない奴が努力したって無駄なんだ!という世界に対してFUCKサインを突き立てる、「ゾンビランドサガ」や「よりもい」に連なる夢追い人の物語である。


台詞がいちいち箴言を思わせる含みがあるし、キャラもみんな熱い!。千雪が薄っぺらな良い子じゃないのも感情移入できる(ちょっとシロバコのズカちゃんを連想しちゃったじゃねぇか)。展開も次々にピンチが現れて、それを乗り越える王道なものだが、バトルやスポーツと違って単純に勝敗が示しやすくないファッションでそれを成立させてるのは凄い。


シロバコもそうだが、本作も情熱と理想を捨ててない点で見事としか言いようがない。「ゾンビランドサガ」の11話のさくら状態で現実を受け入れたふりして諦めばそりゃ楽だろう。現実なんてこんなもん、自分なんてこんなもんと規定してふて腐れる人間を否定する気はない。しかし、自分の生き方を否定される気がするからって諦めない人を嘲笑するな!。


諦めない人間が必ず成功するとは限らない。しかし、諦めてる奴に成功は絶対ない。仮に夢が叶わなくても夢が変わるかもしれないし、鍛えて得た物は無意味じゃない、なにより自分で自分を恥じることはない。


本作は現実の辛い面を無視して子供じみた全能感に酔うのではなく、現実の苦しみも描く。しかし、彼等は諦めない。計算で考えるなら無謀な賭けを行う夢を追い人、そんな風にしか生きれない人々、でも私は彼等を愛する、彼等だけが無意味と不毛に思える大海を突っ切る偉大な航海者なのだから。どうか彼等に嘲りの笑いではなく喝采を…。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 40
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

やれることもやれないことも何でもやる

原作けっこう既読


「これだけの個性、誰が持ってる?」

一人の野球解説者がその年大注目のドラフト1位の選手について意見を求められこう答えた。
実はこの発言には少し驚いた。リアリズムに徹し、日本シリーズで完全試合目前の投手を9回交替。鉄板のストッパーを投入し勝利をもぎ取った采配。リップサービスとは無縁の人物と思ってたからである。
それまでにこの類まれな個性を持った高校生には「プロはそんなに甘くない」「一つに絞ったほうがいい」一流の元選手、元監督。解説者の多くがそんな言葉を投げかけていた。世間の盛り上がりをよそに“その世界に身を置いた者”だからこその説得力を武器に若者の挑戦を否定的に捉えていた。せいぜい「いいんじゃないんですか。頑張ってほしいですね(棒)」とマイクを向けられた現役選手が当たり障りなく言うくらい。

 {netabare}その道のプロが無理と言ったらそういうもんかと思う{/netabare}

本職の多くが否定的に言うもんで、徐々に投手と野手どっちがいいか?みたいな論へと流れていったのを覚えてる。ドラ1高校生の名は大谷翔平。大谷の挑戦に支持を表明した解説者は落合博満である。落合は続ける。

「あの年のピッチャーNO1ね。バッターNO1。大谷に勝る選手は1人もいなかったの。これは、誰が何を言おうが、これは事実だと思うの」
「じゃあ、どうするんだろうって考えた時に、どっちもトップクラスなんだったら、やりたいならやらせてみなければ。皆が言ってるのは、現場で何をやってるかじゃなくって、考えて、それは無理だろうとか、無茶やるなよって話なんであってね。本人がやるってものを止める必要もないだろうと」

と日本ハム・栗山監督の決断に賛同を示し、自分が監督でも二刀流に挑戦させるとした。リップサービスをする人物でないことは野球ファンなら誰でもおわかりになるだろう。
そして物語の主役大谷は当初の目標でもあったメジャーリーグに舞台を移し、“二刀流”に挑戦中。比較対象がベーブ・ルースだったりする凄さを我々は現在進行形で味わえているのです。


前置き長くなりましたが、この一連をファッションの世界に置き換えた話が本作『ランウェイで笑って』で展開されております。たぶん。

マガジン案件全12話。もの珍しいW主人公スタイル。
パリコレを目指す本作のヒロイン藤戸千雪(CV花守ゆみり)。彼女の身長は158cm。要件と言われる175cm以上を満たしておらず絶望的。救いは夢に向かって腹は据わっていること。「覚悟はいいか?オレはできてる」を地でいく娘。
デザイナー志望(だった)本作の主人公都村育人(CV花江夏樹)。大卒専門卒が要件の業界に於いて進学することを彼の家庭環境が許してくれません。超貧乏で妹たちの学費を稼ぐ使命があるのです。

下手に知ってると無茶なことにしか見えない二人の挑戦。
人事やリーダー経験のある方。才気溢れる都村くんを雇えるでしょうか?
現場で実際に働くとなるといろいろ知識が必要で、そこらへん空っぽです。知識ないから基本的な指示しても「できません」って言うだけだし、何よりこの手の子って繊細な子が多すぎ。となると手間かけて教育しても、勝手に自信喪失してフェードアウトしていったり。丁稚経験ないので理想と現実のギャップとか、学校で専攻してきた人の手際のよさとか見て心が折れちゃう。そんな新人を腐るほどみてきたことでしょう。
千雪の状況はもっと絶望的です。
タッパが要ることには理由があって、その常識は業界あまねく共有されているディシプリンのようなものです。つまり“身長が足りてない”ことでノーチャンス。落とされようが文句は言えません。読者モデルなど雑誌を主戦場にする手はありましょうが、彼女の目標はパリコレをゴールとするショーモデルというのでワンチャンないところからスタートです。

「喝っ!」と張○さんに秒殺されることは確実。まぁハリさんだけなら信憑性怪しくても、ノムさん、原辰徳の優勝経験監督。古田、仁志、谷繁らの理論派。総出で「お前はプロには向かん」と突きつけられる感じです。


という事情も考慮すれば、このお話は“藤戸千雪がパリコレモデルになるまでの物語”“都村育人がトップデザイナーになる物語”である以上に、

 {netabare}“二人の挑戦をご都合主義に見せない物語”{/netabare}

である必要が出てきます。そしてそのことはおおむね達成されています。いちいち気にしてられませんが、ジャイアントキリング要素のある作品は詳細設定をミスると目が当てられなくなりますもんね。
ここのサイトを見てる方でももしかすると甲子園出場経験者おるやもしれませんが、いちいち作品内の野球回ある度に噛みついてられないでしょう。その握り方であの飛距離はありえないみたいな(笑)


さて、原作組からみればアニメは相当端折ってました。アニメ組の方気づきましたか?
決定的な説明不足には陥らなかったまるで都村くんのパッチワークばりの職人技に拍手送りたいです。
そんな駆け足とはみせない駆け足の影響なのか、サブタイトルでの作品タイトル回収が早々{netabare}(第3話){/netabare}にやってきます。
そこで何の疑問も湧かなかったタイトルの意味を理解します。“禁忌”“ダメなもの”“無理なもの”二人が夢を叶えるには常識を覆す覚悟が必要で、それを一言で言い表したタイトルになっとるのです。
そのタイトル回収回はまさにモデルの常識をぶっ壊しながら二人にワンチャンあるかもと光さす前半の勝負回でした。たぶんこのへんまで観て合わないようでしたら撤退でいいんじゃないかと思います。
メインキャラにはあと二人。モデルの才にものすごく恵まれながらデザイナー志望の長谷川心(CV茅野愛衣)。日本のトップブランドのファウンダーでありデザイナーの孫でこれまたものすごく才能あるというか圧倒的な実力の持ち主綾野遠(CV木村良平)。がずっぷりと物語に関わってきます。


そもそもマガジン案件は個人的にいつも楽しんでますのでそれこそ「いつもお世話になっております」的な仕上がりでした。
駆け足だったことの功績で最終話を一区切りとしては最高の断面で幕を閉じられたと思います。中途半端な終わり方をさせずきっちり纏め続編も期待させる理想の“1期”という感じでした。続編を期待したい良作です。



※ネタバレ所感

■セイラさんに始まりセイラさんで終わる

人気モデルのセイラ(CV牧野由依)さん。
{netabare}芸華祭で「これからも頑張ってね。デザイナーとして」と心にトロフィーを渡したトップモデルのセイラさん。他の審査員が綾野にトップ票を入れる中で心に票を入れてます。いやー怖いですね~。とはいえセイラさんの何気ない“いいね”が千雪と育人の運命を変えたのでした。今後もキーパーソンです。

☆原作ネタバレ(重度):セイラさんその後
{netabare}「やっぱり…あの時、心ちゃんじゃなくてアンタを潰しておけばよかった…!!」
セイラさんが誰に向けて言ったかは内緒。{/netabare}{/netabare}



■オーラ

なにげに好きな回{netabare}(第7話){/netabare}
{netabare}雫さん曰くモデルのオーラは体型から放たれるものと心の姿勢(自信)から滲み出る二種類があるらしい。
千雪は後者で立ち向かおうとしたけど、モデルをやめたい心のオーラのほうが遥かに上でその場にいる全員を圧倒してしまったという現実が残酷でよい。手袋用意してたり準備万端で備えているのはチビのほうなのにね。
だいたい負の感情がオーラを遠ざけるなんて迷信みたいなもので、撮影後に千雪は心に悔しさをぶつけてしまったけれど「泣いてない」と必死の抵抗を見せるあたり、ただ可愛いってのではなくて、やれることは何でも実践しようというのが見て取れます。
そういえば、運を集めるとの趣旨でゴミ拾いを率先垂範する大谷選手と同じものを感じますね。小さい粒を一つずつ拾い上げる作業をストイックに実践していくことが夢への道なんでしょう。
そういえばのそういえばで大谷と同じ年のドラ1で4球団の指名を受けて某六甲おろし球団に入団したドラゴンじゃないふじ○み選手とよい比較になります。内容は省略。察しておくれ。

そんな千雪に寄りそう雫さんも良い。
「慰めるよ。ずっと。ずっと」
優しいだけじゃないんですよね。雫さんの覚悟です。

☆原作ネタバレ(中度):雫さんと五十嵐(心のマネージャー)の因縁
{netabare}二人はかつて先輩(五十嵐)後輩(雫)の間柄。当時の雫はバラエティ志望でモデルにやる気はなし。レッスン適当、減量無視で大メシ喰らい。それでも素質はあったので事務所のエースに成りかけていた。
それなのにいきなり雫が最大手の現事務所から無名の新興事務所(ミルネージュ)に移ると言い出す。五十嵐は当然キレて罵詈雑言吐き捨てる。
数年後、五十嵐は身長の伸び悩み(167cm)と共にモデルとしても伸び悩んでいた。そんな頃、雫のパリコレデビューの報。しかも五十嵐が夢見ていたブランド『ラーレフォン』での出演。
そして闇落ち。自分は夢を叶える為に手段など選べるような立場ではないと。それからの彼女は有力者に枕営業の末、憧れだった『ラーレフォン』のランウェイに立つ事に成功。
本番直前、彼女は自分に言い聞かせる。自分は夢を叶えた、自分は幸せなんだと。そう思わないとやってられないから。しかし実際に舞台に立って湧き上がった感情は「何だ、こんなものか」だった。五十嵐はこれを機にモデルを辞めマネージャーとなる。

手段を選ばず夢を叶えたが幸せになれなかった五十嵐。
こっから以降はアニメでも描かれてること。向いてない人間に出来る事は諦めて妥協すること、正面からぶつかって挫折すること、手段を選ばず夢を叶えることの3種類しかないと彼女は信じてる。
千雪は「正面からぶつかって夢を叶える」の4つめの選択肢の只中にいる。かつての自分がダブる五十嵐は雫に引導を渡すよう言うが、雫はすでに千雪と共に歩む覚悟を決めていた。
「慰めるよ。ずっと。ずっと。」にはそんな想いが込められている。{/netabare}{/netabare}



■綾野遠くんのノルマ

デザイナーとパタンナー両方できるのに分業へのプライドで優秀なパタンナー募集中だった綾野くん。
{netabare}目標の名刺53枚越えならずの52枚でした。これトランプでいうジョーカー1枚足りないだけみたいな。
53分の1とはいえそのジョーカー1枚が都村育人という強力なカードであり、ジョーカーを手に入れた綾野くんが今後どう羽ばたいてくかも楽しみな今後でしたね。

育人が11位というのもその理由も納得。才能だけでなんとかなっちゃう物語にしないことで千雪と育人とのバランスが取れ、まるで戦友のような二人の関係に説得力が出てきますもん。{/netabare}




※ここからオマケ

■ViVi

そのまんま名前出てたので協賛か協力してるんすね、きっと。
『ViVi』は女子大か短大っぽいイメージですけど合ってます?あと『CanCan』とかありましたね。そこで大学行った方。周りの女子何読んでました?ウチは『JJ』が圧倒的でしたね。私も買ってました。下手な男性誌買うより女の子と話を合わせやすいし、女の子が家に遊びに来ると雑誌をネタにいろんな駆け引きを楽しめるかも。現役の方はどうぞ!

それはそうとアニメのほうはもうチョイ被服に作画カロリーというかデザインカロリー割いてもよかったかもしれませんね。



■長男

花江さんってそういう運命なんでしょうか。
{netabare}「ああ~…泣きそう。頑張れ長男。負けるな長男」
この鬼滅臭。病弱な育人ママは桑島法子さんが声をあてられてました。{/netabare}

{netabare}別件。『ピアノの森』ではモノローグマシマシでショパンのバラ1を演奏してました。
言わずと知れた『四月は君の嘘』の最終回です。{/netabare}



■主題歌

わたくしややもすると姿勢が隣国に厳しいことを自覚してますが、是々非々でとは思っているのです。
以前ネットコミュニティで東○神起のファンに絡まれたのも嫌な思い出だったり。それは置いといてもEDはちょっといただけない感じでしたね。
ネイティブじゃないアーティストの日本語バラードって発音の違いが目立つもので違和感が残るものです。これは国籍問わず。そのうえ特にお隣の国のアーティストの印象を端的に表すと、

 オーディエンスをうっとりさせるのではなく、本人がうっとりしてる

なんだろう。好きな人ごめんね。あ、それとなんかこの方エイプリルフールでやらかしてたけど、無事ラナウェイ(run away)できてたらいいっすね。



それと最後に一個だけ。
心ちゃんはおそらくモデルとして売れる可能性高しなので、そっちの実績作って知名度上げてから30歳くらいでデザイナーに転身という世界線に身を投じたほうが稼げてると思います。
それに向けたお勉強ということにすれば五十嵐マネの説得材料にはなりそうですがどうでしょう?



視聴時期:2020年1月~3月 リアタイ

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2020.04.04 初稿
2020.10.14 修正

投稿 : 2024/04/20
♥ : 59

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ふたりで歩く奇跡のランウェイ

アニメーション制作:Ezo'la
監督:長山延好、シリーズ構成:待田堂子
キャラクターデザイン:金子美咲、
音楽制作:片山修志、鈴木暁也(Team-MAX)
原作:猪ノ谷言葉

幼いころからパリコレモデルになることを
夢見ていた少女、藤戸千雪。
父はモデル事務所ミルネージュを経営。
才能と環境に恵まれた、
モデルになるために生まれてきたような
少女だと誰もが思っていた。
しかし、彼女の身長は、小学4年生のときの
158センチのまま止まってしまったのだった。

一方、子供の頃から服を作るのが
大好きだった都村育人は、
抜群のファッションセンスとアイデアを持ち、
類まれなる才能を秘めていた。
ところが、母が病気で妹が3人いる
母子家庭の長男のため、服作りの勉強のための
専門学校に行くことは難しい状況。
ファッションデザイナーへの夢を諦めかけていた。

不遇なふたりが偶然に出会う。
そのことによって化学反応が起こる物語。

諦めと挑戦の間で揺れ動く表現がいい。
誰もが無理だと思ってしまう状況のなか、
小さな奇跡をひとつずつ起こすさまは、
観る者にある種のカタルシスを与えてくれる。

折れない心。
いい大人なら、誰もがそんなものは幻想だと知っている。
いくつもの挫折を経験した者は、
可能なことと不可能なことが分かってくる。
現実はそんなに甘くない。
ただ、知識や経験は行動する勇気を
失わせてしまうこともある。

私が好きなプロボクサーのひとりに
今では世界的に有名になった井上尚弥がいる。
彼がバンタム級に階級を上げて、
階級のトップを決めるトーナメントのWBSSに
参戦しようとしていたとき、
アメリカの興行でメインを張れるようになると
私が主張しても、周りの海外ボクシング通からは、
絶対にあり得ない、と断言される始末だった。

もちろん、こういうマイナスの意見は、
ボクシングに精通しているからこその主張でもある。
アメリカのボクシング界において、
バンタム級という軽量級で
メインを張るなんてことは、過去にほぼ例がないからだ。
体の小さい者は、アメリカボクシング界で
大成功することができない。
ある意味、常識のようなものだ。
アメリカに近いメキシコ系ならいざ知らず、
日本人ボクサーが人気になって成功することは、
人種的な興行面から言っても難しかった。
そして、これまでの日本のボクシング史においても
皆無といっていいことだった。

ところが、その話から2年後のWBSSが終わった現在、
「絶対にあり得ない」ことが実現されようとしている。
それどころか、世界のボクシング界の頂点の評価を
日本人が受けるという可能性すら見え始めている。
あまりにも当然のことながら、
挑戦する者だけが、夢を実現させることができる。
周りで騒ぐだけの者が、その挑戦や目標を
完全否定したり、笑うことは正しいのだろうか。

『ランウェイで笑って』は絶対に無理だと
言われることに無謀にも挑戦する
過程を見せる物語だと思う。
そこをどう表現するかがいちばんの見せどころだ。

ファッションデザイナーという職業についての
知識は全くないので、この作品について
どこまでリアリティがあるかは判断できない。
パターンナーを拒否して育人がこだわることや、
作っている服そのものに説得力があるのかも不明。
しかし、そういう細かい判断は関係なく、
最初の3話の流れや仕掛けは、抜群に面白かった。
この3話だけで完結していて、
タイトル回収まで行っている。
心情の変化や、勝負の見せどころの表現は、
リアリティ面は別にしてとても良かった。
しかも、駆け出しの雑誌編集者まで登場させて、
彼女の背景も見せた上で、心が動かされる描写を
入れたのが素晴らしかった。

また、育人が柳田の仕事場で揺れ動く心情を
見えない千雪の背中で押し返してくれる描写もいい。
どれだけ成功している人間でも
折れそうになる瞬間がある。
それを支えてくれるのは、
やはり身近な人たちのこれまでの言葉や
存在そのものなのだ。
人々の心の動きを実に丁寧に表現していた。

4話以降は、服飾芸華大学における
コンテストに参加する育人が中心となる。
そこに、モデルとしての才能に恵まれながらも、
デザイナーになることを切望する長谷川心や
ヨーロッパから帰国した千雪、
有名デザイナーを祖母に持つ綾野遠も加わり、
ラストへ向けて物語が展開される。

登場人物の描写が脇役についても丁寧なのが好感。
心のマネージャー・五十嵐優と
千雪の憧れでもある成岡雫の過去を含めた
掘り下げのシーンひとつとっても
きちんと表現されている。
千雪の歩いた道を後ろから付いていく雫の決意を
ふたりで歩く絵とともに見せる手法など、
心に響く描写がなされている。

個人的にはとても優れた作品だと思うが、
ファッションに対しての知識がない者に対して、
説得力を持たせるところまでは至っていない印象。
不可能なことに挑戦する物語の設定上、
ある程度は仕方がないが、
デザインや技術的なことに対する解説を
もう少し加えたほうが、より話に入り込めるだろう。

とはいえ、目指しているところがはっきりしていて、
キャラクターを深く掘り下げている点は好みだ。
ファッション業界にスポ根の要素を取り入れ、
それが上手く噛み合っている。

ランウェイという言葉には
「助走路」という意味もあるそうだ。
千雪と育人が歩き始めた奇跡のランウェイは、
パリまで届くのだろうか。
(2020年4月18日初投稿)

投稿 : 2024/04/20
♥ : 59

66.2 5 大学で熱いなアニメランキング5位
ベイマックス(アニメ映画)

2014年12月20日
★★★★☆ 3.8 (205)
1174人が棚に入れました
ヒロは、幼いころに両親を亡くし、兄タダシと2人きりの生活を送っていたが、ある日、謎の事故により兄タダシは帰らぬ人となる。
ひとりぼっちになり深く心を閉ざしたヒロの前に現れたのは、つぶらな瞳と空気で膨らんだ白くて大きな体を持つ"ベイマックス"。彼は、亡き兄タダシが、人々の心と体の健康を守るために開発したケア・ロボットだった。
「どのくらい痛いですか?」「泣きたい時は泣いていいのですよ」と優しく寄り添う"ベイマックス"のおかげで、ヒロは少しずつ元気になる。
そして、兄の死に疑問をいただいて謎を追うと、世界の脅威となる巨悪の存在を知り、兄のために戦う決意をする。ヒロの味方は、戦闘能力・戦闘意欲のない優しすぎるベイマックスのみ。果たして彼は世界を救うことができるのか、そして、兄タダシがベイマックスに託した驚きの使命とは。
ネタバレ

Yulily さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

ベイマックスが うしろから包み込んでくれる、あたたかいストーリー

ここは...わたしの住む都市?
目の前に広がるどこかで見たような景色...
けれども少しだけ異国っぽい雰囲気もあるこの場所は...

アメリカ、サンフランシスコと東京をミックスした「サンフランソウキョウ」という架空都市。

そのせいだったのでしょうか...
ここは非日常的なファンタジーの世界であるのに、どこかに実在しているのではないかと....そんな気持ちにさせたのは。

科学が進歩した世界では尖ったフォルム、禍々しい色。そんな近未来的なデザインのハイテクロボットを見かけます。

しかしこの作品の「ベイマックス」というロボットは白くてやわらかそう、さわって良い?あなたはふわふわなの?そんな印象でした。

開発者タダシはこのロボットを「人々の心とカラダを守る」ケアロボットという使命のもと作りました。
それに相応しい柔らかなフォルムが優しさを感じさせています。

とっても大きいベイマックスがちょこちょこと歩く仕草や

通路を通れないからとカラダを自ら押し潰したりとお茶目だったり

簡単にカラダに穴が空いてしまうことは戦うための存在ではないという理由でしょう。その柔らかい雰囲気としてうまく表現されていました。

この一挙手一投足に至るまで全てが愛らしくユーモラスなベイマックス。大いに癒されます。
あなたも癒されること間違いなしです!!

{netabare}
中盤では大切な人を失うことから アクションストーリーへと移行。未知の敵に向かうため主人公や学友が秘密のヒーローになるのです。

正義とはなんでしょう
復讐心からくる正義は果たして正義なのでしょうか。
その間で葛藤する主人公ヒロ、信頼できる仲間は一緒に悲しみ、ヒロを諭してくれるのです。
{/netabare}
いちばん好きなシーンがあります
ヒロをそっと包み込むベイマックス
背後からやさしく、あたたかくヒロを包みこむ仕草。

画面を通して伝わってくる、わたしの背中もあったかくなるような
ヒロの表情を見ていると
感じているその安心感が伝わってきます...

心にも...愛情、安心、やすらぎが直に伝わる行為、包み込む「ぎゅう」

包んて欲しいときも
包んであげたくなるときも
心と心が伝わる大切なスキンシップ
ベイマックスがヒロを包み込むシーンに胸がぎゅうってなりました....

この作品すごくまっすぐなストーリーで、かけがえのない仲間との絆を描きます。
中盤からアクション作品かと思いましたがやはり「心」に重きを置いています。
とても素敵な作品、とても心があたたかくなりました。

AIさんが歌うエンディングテーマ Story (英語版)ソウルフルな歌声にぐっときます!ベイマックスがしてくれたような包容の力を感じます。その声に胸があつくなりました。

キミがくれた希望で 強くなれたもう怖くない...
今はキミを近くに 感じるから...

投稿 : 2024/04/20
♥ : 53

みかみ(みみかき) さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

工学部のアホGeekどもを愛する人々は全員みるべき

「おまえの対人感情把握能力は、ベイマックス以下なので、ベイマックスを見習うように」と言われました。

ほんとうに、すみませんでした。頑張りたいと思います。


*1.工学部萌え


まあ、それはさておき、
某工学部出身の知り合いが「けっこうマジ泣きした」と言ってたけれど、おれはおまえのことを想像しながら、ちょっとうるっとキタぜ?と言ってやりたくなりますた。(わたしは工学部出身ではありません)

工学部出身の尊敬できる友人たちの居場所が『ベイマックス』ではとてもキラキラと描かれていて、ただ、そのことだけで、泣ける。これだけ、工学部の世界をキラキラと描いたコンテンツってほかにないんじゃなかろうかとーーあるかもしれないけど――ないんじゃないだろうか、と言いたくなる何かだろうと、これは。

たとえば、最初のシーンで天才児であるヒロが画期的な発明を披露するシーン。あれ、実際にはあんなことどう考えても短期間ではむりだとは思うけど、ああいった発明が実際に短期間で可能であるかどうか、ということは別問題として、「工学部」に生きるGeekな人々の人生の喜びの見出し方というのを、ぐぐっとわかりやすく、かっこよく描くならばまさしくああいうものになるだろうと思う。
 
人々をあっと驚かせるようなものを作り上げて、それをプレゼンテーションしてみせること。
研究室のなかで好き勝手に素っ頓狂な発明品をつくりながら、みんなで心地よい変人Geekの巣窟で熱心に日々を費やすこと。
そういうことが、ただただ、ひたすらに、たのしく、麗しい日々で、そういうものを、すばらしい風景として描いてくれているという、ただそれだけで、このアニメは、全世界の工学部出身者および、工学部の人たちを愛おしく思う人々にとってすばらしいアニメだと言って良いものになっていると感じました。


*2.PC


あと、これもすでに言われていることだけれども、工学部の男女比率や人種比率もきちんと配慮されていて、「さすがディズニーだな(笑)」と。その政治的配慮の行き届き具合に、おもわず皮肉めいた笑いをこらえられなくなるのですが、皮肉めいた笑いをする一方で、皮肉めいた笑いだけではすまないものでもあります。
 あまりにもベタなこの政治的配慮は、日本では十分になされていないことなので、これはこれで、やはりとてもとても重要で、きちんとしていて、改めて真顔で「すばらしい」といいたくなる気持ちもやってきます。
 日本の工学部連中の愛すべきアホGeekどもは、たいがいにおいて愛すべきアホGeekなんだけれども、ジェンダー配慮の文脈だと、ごく素朴に悪い意味で「このアホが!」と叱ってやりたくなることも多いもので、こういうところは、ベタに見習ってほしいよね。まあ、去年の人工知能学会の表紙のネタでうんざりしてるかもしれないけど >工学部の男性各位
 工学部の人々は、けっこうベタにフェミ系のまともなもの読むといいよ、ほんと、とか思いますよね、しみじみ。


*3.サンフランシスコと日本


 サンフランシスコが美しく描かれているのもけっこううるっときましたわ。現実のサンフランシスコはあそこまで美しくないけれども、個人的にサンフランシスコは良い思い出のおおい街なので。
 しかも、主人公は日系人ですからね。


*4.話の構成、見せ方、演出エトセトラ

 
 いうことなし。すばらしいのではないでしょうか。機械の波の表現とか、いや、まあ、ほんとすごいとおもうよ。


*5.ということで、けっこう、わたしにドンピシャ

 全体的に、すごい自分にむけてドンピシャな作品だという感じでした。けっこうマジでうるっときてしまいましたわ。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 15

けみかけ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

『BIG HERO 6』の映画化・・・でも日本のアニヲタ的には微妙な心境かも?

『X-MEN』のスピンオフ作品である『BIG HERO 6』の3DCG映画化作品です
つまりディズニー作品にしては珍しくれっきとした原作があります
ただし肝心の「ベイマックス」の設定やデザインを含め、キャラの名前だけ拝借したほぼオリジナルストーリー
そもそも『BIG HERO 6』そのものがアメコミの中でも弩マイナーな為、向こうのファンですら忘れかけてた一本ですね
2D吹き替え、または3D吹き替え、一部劇場のみ字幕版もあり


アジアとアメリカ西海岸をごちゃ混ぜにした架空の未来都市、サンフランソーキョーが舞台
13歳にして高校を卒業した天才少年ヒロ・ハマダは有り余る才能を持て余し、非合法なロボットバトルに夢中でした
そんなヒロを見かねた彼の唯一の肉親、兄のタダシはヒロを大学の科学教室へと誘います
科学ヲタクの仲間達やロボット工学の権威である教授に触発され、進学を決意するヒロ
そして世紀の大発明「マイクロボット」を発表するがその矢先に大学で大火事が発生、取り残された教授と教授を助けようとしたタダシが帰らぬ人となってしまいます
兄を失った悲しみに傷心しているヒロの前に、タダシの形見で人の治療を専門とするケアロボット「ベイマックス」が現れます・・・


まずビニール風船で出来た「思わず抱きしめたくなる」ベイマックスのデザインが良いですねb
原作は普通にスーパーロボットですが、ケアロボットという新設定の元に起こされたポッコリ感、工業デザインとしてとても秀逸です


お話の前半、ヒロとタダシの微笑ましい関係からタダシの残酷な死までを描く部分が家族モノ、青春サクセスモノとして大変素晴らしいです
あと超脇役ですけど兄弟の育ての親であるキャス叔母さん、個人的にすごく好きですb


さて、日本版予告やCMなどでは仕切りに「優しさで世界を救えるか?」というキャッチコピーと共に感動作品、癒しの物語であることが強調されたプロモーションをしていました
ところが本国の予告や実際の本編はあくまでコメディタッチのヒーローアクションなんですよね


非戦闘ロボットであるベイマックスは戦えない、戦えないけどヒーローになる
これは本作のクライマックスに関わる大きなテーマなんですが、日本版のプロモーションだと“戦わずして世界を救う”みたいな印象を受けます
でも本編の内容は「力の使い方を間違えてはいけない」とか、「大きな力には大きな責任が伴うべき」とかを伝えんとしてきている
結果的に世界を救うために“武力の必要枠”があることを肯定しています
これは科学の発展と軍事を切り離せないアメリカ臭さが抜けない感じで、少し意見が分かれそうなところですね;
そして日本版予告に関しては流石にちょっと予告詐欺と言っていいレベル
個人的にはちょっと残念でした


じゃあアメコミヒーローとしてなら純粋に楽しめるのか!?って部分にも実は疑問がありまして・・・
ぶっちゃけるとこれって様するに『HEROMAN』なんですよ
そう、2010年にスタン・リーが原作、日本のボンズが制作したアニメです
すごくヲタク向けな内容なのに、いざガチヲタが観ると「HEROMANの焼き直しかよェ・・・」ってなる


お涙頂戴モノを期待してるとちょっと違う
ヒーローアクションを期待しててもちょっと違う
どこもかしこも中途半端
だからこそ誰もが楽しめる一作なのかもしれませんが、良い意味でも悪い意味でも“凄く軟派な映画”だと思います


上記した前半部分の感動の他に面白かった部分と言えば、クライマックスの救出シークエンスが『インターステラー』と偶然にも被ってるってとこ
あと科学ヲタク仲間の一人、フレッドの父親に関してですかね
まさかの“ご本人”登場かよって吹き出しましたw


ネタ的な意味では『アナ雪』以上に語り甲斐のある作品でしたよ

投稿 : 2024/04/20
♥ : 18

58.8 6 大学で熱いなアニメランキング6位
東京アンダーグラウンド(TVアニメ動画)

2002年春アニメ
★★★★☆ 3.2 (85)
562人が棚に入れました
『東京アンダーグラウンド』(とうきょうアンダーグラウンド)は、有楽彰展による月刊少年ガンガン連載の漫画作品。
【ストーリー】
無敵のケンカ王と呼ばれる高校生、浅葱留美奈(あさぎるみな)はある日、「公司(カンパニー)」と呼ばれる地下社会から脱走し地上にやってきた二人の少女、「生命の巫女」であるルリ・サラサと、その護衛役のチェルシー・ローレックと出逢った。
留美奈は公司からルリとチェルシーに向けられる刺客と戦うことになるが、敵に追いつめられ、ルリはまたアンダーグラウンドへと連れ戻されてしまう。留美奈達はルリを救うべく地下に乗り込むが…。

声優・キャラクター
関智一、茂呂田かおる、七緒はるひ、保志総一朗、てらそままさき、三木眞一郎、大谷育江、宗矢樹頼、笹島かほる、牛山茂、野田順子、森久保祥太郎

けみかけ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

つまらなーいヨ^^ ハイパーOP詐欺バトルアニメ

多感な厨二期のオイラが一番ハマってたマンガの一本


ボーイミーツガールな展開から始まる1話で主人公がアッサリ敵に殺されてしまいますが、ヒロインの異能力で蘇生
その反動で風の異能力に目覚めた主人公が敵を撃退するも、その後ヒロインはすぐ地下世界からやってきた新たな敵に連れ去られてしまう
ヒロインを救うべく、地下世界へ旅が始まる・・・
という少年漫画誌にはお約束のローファンタジー&異能力バトルコミック
ぶっちゃけ手から炎とか水とか出すタイプのアレですw


待望のアニメ化、でしたがいざ実際にアニメが始まるとOPはめちゃくちゃ動くのに(現在のナルトの主要スタッフです)本編の方はこの一流スタッフがまるで皆無
作画はほぼ全てが中国スタジオへの外注、作監だけが一人超頑張ってるって感じで萎え萎え


バトルアニメなのに引いた目線の止め絵からアップのカットインで誤魔化す紙芝居状態が酷い;
さらに間延びしたテンポ感
一番最悪なのは作監すらもヤル気の無い回でつ;
とりわけ捻りの効いたお話じゃないことだけは自覚してたので『作画が悪い』のは致命的でした><
(しかしまあ、この監督ってこの頃からしょーもない尺伸ばしが得意だったんですね;)


原作に追いついたと思ったらすぐ終わらせやがったし(実際、原作も似たような終わり方でしたがw)
オイラの厨二熱は急速に冷めていきました;
この作品のあまりの不出来さに
「アニメって沢山の人間が関わり過ぎてるからダメになんだよ・・・漫画家の方が絶対に凄いよ・・・」
っていう『だからみんな死ねばいいのに』状態になり一時期は『アニヲタやめよう・・・』宣言してました^q^
あーオイラってなんて若いwww


キャラは美少女多め
瓶底メガネを取ると実はイケメンが若干1名
声優陣が無駄に豪華だったりと掴みは良かっただけに(ただし厨二のヲタに)騙された感が酷かったですね


そんかわり自分で言うのもナンですがめっちゃ詳しいッすよ!w
DVDも持ってるしw
基本的に京アニが作った回は全部良好回w
で、最強はやっぱり今も昔も変わらずの実力を持つ実原登さんの作監回で、特に22話とか素晴らしいですね!(キリッ
(もちろん、この作品の水準自体が低過ぎるからだがw)


一番好きなキャラはロールパンことシャルマさんでしたねーw
なぜ地下世界の住民で外国人っぽいのに“関西弁を喋るのか”最後まで明かされないままだったしw


とりま2本あるOPだけはカコイイので見てあげてください^^;
あとEDはアンビエントな雰囲気漂う新居昭乃さん、コチラは今も全く色褪せてない名曲ですので音楽ファンは必聴ですぜ ビシッΣd^^

投稿 : 2024/04/20
♥ : 10

coaf さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

僕が大きくなって初めて見たアニメ

小学生の頃に夕方に放送してしたこのアニメを見ていた。
その時はとても楽しく視聴していた。毎週放送が待ち遠しかった覚えがある。
中学生を境に夕方アニメを見なくなってしまった。
大学受験のために宅浪をしていた時、毎日があまりに退屈で何か楽しいことはないか、何か趣味になるようなものはないかと探していた。当時の僕はオタクを軽蔑しているような人間で、自分がオタクになるなどとは露程も思っていなかった。アニメに対してもさしたる興味もなかった。
しかし、当時の僕はその無関心を乗り越えるほどにこの懐かしいアニメを見たいと思ったのだ。おそらく、ストレスで傷ついていた僕は無意識に何も考えずに楽しく生きていた小学生の頃に戻りたいと思ったのだろう。そうして僕はこのアニメを見返すことにした。
一度見始めると止まらなかった。ストーリーが面白かった。当時は萌えがまだ主流ではなかったのだろう。萌え要素はほとんど存在せず、とにかく熱い燃えるバトルアクション物だった。明確なゴールが存在していたので、ストーリーが分かりやすかった。
最後の方は尻切れトンボで残念な感が否めないが、全体としてみれば充分に楽しめる作品だったと言えるだろう。
本作品が契機となって、次に涼宮ハルヒの憂鬱を見始めたことからもわかるように、僕はアニメオタクの道を歩むことになった。それから4年経った今でも僕はアニメを見続けている。アニメに出会えてよかった。最初に見たアニメが東京アンダーグラウンドでよかった。僕に趣味ができた。趣味ができたおかげで人生が楽しくなった。この作品には感謝してもしきれない。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 4

59.1 7 大学で熱いなアニメランキング7位
number24(TVアニメ動画)

2020年冬アニメ
★★★☆☆ 2.9 (46)
135人が棚に入れました
柚木夏紗はラグビー部のエースと期待されて大学に入ったが、とある事情からラグビーができなくなってしまう。ラグビーを辞めた先輩・上丘伊吹。夏紗を疎ましく思う後輩・都留靖也と、反対に夏紗に憧れ追いかけてきた後輩・真白優。幼馴染みの親友・真行寺清一郎。かつてのチームメイトと関西大学ラグビーのリーグ戦を戦っていくオリジナルラグビーアニメ!

声優・キャラクター
河西健吾、鈴木崚汰、柳田淳一、小松昌平、村瀬歩、田所陽向、立花慎之介、古川慎、興津和幸、児玉卓也、天﨑滉平、市川蒼、小野将夢、村島慎之介、九埜りゅうま、谷口淳志、梶原岳人、矢野奨吾、井上雄貴、熊谷健太郎、神原大地、小林正典、石狩勇気、千葉瑞己、葉山雄太、斉藤壮馬、石川界人

徳寿丸 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

大学ラグビーを舞台にヒロイン男子登場(笑)

オリジナル作品?(2020.6)
精悍な男達が体ひとつでぶつかりあうラグビーを舞台にゆるーーーくBL要素を含みつつ展開される青春群像劇(いやそこまでではないな、まぁよくある部活内のごたごた)。個人的にはラグビーボールの回転とかキックの姿とか割とちゃんと形になってるかなぁと。マイナーなラグビーモノのアニメだと「AII OUT」とワンギリした名前も覚えてない高校ラグビーモノ以来かな。
自分はゆり系もダメだしBLなんてちょっとハードル高すぎなんだけどこれはそこまでじゃないです。ほっぺつねるとかやたら手を触るとか、男共の温泉回とかそのまま女子ラグビー部ぐらいの感覚で見てました。いや女子だろ、この人達(笑)。だってかわいいんですよ(爆)。あぁ、一応女子マネいるんですけどね、超空気。そして女の子に間違えられるような子が男共の中に入ってるとか・・・ちょっと怖いんですけど・・・。
割と変な人気でないかな、この作品。


私のツボ:EDの保育園の学芸会のフォトショット・・・あれは可愛すぎる(笑)

投稿 : 2024/04/20
♥ : 5

Dave さんの感想・評価

★★☆☆☆ 1.7

アイドリッシュ・ラグビー

腐女子向けのメンズアイドルもので、何を狂ったかラグビー舞台にしちゃった駄作。絶対ラグビーやったことも見たこともロクにないだろう、という確信を持てます。ラグビー流行ったし、のっかっとく?みたいなノリですかね?同じノリで作られた「トライナイツ」もかなりひどかったけど、本作はもうラグビーさえほとんどやってない感じです。陸サーファーならぬ、ファッションラガーマンって感じですかね。

変にラグビーをで見せようとして来ないので、潔いというべきなのかもしれませんが、それなら何も「ラグビー」という設定も必要なかったんじゃないのかという疑問を禁じえません。

堂紫社大学とか、おいおいおいおい…まんまやん。しかしまた酷い作品に協力しちゃったね。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 4

ジパミィナ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2

結構、まともに仕上がってる 67点

ハマるかというほどの爆発力はありませんが、スポーツ物としてはそれなりには楽しめると思います。

正直、最初は期待していませんでしたが、やり取りは下手な異世界物よりも十分楽しめました。
キャラの名前は2割くらいしか覚えていませんが、特徴の出し方自体は許容範囲かと思います。
キャラの特徴の出し方が悪目立ちしていると、それだけでも視聴継続が厳しくなるので、本作は問題無かったことが良かったですね。

時代に乗っかる形の放送だったので、ルールは何となくはわかりますが、もう少しラグビー初心者向けの描写は欲しいかと思います。

ストーリー展開はもう少し盛り上がりが欲しかったですが、無駄な作品では無いと思います。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 3
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