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「リズと青い鳥(アニメ映画)」

総合得点
85.8
感想・評価
548
棚に入れた
2286
ランキング
215
★★★★★ 4.1 (548)
物語
4.0
作画
4.3
声優
4.0
音楽
4.2
キャラ
4.1

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リズと青い鳥の感想・評価はどうでしたか?

ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

蒼き リミナリティー。

《 あめゆじゅとてきてけんじや 》

あめゆじゅ とてきて けんじや。

『おれはひとりの修羅なのだ。』で有名な宮沢賢治の「春と修羅 心象スケッチ」に載る「永訣の朝」という詩にある一文です。

「あめゆじゅ」は「雨雪」、「とてきて」は「取ってきて」、「けんじや」は「くれませんか」の意味です。
岩手県花巻の方言で、賢治のすぐ下の妹、トシの言葉です。

肺結核を患い床に臥せていたトシが、ついに末期を悟り「雨雪を(口にしたいから庭に降り積もっているのを)取ってきてください。」と兄賢治に頼んだ情景とその気丈。
つとに胸に迫ります。

「あめゆじゅ(雨雪)」は、「霙(みぞれ)」のことです。

霙はわずかな気温差で、雨になったり雪になったりします。
物理学ではこの物性を「二相系」と呼ぶそうです。

みぞれを「あめゆじゅ」と誦するのが奥ゆかしくて、本作のヒロイン鎧塚みぞれにもその印象が重なります。
もう一人のヒロイン傘木希美、そしてふたりの関係においても「二相系」はたいへん似つかわしい言葉のように感じます。

「春と修羅」には「無声慟哭」という詩も載せられています。
これは賢治の造語なのですが、24歳という若さで夭逝したトシの気高さへの "真実" を表わしています。
同時に、本作の "演出" にも通底し、希美とみぞれ、双方の胸奥にも触れ得るものではないでしょうか。

友情とも恋情とも言えぬ境界層。
淡くて激しい疼きの納めどころ。

ふたりの「訣別」を、賢治が亡失した兄妹愛、「永訣と慟哭」から浮き彫りにしてみたい・・・。
そんな気持ちになりました。

(実は、『雲の向こう、約束の場所』でヒロインが朗読するシーンがあります。こちらも象徴的な演出。心が震えます。)


~   ~   ~   ~   ~


「響け!ユーフォニアム」は、原作もアニメもぞっこんな私。

本作は、本流・久美子とは一線を画する「もう一つの奔流」です。

水槽の内側にいると、安寧の心地よさはありますが、それでは自らの "少女性" も生半なままです。

"リズと青い鳥" は、うちからそとへ、大人の世界へと踏み出すための "それぞれの挑戦" なのです。


小鳥の少女とリズの語らいは "心躍る歓び" だけではありません。
そこには "微かな煩い" も見え隠れしているのです。

それでも精一杯、おどけあったり、思わせぶったり・・・。
もっと、もっともっと伝えたい気持ちがあるのは本当のこと。



でも、二人は「訣別」を迎えるのです。

・・・ 美しく、卒業するために。



みぞれが日常にもソリにも行き詰まるのは、「訣別」をどう表現すればいいのかわからないから。
いいえ、むしろソリだと思うからこそ、希美を抱き込んでしまうのでしょう。

心をどれほど近くに寄せようとも、道はやがて逸れていきます。
必ずやって来る気色ばむ瞬間を、みぞれは「あめゆじゅの思い」で伝えられるのでしょうか。

切なさと儚さを織りあわせながら、好きな人の幸せを祈り、遠くからいたわりを示すことを知る少女たちの姿。

すっかり心を奪われている私です。


ダイナミズムにあふれる本流・久美子が湧き起こすカラフルさとは明らかに異なっているのは、ブルーを基調トーンとし、視聴覚を転相させる大胆なカット手法。

希美の "音楽" への渇仰と、みぞれの "友だち" への憧憬の "アンビバランス" が、少女特有の神秘性のうちに強調され、シンボライズ化されているように感じます。

比類なき演出に、心が躍ります。


~   ~   ~   ~   ~


みぞれと希美は "等身大" の奏者として絶妙なバランスで描かれています。

さきに音楽性を求めてきた者と、あとに音楽性で求めようとする者。
いつも交友を広く浅く扱える者と、交情を深く濃く設えたい者。
ともに実力者でありながら、全国を知らない者と、知りえた者。

不思議な気持ちになるのは、溌剌と自信に満ち、音楽性を希求してきたはずの希美が、自らのそれに拘らなかったことです。

物語としては、いわゆる "技術面での限界" という部活あるあるで理解できないわけではありません。
でも、私には少し引っかかっているエピソードなのです。

原作を読むと気づくのですが、この自己承認欲求への処し方は、久石奏のそれと対比になっています。

希美のポジションは奏のそれに近く、集団のなかでの振る舞いに長けています。
希美にはみぞれが対置されており、奏には久美子になるのでしょう。
そして久美子には、あすか、優子、麗奈ら、錚々たるラインナップが揃っています。

希美と奏の内面性の近似点をよく見ると、みぞれと久美子の感化力の違いがありやかに浮き出してくる・・・そう感じるのです。

本作では、奏はもちろん、久美子ですら脇役です。

とは言っても、本作、原作ともに、まるっきり接点のない希美と奏の間に立っている久美子のポジションは、『響け!』シリーズならではの「ユーフォっぽさ」が十二分に味わえるシチュエーションだとは言えないでしょうか。

スピンオフ作品でありながら、青春群像を動かしている久美子の魅力がここにも活きています。

ファンには垂涎ともなる舞台装置。
なんとも心にくい脚本です。


~   ~   ~   ~   ~    


物語は「全国へ」と目的を一にする尊さに寄せようとします。
ですが同時に、訣別をふたりの時間に含ませるのです。

「さよならなんて言いたくない。言ってほしくない!」
久美子が自身に、あすか先輩に絞り出した惜別の響き。
それは久美子にとっても欠かせないエピソードでした。

別れは遠くにあるようでも、必ずやって来る最後の情動です。
その慟哭の深さは、懸けてきた時間と熱量とに比例するのかもしれません。
青春の美しさは、日々の繰り返しの一瞬に紡がれる短命。
久美子のそれは、今もなお、胸にするどく迫り来るのです。

かつてのあすか先輩との系譜は、2年生になった久美子を経て、次回作 "波乱の第二楽章(誓いのフィナーレ)" に昇華されるのでしょう。
悲願の全国出場に向けて、どのように描かれるのか興味は尽きません。


そんな思いに耽りながら、「二相系」という修辞をつけて本作を鑑賞しなおしてみよう。
そんなふうに思いました。


~    ~    ~    ~    ~


「二相系」は、みぞれの覚醒はもちろん、希美の驚嘆(驚愕と落胆)にも見受けられます。

ところが、二人にフォーカスするほどに、モブでいるメンバーたちの顔がクローズアップされるように思えるのは、私だけなのでしょうか。

ここにも山田尚子監督ならではの「ヒミツの二相系」が演出されているように思えてなりません。


静謐な空間のうちに自らを叱咤奮闘させ、北宇治マインドを熟成昇華させていく奏者・部員たちの目線の先には、全国があります。

"リズと青い鳥" を希美とみぞれに託し、新しいレジェンドを全員で創り出してほしい。
そう願わずにはいられません。


~    ~    ~    ~    ~


心象スケッチは、せわしなく二転三転する白日夢のようです。

みぞれの「ブルー」は、水のうちからそとへとみじんに散らばり、収束し、一つの確信を得ます。


空の高みへ舞い上がったときの躊躇いと驚きは別の次元に。

水槽ガラスに映り込んだ思い做しの呪縛に気づいたときの素心に。

前後を歩んだ朋友との未来にも、爽気をアンブシュアできるカデンツァに。


感じたままのイメージをリードに吹き込めば、思い描いたストーリーが瞬時に、麗しい感性で彩られます。




誰をも震撼させたオーボエの音色。




ついに、心服から初立つ一歩を踏み出していく礼砲なのです。


~   ~   ~   ~   ~


人間はいつまでも未完成であるがゆえに、煩悩はときとして修羅と化します。

阿修羅像の示す三面六臂は「幼少期、少年期、青年期」を表わすという「揺れ惑う三相系」。

表情に醸しだされるのは、慟哭に耐える苦悶と無音無声の伸吟です。


部活動における音楽性へのアプローチは人さまざまなもの。

たとえそれが自分の中では正しいものだとしても、それにとらわれ狭い心しか持てなくなることは良くないという仏道の教えがここにはあります。

阿修羅像の姿は、まさに人間の持つ紙一重の改心のさまです。

みぞれはみぞれの道に、希美は希美の道に、その意志と熱量を示していくのでしょう。

きっと様々な困難を乗り越えて、その人生を輝くものに創造していくことでしょう。


~    ~    ~    ~    ~




{netabare} 《 bluesy 》


二人のステップは成熟へのプレリュード。

追従と放縦が絡み合う。


それぞれのマインドは未だ憂愁の翳(かげり)。

謦咳と緘黙が交錯する。


お互いの矜恃を懸けたソロとソリが、今、始まる。



無垢な交歓はやさしげな戯れ。

懊悩する逡巡は囚われのケージ。



独り善がりなのは偏愛なの?

勝手気ままなのは放漫なの?



蒼きリミナリティー。

未熟なる道化師たちです。




《 blue tone 》


希美の音調は、明るいアニマート。

みぞれへの負い目をいくらも感じていないから?


みぞれの音高は、平坦なビブラート。

希美への引け目をどこかに抱え込んでいるから?



ふたりの音歩は、まだ少しぎごちない。

それがなぜだか、今はまだ分からない。



心は、鈍色(にびいろ)の曇天。

みぞれも、あめゆじゅのまま。




《 Be quiet 》 


2人だけの talkative.

戸惑いは隠せない。



フルートは明朗闊達。
  (リズからは離れたくないのに)

オーボエは頑迷固陋。
  (青い鳥を解放してあげたいのに)



中学3年生の府大会銀賞。

そこで時間は止まってしまったの?
 
それとも進んでしまっているの?



いったん交わした約束をどんなことがあっても固く守りたいのは、希美の責任感。

トラウマから抜け出しコンクールに喜びを見いだせたのは、みぞれの努力の証。

二人の五線譜には 𝄐(フェルマータ)が、不安げに浮き出している。



あるべき姿も、行くべき道も、二人の talkative.

どちらの頭上にも、蒼い空は広がっている。




《 blue note 》


flute に似つかわしいのは小鳥のさえずり?

oboe にふさわしいのはリズの呼びかけ?

いくどとなく懸けあわされる親近の呼応。



flat に見えていても、かすかに♭が聴こえていた。

半音ぶんの愁い。

何かのきっかけがあれば巣立てるのに。



まだ blue bird を手放せないみぞれ。

青い鳥こそ、天上へと羽ばたくに相応しい。

オーボエコンチェルトこそ、みぞれに相応しい。




《 blue hole 》


青春の移ろいは、深い痕を遺す。

修羅に身を任せれば、不安と背信が顔を覗かせる。



それは罪? 

それとも罰?



命がけの気丈が、希美にも待っている。




《 blue sky 》  


2つのベクトルを交錯させ、歩調を独立させる。

5年越しの going my way.

4つの瞳で見感 (みめ) でて、心で見合(みまぐあ)う。

6年間の矜持を分かち合うためのファイナルステージ。

北宇治の3年生たちは、ようやく一つ、大人になる。



蒼空を、それぞれに翔けていこう。

noiseは、残るのかもしれない。

それでも気持ちを、もう半音上げていこう。

きっと新しい わたしの青い鳥を見つけだせるはずだ。




さよなら。


さよなら、私の青い鳥 ―




~   ~   ~   ~   ~

{netabare}
レヴューを書こうと思い立ったときに、とある本に目が留まりました。

「宮沢賢治の真実 修羅を生きた詩人」、今野勉著、新潮文庫(令和2年4月刊)です。

すぐにネットで注文して、届いたページをパラパラとめくっていると、22ページ目に ≪猥れて嘲笑めるはた寒き≫ という一文が飛び込んできました。

どう読むのだろう? どんな意味合いがあるのだろう? どんな背景を持っているのだろう?

そんな疑問を頼りにして、500ページを1週間ほどかけてじっくり読み込んでみました。



巻末の解説を首藤淳哉氏がされています。
その末語をこう締められておられます。

「繰り返そう。この本を手にしたあなたは、幸運である。」



心から、そう思いました。



賢治をこよなく愛するあなたに、この本を捧げます、ね。

{/netabare}
{/netabare}

投稿 : 2020/09/13
閲覧 : 411
サンキュー:

31

ネタバレ

シン☆ジ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 3.5 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

じわり響く。。情緒あふれる少女達の青春と映像美

おおお・・
のっけから圧倒される、水彩画のごとき美しい光景。

綺麗だし色使いもタッチも印象的。

まるで夢の中でその世界にいるような、淡いような臨場感。

スピンオフである事は心得ていたので、この作品に対しては、予測も要望もなくフラットな気持ちで視聴を始めましたが。。

人物や展開にちょっとだけ戸惑いました^^;
公式のあらすじくらいは見ておくと、より楽しめるかも。

<ヒロイン>
 鎧塚みぞれ     オーボエ担当 高校3年生
 傘木希美(のぞみ) フルート担当 高校3年生

<公式のあらすじ抜粋>(一応しまっておきます)
 ~{netabare}希美と過ごす毎日が幸せなみぞれは、
 いつか希美が自分の前から
 消えてしまうのでは・・
 という不安を拭えずにいた。

 高校最後のコンクール。
 演奏するのは「リズと青い鳥」。
 童話をもとに作られたこの曲には、
 オーボエとフルートが掛け合うソロがあった。
 どこか噛み合わない歯車は、
 噛み合う一瞬を求め、
 まわり続ける。{/netabare}~

京アニ作品らしく、人が歩く姿にちゃんと重心の移動があり重力を感じる。

些細なことかも知れないけど、
アニメーション化するには労力を伴うだろうけど、
そういった些細な表現の積み重ねが、
キャラが息をして実際に存在するような感覚に至らせ、その世界に入り込んで物語を感じる手助けになる。。

さすが・・山田監督。

~{netabare}
振り返る瞬間をスカートのひるがえる様で表現したり、背景ぼかしての顔のアップだったり、
クラナドや聲の形で見せた演出がじんわり染みますw

なんと、リズと青い服の少女は一人二役。
cvは、本田望結(みゆ)さん。
スケート選手でもある女優さんですね。

みぞれはかなり控えめな少女。
も少しハッキリ考えを話しなよ、と言いたくもなるけど、そんな少女だからこそ、ここぞという時に自分の想いをぶつける時は、心に響く。

のぞみは快活だけどよく気がつく優しい少女。
一度退部するがまた再入部する。
しかも、みぞれに何の相談もなしに。

事象だけ追うと、そこに憤りを感じるかも知れません。
でも、親友なのに、なぜ相談しなかったのか?
それを考えると、腹落ちするかと。。
つまり、上手すぎるみぞれとの差を感じたからに他ならないかと。。

そんなのぞみでも、みぞれにとっては自分を音楽の道に導いてくれ引っ張ってくれる憧れの存在。
ひょっとしたら恋愛に近い感情にまでなっているようなそぶりもあるけど、きっとみぞれ自身はそこに気づいていないのかな。。

のぞみは、言いたいことをぶちまけ合った時には、そこに気付いたような気もするけど、どこまで受け入れるつもりなのかはわからない。。けど、一緒に歩く事を決心。

祭りイベントをぶった切り、プールイベントも写真1枚でぶった切りましたね。。
この辺で、こちらも通常目線をぶった切り、そのつもりで鑑賞しましたw

大会本番シーンがなかったのはちょっと残念だけど、黄前ちゃんや、麗奈なども、少ないながら物語に絡んだ形で出てくれて、嬉しかったです。

でも・・
エンディング直前、のぞみはどんな顔をして何を伝えようと振り返ったんでしょうね?
自分は・・
キスしようとするマネをしたのかな?って思いますがw
もしそうだとすると、全てを受け入れるよ、というメッセージに思えて、とてもハッピーな終わり方じゃありませんか(^_^
{/netabare}~

吹部の二人、劇中作の二人、情緒豊かな少女の青春を十分堪能させていただきました。

劇中曲の「リズと青い鳥(Liz and the Blue Bird)」は本作用に作曲されたらしいですね。楽器の特徴を活かした良い曲だと思います。

ところで、EDの作詞に山田尚子さんのお名前が・・
気のせいじゃないですよねw

「けいおん!」をあの内容で産み出してくれた山田監督には、もう存在してくれているだけで、感謝しかありません。。

 公 開:2018年4月
 初視聴:2020年9月 dアニメストア

劇中作の絵本の世界をショートアニメでもいいから観たいような気がしました。

投稿 : 2020/09/13
閲覧 : 383
サンキュー:

38

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 2.5 作画 : 5.0 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 2.0 状態:観終わった

わかりやすい百合映画

原作未読です。

みぞれ・希美というキャラクターを好きになれるかどうかで評価が変わってくる気がします。私は残念ながら好きにはなれなかった…。

物語は最初から最後まで百合です。百合アニメは私は特には好みませんが、好きな方には刺さるのではないでしょうか。

投稿 : 2020/09/05
閲覧 : 147

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

みぞ先輩の愛が重すぎ

南中カルテットののぞみぞ先輩が中心で、作画が一新されており、内容も賛否両論がありましたが、自分は楽しめました。この2人は友人ではあるけど、のぞ先輩はまだ遠慮しているし、みぞ先輩はあまりにものぞ先輩しか見えていない。そんな関係に少し作品の重さを感じました。ユーフォシリーズの番外編として見ていますがどうでしょう?

投稿 : 2020/08/25
閲覧 : 121

buon さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

依存症と友情と実力差と

この関係なら悪くない。

テレビ放送された響け!ユーフォニアムは2まで2周はしました。
感想が上手く書けないままにしているのですが、こちらは書けそう。

まず、みぞれとのぞみの関係が大っ嫌いでした。
男×女、男×男だったらすかさず北斗百裂拳をかましていたでしょう、男に。


さて、本編はコンクール目指す途中でしょうか。
主人公にみぞれとのぞみが抜擢、
なつきとゆーこの方が断然好きなので、そっちの方が良かった(笑)
もっと言えば、なつき・ゆーこ・みぞれなら、どの関係も好き。

と、思いきや、これはみぞれが主人公かな。

彼女は自己主張の少ない子なので、
何かしらブレイクスルーが必要だった。

二人が好きじゃなくても、
ちょっとした成長物語、人間物語としてなかなか面白かった。

改めて確信した、くみことれいなの関係は最高だ!

投稿 : 2020/08/23
閲覧 : 180
サンキュー:

11

ネタバレ

えいおー さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

繊細!本当に繊細としか言えない!

ユーフォニアムは全部試聴済みです。自分の個人的な意見になります。

作画は京アニなので文句無しに良いです!キャラデザはもしかしたら好みが分かれるかもですが、、、違ってたらごめんなさいですがユーフォニアムとキャラデザが違うように感じました。

最初キャラデザに違和感を感じたのですが、キャラクターがヌルヌル動く!さすが京アニ!作品のコンセプトに合わせてあえて変えたのかなと感じました。

そしてタイトル通りなのですが、本当に繊細な作品です。

1、ストーリーが繊細
2、キャラクターの心情が繊細
3、上記の2つの繊細が登場人物の表情に見事表現されています→作画が繊細!

高校生の微妙な人間関係や成長する事での心の変化がキャラクターの表情に見事描かれているように感じました!

はっきり言うと他の音楽をテーマにした作品と比べ、物語の中の起伏は少ない作品です。しかし、その少ない起伏の中で起きている細かい出来事が本当に丁寧に描かれているのです!

いや、、、何を言っているのでしょうか、、、語彙力無くてすみません

こればっかりは見て下さいとしか言えなくてw

ここからはネタバレるので注意です。キャラクターの解釈は自分が勝手に感じた内容なので違ってたらごめんなさい。

{netabare}

ストーリーとしては、TVシリーズ後の、ミゾレとノゾミの物語。

二人は親友で、ミゾレはノゾミにいつもくっついているような大人しい女の子。

逆にノゾミは社交的でアクティブな女の子。無意識だと思うのですがミゾレには自分が必要と感じている。

そんな二人がリズと青い鳥という曲の大事なパートを演奏することになります。

二人は演奏しますが先生の納得いくものにはなりません。

後ほどわかるのですがミゾレは無意識にノゾミのレベルに合わせて演奏していたのです。
ミゾレにとってはノゾミと一緒が良いという気持ち、でも本当はすごい実力を持っている。

ノゾミにとってミゾレはいつも自分にくっついてくる、自分が助けてあげないといけないと思っていた親友。

でも本当は違っていた、いつの間にか自分より先に行ってしまっていた親友。

このような感じの複雑な人間関係が本当に見事に表現されていました。こんな複雑で繊細な感情や、キャラクターの微妙な表情の変化をアニメーションで表現できるのは京アニだからだと感じます。
{/netabare}

ぜひ一度見てみる価値のある作品だと感じました。

ちなみに響け!ユーフォニアムのスピンオフ作品なので見てないとわからないので注意ですw

投稿 : 2020/08/21
閲覧 : 161
サンキュー:

10

ネタバレ

褐色の猪 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

TVアニメ「響け!ユーフォニアム」サイドストーリー

2018.04.18----------
試写会に参じました。

内容には触れませんが特に大きな問題はないので楽しめると思います。

ただキャラ設定や背景など説明は全くありませんのでTV版の1期2期を観てないと(?_?)になるかと思います。
また作画で好みが分かれるかもしれません。

内容、作画とも私の予想の上を行って喜悦、
今迄観た京アニ作品の中でも評価は高い方に入ります(^ω^)

唯、挿入曲はもちろん素晴らしく良かったのですが
エンドロールはもう少し頑張って欲しかった。
余韻を楽しむ感じの曲じゃなかったのはちょっと残念。

投稿 : 2020/08/15
閲覧 : 399
サンキュー:

46

ネタバレ

scandalsho さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

ムムッ!出たな、怪人シロ眼鏡!

原作は未読だけど、TVアニメ版は第1期、第2期とも視聴済み。

何やかんやで映画館には見に行けなかったけど、BDを購入して、ようやく視聴できました。
そして、比喩と対比に秀でた演出を少しも見逃したくなくて、何度も何度も視聴しています。

チョット熱めのレビューになりそうだったので、タイトル”だけ”は遊んでみました(笑)。
本当は《比喩と対比に秀でた作品》とかにしようとも思ったんですけどね。

『響け!ユーフォニアム』の劇場版第3弾。
ただし、完全新作としては初めての作品となります。
(劇場版の第1作と第2作は、総集編みたいな作品でしたからね)

【今作の主役は・・・】
{netabare}TVアニメ版で描かれた北宇治高校吹奏楽部には、3人のエースがいました。
ユーフォ担当のあすかとトランペット担当の麗奈、そしてオーボエ担当のみぞれ。
全国大会出場を果たしたのも、この3人の力によるものと言っても過言ではないと思います。
強気なエースのあすかと麗奈とは対照的に、無口でおとなしいみぞれが今作の主人公です。{/netabare}

【驚くほど男性が登場しない作品】
{netabare}男女共学なのに、男性部員もいるのに、ほとんど男性を見かけない、不思議な作品。
滝先生と橋本先生、担任の先生以外、男性の声を聞くことも無い、不思議な作品。
(恐らく)男性なんて眼中にない、『みぞれ目線で描かれている作品』であることがうかがえます。{/netabare}

【そして、もう1人の主人公・・・】
{netabare}もう1人の主人公は、南中時代にみぞれを吹奏楽部に誘った、フルート担当の希美。
彼女は、みぞれとは対照的に、明るく人付き合いの良い性格です。

そんな希美が、みぞれにとって『何よりも大事な心の拠り所』というのが本作の重要なポイントになります。{/netabare}

【2人の関係を関係性を、分かりやすく表現した導入部の演出は見事!】
{netabare}本作の冒頭。
一足早く学校に着いたみぞれが、階段に座って希美を待っているシーン。
すぐに靴音が聞こえてきますがみぞれは無反応。
やってきたのは希美ではなく別な生徒。
さらに、その後、別な靴音が聞こえてきます。
大きく目を見開いたみぞれは、靴音の方へ振り返ります。
そこには、さっそうと歩いてくる希美の姿が!

昇降口で下駄箱から上履きを取り出すシーン。
上履きを無造作に足元に放り投げる希美と、対照的にそっと足元に置くみぞれ。
ところが、希美が下駄箱の角を触りながら通り過ぎると、同じところを同じように触りながら通るみぞれ。

廊下を、背筋をピンと伸ばし、手を振りながら跳ねるように歩く希美と、あまり手を振らず静かに歩くみぞれ。
一見、2人の歩くペースは全く違って見えるけど、2人の差はほとんど広がらない。

開始数分の、この冒頭のシーンを見るだけで、みぞれと希美の性格や2人の関係性が、よく分かります。{/netabare}

【まあ、本当は{netabare}絵本の中の{/netabare}シーンから始まるんだけどね(笑)】
{netabare}絵本のような色鮮やかで優しいタッチの絵本の中の世界。
まさか『BDの中身が違う!』とまでは思いませんでしたけどね(笑){/netabare}

【TVアニメ版の1、2年生が進級して、新1年生が入部して・・・】
{netabare}本作において一番大きいのは、オーボエ担当のみぞれに後輩が出来たことでしょうか?
剣崎梨々花。
彼女の人懐っこさと根気強さが、みぞれの成長を促していきます。
本作の序盤から中盤の立役者です。
みぞれと梨々花のオーボエのアンサンブルのシーン以降、物語が大きく動き始めます。{/netabare}

【みぞれにまつわるTVアニメ版の第2期第5話との対比】
{netabare}『(コンクールのことを)たった今、好きになった』
第2期の第5話のエンディング。みぞれが満面の笑みを浮かべながら言った言葉。
しかし、この作品の序盤。みぞれは全く真逆の言葉を呟きます。
『本番なんて、一生、来なくていい』

みぞれにとって、希美に聞いてもらうことを想像しながらする練習こそが至福の時、というせいもあるでしょう。
第2期の第1話で紹介されたように、みぞれはいつも音楽室に一番乗りするほど練習好きです。

しかし、最大の理由は別にあると思います。
『本番の終わり』は『卒部』を意味し、『希美との別れ』を連想させるせい、というのが一番の理由?

今年のコンクールの自由曲の見どころは、オーボエとフルートのソロの掛け合い。
言うまでもなく、担当はみぞれと希美。

ところが、2人のアンサンブルは、滝先生のみならず、周囲からも心配される程、上手くいかない。
一番の原因は、いまいち乗り切らないみぞれと希美の心の中にあるようです。{/netabare}

【希美サイドの物語を大きく動かす、「後輩」と「スカウト」!?】
{netabare}みぞれをプールに誘う希美。
「ねえ、希美。他の娘も誘っていい?」
みぞれの申し出に、希美は『珍しい』って言ったけど、本当は初めてだったのでは?
みぞれに自分以外に大切な人が現れたことに対する、希美の『嫉妬』がうかがえます。
もっとも、希美自身は全く気付いていないようですけど・・・(笑)。
だから希美は、『みぞれが自分によそよそしい』って感じてしまう。
『1年生の時に1回吹奏楽部を辞めたこと』
これは希美にとっても大きなトラウマ。
「これが原因で、みぞれがよそよそしいんだ」と勘違いしてしまう。
本当は、知らず知らずのうちに、自分の方が距離をとっていることに気付かずに。

もう一つの大きな出来事は、新山先生によってもたらされます。
みぞれが新山先生から音大に『スカウト』されます。
初めて聞かされた時、希美が『スカウト』の重みを計り知れなかったは致し方なかったと思います。
だから、みぞれに対して『私も音大に行こうかな?』なんて、軽々しく言ってしまう。

「私、音大受けようと思っていて」
「あら、そう。頑張ってね」
新山先生の、当たり障りのない社交辞令な返事。
みぞれにマンツーマンで指導する新山先生。
それを見つめる希美の心中には、今度は希美にもはっきりと感じられる『嫉妬と羨望』の感情が・・・。{/netabare}

【物語を大きく動かすのは、北宇治高校吹奏楽部のもう1人のエース】
{netabare}この状況を黙って見逃せないのが、新生・北宇治高校吹奏楽部のもう一人のエース、麗奈。
「すみません。実は自由曲のオーボエソロがずっと気になっていて」
「先輩、希美先輩と相性悪くないですか?」
「なんか、先輩の今の音、凄く窮屈そうに聞こえるんです。わざとブレーキ掛けているみたいな」
麗奈ならではの表現で、みぞれに問題点を伝える麗奈。
「でも、私は先輩の本気の音が聞きたいんです」
みぞれの抱える問題点はみぞれ自身で乗り越えるしかない問題点。
麗奈は、自分の希望を伝えることで、それを促そうとする。

麗奈の行動はこれだけでは終わらない。

麗奈は、ユーフォニアムの久美子を誘って、校舎裏でみぞれと希美のソロパートを演奏します。
この演奏をみぞれと希美が聞いていたのは偶然ではないでしょう。
肝心なことを言葉で伝えることが苦手な麗奈ならではの伝達方法。{/netabare}

【誰がリズ?誰が青い鳥?】
{netabare}みぞれと希美。
初めは、2人とも同じことを感じていた。
『みぞれがリズで、希美が青い鳥』
ところが、そうじゃないってことに気付いた2人。
さて、この作品の中で2人が導き出した回答は・・・???

実は、この結論って、作品のなかではキチンと描かれていませんよね。
視聴者に委ねられているというか・・・。

私なりの解釈は・・・、
{netabare}みぞれにとっては、リズも青い鳥も、どちらもみぞれ。
希美にとっては、リズも青い鳥も、どちらも希美。
絵本の中のリズと青い鳥を、どちらも本田望結ちゃんが演じたのは、その象徴なのでは?って。{/netabare}

きっと、色々な解釈があると思うんですよね。
あえて正解を描かない演出って、素敵だと思います。{/netabare}

【圧巻のオーボエソロ】
{netabare}いよいよ、『怪人シロ眼鏡』登場ですね(笑)。
私のような素人が聞いていても感じることの出来る迫力ある演奏。
言うまでもなく、本作の見どころの一つです。

演奏終了後の先生たちや部員の姿からも、圧巻の演奏であったことがうかがえます。

演奏中、思わず涙を零す希美。
これは寂しさからくる涙だったのでしょうか?
これは悔し涙だったのでしょうか?
どちらにしても、周囲の人たちとは違って、ただの感動の涙ではなかったことだけは間違いないと思います。

覚醒したみぞれの演奏を聴いて、初めてみぞれの旅立ちを悟った希美。
自分では辿り着けない表現力を見せたみぞれに抱いた、希美の思い。{/netabare}

【山田尚子監督の真骨頂:随所に散りばめられた比喩と対比】
{netabare}今作も、足を使った感情表現の手法は、完璧でしたね。
それとともに、作品の中の至る所に散りばめられた比喩と対比の表現も完璧。
視聴を繰り返すほどに、新たな発見があるほどです。
このきめ細やかさ、丁寧さは、さすが京アニ、さすが山田尚子監督です。{/netabare}

【らしさを見せた他の登場人物。ただし久美子以外は・・・(笑)】
{netabare}デカリボン優子とポニテ夏紀は、みぞれや希美と同じ3年生で同じ南中出身。
2人とも、良い味を出してましたよね。

北宇治カルテッドの麗奈も強気キャラ全開だったし、葉月とサファイヤも癒しキャラ全開!

だけど、久美子だけは影が薄かったような・・・(笑)。{/netabare}

【キャラデザについて】
{netabare}この作品を見た後でTVアニメ版を見ると、TVアニメ版のキャラデザは少し子供っぽいように感じました。
そう思うと、本作のキャラデザは大人っぽいのかなぁ・・・と。
少女から大人への成長を描く本作では、このキャラデザで良かったと思います。
少なくとも、誰が誰だか分からないようなレベルでは無かったし(笑)。{/netabare}

【最後に】
こうやってレビューを書いた後も、繰り返し視聴が止まりません。
『響け!ユーフォニアム』という作品は、本当に奥深く、中毒性のある作品今後もこの作品から目が離せそうにありませんね!

投稿 : 2020/08/06
閲覧 : 581
サンキュー:

65

ネタバレ

USB_DAC さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

because of love.

★物語
・原作 : 武田 綾乃 ・監督 : 山田 尚子
・脚本 : 吉田 玲子  ・演出 : 石原 立也(他4名)

TVシリーズ「響け!ユーフォニアム2」の続編にあたる原作『波乱の
第二楽章』の前後編を基に制作されたスピンオフ的劇場映画。進級後の
新たなコンクール自由曲に決まった「リズと青い鳥」。その第三楽章で
ある『愛ゆえの決断』のメインパート鎧塚みぞれと傘木希美の二人に焦
点を絞り、美しい童話(オリジナル)の世界と重ねながら、互いの揺れ
る想いや葛藤、そして依存への決別と新たなる旅立ちを描く。

非言語表現に伴う情報量の多さに一瞬戸惑うものの、物語との結び付き
は比較的理解し易く、それ故にひと時も疎かに出来ないほど画面を注視
する必要があり、何気に緊張を強いられる作品。一新したスタッフ編成
を見ても分かる通り、本編とは一線を画した、よりリアルさを追求した
写実的な作風に仕上げられています。


★作画
・作画監督 : 西屋 太志(他8名)
・美術監督 : 篠原 睦雄
・色彩設計 : 石田 奈央美

物語同様この作品は新たな京アニクオリティとスタイルを目指したもの。
単なるリアルな作画というのとはまた違い、効果として描き込む静物や、
誰も居ない空間にまで表現力を生み出すリアリティ。まるで実写映画の
映像を通して伝わってくる様な時間の流れ、生きた空間と言うべきモノ
をこの作品からは感じられます。またキャラデザもシリーズとは違った
リアル志向に振ったデザインで、より作風に見合うものとなっています。


★声優
・鎧塚 みぞれ : 種崎 敦美  ・リズと少女 : 本田 望結
・傘木 希美 : 東山 奈央  ・剣崎 梨々花 : 杉浦 しおり

童話のCVに本田望結さんの起用は上手い下手は別として、メリハリと
いう点に於いては正解だと思います。極普通の少女が童話を読みながら、
双方の役に成り切り演じているという印象です。

また今回新たなキャストとして登場した剣崎梨々花役の杉浦しおりさん。
なかなか味のある印象的な演技をされていました。個人的に今後も注目
していきたい声優さんの一人です。


★音楽
・主題歌 :「Songbirds」 / Homecomings
・ECS :「girls, dance, staircase」/ 牛尾 憲輔(歌:小野 豊)
・音楽 : 牛尾 憲輔、松田 彬人(劇伴協力:洗足学園音楽大学)

演奏シーンとしては、二人がメインパートとなる第三楽章「愛ゆえの決
断」のみ。しかし実際は全楽章で20分(コンクール用は編曲)を優に
超える壮大な世界観を持つ合奏曲。ハープやコントラファゴットなど大
型楽器を用いた編成はかなり本格的で、聴き応えはなかなかのものです。

そして一際耳を惹く「girls, dance, staircase」。
ボーイソプラノの神秘的且つ無垢な歌声と儚さ漂うその歌詞は、とても
印象的な一曲でした。


★キャラ
・キャラクターデザイン : 西屋 太志

シリーズで好評だった所謂アニメ的美少女要素を極力抑え、それでいて
しっかりと個々の特徴を携えたキャラ達。台詞もトーンをやや抑え気味
にして作風に合せた穏やかな雰囲気となっています。また女性らしさを
感じる仕草や癖がふんだんに描かれ、シリーズには無い魅力を持つ作品。
繊細な表情から伝わってくる巧みな心情表現は実に見事です。



[感想]

ゆっくり歩きながらふと立ち止まり、後を振り返っては校門を見つめる。
そして校舎に繋がる階段にゆっくりと腰を下ろし、両足を延ばしながら
溜め息をつくみぞれ。

いきなり冒頭から求められる集中力にやや緊張が走る。

響く鳩の鳴き声とテンポの違う足音。やがて風がそっと木々の葉を揺ら
し始め、それと同時に彼女の心が騒めき出す。聴き慣れたいつもの足音。
そう、大好きなあの人が近づいて来る。教室までの短い道のりをまるで
小鳥の様に踊り歩く希美。そんな彼女をただ見つめながら、必至に歩幅
を合わせその後を追うみぞれ。

明らかに異なる歩くリズム。それは互いに惹かれながらも擦れ違う二人、
これからの波乱の展開を予感させるもの。台詞がほぼ皆無な中での巧み
な演出と音だけで感じさせるこの心情表現に、徒ならぬ気配を感じます。
また授業中の「互いに素」の語りも、共通点を持たないが故になかなか
噛み合わない二人の関係という意味合いを色濃く示している気がします。

まるでガラス細工の様な脆さと儚さ。そんな二人の関係。人見知りせず、
クラスで孤立するみぞれを何となく部に誘った希美。そんな彼女が突如
開花し奏でる至高の音色につい涙してしまう。そのあまりに残酷で重い、
胸に深々と突き刺さる絶望という名の一矢。凡人が幾ら努力しても絶対
に手にすることは出来ないと言われるたった1%の才能を知ってしまう。
そして「無闇に積み重ねた努力は必ず崩れる」。高みを目指す者の多く
がいつか味わうことになる現実です。しかしその悲しみを乗り越え受け
入れることもまた、自身の成長の為には必要な事なのかも知れません。

そしてラストの「Happy Ice Cream!」

相変わらず演奏以外では全く噛み合わない二人。しかし、みぞれが語る
その台詞は、漸く人との良い意味での競い合いを意識する様になった証
とも受け取れます。完璧では無いにしても、少なくとも以前の依存体質
から無事に抜け出し多少でも自己主張が出来る様になったことは、自身
の才能を開花させたことよりもずっと、彼女の今後の人生に於いて大変
重要な出来事だったはず。そんな気が何となくするのです。

愛ゆえの決断。これからそれぞれの大学生活、そして社会生活を送る上
で、恋であれ何であれ、いつか必ず訪れるだろう至福を感じるその瞬間、
改めて互いの出会いと決別を思い出し、共に送った高校生活に笑みを浮
かべ懐かしむのではないでしょうか。

総勢60数名からなる北宇治吹奏楽部員それぞれにドラマがある。実際
それを描き出したら正直キリがないと思いますが、それに興味を抱ける、
または何となく思い描いてしまうほど充分な説得力を持った作品でした。

本来ならシリーズを観てからの視聴がセオリーでしょうが、逆でもまた
違った楽しみ(本編との比較)が味わえる作品だと個人的には思います。




以上、拙い感想をお読み頂きありがとうございました。

投稿 : 2020/08/03
閲覧 : 247
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26

ato00 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

心理描写が美しい作品

響け! ユーフォニアムのスピンオフ。
黄前ちゃんたちが2年生だから、もうあれから1年か。
月日が流れるのは早いものです。

2年生はほぼモブ化。
この作品では3年生が主役となります。
中でも、希美とみぞれの関係性が見どころです。

吹奏楽曲「リズと青い鳥」はフルートとオーボエの合奏がメイン。
また、作中には童話「リズと青い鳥」が描かれます。
フルート担当希美とオーボエ担当みぞれ。
どちらがリズでどちらが青い鳥?
そういう観点で眺めると楽しいかもしれません。

対照的なこの二人。
静と動とでも言いましょうか。
そして、心の中に深く潜る演出が美しくも切ない。
ちょっとしたしぐさ。
微妙な表情の変化。
絶妙な会話の間。
そこから感じ取れる心理的機微。
繊細な作品です。

正直、本編のような熱さはありません。
しかし、静かに進行するストーリー。
吹奏楽曲「リズと青い鳥」の豊かな感性。
落ち着いた中にも心に迫る何かがあります。

みぞれの世界を広げてくれた希美。
出会いのあの一瞬のきらめき。
みぞれの中に芽生えた憧れ。
私はそこに共感を覚えました。

投稿 : 2020/08/03
閲覧 : 559
サンキュー:

37

ネタバレ

まつまつ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

ユーフォ本編のスピンオフ作品ではあるが、別作品? とも思わせられる内容

響けユーフォニアムの鎧塚みぞれと傘木希美の関係に焦点を当てたスピンオフ作品。

最初観た瞬間から作画や描写の雰囲気が本編とはかなり異なっており、みぞれがみぞれだと気付かなかった。
リズと青い鳥の話とか、思わずあれ?スタジオジ〇リ作品観てるのかなと思ってしまった。

意図的な部分もあるのだろうが、同じ京アニ作品でも監督が変わるとこうも変わるのかと感じた。(決して悪い意味では無く)

本編の3年が引退して新年度からの話なので、本編を見た方が人間関係とかはより分かると思うが、未視聴でもこれはこれで単独作品として観ても面白いのかな。

でも本編で希美と仲直りして、前向きになり、少し明るくなったはずのみぞれがまた暗いキャラに戻ってしまった。
最後にみぞれが希美に完全に依存していて、自分だけの特別な存在として束縛していたいという気持ちから、好きだからこそ自由に羽ばたかせてあげなくてはいけないという心情に変化していった場面は良かった。

コミュ障で友達のいないみぞれにとって希美は優しくしてくれる唯一の特別な存在であるかもしれないが、友達が多く、社交的な希美にとってのみぞれはただの友達の一人という存在だったのかもしれない。
唯一友達だと思っていた存在が離れて行ってしまうかもしれないという不安感や孤独感というみぞれの気持ちも凄い良く伝わって来た。

でも学生時代毎日過ごした友達も社会に出てバラバラになって、結婚とかしたりするとほとんど会う事が無くなるものなんだよなー。
大人になってからもそうだけど学生時代は周りの目が特に気になって流されてしまいがちだけど、人間関係なんて年齢や環境でどんどん変化していくのだから、人の目を気にせず自分の意志で決めて行かなければ駄目だなと今作を観て思ったりもした。

投稿 : 2020/07/23
閲覧 : 238
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11

ネタバレ

はく さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

良い意味で騙された

 個人的には今までの映画の中でもかなり面白かったと思います。
まずはやはり作画の違いに驚きました。最初、ユーフォニアムの映画だと気づかなかったです。
本編の作画の希美、みぞれも良いですが今回の作画はこの『リズと青い鳥』に合っていて良いなと思いました。私は『リズと青い鳥』に関してはこの作画で正解だったと思います。

言葉で説明するのは難しいのですが
ユーフォニアム本編の方は色が濃くどっしりとしたような作画。
《部活動での熱い青春》《全国大会出場を目指す》みたいなそのようなものが伝わってきます。

『リズと青い鳥』の方は鮮やかな薄い色で淡く切ない作画。
《片想いの恋愛(もうこれは百合の恋愛だよね!)》《『リズと青い鳥』の切ない物語》《希美とみぞれのすれ違い》この辺を訴えるにはすごくしっくりくる作画でした。

部活動を通した全国大会出場を目指す友情の青春と、部活動関係なく抱いていた友情・恋愛の青春、これは全く別のものだと思います。なのでそこの作画の使い分けがとても好きでした。

 この映画には2度騙されました(良い意味で)
1,フルートのエースと言われていて友達も多くて全て上手くいってそうな希美が実は進路が決まっていなかったり、のぞみの足を引っ張ってしまっていたこと。
2.リズがみぞれで青い鳥が希美だと思っていたら実は逆だったこと。
映画を観ていて(そうだったのか!)と思わされました。そこがこの映画の面白さでもありますね。

 よくある描写かなと思うのですが
上手くいっているように見えて→だんだん違和感を出す→実は上手くいっていなかった
という方法。ただ、この作品は少し違ったように感じました。
希美の違和感をじわじわと出していくのですがその違和感も一瞬の表情のみで、しかも回収がなかなか来ないので(あれ、勘違いだったかな?)と思わせられました。
でも確かに違和感はあるしこのまま終わるわけがない、やはり最後の最後で回収されました。
これもやっぱりうまいなあと感じました。上映時間1時間31分をうまくいっぱいに使ってるなと感じました。

 本当に素敵な作品でした。吹奏楽アニメならではの音や、細かい作画の動きなど劇場で観れてよかったです!


私のブログ(http://sonoaniblog.livedoor.biz/archives/25281151.html)より一部抜粋して書きました。(無いと思いますけど同じ内容じゃん!って思われないように一応記載しておきます)

投稿 : 2020/06/25
閲覧 : 217
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8

ふぁんた さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

儚い乙女の愛情と友情のあいだ

非常にまばゆく儚い作品です。

こんな感情を持ちながら日々を過ごすようなことは、
おそらくこの年代にしかないのではないかと思います。

17歳くらいの一番どちらとも言えないーそんな乙女達の心のゆらぎを非常に美しく繊細に表現した作品です。


うーん、この物語を劇場版で発表した京アニには拍手とともに驚きを感じます。

物語はユーフォのサブキャラをメインとして、非常に静かで丁寧に2人の心の動きを「リズと青い鳥」の物語になぞらえながら綴っています。

いわゆる劇場版にあるような派手な笑いあり涙ありではなく、
違う言い方をすれば少し起伏に乏しいお話を非常に繊細で、過剰な演出もなく、
それながら視聴後だいぶ持っていかれるような不思議な作品です。



絵本の場面の少し水彩画っぽい表現、めちゃくちゃ表現が深く、作品の世界観をいくつも重厚にしています。

そしてTV版とは少し違う輪郭線と色彩。
線がとても繊細に表現されており、トーンが少し淡くなっていることとあいまって、
この年頃の危うさというか、一瞬で過ぎてしまう青春の儚さを感じました。


シリーズ通して、尋常ではない背景と作画の美しさ。
構図の大胆さ、キャラの表情の演出、セリフに対する小物の扱い、光の表現など卓越した技量を感じる画面で、派手なストーリーと演出はありませんが、場面場面がかなり挑戦的でありながらも、逸脱し過ぎない絶妙なバランスを保っています。


ストーリーは物語にありがちな御都合主義ではなく、
お互い何かに気づき自分を見つめ直し、どう友と関わっていくか、
自分の未来をどう選択していくか。。。


劇場版としてはとても静かな作品ですが、高校生の難しい心と受験という現実を丁寧に描いている作品です。
友人関係や進路に悩んでる方には、ぜひ見て欲しいアニメです。

大人になるとここまで感情と情熱をぶつけ合わせることができる友人なんて、
新しく作ることは出来ませんからね、、、。



本作のみでも問題なく見れますが、とはいえユーフォ1,2期を視聴していた方がキャラにさらに寄り添えるのでTV版を先に見てからの視聴がオススメです。

投稿 : 2020/05/22
閲覧 : 192
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14

ネタバレ

けいP さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

幸せの青い鳥のアンチテ-ゼ?

この映画を視て思い出したテレビドラマがある。

それは世にも奇妙な物語の確かレギュラー放送でやってた話で、明るくて美人でクラスの人気者だった女の子がいるクラスにその子(以下A子とする)と同姓同名の女の子が転校してきたけど、その子は地味で大人しくドジな感じで(以下B子とする)同じ名前でも全然違うなとクラスメートにからかわれていた。そこでA子はB子に自信つけさせようと自分の彼氏にB子とデートしてやってとお願いしB子とデートさせたが、B子は次の日に別人のようにイメチェンし、どうしたのと聞いたらA子の彼氏にそっちの方が良いと言われたらしい。その後もA子の彼氏とB子のキスシーンを目撃したり、A子は体調を崩してしばらく学校を休んでしまう。
久しぶりに登校したらB子がクラスメートの中心にいてA子の居場所がなくなっていた。どういう事だと問い詰めると、
B子「あなたは親切そうにしてたけど結局あたしの事見下してたんだよ。普通自分の彼氏を他の人とデートさせないでしょ。」

前置きが長くなりましたが。のぞみはみぞれの事を下に見てたんじゃないかな。
「あんたみたいな暗い女に私が負けるはずがない」と心の中にどこかで。
もしかしたら、
「{netabare}あなたを吹奏楽部に誘ったのは私なのに、 {/netabare}なに私より上手くなってるのよ!」
ていう気持ちもあったのかも。

{netabare}でも最後にはみぞれに負けたくない気持ちがあることをのぞみは認めみぞれに伝えた{/netabare}

めでたしめでたし?

2020/5/8
思ったんだけど、リズと青い鳥のお話は
幸せの青い鳥のアンチテ-ゼなのかな?

幸せの青い鳥というのは
幸せの青い鳥を求めて外に出て色々探したけれど
それは家で飼っていた青い鳥の事でした-
てお話。

これはつまり、幸せは今いる場所にある
て事なんだろうけど、
あんたは幸せかもしれないけど、
青い鳥はそれで幸せなのだろうか?
青い鳥は立派な翼があるのだから
自由に羽ばたいた方が幸せなんじゃなかろうか?
という事をリズと青い鳥では
表してるのかな?

青い鳥=才能という解釈もできるかな。
自分の才能を閉じ込めないで解放すれば
始めは不安かもしれないけど
自分の中の青い鳥(幸せ)
の成長した姿(成長した自分)
をまた見つけられる。みたいなね。

諸行無常とも言えるかな。

映画の中でのぞみが
{netabare} 「青い鳥はリズに会いたくなったらまた会いに行けばいいじゃん」 {/netabare} と言っていたけど
吹奏楽部を辞めてまたひょっこり再入部した
のぞみらしい意見ですね。
将来男を振り回しそうw

逆にみぞれは男に振り回されそうw
お気をつけて。

投稿 : 2020/05/08
閲覧 : 460
サンキュー:

35

ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

山田尚子監督が目指していたものをやり切った、実写的表現の到達点

アニメーション制作:京都アニメーション、
監督:山田尚子、脚本:吉田玲子、
作画監督・キャラクターデザイン:西屋太志、
音楽:牛尾憲輔、美術監督:篠原睦雄、
色彩設計:石田奈央美、原作:武田綾乃。

揺れるポニーテール、廊下を歩く足、瞬く瞳。
静かな劇伴が流れるなかのふたりの情景。
絵柄は滲んだブルーを基調とし、透明感のある色彩。
響く足音、キャップを開ける音、楽器を組み立てる音。
様々な生活音を拾い上げていく。
細部まで徹底的なこだわりを感じさせる。
思わず息を詰めて観てしまうような静謐感が作品全体に流れている。

私は冒頭のシーンを観たときに、この感覚はどこかで味わったような気がすると、
鑑賞中にずっと考えていたのだが、
それは岩井俊二監督の『花とアリス』だった。
岩井俊二監督のなかでいちばん好きな作品だが、
それを初めて観たときのような鮮烈な印象を受けた。
眩いばかりの透明感を重視した絵作りだ。

『リズと青い鳥』は『響け!ユーフォニアム』シリーズの続編に位置づけられる。
田中あすかや小笠原晴香たち3年生が引退した後の
春から夏にかけての一部分を切り取った物語。
しかし、シリーズ名がタイトルに入っておらず、
単体で観られることも意識して制作されている。
私は原作を全巻既読で、TVアニメも映画も過去作品は
全て鑑賞済みなので断言はできないが、
初見の人でも十分に楽しめるのではないかと感じた。
人間関係は観ていれば、ほとんど理解できると思うし、
基本的には鎧塚みぞれと傘木希美の関係性についてのストーリーのため、
それほど分かりにくくはないと思う。
ただ、もしかするとみぞれと希美の依存といえる関係性が理解できず、
物語に入り込めない人がいるかもしれないが、
そんな友人同士の繋がりもあると考えてもらうしかない。
これは、いびつな形ですれ違い続ける愛と嫉妬の物語だ。

アニメ的な手法よりも実写的なカメラワークを
意識しているシーンが多く見られる。
足の動きや手の動き、会話の「間」などで、心情を表現している。
また、感情を表すような目元のアップシーンが多い。
アニメではなく、実写ではよく使われる手法だが、
この作品では重視されている。
そして、被写界深度を意識した絵作り、
つまりカメラの焦点とボケを意識している点はシリーズと同様だ。
物語にはそれほど大きな起伏がないため、
好き嫌いが分かれるタイプの作風だが、
映画としての完成度はかなり高い。

{netabare} 特に素晴らしいと感じたのは冒頭のシーン。
何かの始まりを予感させる童話の世界から現代の世界へ。
まだ人があまりいない早い時間の学校に鎧塚みぞれが到着して、
階段に座り、誰かを待っている。自分の足を見る。不安げな瞳。
誰かがやってくる。
視線を向けるが、期待した人ではない。
そして、待ち人がやってくる。いかにも楽しそうで快活な表情、
軽快なテンポの歩様、揺れるポニーテール。
それに合わせて流れる明るいメロディ。
フルートのパートリーダーである傘木希美だ。
鎧塚みぞれは、それとは逆に表情が乏しく、口数も少ない。
彼女なりに喜びを表現して希美と一緒に音楽室へと向かう。
途中で綺麗な青い羽根を拾った希美は、それをみぞれへと渡す。
戸惑いながらも希美からもらったものを嬉しく感じるみぞれ。
この青い羽が、閉じられた世界の始まりを予感させる。

校舎に入り、靴箱から上履きを取り出すときのふたりの対比。
廊下に彼女たちの足音が響くが、その音のテンポは全く合わない。
完全な不協和音。ふたりの関係性が垣間見える。
みぞれは少し距離を置いて、希美の後に付いていく。
階段の途中の死角から希美が顔を覗かせてみぞれを見る。
希美は少し驚いたように、目を何度か少しだけ動かす。
教室に着いて鍵を開け、椅子と譜面台の並んだ誰もいない室内に
2人だけが入っていく。
吹奏楽コンクールの自由曲は、「リズと青い鳥」。
この曲を希美は好きだという。
そして、ふたりで曲を合わせてみるところで、
タイトルが映し出される。

この一連のシーンだけで気持ちを持っていかれるだけのインパクトがある。
とても丁寧で実写的で挑戦的な作風だと感じ、
私は思わず映画館でニヤついてしまった。

物語はみぞれと希美のすれ違いを中心にしながら、
それに劇中曲である「リズと青い鳥」の物語がリンクしていく。
童話のほうの声優にちょっと違和感がある。
ジブリ作品を見ているような感覚だ。
みぞれがリズ、希美が青い鳥の関係性として観客は見ているが、
最後にふたりの立場が逆になる。
みぞれの才能が周りをなぎ倒すようにして解放され、
美しいメロディを奏でる。
同じように音楽に真摯に取り組んでいたみぞれと希美の差が
明らかになる瞬間だ。

二羽の鳥がつかず離れずに飛んでいくシーンが映る。
左右対称となるデカルコマニーの表現。
そして、ふたりの色は青と赤。
心があまり動かずしんとした雰囲気のみぞれが青、
情熱的で人の中心になれる希美が赤だろうか。
このふたつの色が分離せずに混ざり合っていく。

みぞれが水槽に入ったふぐを見つめるシーンが度々出てくる。
おそらくみぞれは、水槽のなかのふぐを羨ましいと思っている。
仲間だけでいられる閉じられた世界。
そこが幸せで、ほかは必要ないと考えている。

この作品は意図してラストシーン以外での
学校外のシーンを排除している。
鳥籠=学校という閉じられた空間を強調しているのだ。
閉じられた学校という世界のなかにあって、
さらに閉じられた水槽内にいるふぐ。
それをみぞれが気に入っているというのは、
みぞれの心情を示している表現だろう。

たくさんある印象的な場面でいちばん好きなのは、
向かいの校舎にいる希美がみぞれに気づいて手を振り、
みぞれも小さく手を振って応えるシーン。
そのとき、希美のフルートが太陽に反射して、
みぞれのセーラー服に光を映す。
それを見てふたりがお互いに笑う。
言葉はないが、優しく穏やかな音楽が流れるなかで、
(サントラに入っている「reflexion, allegretto, you」
という曲で、1分20秒と短いがとても美しい)
何気ない日常の幸せをいとおしく感じさせる。

ラストシーン。歩く足のアップ。
一方は左へ、一方は右へと進んでいく。
希美は一般の大学受験の準備ために図書室で勉強を、
みぞれはいつものように音楽室へと向かう。
帰りに待ち合わせたふたりが歩く。
足音が響く。
ふたりの足音のリズムは、時おり合っているように聞こえる。
お互いに別の道を歩くことを決め、そこでようやく何かが重なり始めたのだ。
ふたりの関係がこれからどうなるかは分からない。
しかし、最後に「dis」の文字を消したところに、
いつまでも関係がつながっていて欲しいという作り手の願いがこめられている。{/netabare}
(2018年4月初投稿・2020年5月5日修正)

大好きのハグから続くラストシーンについて
(2018年5月11日追記・2019年3月15日修正)

{netabare}みぞれは希美の笑い方やリーダーシップなど、
希美自身のことを好きだと告白するが、
それに対して希美は「みぞれのオーボエが好き」だと言い放つ。
このやり取りは一見、ふたりの想いのすれ違いだけを
表現しているように感じるが、実はそれだけではない。

友人として以上に希美のことが大好きなみぞれにとって、
とても厳しく感じる言葉だが、これは希美自身にとってもキツイ言葉。
みぞれの才能を見せつけられて、ショックを受けているときだから尚更だ。
それなのに、敢えて言ったのはなぜか。
この言葉には、自分は音大には行けないが、
みぞれには、音大に行ってオーボエを続けて欲しいという
願いがこめられているのだ。
「みぞれのオーボエが好き」という希美の言葉がみぞれに対して
どれだけ大きな影響を及ぼすのかを希美自身は自覚している。
単に希美が自分の想いを吐露しただけではない。
「みぞれのオーボエが好き」は童話における、
一方的とも思えるリズから青い鳥への
「広い空へと飛び立って欲しい」と言った想いと同じ意味を持っている。

それは、帰り道に希美が「コンクールでみぞれのオーボエを支える」と
言ったことからも分かるし、それに対して、
みぞれが「私もオーボエを続ける」と宣言をしていることからも明らかだ。
しかし、このやりとりはどう考えても違和感がある。
つまり、希美はコンクールの話をしているのに、
みぞれは、コンクール後のことについて語っているからだ。
会話がすれ違っているように聞こえる。
ところが、そうではない。
つまり、ここでは希美が音大に行かず、
フルートを続けなかったとしても、
みぞれは音大に行く決意をしていることを示している。
これは希美の「みぞれのオーボエが好き」に対して
みぞれの出した答えなのだ。

実は原作では、音大を受験するかどうかの話を
みぞれが希美に問い詰めるシーンがあるのだが、
映画では、完全にカットしている。
その代わりに、左右に分かれていく足の方向と
図書館での本の借り出し、楽譜への書き込み、
最後の会話によって表現している。
「みぞれのオーボエが好き」という言葉が
みぞれの背中を押したという、別の意味を持たせているのだ。
そのあとの「ハッピーアイスクリーム」で
ふたりの感覚が足音のリズムとともに、ようやく一致したことを描いている。
また、みぞれが校門を出るときに希美の前を歩いたり、横に並んだりする。
切なさはあるが、やはりこれはハッピーエンドといえるのではないだろうか。

音楽については、フルートが反射する「reflexion, allegretto, you」と
ラストシーンで流れる静かだが心地良いリズム感の「wind,glass,girl」、
そして、字幕の時の「girls.dance,staircase」、
「リズと青い鳥」、Homecomingの「Songbirds」が印象的だ。{/netabare}

コメンタリーを視聴して(2019年2月14日追記)

{netabare}昨年発売された脚本付きBDを購入して、
本編とインタビューは手に入れてすぐに観たのだが、
脚本やコメンタリーは後回しになってしまっていた。
脚本を読んでみると、「リアルな速度の目パチ」など、
とても細かい指示がなされていて驚いた。
目を閉じ切らないまばたきも指示されている。
また、作画については「ガラスの底を覗いたような世界観」という
指南書が配られていたという。
映像では山田尚子監督の意図を確実に実現している。

そしてこの作品には3つの世界観が表現されている。
学校、絵本、そしてみぞれ(希美)の心象風景だ。
絵本は古き良きアニメを再現させるよう
線がとぎれる処理を行っている。
心象風景は、よりイメージ感の強い絵作りを意識したという。
希美が走る水彩画のようなタッチ。
左右対称の滲んだ色の青い鳥など。
これら3つの世界観が上手く活かされていて、
物語に彩りを与えている。

それに加えて、BDで解説を聞かないと気付けないのが、
生物学室のみぞれと希美のシーン。
最初から何段階かに分けて色合いを変化させている。
夕方の時間の経過とともに初めは緑っぽかった室内から
オレンジ系に少しずつ色を変えるのと、
カットごとに順光、逆光でも変化させている。
確かに言われてみて確認すると、
生物学室での色合いはとても繊細だ。

髪を触る仕種については山田尚子監督自らの発案。
曰く、みぞれがそうやりたいと言っていたから。
キャラが監督に下りてきていたそうだ。
また、「ダブル・ルー・リード」も監督のアイデア。
これは映画館で観ていたときから、
洋楽好きな監督が考えたことだろうと予想していたので、
インタビューを観たときは、あまりにもそのままで可笑しかった。
印象に残ったのが、スタッフのいわば暴露話で、
内面を描くよりも映像(ビジュアル)で見せたいと
昔に語っていたことがあったそうだ。
監督は昔の話だと恥ずかしがっていたが、
まさにこの作品はその方向性を貫いたといえるだろう。{/netabare}

投稿 : 2020/05/05
閲覧 : 1702
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122

わしわし男爵 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

雰囲気アニメの最高峰

見終わった後もこの世界に浸っていたい、二人をずっと見守っていたくなるようなそんな映画でした。

とても繊細で美しい作画。まるで絵に吸い込まれそうになるほど透き通ったアニメは初めてです。

キャラの所作、動き、身振り手振り、表情が本当に細かく描かれていて、観る際には全編でまばたき厳禁です。

投稿 : 2020/05/03
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11

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O.Y さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

ユーフォニアムとは違った感覚で楽しめました[84.3点]

「響け!ユーフォニアム」からすると作画がだいぶ変わりましたね。こちらの作画も悪くなかったんですが、自分はアニメの方の作画が大好きでしたかね、特にみぞれはキャラデザもかなり変わって別キャラみたいに感じてしまいました…。

ただ物語の深掘りの仕方は素晴らしかったです。みぞれと希美の2人の関係を「リズと青い鳥」という童話に重ねることによって、より2人の関係を繊細に描いていました。このアニメはレビューによって色々書きたいのでまた再視聴してレビューしますね。これも視聴から間が空いてますので。とりあえず今は見てきた作品を整理するという意味でレビューを簡単に書きまくってます(笑)

投稿 : 2020/05/02
閲覧 : 229
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15

デルタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

この緻密な心理描写は芸術

本作はアニメ「響けユーフォニアム」の1,2期の続編にあたります。劇場版の誓いのフィナーレと本作を合わせて久美子たちの2年生編を描いています。

響けユーフォニアムを知らなくても1本の映画として成立していますが、主要キャラである3年生4人の人となりが分かっていたほうが面白いのでぜひアニメ視聴後に見て頂きたいです。

誓いのフィナーレではほぼ原作どおり、また絵のタッチもアニメ版と同様に描かれるのに対して、本作は絵のタッチを大幅に変更し、監督にも山田尚子監督が起用されています。原作小説と大まかなストーリー展開は同様ですが、久美子視点ではなく俯瞰したところから物語を眺めるような形になっています。

本作の魅力はなんと言っても繊細な心理描写です。京アニの絵にのせて描かれる登場人物たちの心の動きはこれでもか!というほどみずみずしくそしてリアリティを持って表現されています。

山田尚子監督の卓越した心理描写、京アニが作る絵は日本が誇る芸術作品です。どうかたくさんの人にリズと青い鳥を見ていただきたいです。


以下は完全な余談ですが、本作のBlu-rayにはキャスト陣、製作陣によるオーディオコメンタリーが計3本(キャスト陣1本,スタッフ陣2本)収録されています。昨今のアニメのオーディオコメンタリーは、キャスト陣が面白おかしく喋って終わりという形式のものも多々ありますが、本作のコメンタリーはそういったものとは異なり、どちらも本作の細かい1つ1つ演出や演技に対しての意図などを教えてくれるものになっています。それを聞いてからもう一度本作を見ると初回とはまた違った印象を受けました。本作の芸術作品として新たな楽しみ方を教えてくれた非常にいいコメンタリーだったので、リズと青い鳥をさらに知りたいという方は購入を検討してみてください。

投稿 : 2020/04/05
閲覧 : 315
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18

ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

続編で、スピンオフで、1本の独立作品でもある

 原作は未読。
 テレビシリーズの「響け! ユーフォニアム」(以後、ユーフォと表記)の続編でありつつ、ユーフォ
2期でクローズアップされた鎧塚 みぞれと傘木 希美を中心に据えたスピンオフ的な側面も持つ
作品。
 ただ、まったくユーフォを知らずに観ても、ある吹奏楽部の二人の少女の話というだけで、
問題なく鑑賞できそうな内容にもなっている。

 ユーフォ2期前半で希美の復帰に際して、みぞれとの感情の行き違いが解消されて一つの解決を
見たが、後半で随所にみぞれの希美に対する依存度の強さが描かれており、みぞれの心の有り様と
いう根本的な解決はされていない印象があった。
 本作ではそれが露見してきた感じで、それを克服していくみぞれの一人立ちの物語といった感じ。
 この二人の心情や立ち位置を作中劇である「リズと青い鳥」のリズと青い鳥に置き換えていく
描かれ方がされるが、当初みぞれが自身をリズに置き換えていたのを、見方を変えて青い鳥に
置き換えていくことでくだりは、視点を変えることで可能性が広がることをうまいこと映像化
しており、凄く良い。

 作中ではみぞれ視点が多く、そのためにみぞれという人物の雰囲気が作品そのものに及んで
いるようで、全体的に静的な印象。
 それだけにダイナミズムはないが繊細さに溢れている感じで、それが顕著だったのはキャラに
多くを語らせず、仕草を始めとする映像描写だけで二人の特徴や心情を描く演出で、これが
素晴らしく良かった。

 キャラクターデザインや作画のタッチなどが、ユーフォとはだいぶ異なっており、最初はその
違いに驚かされたが、自身の現状を絵本に絡めていく展開などを考えるとこのタッチは本作には
向いているかな?と思ったり。
 あと本作のタッチの方がみぞれが野暮ったい感じで、こちらの方がみぞれという人物を的確に
捉えているかな?という感も。

 最後に私的なことを書きますが、本作の劇場公開時は公私共に多忙で
「まあ、いずれ観ればいいか」ぐらいのスタンスでそのまま来ていたのですが、最近
「劇場版 響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜」(以後、劇場版と表記)を観たら、
楽曲「リズと青い鳥」におけるみぞれと希美の演奏シーンの描写が気になり、慌てて本作を
鑑賞することで、劇場版の二人のシーンに対してもある種の納得感ができました。
 自分の場合は鑑賞順が逆になってしまったが、発表順に鑑賞した方がいいみたい。

2019/05/12
2020/04/04 誤字修正

投稿 : 2020/04/04
閲覧 : 265
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21

ネタバレ

ミュラー さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

音楽って本当に素晴らしいですね

ようやく見れた!
「響け!ユーフォニアム」の続編の位置づけにある本作品だが、見た感じはほんとに別物。これだけで完結した、恐ろしく完成度の高い、珠玉の名作であった。ナレーションは無く、全編に音楽が流れ、全体で1つの曲を奏でているイメージ。本編のユーフォニアムシリーズの中の世界でありながら、全く別の世界を描き出していた。
PV等を見たときには、キャラデザインが全然ちがうじゃん!と思っていたが、これは完全にリズと青い鳥のお話。キャラが違うのはワザとだろう。水彩画のような画面イメージにぴったりで、すごく良かった。鎧塚さん、かわいい!
対照的に、楽器はあくまでもリアリスティックに描かれ、影の主役としての存在感を示していた。
ユーフォのシリーズでいつも感心するのは、音楽の表現の素晴らしさ。鎧塚さんが、青い鳥を認識して覚醒したあとのオーボエソロは、本当に鳥肌もの。知らずに涙があふれてしまった。
クラリネットとオーボエの掛け合いを、トランペットとユーフォで表現するとか、鎧塚さんと傘木さんの演奏のうまさを途中で逆転させるとか、本当に吹奏楽をよく知らなければできない演出には舌を巻いてしまう。演出がうまいのだろうが、楽器をよく知らない人でも、うーんそうだなあと思わせてしまうところがまたすごい。
最初から終わりまで、息つく暇も無く見てしまった。こんな素晴らしい作品を作ってくれて、感謝しかない。本編の響け!ユーフォニアムに比べたら、全体に静かすぎて、退屈に思う人もいるかもしれないと危惧するが、私はこういう映画こそ評価されるべきと思う。個人的には、本編よりもこちらの方が作品としての完成度がはるかに上だと思っている。
本当に見てよかったと思える作品だ。

蛇足ながら、ユーフォニアムの世界なので、登場人物につき、簡単な感想を

・デカリボンちゃん(吉川優子)
⇒あなたが部長とは!しかも責任感もってりっぱに部長をやっているとは!一番成長したんじゃないかな。
・夏紀先輩(中川夏紀)
⇒やる気の無かった部員の一人だったのに、立派に副部長をやっている!コミュニケーションは得意そうだったので、部のまとめ役にぴったりかな。
・黄前ちゃん(黄前久美子)
⇒声を聴くだけで安心します。本編の主人公もこの映画ではほとんど出番なく。きっと低音パートを持ち前の性格で支えているのでしょう。
・高坂麗奈
⇒あいかわらずのセンス。鎧塚さんの欠点を指摘し、覚醒のきっかけを与えた。
・新山先生
⇒本編では影が薄かったが、この映画では主人公に次ぐ重要な役割。鎧塚さんを覚醒させた人物
・瀧先生
⇒本映画ではフォーカスが当たらない位置。相変わらずの手の演技は素晴らしかったが、楽器の演奏には勝てないね。
・北宇治高校吹奏楽部
⇒本編での優秀な上級生が居なくなったが、高坂さんや鎧塚さんのような全国レベルプレーヤーがおり、レベル的には全国に行けるだろう。しかし金賞をとるには、何かもう一歩足りない気がする。

すっかり鎧塚さんのファンになってしまったが、傘木さんも憎めないのは事実。共に未来に羽ばたいて欲しい。
何回でも見返したい、そんな作品でした。


追加したいキャラがあったので、追記
・剣崎梨々花
⇒鎧塚さんのオーボエパートに入ってきた1年生。この映画で初出だと思う。寡黙な鎧塚さんをダブルリードの会に誘い、心を開かせた新人。容姿や言動に似合わず、とてもクレバーな子だと思う。じゃなきゃダブルリードの会のリーダーやらないよね。こういう子、好きだなあ。
・図書館委員
⇒エンドロールに載っていないので、誰が演じているのかわからないが、人の神経を逆なでするような単調で淡々とした話し方をして、うまいなあと思った。

レビューをいくつか見ていたら、百合作品と評する方が多かったが、私はこの作品は、決して百合ではないと思っています。

投稿 : 2020/03/15
閲覧 : 346
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32

ネタバレ

画王 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 3.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

JKに心が洗われる

 「リズと青い鳥」という物語になぞらえて、二人のJK(みぞれと希美)のすれ違う思いを描いたアニメです。吹奏楽部の青春ドラマという要素は少ないので、ドラマの読み解きを楽しむ映画ではなく、二人の友情に焦点を当てたスピンオフの短編アニメという感じです。しかし、脚本は分かりやすく、すべての登場人物に優しさを感じられる温かみがあるので、短編の物足りなさを超える充足感を味わえます。
 自分の思いを伝えることが苦手なみぞれと、誰とでも打ち解けることができる希美が、吹奏楽のソロパートの掛け合いや進路に悩む過程で、お互いの友情に疑問を持ちます。そして、周囲の人達に助けられながら、それを克服していくという展開です。言葉にすると結構クサいのですが、それをしんみりと心に浸透させることができるのはアニメのいいところです。
 全身全霊をぶつけるみぞれの告白に、一線を越えた何かwを感じることもできます。ですがあの告白を、希美の怒涛の自己否定を全力で打ち消すみぞれの友情(優しさ)、と考えれば百合ではないです。みぞれはこの時既に独りで飛び立つ決意をしているし、みぞれの変化を感じた希美が、強引に突き放す必要がないことを悟った描写もあります(希美の自己否定は、みぞれを自分から解放するためのお芝居で、希美が考えた「籠の開け方」です)。自分を悪く見せることで友達を束縛から解き放つという発想は女性ならではですし、それに動じない深い愛を持てるのも女性だけでしょう。キャラデザもオッサンを発情させるような萌え絵ではなく、人間の優しさや嫉妬などの心情を分かりやすく伝えることができる画風になっていて、他アニメにないアプローチだと思います。
 最近はアニメに食傷ぎみでテレビ版を視ていないのですが、時間を作って観てみようと思えるくらいの良作です。

投稿 : 2020/03/15
閲覧 : 188
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15

ヴァッハ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 3.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

邦画的

まぁ邦画なんですけど、どうもこの作品はアニメ映画の中でも、実写の邦画、とりわけ0年代の雰囲気を感じました。

・内容
「リズと青い鳥」という作品と、メインの2人の境遇を照らし合わせた内容。
ありがちで、展開もオチも予想はつきます。ですが、それがマイナスに働く要素とは一概には言い切れません。
この製作陣の本領は、キャラクターの感情の機微や演出に表れます。

・音響
SEの効果が、非常に魅力的に刺さる。一挙手一投足に丁寧に当てられたSEが、視聴者を映画の世界へ吸い込んでいく感覚。
特に導入部分は良い仕事をしていました。何だか不思議とドキドキしました。泣くことだけが感動じゃない。

・キャラクター
新キャラ登場!
三年生が卒業した後の後日談なので、新入部員が沢山です。
レギュラーキャラとの関わり方、またレギュラーキャラの関わり方も見所。

・演出、作画
これが凄い。毎回凄いけどほんと凄い。
作風に合わせて作画を変えています。儚い空気と、優しさをみせつつ言い切ってしまう様な感もある。
これが本当に邦画的。大好きな空気感です。
分かっている展開ですが、それでも見せ方演出で受ける印象は大きく変わります。
終盤の柔らかくて儚い色彩と雰囲気に魅了されました。

・まとめ
言ってしまえば何でもない、普通の話です。日常譚で、悲劇でもなく喜劇でもない。
ただ演出。空気作りが完璧。「これが熱を帯びたプロなのだ」と、圧倒される。
キャラクターの心情が世界を引っ張っていて、見ているこちらもまんまと引っ張られる。
悲しい時は悲しくて、安堵の瞬間胸を撫で下ろしている。
最後は何だか悲しさもあるが、本当は取り立てて騒ぐ事でもない。
でもその時の刹那的な感情を、これでもかと演出してくるのでたまらない。
もう一度、見たくなった。

投稿 : 2019/11/22
閲覧 : 346
サンキュー:

13

まさき さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

優しいお話

陰と陽 親友の二人

微妙なすれ違い

そして・・・

やさしい物語

激しい展開が好きな方には退屈に感じるかもしれませんが
良かったです。

投稿 : 2019/10/10
閲覧 : 242
サンキュー:

8

たいが さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 1.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

観れば観るほど面白い作品

1回観ただけでは内容を理解できませんでした。
手応えとして、もう一度見たらきっと分かると思い、2回3回と視聴しました。

結論を言うと傑作です。みぞれの心情がよく理解できたし、依存する気持ちは自分に重なる節があり辛かった。

観るたびに涙がでてしまいます(;;)

ただ、ひとつ言いたいことがあるとすれば、声優の人選を間違えている。本○望結の演技が下手過ぎて内容が入ってこない。なぜ彼女を選んだのか、納得できない。

投稿 : 2019/09/29
閲覧 : 305
サンキュー:

9

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退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

次に繋ぐ美しさを求めた作品

本作は、作風が変わっている為、一瞬戸惑いが生じるんですが、2人と発表楽曲を主とした美しさを求めた作品です。
シリーズのもうひとつの魅せ方を追及していますが、やはりシリーズ作品の中にある、ひとつの大きな演出を捉えるべきでしょうか。
ラストのオーボエの演奏演出は圧巻でした。言葉は不要かとあの抑揚感が全てです。

次はいよいよ本筋が待ってます

投稿 : 2019/08/08
閲覧 : 292

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

青い鳥

 私という人間は、他者から見れば人間そっくりに作られたロボットと見分けはつきませんが、私だけが知る私の内側の世界には、生命があり、すべてを感じ取っている心があります。

 そこで感じられているものが美しく貴重であればあるほど、私はそれを大切に守ろうとします。
 そしてそれは硬い殻をかぶり閉じこもることと とてもよく似てしまいます。
 たとえその大切な感情が、他者を求める愛情であっても。

 守ろうとする気持ちが強ければ強いほど、外からの危険に備えて感覚は研ぎ澄まされ、そして心の内側では人知れず膨大なエネルギーが消費されます。
 その緊張から唇は閉ざされ、他人とコミュニケーションをうまく取ることができずに逃げてしまいがちになってしまいます。
 瞳の色は暗くなり、伏し目がちになります。


 この映画自体もまた、「ガラス越しに少女達を覗いてているように」と意図された色彩が全編を通して透明な美しさを極限まで高め、それゆえに観る者の心に緊張を生んで画面から目を離すことも、大きく息をつくことすら許しません。
 みぞれの張りつめた想いを通して見つめられることで、天真爛漫に見えるのぞみもまた、胸の内は危うい均衡の上にあることがあぶり出されてきます。

 これはほんの短い時間のたったふたりの人間についての物語ですが、これほど繊細にすみずみまで人の心の揺れや震えを描ききった表現を、私は他に知りません。
 そしてこれが机の上のまっさらな白紙に描かれ、すべてがゼロから人の手によって生み出されたものであることに改めて驚嘆します。
 これを作りあげた人達の到達した境地には畏怖すら覚えます。


 もし人や人生に「価値」というものがあるとするなら、それは自分の外の世界に対して「何をしたか」ではなく、自分の内側で「何を感じたか」にあるのだと思います。
 それは他人に測られるものではなく、本人にしか知り得ないものです。

 多くのアニメーションが、この世界に住む本当に多くの人たちの知られざる心の中に譲れない宝石のような感覚を与え、感情を残し、それはその人たちの人生の「価値」を高めてきました。

 この映画を観て、感想を書き表したり誰かに向かって話したりする人はほんの一部のひとでしょう。
 でも、たとえ無口ではあっても、この物語に心を動かされた人に残された強い感情は、そのひとの胸の内で、透き通るオーボエやフルートの音のようにいつまでも鳴り響き続けるに違いありません。

投稿 : 2019/07/30
閲覧 : 279
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ダビデ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

京都アニメーションがんばってください。

投稿 : 2019/07/18
今は、それどころではないでしょうが、なんでもいいので応援したいです。
何もできませんが、円盤注文しました。

投稿 : 2019/07/26
今回の事件で、お亡くなりなられた方々のご冥福をお祈りします。ご遺族関係者の方々に謹んでお悔やみ申し上げます。
療養中の方々のご回復を心よりお祈りいたします。

DVDを購入し、視聴しました。
DVDのパッケージや冊子も素晴らしく、作品も素晴らしく、胸が痛みました。

作品の内容としては、アニメの1期2期を視聴した方が、細かい描写が分かると思いますが、本作のみの視聴でも楽しめます。
が、やはり、アニメの1期2期を視聴してからの方が、楽しめると思います。
ただ、アニメのような{netabare}スポ根・吹奏楽部アニメを期待していたのですが、内容は違いました。{/netabare}しかし、その分、誓いのフィナーレへの期待値が高まりました!

とにかく、作品の素晴らしさを感じました。
素晴しい所を探す気持ちでの視聴だったからかもしれませんが、そのような気持ちでの視聴に対して、全力で応えてもらえる作品です。



既に、レビューにサンキュをいただきありがとうございます。
ただ、いただいてから気付いたのですが、サンキューが欲しい気持ちにはなれないので、今後、サンキューを押す気持ちになっていただいた方は、その分、成分の京アニのタグをクリックをしてもらえたらという気持ちです。
色々な価値観があって、こんな時にレビューをあげることを不謹慎に感じる方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、あにこれに登録して、レビューを書いている自分に、こんなときにできることは、円盤買うことと寄付をすることと、レビューを書いて応援することくらいしかできないと思いで投稿します。

心から、祈り、応援します。

投稿 : 2019/07/26
閲覧 : 390
サンキュー:

25

ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

とても深く、そして緊張感のある作品

初視聴です。タイトルに惹かれて見ました。

最初はみぞれが言った「私がリズで、希美が青い鳥」だと、何の疑いもなくそう思っていました。
それにしても「水槽を泳ぐミドリフグ」を眺めるみぞれのシーン、一体何の意味があるんだろう、
何の関係があるんだろうと、ずっと引っ掛かっていました。

その後「籠の中の青い鳥」と重ねて、束縛では無く、居心地の良い場所を意味していると思い、
青い鳥は希美ではなく、みぞれの方じゃないかと意識した時は、正直驚きを隠せませんでした。
みぞれの思いとして先入観を植え付けられ、真実とは全く逆を信じていたことになります。
みぞれと先生との会話でそれが確信に変わり、同時に二人のことを思い少し目が潤みました。

先生が言っていた「第三楽章はオーボエとフルートの架け合い」という言葉。
第三楽章。それはヌエット。つまり舞曲であり自由な演奏・・・そう、自由。
翼を取り戻した青い鳥が自由な空へ羽ばたく為に、この楽章「愛ゆえの決断」が存在する訳です。

覚醒したみぞれを見た希美が強い嫉妬と疑心を抱き、そして気持ちをぶつけ合った二人の会話は、
感傷に陥るとても辛いシーンです。希美にとって、それは決してハッピーエンドでは無かった。
だから希美はみぞれに抱きつかれても、きちんと受け入れることが出来なかったんだと思います。
それでも、その後に気丈に振る舞おうとした希美の気持ちが胸に刺さります。

籠の扉を開いたがゆえの自由と哀しみ。とても切ない物語です。

最後に初めて見ることが出来た「しっかりと向き合う二人」。これならきっと大丈夫でしょうか。
この先、たとえ互いが別々の道を歩むとしても、今までの様に近い存在であって欲しい。
そう願わずにはいられません。


作画は言うまでもなく、童話の世界と現実を重ねるところはとても幻想的で、
エンドクレジッツ「girls, dance, staircase」と非常にマッチしていると思います。

ただ、登場人物の会話や動きだけじゃなく、ちょっとした間と空間にまで伏線を張っていて、
その上、常に緊張を強いられる状態なので、見終わった後は少しだけ疲れました。(笑)

良く調べると「響け! ユーフォニアム」のスピンオフ作品という位置づけだったんですね。
全く知りませんでした。(学が無くてすみません)

正直どちらを見ようか迷ってこちらを選んだけど、すごくいい作品で見て良かった。
これで安心して本家の方を見ることが出来ると思うと、逆に良かったかなという気持ちです。

投稿 : 2019/07/25
閲覧 : 284

ShouyouACL さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.7
物語 : 1.5 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 2.0 キャラ : 2.5 状態:観終わった

This make me Sad. Always the same character design.

weak characters, weak history. but cool songs and beautiful scenery. This film shows well the potential of Kyoto animation, a pity the story is bad and the characters uninteresting. the direction in the fantasy scenes is very good, the use of colors is magnificent. But that's all. nothing new here

投稿 : 2019/07/22
閲覧 : 192
サンキュー:

2

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

実写を観てるような

TVシリーズは観てませんが、まるで実写を観ているかのような。
仕草とか表情とか、リアル女子高生。
女性スタッフが多い京アニならではであるし、ここまで繊細に作画しなければいけない時代なのか…
楽器経験もありますが、口のすぼめ方だとかね。指づかいとか、ぐうの音も出ない程完璧。
劇中の童話リズと青い鳥はジブリっぽいというか、ジブリ作品も請け負っていた京アニなので、ジブリらしさと自分が感じていたのは、実は京アニクオリティだったのでは?と思った。
マイナスはリズと少女のCVのみ。

投稿 : 2019/07/21
閲覧 : 183
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リズと青い鳥のレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
リズと青い鳥のレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

リズと青い鳥のストーリー・あらすじ

北宇治高等学校吹奏楽部でオーボエを担当している鎧塚みぞれと、フルートを担当している傘木希美。

高校三年生、二人の最後のコンクール。
その自由曲に選ばれた「リズと青い鳥」にはオーボエとフルートが掛け合うソロがあった。

「なんだかこの曲、わたしたちみたい」

屈託もなくそう言ってソロを嬉しそうに吹く希美と、希美と過ごす日々に幸せを感じつつも終わりが近づくことを恐れるみぞれ。

親友のはずの二人。
しかしオーボエとフルートのソロは上手くかみ合わず、距離を感じさせるものだった。(アニメ映画『リズと青い鳥』のwikipedia・公式サイト等参照)

ティザー映像・PVも公開中!

放送時期・公式基本情報

ジャンル
アニメ映画
放送時期
2018年4月21日
制作会社
京都アニメーション

声優・キャラクター

種﨑敦美、東山奈央、藤村鼓乃美、山岡ゆり、杉浦しおり、黒沢ともよ、朝井彩加、豊田萌絵、安済知佳、桑島法子、中村悠一、櫻井孝宏

スタッフ

原作:武田綾乃(宝島社文庫『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』)、監督:山田尚子、脚本:吉田玲子、キャラクターデザイン:西屋太志、美術監督:篠原睦雄、色彩設計:石田奈央美、楽器設定:髙橋博行、撮影監督:髙尾一也、3D監督:梅津哲郎、音響監督:鶴岡陽太、音楽:牛尾憲輔、音楽制作:ランティス、音楽制作協力:洗足学園音楽大学、吹奏楽監修:大和田雅洋

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