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「ロング・ウェイ・ノース(アニメ映画)」

総合得点
71.2
感想・評価
19
棚に入れた
77
ランキング
1355
★★★★★ 4.2 (19)
物語
4.2
作画
4.5
声優
3.8
音楽
4.2
キャラ
4.1

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ロング・ウェイ・ノースの感想・評価はどうでしたか?

タイラーオースティン さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:----

想像以上にハードな内容ながら引き込まれてしまう

絵柄的には三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー提供作品(動物農場とかベルヴィル・ランデブーとかしわ等)と同じ匂いを感じる無駄を無くしながらも労力を掛けた温かみのある物でまるで動く絵本のようなもの。

ストーリーとしては行方不明の祖父を探してヒロインのサーシャが極寒の地を目指すという複雑過ぎないシンプルな内容ながら苦難の連続ゆえになかなかハードという印象でした。

貴族家庭育ちのサーシャの行動力にも目を見張るものがありましたが、特に気の荒い男たちの中で極限の状況ゆえに、厳しい言葉を浴びながらも信念を持ち続ける姿に圧倒されましたね。

特に子どもに観て欲しい一本だと思います。

投稿 : 2023/01/05
閲覧 : 96
サンキュー:

3

みのるし さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4
物語 : 5.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

ハスキー犬だったのか!

そもそもですが、なんてゆうかこうゆうエスタブリッシュメントな人がでてくるのんてなんとなしヤな感じなんですよねぇ。

とまあ始まってしばらーくはそんな感じで見てたんですけども。

はじまって30分ぐらいしたらあーこれはそおゆう話ではないのだなーとうっすら気づいてきます。(あはは。それはたぶんボクだけかもですが。)


ハナシはですね、面白いんですよ。

もう次から次へとくそさぶいなかトラブルが続出しましてですね、『天は我々を見放した!』と何回もゆわなあかん感じでした。

しかも見てるだけで体中凍えてくるくらい臨場感のある映像で、寒さが伝わる映像としては『レヴェナント』とか『ザ・グレイ』に匹敵する勢いがあります。


主人公の女の子が持ち前の頭脳と機転と、努力と信念でたくましく成長していくのですが、その成長の著しさといったらもはや人間ではない。

ボク的にはそこがまあなんか嫉妬するとゆうか同意しかねるといった感じでして、あんまりキャラには入れんかったっすかね。


まあ面白かったんで見てよかったとは思いましたよ。

あと、犬がでてくるんですが、wikiによるとハスキー犬なんですと!
わるいすけどハスキーには全然みえんすわww

投稿 : 2020/12/07
閲覧 : 300
サンキュー:

11

ネタバレ

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

絶望に見えた先を切り開いたのは?

 地球のてっぺんに行くと北極へ旅立ったきり、祖父と乗っていった「ダバイ号」帰ってこなかったです。数年たって主人公のサーシャが、一人旅立って真相を究明し、帰還するお話です。吹替版を見たです。

 十数年前を思い起こす、私の幼かったころに見たような独特の作画だったです。色の色彩もはっきりとしていて、キャラ、背景と共に絵画のようなセル画アニメを見ているようだったです。でもこういうのが、元祖アニメという気がするです。

{netabare} 祖父の乗った船は、捜索しても見つからない状況の中、祖父の遺品からあるものを見つけたサーシャが、それを手掛かりにいてもたってもいられなく、大胆な行動に移すのです。

 決して平たんな路でなかったです。「MARCO 母をたずねて三千里」に例えると、マルコみたいに騙されたりもしたです。それにもくじけず、たくましく前を向くサーシャを見たです。そして、協力者達と船に乗る機会をつかむのです。

 険しい航路の果てに、後戻りもできない何があるのかもわからない、過酷の状況の中、仲間割れまがいもあったりしたです。
 ここで、なぜか船で飼われていた犬の導きにより、サーシャと思いがけない場所での再会を果たすところが、できすぎた感あったです。この犬に霊視でもできたのだろうか?です。そこで、得た物により、過去を知り道が開け、目的を果たすにいたったのです。{/netabare}

 愛する祖父と家族の名誉のために、勇気ある少女の行動だったです。たくましく進む冒険だったです。逆境に立たされ、少し仲間に恨まれることがあっても、活路が見いだされたです。最後には、分かり合えたです。
{netabare}  EDで、仲間と共にダバイ号と帰還したサーシャが、両親に再会する姿が良かったです。家族の名誉も救った光景でしょうです。{/netabare}

投稿 : 2020/06/11
閲覧 : 267
サンキュー:

8

ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

ベビーフェイスじゃいられない。

海図は、ロシアンルーレットを挑発する。

それでも・・・・
憧憬を覚えているやさしい過去は
彼女のまなざしの先に、確信ともいえる航路を描かせる。


羅針盤は、狂濤嶮路を指し示している。

それでも・・・・
明かすべき未来を負託された自意識は
操舵輪をして地球の「てっぺん」へと舳先を向かわせる。


祖父の言葉は、いったいサーシャの胸中に何を産み落としたのだろう。

汚名を雪いだあとのサーシャは、祖国に何を見出すことになるのだろう。



男浪が、祖父のパイオニア・スピリッツを体現するものなら
女波は、サーシャのファイティング・シップともいえるだろう。

水火も辞せず真理を証しようと一歩を踏み出させるのは、共なるDNAのなすわざなのか。

フロンティア・ポイントへの飽くなき探究心が、雪氷の海にその切っ先をつき立てる。


息をも凍る、苦悦の旅が始まる。

いっときも目が離せないサーシャとわたしの旅なのだ。


~  ~  ~  ~  ~  ~


まるっきり日本的でない映像体験だった。

あまりにも美しく
しかも、そればかりでもない。

凍れるような忍耐と
ひた向きなまでの信念と
どれほどまでの覚悟が試されるものかと
そう訴えかけてくる。

ブリザードは大咆哮し、幾度となく平伏と敗退を強いてくる。

受難なのか。

必然なのか。

救いなのか。

むきだしの造形のままに、人智を凌駕する洗礼がサーシャを打ちつける。



やがて、サーシャの息遣いは、薄明のなかで祖父の緘黙と交じりあう。

(もっとも心を奪われるシーン)

祖父はその生をかたらず、サーシャの抱擁はかなわない。

それでも彼女は、祖父の死を、生として包容できたのではないか。

時代の先駆者は、いつだって後継者を、高みへと導いてくれるのだ。


~  ~  ~  ~  ~  ~


イメージはいとも簡単に裏返される。

誰もがベビーフェイスに騙される。

サーシャはたかだか14歳なのだ。


1882年。
帝政ロシア末期の絶望的な国家運営と支配があった。

祖父に功名をなさしめるのは、帝国への忠誠を問うていたのか。
それとも、名誉を欲する為政者の気まぐれのための道具だったのか。

サーシャは、正義で動いたわけではないし、好奇心で走り出したのでもない。

どんなにささやかな約束であっても、そこに純粋な愛が満ち、侵しがたい尊厳があったと証明するためには、動機としては有り余るものであったろうと想像するに難くはない。

祖父の情熱を熾火として、真実への希望を専心に受け止めたサーシャ。
不名誉の悔しさなど、極北の厳氷の只中では、微塵にして些末なこと。

帰港の歓声に応えた彼女の笑顔は、無慈悲な帝政へのアイロニーをどこかに含んでいたと理解しておきたい。


思うに、一貴族の一人娘に、いったいどんな生き方が選べたというのだろう。

時代が定めた蓋然の枠に安住する生き方を、疑わないままに最善とするのか。
自らのほとばしりでるバイタリティーを、歓びの変化として最善とするのか。

サーシャの鬱屈した表情に、しかし、時代には気負けしないレジリエンスと、真実を体現する人としてのストレングスが見て取れる。

サーシャは太く希求する。
そしてしなやかに振る舞う。

埋没していた真理が、将来へのコミュニケーションと選択を求めてくる。
未来への責任が、多くの女性や若者たちの転換点に確かな勇気を与える。

そう。本作には、時代の最新フェーズへと立ち向かおうとする態度が示されている。

そんな真底に触れつづけた81分の上質な旅だった。


{netabare}
The Arctic(a’;rktik  アークティク)
北極です。

原典はギリシャ語の Arktos(おおぐま座)。
天と地と人とを結びつけるキーワードでもあります。

おおぐま座は、北半球の天頂に坐し、数千年にわたって夜ながに現われ、人々に心的・霊的なエネルギーを与えつづけています。

エジプト、メソポタミア、インダス、黄河、ギリシア、そして日本。


今夜も、天のひさごからはたくさんの金銀砂子がこぼれ落ち、ステキな宝物となって手元に届くのかもしれません。
{/netabare}

投稿 : 2020/03/06
閲覧 : 278
サンキュー:

9

ネタバレ

fuushin さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

たくさんの 彩りと輝きをもらえる秀作。

キャッチさんのレビューを読んで、名古屋の上映館をチェックしたら、もう終了していました。あらまあ。

この先が望めそうになかったし、映画の日ということもあって、ちびっと脚を伸ばして静岡まで観に行きました。いやまあ。

駅前の劇場は、55席のミニシアターで、当日一回限り、字幕版の一択でした。

日本語訳はスクリーンの下部に表記されていたので、視線移動が楽ちん。
読みやすく、すうっと頭に入ってきます。

生の声優さんの声が聴けたのも良かったです。
物語の主題を壊していない、作品性をそっと後押しをしている、そんな印象の声です。
日本語吹替版は、どんな演技をなさっているのかしら?ちびっと気になります。

さて、感想ですが、個人的には今期一のダークホースといったところです。

また観たい。
何度も観たい。
ブルーレイも買いたい。
そう思わせる秀作でした。

とにかく、とにかく、作画がすごい。
色彩設定がすごい。
人物描写がすごい。

スクリーンは2×5mと小さいのに、広くて、深くて、美しい。
ちょっと言葉になりません。

音の再現性がすごい。
リアリティがすごい。
耳に優しいし、心に染みこむし、身体に馴染むのです。

キャラデザインは、異国情緒性に秀でていて、そのままの世界観を表現しています。

初めのうちは、ちびっとディズニーアニメのテンプレっぽさも感じましたが、すぐに物語にグイグイ引き込まれてしまったので、途中から気にならなくなりました。

余談ですが、舞台がロシア〜北極ですから、館内暖房は不要だと思います。

いや本当です。
ダウンジャケットを着て、凍えながら鑑賞するのが正しいお作法だと思います。
それくらい没入できました。

さて、物語ですが、難しいシナリオではありません。8才くらいの女の子、男の子もじっくりと見入っていましたから。

シンプルに言えば、冒険ふう活劇なのですが、内容は、奇を衒(てら)わない実直なストーリーです。
むしろ骨太で硬派ともいえるお話です。

主人公は、上流階級の家の一人娘、サーシャです。
この娘が、とにかく "かっこいい" のです。
頭の回転が早くて、打たれ強くて、前向きなのです。

演出上、いくらかの弱さも描かれるのですが、それがあとあと良い風合いを醸し出すので、流れる涙の味が濃いのです。

でも、絶対的なヒロインではありません。
14歳の等身大の少女でありつつ、失敗することも多い女の子です。
そんな彼女は、とても柔軟性に秀でていて、若々しい感受性の持ち主でもあります。

サーシャの意志の強さと行動力は、愛するお祖父さんの囁(ささや)きに立脚しています。
その意味では、本作は、家族との絆、家族愛を通底としたテーマであると言えるでしょう。

ぜひ、劇場にいらしていただいて、2人の "太い絆の実相' に触れてみてください。

サーシャの姿に、きっと、生きる勇気をもらい、あなたのてっぺんに希望の旗を掲げることができると思います。

心からオススメいたします。


長文を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

本作が、皆様に愛されますように。

投稿 : 2019/12/03
閲覧 : 343
サンキュー:

15

ネタバレ

USB_DAC さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

ヨーロッパテイストが画面いっぱいに漂う魁作

物語:
舞台は19世紀。ロシア帝国の首都(当時)サンクトペテルブルクに
住む14歳の少女サーシャ。探検家として北極点を目指し、船諸共行
方不明となった大好きだった祖父の消息をひとり追う。やがて出会う
北方商船の乗組員等と共に彼の地を目指し、祖父の名誉を取り戻す物
語。普段は貴族的な生活を嗜み、家庭的なことはしたことが無かった
彼女。旅を通して逞しい女性へと変わっていく姿はとても感動的です。

作画:
一切輪郭を描かない独特のタッチはまるで絵画の様。このシンプルで
芸術的な作画が、北極圏の環境の厳しさをより一層感じさせる。そし
て精密な画作りなど無くても、見る者に驚きは与えられると言わんば
かりの表情力の豊かさ。自然な目の動きや瞬きの頻度。その巧みで奥
深い映像には終始圧倒されっぱなしでした。

声優:
日本語吹き替え版では無く、字幕版(原作)の方が個人的に好みです。
クリスタ・テレ(仏)のハスキーボイスは、強いサーシャのイメージ
にピッタリだと思います。

音楽:
挿入曲は『Hi Life』/『To All of You』の2曲。
Syd Matters(シド・マターズ 仏・5人組)が奏でる静かで薄暗い
ハイセンスなこの曲が、作品の後味にクールさをプラスする様。

キャラ:
日本のアニメに見慣れてしまうと、確かに物足りなさが残るかも知れ
ません。しかしシンプルにも関わらず特徴の曖昧さが無く、人物はと
ても個性的にデザインされている。そして取り繕い誇張されたキャラ
はいない。出会う人すべてが人間らしく正や負の感情をしっかりと持
ち合わせている。裏切りと感動の人間模様。このリアルさは本物です。



[感想]

2015年公開(仏)のフランス・デンマークの共同作品。

アヌシー国際アニメーション映画祭観客賞や第33回シカゴ国際児童
映画祭など、数多くの賞を受賞しながらも3年半の時を経て、漸く実
現した日本公開。この時を待ち望んだ方はとても多かったのではない
かと思います。かく言う自分もその一人。

トム・ムーア監督の下『ブレンダンとケルズの秘密』で助監督を務め
たレミ・シャイエさんが初めて指揮を行った作品。作風はまるで違い
ますが、絵画チックで芸術的なその作画は、成ほどなと思わせるもの
があります。それと現在YouTubeで公開されている監督から送られた
メッセージ。本当に優しく真面目そうで、人柄の良さを感じさせます。

シンプルな作画が生み出す色使いの素晴らしさ。そしてさり気なく耳
から入って来るリアルな効果音への驚き。流氷がきしみ出す音や崩落
する氷河の音、ブリザードの風の音などが更に緊張感をもたらす。派
手さは無く一見シンプルなストーリーは、彼女の旅への絶望と希望を
幾度となく映し出し、序盤から最後まで本当に手に汗握る状態でした。

極限まで無駄を省き、豊かな感情表現で見せる新たなアニメーション
の方向性。より多くの方にご覧頂き、日本の作品とはまた一味違う素
晴らしさを是非肌で感じてもらいたい。心からそう願っています。



以上、長文拝読頂きありがとうございました。

投稿 : 2019/11/19
閲覧 : 309
サンキュー:

22

ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

少女は北極へ―――地球とアニメーションのてっぺんを目指す驚異の冒険映画

※声優の評点は字幕版の評価。

フランス・デンマーク合作(2015)

あらすじ……
{netabare} 19世紀後半。ロシア貴族の娘が、北極点を目指して消息を絶った探検家の祖父を探すため、
また祖父の名誉を守るため、厳しい北極圏の旅路を行く、青春冒険映画。{/netabare}

『よりもい』で日本の少女たちが南極を目指した少し前に、
極寒の極北に挑んだロシア人少女をフランス人監督はどう描いたのだろう?

東京アニメアワード2016のコンペティション部門・長編グランプリに本作が輝いた際、
故・高畑勲監督も激賞していた。
もしかしたらフォトリアル表現とは違う、
アニメーションの進むべき道が本作にはあるのではないか?

2019年の日本一般公開が決まる前から私も興味津々だった作品。
とは言え、流石に北陸までは来ないだろう……。
と思っていたら先日、金沢に来たので、待望の鑑賞が実現しました♪


本当に期待以上の傑作でした。

往年の日本の東映動画作品にも影響を受けたと言う、
人物と背景の間に黒い境界線を入れない、
単色ベタ塗りのシンプルな作画構成。

ただこれは決して安易な作画工程の削減だけではない。
伝えたい物をよりストレートに投げかけるための、
表現の取捨選択、洗練であることが観ていてヒシヒシと伝わって来ます。

瞳で心情を語る描写を最大化するためのキャラクターデザインであったり、
リアル以上の白の強調により、さらに驚異度が増す、北極の自然の猛威であったり。

普段リアル志向の作画で描かれてしまう、ボクシンググローブみたいな余計な物が削ぎ落され、
素手の如く剥き出しになった表現で直に殴られ続ける感じで、
鑑賞者もノックアウト必至です。


色んな感情が振り切れる、凄惨な旅が続くにも関わらず、
キャラが涙を流さないのも特徴的。
それでいて、心の痛みやら感激やらは、
表情や目線を通じて、しっかりと胸に響いて来る。
心情表現を極めた繊細な作画に、露骨な泣き顔は必要ないと言うことなのでしょうか?
演出については、終始、驚かされることばかりです。


氷山の軋む音など、実際の環境音も取り込んだ音響、
バンドミュージックも交えた音楽はやや変化球ですが、
こちらも映像との融合度が非常に高く引き込まれます。


舞台は一応19世紀後半のロシア帝国等ですが、
それ程、リアルにこだわって時代設定を詰めて来ているわけでもない印象。
そもそも、{netabare}じっちゃんは北極点に到達したんだ!と少女は信じて旅に出ますが、
史実では人類初の北極点到達は、20世紀のことですし。{/netabare}
ここもあくまでリアルより、少女が困難に立ち向かう姿を描き切ると言う主題優先。

他にも例えば、{netabare} 19世紀にはまだ無かった鎮痛剤・ペニシリンの使用だったり、
現実の北極圏でもあり得ないビッグサイズの氷山だったり。{/netabare}

これらのウソ設定を、高畑勲監督は「このウソのつき方は気持ちがいい」と好評したそうですが、
私も作品で主題を描く際の、リアルの優先度について一考させられる
興味深い設定の組み方でした。


フィクションでやたらリアリティを要求してしまったり、
このアニメの脚本、実写でもやれるじゃんw
と企画の腰を折るような批判が浮かんでしまったり。

自分の中で、相変わらず、アニメの未来の不確実性が増大する、
モヤモヤした感情も抱いてしまう今日この頃でしたが、
本作を観たら、そんな野暮な考えは、
圧巻のアニメーションで襲い掛かって来たブリザードと共に吹き飛びました。

本作が絶対的な答え!と言うわけでもないでのしょうが、
アニメーション表現の未来も感じることができる逸品だったと思います。


オススメです!

投稿 : 2019/11/18
閲覧 : 982
サンキュー:

35

ネタバレ

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

『よりもい』との類似や『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』との対比も面白い!ヨーロッパの作画アニメはまだまだ進化を止めないゾ!

2015年にフランスのスタジオ2minutesが中心となり、後にデンマークのスタジオNorlumを加えて完成した81分のフランス映画
『ブレンダンとケルズの秘密』等にも関わったレミ・シャイエ監督の処女作


1882年のロシア、サンクトペテルブルグ
人類初の北極点到達を夢見て砕氷船ダバイ号で冒険の旅に出た祖父オルキンが行方不明になって2年
孫娘のサーシャは祖父の威厳と一族の名誉回復の為、ダバイ号の捜索再開をロシア宮廷に懇願するがオルキンを良く思わない王子の謀略に嵌り、捜索再開への道を閉ざされてしまう
その夜、一大決心をしたサーシャは貴族の子女であるにも関わらずお屋敷を抜け出し、たった1人でダバイ号の手掛かりを追う旅に出る
ロシア北西、白海に沿うアルハンゲリスクの港で船長を名乗る男、ラルソンに騙されて無一文になってしまうのだが、食堂を営む女性、オルガの協力を経て船長を偽ったラルソンの実兄であり本物の船長のルンドを説得する
ロシア帝国の威厳を示す為に特別に作られたダバイ号の発見に懸けられた高額の賞金を受け取る条件で、自身の船であるノルゲ号でダバイ号捜索に出ることを約束する
祖父への憧れから学んだ北極海の知識と、オルガの店に居候をするうちに鍛え抜かれた度胸で、サーシャもノルゲ号への乗船を申し出る
荒くれ者の海の男達と共に、年端も行かぬお嬢様だったサーシャの過酷な北極への本当の冒険が始まった…


あらすじだけ読むと『宇宙よりも遠い場所』に似ていると感じる方も多いと思います
実際は今作の方が先に公開されているわけなのですが、“家族の名誉を守る為に最果ての地へ向かう少女”と、テーマはハッキリ言って酷似しています
なので当初僕も『よりもい』の様な淡い感動作を期待していたのですが、蓋を開けてみると実際はあまりにも過酷な冒険の内容に思わず若干憂鬱な気分にすらなりました
シリアスな本物のアドベンチャー映画を求めてる人にこそオススメする内容です


さて、まずページ上部の作品タイトルにあるサムネイルを観ていただきたい
お洒落で20世紀半ばのアメリカの広告ポスターの様な、
アウトラインの無いキャラデザ、
ベタ塗りで明度が低いのに色合いがハッキリした色彩、
キャラと一体化した背景
実はこの絵、ただの広告絵ではなくれっきとした本編と同じデザインなんです
この絵が81分間動き続ける、そう考えるだけでもワクワクします


全篇はFlash、つまり紙と鉛筆を用いないデジタル作画でアニメートされます
近年の日本のアニメでも部分的にに取り入れられてる技法ではありますが、これで長篇映画を作ろうという試みは世界初じゃないかと思います
一見シンプルに観えるこの画面作りは、行程を極力減らした上で背景や色彩をも総合的に調和させた画面を完成させる為に行われてるのです
劇中で主人公は北極への過酷な冒険に挑むのに対し、スタッフは前代未聞の長編映画を作る、という挑戦をしているわけですね


とても面白いのが日本での公開の同日に、あの京アニ屈指の繊細なキャラデザの作品『ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝』が公開されたことです
プロのアニメタですら舌を巻くあのきめ細やかなビロードの様な金髪の作画を、京アニは見事にアニメートしているわけですが、今作のレミ監督は「髪の毛を一本ずつ作画する予算は無い!」と割り切ってこの様なシンプルなキャラデザになったとの事です
つまり『ヴァイオレット』とは全く逆の考え方をしてるわけです
しかもさらに面白いのが、『ヴァイオレット』も『ロング・ウェイ・ノース』も、ラストシーンで風が主人公の金髪を靡かせるのです
あえて『ヴァイオレット』と比較するのは面白いですよ?
2作観ればアニメーションの表現の幅をより感じさせてくれます
アメリカのアニメ映画業界はとっくに3DCGに舵を切っていますが、ヨーロッパの作画アニメは日本のソレとは少し異なる趣でありつつ、日本の影響も上手く取り入れて進化し続けています


日本の影響を受けている、というのは今作も数多のジブリ映画の様に年端も行かぬヒロインが活躍する作品であることに由来します
少女が主役のフランス映画といえば、同じく今年日本公開の『ディリリとパリの時間旅行』もありましたが、あちらは“少女が人種差別や性差別と闘う作品”なので主人公がどうしても少女である必要があった作品なんです
ですからコチラの様に狙って少女を主役にしたのとは少し違う


実は故・高畑勲監督が生前にこの映画のツッコミどころを踏まえた上で絶賛されています
そのツッコミどころというのは
{netabare}
・劇中に出てくるペニシリンが発明されたのは20世紀に入ってからなので本来存在しない
・北極は年中流氷に覆われているが劇中に登場する様な数十メートル級の山塊や山脈は存在しない
{/netabare}
今回は伏せておきますが、嘘のつき方が上手い、最もらしい描写であるとしつつ、そんなことなどどうでも良くなる程に“少女が何かを成し遂げようと奮闘する姿が物語を引っ張っている”評されていて、僕もえらく共感しましたね


音楽はアメリカ映画にありきたりなエピックやロシアが舞台ならロシア伝統音楽だろ、といったところが安直に考えそうなところですが、レミ監督は自身がファンであるフランスのロックバンド、それもサイケロックを得意とするシド・マターズのジョナサン・モラリを連れてきました
まさかのサイケ!w
めちゃくちゃカッコイイんです!
日本で言えばRADWIMPSを連れてきた様なもんです
サントラがあれば即買いなところですが、残念なことに発売されてないそうです;
音楽のセンスは流石ヨーロッパって感じですねー


吹き替えの出来も素晴らしく、字幕と共に1回ずつ観ましたが初見であれば物語がすんなり入ってくる吹き替え版をオススメします

投稿 : 2019/09/24
閲覧 : 1071
サンキュー:

12

褐色の猪 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

南極よりも遠い場所

原題:Tout En Haut Du Monde
年度:2016年
製作:フランス・デンマーク
監督:Rémi Chayé(レミ・シャイエ)
時間:1:21:00

TAAF2016・長編コンペティション・グランプリ受賞作

遭難してしまった祖父を探す為、過酷な北極点を目指す孫娘の物語、
荒くれた海の男達の男気と優しさに交しながらの成長譚も良く表現されてます。

人物作画は輪郭線を省く独自の手法、背景はベタ塗りの彩画。
TAAF2019前夜祭上映後トークにてアニメーターの井上俊之氏が貼絵画家:内田正泰氏 [ http://uchidamasayasu.com/ ]の作品を例えされてましたが正に此れ。
この背景美術は目を瞠るものが有り、
行く手に立ち塞がる氷河、崩れ落ちる氷山、弄ばる帆船の動き等々、壮大さに感銘しました。

日本での公開が待ち望まれてましたが、この度配給権を取得した所があるそうで、劇場に掛かって欲しい( …t…x だとPCの小さなモニターで観る事になり迫力も半減してしまう^^;)

ぜひ劇場の大画面で、素朴で力強い描動画を堪能したいですね。

----------

邦題「ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん」として

9/6(金)~10/3(木) 東京都写真美術館ホールを皮切りに全国順次公開が決定したそうです。

海外アニメーションのお好きな方はもとより
「よりもい」好きな方も琴線にふれるやもしれません、ぜひご鑑賞を(^^)

投稿 : 2019/07/24
閲覧 : 439
サンキュー:

14

アニメ評論家1号 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:----

投稿 : 2022/12/30
閲覧 : 11

Dkn さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

投稿 : 2022/12/15
閲覧 : 10

ひよこ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

投稿 : 2022/01/30
閲覧 : 23

じぇ~むず さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

投稿 : 2020/09/10
閲覧 : 44

あいあい さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.6
物語 : 1.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観たい

投稿 : 2020/08/16
閲覧 : 54

ルカ☆ルカ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:----

投稿 : 2020/05/22
閲覧 : 59

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

投稿 : 2020/01/06
閲覧 : 67

AKIRA777 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

投稿 : 2019/11/24
閲覧 : 61

いぬわん! さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 3.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

投稿 : 2019/04/30
閲覧 : 71

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ロング・ウェイ・ノースのストーリー・あらすじ

まだ帆船が活躍していた時代、少女サーシャが、祖父の歴史を辿り、サンクトペテルブルグから極北への航海に挑む冒険談です。(アニメ映画『ロング・ウェイ・ノース』のwikipedia・公式サイト等参照)

放送時期・公式基本情報

ジャンル
アニメ映画
放送時期
2016年7月28日

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